説明

電気泳動表示用表示板

【課題】顔料成分粒子による表示色と、染料によって着色された分散媒による表示色との混色が起らないようにした電気泳動表示用表示液を提供する。
【解決手段】表示液中に含まれる顔料粒子(分散粒子)として(1)粒子形状が球形でない顔料、(2)部分的に平面形状を有する顔料、(3)複合体形状を有する顔料、を用いる。このような分散粒子を用いることにより、分散粒子間及び分散粒子と表示面(透明板)との間に形成される空隙への、分散媒の侵入が極力阻止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる電気泳動表示媒体用の表示液に関する。
【背景技術】
【0002】
電気泳動表示装置は、少なくとも一方は透明な2枚の基板をスペーサーを介して所望の間隔を開けて対向配置して密閉空間を形成し、この密閉空間に分散粒子(顔料成分)をこれと色調の異なる分散媒中に分散させた表示液を充填して表示パネルとし、この表示パネルに電界を印加して表示を得ようとするもので、透明な基板面が表示面になる。
【0003】
密閉空間に充填される電気泳動表示用表示液は、キシレン、イソパラフィン系などの分散媒、二酸化チタンなどの微粒子(分散粒子)、この分散粒子の色に対して色のコントラストを付けるための染料、界面活性剤などの分散剤、及び荷電付与剤などの添加剤から構成される。この表示液に電界を印加することにより表示液中の分散粒子が透明板側に移動し表面には分散粒子の色が現れる。これと逆方向の電界を印加することにより、分散粒子は背面側に移動し表面には分散媒の色あるいは染料の色が現れる。
【0004】
電気泳動表示装置は、電界の向きを制御することにより所望の表示を得る表示装置であり、表示液が比較的入手容易な低コスト材料である、視野角が通常の印刷物並に広い、消費電力が小さい、メモリー性を有する等の長所を持つことから安価な表示装置として注目されている。
【0005】
このような電気泳動表示装置の表示液中には、一般に、酸化チタンなどの高屈折率の分散粒子(顔料成分)と、染料を溶解して着色された分散媒とが含まれているために、画像形成時に両者が混色を起こすことによるコントラストの低下が発生しやすい。この問題は特に、表示面側に分散粒子が移動し表面に分散粒子の色が現れる状態において、分散粒子どうしの間に存在する空隙や分散粒子と透明板との間で形成される空隙に、染料によって着色された分散媒が存在することで、分散粒子の色に着色された分散媒の色が混ざってしまう場合に顕著に現れる。中でも、分散粒子が白色顔料の場合には地肌部(非記録部)の白さを低下させるために、表示材料にとって致命的な欠陥につながりかねない。
【0006】
このような問題点を解決するために、過去において、分散媒の着色に用いられる染料として、顔料粒子表面に対して非吸着性の染料を用いること(Phlips Lab:Conference Record of 1980 Biennial Disp. Res.Conf.)が提案されている。しかし、この方法では顔料粒子表面への微量な染料の吸着は低減できるかもしれないが、根本的に顔料粒子間の間隙に対する分散媒の進入を防ぐことはできず、大幅な改善にはつながらない。
【0007】
また、分散媒中の染料濃度を低くすること(Xerox Paio Alto:Proc.SID,Vol.18,3/4,1977)や、染料濃度、顔料濃度、界面活性剤の最適化による改善(松下:Proc.SID,Vol.18,No.3/4,4977)も提案されている。しかしながら、これらの方法も混色を少なくする為に、分散媒中の染料濃度を低くすることで、逆に分散媒による表示色の濃度低下を引き起こしている。また、濃度低下を防ぐ目的で、表示媒体としてのセル厚を大きくすることも同時に行われているが、この場合には、応答速度低下という別の問題を引き起こしてしまい、根本的な解決に至らないのが現状である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、分散粒子間に形成される空隙及び分散粒子と表示面(透明板)との間に形成される空隙への、分散媒の進入を防ぐことで、顔料成分粒子による表示色と染料によって着色された分散媒による表示色の混色が起こらないようにし、コントラストの良好な電気泳動表示装置用の表示液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は顔料粒子(分散粒子)及びこれと色調の異なる分散媒を主成分とする電気泳動表示装置用表示液において、顔料粒子間及び顔料粒子と表示面側の透明板との間に形成される空隙への分散媒の浸入を防ぐことで、良好なコントラストを有する表示を可能にしたものである。
【0010】
第一に、顔料成分及びそれと異なる色調を有する分散媒を主成分とする電気泳動表示用表示液において、該顔料成分が非球形粒子であることを特徴とする電気泳動表示用表示液が提供される。
【0011】
第二に、前記非球形顔料成分粒子が部分的に平面形状を有するものであることを特徴とする上記第一の電気泳動表示用表示液が提供される。
【0012】
第三に、前記非球形顔料成分粒子が粒子径の異なる粒子の複合体形状を有するものであることを特徴とする上記第一の電気泳動表示用表示液が提供される。
【0013】
本発明では、電気泳動表示装置用表示液中に含まれる顔料成分(分散粒子)として、粒子形状が球形でない顔料粒子を用いる。これは、顔料粒子間及び顔料粒子と表示面側の透明板との間に形成される空隙を、粒子形状が球形でない顔料粒子で充填することにより、染料で着色された分散媒の浸入を防ぐことができ、顔料粒子の色と染料の色の混色のない、良好なコントラストを有する表示が可能となるためである。
【0014】
この場合、非球形の顔料粒子は部分的に平面形状を有したものを用いることが望ましい。球形でない顔料粒子に部分的に平面形状が存在することで、顔料粒子間及び顔料粒子と表示面側の透明板との間に形成される空隙の形成が阻害されることにより、顔料粒子の色と染料の色との混色のない表示がより可能となる。それらの顔料粒子の形状としては種々のものがあり、例えば、笹葉状、針状、柱状粒子、円盤状粒子、扁平状粒子等があるが、なかでも円盤状粒子、扁平状粒子が特に好ましい。これらの笹葉状、針状、柱状粒子、円盤状粒子又は扁平状粒子等の微粒子については、市販品として入手でき、また「微粒子ポリマーの新展開(株式会社東レリサーチセンター)」の39頁に異形粒子の具体的な形状として記載されている。更にまた、扁平状粒子の形状については、「乳化・分散プロセスの機能と応用技術(サイエンスフォーラム)」の441頁にも記載されている。
【0015】
また、非球形の顔料粒子はその形状が粒子径の異なる粒子の複合体であることによっても、前記と同様に、顔料粒子間及び顔料粒子と表示面側の透明板との間に形成される空隙の形成が阻害されることにより、顔料粒子の色と染料の色との混色のない表示がより可能となる。この場合の複合粒子としては、ある大きさの粒子のまわりにそれよりも小さな粒子が全体を取り込むようにして複合化した粒子(野苺型又は、金平糖型)や、ある大きさの粒子のまわりにそれよりも小さな粒子が1つだけ複合化した粒子(だるま型)のようなものがある。これらの微粒子形状に関しては、「高分子加工34巻109頁(1985)」に記載されている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば分散顔料の色(白色の顔料を用いた場合には白色)を表示時する際の、染料によって着色された分散媒との混合が起こりにくく、両者の混色の発生のしにくい電気泳動表示用表示液及び電気泳動表示媒体が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。本発明は、前記したように、顔料成分及びそれと異なる色調を有する分散媒を主成分とし、該顔料成分が異なる粒子径を持つ顔料粒子の混合物であることを特徴とした電気泳動表示用表示液に係わるものである。電気泳動表示装置用表示液中に含まれる顔料粒子(分散粒子)として、粒子形状が球形でない顔料を用いることで効果が得られており、特にこの非球形の顔料粒子は、その粒子形状に部分的に平面形状を有する場合、又は粒子形状が粒子径の異なる粒子の複合体である場合に優れた効果が得られている。
【0018】
本発明における分散粒子として用いられる顔料としては、有色または白色の無機顔料を用いることが可能である。有色の顔料としては、クロムイエロー、カドミウムイエロー、モリブデートオレンジ、ベンガラ、カドミウムレッド、マンガンバイオレット、紺青、群青、エメラルドグリーン、カーボンブラック、鉄黒等が挙げられる。白色の顔料としては、酸化亜鉛、塩基性炭酸鉛、塩基性硫酸鉛、硫酸鉛、リトポン、硫化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン等が挙げられ、これら白色顔料を用いたときは白色と有色のコントラストを形成することが可能であり、中でも酸化チタンは白色を得る場合特に好ましい顔料である。
【0019】
これらの顔料成分は、顔料単独の微粒子・中空粒子、顔料粒子表面を樹脂で覆った複合粒子、ポリマー粒子・中空ポリマー粒子の表面を顔料で覆った複合粒子のいずれの形態としても用いることが可能であり、これらの微粒子を分散微粒子として用いればよい。
【0020】
上記顔料成分を顔料単独の粒子として用いる場合には、顔料の微粒子あるいは中空粒子を直接分散粒子として用いればよい。顔料の中空粒子を用いる場合には、表面に顔料成分を有し内部に空隙を有する微粒子の内部空隙を確保した顔料微粒子の調製が必要であり、そのための手段として顔料成分を多孔質または中空の状態で形成する方法を用いる場合の方法として、「色材、59(9)、543、(1986)」に記載されている界面重合法、「色材、70(6)、378、(1997)」に記載されている界面ゲル化反応法を用いて調製することが出来る。
【0021】
また、上記顔料成分を各種複合粒子として用いる場合には、各種粒子の表面改質で行われている手法を用いることが可能であり、顔料粒子表面を樹脂で覆った複合粒子の場合には、顔料粒子表面をシリコーン樹脂で被覆する方法、長鎖アルキル基を有するカップリング剤による表面処理、カップリング剤とシリコーンを併用した被覆、グラフトによる表面改質等が挙げられる。
【0022】
一方、ポリマー粒子あるいは中空ポリマー粒子の表面を顔料で覆った複合粒子の場合にも、既存の方法によって調製可能であり、例えば「色材、59(9)、543、(1986)」に記載されている真空蒸着法、粉床法、トポケミカル法、メカノケミカル法、表面沈積法、含浸法、懸濁法、複合エマルジョン法などが挙げられる。更にその他の方法として「最新粉体の材料設計、274,277、(テクノシステム発行)」に記載されている無機質壁カプセル化法、コートマイザー法、「色材、71(2)、103、(1998)」に記載されているゾル−ゲル法、「色材、71(7)、449、(1998)」に記載されている逆ミセル法などが挙げられる。
【0023】
この場合に、核となるポリマー粒子としては、ポリエチレン、ポリスチレン、シリコーンポリマー、ポリメタクリル酸メチル、尿素−ホルマリン樹脂をはじめとする各種ポリマー粒子を用いることができる。また、中空ポリマー粒子としては、W/O/Wエマルジョンを懸濁重合したポリエステル系多孔粒子、アクリル系多孔粒子、シード重合法で作られるスチレン−アクリル系の中空ラテックス、塩化ビニリデン−アクリロニトリル系、アクリロニトリル系の熱膨張性マイクロカプセル等の利用が可能である。具体的にはローム・アンド・ハース社のローペイク、日本合成化学社製のJSR中空粒子、松本油脂社製の熱膨張マイクロカプセル、大日本インキ化学社製のGrnngollなどが挙げられる。
【0024】
本発明において、顔料粒子と色調の異なる分散媒としては、顔料粒子と異なる色の染料を溶解させた導電率の低い高絶縁性の有機溶媒が用いられる。
【0025】
染料としては、有機溶媒に溶解可能な油溶性染料が用いられ、オイルイエロー3G、ファーストオレンジG、オイルレッド5B、オイルバイオレット#730、マクロレツクスプルーRR、スミプラストグリーンG、オイルブラウンGR、スーダンブラックX60などが代表的なモノとして挙げられる。
【0026】
導電率の低い高絶縁性の有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフテン系炭化水素などの芳香族炭化水素類、ヘキサン、シクロヘキサン、ケロシン、パラフィン系炭化水素などの脂肪族炭化水素類、クロロホルム、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、臭化エチルなどのハロゲン化炭化水素類などが挙げられる。これらの有機溶媒は、それぞれ単独で又は2種類以上を混合して用いることが出来る。
【0027】
本発明においては、必要に応じて顔料粒子の分散媒中での分散性を補足するために、分散媒に溶解可能な陰イオン界面活性剤、陽イオン界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、フッ素系界面活性剤、ブロック型ポリマー、グラフト型ポリマーなどの分散剤をそれぞれ単独または2種類以上を混合して用いることができる。
【0028】
このような表示液を用いた電気泳動表示装置の一例としては、次のような形態が挙げられる。
(1)一対のガラス基板11,12等の透明部材の一方に所望のパターンで形成された透明電極21,22を有するものを、スペーサー3を介して対向配置させて空間をつくり、その空間に本発明の表示液を充填する(図1)。
(2)全面電極を施した基板に、多数のスペーサー3を介して絶縁フィルム5を対向させ不連続の空間をつくり、その空間に本発明の表示液4を充填する(図2)。
(3)一対のガラス基板等の透明部材の一方に所望のパターンで形成された透明電極を有するものを、スペーサー3を介して対向配置させて空間をつくり、その空間に本発明の表示液を内包させたマイクロカプセル6を充填する(図3)。なお、この例では空間の代りにバインダーが存在していてもよい。
(4)全面電極を施した基板に多数のスペーサーを介して絶縁フィルムを対向させ不連続の空間をつくり、その空間に本発明の表示液を内包させたマイクロカプセルを充填する(図4)。なお、この例では空間の代りにバインダーが存在していてもよい。
(5)全面電極を施した基板に、本発明の表示液を内包させたマイクロカプセル6をバインダー7とともに塗布する(図5)。
【0029】
ここで、本発明の表示液をマイクロカプセルに内包させる方法としてはin−situ法、界面重合法、コアセルベーション法等により調製することが可能であり、その際マイクロカプセルの壁材としては、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリ尿素−ポリウレタン、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミンーホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホンアミド、ポリカーボネート、ポリスルフィネート、エポキシ樹脂、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ゼラチシ等が挙げられる。
【実施例】
【0030】
次に実施例を挙げて本発明を具体的に説明する。
【0031】
実施例1
分散媒としてテトラクロロエチレンに0.5wt%の青色染料(マクロレックスブルーRR:バイエル社)を溶解したものを用い、泳動粒子(分散粒子)として、ポリスチレンからなるシード粒子と架橋性モノマーとの重合反応をイソオクタン中で行うことによって得られた平均粒子径(偏平面の直径)が2.0μmの偏平型ポリマー粒子10gと平均粒子径0.05μmの二酸化チタン(富士チタン工業製、TAF−510AS)5gを混合後、高速気流中衝撃ミル(バイブリタイザー)を用い8000rpmで処理することによって得られた表面に酸化チタンを有する偏平粒子を用いた。この粒子とジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを分散媒に各々5vol%と0.01wt%混合して電気泳動表示用表示液を調製した。
【0032】
続いて、透明基板として厚さ3mmのガラス板を用い、その片面に透明導電膜(ITO膜)を形成させたものをスペーサーのナイロンビーズを介して対向配置させて約80μmの空間を形成する。その空間に上記の表示液を注射器を用いて注入後、両ガラス板をエポキシ樹脂系接着剤で封止することにより電気泳動表示パネルを作成した。この電気泳動表示パネルに導電ぺーストにより配線を施し、これを直流電源に接続し電圧を印加して分散粒子を泳動させて白色の表示を得た。
【0033】
実施例2
分散媒としてテトラクロロエチレンに0.5wt%の青色染料(マクロレツクスブルーRR:バイエル社)を溶解したものを用い、泳動粒子(分散粒子)として、実施例1にて作製された表面に平均粒子径0.05μmの酸化チタン(富士チタン工業製、TAF−510AS)を有する偏平粒子を用いた。この粒子とオレイン酸を分散媒に各々10wt%と0.5wt%混合して、分散液とした。続いて、この分散液を内包するマイクロカプセルを以下のように作製した。ゼラチン水溶液とアラビアゴム水溶液を混合して、50℃に昇温し水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9に調整する。この中に上記分散液を加え、撹拌して乳化する。さらにpHを4まで徐々に下げて分散液界面にゼラチン/アラビアゴムの濃厚液を析出させた後、温度を下げて皮膜をゲル化し、グルタールアルデヒド水溶液を加えて硬化した。このようにしてゼラチンを壁材とするマイクロカプセルのスラリーを得た。カプセル径は平均60μmとなるように乳化条件を制御した。このマイクロカプセルスラリーとポリビニルアルコール10%水溶液とを等重量で混合し電気泳動表示用表示液を調製した。
【0034】
上記にて作製した電気泳動表示用表示液を、基盤(100μm厚のPETフイルム)上にITO薄膜をスパッタリング法により形成した共通電極上に、ブレードコーターで塗布し、乾燥することによりマイクロカプセルが共通電極上に塗工層として固定された電気泳動表示媒体を作製した。この電気泳動表示媒体の表示面側に対向電極を設置し、この対向電極と共通電極との間にセルに直流電源に接続し電圧を印加し分散粒子を泳動させて白色の表示を得た。
【0035】
実施例3
泳動粒子(分散粒子)として、シード粒子であるポリアクリル酸エチルの外郭部に、水溶性の開始剤(過硫酸カリウム)を用いたポリスチレンの重合反応を行うことにより得られた平均粒子径5.0μmの野苺(金平糖)型複合粒子10gと、平均粒子径0.05μmの酸化チタン(富士チタン工業製、TAF−510AS)5gを混合後、高速気流中衝撃ミル(ハイブリタイザー)を用い8000rpmで処理することによって得られた表面に酸化チタンを有する野苺(金平糠)型複合粒子を用いること以外は、実施例1と同様にして電気泳動表示用表示液及び電気泳動表示媒体を作製した。また、実施例1と同様にして白色の表示を得た。
【0036】
実施例4
泳動粒子(分散粒子)として、実施例3にて作製された表面に平均粒子径0.05μmの酸化チタン(富士チタン工業製、TAF−510AS)を有する偏平粒子を用いること以外は、実施例2と同様にして電気泳動表示用表示液及び、電気泳動表示媒体を作製した。また、実施例2と同様にして白色の表示を得た。
【0037】
実施例5
泳動粒子(分散粒子)として繊維径0.05〜0.10μmで繊維長3〜6μmの針状の二酸化チタン(石原産業製、FTL−102)を用いた以外は、実施例1と同様にして電気泳動表示用表示液及び電気泳動表示媒体を作製した。また、実施例1と同様にして白色の表示を得た。
【0038】
実施例6
泳動粒子(分散粒子)として繊維径0.05〜0.10μmで繊維長3〜6μmの針状の二酸化チタン(石原産業製、FTL−102)を用いた以外は、実施例2と同様にして電気泳動表示用表示液及び電気泳動表示媒体を作製した。また、実施例2と同様にして白色の表示を得た。
【0039】
比較例1
泳動粒子(分散粒子)として平均粒子径0.25μmの二酸化チタン(石原産業製、CR−50−2)を用いた以外は、実施例1と同様にして電気泳動表示用表示液及び電気泳動表示媒体を作製した。また、実施例1と同様にして白色の表示を得た。
【0040】
比較例2
泳動粒子(分散粒子)として平均粒子径0.25μmの二酸化チタン(石原産業製、CR−50−2)を用いた以外は、実施例2と同様にして電気泳動表示用表示液及び電気泳動表示媒体を作製した。また、実施例2と同様にして白色の表示を得た。
【0041】
参考例1
分散媒としてテトラクロロエチレンに0.5wt%の青色染料(マクロレックスブルーRR:バイエル社)を溶解したものを用い、泳動粒子(分散粒子)として、平均粒子径0.25μmの二酸化チタン(石原産業製、CR−50−2)と平均粒子径0.2μmの二酸化チタン(石原産業製、CR−63)の混合物(重量比で1:1)を用いた。この粒子とジオクチルスルホコハク酸ナトリウムを分散媒に各々5vol%と0.01wt%混合して電気泳動表示用表示液を調製した。
【0042】
続いて、透明基板として厚さ3mmのガラス板を用い、その片面に透明導電膜(ITO膜)を形成させたものをスペーサーのナイロンビーズを介して対向配置させて約80μmの空間を形成する。その空間に上記の表示液を注射器を用いて注入後、両ガラス板をエポキシ樹脂系接着剤で封止することにより電気泳動表示パネルを作成した。この電気泳動表示パネルに導電ぺーストにより配線を施し、これを直流電源に接続し電圧を印加して分散粒子を泳動させて白色の表示を得た。
【0043】
参考例2
分散媒としてテトラクロロエチレンに0.5wt%の青色染料(マクロレツクスブルーRR:バイエル社)を溶解したものを用い、泳動粒子として、平均粒子粒径0.25μmの二酸化チタン(石原産業製、CR−50−2)と平均粒子径0.2μmの二酸化チタン(石原産業製、CR−63)の混合物(重量比で1:1)を用いた。この粒子とオレイン酸を分散媒に各々10wt%と0.5wt%混合して、分散液とした。続いて、この分散液を内包するマイクロカプセルを以下のように作製した。ゼラチン水溶液とアラビアゴム水溶液を混合して、50℃に昇温し水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを9に調整する。この中に上記分散液を加え、撹拌して乳化する。さらにpHを4まで徐々に下げて分散液界面にゼラチン/アラビアゴムの濃厚液を析出させた後、温度を下げて皮膜をゲル化し、グルタールアルデヒド水溶液を加えて硬化した。このようにしてゼラチンを壁材とするマイクロカプセルのスラリーを得た。カプセル径は平均60μmとなるように乳化条件を制御した。このマイクロカプセルスラリーとポリビニルアルコール10%水溶液とを等重量で混合し電気泳動表示用表示液を調製した。
【0044】
上記にて作製した電気泳動表示用表示液を、基盤(100μm厚のPETフイルム)上にITO薄膜をスパッタリング法により形成した共通電極上に、ブレードコーターで塗布し、乾燥することによりマイクロカプセルが共通電極上に塗工層として固定された電気泳動表示媒体を作製した。この電気泳動表示媒体の表示面側に対向電極を設置し、この対向電極と共通電極との間にセルに直流電源に接続し電圧を印加し分散粒子を泳動させて白色の表示を得た。
【0045】
参考例3
泳動粒子(分散粒子)として、平均粒子径0.25μmの二酸化チタン(石原産業製、CR−50−2)と平均粒子径0.02〜0.05μmの二酸化チタン(石原産業製、TTO−55(S))の混合物(重量比で1:1)を用いた以外は、参考例1と同様にして電気泳動表示用表示液及び、電気泳動表示媒体を作製した。また、参考例1と同様にして白色の表示を得た。
【0046】
参考例4
泳動粒子(分散粒子)として、平均粒子径0.25μmの二酸化チタン(石原産業製、CR−50−2)と平均粒子径0.02〜0.05μmの二酸化チタン(石原産業製、TTO−55(S))の混合物(重量比で1:1)を用いた以外は、参考例2と同様にして電気泳動表示用表示液及び、電気泳動表示媒体を作製した。また、参考例2と同様にして白色の表示を得た。
【0047】
<評価結果>
上記にて形成した電気泳動表示媒体の白色表示部分について目視観察を行い、染料によって着色された分散媒との混色による白さの低下を評価した。結果を表1に示す。表1中、混色による白さの低下がないの◎から、低下が著しいのかける×まで順次○、△○、△、×△に従って低下していくことを表している。
【0048】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は電界の作用により可逆的に視認状態を変化させうる電気泳動表示媒体用の表示液において、分散顔料の色と染料により着色された分散媒との混色の発生しにくい表示液として好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明の電気泳動表示用表示液を用いて作製される表示媒体の一例の概略図。
【図2】本発明の電気泳動表示用表示液を用いて作製される表示媒体の一例の概略図。
【図3】本発明の電気泳動表示用表示液を用いて作製される表示媒体の一例の概略図。
【図4】本発明の電気泳動表示用表示液を用いて作製される表示媒体の一例の概略図。
【図5】本発明の電気泳動表示用表示液を用いて作製される表示媒体の一例の概略図。
【符号の説明】
【0051】
3 スペーサー
4 表示液
5 絶縁フィルム
6 表示液を内包させたマイクロカプセル
7 バインダー
11 基版
12 透明基板
21、22 透明電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料成分及びそれと異なる色調を有する分散媒を主成分とする電気泳動表示用表示液において、該顔料成分が非球形粒子であることを特徴とする電気泳動表示用表示液。
【請求項2】
前記非球形顔料成分粒子が部分的に平面形状を有するものであることを特徴とする請求項1記載の電気泳動表示用表示液。
【請求項3】
前記非球形顔料成分粒子が粒子径の異なる粒子の複合体形状を有するものであることを特徴とする請求項1記載の電気泳動表示用表示液。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−114800(P2007−114800A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−310498(P2006−310498)
【出願日】平成18年11月16日(2006.11.16)
【分割の表示】特願平11−5640の分割
【原出願日】平成11年1月12日(1999.1.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)