説明

電気泳動表示シート、電気泳動表示装置および電子機器

【課題】表示色を変更する際の応答性(反応性)に優れるとともに、高コントラストで優れた色表示特性を発揮することのできる電気泳動表示シート、電気泳動表示装置および電子機器を提供すること
【解決手段】電気泳動表示装置1は、電気粘性効果を示す粒子Aを含む分散液4が入れられた収容部33を有する表示層5と、表示層5の視認側に設けられた上部電極(第1の電極)61およびその反対側に設けられた下部電極(第2の電極)62とを有している。そして、上部電極61および下部電極62間に電圧を印加して、表示層5(収容部33)に電界を生じさせたとき、分散液4中の粒子Aが電界の方向に沿って列を作るように局所的に集中するよう構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示シート、電気泳動表示装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、電子ペーパーの画像表示部を構成するものとして、粒子の電気泳動を利用した電気泳動ディスプレイが知られている(例えば、特許文献1参照)。電気泳動ディスプレイは、優れた可搬性および省電力性を有していて、電子ペーパーの画像表示部として、特に適している。
特許文献1には、対向配置された前面電極板および背面電極板と、これらの間に設けられたカプセル型電気泳動層とを有する表示装置(マイクロカプセル型電気泳動式表示パネル)が記載されている。カプセル型電気泳動層には、正に帯電する白色粒子と、負に帯電する黒色粒子(着色粒子)を分散させた分散液が充填されたマイクロカプセルが多数含まれている。このような表示装置は、前面電極板および背面電極板間に電圧を印加することにより、マイクロカプセル内の白色粒子および黒色粒子を、それぞれ、所定方向に泳動させることにより、前面電極板を介して視認される色(表示色)を変更するようになっている。
【0003】
より具体的には、前面電極板が負、背面電極板が正となるように前面電極板および背面電極板間に電圧を印加すれば、白色粒子が前面電極板側、黒色粒子が背面電極板側にそれぞれ移動し、その結果、表示色が白色となる。
反対に、前面電極板が正、背面電極板が負となるように前面電極板および背面電極板間に電圧を印加すれば、黒色粒子が前面電極板側、白色粒子が背面電極側にそれぞれ移動し、その結果、表示色が黒色となる。
【0004】
特許文献1のように粒子の電気泳動を利用した表示装置においては、例えば、表示色を白色から黒色に変更するためには、黒色粒子を背面電極側から前面電極側に移動(泳動)させる必要があり、黒色粒子の泳動距離が長くなってしまう(表示色を黒色から白色に変更する際の白色粒子の泳動距離についても同様である)。そのため、このような表示装置では、白色表示から黒色表示に切り替える際に要する時間が長くなってしまう。すなわち、表示色を変更する際の応答性(反応性)が悪いという問題(第1の問題)がある。
また、表示色の変更の際には、白色粒子と黒色粒子とが互いに反対方向に移動するため、例えば、黒色表示から白色表示に変更する場合、白色粒子と黒色粒子とがすれ違う際に、多数の白色粒子間に黒色粒子が取り込まれてしまい、白色の明度が低下する場合がある。これにより、表示コントラストが低下し、視認性が悪化するという問題(第2の問題)がある。
【0005】
なお、前述した第1の問題を解消するために、例えば、白色粒子および黒色粒子の帯電量をそれぞれ大きくし、これら粒子の電気泳動移動度を大きくすることが考えられるが、白色粒子および黒色粒子の帯電量をそれぞれ大きくしてしまうと、白色粒子と黒色粒子とが静電的に吸着し、白色粒子と着色粒子とを含む粒子の集合体が形成されてしまう。これにより、表示コントラストが低下するという問題が発生する。
以上より、特許文献1に記載の表示装置においては、表示色変更の際の優れた応答性と、高コントラストの優れた色表示特性との両立が困難である。
【0006】
【特許文献1】特開2008−58358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、表示色を変更する際の応答性(反応性)に優れるとともに、高コントラストで優れた色表示特性を発揮することのできる電気泳動表示シート、電気泳動表示装置および電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の電気泳動表示シートは、電気粘性効果を示す粒子を含む分散液が入れられた収容部を有する表示層と、
前記表示層の視認側に設けられた第1の電極およびその反対側に設けられた第2の電極とを有し、
前記第1の電極および前記第2の電極間に電圧を印加して、前記表示層に電界を生じさせたとき、前記分散液中の前記粒子が前記電界の方向に沿って列を作るように局所的に集中するよう構成したことを特徴とする。
これにより、表示色を変更する際の応答性(反応性)に優れるとともに、高コントラストで優れた色表示特性を発揮することができる。
【0009】
本発明の電気泳動表示シートでは、前記粒子は、白色の粒子であることが好ましい。
これにより、粒子の色が視認される白色表示状態と、その他の色が視認される状態とをそれぞれ鮮明に表示することができる。
本発明の電気泳動表示シートでは、前記粒子の平均粒径は、0.1〜5μmであることが好ましい。
これにより、粒子の色が視認される状態と、その他の色が視認される状態とを、より明確に切り替えることができ、表示コントラストが向上する。
【0010】
本発明の電気泳動表示シートでは、前記分散液中における、前記粒子の含有率は、15〜35wt%であることが好ましい。
これにより、粒子の色が視認される状態と、その他の色が視認される状態とを、より明確に切り替えることができ、表示コントラストが向上する。
本発明の電気泳動表示シートでは、前記表示層は、該表示層の前記第2の電極側に前記粒子の色と異なる色の有色部を有していることが好ましい。
これにより、粒子の色が視認される状態と、有色部の色が視認される状態とを取ることができ、2色表示が可能となる。
【0011】
本発明の電気泳動表示シートでは、前記第1の電極および前記第2の電極間に電圧を印加して、前記粒子を前記電界の方向に沿って列を作るように局所的に集中させ、前記粒子の列同士の隙間から前記有色部を視認可能とすることにより、前記第1の電極を介して視認される前記収容部内の色を前記有色部の色とする第1の状態と、
前記電圧の印加を解除して、前記列をなすよう集合した前記粒子を前記分散液中に分散させることにより前記有色部が視認されないようにし、前記第1の電極を介して視認される前記収容部内の色を前記粒子の色とする第2の状態とをとることができることが好ましい。
これにより、簡単かつ確実に、第1の状態と第2の状態とを切り換えることができる。
【0012】
本発明の電気泳動表示シートでは、前記有色部は、前記収容部内に入れられた着色粒子で構成されていることが好ましい。
これにより、有色部の形成が比較的容易となる。
本発明の電気泳動表示シートでは、前記着色粒子は、前記収容部の内壁に固着していることが好ましい。
これにより、表示層に電界が生じていようがなかろうが、着色粒子は、収容部の内壁の下側に位置し続けることとなるため、例えば、着色粒子が、第1の電極側に移動することを防止でき、粒子の色が表示色として視認される状態にて、くすみやムラ等のない粒子本来の色を表示することができる。
【0013】
本発明の電気泳動表示シートでは、前記着色粒子は、正または負の電荷を有する粒子であることが好ましい。
これにより、着色粒子を容易に収容部の内壁に固着することができる。
本発明の電気泳動表示シートでは、前記有色部は、前記収容部および前記第2の電極の間に設けられた着色層で構成されていることが好ましい。
これにより、有色部の形成が比較的簡単となる。また、着色膜が分散液と接触しないため、着色膜の劣化(例えば、色褪せ、色むらの発生等)が抑制される。
【0014】
本発明の電気泳動表示シートでは、前記第1の電極は、前記表示層の平面視にて、前記収容部の所定部分に偏在して設けられており、前記電圧の印加時に、当該偏在ヵ所に前記粒子が集中するよう構成されていることが好ましい。
これにより、粒子を偏在させる位置を規定(決定)することができるため、より鮮明な色表示が可能となる。
【0015】
本発明の電気泳動表示シートでは、前記第1の電極は、前記表示層の平面視にて、前記収容部の縁部に沿って設けられていることが好ましい。
これにより、第1の電極および第2の電極間に電圧を印加したとき、粒子を収容部の縁部に集中させることができる。そのため、収容部の中央部に粒子が存在しない比較的大きい領域を形成することができ、例えば、着色部の色が表示色として視認される状態にて、その色をより鮮明に表示することができる。
【0016】
本発明の電気泳動表示シートでは、前記第1の電極は、前記表示層の平面視にて、前記収容部の中央部に設けられていることが好ましい。
これにより、第1の電極および第2の電極間に電圧を印加したとき、粒子を収容部の中央部に集中させることができる。そのため、収容部の中央部に粒子が存在しない比較的大きい領域を形成することができ、例えば、着色部の色が表示色として視認される状態にて、その色をより鮮明に表示することができる。
本発明の電気泳動表示装置は、本発明の電気泳動表示シートと、前記マイクロカプセル含有層の前記裏面側電極側に設けられた基板とを備えることを特徴とする。
これにより、表示色を変更する際の応答性(反応性)に優れるとともに、高コントラストで優れた色表示特性を発揮することができる。
【0017】
本発明の電気泳動表示装置では、前記表示層は、平面状に配設された複数の前記収容部を有しており、前記複数の収容部のうちの1または2以上の収容部ごとに、前記電界の発生・解除を選択可能となっていることが好ましい。
これにより、多数の画素が集合してなる画像を表示することができる。
本発明の電子機器は、本発明の電気泳動表示装置を備えることを特徴とする。
これにより、表示色を変更する際の応答性(反応性)に優れるとともに、高コントラストで優れた色表示特性を発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の電気泳動表示シート、電気泳動表示装置および電子機器を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<電気泳動表示装置>
≪第1実施形態≫
まず、本発明の電気泳動表示シートを適用した電気泳動表示装置(本発明の電気泳動表示装置)の第1実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本発明の電気泳動表示装置の第1実施形態を示す模式的縦断面図、図2は、図1に示す電気泳動表示装置を上方から見たときの模式的平面図、図3は、電気粘性効果について説明するための模式的断面図、図4は、図1に示す電気泳動表示装置の作動を説明する模式的断面図、図5は、図3に示す電気泳動表示装置を上方からみたときの模式的平面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図1、図3、図4中の上側を「上」、下側を「下」と言い、図2、図5中の紙面手前側を「上」、紙面奥側を「下」と言う。
【0020】
図1に示すように、電気泳動表示装置1は、回路基板(バックプレーン)9と、回路基板9の上面に接合された電気泳動表示シート2とで構成されている。
回路基板9は、平板状の基部91と、基部91に設けられた、例えばTFT等のスイッチング素子を含む回路(図示せず)とを有している。
一方、電気泳動表示シート2は、表示層5と、表示層5の上側に設けられた上部電極(第1の電極)61と、表示層5の下側に設けられた下部電極(第2の電極)62とを有している。
【0021】
表示層5は、下方に向けて凹没する複数の凹部31aが規則的(例えば、マトリックス状)に形成された基体31と、基体31の上面に設けられ、各凹部31aの上部開口を塞ぐように設けられた蓋体32とを有している。基体31と蓋体32とは、液密に接合されており、各凹部31aの内面(内壁)と蓋体32の下面とにより、複数の収容部33が画成されている。この複数の収容部33には、それぞれ、後述する分散液4が入れられている(封入されている)。
基体31および蓋体32は、それぞれ、可撓性を有するもの、硬質なもののいずれであってもよいが、可撓性を有するものであるのが好ましい。可撓性を有する基体31および蓋体32を用いることにより、可撓性を有する電気泳動表示装置1、すなわち、例えば電子ペーパーを構築する上で有用な電気泳動表示装置1を得ることができる。
【0022】
基体31および蓋体32をそれぞれ可撓性を有するものとする場合、その構成材料としては、それぞれ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0023】
なお、基体31および蓋体32のうち、少なくとも蓋体32は、光透過性を有するもの、すなわち、実質的に透明(無色透明、有色透明または半透明)とされる。これにより、収容部33内に入れられた分散液4中の後述する第1の粒子(粒子)Aおよび第2の粒子(着色粒子)Bの状態、すなわち電気泳動表示装置1に表示された情報(画像)を、電気泳動表示装置1の上方(上部電極61側)から目視により容易に認識することができる。
なお、表示層5の厚さ(すなわち、蓋体32の上面と基体31の下面の離間距離)は、特に限定されないが、10〜500μm程度であるのが好ましく、20〜100μm程度であるのがより好ましい。
【0024】
次に、各収容部33に封入(充填)された分散液4について説明する。なお、各収容部33に充填された分散液4は、それぞれ同様の構成であるため、1つの収容部33に充填された分散液4について代表して説明し、その他の収容部33に充填された分散液4については、その説明を省略する。
図1に示すように、分散液4は、互いに色の異なる第1の粒子Aおよび第2の粒子Bを分散媒41に含ませてなるものである。
【0025】
分散媒41は、実質的に無色透明であることが好ましい。このような分散媒41としては、比較的高い絶縁性を有するものが好適に使用される。かかる分散媒41としては、例えば、各種水(蒸留水、純水、イオン交換水等)、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール類、メチルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、ぺンタン等の脂肪族炭化水素類、シクロへキサン等の脂環式炭化水素類、ベンゼン、トルエンのような長鎖アルキル基を有するベンゼン類等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン化炭化水素類、ピリジン、ピラジン等の芳香族複素環類、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類、カルボン酸塩、流動パラフィンなどの鉱物油類、リノール酸、リノレン酸、オレイン酸等の植物油類、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、ハイドロフルオロエーテル等のフッ素系液体またはその他の各種油類等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
【0026】
また、必要に応じて、分散媒41(分散液4)中には、必要に応じて、例えば、電解質、界面活性剤(アニオン性またはカチオン性)、金属石鹸、樹脂材料、ゴム材料、油類、ワニス、コンパウンド等の粒子からなる荷電制御剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シラン系カップリング剤等の分散剤、潤滑剤、安定化剤等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。
界面活性剤としては、例えば、アルケニルコハク酸エステル、アルケニルコハク酸ポリイミド等が挙げられる。
【0027】
次いで、分散媒41中止含まれる第1の粒子Aおよび第2の粒子Bについてそれぞれ説明する。
第1の粒子Aおよび第2の粒子Bは、互いに異なる色をなしている。第1の粒子および第2の粒子Bの色としては、互いに異なっていれば、それぞれ、特に限定されず、例えば、白色、黒色またはこれらの中間色(灰色)などの無彩色や、赤色、青色、緑色などの有彩色が挙げられる。
【0028】
また、第1の粒子Aおよび第2の粒子Bの色の組み合わせとしては、特に限定されず、例えば、第1の粒子Aが白色の粒子、第2の粒子Bが黒色の粒子の組み合わせや、第1の粒子Aが青色の粒子、第2の粒子Bが赤色の粒子の組み合わせ等が挙げられる。
本実施形態では、第1の粒子Aが白色の粒子であり、第2の粒子Bが黒色の粒子であるものについて説明する。
【0029】
第1の粒子Aは、誘電率の比較的大きい粒子であって、電気粘性効果を示す粒子である。この「電気粘性効果を示す粒子」とは、電界が作用していないときには、図3(a)に示すように分散媒中に分散しているが、電界が作用することにより、図3(b)に示すように、誘電分極して双極子が生じ、同様にして誘電分極した他の粒子Aとの間で、互いの双極子による電気的な力により引き寄せ合い、電界の方向に沿って列を作るように(鎖状に)集合・配列する性質を有する粒子のことを言う。
【0030】
そのため、第1の粒子Aは、収容部33に電界が生じていない場合(上部電極61および下部電極62間に電圧が印加されていない場合)には、図1に示すように分散媒41中に分散しているが、収容部33に電界が生じると(上部電極61および下部電極62間に電圧が印加されている場合)、図3に示すように、上下方向(電界の方向)に列をなすように集中する。なお、以下では、第1の粒子Aが複数集合してなる集合体を、単に「粒子集合体A’」とも言う。
このような第1の粒子Aの誘電率は、分散媒41の誘電率より大きいことが好ましい。これにより、上部電極61および下部電極62間に電圧を印加した際に、より確実に、第1の粒子Aを誘電分極させることができる。
【0031】
また、第1の粒子Aは、全体として中性の粒子である。言い換えれば、第1の粒子Aは、電界が作用していないときに、実質的に電荷が0(ゼロ)の粒子である。これにより、上部電極61および下部電極62間に電圧が印加されている場合に、第1の粒子Aが上部電極61または下部電極62に向けて電気的に吸着されるようにして移動(電気泳動)することが防止され、より確実に、図3に示すような第1の粒子Aが列をなすように集中する状態をとることができる。
【0032】
また、第1の粒子の色(色彩)としては、前述したように特に限定されないが、前従したような色の中でも特に白色であることが好ましい。これにより、後述する白色表示状態と黒色表示状態とをそれぞれ鮮明に表示することができる。
また、第1の粒子Aの平均粒径は、特に限定されないが、0.1〜5μm程度であるのが好ましく、0.1〜3μm程度であるのがより好ましい。これにより、図1に示す状態(電圧非印加状態)では、第1の粒子Aの分散性が向上し、かつ、図4に示す状態(電圧印加状態)では、表示層5の平面視にて、収容部33の開口面積に対する粒子集合体A’の面積の割合が小さくなる。また、第1の粒子Aが分散している状態にて、粒子A間の隙間が小さくなり、より鮮明な白色を表示することができる。そのため、白色表示状態と黒色表示状態とをより確実に切り替えることができるとともに、白色および黒色をそれぞれ鮮明に表示することができる。
【0033】
これに対して、第1の粒子Aの平均粒径が上記下限値未満であると、主に可視光域において十分な隠蔽率を得ることができず、その結果、電気泳動表示装置1の表示コントラストが低下するおそれがある。
一方、第1の粒子Aの平均粒径が上記上限値を超えると、表示層5の平面視にて、収容部33の開口面積に対する後述する第1の粒子集合体A’の面積の割合が大きくなり、表示コントラストが低下するおそれがある。また、その種類等によっては、第1の粒子Aが分散液4中において沈降し易くなり、電気泳動表示装置1の表示品質が劣化すること等の問題が生じるおそれがある。
【0034】
また、分散液4中における第1の粒子Aの含有率は、15〜35wt%程度であるのが好ましく、20〜30wt%程度であることがより好ましい。これにより、図1に示す状態(電圧非印加状態)では、電気泳動表示装置1の上方から収容部33を目視したときに、第2の粒子Bを視認できないようにするのに十分な量の第1の粒子Aを分散液4中に分散させることができ、かつ、図3に示す状態(電圧印加状態)では、表示層5の平面視にて、収容部33の開口面積に対する粒子集合体A’の面積の割合を十分に小さくすることができる。そのため、白色表示状態と黒色表示状態とをより確実に切り替えることができるとともに、白色および黒色をそれぞれ鮮明に表示することができる。
【0035】
これに対して、第1の粒子Aの含有率が上記下限値未満であると、第1の粒子Aの大きさ等によっても異なるが、分散液4中に分散する第1の粒子Aの量が、電気泳動表示装置1の上方から収容部33を目視したときに第2の粒子Bを視認できないようにするには不十分となり、表示コントラストの低下等を招くおそれがある。具体的には、白色表示状態での白色の明度が低くなってしまい、例えば、表示色として白色ではなく灰色(薄い灰色)が視認されるおそれがある。
一方、第1の粒子Aの含有率が上記上限値を超えると、表示層5の平面視にて、収容部33の開口面積に対する第1の粒子集合体A’の面積の割合が大きくなり、表示コントラストが低下するおそれがある。具体的には、黒色表示状態での黒色の明度が高くなってしまい、例えば、表示色として黒色ではなく灰色(濃い灰色)が視認されるおそれがある。
【0036】
次いで、第2の粒子Bについて説明する。
第2の粒子Bは、図1に示すように、収容部33の下側に偏在している。そのため、電気泳動表示装置1においては、収容部33内の下側に第2の粒子Bが位置し、その上側に第1の粒子Aが位置(分散)するようになっている。このように、第2の粒子Bが収容部33の下側に偏在(集中)することにより、第1の粒子Aの色とは異なる色(黒色)の有色部B’が構成されることとなる。このような有色部B’を設けることにより、白色表示状態と黒色表示状態とをとることができ、モノクロ表示(2色表示)が可能となる。また、有色部B’を第2の粒子Bで構成することにより、有色部B’の形成が比較的容易となる。
【0037】
特に、本実施形態では、第2の粒子Bは、収容部33の内壁に固着(接着)しており、分散媒41中を移動できない状態となっている。そのため、表示層5に電界が生じていようがなかろうが、第2の粒子Bは、収容部33の内壁の下側に位置し続けることとなる。これにより、有色部B’を確実に維持することができる。また、例えば、第2の粒子Bが、振動や電界の作用により、上部電極61側に移動することを防止できるため、電気泳動装置1では、白色表示状態にて、くすみやムラ等のない白色(すなわち、第1の粒子A本来の色)を表示することができる。
このような第2の粒子Bとしては、正または負に帯電した粒子(電気泳動粒子)を用いることが好ましい。これにより、以下に説明するように、第2の粒子Bを比較的容易に、収容部33の内壁に固着することができる。なお、以下では、説明の便宜上、第2の粒子Bとして負に帯電した粒子を用いたものについて代表して説明する。
【0038】
まず、第2の粒子Bが分散媒41中に分散している状態にて、上部電極61が負、下部電極62が正となるように、上部電極61および下部電極62間に比較的強い電圧を長時間印加する。すると、第2の粒子Bが下部電極62側に向けて移動(電気泳動)し、収容部33の下部電極62側の内壁に到達する。到達した後も比較的強い電圧を長時間印加し続けると、次第に、第2の粒子Bが収容部33の内壁に焼き付き、第2の粒子Bが収容部33の内壁に固着(接着)する。このような方法によれば、より確実にかつより容易に、第2の粒子Bを収容部33の内壁に固着することができる。
【0039】
このような第2の粒子Bの平均粒径は、特に限定されないが、0.1〜5μm程度であるのが好ましく、0.1〜3μm程度であるのがより好ましい。第2の粒子Bの平均粒径が上記下限値未満であると、収容部33の内壁との接触面積が小さくなってしまい、例えば、第2の粒子Bを固着させるために上部電極61および下部電極62間に印加する電圧の強さや印加時間によっては、第2の粒子Bを十分に収容部33の内壁に固着することができない場合がある。一方、第2の粒子Bの平均粒径が上記上限値を超えると、第2の粒子B同士の隙間が大きくなり、電気泳動表示装置1の表示コントラストが低下するおそれがある。
【0040】
以上説明したような第1の粒子Aおよび第2の粒子Bは、それぞれ、上述したような条件を満たしていれば、いかなるものをも用いることができ、特に限定はされないが、顔料粒子、樹脂粒子、セラミックス粒子またはこれらの複合粒子のうちの少なくとも1種が好適に使用される。これらの粒子は、製造が容易であるとともに、荷電の制御を比較的容易に行うことができるという利点を有している。この他にも、第2の粒子Bとして、金属粒子、金属酸化物粒子またはこれらの複合粒子のうちの少なくとも1種が好適に使用される。
【0041】
顔料粒子を構成する顔料としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック、チタンブラック等の黒色顔料、二酸化チタン、三酸化アンチモン、硫化亜鉛、亜鉛華等の白色顔料、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー等の黄色顔料、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドンレッド、クロムバーミリオン等の赤色顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、紺青、群青、コバルトブルー等の青色顔料、フタロシアニングリーン等の緑色顔料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
また、樹脂粒子を構成する樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、ロジン樹脂、ポリスチレン、ポリエステル、スチレンとアクリロニトリルを共重合したAS樹脂等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、複合粒子としては、例えば、顔料粒子の表面を樹脂材料で被覆したもの、樹脂粒子の表面を顔料で被覆したもの、顔料と樹脂材料とを適当な組成比で混合した混合物で構成される粒子等が挙げられる。
【0043】
また、第1の粒子Aの分散媒41中での分散性を向上させることを目的に、各第1の粒子Aの表面に、分散媒41と相溶性の高い高分子を物理的に吸着させたり、化学的に結合させたりすることができる。これらの中でも、第1の粒子Aの表面からの離脱着の問題から、高分子が化学的に結合しているものが特に好ましい。かかる構成とすれば、第1の粒子Aの見かけの比重が小さくなる方向に作用して、第1の粒子Aの分散媒41での親和性、すなわち分散性を向上させることができる。
【0044】
この場合、前記高分子の結合数は、1つの粒子において、300〜2500(個/μm)程度であるのが好ましく、500〜1600(個/μm)程度であるのがより好ましい。高分子の結合数を前記範囲内とすることにより、第1の粒子Aの分散媒41に対する親和性を高め、その分散性を向上させることができる。
このような高分子としては、例えば、第1の粒子Aと反応性を有する基と帯電性官能基を有する高分子、第1の粒子Aと反応性を有する基と長鎖アルキル鎖、長鎖エチレンオキシド鎖、長鎖フッ化アルキル鎖、長鎖ジメチルシリコーン鎖等を有する高分子、および、第1の粒子Aと反応性を有する基と帯電性官能基と長鎖アルキル鎖、長鎖エチレンオキシド鎖、長鎖フッ化アルキル鎖、長鎖ジメチルシリコーン鎖等を有する高分子等が挙げられる。
【0045】
上述したような高分子において、第1の粒子Aと反応性を有する基(以下、反応性基と称する。)としては、例えば、エポキシ基、チオエポキシ基、アルコキシシラン基、シラノール基、アルキルアミド基、アジリジン基、オキサゾン基、およびイソシアネート基等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を選択して用いることができるが、用いる第1の粒子Aの種類等に応じて、選択するようにすればよい。
以上、第1の粒子Aおよび第2の粒子Bについて説明したが、このような2種の粒子A、Bの分散媒41への分散は、例えば、ペイントシェーカー法、ボールミル法、メディアミル法、超音波分散法、攪拌分散法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて行うことができる。
【0046】
次いで、表示層5に電界を生じさせるための上部電極61および下部電極62についてそれぞれ説明する。
上部電極61は、表示層5の上面に設けられ、下部電極62は、表示層5の下面に設けられている。このような上部電極61および下部電極62は、それぞれ、膜状(シート状)をなしている。上部電極61と下部電極62との間に電圧を印加すると、これらの間に電界が生じ、この電界が表示層5に作用する。
【0047】
本実施形態では、上部電極61が共通電極とされ、下部電極62がマトリックス状(行列状)に分割された個別電極(スイッチング素子に接続された画素電極)とされており、上部電極61と1つの下部電極62とが重なる部分が1画素を構成する。本実施形態では、各下部電極62は、収容部33に対応して設けられているため、すなわち、1つの収容部33の下側に1つの下部電極62が設けられているため、1画素には、1つの収容部33が含まれていると言える。そのため、本実施形態では、1つの収容部33ごとに、電界の発生・解除を選択可能となっている。
なお、上部電極61も、下部電極62と同様に、複数に分割するようにしてもよい。
【0048】
上部電極61および下部電極62の構成材料としては、それぞれ、実質的に導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、金、銀、モリブデン、タンタルまたはこれらを含む合金等の金属材料、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素系材料、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等の電子導電性高分子材料、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルブチラール、ポリビニルカルバゾール、酢酸ビニル等のマトリックス樹脂中に、NaCl、LiClO、KCl、HO、LiCl、LiBr、LiI、LiNO、LiSCN、LiCFSO、NaBr、NaI、NaSCN、NaClO、NaCFSO、KI、KSCN、KClO、KCFSO、NHI、NHSCN、NHClO、NHCFSO、MgCl、MgBr、MgI、Mg(NO、MgSCN、Mg(CFSO、ZnCl、ZnI、ZnSCN、Zn(ClO、Zn(CFSO、CuCl、CuI、CuSCN、Cu(ClO、Cu(CFSO等のイオン性物質を分散させたイオン導電性高分子材料、インジウム錫酸化物(ITO)、フッ素ドープした錫酸化物(FTO)、錫酸化物(SnO)、インジウム酸化物(IO)等の導電性酸化物材料のような各種導電性材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0049】
その他、上部電極61および下部電極62の構成材料としては、それぞれ、例えば、ガラス材料、ゴム材料、高分子材料等の導電性を有さない材料中に、金、銀、ニッケル、カーボン等の導電性材料(導電性粒子)を混合して、導電性を付加したような各種複合材料も使用することができる。
このような複合材料の具体例としては、例えば、ゴム材料中に導電性材料を混合した導電性ゴム、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系等の接着剤組成物中に導電性材料を混合した導電性接着剤または導電性ペースト、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ナイロン(ポリアミド)、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等のマトリックス樹脂中に導電性材料を混合した導電性樹脂等が挙げられる。
【0050】
このような上部電極61および下部電極62の平均厚さは、それぞれ、構成材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、0.05〜10μm程度であるのが好ましく、0.05〜5μm程度であるのがより好ましい。
なお、上部電極61および下部電極62のうち、少なくとも上部電極61は、光透過性を有するもの、すなわち、実質的に透明(無色透明、有色透明または半透明)とされる。これにより、分散液4中における粒子A、Bの状態、すなわち電気泳動表示装置1に表示された情報(画像)を目視により容易に認識することができる。
【0051】
なお、上部電極61および下部電極62は、前述したような材料の単体からなる単層構造のものの他、例えば、複数の材料を順次積層したような多層積層構造のものであってもよい。すなわち、上部電極61および下部電極62は、それぞれ、例えば、ITOで構成される単層構造であってもよく、ITO層とポリアニリン層との2層積層構造とすることもできる。
以上、本実施形態の電気泳動表示装置1の構成について詳細に説明した。
【0052】
−電気泳動表示装置1の作動−
次いで、図1、図2、図4、図5に基づいて、電気泳動表示装置1の作動を説明する。なお、図1、図2、図4、図5は、それぞれ、説明の便宜上模式的に図示したもので、第1の粒子Aおよび第2の粒子Bの数、大きさなどは実際とは大きく異なるものである。また、図2および図5は、それぞれ、電気泳動表示装置1を上面から見たときの平面図であるが、説明の便宜上、1つの収容部33のみを図示し、その他の収容部33については、その図示を省略している。また、第1の粒子Aは白色の粒子であり、第2の粒子Bは黒色の粒子である。
【0053】
<1>白色表示(白色表示状態)
まず、白色を表示する方法について説明する。
第1粒子Aは、表示層5に電界が生じていない場合には、分散媒41中に分散している。この状態では、電気泳動表示装置1の上方から収容部33を見たとき、図2に示すように、白色の第1の粒子Aが収容部33のほぼ全域を覆うようになっており、第2の粒子Bを視認することができない。そのため、表示色(電気泳動表示装置1の上方から、すなわち、上部電極61を介して収容部33を見たときに視認される収容部33内の色)として、白色が視認される(第2の状態)。
【0054】
<2>黒色表示(黒色表示状態)
次いで、黒色表示について説明する。
図4に示すように、例えば上部電極61が負、下部電極62が正となるように、上部電極61および下部電極62間に電圧を印加すると、これら電極61、62の間に電界が発生する。すなわち、収容部33に電界が生じ、この電界の作用により、多数の第1の粒子Aがそれぞれ誘電分極する。誘電分極した第1の粒子A同士は、互いの双極子による電気的な力(静電引力)により引き寄せ合い、電界方向(上下方向)に沿って列を作るように局所的に集中する(すなわち、粒子集合体A’が1つまたは複数形成される)。なお、このとき、各粒子集合体A’の配置は予測できず、例えば、複数の粒子集合体A’がそれぞれ近接している場合や、複数の粒子集合体A’が不規則に散らばっている場合などが考えられる。
【0055】
このような状態では、図5に示すように、電気泳動表示装置1の上方から収容部33を見たとき、複数の粒子集合体A’の間等から、それらの下側に位置する黒色の第2の粒子B(有色部B’)が視認できるようになっている。そのため、表示色として、黒色が視認される(第1の状態)。
上部電極61および下部電極62間に電界が生じている間は、この黒色表示の状態が維持されるが、上部電極61および下部電極62間への電圧の印加を解除し、電界が消滅すると、第1の粒子Aが分散媒41中に分散し(すなわち、図1、図2の状態となり)、白色表示状態に復帰する。なお、分散媒の粘度を比較的高めておくことにより(例えばIsoparM等の粘度の高い分散媒を用いることにより)、電圧印加を解除しても、その状態を維持させることもできる。このときの分散媒の粘度は、2mPa・s程度であるのが好ましい。
【0056】
ここで、上部電極61が負、下部電極62が正となるように、上部電極61および下部電極62間に電圧を印加する場合について説明したが、この印加パターンは、第2の粒子Bとして負に帯電する粒子を用いた場合に特に有効である。具体的には、仮に前述したような焼き付けが不十分で、収容部33の内壁に固着されていない(すなわち分散媒41中を浮遊している)第2の粒子Bが存在したとしても、上記の印加パターンにより、その第2の粒子Bを下部電極62側に留めておくことができる。そのため、例えば、白色表示状態の際に、第2の粒子Bが収容部33の上面側に位置することがなく、高い表示コントラストを発揮することができる。
【0057】
なお、これと同様の理由から、第2の粒子Bとして正に帯電する粒子を用いた場合には、上部電極61が正、下部電極62が負となるように、上部電極61および下部電極62間に電圧を印加することが有効である。
以上のように、本実施形態の電気泳動表示装置1では、上部電極61および下部電極62間に電圧を印加するか否かを選択することにより、白色表示状態と黒色表示状態とを選択可能になっている。このような構成において、第1の粒子Aの移動を収容部33ごとに制御することによって、電気泳動表示装置1の表示面側には、所望の情報(画像)が表示される。
【0058】
なお、前述したような作動(第1の粒子Aの移動)から、電気泳動表示装置1においては、第1の粒子Aは、収容部33の下側に偏在する黒色の第2の粒子B(有色部B’)を視認可能とする状態と、視認不可能にする状態とを切り換えるシャッターのような機能を果たしているとも言える。
このような構成とすることにより、図1および図2に示す第1粒子Aが分散媒41中に分散している状態から、図4および図5に示す粒子集合体A’が形成された状態に変化する際の、第1の粒子Aの移動距離が比較的短くなるため、表示色の変更の際の応答性が向上する。
【0059】
より具体的に説明すれば、従来のように、白色粒子および黒色粒子がそれぞれ上部電極側および下部電極側に偏在する状態(白色表示の状態)と、白色粒子および黒色粒子がそれぞれ下部電極側および上部電極側に偏在する状態(黒色表示の状態)のうちから一方を選択するよう構成されている電気泳動表示装置では、表示色の切り替えを行う際に、白色粒子および黒色粒子をそれぞれ上部電極および下部電極間の離間距離(電極間距離)とほぼ同等の距離、移動(泳動)させなければならない。これでは、表示色切り替えの際の、白色粒子および黒色粒子の移動距離が長くなってしまい、表示色の切り替えの応答性(反応性)が低くなってしまう。
【0060】
これに対して、本実施系態の電気泳動表示シート2では、図1および図2に示す第1粒子Aが分散媒41中に分散している状態から、図4および図5に示す第1粒子集合体A’が形成された状態に変化する際の、第1の粒子Aの移動距離を、前述した従来の構成と比較して、短くすることができるため、表示色切り替えの応答性(反応性)が向上する。
また、本実施形態では、第2の粒子Bは、収容部33の内壁に固着しているため、分散媒41中を移動するのは、第1の粒子Aのみである。そのため、第1の粒子Aと第2の粒子Bとが混じり合うことがなく(例えば、多数の第1の粒子Aの間に第2の粒子Bが取り込まれてしまうことがなく)、高い表示コントラストを発揮することができる。
【0061】
すなわち、電気泳動表示装置1においては、表示色を変更する際の応答性(反応性)に優れるとともに、高コントラストで優れた色表示特性を発揮することができる。
特に本実施形態では、第1の粒子Aである白色の粒子が、有色部B’よりも上部電極61側に位置している。そのため、白色表示状態のときには、白色を鮮明に表示することができ、また、黒色表示状態のときは、白色の影響を受けずに、黒色を鮮明に表示することができる。
仮に、第1の粒子の色と第2の粒子の色とが反対の場合には、白色の有色部の上方に黒色の第1の粒子が位置することとなるため、白色表示状態としたときに、黒色の粒子集合部の影響により、白色の明度が低下するおそれがある。
【0062】
≪第2実施形態≫
次に、本発明の電気泳動表示装置の第2実施形態について説明する。
なお、図面としては、第1実施形態の説明に用いた図1、図2、図4、図5と同様であるため、図示を省略する。
以下、第2実施形態の電気泳動表示装置について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0063】
本発明の第2実施形態にかかる電気泳動表示装置は、第1の粒子Aが正または負に帯電している以外は、前述した第1実施形態の電気泳動表示装置と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
本実施形態では、第1の粒子として、第2の粒子Bの極性と反対の極性を有する粒子を用いている。すなわち、第2の粒子Bが負に帯電した粒子であれば、第1の粒子Aは正に帯電した粒子であり、第2の粒子Bが正に帯電した粒子であれば、第1の粒子Aは負に帯電した粒子である。以下では、説明の便宜上、第1の粒子Aとして、正に帯電した粒子を用いた場合について代表して説明する。
【0064】
ここで、第1の粒子Aの帯電量が大き過ぎると、上部電極61および下部電極62間に電圧を印加したとき(収容部33に電界が生じている状態)、上部電極61および下部電極62のうちの負となる電極(電位の低い方の電極)に向けて泳動してしまい、電界の方向に沿って鎖状に配列するという電気粘性効果を正常に発揮することができなくなる場合がある。
【0065】
そこで、本実施形態では、第1の粒子Aの帯電量を、電界が生じたときに電気粘性効果が支配的に発生する程度に小さく設定する。言い換えれば、収容部33に電界を生じさせたときに、負である電極に向けて泳動するように第1の粒子Aに働く静電的な力よりも、一対の第1の粒子A間に働く双極子相互作用の力の方が大きくなるように第1の粒子Aの帯電量を設定する。
【0066】
第1の粒子Aの帯電量を調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、第1の粒子Aの粒子として、チタニア粒子の表面をアルミナにより処理することにより得られたセラミックス材料からなる粒子を用いた場合には、チタニア粒子の表面を処理するアルミナの量を十分に少なくすることで、上述したような特性を持つ第1の粒子Aを得ることができる。
【0067】
このように正に帯電した第1の粒子Aを用いることにより、例えば、前述した第1実施形態で述べたように、第2の粒子Bを収容部33の壁部に固着させるために、比較的強い電圧を比較的長時間印加するが、このときに、第1の粒子Aは、第1の電極61に向けて泳動しようとするので(すなわち、第2の粒子Bの泳動方向と反対の方向へ泳動しようとするので)、第1の粒子Aと第2の粒子Bとをより確実に分散液4中で分離することができる。その結果、有色部B’に第1の粒子Aが取り込まれてしまうことを防止することができ、表示コントラストが向上する。
【0068】
また、上部電極61が負、下部電極62が正となるように、上部電極61および下部電極62間に電圧を印加して黒色表示状態とするとき、第1の粒子Aが上部電極61側に泳動しつつ、列を作るように集中するため、収容部33の上面(上部電極61側の面)に複数の粒子集合部A’をそれぞれ位置させることができる。これにより、より鮮明な黒色を表示することができる。
以上のような第2実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0069】
≪第3実施形態≫
次に、本発明の電気泳動表示装置の第3実施形態について説明する。
図6は、本発明の電気泳動表示装置の第3実施形態を示す模式的断面図、図7は、図6に示す電気泳動表示装置の作動を説明するための模式的断面図である。なお、図6、図7中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第3実施形態の電気泳動表示装置について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0070】
本発明の第3実施形態にかかる電気泳動表示装置は、表示層5の構成が異なる以外は、前述した第1実施形態の電気泳動表示装置と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
本実施形態の表示層5においては、基体31および蓋体32は、それぞれ、無色透明である。また、収容部33には、電気粘性効果を示す第1の粒子Aが分散している分散液4が入れられている。すなわち分散液4には、前述した第1の実施形態のような第2の粒子Bが含まれていない。
【0071】
本実施形態の表示層5は、第2の粒子Bで構成された有色部B’に代えて、第1の粒子Aと異なる色に着色された着色膜531で構成された有色部53を有している。このような着色膜531は、基体31の下面(基体31と下部電極62との間)に設けられている。これにより、有色部53の形成が比較的簡単となる。また、着色膜531が分散媒41と接触しないため、着色膜531の劣化(例えば、色褪せ、色むらの発生等)が抑制される。
【0072】
着色膜531の色としては、第1の粒子Aの色と異なっていれば、特に限定されず、例えば、白色、黒色またはこれらの中間色(灰色)などの無彩色や、赤色、青色、緑色などの有彩色が挙げられる。なお、以下では、説明の便宜上、着色膜531の色を黒色としたものについて代表して説明する。
着色膜531の形成方法としては、特に限定されず、例えば、着色されたシート状部材を透明な接着剤を介して基体31の下面に接合してもよい。また、顔料や染料等を分散させることにより着色した高分子溶液をナイフコート法、ロールコート法、グラビアコート法等の各種塗布方法を好適に用いることもできる。
【0073】
また、本実施形態の電気泳動表示装置1の作動は、前述した第1実施形態と同様である。簡単に説明すれば、上部電極61および下部電極62間に電圧を印加していないときは、図6に示すように、第1の粒子Aが分散媒41中に分散しているため、着色部53を視認することができず白色表示状態となる。反対に、上部電極61および下部電極62間に電圧を印加したときは、図7に示すように、第1の粒子Aが局所的に集中して粒子集合体A’を形成するため、それらの隙間から着色部53が視認可能となり黒色表示状態となる。
以上のような第3実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0074】
≪第4実施形態≫
次に、本発明の電気泳動表示装置の第4実施形態について説明する。
図8は、本発明の電気泳動表示装置の第4実施形態を示す模式的断面図、図9は、図8に示す電気泳動表示装置の部分拡大断面図である。
以下、第4実施形態の電気泳動表示装置について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本発明の第4実施形態にかかる電気泳動表示装置は、表示層5の構成が異なる以外は、前述した第1実施形態の電気泳動表示装置と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0075】
図8に示すように、本実施形態の表示層5は、分散液4をカプセル本体(殻体)101内に封入した複数のマイクロカプセル10が、バインダ9で固定(保持)されて構成されている。
マイクロカプセル10は、上部電極61と下部電極62との間に、縦横に並列するように単層で(厚さ方向に重なることなく1個ずつ)配設されている。本実施形態では、マイクロカプセル10は、上部電極61と下部電極62とで挟持されても、上下方向に圧縮(圧迫)されず、ほぼ球形状をなしている。
なお、マイクロカプセルは、上下方向に圧迫されて、例えば、縦断面形状で楕円または矩形に近い形状をなしていてもよい。
【0076】
また、本実施形態では、各マイクロカプセル10が、1つの下部電極62の上側に配置されるように配設されている。なお、マイクロカプセルの配置としては、これに限定されず、例えば、各マイクロカプセル10が隣り合う2つの下部電極62にまたがるように配置されていてもよい。
カプセル本体101の粒径としては、体積平均粒子径が30〜60μmであることが好ましく、40〜50μmであることがより好ましい。カプセル本体101の粒径がこのような範囲であることにより、寸法精度よく表示層5を形成することができる。
【0077】
図9に示すように、このようなカプセル本体101は、第2の粒子Bの極性と反対の極性に帯電している。これにより、第2の粒子Bをカプセル本体101の壁部に接触するように偏在させることができる。特に、カプセル本体101の下側のみを第2の粒子Bの極性と反対の極性に帯電させることにより、第2の粒子Bを、より確実に、カプセル本体101内の下側に偏在させることができる。
【0078】
カプセル本体101を帯電させる方法としては、特に限定されず、例えば、以下のような方法が挙げられる。
例えば、カプセル本体101を正に帯電させたい場合には、アクリル樹脂、アルキド樹脂などに、ニグロシン染料、トリフェニルメタン染料、四級アンモニウム塩類などの正帯電制御剤を混合し、この樹脂をトルエン、酢酸ブチル、酢酸エチルなどの有機系溶媒に溶解し、カプセル本体101表面に塗布する方法が挙げられる。
【0079】
反対に、カプセル本体101を正に帯電させたい場合には、アクリル樹脂、アルキド樹脂などに、サリチル酸系化合物、ホウ素系化合物などの負帯電制御剤を混合し、この樹脂をトルエン、酢酸ブチル、酢酸エチルなどの有機系溶媒に溶解し、カプセル本体101表面に塗布する方法が挙げられる。
カプセル本体(殻体)101の構成材料としては、例えば、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、尿素樹脂、ポリアミド、ポリエーテルのような各種樹脂材料が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、本実施形態では、隣り合うマイクロカプセル10同士は、接して配置されているが、離れて配置されていてもよい。
【0080】
マイクロカプセル10には、分散媒41、第1の粒子Aおよび第2の粒子Bが封入されている。第2の粒子Bは、負に帯電しており、正に帯電したカプセル本体101内の壁部の下側に電気的に吸着している。これにより、有色部B’が構成されている。
以上のような第4実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
なお、カプセル本体101を帯電させずに、前述した第1実施形態のように、焼き付きにより第2の粒子Bをカプセル本体101に固着してもよい。
【0081】
≪第5実施形態≫
次に、本発明の電気泳動表示装置の第5実施形態について説明する。
図10は、本発明の電気泳動表示装置の第5実施形態を示す模式的断面斜視図、図11は、図10に示す電気泳動表示装置の模式的平面図(上面図)である。なお、図10および図11では、それぞれ、説明の便宜上、1つの収容部について代表して図示し、その他の収容部についてはその図示を省略している。図示されていない収容部についても、図示されているものと同様の構成である。
【0082】
以下、第4実施形態の電気泳動表示装置について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
本発明の第4実施形態にかかる電気泳動表示装置は、上部電極61の構成が異なる以外は、前述した第1実施形態の電気泳動表示装置と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
【0083】
図10は、電気泳動表示装置1を上方(すなわち、上部電極61側)から見たときの平面図である。同図に示すように、本実施形態では、表示層5の平面視にて、上部電極61が収容部33の縁部に沿って設けられている。これにより、図11に示すように、上部電極61および下部電極62間に電圧を印加したとき、複数の粒子集合体A’を、それぞれ、収容部33の縁部に集中させることができ、収容部33の中央部に粒子集合体A’が存在しない1まとまりの領域を広く形成することができる。これにより、黒色表示状態にて、より鮮明な黒色(第2の粒子B本来の黒色)を表示することができる。
【0084】
以上より、本実施形態では、表示層5の平面視にて、上部電極61を収容部33の所定部分(縁部)に偏在して設けて、電圧印加時に、当該偏在ヵ所に第1の粒子Aを集中させるように構成されていると言える。これにより、第1の粒子Aを偏在させる位置を規定(決定)することができるため、より鮮明な黒色表示が可能となる。また、白色表示と黒色表示とが複数回切り替わるような場合でも、1回目の黒色表示状態の黒色と、2回目の黒色表示状態の黒色とをほぼ同じ色にすることができるため、動画やスライドショーなど、画像が頻繁に切り替わるようなものを表示する場合に、特に有利となる。
【0085】
なお、図11に示すように、本実施形態の上部電極61は、1つの収容部33について見れば略四角形の環状をなしているが(すなわち、第1の電極61全体として見れば複数の収容部33に対応した格子状をなしているが)、上部電極61の形状(平面視形状)としては、特に限定されず、例えば、収容部33の縁部に沿った略「コ」の字状であってもよいし、収容部33の縁部に沿って、複数の電極片がそれぞれ間隔を隔てて設けられているものであってもよい。
以上のような第5実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0086】
≪第6実施形態≫
次に、本発明の電気泳動表示装置の第6実施形態について説明する。
図12は、本発明の電気泳動表示装置の第6実施形態を示す模式的断面斜視図、図13は、図12に示す電気泳動表示装置の模式的平面図(上面図)である。なお、図12および図13では、それぞれ、説明の便宜上、1つの収容部について代表して図示し、その他の収容部についてはその図示を省略している。図示されていない収容部についても、図示されているものと同様の構成である。
以下、第6実施形態の電気泳動表示装置について、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0087】
本発明の第6実施形態にかかる電気泳動表示装置は、上部電極61の構成が異なる以外は、前述した第1実施形態の電気泳動表示装置と同様である。なお、前述した第1実施形態と同様の構成には、同一符号を付してある。
図12は、電気泳動表示装置1を上方(すなわち、上部電極61側)から見たときの平面図である。同図に示すように、本実施形態では、表示層5の平面視にて、上部電極61が収容部33の中央部に設けられている。なお、各収容部33に対応して設けられた複数の上部電極61は、その全てが図示しない導線を介して電気的に接続されており、これにより共通電極が構成されている。
【0088】
このような構成の上部電極61を用いることにより、図13に示すように、上部電極61および下部電極62間に電圧を印加したとき、複数の粒子集合体A’を、それぞれ、収容部33の中央部(すなわち第1の電極に対応する部分)に集中させることができ、収容部33の中央部に粒子集合体A’が存在しない1まとまりの領域を広く形成することができる。これにより、黒色表示状態にて、より鮮明な黒色(第2の粒子B本来の黒色)を表示することができる。
以上のような第6実施形態によっても、第1実施形態と同様の効果を発揮することができる。
【0089】
以上説明したような電気泳動表示装置1は、それぞれ、各種電子機器に組み込むことができる。電気泳動表示装置を備える本発明の電子機器としては、例えば、電子ペーパー、電子ブック、テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、電子新聞、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等を挙げることができる。
【0090】
これらの電子機器のうちから、電子ペーパーを例に挙げ、具体的に説明する。
図14は、本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
図14に示す電子ペーパー600は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成される本体601と、表示ユニット602とを備えている。
このような電子ペーパー600では、表示ユニット602が、前述したような電気泳動表示装置1で構成されている。
【0091】
次に、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態について説明する。
図15は、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図である。このうち、図15中(a)は断面図、(b)は平面図である。
図15に示すディスプレイ(表示装置)800は、本体部801と、この本体部801に対して着脱自在に設けられた電子ペーパー600とを備えている。なお、この電子ペーパー600は、前述したような構成、すなわち、図14に示す構成と同様のものである。
【0092】
本体部801は、その側部(図15中、右側)に電子ペーパー600を挿入可能な挿入口805が形成され、また、内部に二組の搬送ローラ対802a、802bが設けられている。電子ペーパー600を、挿入口805を介して本体部801内に挿入すると、電子ペーパー600は、搬送ローラ対802a、802bにより挟持された状態で本体部801に設置される。
【0093】
また、本体部801の表示面側(図15(b)中、紙面手前側)には、矩形状の孔部803が形成され、この孔部803には、透明ガラス板804が嵌め込まれている。これにより、本体部801の外部から、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を視認することができる。すなわち、このディスプレイ800では、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を、透明ガラス板804において視認させることで表示面を構成している。
【0094】
また、電子ペーパー600の挿入方向先端部(図15中、左側)には、端子部806が設けられており、本体部801の内部には、電子ペーパー600を本体部801に設置した状態で端子部806が接続されるソケット807が設けられている。このソケット807には、コントローラー808と操作部809とが電気的に接続されている。
このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600は、本体部801に着脱自在に設置されており、本体部801から取り外した状態で携帯して使用することもできる。
【0095】
以上、図示の各実施形態に基づいて、本発明の電気泳動表示シート、電気泳動表示装置および電子機器を説明したが、本発明は、これらに限定されるものでない。例えば、本発明の電気泳動表示シート、電気泳動表示装置および電子機器では、各部の構成は、同様の機能を発揮する任意の構成のものに置換することができ、また、任意の構成を付加することもできる。
【0096】
また、前述した実施形態では、有色部を第2の粒子で構成したものや、着色膜で構成したものについて説明したが、これに限定されず、例えば、有色部を、基体の底部(凹部と下面の間の部分)を第1の粒子と異なる色に着色することにより構成してもよい。
また、前述した本実施形態では、1つの収容部ごとに、電界の発生・解除を選択可能となっているものについて説明したが、これに限定されず、2つ、3つ等の複数の収容部ごとに電界の発生・解除を選択可能となっているものであってもよい。例えば、2つの収容部ごとに電界の発生・解除を選択可能となっている場合は、隣り合う一対の収容部に跨るようにして下部電極(個別電極)を形成すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の電気泳動表示装置の第1実施形態を示す模式的縦断面図である。
【図2】図1に示す電気泳動表示装置を上方から見たときの模式的平面図である。
【図3】電気粘性効果について説明するための模式的断面図である。
【図4】図1に示す電気泳動表示装置の作動を説明する模式的断面図である。
【図5】図3に示す電気泳動表示装置を上方からみたときの模式的平面図である。
【図6】本発明の電気泳動表示装置の第3実施形態を示す模式的断面図である。
【図7】図6に示す電気泳動表示装置の作動を説明する模式的断面図である。
【図8】本発明の電気泳動表示装置の第4実施形態を示す模式的断面図である。
【図9】図8に示す電気泳動表示装置の部分拡大断面図である。
【図10】本発明の電気泳動表示装置の第5実施形態を示す模式的断面斜視図
【図11】図10に示す電気泳動表示装置の模式的平面図(上面図)である。
【図12】本発明の電気泳動表示装置の第6実施形態を示す模式的断面斜視図
【図13】図12に示す電気泳動表示装置の模式的平面図(上面図)である。
【図14】本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
【図15】本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0098】
1……電気泳動表示装置 2……電気泳動表示シート 31……基体 31a……凹部 32……蓋体 33……収容部 4……分散液 41……分散媒 5……表示層 53……有色部 531……着色層 61……上部電極(第1の電極) 62……下部電極(第2の電極) 9……回路基板 91……基部 10……マイクロカプセル 101……カプセル本体(殻体) 600……電子ペーパー 601……本体 602……表示ユニット 800……ディスプレイ 801……本体部 802a、802b……搬送ローラ対 803……孔部 804……透明ガラス板 805……挿入口 806……端子部 807……ソケット 808……コントローラー 809……操作部 A……第1の粒子(粒子) A’……粒子集合体 B……第2の粒子(着色粒子) B’……有色部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気粘性効果を示す粒子を含む分散液が入れられた収容部を有する表示層と、
前記表示層の視認側に設けられた第1の電極およびその反対側に設けられた第2の電極とを有し、
前記第1の電極および前記第2の電極間に電圧を印加して、前記表示層に電界を生じさせたとき、前記分散液中の前記粒子が前記電界の方向に沿って列を作るように局所的に集中するよう構成したことを特徴とする電気泳動表示シート。
【請求項2】
前記粒子は、白色の粒子である請求項1に記載の電気泳動表示シート。
【請求項3】
前記粒子の平均粒径は、0.1〜5μmである請求項1または2に記載の電気泳動表示シート。
【請求項4】
前記分散液中における、前記粒子の含有率は、15〜35wt%である請求項1ないし3のいずれかに記載の電気泳動表示シート。
【請求項5】
前記表示層は、該表示層の前記第2の電極側に前記粒子の色と異なる色の有色部を有している請求項1ないし4のいずれかに記載の電気泳動表示シート。
【請求項6】
前記第1の電極および前記第2の電極間に電圧を印加して、前記粒子を前記電界の方向に沿って列を作るように局所的に集中させ、前記粒子の列同士の隙間から前記有色部を視認可能とすることにより、前記第1の電極を介して視認される前記収容部内の色を前記有色部の色とする第1の状態と、
前記電圧の印加を解除して、前記列をなすよう集合した前記粒子を前記分散液中に分散させることにより前記有色部が視認されないようにし、前記第1の電極を介して視認される前記収容部内の色を前記粒子の色とする第2の状態とをとることができる請求項5に記載の電気泳動表示シート。
【請求項7】
前記有色部は、前記収容部内に入れられた着色粒子で構成されている請求項5または6に記載の電気泳動表示シート。
【請求項8】
前記着色粒子は、前記収容部の内壁に固着している請求項7に記載の電気泳動表示シート。
【請求項9】
前記着色粒子は、正または負の電荷を有する粒子である請求項8に記載の電気泳動表示シート。
【請求項10】
前記有色部は、前記収容部および前記第2の電極の間に設けられた着色層で構成されている請求項5または6に記載の電気泳動表示シート。
【請求項11】
前記第1の電極は、前記表示層の平面視にて、前記収容部の所定部分に偏在して設けられており、前記電圧の印加時に、当該偏在ヵ所に前記粒子が集中するよう構成されている請求項1ないし10のいずれかに記載の電気泳動表示シート。
【請求項12】
前記第1の電極は、前記表示層の平面視にて、前記収容部の縁部に沿って設けられている請求項11に記載の電気泳動表示シート。
【請求項13】
前記第1の電極は、前記表示層の平面視にて、前記収容部の中央部に設けられている請求項11に記載の電気泳動表示シート。
【請求項14】
請求項1ないし13のいずれかに記載の電気泳動表示シートと、前記マイクロカプセル含有層の前記裏面側電極側に設けられた基板とを備えることを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項15】
前記表示層は、平面状に配設された複数の前記収容部を有しており、前記複数の収容部のうちの1または2以上の収容部ごとに、前記電界の発生・解除を選択可能となっている請求項14に記載の電気泳動表示装置。
【請求項16】
請求項15に記載の電気泳動表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2009−276473(P2009−276473A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126375(P2008−126375)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)