電気機器の収納袋
【課題】電気機器の取り出し時に静電気の除電をして機器の破損を未然に防止することが可能な電気機器の収納袋を提供すること。
【解決手段】電気機器の収納に用いられる収納袋1は、一端に開口部が形成され、この開口部を介して前記電気機器が収納可能な導電性の袋体1aと、この袋体1aの開口部周縁15に沿って貼着されたテープ状でかつ導電性の支持部3、及びこの支持部3により支持され前記開口部の周方向に配列された可撓性でかつ導電性の多数本の除電毛5を有し、前記電気機器が袋体1a内に収納された状態から袋体1a外へ取り出されるときに、除電毛5の先端部が前記電気機器の表面に摺接して静電気の除電をすることが可能な除電ブラシ部2と、を備える。
【解決手段】電気機器の収納に用いられる収納袋1は、一端に開口部が形成され、この開口部を介して前記電気機器が収納可能な導電性の袋体1aと、この袋体1aの開口部周縁15に沿って貼着されたテープ状でかつ導電性の支持部3、及びこの支持部3により支持され前記開口部の周方向に配列された可撓性でかつ導電性の多数本の除電毛5を有し、前記電気機器が袋体1a内に収納された状態から袋体1a外へ取り出されるときに、除電毛5の先端部が前記電気機器の表面に摺接して静電気の除電をすることが可能な除電ブラシ部2と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、回路基板等の電気機器を収納する収納袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路基板等の電気機器は、出荷又は搬送時等に収納袋に収納され破損等から保護されるのが一般的である。また、この種の収納袋は導電性の材質を用いて形成されており、電気機器を静電気帯電から防止する機能も兼ね備えている。
【0003】
特許文献1では、半導体部品を回路基板等に半田付実装する半田付装置において、半導体部品と接触して除電を行う除電ブラシを装備した構成が記載されている。具体的には、回路基板上に半田付実装された半導体部品がベルトコンベアで流されながら、除電ブラシと接触することで除電を行うようにしている。これにより、半導体部品の静電気破損を防止することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−73970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、製造工程で除電をされた回路基板であっても、出荷時には収納袋に収納されて搬送され、使用時には収納袋から取り出される。この際、回路基板は収納袋の内表面との接触摩擦により静電気を帯びる可能性があり、この静電気帯電により回路基板が破損する可能性がある。
【0006】
実際、従来の収納袋に収納した回路基板を収納袋から取り出した後に、回路基板表面の電位を複数個所測定してみたところ、いずれも例えば〜1000(V)程度の高い電位が検出された。機器取り出し時におけるこのような静電気帯電については、従来認識がされておらず、したがってその対策もされていなかった。
【0007】
以上のように、従来の電気機器の収納袋は、袋自体の静電気帯電は防止可能であるものの、電気機器を収納袋から取り出すときに、電気機器が帯電してしまうという問題点があった。特に、電気機器に絶縁体が使用されている場合には、接触摩擦により高帯電が生じやすい。
【0008】
この発明は、上記に鑑みてなされたもので、電気機器の取り出し時に静電気の除電をして機器の破損を未然に防止することが可能な電気機器の収納袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、電気機器の収納に用いられる収納袋であって、一端に開口部が形成され、この開口部を介して前記電気機器が収納可能な導電性の袋体と、この袋体の開口部周縁に沿って貼着されたテープ状でかつ導電性の支持部、及びこの支持部により支持され前記開口部の周方向に配列された可撓性でかつ導電性の多数本の除電毛を有し、前記電気機器が前記袋体内に収納された状態から前記袋体外へ取り出されるときに、前記除電毛の先端部が前記電気機器の表面に摺接して静電気の除電をすることが可能な除電ブラシ部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、電気機器の取り出し時に静電気の除電をして機器の破損を未然に防止することが可能な電気機器の収納袋を提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施の形態1に係る電気機器の収納袋の外観を示す図である。
【図2】図2は、開口部を開いた状態での収納袋の外観を示した模式図である。
【図3】図3は、袋体に貼着する前の除電ブラシ部の構成を示した図である。
【図4】図4は、除電ブラシ部の断面構成の別の一例を示す図である。
【図5】図5は、袋体と除電ブラシ部との貼着構造を示した断面図である。
【図6】図6は、収納袋内に電気機器を収納した状態を示した模式図である。
【図7】図7は、実施の形態1の動作を説明するための図である。
【図8】図8は、実施の形態2に係る電気機器の収納袋の外観を示す図である。
【図9】図9は、実施の形態2に係る電気機器の収納袋の外観を示す別の図である。
【図10】図10は、収納袋から電気機器を取り出す状況を示した図である。
【図11】図11は、実施の形態3に係る電気機器の収納袋の外観を示す図である。
【図12】図12は、実施の形態3に係る電気機器の収納袋の外観を示す別の図である。
【図13】図13は、実施の形態4において、袋体と除電ブラシ部との貼着構造を示した断面図である。
【図14】図14は、実施の形態4において、袋体と除電ブラシ部との貼着構造を示した別の断面図である。
【図15】図15は、基板取り出し後の基板電位の測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る電気機器の収納袋の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る電気機器の収納袋の外観を示す図である。図1に示すように、本実施の形態の収納袋1は、電気機器を収納可能な袋体1aと、この袋体1aの開口部周縁に沿って設けられた除電ブラシ部2とを備えて構成される。袋体1aは被収納物である電気機器を内部に含まない状態では平面視で例えば矩形形状である。
【0014】
図2は、収納袋1の開口部を開いた状態で収納袋1の外観を示した模式図である。図2に示すように、収納袋1は、一端に開口部が形成された袋状の袋体1aを備え、前述のように、その開口部周縁15に沿って除電ブラシ部2が設けられている。
【0015】
袋体1aは、柔軟性と導電性を有する。すなわち、袋体1aは、電気機器を保護収納するための柔軟性を有するとともに、静電気帯電を防止するために導電性材料を用いて形成されている。袋体1aとしては、例えば、合成樹脂製の袋体の表面に金属又はカーボン等の導電性薄膜を被覆したもの、導電性材料を塗布したもの、又は合成樹脂に導電性物質を練り込んだもの等が知られている。
【0016】
除電ブラシ部2は、開口部周縁15に沿って袋体1aに貼着されたテープ状(あるいは帯状)でかつ導電性の支持部3と、この支持部3により支持され、略開口方向に沿って延伸するとともに、開口部の周方向に配列された多数本の除電毛5(除電毛群)とを備えて構成される。すなわち、除電毛5は、一端部が支持部3により支持されて袋体1aの開口部周縁15に装着されて、袋体1aの内側から外側に向かって開口部の略開口方向に延伸するとともに、開口部の周方向に配列されブラシ状に構成されている。除電毛5の先端部は、電気機器の取り出し方向に向いている。また、除電毛5は、導電性及び可撓性を備えた導電性繊維から成る。
【0017】
図3は、袋体1aに貼着する前の除電ブラシ部2の構成を示した図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。図3に示すように、支持部3は、例えば一定の幅で長さがLの一対の導電性のテープ30a,30bを例えば接着剤等により貼り合わせて構成され、除電毛5の一端部はテープ30a,30b間にて粘着挟持されている。導電性のテープ30a,30bは、それぞれ例えばアルミニウム製のテープから成る。支持部3の長さLは、袋体1aの開口部の周長で決まる。テープ30a,30bの厚さは、例えば0.数mm程度とすることができ、袋体1aの開口部周縁に貼着しやすいように柔軟性を備えた厚さとすることが好ましい。
【0018】
なお、図3(b)では、除電毛5の一端部を一対の導電性のテープ30a,30b間で挟持するようにして支持しているが、これに限定されず、一般にその端部を支持する構成であればよい。例えば図4では、このような支持構造の別の一例を示している。すなわち、図4は、除電ブラシ部2の断面構成の別の一例であり、図3(b)に対応する図である。図4に示すように、支持部3は、例えば一定の幅で長さがLの一枚の導電性のテープを断面略U字状に折り曲げて成り、このU字状の開口に除電毛5の一端部が挿入され、当該一端部の一方の表面とこれに対向する支持部3の内表面との間に導電性の両面テープ31aが配置され、当該一端部の他方の表面とこれに対向する支持部3の内表面との間には導電性の別の両面テープ31bが配置されて、除電部5は一対の両面テープ31a,31bにより支持部3に貼着されて支持されている。
【0019】
また、図3において、除電毛5は、支持部3の長手方向に略直交する方向に延伸している。除電毛5は、支持部3の長手方向に沿って、例えば等間隔(ピッチd)で配列されている。
【0020】
除電毛5は、例えば、ステンレス繊維、カーボン繊維、又はサンダロン(登録商標)繊維等により形成することができる。繊維の線の太さは、例えば数μm〜10数μm程度とすることができる。また、ピッチdは、例えば0.数mm〜数mm程度とすることができる。なお、これらの数値は一例であってこれらに限定されるものではない。また、図3(a)では、除電毛5の長さ、詳細には、支持部3から引き出された部分のその長さをCで表している。Cの大きさについては後述する。
【0021】
図5は、袋体1aと除電ブラシ部2との貼着構造を示した断面図であり、開口部周縁15付近を拡大して示したものである。図5に示すように、袋体1aの開口部周縁15における外表面上には、テープ30a,30bと略同一形状の導電性の両面テープ35を介して、除電ブラシ部2の支持部3が貼着されている。具体的には、両面テープ35の一方の面が袋体1aの外表面に貼着され、両面テープ35の他方の面がテープ30bの表面と貼着されている。また、除電毛5は、開口部70の周方向と略直交する方向である開口方向に延伸している。支持部3を袋体1aの外側表面に貼着する構成は電気機器の収納又は取り出しの際に支持部3が電気機器と接触することがないという点で好ましいといえる。なお、支持部3を、袋体1aの内側表面に貼着することもできる。この場合、図5において、テープ30aの外表面と袋体1aの内表面とを両面テープで貼着するようにすればよい。
【0022】
図6は、収納袋1内に電気機器50を収納した状態を示した模式図である。なお、図2と同一の構成要素には同一の符号を付している。ここで、電気機器50について説明する。本実施の形態では、「電気機器」とは、例えば回路基板、電子部品、その他、静電気帯電により悪影響を受ける可能性のある全ての機器を意味する。図6では、電気機器50として例えば回路基板が収納袋1内に収納されている。
【0023】
次に、本実施の形態の動作について説明する。図7は、本実施の形態の動作を説明するための図である。電気機器50は、収納袋1に収納された状態で搬送等された場合、収納袋1の内表面との接触摩擦により静電気が帯電する。さらに、電気機器50を収納袋1から取り出すときに、収納袋1の内表面との接触摩擦により静電気が帯電する。しかし、本実施の形態では、図7に示すように、電気機器50の取り出し時に、電気機器50の表面に除電ブラシ部2の除電毛5の先端部が接触するので、静電気帯電は除電される。すなわち、電気機器50を収納袋1から取り出すときに、例えば電気機器50の一面が除電ブラシ部2の除電毛5と摺接し又は摺接するようにして取り出すことにより、電気機器50に帯電された電荷を消去することができる。これにより、従来のように静電気放電により電気機器50の絶縁破壊が生じることがなく、電気機器50の製品品質を維持することができる。
【0024】
なお、除電毛5の長さは、電気機器50を収納袋1から取り出すときに、除電毛5の先端部が電気機器50の表面に接触しやすい程度の長さに設定することが好ましい。このような観点から、除電毛5の長さC(図3参照)は、例えば5cm〜15cm程度とすることが好ましい。例えば、C=10cmとした場合、除電毛5の先端部が電気機器50の表面に一様に接触し、静電気の除電に好適である。ただし、除電毛5の長さCをこれ以外の大きさに設定してもよく、詳細には収納袋1及び被収納物の大きさに依存して好適値も変動する。
【0025】
また、図7に示すように、電気機器50を収納袋1から取り出すときに、電気機器50を収納袋1の開口方向に対して傾斜した方向に沿って取り出すようにすれば、除電毛5がより確実に電気機器50の表面に接触することとなり除電上より好ましい。
【0026】
さらにまた、電気機器50を収納袋1から取り出すときに、電気機器50の対向する両面を除電毛5に接触させるようにして取り出せば、電気機器5の両面から除電をすることができるのでより好ましい。
【0027】
なお、除電ブラシ部2による静電気の除電の原理はよく知られている。例えば、除電毛5が帯電体に接触すると、帯電体の電荷は除電毛5に向かって速やかに漏洩電流となって移動し減少する。また、除電毛5が帯電体と非接触の場合でも、その先端部が帯電体に十分に接近した場合、帯電体との間に不平等電界が形成され、その結果、除電毛5の近傍に気体の電離が生じ、そこに正負のイオン対が発生し、これらのイオン対のうち、帯電体と逆極性のイオンが帯電体に付着し、帯電体の電荷と中和する結果、静電気が除電される。
【0028】
以上説明したように、本実施の形態によれば、収納袋1の開口部周縁に除電ブラシ部2を設けるようにしたので、電気機器50を収納袋1から取り出すときに、除電毛5の先端部が電気機器50の表面に摺接することとなり、電気機器50に帯電した静電気を除去することができ、取り出し後に静電気放電をして電気機器50が破損する可能性を未然に防止し、機器の品質を維持することができる。
【0029】
また、本実施の形態では、除電ブラシ部2は収納袋1の開口部の全周にわたって設けられているので、電気機器50を収納袋1から取り出すときに、電気機器50の対向する両面を容易に除電毛5と接触させることができ、効果的に除電をすることができる。
【0030】
これに対し、特許文献1では、回路基板上に半田付実装された半導体部品がベルトコンベアで流されながら、除電ブラシと接触することで除電を行うようにしているが、この構成では、除電ブラシはベルトコンベアの上方に設置されているので、除電ブラシは回路基板の上面と接触することができても、下面と接触することができず、下面側を除電することはできなかった。
【0031】
実施の形態2.
図8は、本実施の形態に係る電気機器の収納袋の外観を示す図である。なお、図8では、図1と同一の構成要素には同一の符号を付している。図8に示すように、本実施の形態では、図1と比較して、支持部3に接地線21が接続されている点が異なる。具体的には、例えば一端部に鰐口クリップが設けられた接地線21をこの鰐口クリップを介して支持部3に接続するとともに、接地線21の図示しない他端部を接地する。こうすることで、除電の際に除電毛5に流れ込んだ漏洩電流を、導電性の支持部3及び接地線21を介して接地に逃がすことができ、除電効率が向上する。
【0032】
また、図9は、本実施の形態に係る電気機器の収納袋の外観を示す別の図である。なお、図9では、図8と同一の構成要素には同一の符号を付している。図9に示すように、本実施の形態では、図8と同様に支持部3に接地線22が接続されているが、その一端部は支持部3に予め固着されている。すなわち、図8では、接地線21は収納袋1から着脱可能であるのに対し、図9では、接地線22は収納袋1に予め固着されている。また、接地線22の図示しない他端部は接地されている。こうすることで、除電の際に除電毛5に流れ込んだ漏洩電流を、導電性の支持部3及び接地線22を介して接地に逃がすことができ、除電効率が向上する。また、接地線22は予め収納袋1に固着されているので、搬送先で接地線をその都度用意し接続する手間が省ける。
【0033】
次に、本実施の形態の収納袋1による除電効果を、実施の形態1及び従来の構成と比較して説明する。図10は、(a)従来の収納袋100から電気機器50を取り出す状況、(b)実施の形態1の収納袋1(図1)から電気機器50を取り出す状況、及び(c)本実施の形態の収納袋1(図8)から電気機器50を取り出す状況をそれぞれ示した図である。なお、電気機器50は例えばガラスエポキシ基板とした。
【0034】
図10(a)では、電気機器50を導電性の収納袋100から取り出し、電気機器50の表面のP1〜P6の各点における基板電位を測定した。収納袋100には、除電ブラシ部は設けられていない。基板電位の測定結果を図15の「従来」に示す。すなわち、P1の電位は1430(V)、P2の電位は1220(V)、P3の電位は1620(V)、P4の電位は1550(V)、P5の電位は980(V)、P6の電位は850(V)となった。このように収納袋100から取り出した電気機器50の表面電位が大きいこと、すなわち、収納袋100の内表面との接触摩擦により電気機器50に静電気が帯電することは従来認識されていなかった。
【0035】
図10(b)では、電気機器50を実施の形態1の収納袋1(図1)から取り出し、電気機器50の表面のP1〜P6の各点における基板電位を測定した。収納袋1には、除電ブラシ部2が設けられている。基板電位の測定結果を図15の「除電ブラシ付」に示す。すなわち、P1の電位は78(V)、P2の電位は50(V)、P3の電位は68(V)、P4の電位は55(V)、P5の電位は92(V)、P6の電位は95(V)となり、「従来」と比較して、基板電位が大幅に低下しており、除電ブラシ部2による除電効果が顕著であることがわかる。
【0036】
図10(c)では、電気機器50を本実施の形態の収納袋1(図8)から取り出し、電気機器50の表面のP1〜P6の各点における基板電位を測定した。収納袋1には、除電ブラシ部2が設けられ、かつ、接地線21が接続されている。基板電位の測定結果を図15の「接地除電ブラシ付」に示す。すなわち、P1の電位は25(V)、P2の電位は17(V)、P3の電位は12(V)、P4の電位は7(V)、P5の電位は32(V)、P6の電位は45(V)となり、「従来」と比較して基板電位が大幅に低下し、かつ、「除電ブラシ付」と比較してさらに基板電位が低下していることがわかる。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態によれば、接地線21又は22を支持部3に接続し、除電ブラシ部2を接地するようにしたので、電気機器50を収納袋1から取り出すときに、実施の形態1よりもさらに効果的に除電をすることができる。なお、本実施の形態のその他の効果は実施の形態1と同様である。
【0038】
実施の形態3.
図11は、本実施の形態に係る電気機器の収納袋の外観を示す図である。なお、図11では、図1と同一の構成要素には同一の符号を付している。図11に示すように、本実施の形態の収納袋1は、実施の形態1の構成に加えて、袋体1aの内側に除電ブラシ部42を備えている。すなわち、本実施の形態では、実施の形態1と同様に袋体1aの開口部周縁に除電ブラシ部2が設けられるとともに、袋体1aの内側にもう一つの除電ブラシ部42が設けられている。
【0039】
除電ブラシ部42は、袋体1aの内周に沿って袋体1aに貼着されたテープ状(あるいは帯状)でかつ導電性の支持部43と、この支持部43により支持され、略開口方向に沿って延伸するとともに、内周方向に配列された多数本の除電毛45(除電毛群)とを備えて構成される。除電ブラシ部42は、支持部43の外周面が袋体1aの内周面に例えば両面テープ等により貼着されている。除電毛45は、一端部が支持部43により支持され、他端部が袋体1aの開口部70に向かって延伸している。除電毛45は、導電性及び可撓性を備えた導電性繊維から成る。除電ブラシ部42は、除電ブラシ部2と一定の距離を隔てて例えば互いに平行に設けられている。除電ブラシ部42は、除電ブラシ部2と同様の構成を有し、その詳細は実施の形態1で図3〜図5を用いて説明した通りである。
【0040】
除電ブラシ部42を袋体1aの内側に設けた場合のその作用効果は次の通りである。収納袋1内に電気機器を収納し搬送等すると、電気機器の表面と収納袋1の内表面との接触摩擦により電気機器は静電気を帯びるが、収納袋1の内側に除電ブラシ部42が設けられていることから、その除電毛45と電気機器とが接触することにより、静電気が電気機器に蓄積される状況を抑制することができる。さらに、電気機器を収納袋1から取り出すときに、電気機器と収納袋1の内表面との接触摩擦により電気機器に静電気が発生するが、この静電気は開口部周縁に設けられた除電ブラシ部2と袋体1aの内側に設けられた除電ブラシ部42の双方により除電されるので、除電効果は実施の形態1と比較してさらに向上する。なお、袋体1aの内側に複数個の除電ブラシ部42を設けることもできる。例えば、図11において、袋体1aの内側にて除電ブラシ部2と除電ブラシ部42との間にもう一つ別の除電ブラシ部を設けることもできる。
【0041】
図12は、本実施の形態に係る電気機器の収納袋の外観を示す別の図である。なお、図12では、図11と同一の構成要素には同一の符号を付している。図12では、図11の構成に加えて、除電ブラシ部2に接地線22が接続され、除電ブラシ部42に接地線23が接続されている。接地線22は例えば実施の形態2の図9で説明したものと同じである。接地線23についても同様である。接地線23は、一端部が支持部43に固着され、他端部を接地することができる。なお、除電ブラシ部42は袋体1aの内側に設けられているので、接地線23は袋体1aを貫通して袋体1aの外側に引き出されている。このように、接地線22,23を除電ブラシ部2,42にそれぞれ接続することにより、実施の形態2で説明したように、電気機器を収納袋1から取り出すときの除電効果をさらに向上させることができる。なお、除電ブラシ部42に接地線23を接続しない構成でもよい。
【0042】
実施の形態4.
図13は、本実施の形態における袋体1aと除電ブラシ部2との貼着構造を示した断面図である。図13は、実施の形態1における図5と対比すべき図である。なお、図13において、図5と同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0043】
図13に示すように、除電ブラシ部2の構造自体は図5と同様であるが、除電ブラシ部2は、その除電毛5が開口方向Pに対して傾斜し除電毛5の先端部が開口部70の中心側に向かうように、袋体1aの開口部周縁に貼着されている。具体的には、支持部3を構成するテープ30a,30bのうち袋体1a側のテープ30bと袋体1aとの間に、開口方向Pに対して傾斜した傾斜面を有する傾斜部36を例えば袋体1aの開口部周縁に設ける。ここで傾斜部36は例えば袋体1aと一体に形成することができる。そして、傾斜部36の傾斜面とテープ30bとの間を例えば接着剤等(図示せず)により接着することができる。なお、除電毛5が図示例のように傾斜する構造であれば、除電ブラシ部2の袋体1aへの貼着構造は図示例に限定されない。
【0044】
図13のように、除電毛5を開口部70の中心側に傾斜させることにより、収納袋1内から電気機器を取り出すときに、除電毛5の先端部が電気機器により接触しやすい構造となる。例えば電気機器として基板を収納袋1に収納し、この基板を収納袋1から取り出すときに、除電毛5の先端部は基板の両面に容易に接触して効果的に除電をすることができる。
【0045】
図14は、袋体1aと除電ブラシ部2との貼着構造を示した別の断面図である。図14に示すように、除電ブラシ部2は、開口方向Pに対して開口部70の中心側に湾曲した除電毛25を備えて構成される。すなわち、除電毛25の一端部は支持部3のテープ30a,30b間に挟着され、その他端部は開口方向Pに対して開口部70の中心方向に湾曲している。なお、除電ブラシ部2のその他の構成は図5と同様であり、袋体1aへの貼着構造も同様であるので、同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0046】
図14のように、除電毛25を開口部70の中心側に湾曲させることにより、収納袋1内から電気機器を取り出すときに、除電毛25の先端部が電気機器により接触しやすい構造となる。例えば電気機器として基板を収納袋1に収納し、この基板を収納袋1から取り出すときに、除電毛25の先端部は基板の両面に容易に接触して効果的に除電をすることができる。
【0047】
なお、本実施の形態のその他の構成、動作及び効果は実施の形態1と同様である。また、本実施の形態を実施の形態2、3と組み合わせることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、電気機器の取り出し時に静電気を除電することができる収納袋として有用である。
【符号の説明】
【0049】
1,100 収納袋
1a 袋体
2,42 除電ブラシ部
3,43 支持部
5,45 除電毛
15 開口部周縁
21,22,23 接地線
30a,30b テープ
31a,31b,35 両面テープ
50 電気機器
70 開口部
【技術分野】
【0001】
この発明は、回路基板等の電気機器を収納する収納袋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路基板等の電気機器は、出荷又は搬送時等に収納袋に収納され破損等から保護されるのが一般的である。また、この種の収納袋は導電性の材質を用いて形成されており、電気機器を静電気帯電から防止する機能も兼ね備えている。
【0003】
特許文献1では、半導体部品を回路基板等に半田付実装する半田付装置において、半導体部品と接触して除電を行う除電ブラシを装備した構成が記載されている。具体的には、回路基板上に半田付実装された半導体部品がベルトコンベアで流されながら、除電ブラシと接触することで除電を行うようにしている。これにより、半導体部品の静電気破損を防止することができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平1−73970号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、製造工程で除電をされた回路基板であっても、出荷時には収納袋に収納されて搬送され、使用時には収納袋から取り出される。この際、回路基板は収納袋の内表面との接触摩擦により静電気を帯びる可能性があり、この静電気帯電により回路基板が破損する可能性がある。
【0006】
実際、従来の収納袋に収納した回路基板を収納袋から取り出した後に、回路基板表面の電位を複数個所測定してみたところ、いずれも例えば〜1000(V)程度の高い電位が検出された。機器取り出し時におけるこのような静電気帯電については、従来認識がされておらず、したがってその対策もされていなかった。
【0007】
以上のように、従来の電気機器の収納袋は、袋自体の静電気帯電は防止可能であるものの、電気機器を収納袋から取り出すときに、電気機器が帯電してしまうという問題点があった。特に、電気機器に絶縁体が使用されている場合には、接触摩擦により高帯電が生じやすい。
【0008】
この発明は、上記に鑑みてなされたもので、電気機器の取り出し時に静電気の除電をして機器の破損を未然に防止することが可能な電気機器の収納袋を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、電気機器の収納に用いられる収納袋であって、一端に開口部が形成され、この開口部を介して前記電気機器が収納可能な導電性の袋体と、この袋体の開口部周縁に沿って貼着されたテープ状でかつ導電性の支持部、及びこの支持部により支持され前記開口部の周方向に配列された可撓性でかつ導電性の多数本の除電毛を有し、前記電気機器が前記袋体内に収納された状態から前記袋体外へ取り出されるときに、前記除電毛の先端部が前記電気機器の表面に摺接して静電気の除電をすることが可能な除電ブラシ部と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、電気機器の取り出し時に静電気の除電をして機器の破損を未然に防止することが可能な電気機器の収納袋を提供することができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、実施の形態1に係る電気機器の収納袋の外観を示す図である。
【図2】図2は、開口部を開いた状態での収納袋の外観を示した模式図である。
【図3】図3は、袋体に貼着する前の除電ブラシ部の構成を示した図である。
【図4】図4は、除電ブラシ部の断面構成の別の一例を示す図である。
【図5】図5は、袋体と除電ブラシ部との貼着構造を示した断面図である。
【図6】図6は、収納袋内に電気機器を収納した状態を示した模式図である。
【図7】図7は、実施の形態1の動作を説明するための図である。
【図8】図8は、実施の形態2に係る電気機器の収納袋の外観を示す図である。
【図9】図9は、実施の形態2に係る電気機器の収納袋の外観を示す別の図である。
【図10】図10は、収納袋から電気機器を取り出す状況を示した図である。
【図11】図11は、実施の形態3に係る電気機器の収納袋の外観を示す図である。
【図12】図12は、実施の形態3に係る電気機器の収納袋の外観を示す別の図である。
【図13】図13は、実施の形態4において、袋体と除電ブラシ部との貼着構造を示した断面図である。
【図14】図14は、実施の形態4において、袋体と除電ブラシ部との貼着構造を示した別の断面図である。
【図15】図15は、基板取り出し後の基板電位の測定結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る電気機器の収納袋の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0013】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態に係る電気機器の収納袋の外観を示す図である。図1に示すように、本実施の形態の収納袋1は、電気機器を収納可能な袋体1aと、この袋体1aの開口部周縁に沿って設けられた除電ブラシ部2とを備えて構成される。袋体1aは被収納物である電気機器を内部に含まない状態では平面視で例えば矩形形状である。
【0014】
図2は、収納袋1の開口部を開いた状態で収納袋1の外観を示した模式図である。図2に示すように、収納袋1は、一端に開口部が形成された袋状の袋体1aを備え、前述のように、その開口部周縁15に沿って除電ブラシ部2が設けられている。
【0015】
袋体1aは、柔軟性と導電性を有する。すなわち、袋体1aは、電気機器を保護収納するための柔軟性を有するとともに、静電気帯電を防止するために導電性材料を用いて形成されている。袋体1aとしては、例えば、合成樹脂製の袋体の表面に金属又はカーボン等の導電性薄膜を被覆したもの、導電性材料を塗布したもの、又は合成樹脂に導電性物質を練り込んだもの等が知られている。
【0016】
除電ブラシ部2は、開口部周縁15に沿って袋体1aに貼着されたテープ状(あるいは帯状)でかつ導電性の支持部3と、この支持部3により支持され、略開口方向に沿って延伸するとともに、開口部の周方向に配列された多数本の除電毛5(除電毛群)とを備えて構成される。すなわち、除電毛5は、一端部が支持部3により支持されて袋体1aの開口部周縁15に装着されて、袋体1aの内側から外側に向かって開口部の略開口方向に延伸するとともに、開口部の周方向に配列されブラシ状に構成されている。除電毛5の先端部は、電気機器の取り出し方向に向いている。また、除電毛5は、導電性及び可撓性を備えた導電性繊維から成る。
【0017】
図3は、袋体1aに貼着する前の除電ブラシ部2の構成を示した図であり、(a)は平面図、(b)は(a)におけるA−A断面図である。図3に示すように、支持部3は、例えば一定の幅で長さがLの一対の導電性のテープ30a,30bを例えば接着剤等により貼り合わせて構成され、除電毛5の一端部はテープ30a,30b間にて粘着挟持されている。導電性のテープ30a,30bは、それぞれ例えばアルミニウム製のテープから成る。支持部3の長さLは、袋体1aの開口部の周長で決まる。テープ30a,30bの厚さは、例えば0.数mm程度とすることができ、袋体1aの開口部周縁に貼着しやすいように柔軟性を備えた厚さとすることが好ましい。
【0018】
なお、図3(b)では、除電毛5の一端部を一対の導電性のテープ30a,30b間で挟持するようにして支持しているが、これに限定されず、一般にその端部を支持する構成であればよい。例えば図4では、このような支持構造の別の一例を示している。すなわち、図4は、除電ブラシ部2の断面構成の別の一例であり、図3(b)に対応する図である。図4に示すように、支持部3は、例えば一定の幅で長さがLの一枚の導電性のテープを断面略U字状に折り曲げて成り、このU字状の開口に除電毛5の一端部が挿入され、当該一端部の一方の表面とこれに対向する支持部3の内表面との間に導電性の両面テープ31aが配置され、当該一端部の他方の表面とこれに対向する支持部3の内表面との間には導電性の別の両面テープ31bが配置されて、除電部5は一対の両面テープ31a,31bにより支持部3に貼着されて支持されている。
【0019】
また、図3において、除電毛5は、支持部3の長手方向に略直交する方向に延伸している。除電毛5は、支持部3の長手方向に沿って、例えば等間隔(ピッチd)で配列されている。
【0020】
除電毛5は、例えば、ステンレス繊維、カーボン繊維、又はサンダロン(登録商標)繊維等により形成することができる。繊維の線の太さは、例えば数μm〜10数μm程度とすることができる。また、ピッチdは、例えば0.数mm〜数mm程度とすることができる。なお、これらの数値は一例であってこれらに限定されるものではない。また、図3(a)では、除電毛5の長さ、詳細には、支持部3から引き出された部分のその長さをCで表している。Cの大きさについては後述する。
【0021】
図5は、袋体1aと除電ブラシ部2との貼着構造を示した断面図であり、開口部周縁15付近を拡大して示したものである。図5に示すように、袋体1aの開口部周縁15における外表面上には、テープ30a,30bと略同一形状の導電性の両面テープ35を介して、除電ブラシ部2の支持部3が貼着されている。具体的には、両面テープ35の一方の面が袋体1aの外表面に貼着され、両面テープ35の他方の面がテープ30bの表面と貼着されている。また、除電毛5は、開口部70の周方向と略直交する方向である開口方向に延伸している。支持部3を袋体1aの外側表面に貼着する構成は電気機器の収納又は取り出しの際に支持部3が電気機器と接触することがないという点で好ましいといえる。なお、支持部3を、袋体1aの内側表面に貼着することもできる。この場合、図5において、テープ30aの外表面と袋体1aの内表面とを両面テープで貼着するようにすればよい。
【0022】
図6は、収納袋1内に電気機器50を収納した状態を示した模式図である。なお、図2と同一の構成要素には同一の符号を付している。ここで、電気機器50について説明する。本実施の形態では、「電気機器」とは、例えば回路基板、電子部品、その他、静電気帯電により悪影響を受ける可能性のある全ての機器を意味する。図6では、電気機器50として例えば回路基板が収納袋1内に収納されている。
【0023】
次に、本実施の形態の動作について説明する。図7は、本実施の形態の動作を説明するための図である。電気機器50は、収納袋1に収納された状態で搬送等された場合、収納袋1の内表面との接触摩擦により静電気が帯電する。さらに、電気機器50を収納袋1から取り出すときに、収納袋1の内表面との接触摩擦により静電気が帯電する。しかし、本実施の形態では、図7に示すように、電気機器50の取り出し時に、電気機器50の表面に除電ブラシ部2の除電毛5の先端部が接触するので、静電気帯電は除電される。すなわち、電気機器50を収納袋1から取り出すときに、例えば電気機器50の一面が除電ブラシ部2の除電毛5と摺接し又は摺接するようにして取り出すことにより、電気機器50に帯電された電荷を消去することができる。これにより、従来のように静電気放電により電気機器50の絶縁破壊が生じることがなく、電気機器50の製品品質を維持することができる。
【0024】
なお、除電毛5の長さは、電気機器50を収納袋1から取り出すときに、除電毛5の先端部が電気機器50の表面に接触しやすい程度の長さに設定することが好ましい。このような観点から、除電毛5の長さC(図3参照)は、例えば5cm〜15cm程度とすることが好ましい。例えば、C=10cmとした場合、除電毛5の先端部が電気機器50の表面に一様に接触し、静電気の除電に好適である。ただし、除電毛5の長さCをこれ以外の大きさに設定してもよく、詳細には収納袋1及び被収納物の大きさに依存して好適値も変動する。
【0025】
また、図7に示すように、電気機器50を収納袋1から取り出すときに、電気機器50を収納袋1の開口方向に対して傾斜した方向に沿って取り出すようにすれば、除電毛5がより確実に電気機器50の表面に接触することとなり除電上より好ましい。
【0026】
さらにまた、電気機器50を収納袋1から取り出すときに、電気機器50の対向する両面を除電毛5に接触させるようにして取り出せば、電気機器5の両面から除電をすることができるのでより好ましい。
【0027】
なお、除電ブラシ部2による静電気の除電の原理はよく知られている。例えば、除電毛5が帯電体に接触すると、帯電体の電荷は除電毛5に向かって速やかに漏洩電流となって移動し減少する。また、除電毛5が帯電体と非接触の場合でも、その先端部が帯電体に十分に接近した場合、帯電体との間に不平等電界が形成され、その結果、除電毛5の近傍に気体の電離が生じ、そこに正負のイオン対が発生し、これらのイオン対のうち、帯電体と逆極性のイオンが帯電体に付着し、帯電体の電荷と中和する結果、静電気が除電される。
【0028】
以上説明したように、本実施の形態によれば、収納袋1の開口部周縁に除電ブラシ部2を設けるようにしたので、電気機器50を収納袋1から取り出すときに、除電毛5の先端部が電気機器50の表面に摺接することとなり、電気機器50に帯電した静電気を除去することができ、取り出し後に静電気放電をして電気機器50が破損する可能性を未然に防止し、機器の品質を維持することができる。
【0029】
また、本実施の形態では、除電ブラシ部2は収納袋1の開口部の全周にわたって設けられているので、電気機器50を収納袋1から取り出すときに、電気機器50の対向する両面を容易に除電毛5と接触させることができ、効果的に除電をすることができる。
【0030】
これに対し、特許文献1では、回路基板上に半田付実装された半導体部品がベルトコンベアで流されながら、除電ブラシと接触することで除電を行うようにしているが、この構成では、除電ブラシはベルトコンベアの上方に設置されているので、除電ブラシは回路基板の上面と接触することができても、下面と接触することができず、下面側を除電することはできなかった。
【0031】
実施の形態2.
図8は、本実施の形態に係る電気機器の収納袋の外観を示す図である。なお、図8では、図1と同一の構成要素には同一の符号を付している。図8に示すように、本実施の形態では、図1と比較して、支持部3に接地線21が接続されている点が異なる。具体的には、例えば一端部に鰐口クリップが設けられた接地線21をこの鰐口クリップを介して支持部3に接続するとともに、接地線21の図示しない他端部を接地する。こうすることで、除電の際に除電毛5に流れ込んだ漏洩電流を、導電性の支持部3及び接地線21を介して接地に逃がすことができ、除電効率が向上する。
【0032】
また、図9は、本実施の形態に係る電気機器の収納袋の外観を示す別の図である。なお、図9では、図8と同一の構成要素には同一の符号を付している。図9に示すように、本実施の形態では、図8と同様に支持部3に接地線22が接続されているが、その一端部は支持部3に予め固着されている。すなわち、図8では、接地線21は収納袋1から着脱可能であるのに対し、図9では、接地線22は収納袋1に予め固着されている。また、接地線22の図示しない他端部は接地されている。こうすることで、除電の際に除電毛5に流れ込んだ漏洩電流を、導電性の支持部3及び接地線22を介して接地に逃がすことができ、除電効率が向上する。また、接地線22は予め収納袋1に固着されているので、搬送先で接地線をその都度用意し接続する手間が省ける。
【0033】
次に、本実施の形態の収納袋1による除電効果を、実施の形態1及び従来の構成と比較して説明する。図10は、(a)従来の収納袋100から電気機器50を取り出す状況、(b)実施の形態1の収納袋1(図1)から電気機器50を取り出す状況、及び(c)本実施の形態の収納袋1(図8)から電気機器50を取り出す状況をそれぞれ示した図である。なお、電気機器50は例えばガラスエポキシ基板とした。
【0034】
図10(a)では、電気機器50を導電性の収納袋100から取り出し、電気機器50の表面のP1〜P6の各点における基板電位を測定した。収納袋100には、除電ブラシ部は設けられていない。基板電位の測定結果を図15の「従来」に示す。すなわち、P1の電位は1430(V)、P2の電位は1220(V)、P3の電位は1620(V)、P4の電位は1550(V)、P5の電位は980(V)、P6の電位は850(V)となった。このように収納袋100から取り出した電気機器50の表面電位が大きいこと、すなわち、収納袋100の内表面との接触摩擦により電気機器50に静電気が帯電することは従来認識されていなかった。
【0035】
図10(b)では、電気機器50を実施の形態1の収納袋1(図1)から取り出し、電気機器50の表面のP1〜P6の各点における基板電位を測定した。収納袋1には、除電ブラシ部2が設けられている。基板電位の測定結果を図15の「除電ブラシ付」に示す。すなわち、P1の電位は78(V)、P2の電位は50(V)、P3の電位は68(V)、P4の電位は55(V)、P5の電位は92(V)、P6の電位は95(V)となり、「従来」と比較して、基板電位が大幅に低下しており、除電ブラシ部2による除電効果が顕著であることがわかる。
【0036】
図10(c)では、電気機器50を本実施の形態の収納袋1(図8)から取り出し、電気機器50の表面のP1〜P6の各点における基板電位を測定した。収納袋1には、除電ブラシ部2が設けられ、かつ、接地線21が接続されている。基板電位の測定結果を図15の「接地除電ブラシ付」に示す。すなわち、P1の電位は25(V)、P2の電位は17(V)、P3の電位は12(V)、P4の電位は7(V)、P5の電位は32(V)、P6の電位は45(V)となり、「従来」と比較して基板電位が大幅に低下し、かつ、「除電ブラシ付」と比較してさらに基板電位が低下していることがわかる。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態によれば、接地線21又は22を支持部3に接続し、除電ブラシ部2を接地するようにしたので、電気機器50を収納袋1から取り出すときに、実施の形態1よりもさらに効果的に除電をすることができる。なお、本実施の形態のその他の効果は実施の形態1と同様である。
【0038】
実施の形態3.
図11は、本実施の形態に係る電気機器の収納袋の外観を示す図である。なお、図11では、図1と同一の構成要素には同一の符号を付している。図11に示すように、本実施の形態の収納袋1は、実施の形態1の構成に加えて、袋体1aの内側に除電ブラシ部42を備えている。すなわち、本実施の形態では、実施の形態1と同様に袋体1aの開口部周縁に除電ブラシ部2が設けられるとともに、袋体1aの内側にもう一つの除電ブラシ部42が設けられている。
【0039】
除電ブラシ部42は、袋体1aの内周に沿って袋体1aに貼着されたテープ状(あるいは帯状)でかつ導電性の支持部43と、この支持部43により支持され、略開口方向に沿って延伸するとともに、内周方向に配列された多数本の除電毛45(除電毛群)とを備えて構成される。除電ブラシ部42は、支持部43の外周面が袋体1aの内周面に例えば両面テープ等により貼着されている。除電毛45は、一端部が支持部43により支持され、他端部が袋体1aの開口部70に向かって延伸している。除電毛45は、導電性及び可撓性を備えた導電性繊維から成る。除電ブラシ部42は、除電ブラシ部2と一定の距離を隔てて例えば互いに平行に設けられている。除電ブラシ部42は、除電ブラシ部2と同様の構成を有し、その詳細は実施の形態1で図3〜図5を用いて説明した通りである。
【0040】
除電ブラシ部42を袋体1aの内側に設けた場合のその作用効果は次の通りである。収納袋1内に電気機器を収納し搬送等すると、電気機器の表面と収納袋1の内表面との接触摩擦により電気機器は静電気を帯びるが、収納袋1の内側に除電ブラシ部42が設けられていることから、その除電毛45と電気機器とが接触することにより、静電気が電気機器に蓄積される状況を抑制することができる。さらに、電気機器を収納袋1から取り出すときに、電気機器と収納袋1の内表面との接触摩擦により電気機器に静電気が発生するが、この静電気は開口部周縁に設けられた除電ブラシ部2と袋体1aの内側に設けられた除電ブラシ部42の双方により除電されるので、除電効果は実施の形態1と比較してさらに向上する。なお、袋体1aの内側に複数個の除電ブラシ部42を設けることもできる。例えば、図11において、袋体1aの内側にて除電ブラシ部2と除電ブラシ部42との間にもう一つ別の除電ブラシ部を設けることもできる。
【0041】
図12は、本実施の形態に係る電気機器の収納袋の外観を示す別の図である。なお、図12では、図11と同一の構成要素には同一の符号を付している。図12では、図11の構成に加えて、除電ブラシ部2に接地線22が接続され、除電ブラシ部42に接地線23が接続されている。接地線22は例えば実施の形態2の図9で説明したものと同じである。接地線23についても同様である。接地線23は、一端部が支持部43に固着され、他端部を接地することができる。なお、除電ブラシ部42は袋体1aの内側に設けられているので、接地線23は袋体1aを貫通して袋体1aの外側に引き出されている。このように、接地線22,23を除電ブラシ部2,42にそれぞれ接続することにより、実施の形態2で説明したように、電気機器を収納袋1から取り出すときの除電効果をさらに向上させることができる。なお、除電ブラシ部42に接地線23を接続しない構成でもよい。
【0042】
実施の形態4.
図13は、本実施の形態における袋体1aと除電ブラシ部2との貼着構造を示した断面図である。図13は、実施の形態1における図5と対比すべき図である。なお、図13において、図5と同一の構成要素には同一の符号を付している。
【0043】
図13に示すように、除電ブラシ部2の構造自体は図5と同様であるが、除電ブラシ部2は、その除電毛5が開口方向Pに対して傾斜し除電毛5の先端部が開口部70の中心側に向かうように、袋体1aの開口部周縁に貼着されている。具体的には、支持部3を構成するテープ30a,30bのうち袋体1a側のテープ30bと袋体1aとの間に、開口方向Pに対して傾斜した傾斜面を有する傾斜部36を例えば袋体1aの開口部周縁に設ける。ここで傾斜部36は例えば袋体1aと一体に形成することができる。そして、傾斜部36の傾斜面とテープ30bとの間を例えば接着剤等(図示せず)により接着することができる。なお、除電毛5が図示例のように傾斜する構造であれば、除電ブラシ部2の袋体1aへの貼着構造は図示例に限定されない。
【0044】
図13のように、除電毛5を開口部70の中心側に傾斜させることにより、収納袋1内から電気機器を取り出すときに、除電毛5の先端部が電気機器により接触しやすい構造となる。例えば電気機器として基板を収納袋1に収納し、この基板を収納袋1から取り出すときに、除電毛5の先端部は基板の両面に容易に接触して効果的に除電をすることができる。
【0045】
図14は、袋体1aと除電ブラシ部2との貼着構造を示した別の断面図である。図14に示すように、除電ブラシ部2は、開口方向Pに対して開口部70の中心側に湾曲した除電毛25を備えて構成される。すなわち、除電毛25の一端部は支持部3のテープ30a,30b間に挟着され、その他端部は開口方向Pに対して開口部70の中心方向に湾曲している。なお、除電ブラシ部2のその他の構成は図5と同様であり、袋体1aへの貼着構造も同様であるので、同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0046】
図14のように、除電毛25を開口部70の中心側に湾曲させることにより、収納袋1内から電気機器を取り出すときに、除電毛25の先端部が電気機器により接触しやすい構造となる。例えば電気機器として基板を収納袋1に収納し、この基板を収納袋1から取り出すときに、除電毛25の先端部は基板の両面に容易に接触して効果的に除電をすることができる。
【0047】
なお、本実施の形態のその他の構成、動作及び効果は実施の形態1と同様である。また、本実施の形態を実施の形態2、3と組み合わせることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、電気機器の取り出し時に静電気を除電することができる収納袋として有用である。
【符号の説明】
【0049】
1,100 収納袋
1a 袋体
2,42 除電ブラシ部
3,43 支持部
5,45 除電毛
15 開口部周縁
21,22,23 接地線
30a,30b テープ
31a,31b,35 両面テープ
50 電気機器
70 開口部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器の収納に用いられる収納袋であって、
一端に開口部が形成され、この開口部を介して前記電気機器が収納可能な導電性の袋体と、
この袋体の開口部周縁に沿って貼着されたテープ状でかつ導電性の支持部、及びこの支持部により支持され前記開口部の周方向に配列された可撓性でかつ導電性の多数本の除電毛を有し、前記電気機器が前記袋体内に収納された状態から前記袋体外へ取り出されるときに、前記除電毛の先端部が前記電気機器の表面に摺接して静電気の除電をすることが可能な除電ブラシ部と、
を備えることを特徴とする電気機器の収納袋。
【請求項2】
前記除電毛は、前記開口部の開口方向に沿って延伸し、その先端部が前記電気機器の取り出し方向に向いていることを特徴とする請求項1に記載の電気機器の収納袋。
【請求項3】
前記除電毛は、前記開口部の開口方向に対して傾斜し又は湾曲して、その先端部が前記開口部の中心側に向かっていることを特徴とする請求項1に記載の電気機器の収納袋。
【請求項4】
前記支持部は、前記袋体の外側表面に貼着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気機器の収納袋。
【請求項5】
前記支持部には接地線が接続され、前記除電ブラシ部は接地されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気機器の収納袋。
【請求項6】
前記袋体の内側には前記除電ブラシ部とは別の除電ブラシ部が設けられており、
前記別の除電ブラシ部は、前記袋体の内周に沿って貼着されたテープ状でかつ導電性の支持部と、この支持部により支持され前記開口部の開口方向に沿って延伸するとともに前記開口部の周方向に配列された可撓性でかつ導電性の多数本の除電毛とを有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気機器の収納袋。
【請求項1】
電気機器の収納に用いられる収納袋であって、
一端に開口部が形成され、この開口部を介して前記電気機器が収納可能な導電性の袋体と、
この袋体の開口部周縁に沿って貼着されたテープ状でかつ導電性の支持部、及びこの支持部により支持され前記開口部の周方向に配列された可撓性でかつ導電性の多数本の除電毛を有し、前記電気機器が前記袋体内に収納された状態から前記袋体外へ取り出されるときに、前記除電毛の先端部が前記電気機器の表面に摺接して静電気の除電をすることが可能な除電ブラシ部と、
を備えることを特徴とする電気機器の収納袋。
【請求項2】
前記除電毛は、前記開口部の開口方向に沿って延伸し、その先端部が前記電気機器の取り出し方向に向いていることを特徴とする請求項1に記載の電気機器の収納袋。
【請求項3】
前記除電毛は、前記開口部の開口方向に対して傾斜し又は湾曲して、その先端部が前記開口部の中心側に向かっていることを特徴とする請求項1に記載の電気機器の収納袋。
【請求項4】
前記支持部は、前記袋体の外側表面に貼着されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電気機器の収納袋。
【請求項5】
前記支持部には接地線が接続され、前記除電ブラシ部は接地されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の電気機器の収納袋。
【請求項6】
前記袋体の内側には前記除電ブラシ部とは別の除電ブラシ部が設けられており、
前記別の除電ブラシ部は、前記袋体の内周に沿って貼着されたテープ状でかつ導電性の支持部と、この支持部により支持され前記開口部の開口方向に沿って延伸するとともに前記開口部の周方向に配列された可撓性でかつ導電性の多数本の除電毛とを有していることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の電気機器の収納袋。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2013−20908(P2013−20908A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155652(P2011−155652)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
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