説明

電気泳動ディスプレイに使用するための粒子

【課題】電気泳動ディスプレイに使用するための粒子、ならびにそのような粒子を組み込む電気泳動媒質およびディスプレイを提供すること。
【解決手段】電気泳動ディスプレイにおける使用のための粒子であって、上記粒子は光散乱無機コアおよび有機顔料の光透過性着色シェルを含む。上記コアはチタニアであり得、そして上記シェルは700nm未満の平均粒子サイズを有する粒子で形成され得る。この粒子は、光散乱性無機顔料が、上記無機顔料および有機顔料の両方の上に吸着するポリマーで処理され、有機顔料を加えて、この有機顔料をポリマーコーティングされた無機顔料と混合させることにより生成される。この粒子は、ポリマーコーティングを有し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動ディスプレイに使用するための粒子、ならびにそのような粒子を組み込む電気泳動媒質およびディスプレイに関する。より具体的には、本発明は、通常の形態における、電気泳動媒質およびディスプレイへの使用には小さすぎる粒子サイズを有する有機顔料の使用を、電気泳動媒質およびディスプレイにおいて可能にする粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
用語「双安定な」および「双安定性」は、本明細書中において、当該分野でそれらの従来の意味で使用され、少なくとも1つの光学的特性が異なる第一および第二のディスプレイ状態を有するディスプレイ素子を含むディスプレイを示し、これにより、任意の所定の素子が駆動した後に、有限の持続期間のパルスをアドレス指定する(address)ことで、第一か第二かのいずれかのディスプレイ状態を呈し、アドレス指定パルスが終了した後に、該状態は、上記ディスプレイ素子の状態を変換するのに必要なアドレス指定パルスの最小持続時間の少なくとも数倍(例えば、少なくとも4倍)存続する。グレースケールが可能ないくつかの粒子ベースの電気泳動ディスプレイは、このディスプレイの極限の白黒状態だけでなく、このディスプレイの中間のグレー状態でも安定であり、そして同様のことが、いくつかの他のタイプの電気光学ディスプレイにおいて真実である、ということが特許文献1に示される。このタイプのディスプレイは、双安定な、よりも「多元安定な(multi−stable)」と正確には呼ばれるが、便宜上、用語「双安定な」は、本明細書中で、双安定なディスプレイと多元安定なディスプレイの両方に及んで使用され得る。
【0003】
粒子ベースの電気泳動ディスプレイは、多年にわたり活発な研究および開発の題材である。このタイプのディスプレイにおいて、複数の荷電粒子は、電場の作用下で流体中を通って動く。電気泳動ディスプレイは、液晶ディスプレイと比較した場合、良好な明るさおよびコントラストの特性、広視野角、状態双安定性、ならびに低い電力消費を有し得る。このような電気泳動ディスプレイにおいて、光学特性は、電場の印加によって変化し、この光学特性は代表的にヒトの目に対して色知覚されるが、他の光学特性(例えば、光伝送、反射率、発光、または機械読み上げのためのディスプレイの場合、可視範囲の外側の電磁波長の反射率の変化という意味での擬色)であり得る。それにもかかわらず、これらのディスプレイの長時間の画像の質が有する問題は、これらの幅広い使用を妨げてきた。例えば、電気泳動ディスプレイを構成する粒子は、沈殿する傾向があり、これらのディスプレイの不適切な耐用年数を生じさせる。
【0004】
上記に留意のように、電気泳動媒質は、流体の存在を必要とする。ほとんどの先行技術の電気泳動媒質において、この流体は液体であるが、電気泳動媒質は気体の流体を使用して生成され得る;Kitamura,T.ら「Electrical toner movement for electronic paper−like display」,IDW Japan,2001,Paper HCS1−1,およびYamaguchi,Y.ら「Toner display using insulative particles charged triboelectrically」,IDW Japan,2001,Paper AMD4−4を参照のこと。また、米国特許出願公開番号2005/0001810;欧州特許出願番号1,462,847;1,482,354;1,484,635;1,500,971;1,501,194;1,536,271;1,542,067;1,577,702;1,577,703;および1,598,694;ならびに国際公開番号WO2004/090626;WO2004/079442;およびWO2004/001498を参照のこと。このような気体ベースの電気泳動媒質は、この媒質が、例えば標識(sign)におけるこのような沈殿を可能にする配向に使用される場合(ここでこの媒質は垂直な平面に配置される)、液体ベースの電気泳動媒質のように沈殿する粒子に起因する同様のタイプの問題に影響されるである。確かに、粒子の沈殿は、液体ベースの電気泳動媒質よりも気体ベースの電気泳動媒質においてより深刻な問題であるようである。なぜなら、液体の懸濁流体と比べて気体の懸濁流体のより低い粘性は、電気泳動粒子のより速い沈殿を可能にするからである。
【0005】
Massachusetts Institute of Technology (MIT)およびE Ink Corporationに譲渡された、またはそれら名義の、カプセル化電気泳動媒質を記載する非常に多くの特許および特許出願が、近年公開されている。このようなカプセル化媒質は、非常に多くの小カプセルを含み、これら小カプセル自身のそれぞれが、液体懸濁媒質中に懸濁された電気泳動可動な粒子を含む内部相、および上記内部相を囲むカプセル壁を含む。代表的に、上記カプセルは自身がポリマー性バインダー内に保持され、2つの電極間に位置するコヒーレント層を形成する。このタイプのカプセル化媒質は、例えば、
【0006】
【化1】

【0007】
【化2】

に記載される。
【0008】
多くの上述の特許および特許出願は、カプセル化電気泳動媒質中の別個のマイクロカプセルを囲む壁が、連続相によって置き換えられ得、それによりいわゆるポリマー分散電気泳動ディスプレイを生成し、上記電気泳動媒質は、電気泳動流体の複数の別個の液滴およびポリマー性材料の連続相を含み、そしてこのようなポリマー分散電気泳動ディスプレイ内の上記電気泳動流体の別個の液滴は、たとえ別個のカプセル膜がそれぞれ別々の液滴に関連していなくても、カプセルまたはマイクロカプセルとしてみなされ得る、ということを認識する。例として、上述の米国特許第6,866,760号を参照のこと。したがって、本願の目的のために、このようなポリマー分散電気泳動媒質は、カプセル化電気泳動媒質の亜種(sub−species)としてみなされる。
【0009】
関連のタイプの電気泳動ディスプレイは、いわゆる「マイクロセル電気泳動ディスプレイ」である。マイクロセル電気泳動ディスプレイにおいて、荷電粒子および流体は、マイクロカプセル内にカプセル化されないが、その代わりにキャリアー媒質(代表的にポリマー性フィルム)中に形成される複数の空洞中に保持される。例として、Sipix Imaging,Inc.にどちらも譲渡された米国特許第6,672,921号および同第6,788,449号を参照のこと。
【0010】
電気泳動媒質はしばしば不透明であり(なぜなら、例えば、多くの電気泳動媒質において、粒子は実質的にディスプレイを通る可視光の透過を遮断するためである)、ならびに反射モードで作動するが、多くの電気泳動ディスプレイは、1つのディスプレイ状態は実質的に不透明であり、そして1つのディスプレイ状態は光透過性である、いわゆる「シャッターモード(shutter mode)」で作動するために作製され得る。例として、上述の米国特許第6,130,774号および同第6,172,798号、ならびに同第5,872,552号;同第6,144,361号;同第6,271,823号;同第6,225,971号;および同第6,184,856号を参照のこと。二電気泳動ディスプレイ(dielectrophoretic display)は、電気泳動ディスプレイと類似であるが、電圧強度の変化に依存し、類似のモードにおいて作動し得る。米国特許第4,418,346号を参照のこと。
【0011】
カプセル化電気泳動ディスプレイは一般的に、従来の電気泳動デバイスのクラスター欠陥モードおよび沈殿欠陥モードを有さず、さらなる利点、例えば、ディスプレイを非常に様々な可塑性基材および硬質基材上にプリントするまたはコーティングする能力、を提供する。(用語「プリントする」の使用は、全ての形態のプリントおよびコーティングを含むことが意図され、以下に限定されないが:パッチダイコーティング、スロットコーティングもしくは押出しコーティング、スライドコーティングもしくはカスケードコーティング(slide or cascade coating)、カーテンコーティングのような前もって計量された(pre−metered)コーティング;ナイフオーバーロールコーティング(knife over roll coating)、前後進ロールコーティング(forward and reverse roll coating)のようなロールコーティング;グラビアコーティング;ディップコーティング;スプレーコーティング;メニスカスコーティング;スピンコーティング;ブラシコーティング;エアーナイフコーティング;シルクスクリーン印刷プロセス;静電印刷プロセス;熱印刷プロセス;インクジェット印刷プロセス;電気泳動堆積(米国特許出願公開第2004/0226820号を参照のこと。);ならびに他の類似の技術が含まれる。)したがって、生じたディスプレイは、可塑性であり得る。さらに、ディスプレイ媒質は(様々な方法を使用して)プリントされ得るので、ディスプレイそのものは、安価に作製され得る。
【0012】
電気泳動媒質に使用される粒子のための必要物は複合体である。粒子は、非常に薄い層にのみ存在する場合でさえ、高い光学密度を提供することを必要とする。なぜなら、電気泳動媒質のスイッチング速度(すなわち、所定の電圧において、媒質が一方のその極限の光学状態から他方の極限の光学状態へ変換するのにかかる時間)が、媒質の厚さに比例するので、電気泳動材料自体の薄層(代表的に、50μm未満のオーダー)の使用が所望され、そしてこのような薄い媒質において、約2μmの厚さの電気泳動粒子の層の等価物のみが存在し得る。これらの電気泳動粒子は予測可能な様式で電場に応答し、ならびにこれらの電気泳動粒子が接触する表面に付着してはならず、(両方の極性の電荷を有する粒子を含む電気泳動媒質の場合)反対の電荷の粒子に対して堅固すぎるように付着してはならないように、この電気泳動粒子は安定な電荷を保持する必要がある。電気泳動粒子に必要な条件のすべてに合う単一の材料を見つけ出すことは困難であり得るが、1つの材料のコアおよび異なる材料のコーティングまたはシェルを有する複合体粒子を電気泳動粒子として使用することは公知である。例えば、上述の米国特許番号6,822,782、7,002,728および7,230,750は、顔料(例えば、チタニア、カーボンブラック、または銅クロマイト)のコアおよびポリマーコーティングを有する電気泳動粒子を記載する。他のタイプの複合体電気泳動粒子は、米国特許出願公開第2002/0044333号、および特開第2004−318,006号;同第2004−233831号;同第2004−029699号;同第2004−004469号;同第2000−227612号;および同第01−114829号に記載されている。
【0013】
すでに留意したように、電気泳動粒子が非常に薄い層のみに存在する場合でさえ、高い光学密度を提供することが望ましい。この必要性に合うために、電気泳動粒子は通常、顔料ベースであり、他のタイプの材料、例えば染料で着色されたポリマーは使用されているが、代表的に所望とされる光学密度と同じくらい高い光学密度を提供しない。着色された(白黒に対するような)粒子を必要とする電気泳動媒質において、特に所望とされる色を有する顔料を見出すことがしばしば困難である。無機顔料は、電気泳動媒質における使用に耐性がありかつ十分に適するが、非常に限られた色範囲を提供する。有機顔料は、より広い範囲の色において利用可能であるが、しばしば可視光の波長よりも小さな粒子サイズを有し、そのため、光散乱性媒質(例えば、電気泳動媒質)における使用が限られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】米国特許第7,170,670号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、小さな粒子の有機顔料が電気泳動媒質およびディスプレイに使用されることを可能にする方法を見出すことが所望され、そして本発明は上記のことがなされるのを可能にする複合体電気泳動粒子を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
したがって、本発明は、電気泳動ディスプレイにおける使用のための粒子を提供し、この粒子は、光散乱性無機コアおよび有機顔料の光透過性着色シェルを含 む。上記有機顔料は代表的に小さい粒子の顔料、すなわち可視光のサイズより小さい(つまり約700nmより小さい)平均粒子サイズを有する顔料である。上記有機顔料の粒子サイズは、しばしば上記よりさらに小さく、例えば約250nmより小さい、および多くの場合、約100nmより小さい。上記光散乱性無機コアは、チタニアを含み得る。
本発明は、例えば、以下を提供する。
(項目1)
電気泳動ディスプレイにおける使用のための粒子であって、該粒子は光散乱無機コアを含み、該粒子は、有機顔料の光透過性着色シェルによって特徴付けられる、粒子。
(項目2)
前記有機顔料が約700nm未満の平均粒子サイズを有する、項目1に記載の粒子。
(項目3)
前記有機顔料が約250nm未満の平均粒子サイズを有する、項目1に記載の粒子。
(項目4)
前記有機顔料が約100nm未満の平均粒子サイズを有する、項目1に記載の粒子。
(項目5)
前記光散乱性無機コアがチタニアを含む、項目1に記載の粒子。
(項目6)
流体、および該流体に配置され、該流体に電場を印加するときに該流体を通って移動可能である少なくとも1つの荷電粒子を含む電気泳動媒質であって、該少なくとも1つの荷電粒子が項目1に記載の粒子であることによって特徴付けられる、電気泳動媒質。
(項目7)
前記有機顔料が約700nm未満の平均粒子サイズを有する、項目6に記載の電気泳動媒質。
(項目8)
前記有機顔料が約250nm未満の平均粒子サイズを有する、項目7に記載の電気泳動媒質。
(項目9)
前記光散乱性無機コアがチタニアを含む、項目6に記載の電気泳動媒質。
(項目10)
前記流体および前記少なくとも1つの荷電粒子が、1つ以上のカプセルまたはマイクロセルに閉じ込められている、項目6に記載の電気泳動媒質。
(項目11)
前記流体および少なくとも1つの荷電粒子が、ポリマー性材料を含む連続相によって囲まれた複数の別個の液滴として存在する、項目6に記載の電気泳動媒質。
(項目12)
反対の極性の電荷を有する2つの異なるタイプの荷電粒子を含む、項目6に記載の電気泳動媒質。
(項目13)
電気泳動媒質、および該電気泳動媒質に電場を印加するために配置された少なくとも1つの電極を備える電気泳動ディスプレイであって、該電気泳動媒質が項目6に記載の媒質であることによって特徴付けられる、電気泳動ディスプレイ。
(項目14)
項目13に記載のディスプレイによって特徴付けられた、電子式本読み取り装置、ポータブルコンピューター、タブレットコンピューター、携帯電話、スマートカード、署名、時計、棚ラベルまたはフラッシュドライブ。
(項目15)
項目1に記載の粒子を生成する方法であって、該方法が、
光散乱性無機顔料を無機顔料および有機顔料の両方の上に吸着するポリマーで処理する工程、ならびに
該有機顔料を加えて、該有機顔料をポリマーコーティングされた無機顔料と混合させ、それにより項目1に記載の粒子を形成する工程、
を包含する方法。
(項目16)
項目15に記載の方法であって、形成された粒子が、その後
(a)該粒子と反応し得、および結合し得る官能基を有し、ならびにまたポリマー化可能な基またはポリマー化を開始する基を有する試薬と反応され、それにより該試薬上の官能基は該粒子表面と反応し、該ポリマー化可能な基と結合する、そして
(b)工程(a)の生成物は、少なくとも1つのモノマーまたはオリゴマーと、該粒子上の該ポリマー化可能な基もしくはポリマー化を開始する基と該少なくとも1つのモノマーまたはオリゴマーとの間の反応を引き起こすのに効果的な条件下で反応され、それにより、該粒子に結合したポリマーの形成を生じる、方法。
(項目17)
項目16に記載の方法であって、前記試薬上の前記ポリマー可能な基がビニル基であり、そして該ビニル基がフリーラジカル重合によって前記モノマーまたはオリゴマーと重合される、方法。
(項目18)
工程(a)で使用される前記試薬がシランカップリング剤である、項目16に記載の方法。
(項目19)
前記無機顔料がチタニアを含む、項目15に記載の方法。
(項目20)
項目15に記載の方法であって、前記光散乱性無機顔料が前記ポリマーにより処理された後に、過剰のポリマーを、前記ポリマーコーティングされた無機顔料を前記有機顔料に接触させる前に該無機顔料から洗い流す、方法。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明は、少なくとも1つの本発明の粒子および流体を含む電気泳動媒質まで拡張し、上記粒子は上記電気泳動媒質への電場の印加の際に上記流体を通って運動可能である。上記粒子および上記流体は、複数のカプセルまたはマイクロセル中にカプセル化され得るか、ポリマー性材料を含む連続相によって囲まれた複数の別個の液滴として存在し得、それによりポリマー分散性電気泳動媒質を形成する。上記電気泳動媒質は、着色された流体中に単一のタイプの粒子を含み得るか、2つ(または2つ以上)の異なるタイプの荷電粒子を含み得、2つの異なるタイプの荷電粒子が存在する場合、それらは同じか反対の極性の電荷を有し得る。
【0019】
本発明はまた、本発明の電気泳動媒質およびこの電気泳動媒質に電場を印加するために配置される少なくとも1つの電極を備える電気泳動ディスプレイまで拡張する。
【0020】
本発明のディスプレイは、先行技術の電気泳動ディスプレイが使用されている任意の用途において使用され得る。したがって、例えば、本発明のディスプレイは、電子式本読み取り装置、ポータブルコンピューター、タブレットコンピューター、携帯電話、スマートカード、署名、時計、棚ラベルおよびフラッシュドライブに使用され得る。
【0021】
本発明はまた、本発明の粒子を生成する方法を提供する。この方法は、光散乱性(代表的に白色)無機顔料(これは最終粒子のコアを形成する)を、無機顔料と有機顔料との両方の上に吸着するポリマーで処理する工程を含む。次いでこの有機顔料は加えられ、ポリマーコーティングされた無機顔料と混合されて本発明の粒子を形成し、この粒子は遠心分離により分離され得、ならびに乾燥され得る。この方法の好ましい形態では、このように生成された複合体粒子は、上記に記載の米国特許第6,822,782号に記載の様式でポリマーコーティングを提供される。このようなポリマーコーティングを生成するために、複合体粒子は、この複合体粒子と反応および結合し得る官能基を有し、ならびにポリマー化可能な基もしくはポリマー化を開始する基をまた有する試薬と反応される。上記試薬上の官能基は、上記粒子表面と反応し、上記ポリマー化可能な基と結合する。この工程の生成物は、次いで少なくとも1つのモノマーまたはオリゴマーと、上記複合体粒子上のポリマー化可能な基もしくはポリマー化を開始する基と上記少なくとも1つのモノマーまたはオリゴマーとの間の反応を引き起こすのに効果的な条件下で反応され、それにより、上記複合体粒子に結合したポリマーの形成を生じる。望ましくは、上記試薬上のポリマー化可能な基はビニル基であり、このビニル基はフリーラジカル重合化により上記モノマーまたはオリゴマーと重合される。
【0022】
本発明の粒子における使用に好ましい無機顔料は、チタニアである。本発明の方法において、代表的に、ポリマーコーティングされた無機顔料を有機顔料と接触させる前に、過剰のポリマーを無機顔料から洗い流すことが所望される。無機顔料と有機顔料を混合させることが一般的に必要であるが、超音波処理が本目的に有用である。本方法の次の段階において使用される試薬は、好ましくはシランカップリング剤であり(このタイプの適切な薬剤は上述の米国特許第6,822,782号を参照のこと)、このシランカップリング剤は無機顔料および有機顔料の両方と反応し得る。
【0023】
添付の図面の単独の図は、以下の実施例により得られた、本発明のAN実験用ディスプレイの500ミリ秒パルスおよび1000ミリ秒パルスの可変電圧に対する応答を示し、ディスプレイの電気光学応答を示す。
【0024】
上記に示されるように、本発明は、電気泳動ディスプレイにおける使用のための、ならびに光散乱性無機コア(例えばチタニア)および光透過性の有機顔料の着色シェルを含む粒子を提供する。このコアは、高い散乱性であるべきであり、そしてこのシェルは望ましくは小さな粒子の有機顔料から形成される。このような複合体粒子は、コア顔料の性質のため、高い散乱性であるが、また表面の有機顔料の高い重量比のため、高着色性である。本発明の複合体粒子は、例えば低分子の染料でコーティングされた類似のコアよりもより高く着色されている。着色有機顔料で反射性顔料をコーティングすることは、高い飽和性で高い反射性の顔料を幅広い着色アレイに利用可能にする。本発明の粒子は、高い散乱性で明るく着色された顔料であり、この顔料はそれらが形成される無機顔料および有機顔料の両方の利点を示し、ならびに電気泳動媒質の構造を以前入手可能なものよりも幅広い範囲の着色でディスプレイすることを可能にする。
【0025】
本発明の粒子を生成する1つの方法において、ポリマーは選択され、その結果、このポリマーは無機顔料と有機顔料との両方に吸着し、ならびに本発明の後の工程を妨げない。無機コア顔料の粒子は、過剰の選択されたポリマーで処理され、このポリマーは顔料表面に吸着される。この粒子は、完全に洗浄され、過剰のポリマーを除去される。有機顔料は次いで、上記粒子に添加され、そしてこの混合物は超音波処理によって混合され得る。上記コーティングされた無機顔料は、次いで遠心分離で分離され、ならびに乾燥され、その後、無機顔料および有機顔料を結合するシランカップリング剤によって処理される。最後に、複合体顔料はフリーラジカルビニル重合によりポリマーコーティングされる。
【実施例】
【0026】
本発明の4つの異なる複合体粒子を調製した。4つの場合すべてにおいて、コア無機顔料はチタニア(R−794 チタニア、E.I.du Pont de Nemours
& Company,Wilmington DEより入手可能)である。4つの異なる有機顔料、すなわちHostaperm Red Violet ER−02,Hostaperm Violet RL Special,Hostaperm Red P2GL−WD、およびHostaperm Blue B2G(すべてClariant
Corporation,500 Washington Street,Coventry RI 02816より市販されている)を用いた。製造者によると、これらの有機顔料は約50〜100nmの範囲における平均粒子サイズを有する。第一の複合体粒子の調製のみが詳細に記載されるが、他のものもまったく同様な様式で生成した。
【0027】
パートA:有機顔料によるチタニアのコーティング
10重量%のポリ(ビニルピロリドン)(PVP)溶液を、500mL三角フラスコに脱イオン水(180g)およびポリ(ビニルピロリドン)(20g(Aldrich Chemical Company)、分子量約360,000)を充填することにより生成した。このフラスコを次いで、ホットプレート上に置き、すばやく磁力撹拌および低温加熱し(約45℃の溶液温度)、ならびに3時間混合した。フラスコを熱源から除き、ならびに連続的に撹拌しながら冷却させた。別の250mL遠心分離ボトルにチタニア(du Pont R−794、60g)および脱イオン水(180g)を充填した。このボトルを激しく振動し、ならびに2時間超音波処理し、顔料を分散させた。この生じたチタニアスラリーをPVP溶液にゆっくり加え(まだすばやい撹拌下で)、そしてこの混合物を一晩反応させた。この混合物を次に2つの750mLプラスチックボトルに分け、そして3500rpmで10分間遠心分離してポリマーコーティング顔料を分離し、上澄みをデカンテーションし、ならびに廃棄した(本実施例で記載するすべての遠心分離は、Beckman GS−6 centrifugeにより実施された(Beckman Coulter,Inc.,Fullerton,CA 92834より入手可能))。脱イオン水(約300g)をそれぞれの遠心分離ボトルに加え、そして顔料を振動しながら再分散した。このボトルを次いで、3500rpmで10分間再度遠心分離し、そして上澄みを再度デカンテーションし、ならびに廃棄した。脱イオン水(90g)をそれぞれのボトルに加え、そして顔料を超音波処理により再分散し、次の段階へすぐに使用されるポリマーコーティングされたチタニア分散物を提供した。
【0028】
500mL三角フラスコに、このポリマーコーティングされた顔料分散物(180gの水中に約60gの顔料)を充填した。別の250mLプラスチックボトルに、Clariant Hostaperm Red Violet ER−02 有機顔料(20g)を脱イオン水(180g)に数時間超音波処理することにより分散した。生じた有機顔料スラリーを上記チタニアスラリーにすばやく磁気撹拌しながらゆっくり加えた。生じた顔料混合物を1時間撹拌し、次いで1Lプラスチックボトル(エタノール(約500mL)を充填)に排出し、ならびに3時間超音波処理した。この顔料混合物を次いで、2つの750mLプラスチックボトルに分けて、ならびに3500rpmで10分間遠心分離し、上澄みをデカンテーションし、ならびに廃棄した。エタノール(約300g)をそれぞれの遠心分離ボトルに加え、そして顔料を振動させることにより再分散した。このボトルを再度3500rpmで10分間遠心分離し、上澄みを再度デカンテーションし、ならびに廃棄した。この生成した複合体顔料を一晩空気乾燥し、そして95℃で2日間オーブン乾燥した。最後に、この複合体顔料をすり鉢および乳棒を用いて手ですり潰した。
【0029】
パートB:複合体顔料の表面官能基化
上記パートAで調製したすり潰した顔料(70g)をエタノール中(180g)に高せん断撹拌し(18.5krpm、7.5分間)、次いで1時間の超音波処理により分散した。脱イオン水(55g)および水酸化アンモニウム(2mL)を生じたスラリーに加え、これを次いでさらに1時間超音波処理した。別に、高速磁力撹拌器を備えた1L三角フラスコにエタノール(480mL)、脱イオン水(5mL)および水酸化アンモニウム(5.2mL)を充填した。3−(N−スチリルメチル−2−アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(55mLの40%メタノール溶液、United Chemical Technologies,Inc.,2731 Bartram Road Bristol,PA 19007−6893より)を加え、そしてこの混合物を5分撹拌した。上記顔料スラリーを上記三角フラスコにゆっくり加え、そして生じた反応混合物を15分撹拌した。この反応混合物を2つの750mLプラスチックボトルに分け、ならびに3500rpmで10分間遠心分離し、上澄みを再度デカンテーションし、ならびに廃棄した。エタノール(約500g)をそれぞれの遠心分離ボトルに加え、そして顔料を振動させることにより再分散した。このボトルを再度3500rpmで10分間遠心分離し、上澄みを再度デカンテーションし、ならびに廃棄した。生成したシラン官能基化顔料を一晩空気乾燥し、そして65℃で2時間減圧乾燥した。最後に、この顔料をすり鉢および乳棒を用いて手ですり潰した。
【0030】
パートC:複合体顔料のポリマーコーティング
上記パートBで生成した乾燥顔料をトルエン(60mL)およびラウリルメタクリレート(60mL)の混合物中に高せん断撹拌し(18.5krpm、7.5分間)、分散した。生じたスラリーを、高速磁力撹拌器を備えた250mL丸底フラスコに移し、65℃に油浴で加熱した。このフラスコを窒素でパージした。4,4’−アゾビスイソブチロニトリル開始剤(AIBN、0.6g)をトルエン(12mL)に別に溶解し、そして上記反応フラスコにピペットで加えた。生じた混合物を、窒素下において65℃で一晩反応させた。次いで窒素を除き、酢酸エチル(約100mL)をこのフラスコに加えた。生じた混合物を2つの250mLプラスチックボトルに分け、そして追加の酢酸エチル(約100mL)をそれぞれのボトルに加えた。このボトルを激しく振動し、そして3500rpmで15分間遠心分離した。次いで上澄みの一定分量をフリーポリマー試験のために除去し、そして残りをデカンテーションし、ならびに廃棄した。この顔料をそれぞれのボトルに酢酸エチル(約200mL)加え、激しく振動させて顔料を分散させ、ならびに3500rpmで15分間遠心分離し、上澄みをデカンテーションし、ならびに廃棄することにより2回洗浄した。生じたポリマーコーティングされた顔料を一晩空気乾燥し、次いで減圧下で65℃で一晩乾燥し、そしてすり鉢および乳棒を用いて手ですり潰した。このポリマーコーティングされた顔料のIsopar E中の40重量%分散物を調製し、数時間超音波処理し、ならびに一晩ロールミル上で混合した。
【0031】
パートD:内部相の調製
カプセル化電気泳動媒質の内部相(180g、約150mL)を、上記パートCで生成されたポリマーコーティングされた顔料スラリー(67.50g)と90.00gのポリマーコーティングされたチタニアのIsopar G中60重量%のストック溶液(95:5モル%のラウリルメタクリレートと2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレートとのコポリマー(上述の米国特許第6,822,782号に記載のように実質的に調製された)でコーティングされたチタニア)、充填剤(charging agent)(Avecia Solsperse 17000、Isopar E中10重量%溶液、8.10g)、界面活性剤(Span85、0.41g)とIsopar E(14.00g)溶媒を混合することにより生成した。この分散物をロールミル上で一晩混合した。
【0032】
パートE:電気泳動ディスプレイのカプセル化および調製
500mLジャケット型反応器を40℃に加熱し、そして脱イオン水(240g)および乾燥ゼラチン(10g)を充填した。生じた混合物を1時間静置させ、ゼラチンを膨張させた。この期間後、このゼラチン溶液をゆっくり(100rpm)、オーバーヘッド撹拌器で30分撹拌した。別に、アカシア(10g)を脱イオン水(98.3g)に溶解し、そして生じた溶液を40℃に加熱した。また別に、上記パートDで調製した内部相を40℃に加熱し、次いで約2分の期間をかけて、上記ゼラチン溶液に加えた。このゼラチン溶液を、加えながら撹拌し(350rpm)、この追加は上記内部相を滴下ろうとを通して導入することにより実施され、この滴下ろうとの出口はゼラチン溶液の表面より下に置いた。この内部相の添加が完了した後、撹拌の速度を増加し(約750rpmまで)、そして内部相を約40μmの平均直径を有する液滴に乳化するために撹拌を1時間40℃で続けた。
【0033】
生成したエマルジョンを脱イオン(153.3g)で希釈し、40℃に加温し、そしてアカシア溶液を加えた。生じた混合物のpHを10%酢酸水溶液を用いて4.80に低下させ、そして撹拌をさらに40分続けた。次いでこの混合物の温度を10℃に2時間かけて低下させ、そして2.5gの50%グルタルアルデヒドを加えた。添加後、この混合物を徐々に25℃に加温し、ならびにさらに12時間激しく撹拌した。最後に撹拌を止め、そして混合物を750mLプラスチックボトルに排出した。
【0034】
生成したカプセルをサイズごとに分離し、30〜50μm直径の分布(約40μmの平均直径)を提供した。この分離は、このカプセルを120秒間38μmふるいで、次いで120秒間25μmふるいで、ふるいにかけ、最終カプセルスラリーを生成した。
【0035】
生じたカプセルスラリーを遠心分離し、そしてpHを1%水酸化アンモニウム水溶液を添加することにより8.0以上に上げた。次いでこのカプセルスラリーをポリウレタンバインダーと、8重量部のカプセルに対して1重量部のバインダーの比率で混合させ;1%ヒドロプロピルメチルセルロース水溶液を増粘剤として加え(スラリー中のHPMCの所望の重量留分0.002を有する);そして純粋なTriton X−100を界面活性剤として加えた(所望の重量留分0.001を有する)。この生じたスラリーを1時間撹拌した。
【0036】
生成したスラリーを、酸化インジウムスズで1つの表面をコーティングされた5ミル(127μm)厚さポリエステルフィルム上にバーコーティングした。このスラリーは酸化インジウムスズで被覆された表面上にコーティングされた。このコーティングされたフィルムを60℃で15分間オーブン乾燥し、単一層のカプセルを本質的に含む約30μm厚さの電気泳動媒質を生成した(上述の米国特許第6,839,158号を参照のこと)。
【0037】
この膜から、前面積層をカプセル層上にドープされたポリウレタン接着剤を積層することにより生成した(この積層の構造の説明については、上述の米国特許第6,982,178号を参照のこと)。次いでこの前面積層を分割されたグラファイト後面に積層し(この後面はポリエステル膜上のグラファイト層を含む)、これらの電気光学性質の測定に適した本発明の実験用電気光学ディスプレイを生成した。
【0038】
パートF:顔料の特徴
上記パートCで生成される本発明の最終複合体顔料(以下の表で「FCP」と示される)および種々の中間体生成物を熱重量分析に供した。この試験される中間体生成物は:
(a)PVPコーティング前の粗製チタニア(以下の表で単に「チタニア」と示される);
(b)上記パートAの中間段階で生成されるPVPコーティングを有するチタニア(以下の表で、「チタニア/PVP」と示される);
(c)上記パートAの最終生成物である、チタニア/PVP/有機複合体顔料(以下の表で「チタニア/OP」と示される);ならびに
(d)上記パートBの最終生成物である、シラン化複合体顔料(以下の表で「SP」と示される)
である。
【0039】
以下の表は、400℃以下および700℃以下のそれぞれの材料の重量損失を示す。「Δ」の見出しのある欄は、関連の生成物の重量損失と中間の前生成物(すなわち表の前工程の材料)との間の差異を示す。
【0040】
【表1】

表のデータは、上記で議論の本発明の複合体顔料の構造と完全に一致する。複合体顔料を調製するための方法の第一段階において、コア無機顔料をポリ(ビニルピロリドン)(PVP)で処理し、1.5〜2.1重量%のポリマーが顔料表面に吸着される。チタニア粒子の半径が製造者により主張された半径(200nm)であると仮定される場合、PVPのこの量は2.0〜2.8mg/mの表面に対応する。有機顔料ER−02の添加は、非常に多くの量の有機材料を有する材料に誘導し、この有機顔料は材料に結合しており、30.4%の全重量損失で、ほとんど温度>400℃で誘導する。有機顔料は、70nmの直径を有し、1.49g/mLを有するように製造者により提示される。コア顔料の単層が、このサイズの球状粒子の平方最密配列(square,close−packed array)で覆われると仮定する場合、有効密度は0.521.49=0.78g/mLに低減される。したがって、サンプルの30.4%が有機物の場合、69.6%がチタニアであり、5.22m/gの表面積を有する。この領域における70nm厚さの層は、0.36mLの容積または約0.285gを有し、29重量%に対応する。観測された顔料の量は(30.4−2.1)=28.3%であり、この理論計算とほとんど正確に一致する。
【0041】
シランとのさらなる反応は、このタイプの表面官能基化反応に代表的な、約1.4%の有機材料のさらなる増加を有する表面官能基化顔料に誘導する。続くポリマー化反応は、最終的に約10%のさらなる重量増加を有するポリマーグラフト化複合体顔料粒子を生じる。グラフト化ポリマーシェルがこのタイプの測定において揮発するのを以前観測している場合、このさらなる重量増加は、全重量損失と低温(<400℃)領域の両方において観測される。グラフト化ポリマーの量はまた、単一の顔料上の他のグラフト化反応で観測される量と同様である。
【0042】
パートG:電気光学性質
上記パートEで調製された実験用カプセル化電気泳動ディスプレイは、優れた電気光学特性を有することが見出された。その白色状態において、電気光学値は76.4L、2.7aおよび−2.5bであり、これは明るく、ほぼ中性の白色である。その暗色状態において、電気光学値は52.7L、25.7aおよび−8.6bであり、明るくわずかに青みがかった赤色に対応する。製造者により供給された着色パッチにより示される純粋な顔料の色は、49.1L、60.6aおよび−9.5bを有する。したがって、本発明の複合体顔料によってデバイスに与えられた色は、純粋な有機顔料に対していくらか明るく(lighter)、そして彩度を下げるが、類似の色相を有する。
【0043】
添付の図面の単独の図は、500ミリ秒パルスおよび1000ミリ秒パルスの可変電圧に対する実験用ディスプレイの応答を示す。この図は、ディスプレイに対するすぐれた電気光学応答を示し、これらのパルス長において、約8〜10Vの電圧で達成される電気光学彩度(すなわち極限光学状態)を有する。
【0044】
上述より、本発明は、明るい散乱性顔料を用いた電気泳動ディスプレイのための明るい着色粒子を提供しうることが理解される。本発明は、特にフルカラーパターンのディスプレイのために使用され得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。

【図1】
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【公開番号】特開2013−54389(P2013−54389A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−272277(P2012−272277)
【出願日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【分割の表示】特願2009−519708(P2009−519708)の分割
【原出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【出願人】(500080214)イー インク コーポレイション (148)
【Fターム(参考)】