説明

電気機械変換器

【課題】小型で軽量な電気機械変換器を提供する。
【解決手段】電気機械変換器、特に、電動可変変速機は、ロータ8が取り付けられた一次側シャフト5と、インターロータ15が取り付けられた二次側シャフト7と、電気機械変換器のハウジング3に固定して取り付けられたステータ10が設けられる。一次側シャフト5から半径方向に見ると、ロータ8、インターロータ15およびステータ10は互いに同心円状に配置される。ロータ8およびステータ10は、一つ以上の単相または多相の電気的にアクセス可能な巻線を用いて設計される。インターロータ15は、機械的および電磁的な両面で一つの統一体を形成し、少なくとも接線方向に磁束の導体として配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータが取り付けられた一次側シャフトと、インターロータが取り付けられた二次側シャフトと、ハウジングに固定して取り付けられたステータが設けられ、一次側シャフトから半径方向に見ると、ロータ、インターロータおよびステータは互いに同心円状に配置され、ロータおよびステータは、一つ以上の単相または多相の電気的にアクセス可能な巻線を用いて設計された、電気機械変換器、特に、電動可変変速機に関する。一次側シャフトによって供給されたパワーの一部分は、電磁的な方式で、二次側シャフト上のインターロータへ直接的に送られ、別の部分は、例えば、スリップリングを使用して、一次側シャフトから集められ、パワーエレクトロニック変換器を介してステータへ供給され得る。さらに、パワー伝送方向は反転させてもよく、出力速度は入力速度より高くすることも低くすることも可能である。これらの速度は符号が変化してもよい。
【背景技術】
【0002】
このような電気機械変換器は、特に、国際公開公報第00/34066号パンフレット、米国特許第3683249号明細書、および、欧州特許第0866544A号明細書によって公知である。それらは、多種多様な道路車両だけではなく、ディーゼル列車のような鉄道車両、および、船舶において電動可変変速機(EVT)の形で適用可能である。
【0003】
より詳細には、国際公開公報第00/34066号は、電気機械変速機を具備し、二つの同軸配置ロータを囲むステータを含み、ロータは内燃機関と動力伝達部のそれぞれに結合された、ハイブリッド型駆動装置を開示する。内側ロータとステータとの間に配置された外側ロータは、この出願との関連でインターロータと称される。国際公開公報第00/34066号において、ロータとインターロータ、および、インターロータとステータは、二つの機械的に統合された電気機械を形成し、これらの両方の電気機械は、同期型と非同期型のどちらでもよい。ロータとインターロータとの間、ならびに、インターロータとステータとの間の磁束伝達は、どちらも半径方向または軸方向である。電気機械は電磁的に分離され、磁束はロータからインターロータを介してステータへ伝達されず、その逆にも伝達されない。インターロータは、機械的に結合されているが電磁的に分離された部品から構築される。電気機械変速機の電気機械は、それぞれ個別の制御手段で制御される。
【0004】
電動可変変速機(EVT)は、二つの機械部品、すなわち、一次側(駆動)シャフトおよび二次側(被駆動)シャフトと、エネルギーを交換する際に経由する電気的ゲートと、を備えた電気機械変換器である。電気的ゲートが使用されない場合、EVTは一般の無段変速機として機能し、ここで変速比は非常に広いレンジを持つ。EVTは、車両のクラッチとギアボックスの組み合わせの機能に匹敵する機能を実現する。EVTと組み合わせることにより、燃焼機関は、実際に、パワー源として働き、これにより、速度はエンジンの最適特性に従って設定可能である。燃料消費、雑音レベル、および、車両からの有害ガスの排出は、このようにして低減することが可能である。EVTは無段変速機であるため、加速中にギアシフトによる衝撃はない。これは、また、従来のギアボックスの場合のように、出力が時間的に多少鋸歯状の経過を辿ることなく、常に一定(最大許容)出力による加速が可能であることを意味する。したがって、同一エンジンを用いた場合、EVTによる加速は、従来のギアボックスよりも高速に進む。
【0005】
EVTは、電気的ゲートをオンボードバッテリに接続することにより実質的に耐久性のあるスターターモーターとして機能し得る。その結果として、EVTを装備した路線バスは、例えば、全く問題なくバス停でエンジンを停止することが可能であり、従来のスターターモーターでは、頻繁な始動は、スターターモーターとスターターリングの過度の消耗を伴うので、これは、より快適であり、燃料のかなりの節約につながる。
【0006】
電気的ゲートを介して、パワーエレクトロニック変換器から、オンボードネットワークへ給電することができるので、オンボードバッテリは充電可能である。したがって、実質的に耐久性のあるダイナモが得られる。従来のダイナモは効率が悪いので、燃料の節約も軽微である。一般的なダイナモを備えた電気システムでは、パワーはベルトドライブおよび低いオンボード電圧によって実際的に制限される。EVTを使用する場合、パワーエレクトロニック変換器を介して、より高い電圧レベルが簡単に生成され、パワーはディーゼルエンジンだけによって制限される。すなわち、例えば、パワーステアリング用のポンプ、または、バスのコンプレッサのようなエンジンによって直接駆動されるある種の補助装備は、高効率で電気的に駆動することができる。それらは自由自在にスイッチをオンオフすることができるので、無負荷損はより少ない。
【0007】
EVTを用いる場合、モーターによって制動することは簡単に実現可能である。ブレーキングパワーはエンジンの速度を上げることにより増加させ得る。しかし、これは雑音の発生量の増加を伴う。その上、制動エネルギーは、電気的ゲートに接続された抵抗で消費することが可能である。これにより、例えば、従来のバスにおけるリターダとは対照的に、停止するまで制動することが可能である。制動するとき、可能であれば、モーターはスイッチをオフしてもよく、その結果として、燃料消費が削減され、エンジンは雑音を発生しない。
【0008】
電気的ゲートには、バッテリの形式のバッファまたはフライホイールシステムを接続可能である。これらを用いて、制動エネルギーを蓄積可能であり、制動エネルギーはその後加速のため再使用可能である。かなり費用のかかるこのような拡張は、特に路線バスの場合に、燃料のかなりの節約を生じる。
【0009】
電気的ゲートによって、変換器はハイブリッド車両で使用するため特に好適になり、カルダン軸用の機械的エネルギーは、内燃機関エンジンと電源の両方により生成可能である。
【0010】
既存のEVTの最も重大な欠点はその質量である。それは従来のギアボックスの質量よりも著しく大きい。さらに、既存のEVTはまた従来のギアボックスよりも高価である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
既に説明したように、冒頭に記載されたような電気機械変換器は、欧州特許第0866544A号で知られている。しかし、そこに記載されている電気機械変換器の欠点は、インターロータが、機械的に互いに連結され、一方、電磁的には互いに分離されている二つのロータ部品により形成されるので、ロータは一方のロータ部品と共に第1の機械を形成し、もう一方のロータ部品はステータと共に、第1の機械と独立に動作する第2の機械を形成することである。その結果として、二つの機械の磁束は別々に制御可能であるという利点が得られるが、この構造の結果として、電気機械変換器は大型であり、かつ、重いという重大な欠点がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の欠点を解決するため、冒頭に記載されたような電気機械変換器は、インターロータが機械的にも電磁的にも一つの統一体を形成し、少なくとも接線方向に磁束用の導体として配置される、ことを特徴とする。換言すると、欧州特許第0866544A号における電気機械変換器と対比すると、二つのロータ部品は電磁的に結合され、さらに、一つの統一体に統合されるので、希望の体積および重量の削減が可能になる。本発明による電気機械変換器においては、勿論、半径方向の磁束伝導性はそのまま存在する。
【0013】
電気機械の部品は電磁的に結合され、磁束がロータからインターロータを介してステータへ伝達され、その逆向きにも伝達される。この機械は機械的にも電磁的にも一つの統一体を形成する。電磁式変速機の部品は単一の制御装置により制御される。
【0014】
一つの統一体を形成するインターロータを利用することは欧州特許第1154551A号から知られているが、そこに記載されているインターロータは、それだけが排他的に半径方向で磁束導体としての機能を果たす。そのため、この欧州特許出願に記載されたインターロータは、かなり薄い壁を有する管状ユニットで作られているが、接線方向から見ると、磁束導体材料は、少なくとも非常に少ない程度までしか磁束を伝達しない材料、特に銅によって常に代替される。インターロータは半径方向だけではなく接線方向でも磁束用の導体を形成するという本発明による特徴のために、以下でさらに説明されるように、電気機械変換器の一部分で磁束減衰を働かすことが可能であるが、これは他の部分では行われない。
【0015】
インターロータは電気回路および磁気回路により構成される。本発明による第1の実施形態では、磁気回路は、半径方向内側および外側に歯が設けられ、縦方向に延びる溝がその歯の間に位置し、電気回路を形成する短絡巻線がその溝の中に広がる、円柱状ヨークにより形成される。第2の実施形態では、インターロータは磁束伝導性円柱状ヨークにより形成され、半径方向内側および外側には、例えば、ブロックの形をした永久磁性材料が配置される。第3の実施形態では、インターロータは磁束伝導性円柱状ヨークにより形成され、一方側には永久磁性材料が設けられ、もう一方側には縦方向に延びる溝が配置され、溝内には電気的にアクセス可能な巻線が設けられる。
【0016】
好ましくは、インターロータの磁束伝導性回路は、特に、歯を具備し、歯の間に溝が設置されているヨークは、インターロータの半径方向内側および/または半径方向外側に実質的に滑らかな表面を有する。特に、回路の磁束伝導性材料の半径方向内側および/または半径方向外側は、回路の外形に関して自由に外側へ達する部分である。これにより、磁極の所定の固定パターンをインターロータの磁束伝導性材料に加える突極がないので、インターロータの磁束伝導性材料内の磁極のパターンは、制約がなく動作中に変更可能である。これに関連して、実質的に滑らかな表面は、完全に滑らかな表面を意味するだけではなく、滑らかな、例えば、円柱状外形に、回路に対して半径方向内側へ向けられた溝(スロット)を有する表面を含むことに注意する必要がある。このような凹部は、回路の半径方向内側と外側のそれぞれの全周の半分未満を、好ましくは、全周の約20−30%を構成する。
【0017】
ステータ巻線およびロータ巻線は、一つ以上のパワーエレクトロニック変換器を介して相互接続される。その結果として、例えば、車両が速度を上げるときに、ロータからステータへの電気エネルギーの移動が可能であり、例えば、オーバードライブ中に、その逆への電気エネルギーの移動が可能である。特殊なケースでは、これらの一つ以上のパワーエレクトロニック変換器は、例えば、オンボードバッテリをそれに接続するため、単一の電気的ゲートを介して電気的にアクセス可能であり、その結果として、EVTを用いて、実質的に耐久性のあるスターターモーターが実現可能である。逆に言えば、EVTから、この電気的ゲートを介して、オンボードバッテリを充電可能であるので、実質的に耐久性のあるダイナモを実現することが可能である。他の実施形態では、ステータ巻線およびロータ巻線は、それぞれ別々に、電気的ゲートを介してパワーエレクトロニック変換器から電気的にアクセス可能である。このようなケースでは、車両が停止中であり、燃焼機関だけが動作中であるとき、ロータとインターロータの組み合わせは、例えば、車両の冷房設備のための発電機としての機能を果たし得る。また、インターロータとステータの組み合わせを、例えば、ハイブリッド車両においてモーターとして使用することが可能であり、このケースでは、ロータとインターロータの組み合わせは使用されない。
【0018】
入力シャフトおよび出力シャフトは、入力シャフトと出力シャフトとの間で機械的力が直接的に伝達される、いわゆるロックアップポジションを形成するため、例えば、かみ合いクラッチまたは摩擦クラッチを用いて、機械的に相互接続する選択肢もある。
【0019】
本発明は、電気機械変換器に関係するだけではなく、駆動用内燃機関を始動し、または、電気機器に給電する上記の電気機械変換器が設けられた装置に関係し、また、上記の電気機械変換器が設けられ、エネルギーの蓄積用のシステムが設けられた装置に関係する。
【0020】
以下、本発明は、添付図面に表されているような典型的な実施形態に基づいて説明される。
【0021】
図面中の対応する部品は同じ参照番号で示される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
電動可変変速機(EVT)は、二つの機械的ゲートおよび一つの電気的ゲートを備えた電気機械変換器である。EVTは、本来的に無段階変速機であり、その上、電気的ゲートを介してエネルギーを交換することができる。以下の図面の説明において、最初に電気的ゲートは無視される。
【0023】
EVTの基本構造は、図1に概略的に示され、欧州特許第0866533A号で知られている。このEVTは、電気機械部1とパワーエレクトロニック部2で作られている。電気機械部1は、一次側シャフト5を備えた一次側誘導機4と二次側シャフト7を備えた二次側誘導機6が配置されたハウジング3を含む。2本のシャフト5および7は、ハウジング3にベアリング取り付けされる。一次側誘導機4は、本実施形態では、電気的にアクセス可能な多相巻線を備えたスリップリング電機子により形成されたロータ8と、非電気的にアクセス可能なケージ電機子9と、により構成される。二次側誘導機6は、固定子、すなわち、ハウジング3と固定的に連結されたステータ10と、二次側シャフト7に取り付けられたケージ電機子11と、により構成される。二次側誘導機6の二次側シャフト7は、また、ロータ8にベアリング取り付けされる。ステータ10は、電気的にアクセス可能な多相巻線を有する。ロータ8とステータ10との間で、電気エネルギーはパワーエレクトロニック部2を介して交換可能であり、ここで、パワーエレクトロニック部2は、パワーエレクトロニック変換器12とパワーエレクトロニック変換器13を含み、それらは共に交流−直流インバータとして設計されている。二つのインバータは互いに直流電圧側で接続される。本発明によるEVTの基本は、一種の電気機械クラッチとしての機能を果たす一次側誘導機3である。二次側機械は発電機付きの補助モーターとしての機能を果たす。
【0024】
この簡単な方式の公知のEVTの動作を説明するため、そこでは損失が発生しない場合を想定する。第一に、スリップリング電機子8は、一次側電圧インバータ12により形成された直流電圧源から給電され、二次側シャフト7は一次側シャフト5とほぼ同じ速度で回転する場合を考える。一次側誘導機4内の回転磁場はスリップリング電機子8と同期して回転する。二次側誘導機6はまだ動作可能ではない。一次側シャフト5と一次側ケージ電機子9、したがって、二次側シャフト7との間の速度差の結果として、回転磁場が生成され、電流が一次側ケージ電機子9に誘導されるので、電気機械トルクが作成され、これにより、一次側シャフトのトルクは、僅かなスリップ損失だけで二次側シャフトへ伝達される。直流電圧源は、スリップリング電機子8の回転分巻巻線の抵抗で浪費される電力だけを供給し、この電力も無視される。
【0025】
通常動作中、一次側電圧変換器は、直流電圧ではなく、交流電圧を送出し、パワーエレクトロニック部2を介してエネルギー交換が行われる。
【0026】
ケージ電機子9のスリップ角速度を無視すると、静止状態、すなわち、トルク平衡状態では、
=Tc1
が成り立ち、ここで、Tは、例えば、内燃機関によって一次側シャフト5に加えられるトルクであり、Tc1は、スリップリング電機子8によって電磁場を介して一次側誘導機4のケージ電機子9に加えられるトルクである。機械パワーに関して、
m1=ωm1
および
m12=ωm2c1=ωm2
であり、ここで、Pm1は一次側シャフト5を介して与えられる機械パワーであり、ωm1は一次側シャフト5の角速度であり、Pm12は二次側誘導機6へ伝えられる機械パワーであり、ωm2は二次側シャフト7の角速度である。これらの二つの力の差
=(ωm1−ωm2)T
は、スリップリングおよびスリップリングに接触しているブラシの組み合わせ14と、パワーエレクトロニック部2とによって除去される。ここで、(ωm1−ωm2)は、スリップリング電機子8に対する回転磁場の速度を表し、この速度は、エアギャップトルクと一体として、回転分巻巻線によって変換されるパワーを限定する。二次側シャフト7が一次側シャフト5よりも低速(停止を含む)で回転するならば、すなわち、ωm1>ωm2であるならば、スリップリング電機子8は、前記スリップリングおよびスリップリングに接触しているブラシの組み合わせ14を介して電気パワーを送出する。ωm1<ωm2である場合(道路車両のオーバードライブ)では、逆に、スリップリング電機子8に電気パワーを供給しなければならない。
【0027】
以下では、さらに、ωm1>ωm2を仮定する。スリップリング電機子8は、したがって、電気パワーを送出する。この電気パワーは、電圧インバータ12および13を用いて、パワーエレクトロニック変換過程によって、二次側誘導機6へ供給される。この変換過程はまた無損失であり、スリップ角速度およびその他の損失が発生しないと仮定するならば、完全な電気的に供給されるパワーは機械パワーに変換される。したがって、二次側ロータに加えられるトルクに関して、
c2=P/ωm2=(ωm1−ωm2)T/ωm2
が成り立つ。二次側シャフトによって、例えば、機械的負荷に加えられるトルクは、一次側トルクと、二次側ロータに加えられたトルクの合計
=T+Tc2=ωm1/ωm2
である。この場合(ωm1>ωm2)、出力トルクは入力トルクよりも大きい。
【0028】
二次側シャフトが一次側シャフトよりも高速で回転する場合(ωm1<ωm2)、上記の式は依然として有効である。しかし、その場合には、スリップリングおよびスリップリングに接触しているブラシの組み合わせ14を介して、電気パワーは一次側誘導機4へ供給されなければならない(P<0)。このパワーは、二次側誘導機6によって供給され、このとき、二次側誘導機は発電機として働く。この動作条件では、二次側誘導機6のロータ11に加えられるトルクは負であり(Tc2<0)、TはTよりも小さい。
【0029】
図2は図1のEVTのより実際的な構造を概略的に示す。本実施形態では、二次側誘導機6は一次側誘導機4の周りに構築される。ハウジング3内で、中心線から順番に、スリップリング電機子8と、一次側ケージ電機子9と、二次側ケージ電機子11と、ステータ10が互いに同心円状に配置されている。一次側ケージ電機子9および二次側ケージ電機子11のそれぞれは、一緒に中空インターロータ15を形成する。これにより、一次側誘導機4および二次側誘導機6のそれぞれに磁束の一部分を共同で使用させることが可能になるので、ケージ巻線間のヨークはより軽量化された構造にすることが可能である。このため、二つのケージ電機子は、欧州特許第0866544A号の電磁変換器の場合のように機械的に結合されるだけでなく、電磁的にも結合される。最も好ましい形式では、これは、二つのケージ電機子9および11を一つの統合された統一体として作ることにより実現される。このようにして得られたインターロータ15は図3に示され、さらに図4−6には、図3のロータ、インターロータ、および、ステータのA−Aによる断面図が示されている。インターロータ15は、電気および磁気回路により構成される。図3および図4から6の実施形態では、磁気回路は、縦方向に延びる溝を両側に有する積層された円柱体16により形成され、溝内には電気回路を形成する短絡巻線17が広がる。図4から6では、これらの巻線は数ヶ所だけに示されている。この数ヶ所だけに示されていることは、ロータ8の円柱体の溝およびステータ10の円柱体の溝のそれぞれにあるロータ巻線18およびステータ巻線19についても当てはまる。
【0030】
本例では、歯を具備し、歯の間に溝が設けられたヨークであるインターロータの磁束伝導性回路は、その半径方向内側および半径方向外側に実質的に滑らかな表面を有する。インターロータの磁気伝導性材料内の磁極のパターンは動作中に変更可能である。電気機械変換器のロータ部品、インターロータ部品およびステータ部品は電磁的に結合され、磁束は、ロータからインターロータを介してステータへ伝達され、また、その逆にも伝達される。インターロータは、機械的にも電磁的にも一つの統一体を形成する。電磁変速機の部品は単一の制御装置によって一緒に制御される。
【0031】
図3に示された実施形態では、電気機械変換器は4個の極を含み、一方、図4から6では、太線で、これらの極の一つに対して、多数の磁力線が示されている。図4は、特に、欧州特許第1154551A号のEVTの場合に生じる状況と類似の状況が示され、インターロータ15において接線方向に伝導性はなく、半径方向だけに伝達が行われる。関連した磁力線の進路は図4に参照番号20によって示されている。EVT内で局部的な磁場減衰が起こる可能性はなく、以下で明らかにされ、図5および6に示されているように、この磁場減衰は、接線方向にインターロータ15内で磁束伝導性がある場合に限り起こり得る。
【0032】
図5には、本発明によるEVTにおいて、例えば、このようなEVTが設けられた車両で速度を上げるときに生じる状況が示されている。ロータ8は、最初に、インターロータ15の速度(ωm2)よりも相対的に高い速度(ωm1)を有する。速度差(ωm1−ωm2)の値がかなり大きく、一次側パワーエレクトロニック変換器12によってロータ8のスリップリングに特定の電圧、すなわち、Φをロータに発生した磁束とし、cを定数として、
=c(ωm1−ωm2)Φ
が供給される場合、ロータには、かなり弱い磁束Φが生成される。この場合、ロータ8によってインターロータ15に加えられるトルクはそれほど大きくする必要がないので、磁束は大きくなくても構わない。このとき、ロータ8はステータ10用の発電機としての機能を果たし、電圧インバータ12および13を介して、パワーはステータへ伝えられ、次に、Φはステータに発生された磁束であり、c’は定数であるとして、かなり高い電圧
=c’.ωm2.Φ
がステータに供給される。すなわち、かなり強い磁束Φがステータに発生されるので、次に、かなり大きいトルクTc2は、インターロータ15、すなわち、シャフト7へ伝達可能であり、そこに負荷が取り付けられ得る。したがって、インターロータとステータの組み合わせはモーターとしての機能を果たす。このとき、インターロータとステータの組み合わせ内の磁束は飽和状態になるであろう。この状況における磁力線の進路は図5に21によって示され、接線方向の磁束の進路がインターロータ15内に出現する。
【0033】
図6は、例えば、車両のEVTの従来の動作範囲において本発明によるEVTに起こる状況を表す。この場合、ロータ8はインターロータ15の速度(ωm2)よりもかなり低い速度(ωm1)を有する。速度差(ωm1−ωm2)の値がかなり小さく、一次側パワーエレクトロニック変換器12によってロータ8のスリップリングに特定の電圧、すなわち、Φをロータに発生した磁束とし、cを定数として、
=c(ωm1−ωm2)Φ
が供給される場合、ロータには、かなり強い磁束Φが生成されるので、ロータ8はインターロータ15に強いトルクを加えることができる。その場合、電圧インバータ12および13を介して、小さいパワーがステータへ伝えられ、Φはステータに発生された磁束であり、c’は定数であるとして、かなり低い電圧
=c’.ωm2.Φ
がステータ10に供給される。すなわち、かなり弱い磁束Φがステータに発生され、その結果として、パワーエレクトロニック部2を介して、かなり小さいトルクTc2を、インターロータ15、すなわち、シャフト7へ伝達可能であり、そこに負荷が取り付けられ得る。ここで、ロータとインターロータの組み合わせはモーターとしての機能を果たす。
このとき、ロータとインターロータの組み合わせ内の磁束は飽和状態になるであろう。この状況における磁力線の進路は図6に22によって示され、この場合も接線方向の磁束の進路がインターロータ15内に出現する。
【0034】
オーバードライブの状況では、電圧インバータ12および13を介して、ステータ10からロータ8へのパワー伝達が行われる。このとき、ステータはかなり小さいトルクをインターロータ15に加える。それに反して、強いトルクがロータ8によってインターロータに加えられる。
【0035】
本発明は、図3および図4−6を参照して説明された典型的な実施形態に限定されるものではなく、当然のことながら請求項に係る発明の保護範囲に含まれる限り、それらに関するあらゆる種類の変更を包含する。したがって、例えば、インターロータは、例えば、ブロックの形をした永久磁性材料が両側に配置された磁束伝導性円柱体として設計することが可能である。他の実現可能な実施形態によれば、インターロータは、永久磁性材料が一方側に塗布され、縦方向に延びる溝がもう一方側に設けられ、その溝に電気的にアクセス可能な巻線が配置されている、磁束伝導性円柱体により形成される。後者の場合、しかし、電流供給点は、インターローラ15または二次側シャフト7に存在し、このシャフト7には、スリップリングを簡単に取り付けることが可能であり、スリップリングを介して電流が供給され、若しくは、取り出される。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】従来技術による電動可変変速機の基本構造の概略図である。
【図2】電動可変変速機のより実際的な構造の概略図である。
【図3】本発明による電動可変変速機の一実施形態の詳細図である。
【図4】本発明による電動可変変速機におけるロータとインターロータとステータの組み合わせの動作を説明するための断面図である。
【図5】本発明による電動可変変速機におけるロータとインターロータとステータの組み合わせの動作を説明するための断面図である。
【図6】本発明による電動可変変速機におけるロータとインターロータとステータの組み合わせの動作を説明するための断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ(8)が取り付けられた一次側シャフト(5)、インターロータ(15)が取り付けられた二次側シャフト(7)、および、電気機械変換器のハウジング(3)に固定して取り付けられたステータ(10)が設けられ、
前記一次側シャフト(5)から半径方向に見ると、前記ロータ(8)、前記インターロータ(15)および前記ステータ(10)は互いに同心円状に配置され、
前記ロータ(8)および前記ステータ(10)は、一つ以上の多相の電気的にアクセス可能な巻線を用いて設計されている、
電気機械変換器、特に、電動可変変速機であって、
前記インターロータ(15)は、機械的にも電磁的にも一つの統一体を形成し、少なくとも接線方向及び半径方向に磁束を形成可能な導体として配置され、
前記インターロータの内側または外側の少なくとも一方の側における磁気伝導性材料内の磁極のパターンは動作中に自由に変更可能である
電気機械変換器。
【請求項2】
前記インターロータ(15)は電気回路および磁気回路により構成され、前記磁気回路は縦方向に延びる溝を両側に有する円筒体により形成され、前記電気回路を形成する短絡巻線が前記溝内に広がる、請求項1に記載の電気機械変換器。
【請求項3】
前記インターロータ(15)は磁束伝導性円柱体により形成され、一方側には永久磁性材料が塗布され、もう一方側には縦方向に延びる溝が設けられ、電気的にアクセス可能な巻線が前記溝内に設けられる、請求項1に記載の電気機械変換器。
【請求項4】
前記ステータの巻線および前記ロータの巻線は一つ以上のパワーエレクトロニック変換器(12,13)を介して相互接続される、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気機械変換器。
【請求項5】
前記一つ以上のパワーエレクトロニック変換器(12,13)は単一の電気的ゲートを介して電気的にアクセス可能である、請求項4に記載の電気機械変換器。
【請求項6】
前記ステータの巻線および前記ロータの巻線は、それぞれ別々に、電気的ゲートを介してパワーエレクトロニック変換器によりアクセス可能である、請求項1から3のいずれか一項に記載の電気機械変換器。
【請求項7】
駆動用燃焼機関を始動する、請求項1から6のいずれか一項に記載の電気機械変換器を具備した装置。
【請求項8】
電気機器に給電する、請求項1から6のいずれか一項に記載の電気機械変換器を具備した装置。
【請求項9】
エネルギー蓄積用システムが組み込まれている、請求項1から6のいずれか一項に記載の電気機械変換器を具備した装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−17074(P2010−17074A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−207405(P2009−207405)
【出願日】平成21年9月8日(2009.9.8)
【分割の表示】特願2003−573764(P2003−573764)の分割
【原出願日】平成15年2月28日(2003.2.28)
【出願人】(501259662)ネイダーランゼ、オルガニザティー、ボー、トゥーゲパストナトゥールウェテンシャッペルーク、オンダーツォーク、ティーエヌオー (28)
【氏名又は名称原語表記】NEDERLANDSE ORGANISATIE VOOR TOEGEPASTNATUURWETENSCHAPPELIJK ONDERZOEK TNO