説明

電気機械的タイミングに基づく心臓治療制御システム

電気機械的タイミングに基づく治療制御用装置は、患者の心臓の電気的活性化を検出し、電気的活性化により発生する機械的心臓活動を検出する。時差相関は電気的活性化と機械的活動の間で決定される。治療は時差相関に基づいて制御される。治療は、患者の心臓の心室内ディシンクロニーを改善し、又は、例えば心拡張期及び収縮期の機能障害及び/又は患者の心臓のディシンクロニーの少なくとも一方を治療しうる。電気的活性化は、電気刺激パルスの心臓への供給を感知し、あるいは患者の心臓の内因性減極を感知することにより検出できる。機械的活動は、心音のほか、左心室インピーダンス、心室内圧、右室圧、左房圧、右房圧、全身動脈圧及び肺動脈圧の1つ以上における変化を感知することにより検出できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は心臓ペーシング方法及び装置に係り、より詳細には、電気機械的タイミングに基づく心臓治療制御装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
心臓病(心筋症)患者は、鬱血性心不全(CHF)の症状を呈することがある。CHFは心臓の心機能低下に起因し、ポンプ能力や効率を低下させるという特徴を持つ。心調律に関わる慢性疾患は、心筋症に起因する場合もある。ポンプ能力を低下させる心臓構造を変更することによっても、心臓の電気的特性が変更される。心臓の電気経路が延伸されて変形し、化学的損傷を受ける場合がある。これによりCHF患者が不整脈を発症する割合が大幅に高まる。
【0003】
ペースメーカーの移植は、CHF患者の不整脈治療に好適な方法である。各種心臓疾患でペースメーカーが必要とされているが、CHF患者に適した治療では心臓再同調治療(CRT)が知られている。CRTでは、心室を調和させ、血液を高効率でポンプする順序で動作させる複数のペーシングリードを備えたペースメーカーを使用する。
【0004】
CRTの候補患者は心筋症の様々な症状を呈している場合が多く、不整脈に加えて測定可能な心機能低下症状を呈することがある。特定の患者の需要に基づいて適切な治療を施すべくCRTを適用する場合、心臓の心機能低下が考慮される。ペーシングシステムにおいては、患者の活動の現状を含む各種の外的要因を考慮する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、身体活動、呼吸速度及び深度を検出することにより身体活動を推測し、心臓に加えられるペーシングの速度を変更する、速度調節型ペースメーカーが使用されている。これらの指標は所与の患者の代謝上の要求の大雑把な見積もりを提供する。CHF患者のための治療効能を測定及び改善するため、代謝上の要求を正確に測定し、特に心臓のポンプ能力及びポンプ効率を測定する手段は有益である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、心臓ペーシング方法及び装置に係り、より詳しくは、電気機械的タイミングに基づく治療制御装置及び方法に関する。本発明の実施形態による方法は、患者の心臓の電気的活性化を検出し、電気的活性化により発生する機械的心臓活動を検出することを含む。検出された電気的活性化と検出された機械的心臓活動との間で時差相関が決定される。患者に施される治療は、患者の心臓のディシンクロニー(dyssynchrony)を治療すべく時差相関に基づいて制御される。
【0007】
例えば、治療は、患者の心臓の心室内ディシンクロニーを改善する治療、あるいは患者の心臓の心拡張期及び収縮期の機能障害及び/又はディシンクロニーの少なくとも一方に対する治療であってもよい。心臓の電気的活性化は、例えば心臓への電気刺激パルス供給の感知、又は患者の心臓の内因性減極の感知により検出されてもよい。
【0008】
機械的心臓活動は、例えば電気的活性化により発生する機械的心臓活動を示す左室圧、右室圧、左房圧、右房圧、全身動脈圧又は肺動脈圧の1つ以上における変化を感知することにより検出されてもよい。他の実施形態は、血流速度又は血液灌流における変化の検出、あるいは電気的活性化により発生する機械的心臓活動を示す心室運動又は加速の検出により、機械的心臓活動を検出することを含む。機械的心臓活動を検出する更なる方法は、電気的活性化により発生する機械的心臓活動を示す心室インピーダンスにおける変化を経胸壁的に又は胸郭内で検出すること、及び電気的活性化により発生する機械的心臓活動を示す心音を検出することを含む。
【0009】
本発明による方法の他の実施形態は、患者内部の医療用具を使用して患者の心臓の電気的活性化を検出し、電気的活性化により発生する機械的心臓活動を検出することを含む。検出された電気的活性化と検出された機械的心臓活動との間で時差相関が決定される。患者に施される治療は時差相関に基づいて制御される。治療は、例えば心臓ペーシング治療、CRT治療、心室補助治療、細動除去治療、ドラッグデリバリ治療、神経刺激治療及び心室リモデリングリバース治療のうち1つ以上であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の上記概要は、本発明の各実施形態又は各実施態様の説明を意図するものではない。添付の図面に関連する以下の詳細な説明及び特許請求の範囲を参照することにより、本発明の利点及び達成点が明らかになって理解され、本発明がより完全に理解されるであろう。
【0011】
本発明には各種修正及び変更を行うことができるが、その詳細は図面中に一例として示されており、詳細を以下に説明する。但し、説明された特定の実施形態に本発明を制限するものではない。本発明は、添付の特許請求の範囲により定義される本発明の範囲内における修正、等価物及び変更を全て含むことが意図されている。
【0012】
例示される実施形態の以下の説明では、本発明の一部をなす添付の図面を参照する。図面は本発明を実施できる各種実施形態を例示するために示される。他の実施形態も利用可能であり、本発明の範囲を逸脱せずに構造的、機能的変更を行うことができる。
【0013】
本発明による移植装置は、以下に記載する特徴、構造、方法又はこれらの組み合わせの1つ以上を含むことができる。例えば、心臓モニタ又は心臓刺激器は、以下に記載する有利な特徴及び/又は処理の1つ以上を含めて実施されてもよい。このようなモニタ、刺激器あるいは他の移植装置又は部分的移植装置は、本明細書中に記載された全ての特徴を含む必要はないが、独特の構造及び/又は機能性を提供すべく選択された特徴を含めて実施されてもよいことが意図されている。このような装置は各種治療機能又は診断機能を提供すべく実施されてもよい。
【0014】
広範な移植可能な心臓モニタリング及び/又は刺激装置が、本発明の改善された心臓効率方法論を実施すべく構成されてもよい。そのような装置の代表的なものとして心臓モニタ、ペースメーカー、電気除細動器、細動除去器、再シンクロナイザ及び他の心臓モニタリング・治療デリバリ装置が挙げられるが、これらに限定されない。これらの装置は、経静脈電極、心内膜電極及び心外膜電極(胸腔内電極)を含む各種電極配置を含んで構成されてもよく、缶形(can)、ヘッダ及び中立電極(indifferent electrode)を含む皮下非胸腔内電極、ならびに皮下アレイ又はリード電極(非胸腔内電極)を含むことができる。
【0015】
本発明の実施形態を上述した各種心臓用装置において実施することが可能であり、本明細書を通じて患者植込み型医療用具(PIMD)と称する。本発明によって実施されるPIMDは、本明細書中で特定された1つ以上のタイプの電極及びセンサ、及び/又はこれらの組み合わせの1つ以上を組み込んでいてもよい。
【0016】
本発明の実施形態は、PIMDの動作を制御するために電気的、機械的タイミング情報を利用する装置及び方法に関する。
【0017】
更に、PIMDは治療の有効性を評価するため、治療における変化後の電気的、機械的タイミング情報を利用してもよい。心臓の電気的活動と心筋組織の機械的反応との間のタイミングは、電気機械的タイミング(EMT)と称される。心筋組織の電気刺激と心筋組織の機械的反応(収縮など)との間の期間は、電気機械的遅延(EMD)と称される。EMTは、交感神経と副交感神経のバランス、ならびに機械的活性化の効率の関数である。
【0018】
心筋組織の機械的反応は移植可能な及び/又は外部センサを使用して決定できる。適切なセンサの例として圧力センサ、インピーダンスセンサ、血流センサ、音響センサ、運動及び/又は加速度センサが挙げられる。
【0019】
電気的タイミングは、PIMDからの刺激パルスのタイミング、あるいは測定され、惹起された及び/又は内因性の電気的活動を利用して確立されてもよい。EMT/EMD情報は、PIMDによる治療の開始、変更及び/又は滴定すべく利用でき、例えば心室内及び/又は心室間の遅延、房室−心室(AV)遅延、ペーシング治療、心室補助装置制御、ならびに神経刺激、心臓再同調治療、細動除去治療、ドラッグデリバリ治療及び心室リモデリングリバース治療が挙げられる。
【0020】
本発明の実施形態では、治療制御のためのEMT/EMDの利用は周期的、規則的あるいは連続的に行われてもよい。本発明の他の実施形態では、治療制御のためのEMT/EMDの利用は、患者外部の装置などからの指示に応じてのみ行われてもよいし、あるいは所定条件の有無及び/又はPIMDの状態に応じて行われてもよい。エネルギー節約のため、エネルギー消費の極めて少ない機械的センサのみを使用することが望ましい場合もある。他の実施形態では、EMT/EMDは、センサから付加的なエネルギー消費を行うことなく、経胸的インピーダンスセンサセンサなどのセンサを使用して決定されてもよい。例えば、センサは、独立した動力源を有する着用式センサなどの患者外部のセンサであってもよい。
【0021】
本発明によってEMT/EMD制御から利益を得ることのできる装置の一例は、EMD減少時に速度を高めるべく制御できる速度調節型ペーシングシステムである。別の例において、心臓再同調治療(CRT)システムは、患者の静止期間にEMDを最小化し、心臓のシンクロニーを最大化すべくEMT/EMD情報を利用してもよい。更に別の例において、心拍数の増加を伴うEMDの急激な変化は心室頻脈を確認するために利用できる。更に、EMDの急激な増大は非捕捉を示し、例えば捕捉閾値アルゴリズムを開始してもよい。更に別の例として、EMT/EMD情報は、収縮及び心臓内シンクロニーを含む患者の左心/全体機能をモニタリングするために有用である。
【0022】
本発明によるPIMD制御のためのEMT/EMD測定は、心室間又は心室内ディシンクロニーの治療を受ける患者に適用できる。患者として、現在CRT治療を示唆されている患者、拡張機能障害とディシンクロニーのある患者、ならびに制御治療のリモデリングを行っているポスト心筋梗塞(MI)患者が挙げられる。
【0023】
本発明による特定の実施形態は、左心室のペーシングされた又は内因性電気的活性化と、全体的な機械的活性化の開始との間の時間を測定することを含む。この時間は、外壁上の冠静脈電極と、右心室又は右心房のいずれかの電極との間のインピーダンスの増加により測定される。
【0024】
心臓のディシンクロニー収縮及び弛緩が発生している患者(CRT治療を受ける患者など)においては、心室の活性化の同期性が高まるとEMDは縮小する。静止状態又は他の定常状態において、治療パラメータはEMDを最小とする(又は短くする)組み合わせを求めて変更されてもよい。更に、EMDは、患者の心臓のディシンクロニーの悪化や改善を評価すべくモニタリングされてもよい。この情報はローカルに記録されてもよいし、後述するように遠隔測定により患者外部の装置に送信されてもよい。
【0025】
図1Aは、本発明による電気機械的タイミング情報を用いて患者の心臓のディシンクロニーを治療する治療制御方法100のフローチャートである。方法100は、患者の心臓の電気的活性化を検出(102)し、電気的活性化により発生する機械的心臓活動を検出(104)することを含む。時差相関は、検出(102)された電気的活性化と検出(104)された機械的心臓活動の間で決定(106)される。患者に施される治療は、患者の心臓のディシンクロニーを治療するために時差相関に基づいて抑制(108)される。
【0026】
例えば、治療は、患者の心臓の心室内のディシンクロニーを改善する治療、あるいは心拡張期及び収縮期の機能障害及び/又は患者の心臓のディシンクロニーの少なくとも一方を治療する治療であってもよい。心臓の電気的活性化は、心臓へ電気刺激パルスが送られたことを感知するか、患者の心臓の内因性減極を感知することにより検出(102)できる。
【0027】
機械的心臓活動は、例えば電気的活性化により発生する機械的心臓活動を示す左室圧、右室圧、左房圧、右房圧、全身動脈圧又は肺動脈圧の1つ以上における変化を感知することにより検出(104)できる。更に機械的心臓活動の検出(104)は、電気的活性化により発生する機械的心臓活動を示す心室インピーダンスの変化を経胸壁的又は胸郭内で検出することにより、あるいは電気的活性化により発生する機械的心臓活動を示す心音を検出することにより行われてもよい。機械的心臓活動を検出(104)する他の方法として、血流速度又は血液灌流の変化及び/又は心室の運動又は電気的活性化により発生する機械的心臓活動を示す加速の検出が挙げられる。
【0028】
図1Bは、本発明による電気機械的タイミング情報を用いる治療制御方法200のフローチャートである。方法200は、患者植込み型医療用具を使用して患者の心臓の電気的活性化を検出(202)することと、電気的活性化により発生する機械的心臓活動を検出(204)することを含む。時差相関は、検出(202)された電気的活性化と検出(204)された機械的心臓活動の間で決定(206)される。患者に施される治療は時差相関に基づいて制御(208)される。治療は、例えば心臓ペーシング治療(210)、CRT治療(212)、心室補助治療(214)、細動除去治療(216)、ドラッグデリバリ治療(218)、神経刺激治療(220)及び心室リモデリングリバース治療(222)のうち1つ以上とすることができる。
【0029】
心室補助治療(214)は、心臓の主たるポンプ室である左心室のポンプ機能を代わりに果たし又は補助する左心室補助装置(LVAD)(left ventricular assist device)を含むことができる。重篤な心不全を患っている場合、LVADは半永久的に使用される。LVADでは、装置の一部が患者の心臓及び腹部に植え込まれ、一部が体外に残る。装置の外部部品は、患者の腰部回りのベルトやショルダストラップに取り付けて運搬してもよい。一般的には、LVADは電気ポンプ、電子コントローラ、エネルギー供給(通常は重さ約8ポンドの電池)及び2本のチューブを有する。一方のチューブは左心室から装置内へ血液を運搬する。他方のチューブは装置からポンピングされた血液を大動脈(動脈)へ入れ、この血液が全身を循環する。
【0030】
LVADは心臓の損傷を回復させるため(ポンプ運動の一部を代わりに行うことで)心臓の「負荷軽減(unload)」を行い、また慢性心不全(CHF)の患者を支援するために用いられる。本発明による電気機械的タイミングは、負荷軽減の度合を制御し、回復するにつれ心臓がより多くの負荷を扱うことを可能とし、再発が起こった場合は負荷を軽減するために使用されてもよい。
【0031】
ドラッグデリバリ治療(218)は、収縮性を制御するために心臓の静脈によって変力物質、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)又は他の薬を局所的に輸送するドラッグデリバリシステムを含むことができる。このシステムは本発明による電気機械的間隔測定によるフィードバック制御を使用してもよい。神経刺激治療220は、例えば高血圧症又は心外傷の場合に収縮度を小さくする迷走神経刺激器を使用して行われてもよい。
【0032】
神経刺激治療(220)は、不都合なリモデリングを遅滞させ又は防止すべく使用されてもよい。運動や睡眠などのような日常的活動の間に所望の度合いの治療を維持するため、(EMT/EMDによる)フィードバックを本発明によって使用してもよい。
【0033】
電気的活性化により発生する機械的心臓活動の検出(204)は、後述する心音検出に用いることのできる加速度計や音響トランスジューサなどの皮下センサを使用して行われてもよい。心音は本発明によってEMD情報及びタイミングを決定するために利用できる。PIMD装置は、EMTとEMDを決定する際、心音の存在、特性及び発生頻度のうち1つ以上をECG情報と組み合わせて利用してもよい。
【0034】
例えば、ECG信号から決定された心拍数を心音情報と共に分析してもよい。心音は、センサが発生する他の信号で置き換えられてもよいことに注目すべきである。例えば、インピーダンス、脈圧、血液量/血流又は心臓の加速度が利用できる。
【0035】
心音の検出に当たっては各種の音響センサを利用できる。音響センサの例として、隔膜ベースの音響センサ、MEMSベースの音響トランスジューサなどのMEMSベースの音響センサ、光ファイバ音響センサ、圧電センサ、及び加速度計ベースの音響センサ及びアレイが挙げられる。これらのセンサは心音に関連した可聴周波数圧縮波を検出するために使用されてもよく、他の非電気生理学的心臓関連信号を検出するために使用されてもよい。
【0036】
患者の心臓パルス(心拍)の存在は、一般的に患者の首を触診し、患者の心臓からポンピングされた血液により患者の頚動脈の体積変化を感知することにより検出される。患者の連続する2つのパルスすなわち心拍の間の患者の頚動脈の物理的拡張及び収縮を表す頸動脈波信号310のグラフが図2の一番上に示されている。心拍の際に心臓の心室が収縮すると、患者の末梢循環系を通じて圧縮波が送られる。心臓からの圧縮波が最大に達すると、図2に示される頸動脈波信号310は、心収縮時とピーク時における心室の血液排出により上昇する。圧力が各パルスの終わりに向けて低下するにつれ、頸動脈波信号310は再び低下する。
【0037】
心拍間に患者の心臓弁が開閉することで、隣接する心臓壁及び血管中に高周波振動が発生する。この振動は心音として患者の体内で聞くことができ、前述のようにセンサによって検出できる。患者内に配置される従来の心音図(PCG)変換器は、心音の音響エネルギーを電気エネルギーに変換する。これにより、図2の中央上側に示されるように、記録・表示することが可能なPCG波形320が得られる。
【0038】
図2に示されるPCG波形320よりわかるように、通常、心拍は2つの主な心音を発生する。S1で示される第一の心音330は、一般的に心収縮開始時の三尖弁及び僧帽弁の閉止に関連した振動によって生成される。通常、心音330の長さは約14ミリ秒、周波数は最大約500Hzである。S2で示される第二の心音340は一般的に心収縮終了時の大動脈弁及び肺動脈弁の閉止に起因する振動に関係する。第二の心音340の持続時間は、一般的に第一の心音330よりも短いが、第二の心音340のスペクトル幅は第一の心音330のそれより一般的に大きい。
【0039】
心電図(ECG)波形350は、患者の心臓の電気的活動を示す。図2の中央下側のグラフは、2つの心拍のECG波形350の一例を示し、図2に示される頸動脈波信号310及びPCG波形320に対応する。図示された第一の心拍を参照すると、心房筋ファイバの減極を表わすECG波形350の部分は、「P」波と呼ばれる。心室筋線維の減極は、全体として「Q」で表わされる。ECG波形の「R」波及び「S」波は、QRS群と呼ばれる。最後に、心室筋線維の再極化を表す波形の部分は「T」波として知られている。心拍の間、ECG波形350は等電位レベルに戻る。
【0040】
更に、患者の経胸的インピーダンス信号360の変動は、患者を電気機械的タイミング及びEMDと関連付ける。図2の一番下のグラフは、インピーダンスの変動が図2に示される頸動脈波信号310、PCG波形320及びECG波形350と時間的に対応する、患者に対するフィルタリングされた経胸的インピーダンス信号360の一例を示す。本発明による有用なインピーダンス信号は、PIMDハウジングと電極の間で測定される経胸的インピーダンスを含み、あるいは双極性電極などの埋込電極からのローカルインピーダンス測定を含むことができる。
【0041】
EMD情報が心臓の性能の有用な指標であると仮定すると、EMD情報は例えば心臓ペーシング又は細動除去システムの適応変化治療パラメータを変更すべく有益に適用できる。更に、EMD情報を分析することで、長時間にわたり心臓CHF患者のためのペーシング治療の効能を測定・改善するため、心臓の動作を測定し適応させる能力をペーシングシステムに提供できる。ここで図3を参照すると、本発明によるシステムは心臓内に展開されるリードシステムを有する。PIMDシステム801は、CRT目的のために冠静脈への移植用に設計されたリードシステム802を備えたPIMD800を含む。リードシステム802は、患者の心臓803に心臓ペーシング治療を施すために移植されたリードシステムを積極的に測定し制御する検出/エネルギー運搬システム900(図4に示す)に接続される。
【0042】
検出/エネルギー運搬システム900は、一般的にアナログ−デジタル(A−D)変換器に接続された電源及びプログラム可能な回路(例えばマイクロプロセッサ)を含む。電極及び圧力センサなどの各種リードシステム装置は、感知及び/データ収集のためにA−D変換器に接続されてもよい。あるいは、A−D変換器との接続前にアナログ調整(例えばフィルタリング)を感知信号に適用してもよい。検出/エネルギー運搬システム900は更にエネルギー運搬システムを利用する。エネルギー運搬システムは、チャージコンデンサ、及び技術中で既知の信号調整回路を含むことができる。エネルギーシステムは、D−A変換器を介してプログラム可能な回路に接続されてもよい。検出/エネルギー運搬システム900の構成要素及び機能について、図4を参照しながら以下に説明する。
【0043】
更に図3を参照すると、リードシステム802は各種技術を用いて、冠静脈洞に植え込まれてもよい。図3に示すように、そのような技術の一つは、左鎖骨下静脈又は左橈側皮静脈などの経皮的アクセス血管に開口を形成することを含む。ペーシングリードは、上大静脈経由で心臓の右心房820へ導かれる。リードシステム802は右心房820から冠静脈洞口へ送られる。心門は、冠静脈洞850への右心房820の開口部である。リードシステム802は、冠静脈洞850経由で左心室824の冠静脈へ導かれる。リードシステム802の遠心端は、冠静脈内へ係留(lodge)されてもよい。
【0044】
PIMDシステム801は、本発明による電気機械的タイミングに基づいた治療制御方法を実施すべく使用されてもよい。図3のPIMDシステム801は、リードシステム802に電気的・物理的に接続されるPIMD800を有して示されている。PIMD800のハウジング及び/又はヘッダは、心臓に電気刺激エネルギーを付与し、且つ心臓の電気的活動を感知すべく使用される1つ以上の電極908、909を組み込んでいてもよい。PIMD800は、PIMDハウジングの全部又は一部を缶形電極909として用いてもよい。PIMD800は、例えばヘッダ又はPIMD800のハウジング上に配置された中立電極を含むことができる。PIMD800が缶形電極909と中立電極908の両方を含む場合、電極908、909は一般的に相互に電気的に分離される。
【0045】
リードシステム802は、心臓803へのペーシング信号の提供、心臓803によって生成された電気的心臓信号の検出、血液酸素飽和度の感知に使用される。また、心律動異常を治療するため所定条件の下で心臓803に電気エネルギーを供給すべく使用されてもよい。リードシステム802は、ペーシング、感知及び/又は細動除去に使用される1つ以上の電極を含むことができる。図3に示される実施形態では、リードシステム802は、心臓内右心室(RV)リードシステム804、心臓内右心房(RA)リードシステム805、心臓内左心室(LV)リードシステム806、心臓外左心房(LA)リードシステム808を含む。図3のリードシステム802は、本明細書に記載された電気機械的タイミング方法論に基づいた治療制御に関連して用いることのできる一実施形態を示している。他のリード及び/又は電極を追加し、あるいは上記のものに代えて用いてもよい。
【0046】
リードシステム802は、心臓内リード804、805、806の一部が心臓803内に挿入された状態で人体に移植された心臓内リード804、805、806を含むことができる。心臓内リード804、805、806は、心臓の電気的活動を感知するため、及び例えば電気刺激エネルギーを心臓へ、ペーシングパルス及び/又は除細動ショックを心臓へ送るために心臓内に配置可能な各種電極を含む。
【0047】
図3に示されるように、リードシステム802は、1つ以上の心腔を感知し及び/又はペーシングするために心臓の外側に位置する、心外膜電極又はセンサ815、818などの電極を有する1つ以上の心臓外リード808を含むことができる。
【0048】
図3に示された右心室リードシステム804はSVCコイル816、RVコイル814、RVリング電極812及びRV先端電極811を含む。右心室リードシステム804は、右心房820を通り、右心室819内へ延出する。具体的には、RV先端電極811、RVリング電極812及びRVコイル電極814は、電気刺激パルスを感知し心臓に送るために右心室819内の適切な位置に配置される。SVCコイル816は、心臓803の右心房820内の適切な位置又は心臓803の右心房820に通じる主葉脈に配置される。
【0049】
1つの構成では、缶形電極909に関連付けされたRV先端電極811は、右心室819内で単極ペーシング及び/又は感知を行うために使用されてもよい。右心室内における双極ペーシング及び/又は感知は、RV先端電極811及びRVリング電極812を用いて実施されてもよい。別の構成では、RVリング電極812は必要に応じて省略され、双極ペーシング及び/又は感知は、例えばRV先端電極811及びRVコイル814を用いて実施されてもよい。右心室リードシステム804は一体形成された双極ペーシング/ショックリードとして構成されてもよい。RVコイル814及びSVCコイル816は細動除去電極である。
【0050】
左心室リード806は、左心室824をペーシング及び/又は感知するために左心室824内又は近傍の適切な位置に配置されるLV遠位電極817及びLV近位電極813を含む。左心室リード806は上大静脈経由で心臓の右心房820に導くことができる。左心室リード806は、右心房820から冠静脈洞850の開口部である冠静脈洞口内へ展開してもよい。左心室リード806を、上大静脈経由で心臓の右心房820に導くことができる。リードが心臓の右側から直接アクセスすることができない左心室824の表面にリードが達するために、且つ心筋層を出た血液中の血中酸素濃度を感知するために、この静脈はアクセス経路として用いられる。左心室リード806のリード配置は、鎖骨下静脈にアクセスし、LV電極817及び813を左心室に隣接して挿入するように予め形成されたガイディングカテーテルによって可能になる。
【0051】
例えば、缶形電極909に関連するLV遠位電極を用いて左心室内の単極ペーシング及び/又は感知を実施することができる。LV遠位電極813及びLV近位電極817を左心室用の双極感知電極及び/又はペーシング電極として併用することができる。心室をほぼ同時に又は段階的に連続してペーシングし、慢性心不全を患う患者の心臓ポンプ効率を高めるように、左心室リード806及び右心室リード804をPIMD800と併用して心臓再同期治療を提供することができる。
【0052】
右心房リード805は、右心房820の感知及びペーシングを行うように右心房820内の適切な位置に配置されたRA先端電極854及びRAリング電極856を含む。1つの構成では、例えば、缶形電極909に関連するRA先端856を用いて右心房820内の単極ペーシング及び/又は感知を提供することができる。他の構成では、RA先端電極854及びRAリング電極856を用いて双極ペーシング及び/又は感知を提供することができる。
【0053】
図3に示されるように、左心室リード806は圧変換器875を含むことができる。この用途で使用される圧変換器875は、例えばマイクロ電気機械的システム(MEMS)とすることができる。MEMS技術は、シリコン又は同様の材料において微視的機械装置を作製すべく半導体技術を利用する。圧変換器875は、血流に対し露出された、微細加工された容量性又はピエゾ抵抗性変換器を含むことができる。抵抗性のひずみゲージなどの他の圧変換技術は当該技術で知られており、圧変換器875として使用できる。圧変換器875は、左心室リード806の長さに沿って配置される1つ以上のコンダクタに接続される。図3に示される構成では、圧変換器875は左心室リード806と一体形成される。圧変換器875などの変換器は本発明によってEMD情報を決定するのに役立つ肺動脈(PA)の圧力情報を決定するために使用できる。有用な圧力センサ装置及び方法論については、米国特許第6,237,398号明細書に更なる記載がある。
【0054】
ここで図4を参照すると、本発明による電気機械的タイミングに基づいた治療制御に適したPIMD900の実施形態が示されている。図4は、機能ブロックに分割されたPIMD900を示している。これらの機能ブロックを配置することのできる構成が多くあることが当業者によって理解される。図4に示す例は、実施可能な1つの機能構成である。他の構成も可能である。例えば、更に多い数の機能ブロック、更に少ない数の機能ブロック又は異なる機能ブロックを用いて、本発明による適応的ウィンドウ生成方法の実施に好適なPIMDを説明することができる。また、図4に示すPIMD900はプログラム可能なマイクロプロセッサベースの論理回路の使用を考慮しているが、他の回路の実施態様を用いてもよい。
【0055】
図4に示すPIMD900は、心臓から心臓信号を受け取り、ペーシングパルス及び/又は除細動ショックの形で電気刺激エネルギーを心臓に送る回路を含む。1つの実施の形態では、PIMD900の回路は人体への植込みに好適なハウジング901に入っており、これに密閉されている。PIMD900への電力は、電気化学電池980によって供給される。リードシステムの導線をPIMD900の回路に物理的及び電気的に取り付けることができるように、コネクタブロック(図示せず)がPIMD900のハウジング901に取り付けられている。
【0056】
PIMD900は、制御システム920及びメモリ970を含むプログラム可能なマイクロプロセッサベースのシステムとすることができる。メモリ970は、他のパラメータと共に種々のペーシングモード、除細動モード及び感知モードのパラメータを記憶することができる。また、メモリ970は、PIMD900の他の構成要素によって受け取られた信号を示すデータを記憶することができる。メモリ970は、例えば、それまでのEMT/EMD情報、血中酸素濃度、血流情報、灌流情報、心音、心臓運動、EGM、及び/又は治療データを記憶するために使用することができる。履歴データの記憶としては、例えば、トレンドの目的及び/又は他の診断目的で用いられる、患者の長期モニタから得られたデータを含むことができる。他の情報と同様に、履歴データを、必要に応じて又は要望どおりに外部プログラマユニット990に送信することができる。
【0057】
制御システム920及びメモリ970は、PIMD900の他の構成要素と協働してPIMD900の動作を制御することができる。図4に示す制御システムは、ペーシング刺激に対する心臓の反応を分類するためのプロセッサ925を組み込んでいる。PIMD900の動作を制御するために、コントローラ920は、ペースメーカー制御回路922、不整脈検出器921、及び心臓信号形態分析用テンプレートプロセッサなどの更なる機能的な構成要素を他の構成要素と共に含むことができる。コントローラ920は、血液灌流、血流及び/又は1つ以上のセンサに基づいた血圧を決定すべく構成された血液検出回路975を含むことができる。コントローラ920は必要に応じて、あるいは追加的に、例えば加速度計、マイクロホン、圧変換器、インピーダンスセンサあるいは他の運動又は音声感知構成からの感知情報を用いて、機械的心臓活動を検出すべく構成された機械的心臓活動検出回路976を含むことができる。
【0058】
遠隔測定回路960を実施して、PIMD900と外部プログラマユニット990との間の通信を提供することができる。1つの実施の形態では、遠隔測定回路960及びプログラマユニット990は、当該技術分野で知られているようにワイヤループアンテナ及び無線周波遠隔測定リンクを用いて通信し、プログラマユニット990と遠隔測定回路960との間で信号及びデータの送受信を行う。このようにして、プログラム指令及び他の情報を、植込み時と植込み後にプログラマユニット990からPIMD900のコントローラ920に転送することができる。また、例えばEMT/EMD、捕捉閾値、捕捉検出及び/又は心臓反応分類に関する記憶された心臓データを、他のデータと共にPIMD900からプログラマユニット990に転送することができる。
【0059】
更に、遠隔測定回路960は、PIMD装置がPIMD装置外部の1つ以上の受け取り装置又はシステムと通信することを可能にしてもよい。例えば、PIMD装置は、遠隔測定回路960を介して患者が着用しているポータブル又はベッドサイド通信システムと通信することができる。1つの構成では、1つ以上の生理学的又は非生理学的センサ(皮下、皮膚、又は患者の外部の)は、ブルートゥース(Bluetooth)又はIEEE802基準などの既知の通信基準に適合するインタフェースなどの、短距離無線通信インタフェースを備えることができる。そのようなセンサによって得られたデータは、遠隔測定回路960を介してPIMD装置に通信されることができる。ワイヤレス送信機又はトランシーバを備えた生理学的又は非生理学的センサは、患者外部の受け取りシステムと通信することができることが注目される。PIMDとの通信する外部センサは、本発明の実施形態によって電気機械的タイミング及び/又は遅延を決定するために使用することができる。図3に示すPIMD900の実施形態では、RA先端電極854、RAリング電極856、RV先端電極811、RVリング電極812、RVコイル電極814、SVCコイル電極816、LV遠位電極817、LV近位電極813、LA遠位電極818、LA近位電極815、中立電極908及び缶形電極909がスイッチングマトリックス910を介して感知回路931乃至937に結合されている。
【0060】
右心房感知回路931は、心臓の右心房からの電気信号を検出し、これらの電気信号を増幅させるように機能する。例えば、RA先端854とRAリング856との間で発生した電圧を感知することにより、右心房内の双極感知を実施することができる。例えば、RA先端854と缶形電極909との間で発生した電圧を感知することにより、単極感知を実施することができる。右心房感知回路からの出力はコントローラ920に結合されている。
【0061】
右心室感知回路932は、心臓の右心室からの電気信号を検出し、これらの電気信号を増幅させるように機能する。右心室感知回路932は、例えば右心室心拍数チャネル933及び右心室ショックチャネル934を含むことができる。RV先端電極811の使用によって感知される右心室の心臓信号は右心室近距離場信号であり、RV心拍数チャネル信号と示す。双極のRV心拍数チャネル信号を、RV先端811とRVリング812との間で発生した電圧として感知することができる。あるいは、RV先端電極811及びRVコイル814を用いて、右心室内の双極感知を実施することができる。例えば、RV先端811と缶形電極909との間で発生した電圧を感知することにより、右心室内の単極の心拍数チャネル感知を実施することができる。
【0062】
RVコイル電極814の使用によって感知される右心室の心臓信号は遠距離場信号であり、RV形態チャネル信号又はRVショックチャネル信号とも呼ばれる。より具体的に言うと、右心室ショックチャネル信号を、RVコイル814とSVCコイル816との間で発生した電圧として検出することができる。また、右心室ショックチャネル信号を、RVコイル814と缶形電極909との間で発生した電圧として検出することができる。他の構成では、缶形電極909及びSVCコイル電極814を電気的に短絡させ、RVショックチャネル信号をRVコイル814と缶形電極909/SVCコイル816の組み合わせとの間で発生した電圧として検出することができる。
【0063】
心外膜電極として構成可能な1つ以上の左心房電極815及び818の使用により、左心房の心臓信号を感知することができる。左心房感知回路935は、心臓の左心房からの電気信号を検出し、これらの電気信号を増幅させるように機能する。例えば、LA遠位電極818及びLA近位電極815を用いて左心房内の双極感知及び/又はペーシングを実施することができる。例えば、LA遠位電極818−缶ベクトル909又はLA近位電極815−缶ベクトル909を用いて、左心房の単極感知及び/又はペーシングを行うことができる。
【0064】
更に図4を参照すると、左心室感知回路936は、心臓の左心室からの電気信号を検出し、これらの電気信号を増幅させるように機能する。例えば、LV遠位電極817とLV近位電極813との間で発生した電圧を感知することにより、左心室内の双極感知を実施することができる。例えば、LV遠位電極817又はLV近位電極813と缶形電極909との間で発生した電圧を感知することにより、単極感知を実施することができる。
【0065】
必要に応じて、冠静脈洞など、患者の左心に隣接する心血管系にLVコイル電極(図示せず)を挿入することができる。LV電極817及び813、LVコイル電極(図示せず)及び/又は缶形電極909の組み合わせを用いて検出された信号を左心室感知回路936によって感知し、増幅させることができる。左心室感知回路936の出力はコントローラ920に結合されている。
【0066】
本発明によれば、LVPの測定は、EMDを測定するために有用である。例えば、両心室ペーシング(例えばCRT)を用いる心臓の治療では、ペーシング電極を使用して、右心室及び左心室の収縮を同期させることにより利点が得られる。右室圧(RVP)信号を得るための方法又は装置が(例えば右心室ペーシングリード組み込まれた圧変換器によって)提供され、左室圧信号が冠状静脈リード得られる場合、これら2つの心室が同期される度合はRVPをLVPに対しプロットし、得られる略楕円形領域を決定することにより評価できる。この楕円形はPPループと呼ばれる。左室圧を測定する有用な方法及びシステムは、更に米国特許第6,666,826号明細書に記載されている。
【0067】
CHF患者のための治療を特徴付けるためにPPループを使用する有用な方法及び装置は、共通所有の米国特許第6,280,389号明細書に記載されている。CRTに関連する所与のパラメータ(例えば房室遅延あるいは心室間遅延)は、PPループ領域を最小化するためにパラメータを変更することにより最適化できる。このプロセスは、疾病又は治療の過程で発生しうる生理学的変化を是正するために周期的に実施することができる。これらの圧力信号の相対的タイミング又は段階は、時間領域の圧力読取値からの最大又は最小閾値の分析によって抽出できる。更に、相対位相合せは高速フーリエ変換(例えばFFT)分析の利用などのフーリエ解析の基本の分析により、周波数領域から決定できる。FFTを実施し、及び/又は圧力信号からタイミング値を引き出すために必要な計算は当該技術で知られており、コントローラにおいて容易に実施できる。
【0068】
本明細書中に記載されたPIMDの各種実施形態は、高度な患者管理と結びつけて利用されてもよい。遠隔からの患者/デバイスのモニタ、診断、治療、又は他の高性能患者管理(APM)関連の方法を提供するように適用可能な本明細書に記載の方法、構造及び/又は技術は、米国特許第6,221,011号、第6,270,457号、第6,277,072号、第6,280,380号、第6,312,378号、第6,336,903号、第6,358,203号、第6,368,284号、第6,398,728号及び第6,440,066号の各明細書に開示されるものを含む既知の特徴を用いて実施できる。
【0069】
本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更及び追加を前述の好適な実施形態に対して行うことができる。従って、本発明の範囲は後述する特許請求の範囲によってのみ定義されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0070】
【図1A】本発明による電気機械的タイミング情報を使用する治療制御方法のフローチャートである。
【図1B】本発明による電気機械的タイミング情報を使用する別の治療制御方法のフローチャートである。
【図2】頸動脈波波形、心音図(PCG)波形、心電図(ECG)波形及び連続2つの心拍のフィルタリングされた経胸的インピーダンス信号を示す図である。
【図3】心臓に移植されたリードシステムを示す、本発明による装置を示す心臓の図である。
【図4】本発明によるシステムのブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植可能なハウジングと、
前記ハウジング内に配置されるコントローラと、
前記コントローラに接続され、患者の心臓の電気的活性化を感知すべく構成された心臓リードシステムと、
前記コントローラに通信可能に接続され、前記電気的活性化によって発生する機械的心臓活動を検出すべく構成されたセンサと、
を含み、
前記コントローラは、検出された電気的活性化と前記検出された機械的心臓活動との間の時差相関を決定すべく構成されシステムであって、
前記コントローラは更に、前記時差相関に基づいて患者に施される治療を制御すべく構成される、
前記システム。
【請求項2】
前記センサは患者外部のセンサとして構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記センサは移植可能なセンサとして構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記センサは患者の心臓又は冠状血管中に移植されるべく構成された圧力センサを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
前記センサは左室圧、右室圧、左房圧、右房圧、全身動脈圧又は肺動脈圧を感知すべく構成された圧力センサを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記コントローラは、機械的心臓活動を左室圧、右室圧、左房圧、右房圧、全身動脈圧又は肺動脈圧における変化として検出すべく構成される請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記センサはインピーダンスセンサを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記センサは移植可能なインピーダンスセンサを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記センサは患者外部のインピーダンスセンサを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記センサは、電気的活性化により発生する機械的心臓活動を示す心室インピーダンスにおける変化を、経胸壁的に又は胸郭内で検出すべく構成されたインピーダンスセンサを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記心臓リードシステムは、冠静脈電極を含む第一のリードと、右心室(RV)電極及び右心房(RA)電極の一方又は両方を含む第二のリードとを含み、前記センサは、冠静脈電極とRV電極又はRA電極との間のインピーダンスにおける変化を感知すべく構成されたインピーダンスセンサを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記センサは心音を検出すべく構成された音響センサを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
前記センサは心音を検出すべく構成された音響センサを含み、前記音響センサは隔膜ベースの音響センサ、MEMSベースの音響センサ、光ファイバ音響センサ、圧電センサ、加速度計ベースの音響センサ又はマイクロホンを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
前記センサは、S1心音とS2心音の一方又は両方を検出すべく構成された音響センサを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記センサは心音を検出すべく構成されたセンサを含み、前記コントローラは心音の存在、特性及び発生頻度のうち1つ以上を検出すべく構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記センサは、血流速度か血液灌流を感知すべく構成されたセンサを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項17】
前記センサは、心室の運動又は加速を感知すべく構成されたセンサを含む請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記コントローラは、患者の心臓への電気刺激パルスの供給の感知、及び患者の心臓の内因性減極の感知の一方又は両方を行うべく構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記時差相関は、左心室のペーシングされた又は内因性電気的活性化と、心臓の全体的な機械的活性化の開始との間の時間間隔を定義する請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記コントローラは、前記検出された電気的活性化と前記検出された機械的心臓活動との間の時間間隔を縮小するための治療を施すべく構成される請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記治療は心臓ペーシング治療を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記治療は両心室の心臓ペーシング治療を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項23】
前記治療は心臓再同調治療を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項24】
前記治療は細動除去治療を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項25】
前記治療は、患者の心臓の心室間のディシンクロニーを改善するための治療を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項26】
前記治療は、患者の心臓の心室内のディシンクロニーを改善するために治療を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項27】
前記治療は、心拡張期及び収縮期の機能障害の少なくとも一方を治療するための治療を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項28】
前記治療は、心拡張期及び収縮期のディシンクロニーの少なくとも一方を治療するための治療を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項29】
前記治療は心室リモデリングリバース治療を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項30】
前記システムは左心室補助装置を含み、前記治療は心室補助治療を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項31】
前記治療はドラッグデリバリ治療を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項32】
前記治療は神経刺激治療を含む請求項1に記載のシステム。
【請求項33】
前記コントローラは、非捕捉を検出し、且つ時差相関に基づいた捕捉閾値アルゴリズムを開始すべく構成される請求項1に記載のシステム。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−546507(P2008−546507A)
【公表日】平成20年12月25日(2008.12.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519599(P2008−519599)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【国際出願番号】PCT/US2006/025524
【国際公開番号】WO2007/002888
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.Bluetooth
【出願人】(592245720)カーディアック ペースメーカーズ,インコーポレイテッド (26)
【Fターム(参考)】