説明

電気機器故障に対する補償システムと補償プログラム

【課題】 顧客の電気機器の故障原因が電力供給に異常が生じたためであるおそれがある場合に、その故障を合理的に補償する。
【解決手段】 ホストサーバ2に、各顧客の所在地などを記憶する顧客データベース21と、電力供給に影響を与えた事象の内容、発生日時、被影響地域などを記憶する供給異常データベース22と、クライアント3から送信された電気機器故障の内容、発生日時と顧客データベース21および供給異常データベース22のデータとに基づいてその故障が補償の対象となるか否かを判定する補償判定プログラム23と、補償対象であると判定された場合に故障内容と事象内容と当該顧客のポイント数とに基づいて補償金額を算出する補償金額算出プログラム24とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、停電や落雷による瞬時電圧上昇など、電力供給に異常が生じたことが、顧客(需要家)の電気機器(電化製品)の故障原因であるおそれがある場合に、その故障を補償する電気機器故障に対する補償システムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気機器などが故障した場合、保証期間内であればメーカや販売店などによる無償修理などを受けられるが、保証期間外であれば顧客の負担(有償)によって修理などを行わなければならないのが、一般的な保証システムである。また、故障した機器、装置の修理に要する顧客の費用負担などを軽減するための管理システムも知られている(例えば、特許文献1参照。)。この管理システムは、予め各顧客からメンテナンス料(保険金)を徴収し、ソーラ発電装置が故障した場合に、修理費用や故障期間中に発電したであろう発電量に応じた料金を、徴収したメンテナンス料から故障した装置の顧客に補償するものである。
【0003】
一方、停電などによる機器への障害や顧客の業務への障害などを未然に防止するために、停電などに関する情報を顧客に迅速に提供する停電情報管理システムが知られている(例えば、特許文献2参照。)。この停電情報管理システムは、配電自動化システムからの区間停電情報を停電情報管理設備が受信し、この区間停電情報に基づいてインターネット上に停電範囲などを表示するものである。
【特許文献1】特開2002−288280号公報
【特許文献2】特開平7−227042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、停電や落雷による瞬時電圧上昇など、電力供給に異常が生じることによって顧客の電気機器が故障するおそれがあり、特にメーカなどによる保証期間外で故障が発生した場合に、誰がその補償をすべきかについて、問題となる場合がある。例えば、顧客は、電気機器の故障は落雷によって供給電圧が急激に上昇などしたためであり、故障の補償は電力供給者側(電力会社)がすべきであると主張する場合がある。一方、電力供給者側にとっては、その故障が電力供給者側の設備の瑕疵などによるものであることが確認されない限り、補償することが難しいのが実情である。また、電気機器の故障の原因を判明させること、すなわち、故障が電力供給異常によるものであるか否かを判明させることは実際上極めて困難であり、誰がどの程度補償をすべきかについて、合理的な解決策がなかった。
【0005】
これに対し、上記特許文献1に記載されているような管理システムでは、故障した装置の修理に要する顧客の費用負担などを軽減することができるものの、電力供給に異常が生じたために電気機器が故障したおそれがある場合に、その故障の補償を合理的に解決できるものではない。同様に、上記特許文献2に記載されているような停電情報管理システムにおいても、停電などによる機器への障害などを未然に防止することができるものの、電気機器が故障した場合に、その故障の補償を合理的に解決できるものではない。
【0006】
そこで本発明は、顧客の電気機器の故障原因が電力供給に異常が生じたためであるおそれがある場合に、その故障を合理的に補償することが可能な電気機器故障に対する補償システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために請求項1に記載の発明は、顧客の電気機器の故障原因が電力供給に異常が生じたためであるおそれがある場合に、その故障を補償する電気機器故障に対する補償システムであって、顧客の情報端末であるクライアントとホストサーバとが通信可能に接続され、ホストサーバに、各顧客の所在地などを記憶する顧客データベースと、電力供給に影響を与えた事象の内容、発生日時、被影響地域などを記憶する供給異常データベースと、クライアントから送信された電気機器故障の内容、発生日時と顧客データベースおよび供給異常データベースのデータとに基づいて電気機器故障が補償の対象となるか否かを判定する補償判定手段と、この補償判定手段によって補償対象であると判定された場合に電気機器故障の内容と電力供給に影響を与えた事象の内容とに基づいて補償金額を算出する補償金額算出手段とを備えたことを特徴としている。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の電気機器故障に対する補償システムにおいて、各顧客に電力使用量に応じてポイントを付与するポイント付与手段をホストサーバに備え、顧客データベースに各顧客のポイント数を記憶し、補償金額算出手段が当該顧客のポイント数にも基づいて補償金額を算出することを特徴としている。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の電気機器故障に対する補償システムにおいて、ホストサーバに、補償金が顧客に支払われた場合に支払われた補償金額に応じたポイント数を当該顧客のポイントから減算するポイント減算手段を備えたことを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1から請求項3のいずれかに記載の電気機器故障に対する補償システムにおいて、補償金額算出手段による補償金額をクライアントに送信し、このクライアントからの承諾メッセージを受信した場合に補償金額算出手段による補償金額を確定補償金額とする補償金額確定手段を備えたことを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれかに記載の電気機器故障に対する補償システムにおいて、クライアントからの送信情報に基づいて、顧客データベースに当該顧客が補償を望むか否かを記憶し、補償を望む場合に補償判定手段による判定を行うことを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、顧客の電気機器の故障原因が電力供給に異常が生じたためであるおそれがある場合に、その故障を補償するための電気機器故障に対する補償プログラムであって、コンピュータを、顧客の情報端末であるクライアントと通信する通信手段と、各顧客の所在地などを記憶する顧客データベースと、電力供給に影響を与えた事象の内容、発生日時、被影響地域などを記憶する供給異常データベースと、クライアントから送信された電気機器故障の内容、発生日時と顧客データベースおよび供給異常データベースのデータとに基づいて電気機器故障が補償の対象となるか否かを判定する補償判定手段と、この補償判定手段によって補償対象であると判定された場合に電気機器故障の内容と電力供給に影響を与えた事象の内容とに基づいて補償金額を算出する補償金額算出手段として機能させることを特徴としている。
【0013】
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載の電気機器故障に対する補償プログラムであって、コンピュータを、各顧客に電力使用量に応じてポイントを付与するポイント付与手段と、顧客のポイント数にも基づいて補償金額を算出する補償金額算出手段として機能させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、クライアントからの電気機器故障の情報と顧客データベースおよび供給異常データベースのデータとに基づいて、当該故障が補償の対象となるか否かが判定されるため、合理的な判定が可能となる。例えば、クライアントからの故障発生日時とクライアント(顧客)の所在地とが、電力供給に影響を与えた事象の発生日時と被影響地域とに一致し、かつ、当該故障の内容と当該事象の内容とに因果関係が認められる場合に、当該故障を補償の対象とすることで、顧客と電力供給者側の双方にとって合理的な(納得可能な)判定となり得る。また、当該故障の内容と当該事象の内容とに基づいて補償金額が算出されるため、合理的な補償金額の算出が可能となる。例えば、当該故障の内容と当該事象の内容との因果関係の度合い(事象の故障への影響度)と、当該故障の内容(程度)とに基づいて補償金額を算出することで、顧客と電力供給者側の双方にとって合理的な(納得可能な)補償金額となり得る。そしてこれらの結果として、顧客の電気機器の故障原因が電力供給に異常が生じたためであるおそれがある場合に、その故障を合理的に補償することが可能となる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、顧客のポイント数(電力使用量)も考慮して補償金額が算出されるため、より合理的な補償金額を算出することが可能となる。例えば、当該顧客が保有するポイント数を金額に換算した額を最大補償金額とすることで、多くの(長期間)電力を使用している顧客に対しては補償が厚くなり、顧客と電力供給者側の双方にとってより合理的な補償金額となり得る。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、補償金が支払われた場合にその補償金額に応じたポイント数が当該顧客のポイントから減算されるため、顧客間の公平性、電力供給者側との均衡を図ることが可能となる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、クライアントからの承諾メッセージを受けて補償金額算出手段による補償金額が確定補償金額とされるため、顧客が納得できない金額が補償金額として確定されることがない。このため、顧客と電力供給者側の双方にとってより納得できる(合理的な)金額による補償が可能となる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、顧客が望む場合にのみ本補償システムによる補償を受け得ることとなり、顧客によるサービスの選択などが可能となる。例えば、顧客が他の補償システムによる補償を選択できるようにすることで、顧客にとってより納得できる補償を受け得ることとなる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、コンピュータが、通信手段、顧客データベース、供給異常データベース、補償判定手段および補償金額算出手段として機能されるため、本補償プログラムを保険会社のホストコンピュータなどに組み込むことで、電気機器の故障原因が電力供給に異常が生じたためであるおそれがある場合における、保険サービスなどを提供することが可能となる。例えば、本補償プログラムを保険会社のホストコンピュータに組み込み、電力供給者側(電力会社)が保険契約者、顧客が保険金受取人(被保険者)となることで、顧客と電力供給者側の双方にとって合理的な判定および補償金額(保険金額)に基づく保険サービスの提供が可能となる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、コンピュータが、ポイント付与手段と、顧客のポイント数にも基づいて補償金額を算出する補償金額算出手段として機能されるため、顧客と電力供給者側の双方にとってより合理的な補償金額(保険金額)による保険サービスの提供などが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を図示の実施形態に基づいて説明する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る電気機器故障に対する補償システム1の概略構成図である。この補償システム1は、電力会社(電力供給者側)に設置されているホストサーバ2と、顧客の情報端末であるクライアント3(パソコンなど)とが、インターネットNを介して通信可能に接続されている。
【0023】
ホストサーバ2は、各顧客に関する情報を記憶する顧客データベース21と、電力供給に影響を与えた事象に関する情報を記憶する供給異常データベース22とを備えている。また、電気機器の故障が補償の対象となるか否かを判定する補償判定プログラム23(補償判定手段)と、補償金額を算出する補償金額算出プログラム24(補償金額算出手段)と、算出された補償金額を確定させる補償金額確定プログラム25(補償金額確定手段)とを備えている。さらに、電力使用量に応じてポイントを付与し、支払われた補償金額に応じたポイント数を減算するポイント管理プログラム26(ポイント付与手段、ポイント減算手段)と、インターネット通信を行うための通信手段としての送受信部27とを備え、これらが中央演算処理装置28によって制御されている。また、図示されていないが、このホストサーバ2は、配電自動化設備(配電自動化システム)と通信可能に接続され、停電など電力供給に影響を与えた事象に関する情報を受信できるようになっている。さらに、検針データを収集し電力使用量などを管理する検針データコンピュータとも通信可能に接続され、各顧客の電力使用量などを受信できるようになっている。
【0024】
顧客データベース21は、図2に示すようなデータ構成となっており、契約番号211毎に、契約者名212、所在地213、電力使用量214、ポイント215、補償希望216、連絡先217および、その他218が記憶されている。そして、所在地213には、電力使用場所の住所が記憶され、電力使用量214には当該契約者(顧客)による電力使用量が記憶されている。また、ポイント215には現在保有されているポイント数が記憶され、補償希望216には、顧客が本補償システム1による補償を望むか否かが記憶されている。さらに、連絡先217には、顧客のクライアント3の電子メールアドレスや電話番号などが記憶されている。ところで、顧客が引越しした場合、契約番号211が変更され新たな顧客データが作成されるが、その際、引越前の契約番号211のポイント215が引越後の契約番号211のポイント215に記憶され、引越しをしてもポイントが失効せずに、継続(累積)されるようになっている。
【0025】
供給異常データベース22は、図3に示すようなデータ構成となっており、事象毎に事象ID221(識別番号)が付され、発生日時222、被影響地域223、事象内容224および、その他225が記憶されている。そして、発生日時222には、事象が発生した日時と復旧した日時とが記憶され、被影響地域223には、事象によって電力供給が影響された地域が記憶されている。また、事象内容224には、電力供給に影響を与えた事象の内容、すなわち、停電、落雷や瞬時電圧低下などの事象現象および、事象の程度(瞬時電圧低下値等)などが記憶されている。
【0026】
補償判定プログラム23は、クライアントから送信された電気機器の故障情報と顧客データベース21および供給異常データベース22のデータとに基づいて、その故障が補償の対象となるか否かを判定するプログラムであり、図4に示すフローチャートに基づいている。まず、当該顧客のデータ(情報)を顧客データベース21から取得し(ステップS1)、当該顧客が本補償システム1による補償を望むか否かを補償希望216のデータから判断する(ステップS2)。そして、補償を希望しない、すなわち、後述するサービス申し込みを行っていない場合には、補償外として処理を終了し、補償を希望する場合には、当該顧客のクライアント3から送信された故障情報を取得する(ステップS3)。次に、この故障情報の日時に該当する事象が存在するか否かを供給異常データベース22の発生日時222から検索(ステップ4)、判断し(ステップS5)、該当する事象が存在しない場合には、補償外として処理を終了する。一方、該当する事象が存在する場合には、該当する事象の中から、当該顧客の所在地213に影響を与えた事象が存在するか否かを被影響地域223から検索(ステップ6)、判断し(ステップS7)、該当する事象が存在しない場合には、補償外として処理を終了する。一方、該当する事象が存在する場合には、クライアント3から送信された故障内容と該当する事象の内容224とに因果関係があるか否かを判断する(ステップ8)。この判断は、例えば、電力供給に影響を与え得る事象毎にその事象によって起こり得る電気機器の故障例を記憶したデータシートを設け、該当する事象の故障例にクライアント3からの故障内容が含まれているか否かによって判断する。そして、因果関係がないと判断された場合には、補償外として処理を終了し、因果関係がある判断された場合には、補償対象として当該事象の事象ID221をメモリ(図示せず)の判定結果エリアに記憶する(ステップ9)ものである。なお、この補償判定プログラム23が起動される前には、メモリの判定結果エリアはクリア(NULL記憶)されている。
【0027】
補償金額算出プログラム24は、補償判定プログラム23によって補償対象であると判定された場合に、故障内容と該当する事象内容と当該顧客のポイント数とに基づいて補償金額を算出するプログラムであり、図5に示すフローチャートに基づいている。まず、クライアント3から送信された故障内容を取得する(ステップS11)とともに、補償判定プログラム23によって割り出された該当事象の内容をメモリの判定結果エリアに記憶された事象ID221の事象内容224から取得する(ステップS12)。次に、取得した故障内容と事象内容224とに基づいて、一次補償金額を算出する(ステップS13)。この算出は、例えば、故障した電気機器の種類、故障の程度と、故障内容と事象内容との因果関係の度合い(事象の故障への影響度)とに基づいて行う。すなわち、機器の種類と故障の程度とに基づいて算出される修理などに要する全額費用に、因果関係の度合い(30%、50%など)を乗じて、一次補償金額を算出する。次に、当該顧客のポイント数をポイント215から取得し(ステップS14)、このポイント数を金額に換算する(ステップS15)。この換算は、予め設定、記憶された換算率に基づいて行う。そして、一次補償金額と換算された金額とを比較し(ステップS16)、一次補償金額の方が換算金額よりも大きい場合には、換算金額を補償金額として(ステップS17)、メモリの補償金額エリアに記憶する(ステップS19)。一方、一次補償金額が換算金額以下である場合には、一次補償金額を補償金額とし(ステップS18)、メモリの補償金額エリアに記憶する(ステップS19)ものである。
【0028】
補償金額確定プログラム25は、補償金額算出プログラム24によって算出された補償金額をクライアント3に送信し、クライアント3からの承諾メッセージを受信した場合にその補償金額を確定補償金額とするプログラムである。具体的には、図6に示すフローチャートに基づく承諾要求プログラム251と、図7に示すフローチャートに基づく諾否受信プログラム252とから構成されている。
【0029】
承諾要求プログラム251では、まず、メモリの補償金額エリアに記憶された補償金額を取得し(ステップS21)、その補償金額に相当する(換算される)ポイント数を算出する(ステップS22)。次に、当該顧客のクライアント3の電子メールアドレスを連絡先217から取得し(ステップS23)、送信メッセージを作成する(ステップS24)。この送信メッセージは、予め記憶されたメッセージフォームに、顧客名(契約者名212)、補償金額および相当する(使用される)ポイント数などを入力する(書き込む)ことで作成される。そして、この送信メッセージをインターネットNを介してクライアント3に送信する(ステップS25)ものである。
【0030】
また、諾否受信プログラム252では、まず、諾否メッセージを送信した顧客のデータ(情報)を顧客データベース21から取得する(ステップS31)。次に、受信したメッセージが承諾か否かを判断し(ステップS32)、承諾しない場合には、当該顧客データと承諾しない旨を予め登録された管理クライアント(図示せず)に送信し(ステップS35)、非承諾の旨をメモリの諾否結果エリアに記憶する(ステップS36)。一方、承諾する場合には、算出された補償金額を確定補償金額として(ステップS33)、支払処理を行う(ステップS34)。この支払処理は、支払情報メッセージを作成して当該クライアント3に送信するともに、補償金の支払い管理などを行う支払管理コンピュータ(図示せず)への入力(登録)などを行うものである。そして、承諾の旨および確定補償金額をメモリの諾否結果エリアに記憶する(ステップS36)ものである。
【0031】
ポイント管理プログラム26は、顧客のポイントを加算、減算するものであり、具体的には、検針データコンピュータから送信された各顧客の電力使用量に応じたポイント数を算出し、当該顧客のポイント215に算出したポイント数を加算(付与)する。また、諾否受信プログラム252によってメモリの諾否結果エリアに承諾の旨と確定補償金額とが記憶された場合に、確定補償金額に応じたポイント数を算出し、当該顧客のポイント215から算出したポイント数を減算するものである。
【0032】
ところで、上記のように、顧客データベース21の補償希望216には、顧客が本補償システム1による補償を望むか否かが記憶されているが、この記憶は、図8に示すフローチャートに基づくサービス申込プログラムによって行われる。このプログラムは、例えば、クライアント3(顧客)が電力会社のWebサイト(ホームページ)にアクセスして、サービス申し込みの旨および、契約番号、契約者名、電力使用場所の住所などの申込情報を送信し、これをホストサーバ2が受信した際に起動されるものである。そして、まず、受信した申込情報を取得し(ステップS41)、受信した契約番号の需給契約が有るか否かを顧客データベース21から判断する(ステップS42)。次に、契約がない場合には、登録できない旨を当該クライアント3に送信し(ステップS46)、契約がある場合には、受信した契約者名と電力使用場所の住所とが、当該契約番号211の契約者名212と所在地213とに一致するか否かを判断する(ステップS43)。そして、一致しない場合には、登録できない旨を当該クライアント3に送信し(ステップS46)、一致する場合には、当該契約番号211の補償希望216に補償希望の旨を登録、記憶して(ステップS44)、登録受付の通知を当該クライアント3に送信する(ステップS46)ものである。
【0033】
次に、このような構成の電気機器故障に対する補償システム1の処理動作を図9に示すフローチャートに基づいて説明する。
【0034】
まず、停電や落雷による瞬時電圧上昇など、電力供給に異常が生じたために、顧客の電気機器が故障したと思われる場合、クライアント3(顧客)が電力会社のWebサイトにアクセスし、故障情報をホストサーバ2に送信する(ステップS51)。この故障情報には、補償希望の旨および、契約番号、契約者名、電気機器故障の内容(電気機器の種類、故障の程度など)、発生日時などが含まれている。ホストサーバ2がこの故障情報を受信すると(ステップS52)、中央演算処理装置28が上記の補償判定プログラム23を起動し(ステップS53)、その故障が補償の対象となるか否かを判定する(ステップS54)。そして、補償対象外である場合、すなわち、メモリの判定結果エリアがNULL(ゼロ)である場合、補償できない旨のメッセージをクライアント3に送信する(ステップS55)と、これを受信した(ステップS56)クライアント3の顧客は、電力会社にさらなる問い合わせなどを行うことができるものである。
【0035】
一方、補償対象である場合、引き続き上記の補償金額算出プログラム24を起動して補償金額を算出し(ステップS57)、さらに、上記の承諾要求プログラム251を起動して補償金額を含む送信メッセージをクライアント3に送信する(ステップS58)。続いて、このメッセージを受信した(ステップS59)クライアント3が、算出された補償金額を承諾するか否かの諾否メッセージをホストサーバ2に送信し(ステップS60)、ホストサーバ2がこれを受信すると、中央演算処理装置28が上記の諾否受信プログラム252を起動する(ステップS61)。そして、顧客が承諾しない場合には、上記のように、承諾しない旨が管理クライアントに送信されるため、管理クライアントの管理者(補償管理者など)は、当該顧客に連絡して承諾しない理由などを聞くなどの対応をとることができる。また、顧客が承諾する場合には、補償金額が確定して支払処理が行われる。最後に、上記のポイント管理プログラム26を起動し、メモリの諾否結果エリアに承諾の旨が記憶されている場合には、同エリアに記憶された確定補償金額に応じたポイント数を算出し、当該顧客のポイント215から算出したポイント数を減算する(ステップS62)ものである。
【0036】
以上のように、本補償システム1によれば、補償判定プログラム23において、クライアントからの故障情報とホストサーバ2が保有する情報(データ)とに基づいて、その故障が補償の対象となるか否かが判定されるため、合理的な判定が可能となる。すなわち、故障情報と電力供給に影響を与えた事象に関する情報とが一致し、かつ、故障内容と事象内容とに因果関係が認められる場合に、その故障を補償の対象とするため、顧客と電力会社の双方にとって納得可能な判定となり得る。つまり、顧客にとっては、故障原因が電力供給に異常が生じたためであるおそれがあるには補償が認められ、電力会社にとっては、そのようなおそれがない場合には補償をする必要がなくなる。
【0037】
また、補償金額算出プログラム24において、故障内容と事象内容と当該顧客のポイント数とに基づいて、補償金額が算出されるため、合理的な補償金額の算出が可能となる。すなわち、まず、故障した電気機器の種類、故障の程度と、故障内容と事象内容との因果関係の度合い(事象の故障への影響度)とに基づいて、一次補償金額が算出されるため、故障の内容や事象の故障への影響度などに見合った金額となり、顧客と電力会社の双方にとって納得可能なものとなり得る。さらに、顧客の保有するポイント数を金額に換算した額を最大補償金額としているため、より合理的な補償金額の算出が可能となる。すなわち、多くの(長期間)電力を使用している顧客に対しては補償が厚くなり、顧客と電力会社の双方にとってより合理的な補償金額となり得る。
【0038】
さらには、補償金額確定プログラム25(承諾要求プログラム251と諾否受信プログラム252)において、クライアント3から承諾メッセージを受信した場合に、算出した補償金額を確定補償金額とするため、顧客が納得できない金額が補償金額として確定されることがない。また、クライアント3から非承諾のメッセージを受信した場合には、その旨が管理クライアントに送信されるため、その管理者は当該顧客に対して適切かつ迅速な対応を採ることができる。この結果、顧客と電力会社の双方にとってより納得できる合理的な金額による補償が可能となる。そしてこれらの結果として、顧客の電気機器の故障原因が電力供給に異常が生じたためであるおそれがある場合に、その故障を合理的に補償することが可能となる。
【0039】
一方、補償金が支払われた(支払処理が行われた)場合、ポイント管理プログラム26において、その補償金額に応じたポイント数が当該顧客のポイント215から減算されるため、顧客間の公平性、電力会社との均衡を図ることが可能となる。すなわち、補償金を受け取ればポイントが減るため、補償金を受け取っていない顧客との間の公平性が図られ、また、次回の故障の際には今回よりも低い補償金額による補償となり得、電力会社との均衡を図ることが可能となる。さらに、上記のように、顧客が望む場合にのみ本補償システム1による補償が適用され得るため、顧客によるサービスの選択などが可能となる。例えば、顧客が他の補償システムによる補償を選択できるようにすることで、顧客にとってより納得できる補償を受け得ることとなる。
【0040】
ところで、本実施形態では、補償判定手段や補償金額算出手段などを、上記のような補償判定プログラム23や補償金額算出プログラム24などとしているが、補償判定手段や補償金額算出手段などとして機能するプログラムであれば、判定基準(方法)や補償金額の算出基準(方法)などを変えてもよい。例えば、上記の補償金額算出プログラム24では、顧客の保有するポイント数を金額に換算した額を最大補償金額とすることで、ポイント数に応じた補償金額となるようにしているが、ポイント数が多いほど上記因果関係の度合い(上記全額費用に乗じるパーセンテージ)が高く設定されるようにしてもよい。また、上記の補償判定プログラム23では、このプログラム23において補償を望むか否かを判断している(ステップS2)が、補償判定プログラム23を起動する前にその判断を行い、望む場合に補償判定プログラム23を起動するようにしてもよい。さらに、補償判定プログラム23による判定精度(合理性)を高めるために、顧客の電気機器にセンサーを設け、このセンサーによる供給電圧値などの検出結果にも基づいて、故障が補償の対象となるか否かを判定するようにしてもよい。
【0041】
また、本実施形態では、顧客が望む(サービスの申し込みをした)場合にのみ本補償システム1による補償が適用されるが、希望(申込)の有無に係わらず、本補償システム1による補償が適用されるようにしてもよいことは勿論である。さらに、本補償システム1による補償希望の有無に係わらず顧客にポイントを付与しているが、本補償システム1による補償を希望する顧客にのみ、ポイントを付与するようにしてもよい。この場合、上記のように、顧客データベース21においてポイント215を管理しなくてもよく、ポイント管理データベースを別個に設けるようにしてもよい。一方、ポイントを本補償システム1による補償のみに限らず、他のサービスにも使用できるようにしてもよい。これにより、顧客はポイントの用途を選択可能となり、サービスの向上が図られる。
【0042】
ところで、ホストサーバ2は電力会社に設置されているが、ホストサーバ2と同等の機能を保険会社のホストコンピュータなどに備えてもよい。すなわち、コンピュータを、顧客データベース21と供給異常データベース22と補償判定手段23と補償金額算出手段24と補償金額確定手段25とポイント付与手段26とポイント減算手段26および送受信部27(通信手段)として機能させる電気機器故障に対する補償プログラムPを、保険会社のホストコンピュータなどに組み込む(インストールする)ようにしてもよい。これにより、電気機器の故障原因が電力供給に異常が生じたためであるおそれがある場合における、保険サービスなどを提供することが可能となる。例えば、本補償プログラムPを保険会社のホストコンピュータに組み込み、電力会社が保険契約者、顧客が保険金受取人(被保険者)となることで、顧客と電力会社の双方にとって合理的な判定および補償金額(保険金額)による保険サービスの提供が可能となる。すなわち、本補償プログラムPによって、上記の補償システム1と同様に、顧客と電力会社の双方にとって納得可能な判定および補償金額(保険金額)の算出等が行われる。しかも、補償(保険金支払い)の対象となるか否かが合理的に判定されるため、不合理な保険金支払いが抑制され、かつ、合理的な保険金額が支払われるようになることで、保健会社への保険料を低減させることなどが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の実施形態に係る電気機器故障に対する補償システムの概略構成図。
【図2】本発明の実施形態に係る電気機器故障に対する補償システムにおける顧客データベースのデータ構成を示す図。
【図3】本発明の実施形態に係る電気機器故障に対する補償システムにおける供給異常データベースのデータ構成を示す図。
【図4】本発明の実施形態に係る電気機器故障に対する補償システムにおける補償判定プログラムのフローチャート。
【図5】本発明の実施形態に係る電気機器故障に対する補償システムにおける補償金額算出プログラムのフローチャート。
【図6】本発明の実施形態に係る電気機器故障に対する補償システムにおける承諾要求プログラムのフローチャート。
【図7】本発明の実施形態に係る電気機器故障に対する補償システムにおける諾否受信プログラムのフローチャート。
【図8】本発明の実施形態に係る電気機器故障に対する補償システムにおけるサービス申込プログラムのフローチャート。
【図9】本発明の実施形態に係る電気機器故障に対する補償システムの処理動作を示すフローチャート。
【符号の説明】
【0044】
1 電気機器故障に対する補償システム
2 ホストサーバ
21 顧客データベース
22 供給異常データベース
23 補償判定プログラム(補償判定手段)
24 補償金額算出プログラム(補償金額算出手段)
25 補償金額確定プログラム(補償金額確定手段)
251 承諾要求プログラム
252 諾否受信プログラム
26 ポイント管理プログラム(ポイント付与手段、ポイント減算手段)
27 送受信部(通信手段)
28 中央演算処理装置
3 クライアント
N インターネット


【特許請求の範囲】
【請求項1】
顧客の電気機器の故障原因が電力供給に異常が生じたためであるおそれがある場合に、その故障を補償する電気機器故障に対する補償システムであって、
顧客の情報端末であるクライアントとホストサーバとが通信可能に接続され、
前記ホストサーバに、各顧客の所在地などを記憶する顧客データベースと、電力供給に影響を与えた事象の内容、発生日時、被影響地域などを記憶する供給異常データベースと、前記クライアントから送信された電気機器故障の内容、発生日時と前記顧客データベースおよび前記供給異常データベースのデータとに基づいて前記電気機器故障が補償の対象となるか否かを判定する補償判定手段と、この補償判定手段によって補償対象であると判定された場合に前記電気機器故障の内容と前記電力供給に影響を与えた事象の内容とに基づいて補償金額を算出する補償金額算出手段とを備えた、
ことを特徴とする電気機器故障に対する補償システム。
【請求項2】
各顧客に電力使用量に応じてポイントを付与するポイント付与手段を前記ホストサーバに備え、前記顧客データベースに各顧客のポイント数を記憶し、前記補償金額算出手段が当該顧客のポイント数にも基づいて前記補償金額を算出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の電気機器故障に対する補償システム。
【請求項3】
前記ホストサーバに、補償金が顧客に支払われた場合に支払われた補償金額に応じたポイント数を当該顧客のポイントから減算するポイント減算手段を備えた、
ことを特徴とする請求項2に記載の電気機器故障に対する補償システム。
【請求項4】
前記補償金額算出手段による補償金額を前記クライアントに送信し、このクライアントからの承諾メッセージを受信した場合に前記補償金額算出手段による補償金額を確定補償金額とする補償金額確定手段を備えた、
ことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の電気機器故障に対する補償システム。
【請求項5】
前記クライアントからの送信情報に基づいて、前記顧客データベースに当該顧客が補償を望むか否かを記憶し、補償を望む場合に前記補償判定手段による判定を行う、
ことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の電気機器故障に対する補償システム。
【請求項6】
顧客の電気機器の故障原因が電力供給に異常が生じたためであるおそれがある場合に、その故障を補償するための電気機器故障に対する補償プログラムであって、コンピュータを、
顧客の情報端末であるクライアントと通信する通信手段と、各顧客の所在地などを記憶する顧客データベースと、電力供給に影響を与えた事象の内容、発生日時、被影響地域などを記憶する供給異常データベースと、前記クライアントから送信された電気機器故障の内容、発生日時と前記顧客データベースおよび前記供給異常データベースのデータとに基づいて前記電気機器故障が補償の対象となるか否かを判定する補償判定手段と、この補償判定手段によって補償対象であると判定された場合に前記電気機器故障の内容と前記電力供給に影響を与えた事象の内容とに基づいて補償金額を算出する補償金額算出手段として機能させるための電気機器故障に対する補償プログラム。
【請求項7】
コンピュータを、
各顧客に電力使用量に応じてポイントを付与するポイント付与手段と、顧客のポイント数にも基づいて前記補償金額を算出する前記補償金額算出手段として機能させるための請求項6に記載の電気機器故障に対する補償プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−350486(P2006−350486A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−173105(P2005−173105)
【出願日】平成17年6月14日(2005.6.14)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(504279212)株式会社エネルギア・ライフ&アクセス (15)