説明

電気泳動表示素子用ポリマー粒子、及び電気泳動表示素子用ポリマー粒子の製造方法及び分散液

【課題】優れた電気泳動性、分散安定性を有し、かつ着色した色が十分な色隠蔽性を有する電気泳動性ポリマー粒子並びに電気泳動性ポリマー粒子を含んだ電気泳動表示素子用粒子分散液、およびその製造方法を提供することである。
【解決手段】 顔料を含む平均粒子径が100nm〜10μmのポリマー粒子であり、前記顔料がポリマー相にのみあり、前記ポリマー粒子内部に少なくとも1つの空隙が形成されている電気泳動表示素子用ポリマー粒子によって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示素子用ポリマー粒子、及び電気泳動表示素子用ポリマー粒子の製造方法及び分散液に関する。更に詳しくは、一対の基板間に封入し電界を付与することによって、液中の粒子を移動させて粒子の色を外部から視認させ、情報を表示する電気泳動表示素子において、その電気泳動表示素子に用いるポリマー粒子、及び電気泳動表示素子用ポリマー粒子の製造方法及び分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、情報表示装置としてのディスプレイと紙媒体の両方の長所を持った、薄型軽量、書き換えが可能で、電力の供給が無くても表示が維持され、かつ読むという行為に適した、ペーパーライクな表示媒体へのニーズが高まっている。これは一般に電子ペーパーと呼ばれ、各種方式の提案および研究開発が行われている。最近は、電気泳動方式、粉体移動方式、コレステリック液晶方式、エレクトロクロミック方式、エレクトロウェッティング方式、サーマルリライタブル方式、ツイストボール方式等の電子ペーパーが提案されている。中でも電気泳動方式の電子ペーパーは、表示品質、表示動作時の消費電力の点で優れている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
電気泳動方式では、一対の電極付き基板の間に、電気泳動粒子を分散させた分散液を封入してある。分散液は、透明あるいは着色した分散媒、分散媒の色とは異なる色を有する1種類以上の粒子、各種添加剤、を含む。この場合、電気泳動粒子(以下、泳動粒子とも言う)は、分散媒中で粒子表面に電荷を帯びており、視認側の電極に泳動粒子の電荷を吸引する電圧を与えた場合には、泳動粒子がその電極側に吸引され集積して泳動粒子の色が視認され、泳動粒子の電荷と反発する電圧を与えた場合には、泳動粒子は反対側の電極側に移動するため該泳動粒子の色は視認されず、分散媒の色あるいは該泳動粒子とは反対の電荷を持つ他の泳動粒子の色が観測される。この変化を利用することにより表示を行うことができる。
【0004】
電気泳動表示素子が多数の色を自在に表示するには、粒子分散液の分散媒あるいは泳動粒子を着色することが求められる。例えば泳動粒子を着色する場合、粒子作製時に顔料を複合化させた泳動粒子が記載されており(特許文献3参照)、色の異なる顔料を用いることで多彩な色の着色泳動粒子を作製することができる。
しかしながらこの方法で作製した着色泳動粒子は、顔料の濃度を一定以上には上げられず、色の濃さ、すなわち色隠蔽性を十分に確保できない。隠蔽性が十分でないと視認側から見た背面側が透けてしまうため色分け表示ができない。該着色泳動粒子を用いた場合、隠蔽性を補うためには粒子分散液中の粒子の濃度を増やすか、一対の電極付き基板間の間隔を広めにとり、封入する分散液量を増やす必要がある。これにより色隠蔽性を確保できるが、逆に分散液粘度が上昇するか粒子の泳動距離が長くなるため、電気泳動性の低下を招く問題がある。
【0005】
着色泳動粒子自体の色隠蔽性を上げる手法として、粒子の内部に空隙を形成する、すなわち中空にすることが提案されている(特許文献4、特許文献5参照)。空隙によって粒子内部に屈折率の異なる複数の領域が存在することとなり、屈折率の異なる界面で光の反射が起き、粒子を透過する光の量を下げられるというものである。しかしながら、電気泳動性や粒子の分散安定性が低く、色隠蔽性も十分なものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−173194号公報
【特許文献2】特許第2612472号公報
【特許文献3】特開2005−352054号公報
【特許文献4】特開2000−227612号公報
【特許文献5】特開2001−056653号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、優れた電気泳動性、分散安定性を有し、かつ着色した色が十分な色隠蔽性を有する電気泳動性ポリマー粒子並びに電気泳動性ポリマー粒子を含んだ電気泳動表示素子用粒子分散液、およびその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第一に、
顔料を含む平均粒子径が100nm〜10μmのポリマー粒子であり、前記顔料がポリマー相にのみあり、前記ポリマー粒子内部に少なくとも1つの空隙が形成されている電気泳動表示素子用ポリマー粒子によって達成される。
【0009】
本発明の上記目的および利点は、第二に、
前記顔料の含有率が、前記ポリマー粒子中のポリマーの質量に対して、3〜60質量%である電気泳動表示素子用ポリマー粒子によって達成される。
【0010】
本発明の上記目的および利点は、第三に、
前記空隙が占める体積の総量の割合が、粒子全体の体積に対して、2〜50体積%である電気泳動表示素子用ポリマー粒子によって達成される。
【0011】
本発明の上記目的および利点は、第四に、
前記顔料の種類が、有機着色顔料及び無機着色顔料よりなる群から選択される少なくとも一種である電気泳動表示素子用ポリマー粒子によって達成される。
【0012】
本発明の上記目的および利点は、第五に、
顔料と、モノマー成分(i)と、の混合物を水性媒体に分散させて第1エマルジョンを得る第一工程と、
得られた前記第1エマルジョンの混合物中の前記モノマー成分(i)を重合させてシード粒子を含む第2エマルジョンを得る第二工程と、
得られた前記第2エマルジョンに、重合性架橋モノマー及び水溶性モノマーを含有するモノマー成分(ii)を添加した後、前記モノマー成分(ii)を重合させてポリマー粒子を含む第3エマルジョンを得る第三工程と、を備える電気泳動表示素子用ポリマー粒子の製造方法によって達成される。
【0013】
本発明の上記目的および利点は、第六に、
顔料と、重合性架橋モノマーを含有するモノマー成分(iii)と、の混合物を水性媒体に分散させて第4エマルジョンを得る第四工程と、
得られた前記第4エマルジョンの混合物中の前記モノマー成分(iii)を重合させてポリマー粒子を含む第5エマルジョンを得る第五工程と、を備える電気泳動表示素子用ポリマー粒子の製造方法によって達成される。
【0014】
本発明の上記目的および利点は、第七に、
上記に記載の電気泳動表示素子用ポリマー粒子を含む電気泳動表示素子用分散液によって達成される。
【0015】
本発明の上記目的および利点は、第八に、
前記電気泳動表示素子用分散液を用いて形成された電気泳動表示素子によって達成される。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、上記のような事情に基づいてなされたものであり、その目的は、優れた電気泳動性、分散安定性を有し、かつ十分な色隠蔽性を有する電気泳動表示素子用ポリマー粒子並びに電気泳動表示素子用ポリマー粒子を含んだ電気泳動表示素子用粒子分散液、およびその製造方法を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0018】
[1]電気泳動表示素子用ポリマー粒子(以下、ポリマー粒子とも言う。):
本発明のポリマー粒子の一実施形態は、平均粒子径が100nm〜10μmの粒子であり、ポリマーと顔料とを含むポリマー相を有し、このポリマー相中に顔料が分散されており、粒子内部に少なくとも1つの空隙が形成されているものである。このようなポリマー粒子は、その構造に由来して、即ち、粒子内部に少なくとも1つの空隙が形成されていることに起因して、ポリマー粒子に入射する光を、顔料表面、ポリマー粒子、及び空隙を形成している内壁にて散乱させることができるため、隠蔽性に優れた電気泳動表示素子用ポリマー粒子として用いることができる。十分な隠蔽性を有する電気泳動性ポリマー粒子は、電気泳動表示素子において、視認側から見た背面側が透けてしまうことによる色分け表示性能の低下を抑制することができる。
【0019】
また、本願発明に関するポリマー粒子は、粒子内部に少なくとも1つの空隙が形成されているポリマー粒子である。そのためポリマー粒子の最外郭に荷電部位となりうる顔料が存在しているため、粒子内部に顔料が存在する場合に比較して、外部電場に対しての応答が速い。そのため、電気泳動性が高く、応答速度の速い電気泳動表示素子を形成することが可能となる。
【0020】
[1−1]モノマー:
本実施形態のポリマー粒子のポリマー相に含まれるポリマーは、重合性架橋モノマーに由来する構造単位、及び、水溶性モノマーに由来する構造単位を含有することが好ましい。これらの構造単位を含有することによって、ポリマー強度が向上するため、粒子の割れや潰れを防止することができるという利点がある。そのため粒子間の凝集等を抑制することも可能であり、分散液中での分散性が高くなる利点も有する。
【0021】
重合性架橋モノマーに由来する構造単位を含有することによって、耐擦性がよく、潰れ難く、耐久性に優れたポリマー粒子を得ることができる。このように耐久性に優れるため、即ち、空隙が潰れ難いため、顔料の使用量を低減することができ、コストダウンに繋がると共に、可能な粒子径範囲が広く、幅広い用途に展開可能なポリマー粒子を得ることができる。また、ポリマー粒子の表面を含む部分に、重合性架橋モノマーに由来する構造単位を含有するポリマーが配置されている場合、このポリマー粒子は、ポリマー相の強度が更に向上し、耐久性に優れるという利点がある。このようなポリマー粒子は、電気泳動表示素子用ポリマー粒子に好適に用いることができる。
【0022】
重合性架橋モノマーに由来する構造単位を形成するための重合性架橋モノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、アリルメタクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイドオリゴマー変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε−カプロラクトン変性ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。これらの中でも、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートが好ましく、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートを用いることによって、架橋点間分子量が短くなり、架橋性が向上するという利点がある。なお、これらの重合性架橋モノマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0023】
重合性架橋モノマーに由来する構造単位の含有率は、ポリマー中の全構造単位に対して、3〜70質量%であることが好ましく、5〜60質量%であることが更に好ましく、7〜50質量%であることが特に好ましい。上記含有率が3質量%未満であると、強度不足により粒子の割れ、潰れ等が発生するおそれがある。一方、70質量%超であると、粒子のコロイド安定性を保つことが困難になり、凝集物などが発生し、重合安定性が不良となるおそれがある。
【0024】
水溶性モノマーに由来する構造単位を含有することによって、粒子のコロイド安定性を保ち、顔料の分散を良好にするという利点がある。水溶性モノマーに由来する構造単位を形成するための水溶性モノマーとしては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸ナトリウム、ビニルスルホン酸ナトリウム、酢酸ビニル、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、p−イソプロペニルフェノール、p−ヒドロキシフェニル(メタ)アクリレート、シトラコン酸などを挙げることができる。なお、これらの水溶性モノマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0025】
水溶性モノマーに由来する構造単位の含有率は、ポリマー中の全構造単位に対して、0.5〜50質量%であることが好ましく、1〜40質量%であることがより好ましく、3〜30質量%であることが更に好ましい。上記含有率が0.5質量%未満であると、水溶性モノマーの効果が現れないおそれがある。一方、50質量%超であると、重合安定性が不良となり、粒子形状にならないおそれがある。
【0026】
ポリマーは、重合性架橋モノマーに由来する構造単位、及び、水溶性モノマーに由来する構造単位以外に、重合性架橋モノマー及び水溶性モノマーと共重合可能な他のモノマーに由来する構造単位を更に含有することができる。
【0027】
他のモノマーに由来する構造単位を形成するための他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、ハロゲン化スチレン等の芳香族ビニル単量体、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル類、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジオレフィン、ビニルピリジン、グリシジル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、アクリロニトリル、ベンジル(メタ)アクリレート、無水マレイン酸、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミドなどを挙げることができる。これらのモノマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
他のモノマーに由来する構造単位の含有率は、ポリマー中の全構造単位に対して、15.0〜96.5質量%であることが好ましい。
【0029】
[1−2]顔料:
本実施形態のポリマー粒子のポリマー相に含まれる顔料は、有色の固形の粉末(微粒子)であり、水や溶剤に溶解しないものである。この顔料は、ポリマー相中に分散されているものであり、ポリマー強度の向上、発色性、帯電性などを発現するものである。このような顔料を含有することによって、本実施形態のポリマー粒子は、ポリマー粒子に入射する光を、ポリマー粒子、及び空隙を形成している内壁にて散乱させることができるとともに、顔料の表面においてもポリマー粒子に入射した光を散乱させることができる。従って、ポリマー粒子が所定の構造を有すること及び顔料を含むことが相俟って不透明性が向上し、発色性が良くなるという利点がある。従って、十分な色隠蔽性を有する電気泳動表示素子用ポリマー粒子を得ることができる。
【0030】
顔料は、有機着色顔料及び無機着色顔料よりなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。このような顔料を含有するポリマー粒子は、基材や下地の色に関係なく、淡い色から濃厚色の色を発現することができ、また、耐候性が良好である。このような顔料としては、具体的には、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、アゾレーキ、キレートアゾ顔料、ビスアゾ顔料等のアゾ顔料、フタロシアニン顔料、ペリレン及びペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、オキサジン及びジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、キノフタロン顔料、フラバトロン顔料、ピロール及びジケトピロロピロール顔料、ピラゾロン顔料、ピランスロン顔料、カルボニウム顔料、インジゴイド顔料、イミダゾロン顔料、キサンテン顔料、ビオランスロン顔料等の多環式顔料、染料レーキ、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック、蛍光顔料等の有機顔料、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、カーボンブラック、チタンブラック、べんがら、カドミウムレッド、モリブデンオレンジ、黄色酸化鉄、黄鉛、チタンイエロー、クロムグリーン、酸化クロム、コバルトブルー、マンガンバイオレット、シリカ等の無機顔料などを挙げることができ、ポリマー粒子にどのような色を持たせるかに応じて最適な色の顔料を選択することができる。中でも、多環式顔料、無機顔料が好ましく、特に、白色粒子を得る場合は酸化チタン、黒色粒子を得る場合はカーボンブラック、青色粒子を得る場合はフタロシアニン顔料が好ましい。また、分散性向上などの目的で、顔料には公知の表面処理が施されていてもよい。これらの顔料は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
顔料の含有率は、ポリマー粒子中のポリマーの質量に対して、3〜60質量%であることが好ましく、4〜50質量%であることが更に好ましく、5〜40質量%であることが特に好ましい。上記含有率が3質量%未満であると、顔料の発色性などの特徴が十分に発現しないおそれがある。一方、60質量%超であると、顔料がポリマー粒子中に取り込まれないおそれや、作製したポリマー粒子から顔料が脱離してしまうおそれがある。顔料の含有率が、ポリマー粒子中のポリマーの質量に対して、3〜60質量%であると、発色性およびポリマー粒子の安定性に優れるため、電気泳動表示素子用ポリマー粒子として好適に用いることができる。
【0032】
顔料の平均粒子径は、500nm以下であることが好ましく、3nm〜100nmであることが更に好ましく、5nm〜50nmであることが特に好ましい。上記粒子径が3nm未満であると、分散性が低下したり、所定の色が得られないおそれがある。一方、500nm超であると、顔料が単独で沈殿しやすく粒子内に取り込まれないおそれがある。また、顔料の粒子径に対して2倍未満の粒子径であるポリマー粒子を作製しようとすると、顔料がポリマー粒子内にうまく取り込まれないおそれや、ポリマー粒子内の空隙の占める体積が低下するおそれがある。よって顔料の平均粒子径は、上記の好ましい範囲にあるとともに、作製しようとするポリマー粒子の粒子径の半分以下であることが特に好ましい。ここで、本明細書において「平均粒子径」とは、透過型電子顕微鏡によって観察される粒子の径のうち最も長い値を粒子径とし、観察視野中に存在する100個の粒子の上記粒子径の平均値をいう。
【0033】
[1−3]空隙:
本実施形態のポリマー粒子は、粒子内部に少なくとも1つの空隙が形成されているものである。即ち、本実施形態のポリマー粒子の内部には、電気泳動表示素子用分散液の材料として使用される状態において気体あるいは分散液媒体で満たされている空間が少なくとも1つ形成されている。この空隙が形成されていることによって、ポリマー粒子に入射した光は、ポリマー粒子の表面及び空隙を形成している内壁で散乱する。そのため、隠蔽性が高い電気泳動表示素子用ポリマー粒子を得ることができる。また、内部に空隙が形成されているため、空隙が形成されていない粒子、いわゆる密実粒子に比べて、本実施形態のポリマー粒子は軽いものである。従って、本実施形態のポリマー粒子を電気泳動表示素子に使用した場合、沈降しにくく分散安定性が良く、応答速度の速い表示素子を形成することが可能となる。
【0034】
空隙の形状は、特に制限はなく、球形、楕円体状、多角形、連続多孔などを挙げることができる。また、1つの空隙が形成された、いわゆる中空状の粒子であってもよいし、複数の空隙が形成された粒子であってもよい。複数の空隙が形成されている場合、これらの空隙の領域がそれぞれ孤立していてもよいし、連結されていてもよい。即ち、多孔質状であってもよい(以下、「多孔質状の粒子」と記す場合がある。)。
【0035】
本実施形態のポリマー粒子は、空隙が占める体積の総量の割合が、粒子全体の体積に対して、2〜40体積%であることが好ましく、3〜35体積%であることが更に好ましく、4〜30体積%であることが特に好ましい。上記割合が2体積%未満であると、少なくとも1つの空隙が形成された粒子、即ち、中空または多孔質の粒子の良好な色隠蔽性が失われるおそれがある。一方、40体積%超であると、十分な強度が得られ難く、割れたり、潰れたりする粒子が多くなるおそれがある。また、空隙が占める体積の総量の割合が、粒子全体の体積に対して、2〜40体積%であると、粒子の色隠蔽性が向上し、発色性及び着色性に優れ、十分な強度を有するという利点がある。ここで、本明細書において「空隙が占める体積の総量の割合(体積%)」は、透過型電子顕微鏡「H−7650」(日立ハイテクノロジーズ社製)によって観察される粒子を任意に10個選択し、これらの粒子について、下記の式(1)によって算出した値である。
式(1):[(空隙の総体積)/{4π(粒子の外径/2)/3}]×100
【0036】
ここで、空隙が占める体積の総量の割合(体積%)は、例えば、粒子内部の空隙が1つの場合、{(空隙の内径)/(粒子の外径)}×100により算出することができる。
【0037】
[1−4]ポリマー粒子:
本実施形態のポリマー粒子は、平均粒子径が100nm〜10μmであり、120nm〜5μmであることが好ましく、140nm〜1μmであることが更に好ましく、150nm〜800nmであることが特に好ましい。ここで、本明細書において「平均粒子径」は、透過型電子顕微鏡によって観察される粒子の径のうち最も長い値を粒子径として測定し、観察視野中に存在する100個の粒子の上記粒子径の平均値である。
【0038】
更に、本実施形態のポリマー粒子は、顔料と、モノマー成分(i)と、の混合物を水性媒体に分散させて第1エマルジョンを得、得られた第1エマルジョンの混合物中のモノマー成分(i)を重合させてシード粒子を含む第2エマルジョンを得、得られた第2エマルジョンに重合性架橋モノマー及び水溶性モノマーを含有するモノマー成分(ii)を添加した後、モノマー成分(ii)を重合させて、ポリマー粒子を含む第3エマルジョンとして得られるものであることが好ましい。
【0039】
このようにして得られるポリマー粒子の内部に形成される空隙は1つ以上であり、いわゆる中空状の粒子が得られる。この中空状のポリマー粒子は、中空の構造に由来する白色性、即ち、ポリマー粒子に入射する光を、含有する顔料の表面、ポリマー粒子の表面、及び空隙を形成している内壁で散乱させることができることによって不透明性が良好になるという利点がある。また、中空の構造に由来する隠蔽性と、含有する顔料に起因する発色性と、が相俟って発色性が良好になるという利点がある。そのため、電気泳動表示素子用ポリマー粒子として好適に用いることができる。
【0040】
中空状の粒子は、上記方法(以下、仮に「体積収縮法」と記す)によって得ることができ、この体積収縮法は、重合収縮を利用して粒子内部に中空状の空隙を形成する方法である。即ち、重合性架橋モノマーが重合してポリマーになる際に体積が収縮することによって粒子内部に空隙が形成される。
【0041】
また、本実施形態のポリマー粒子は、顔料と重合性架橋モノマーを含有するモノマー成分(iii)との混合物を水性媒体に分散させて第4エマルジョンを得、得られた第4エマルジョンの混合物中のモノマー成分(iii)を重合させて、ポリマー粒子を含む第5エマルジョンとして得られるものであることも好ましい。
【0042】
このようにして得られるポリマー粒子は、内部に1つ以上の空隙を有する中空状の粒子、多くは複数の空隙が形成された多孔質状の粒子である。このような多孔質状の粒子は、多孔質状粒子の構造に由来する隠蔽性、即ち、ポリマー粒子に入射する光を、含有する顔料の表面、ポリマー粒子の表面、及び空隙を形成している内壁で散乱させることができることによって不透明性が良好になるという利点がある。また、多孔質状の粒子の構造に由来する隠蔽性と、含有する顔料に起因する発色性と、が相俟って発色性が良好になるという利点がある。そのため、電気泳動表示素子用ポリマー粒子として好適に用いることができる。なお、内部に複数の空隙が形成された多孔質状であると、中空状の粒子である場合に比べて、ポリマー粒子に入射した光が、多孔質状の内壁で様々に散乱するという利点がある。また、その製造において中空状の粒子を製造する場合のようにシード粒子を用いることがないため、製造が容易であるという利点がある。
【0043】
[2]ポリマー粒子の製造方法:
以下、中空状の粒子(ポリマー粒子)の製造方法(本発明のポリマー粒子の製造方法の一実施形態)について説明する。このような製造方法であると、上述したような隠蔽性及び発色性が良好である電気泳動表示素子用ポリマー粒子を製造することができる。
【0044】
まず、第一工程を行う。即ち、中空状の粒子(ポリマー粒子)の製造方法における第一工程では、顔料とモノマー成分(i)と、の混合物を水性媒体に分散させて第1エマルジョンを得る。顔料は、既に上述した顔料と同様のものを同様の含有率になるように用いることができるが、第一工程における含有率は必ずしも上述の範囲に限定されない。例えば、第三工程で添加するモノマー成分の量によって、ポリマー粒子中のポリマーの質量に対する顔料の含有率は、第一工程での含有率と比べ大きく変化しうる。また、第三工程で顔料を添加する場合も、顔料の含有率は変化しうる。すなわち、第三工程を経てポリマー粒子を得た段階で、顔料の含有率が上述の好ましい範囲にあればよい。
【0045】
モノマー成分(i)に含有されるモノマーとしては、例えば、既に上述した重合性架橋モノマー、水溶性モノマー、重合性架橋モノマー及び水溶性モノマーと共重合可能な他のモノマーを用いることができ、これらのモノマーは、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。モノマー成分(i)中には、上記モノマー以外にも、上記に記載のない重合性の成分や、低分子成分、オリゴマー成分、ポリマー成分、別途作製済みのシード粒子など、第二工程で得られるシード粒子の構成要素となる成分が含まれていても良い。
【0046】
モノマー成分(i)中のモノマーの含有率は、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上であることがさらに好ましく、40質量%以上であることが特に好ましい。モノマー成分(i)中のモノマーの含有率が100%であってもよい。上記含有率が20質量%未満であると、第一工程でのシード粒子の形成が不確実となるおそれがあるため、ポリマー粒子の中空化が起こり難くなり、本発明の効果が得られないおそれがある。
【0047】
モノマー成分(i)中のモノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などの水溶性モノマーを用いることができるが、モノマー成分(i)中の該水溶性モノマーの含有率は、40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることが更に好ましく、20質量%以下であることが特に好ましい。上記含有率が40質量%超であると、水性媒体中での分散が不確実になり、第二工程においてシード粒子が形成されないおそれがあり、第三工程で所定のポリマー粒子が得られないおそれや、ポリマー粒子内の中空の形成が不確実となるおそれがある。
モノマー成分(i)中のモノマーとしては、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの重合性架橋モノマーを用いることができるが、モノマー成分(i)中の該重合性架橋モノマーの含有率は、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが更に好ましく、5質量%以下であることが特に好ましい。上記含有率が20質量%超であると、第二工程で形成されるシード粒子の架橋度が高くなるため、第三工程でポリマー粒子内の中空の形成が不確実となるおそれや、ポリマー粒子の中空率が低下するおそれがある。
【0048】
水性媒体は、顔料とモノマー成分(i)との混合物を分散することができるものである限り特に制限はないが、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等の親水性溶媒などを挙げることができる。これらの親水性溶媒は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
混合物を水性媒体に分散させる方法は、特に制限はないが、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー、高圧ホモジナイザー(例えば、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー)等の従来公知の装置を用いることができる。これらの装置の中でも、本実施形態のポリマー粒子は、混合物を水性媒体に分散させる際に、高圧ホモジナイザーを用いることが好ましい。高圧ホモジナイザーを用いると、強いせん断力を加えることが可能であり、顔料の凝集単位を小さくすることに加え、良好に分散させることができるためである。高圧ホモジナイザーによるせん断力は、顔料の凝集単位を小さくし、良好に分散させることができれば特に制限はないが、70MPa以上であることが好ましく、100MPa以上であることが更に好ましい。
【0049】
このように、混合物を水性媒体に分散させる際に、強いせん断力を加えることによって、モノマー成分(i)、顔料、及び乳化剤、分散剤等の添加成分が、1つの粒子内に存在するミニエマルジョンを得た後、重合を行うため、ポリマー相中に顔料が分散された粒子を好適に得ることができる。
【0050】
混合物を水性媒体に分散させる際に、例えば、分散剤、乳化剤、溶剤などを用いることができる。分散剤としては例えば、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステル、糖誘導体の高級脂肪酸エステル、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸塩、カルボン酸含有ポリマー、カルボン酸塩含有ポリマー、リン酸含有ポリマー、リン酸塩含有ポリマー、リン酸エステル含有ポリマー、スルホン酸含有ポリマー、スルホン酸塩含有ポリマー、アミン含有ポリマー、アンモニウム塩含有ポリマー、アミド含有ポリマー、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG部位を持つポリマーなどを挙げることができる。また、市販の顔料分散剤も好適に用いることができ、日本ルーブリゾール株式会社製「SOLSPERSEシリーズ」「SOLPLUSシリーズ」、ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYKシリーズ」「BYKシリーズ」「ANTI−TERRAシリーズ」、味の素ファインテクノ株式会社製「アジスパーシリーズ」、楠本化成株式会社製「ディスパロンシリーズ」等が挙げられる。
【0051】
乳化剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、両性界面活性剤などを挙げることができる。なお、これらは単独でまたは2種以上を併用することもできる。アニオン性界面活性剤としては、例えば、高級アルコールの硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪族スルホン酸塩、ポリエチレングリコールアルキルエーテルの硫酸エステルなどを挙げることができる。ノニオン性界面活性剤としては、通常のポリエチレングリコールのアルキルエステル型、アルキルエーテル型、アルキルフェニルエーテル型などを挙げることができる。両性界面活性剤としては、アニオン部分として、カルボン酸塩、硫酸エステル塩、スルホン酸塩、燐酸エステル塩を含有し、カチオン部分として、アミン塩、第4級アンモニウム塩を含有するものなどを挙げることができる。具体的には、ラウリルベタイン、ステアリルベタインなどのベタイン類、ラウリル−β−アラニン、ステアリル−β−アラニン、ラウリルジ(アミノエチル)グリシン、オクチルジ(アミノエチル)グリシンなどのアミノ酸タイプの両性界面活性剤などを挙げることができる。反応性基を有する乳化剤を用いても良い。溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、メチルクロルベンゼン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、エチレングリコールモノn−ブチルエーテルなどを挙げることができる。
【0052】
水性媒体には、顔料とモノマー成分(i)との混合物以外に、更に、連鎖移動剤(即ち、分子量調節剤)を含有することが好ましい。連鎖移動剤を使用することによって、シード粒子の分子量を小さくすることができ、重合性架橋モノマー及び水溶性モノマーを含有するモノマー成分(ii)がシード粒子に吸収され易くなるという利点がある。
【0053】
連鎖移動剤としては、例えば、t−ドデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、オクチルメルカプタン、t−ヘキシルメルカプタン、トリメチロールプロパン骨格、ペンタエリスリトール骨格、シアヌル酸およびイソシアヌル酸骨格を有する多官能メルカプタンなどのメルカプタン類、四塩化炭素、臭化エチレンなどのハロゲン系化合物、α−メチルスチレンダイマーなどを挙げることができる。
【0054】
連鎖移動剤の使用量は、上記混合物100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることが更に好ましい。得られるシード粒子の分子量は10万以下であることが好ましく、5万以下であることが更に好ましく、1万以下であることが特に好ましい。分子量が大きいと、空隙ができにくく、中空状の粒子になり難くなるおそれがある。
【0055】
次に、第二工程を行う。即ち、中空状の粒子(ポリマー粒子)の製造方法における第二工程では、得られた第1エマルジョンの混合物中のモノマー成分(i)を重合させてシード粒子を含む第2エマルジョンを得る。
【0056】
なお、中空状のポリマー粒子の製造方法においては、顔料とモノマー成分(i)との混合物を水性媒体に分散させて得られた第1エマルジョンに、重合開始剤を添加し、この重合開始剤の存在下で上記混合物中のモノマー成分(i)を重合させてシード粒子を含む第2エマルジョンを得ることが好ましい。重合開始剤としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの水溶性開始剤、過酸化ベンゾイル、ラウリルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイドなどの油溶性重合開始剤、還元剤との組み合わせによるレドックス系重合開始剤などを挙げることができる。これらは単独でまたは2種以上を併用することもできる。
【0057】
重合条件は、特に制限はなく、例えば、重合温度20〜90℃(好ましくは30〜85℃)で1〜12時間(好ましくは3〜10時間)の条件で重合させることができる。
【0058】
シード粒子は、その平均粒子径が10nm〜9μmであることが好ましく、30nm〜5μmであることが更に好ましく、50nm〜1μmであることが特に好ましい。上記平均粒子径が10nm未満であると、中空化しないおそれや、作製したポリマー粒子の粒子径が好ましい範囲を下回るおそれがある。一方、9μm超であると、中空の形成が不確実となるおそれや、作製したポリマー粒子の粒子径が好ましい範囲を超えてしまうおそれがある。
【0059】
次に、第三工程を行う。即ち、中空状の粒子(ポリマー粒子)の製造方法における第三工程では、得られた第2エマルジョンに重合性架橋モノマー及び水溶性モノマーを含有するモノマー成分(ii)を添加した後、モノマー成分(ii)を重合させる。このようにしてポリマー粒子を含む第3エマルジョンを得ることができる。
【0060】
モノマー成分(ii)に含有される重合性架橋モノマーとしては、例えば、既に上述した重合性架橋モノマーと同様のものを用いることができる。
【0061】
モノマー成分(ii)中の重合性架橋モノマーの含有率は、1〜60質量%であることが好ましく、2〜50質量%であることが更に好ましく、5〜40質量%であることが特に好ましい。上記含有率が1質量%未満であると、中空化が起こらない(即ち、中空が形成されない)おそれがある。一方、60質量%超であると、重合安定性が低下するおそれがある。
【0062】
水溶性モノマーとしては、例えば、既に上述した水溶性モノマーと同様のものを用いることができる。
【0063】
モノマー成分(ii)中の水溶性モノマーの含有率は、0.5〜15.0質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることが更に好ましい。上記含有率が0.5質量%未満であると、重合安定性が低下するおそれがある。一方、15.0質量%超であると、ポリマー粒子が分散する分散液の粘度が上昇するおそれがある。
【0064】
モノマー成分(ii)には、上記重合性架橋モノマー及び水溶性モノマー以外に、上記重合性架橋モノマー及び上記水溶性モノマーと共重合が可能な他のモノマー(以下、単に「他のモノマー」と記す場合がある)とを更に含有することができる。
【0065】
他のモノマーとしては、例えば、既に上述した他のモノマーと同様のものを用いることができる。
【0066】
モノマー成分(ii)中の他のモノマーの含有率は、25〜98.5質量%であることが好ましく、40〜97質量%であることが更に好ましい。
【0067】
モノマー成分(ii)の使用量は、シード粒子10質量部に対して、10〜1000質量部であることが好ましく、20〜800質量部であることが更に好ましく、30〜500質量部であることが特に好ましい。上記使用量が10質量部未満であると、中空化しない(即ち、中空が形成されない)おそれがある。一方、1000質量部超であると、中空の形成が不確実となるおそれがある。
【0068】
モノマー成分(ii)の重合条件は、特に制限はなく、例えば、水溶性開始剤、油溶性開始剤などを更に添加し、20〜90℃(好ましくは30〜85℃)で1〜12時間(好ましくは3〜10時間)の条件で重合させることができる。上記開始剤としては、例えば、既に上述した重合開始剤と同様のものを用いることができる。特に、水溶性開始剤を使用すると、中空化されやすく空隙が占める体積が大きくなるという利点がある。また、モノマー成分(ii)と顔料を混合して用いることもできる。混合物を水性媒体に分散させる際に、例えば、分散剤、乳化剤、溶剤などを用いることができる。分散剤としては、例えば、上述した分散剤と同様のものを挙げることができる。乳化剤としては、例えば、上述した乳化剤と同様のものを挙げることができる。溶剤としては、例えば、上述した溶剤と同様のものを挙げることができる。
【0069】
以下に、多孔質状の粒子(ポリマー粒子)の製造方法(本発明のポリマー粒子の製造方法の別の実施形態)について説明する。このような製造方法であると、上述したような隠蔽性及び発色性が良好である電気泳動表示素子用ポリマー粒子を製造することができる。
【0070】
まず、第四工程を行う。即ち、多孔質状の粒子(ポリマー粒子)の製造方法における第四工程では、顔料と重合性架橋モノマーを含有するモノマー成分(iii)との混合物を水性媒体に分散させて第4エマルジョンを得る。
【0071】
モノマー成分(iii)に含有される重合性架橋モノマーは、上述したモノマー成分(ii)に含有される重合性架橋モノマーと同様のものを好適に用いることができる。
【0072】
モノマー成分(iii)中の重合性架橋モノマーの含有率は、1〜60質量%であることが好ましく、2〜50質量%であることが更に好ましく、5〜40質量%であることが特に好ましい。上記含有率が1質量%未満であると、中空化が起こらない(即ち、粒子の内部に中空が形成されない)おそれがある。一方、60質量%超であると、重合安定性が低下するおそれがある。
【0073】
モノマー成分(iii)には、上記重合性架橋モノマー以外に、上記重合性架橋モノマーと共重合が可能な他のモノマーとを更に含有することができる。モノマー成分(iii)に含有させることができる他のモノマーとしては、上述したモノマー成分(i)およびモノマー成分(ii)に含有させることができる水溶性モノマーおよび他のモノマーと同様のものを好適に用いることができる。
【0074】
モノマー成分(iii)中の水溶性モノマーの含有率は、15質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることが更に好ましい。
【0075】
モノマー成分(iii)中の他のモノマーの含有率は、25〜99質量%であることが好ましく、40〜98質量%であることが更に好ましい。
【0076】
水性媒体は、顔料及びモノマー成分(iii)の混合物を分散することができるものである限り特に制限はないが、水、アルコール等、上述の親水性溶媒などを挙げることができる。
【0077】
混合物を水性媒体に分散させる方法は、特に制限はなく、既に上述した混合物を水性媒体に分散させる方法に用いることができる従来公知の装置を用いることができる。
【0078】
混合物を水性媒体に分散させる際に、例えば、分散剤、乳化剤、溶剤などを用いることができる。分散剤としては、例えば、上述した分散剤と同様のものを挙げることができる。乳化剤としては、例えば、上述した乳化剤と同様のものを挙げることができる。溶剤としては、例えば、上述した溶剤と同様のものを挙げることができる。
【0079】
次に、第五工程を行う。即ち、多孔質状の粒子(ポリマー粒子)の製造方法における第五工程では、得られた第4エマルジョンの混合物中のモノマー成分(iii)を重合させる。このようにしてポリマー粒子を含む第5エマルジョンを得ることができる。
【0080】
顔料と重合性架橋モノマーを含有するモノマー成分(iii)との混合物を水性媒体に分散させて得られた第4エマルジョンに開始剤を添加することで混合物中のモノマー成分(iii)を重合させることができる。重合開始剤としては、既に上述した開始剤と同様のものを用いることができる。特に、水以外の溶剤を用いる系で油溶性開始剤を使用すると(即ち、溶剤を用いる場合には、重合開始剤として油溶性開始剤を用いると)、空隙が増えるため、空隙が占める体積の総量の割合が大きくなるという利点がある。
【0081】
重合条件は、特に制限はなく、例えば、重合温度20〜90℃(好ましくは30〜85℃)で1〜12時間(好ましくは3〜10時間)の条件で重合させることができる。
【0082】
その他、ポリマー粒子の製造において、上記以外の添加成分が含まれていても良く、例えばキレート剤、pH調整剤、防腐剤、重合停止剤等が挙げられる。これらはポリマー粒子製造のどの工程で、あるいはどの工程の前後で添加するかは任意であり、添加の目的に応じて適宜選択される。
【0083】
[3]電気泳動表示素子用分散液:
上記によってポリマー粒子を製造した場合、本発明のポリマー粒子は、ポリマー粒子を含むエマルジョンとして得られる。該エマルジョン中では、本発明のポリマー粒子は優れた分散性を示すため、本実施形態のポリマー粒子を含むエマルジョンを材料として用いた電気泳動表示素子用分散液は、液中でのポリマー粒子間の凝集がない優れた分散性を示す。また、本実施形態のポリマー粒子を含むエマルジョンは、空隙が形成されていない粒子、いわゆる密実粒子を含むエマルジョンに比べて、色隠蔽性が良好で応答速度が速く、電気泳動表示素子用分散液として好適に用いられる。
本発明の電気泳動表示素子は、本発明の電気泳動表示素子用分散液を用いて形成されるため、色隠蔽性が向上し、発色性及び着色性に優れ、電気泳動性が良好である。
【0084】
本実施形態の電気泳動表示素子用分散液は、本発明のポリマー粒子の製造に際して得られるポリマー粒子を含むエマルジョン(例えば上述の第3エマルジョンあるいは第5エマルジョン)をそのまま用いてもよいし、本発明のポリマー粒子の製造に際して得られるポリマー粒子を含むエマルジョンを乾燥させて粉末あるいは固体状のポリマー粒子を得、得られたポリマー粒子を乾燥前と同じ媒体あるいは他の媒体に分散(以下、「再分散」と記す場合がある)させて得られるものであってもよい。ポリマー粒子を乾燥させることなく、ポリマー粒子を含むエマルジョンから連続的にあるいはバッチ式に媒体を置換(以下、「溶剤置換」と記す場合がある)して電気泳動表示素子用分散液を得てもよい。
乾燥および溶剤置換は公知の方法を適用することができ、例えば乾燥は、真空加熱、スプレードライ、凍結乾燥、遠心分離後の上澄みの除去、等が挙げられ、溶剤置換は、限外ろ過、デカンテーション、共沸、ロータリーエバポレーション、遠心分離、等が挙げられる。
【0085】
再分散において、乾燥させたポリマー粒子を媒体に添加した後、例えば、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル、アジテータ、ヘンシェルミキサ、コロイドミル、ホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、パールミル、湿式ジェットミル、ペイントシェーカー、高圧ホモジナイザー(例えば、マイクロフルイダイザー、ナノマイザー)、超音波処理機、等の従来公知の装置を用いて分散処理を行っても良い。また、粒子の乾燥途中、粒子の乾燥後(粉体の状態で)、溶剤置換の途中、溶剤置換後において、上記に例示した方法を含め公知の分散処理を行っても良い。
【0086】
再分散させる媒体としては例えば、水、メタノール、エタノール、IPA(イソプロピルアルコール、2−プロパノール)などのアルコール類;アセトン、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、γ−ブチロラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の水性媒体が挙げられる。また、直鎖アルカン、分岐鎖アルカン、脂環式アルカン、流動パラフィン、ミネラルスピリット等、炭素数6〜30の脂肪族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、直鎖アルキルベンゼン、分岐鎖アルキルベンゼン等、炭素数6〜30の芳香族炭化水素;ポリジメチルシロキサン等のシリコーンオイル;パーフルオロアルカン、パーフルオロシクロアルカン、パーフルオロポリエーテル、ハイドロフルオロポリエーテル等のフッ素化合物;ジクロロメタン、クロロホルム、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン、臭化エチルなどのハロゲン化炭化水素類等の絶縁性媒体が挙げられる。これらの中でも電気泳動表示素子用分散液の耐久安定性および良好な電気泳動性の面で、絶縁性媒体を用いることが好ましい。なお、水性媒体同士、あるいは絶縁性媒体同士を2種以上組み合わせて用いても良い。2種類以上の媒体を組み合わせることで、電気泳動表示素子用分散液の粘度および媒体の屈折率を調節することができる。ただし、媒体の種類ごとの特性を生かすため、水性媒体と絶縁性媒体とは混合しないことが好ましい。
【0087】
ポリマー粒子を含むエマルジョンを未処理で、あるいは再分散や溶剤置換することで得られた電気泳動表示素子用分散液は、本発明の電気泳動表示素子用ポリマー粒子を複数種類含んでいても良い。例えば上記方法によって製造した、顔料の種類と量が異なるポリマー粒子、大きさの異なるポリマー粒子、空隙の占める割合が異なるポリマー粒子、モノマー成分の種類と量が異なるポリマー粒子、空隙形成法の異なるポリマー粒子、重合時の分散剤、乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤等の種類と量が異なるポリマー粒子が複数種類含まれていても良い。種類の異なるポリマー粒子を混合する方法は、複数種類のポリマー粒子をすべて乾燥させ、1つの媒体に再分散させる方法、1種類以上のポリマー粒子を含む分散液(未処理のエマルジョン、あるいは再分散や溶剤置換したもの)に、乾燥させたポリマー粒子を添加する方法、互いに1種類以上のポリマー粒子を含む分散液(未処理のエマルジョン、あるいは再分散や溶剤置換したもの)同士を混合する方法等が挙げられる。ただし、媒体の種類ごとの特性を生かすため、水性媒体を用いた分散液と絶縁性媒体を用いた分散液とは混合しないことが好ましい。
【0088】
電気泳動表示素子用分散液中のポリマー粒子の総質量は、電気泳動表示素子用分散液の総質量に対して、好ましくは2〜60質量%であり、さらに好ましくは5〜40質量%である。ポリマー粒子の総質量が2〜60質量%の時、分散性ならびに電気泳動表示素子を形成した際の色隠蔽性、電気泳動性を兼ね備えた電気泳動表示子用分散液を形成することができる。ポリマー粒子の総質量が2質量%未満の場合、電気泳動表示素子における色隠蔽性が低下し、電気泳動表示素子の表示コントラストが低下するおそれがある。ポリマー粒子の総量が60質量%を超える場合、分散液の粘度が大きくなり、電気泳動性が低下し、電気泳動表示素子の表示切替えの応答速度が低下するおそれがある。
【0089】
ポリマー粒子を含むエマルジョンを未処理で、あるいは再分散や溶剤置換することで得られた電気泳動表示素子用分散液には、上記の媒体およびポリマー粒子の他に、分散剤、分散ポリマー、界面活性剤、電荷調整剤、顔料、染料、本発明のポリマー粒子以外のポリマー粒子等が含まれていても良い。中でも分散剤は、ポリマー粒子の分散液中での分散安定性を良好にすることができるため、添加するのが望ましい。電荷調整剤は、ポリマー粒子の電気泳動性を良好にすることができるため、添加するのが望ましい。分散剤が界面活性剤、電荷調整剤の効果を兼ねていても良い。分散剤としては例えば、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステル、糖誘導体の高級脂肪酸エステル、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸塩、カルボン酸含有ポリマー、カルボン酸塩含有ポリマー、リン酸含有ポリマー、リン酸塩含有ポリマー、リン酸エステル含有ポリマー、スルホン酸含有ポリマー、スルホン酸塩含有ポリマー、アミン含有ポリマー、アンモニウム塩含有ポリマー、アミド含有ポリマー、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ポリエチレングリコール(PEG)、PEG部位を持つポリマーなどを挙げることができる。また、市販の顔料分散剤も好適に用いることができ、日本ルーブリゾール株式会社製「SOLSPERSEシリーズ」「SOLPLUSシリーズ」、ビックケミー・ジャパン株式会社製「DISPERBYKシリーズ」「BYKシリーズ」「ANTI−TERRAシリーズ」、味の素ファインテクノ株式会社製「アジスパーシリーズ」、楠本化成株式会社製「ディスパロンシリーズ」等が挙げられる。
【0090】
また、ポリマー粒子の製造時に用いた乳化剤等が残存していても良い。残存成分があっても、ポリマー粒子および電気泳動表示素子用分散液の色隠蔽性には影響は無く、電気泳動性への影響は上記の分散剤の効果が主であり、それに比べればはるかに軽微である。ポリマー粒子の乾燥方法、溶剤置換方法の選択により残存成分を除いて精製することも可能である。
ポリマー粒子とは色の異なる相を形成する目的で、顔料、染料あるいは本発明のポリマー粒子以外のポリマー粒子を電気泳動表示素子用分散液中に混在させて用いても良い。顔料は、上記のポリマー粒子のポリマー相に含まれる有機着色顔料及び無機着色顔料と同様のものを用いることができ、染料は、直接染料、反応染料、酸性染料、カチオン染料、分散染料、バット染料等の群の中から、分散液の媒体に溶解する染料を適宜選択して用いることができる。本発明のポリマー粒子以外のポリマー粒子は、色隠蔽性を確保するため、分散液の媒体との屈折率差がなるべく大きくなるような材質のものを適宜選択して用いることができる。ただし、これら顔料、染料および本発明のポリマー粒子以外のポリマー粒子は、本発明のポリマー粒子に比べ色隠蔽性が劣る場合が多いため、良好な表示品位を得るためには着色成分として本発明のポリマー粒子を用いることが好ましい。
【0091】
一方で、酸化チタン、酸化亜鉛等は色隠蔽性が良好であり、顔料単独で電気泳動表示素子用分散液に添加しても良好な表示品位が得られる。しかしこれら顔料は比重が大きいために沈降しやすく、分散安定性を確保しにくい。本発明のポリマー粒子を用いれば、色隠蔽性は同様に良好であり、ポリマー粒子内部に空隙を有するため粒子の比重が下がって媒体との比重差が少なくなり、分散安定性を確保し易い。
【0092】
本発明の電気泳動表示素子用分散液は、該分散液を調製する際、分散処理を行うことが好ましい。分散処理は、上記の粒子を再分散させる際と同様の装置およびその他の公知の装置、方法を用いて行うことができる。
本発明の電気泳動表示素子用分散液内に2色以上の色成分を有する場合、例えば、本発明のポリマー粒子であって互いに色の異なる2種類のポリマー粒子が含まれる場合、あるいは本発明のポリマー粒子と、本発明のポリマー粒子以外で色の異なる上記着色成分が含まれる場合、電気泳動表示素子が良好な色分け表示を実現するため、色の異なる各成分は帯電性(+帯電か、−帯電か、電荷を持たないか)が異なることが望ましく、同一の帯電性であっても電気泳動性が異なることが望ましい。帯電性は、ポリマー粒子を構成するモノマー成分の選択、顔料の選択、分散剤および電荷調整剤の選択によって制御することができる。本発明のポリマー粒子は内部に空隙を有し、表面近傍のポリマー相に顔料が含まれるため、顔料の極性に起因して電荷を付与しやすく、その結果、電気泳動性が良好である。また、本発明のポリマー粒子および本発明のポリマー粒子以外で色の異なる上記着色成分には、分散安定性、電気泳動性を向上させる目的で、公知の物理的、化学的な表面処理、表面修飾等を施してもよい。
【0093】
[4]電気泳動表示素子:
本発明の電気泳動表示素子は、本発明の電気泳動表示素子用分散液を用いて形成され、電気泳動表示素子用分散液は電気泳動表示素子の一対の基板間に封入されて使用される。電気泳動表示素子の構成は、当業者に既知のいずれのタイプの電気泳動表示素子であってもよい。
本発明の電気泳動表示素子が表示を行い、観測者によって色が視認される原理を以下に説明するが、本発明の電気泳動表示素子はこれらに限定されるものではない。下記の図1〜図5は、電極、基板間のスペーサー、分散液を細かく区分けする隔壁、封止剤等を省略した模式図(断面図)である。
【0094】
図1の本発明の電気泳動表示素子は、透明な前面基板1と背面基板2の間に、本発明のポリマー粒子であって互いに色の異なる2種類のポリマー粒子4および5を含む本発明の分散液を用いたものであり、媒体3は透明である。図1(a)において、前面基板1側にポリマー粒子4が位置しており、観測者からはポリマー粒子4の色が視認できる。逆に図1(b)において、前面基板1側にポリマー粒子5が位置しており、観測者からはポリマー粒子5の色が視認できる。ポリマー粒子4の色とポリマー粒子5の色が異なるため、電気泳動表示素子は情報の表示が可能である。ポリマー粒子4と5は本発明のポリマー粒子であるため色隠蔽性に優れ、背面基板2側の粒子の色が透けて混色しコントラストが低下することはない。図1(a)と図1(b)は基板1と2の間に印加する電圧の向きを変えることで相互に変換可能である。例えば、ポリマー粒子4が+電荷を持ち、ポリマー粒子5が−電荷を持つ場合、前面基板1側電極を−極に、背面基板2側電極を+極にして電圧を印加すれば、ポリマー粒子4と5は粒子自身が持つ電荷と引き寄せあう電極の方向に泳動し図1(a)の状態となる。電極の+と−を反転させれば、粒子が反対電極側に泳動し図1(b)の状態となる。
【0095】
図2の本発明の電気泳動表示素子は、透明な前面基板1と背面基板2の間に、本発明のポリマー粒子7と、該ポリマー粒子とは色の異なる他の粒子8と、を含む本発明の分散液を用いたものであり、媒体6は透明である。図2(a)において、前面基板1側に粒子8が位置しており、観測者からは粒子8の色が視認できる。逆に図2(b)において、前面基板1側にポリマー粒子7が位置しており、観測者からはポリマー粒子7の色が視認できる。ポリマー粒子7の色と粒子8の色が異なるため、電気泳動表示素子は情報の表示が可能である。図2(b)において、前面基板1側のポリマー粒子7は本発明のポリマー粒子であるため色隠蔽性に優れ、背面基板2側の粒子8の色が透けて混色しコントラストが低下することはない。図2(a)において、粒子8として色隠蔽性が良いものを選択すれば、背面基板2側のポリマー粒子7の色が透けて混色することはない。図2(a)と図2(b)は基板1と2の間に印加する電圧の向きを変えることで相互に変換可能である。例えば、ポリマー粒子7が+電荷を持ち、粒子8が−電荷を持つ場合、前面基板1側電極を+極に、背面基板2側電極を−極にして電圧を印加すれば、ポリマー粒子7と粒子8は粒子自身が持つ電荷と引き寄せあう電極の方向に泳動し図2(a)の状態となる。電極の+と−を反転させれば、粒子が反対電極側に泳動し図2(b)の状態となる。
【0096】
図3の本発明の電気泳動表示素子は、透明な前面基板1と背面基板2の間に、染料あるいは顔料で着色した媒体9中に、本発明のポリマー粒子10を含む本発明の分散液を用いたものである。図3(a)において、前面基板1側には粒子が位置しておらず、観測者からは媒体9の色が視認できる。逆に図3(b)において、前面基板1側にポリマー粒子10が位置しており、観測者からはポリマー粒子10の色が視認できる。図3(b)において、前面基板1側のポリマー粒子10は本発明のポリマー粒子であるため色隠蔽性に優れ、媒体9の色が透けて混色しコントラストが低下することはない。図3(a)において、媒体9の色を濃くして色隠蔽性を良くすれば、背面基板2側のポリマー粒子10の色が透けて混色することはない。図3(a)と図3(b)は基板1と2の間に印加する電圧の向きを変えることで相互に変換可能である。例えば、ポリマー粒子10が−電荷を持つ場合、前面基板1側電極を−極に、背面基板2側電極を+極にして電圧を印加すれば、ポリマー粒子10は粒子自身が持つ電荷と引き寄せあう電極の方向に泳動し図3(a)の状態となる。電極の+と−を反転させれば、粒子が反対電極側に泳動し図3(b)の状態となる。
【0097】
図4の電気泳動表示素子は、透明な前面基板1と背面基板2の間に、染料あるいは顔料で着色した媒体11中に、本発明のポリマー粒子であって互いに色の異なる、また媒体とも互いに色の異なる2種類のポリマー粒子12および13を含む本発明の分散液を用いたものである。図4(a)において、前面基板1側にポリマー粒子12が位置しており、観測者からはポリマー粒子12の色が視認できる。逆に図4(b)において、前面基板1側にポリマー粒子13が位置しており、観測者からはポリマー粒子13の色が視認できる。図4(c)において、前面基板1側には粒子が位置しておらず、観測者からは媒体11の色が視認できる。媒体11の色とポリマー粒子12の色とポリマー粒子13の色が異なるため、電気泳動表示素子は情報の表示が可能であり、3色の表示も可能である。図4(a)と図4(b)において、ポリマー粒子12と13は本発明のポリマー粒子であるため色隠蔽性に優れ、媒体11の色が透けて混色しコントラストが低下することはない。図4(c)において、媒体11の色を濃くして色隠蔽性を良くすれば、背面基板2側のポリマー粒子12と13の色が透けて混色することはない。図4(a)と図4(b)と図4(c)は基板1と2の間に印加する電圧の向きを変えることで相互に変換可能である。ただし背面基板2側に2種類の電極を形成することが、図4(c)の状態に粒子を泳動させる上で好ましい。例えば、ポリマー粒子12が−電荷を持ち、ポリマー粒子13が+電荷を持つ場合、前面基板1側電極を+極に、背面基板2側電極を−極にして電圧を印加すれば、ポリマー粒子12と13は粒子自身が持つ電荷と引き寄せあう電極の方向に泳動し図4(a)の状態となる。電極の+と−を反転させれば、粒子が反対電極側に泳動し図4(b)の状態となる。前面基板1側には電圧を印加せず無電位とし、背面基板2側の2種類の電極を+と−として電圧を印加すれば、粒子が引き寄せあう電極方向に泳動し、図4(c)の状態となる。
【0098】
図5の電気泳動表示素子は、染料あるいは顔料で着色した媒体14中に、媒体14とは色の異なる本発明のポリマー粒子15と、媒体およびポリマー粒子15とは色の異なる他の粒子16と、を含む本発明の分散液を用いたものである。図5(a)において、前面基板1側に粒子16が位置しており、観測者からは粒子16の色が視認できる。逆に図5(b)において、前面基板1側にポリマー粒子15が位置しており、観測者からはポリマー粒子15の色が視認できる。図5(c)において、前面基板1側には粒子が位置しておらず、観測者からは媒体14の色が視認できる。媒体14の色とポリマー粒子15の色と粒子16の色が異なるため、電気泳動表示素子は情報の表示が可能であり、3色の表示も可能である。図5(b)において、前面基板1側のポリマー粒子15は本発明のポリマー粒子であるため色隠蔽性に優れ、媒体14の色および背面基板2側の粒子16の色が透けて混色しコントラストが低下することはない。図5(a)において、粒子16として色隠蔽性が良いものを選択すれば、媒体14の色および背面基板2側のポリマー粒子15の色が透けて混色することはない。図5(c)において、媒体14の色を濃くして色隠蔽性を良くすれば、背面基板2側のポリマー粒子15と粒子16の色が透けて混色することはない。図5(a)と図5(b)と図5(c)は基板1と2の間に印加する電圧の向きを変えることで相互に変換可能である。ただし背面基板2側に2種類の電極を形成することが、図5(c)の状態に粒子を泳動させる上で好ましい。例えば、ポリマー粒子15が−電荷を持ち、粒子16が+電荷を持つ場合、前面基板1側電極を−極に、背面基板2側電極を+極にして電圧を印加すれば、ポリマー粒子15と粒子16は粒子自身が持つ電荷と引き寄せあう電極の方向に泳動し図5(a)の状態となる。電極の+と−を反転させれば、粒子が反対電極側に泳動し図5(b)の状態となる。前面基板1側には電圧を印加せず無電位とし、背面基板2側の2種類の電極を+と−として電圧を印加すれば、粒子が引き寄せあう電極方向に泳動し、図5(c)の状態となる。
【0099】
基板の材質は、各種表示装置で公知のものが使用でき、例えば、ガラス基板、各種金属基板、シリコンウエハー、樹脂基板等が用いられる。基板の厚みは好ましくは10μm〜2mmであり、耐久性、フレキシブル性、透明性等を考慮し任意に選択される。一対の基板には、少なくとも一方に透明基板が用いられ、前面側(視認側)の基板には透明基板を使用する。一対の基板の材質は互いに異なっていても良い。
【0100】
本発明の電気泳動表示素子の内部(分散液を封入する部分。以降、セルおよびセルの内部とも言う)に封入される本発明の電気泳動表示素子用分散液は、粒子の沈降、凝集、固着を防ぎ良泳動性を維持するため、表示解像度を上げるため、等の目的で、基板の平面方向に細かく区分けされて、相互に流動して混合、接触できない状態でセルに封入されることが実用上は好ましい。これを実現する手法としては当業者に既知の手法が用いられる。
【0101】
例えば、エンボス加工技術またはフォトリソグラフィー技術によって、セルの内部を微細な空間に区分けする隔壁を形成する方法を用いて電気泳動表示素子を製造してもよい。隔壁によって区分けされた微細な空間は当業者間ではマイクロカップともよばれ、本方法による区分け方法はマイクロカップ法とも呼ばれる。隔壁の材料としては、各種熱可塑性樹脂(組成物)、各種UV硬化樹脂(組成物)などが挙げられる。マイクロカップ法によって隔壁を形成する一例の模式図(断面図)を図6に示す。電極やセル端部の封止は省略してある。基板22上にエンボス加工によって隔壁26が形成され、多数の微細な空間が形成される。それぞれの空間には媒体23、粒子24等を成分とする分散液が塗布あるいはインクジェット法等によって充填され、シール層27を用いて個々の空間が封止されるとともに、対面の基板21が貼合されている。個々の空間の平面サイズは封入される粒子の粒子径よりも大きい範囲で10μm〜1mm四方、好ましくは20μm〜500μm四方、より好ましくは25μm〜250μm四方である。より細かい方が粒子の分散安定性が良く高精細な電気泳動表示素子が得られるが、細かすぎると隔壁の占める面積の割合が増え、表示品位の低下を招く。隔壁の幅は3μm〜100μm、好ましくは5μm〜70μm、より好ましくは10μm〜50μmである。より細いほうが高精細な電気泳動表示素子が得られるが、細すぎると隔壁の強度が低下する。隔壁の高さ、すなわちセルの厚みは、封入される粒子の粒子径よりも大きい範囲で10μm〜1mm、好ましくは15μm〜500μm、より好ましくは20μm〜200μmである。より薄い方が粒子が泳動する距離が短くなり電気泳動速度は向上するが、薄すぎると表示品位の低下を招く。
【0102】
例えば、電気泳動表示素子用分散液を内包した微小なカプセル(マイクロカプセル)を形成し、セルの内部をマイクロカプセルで区切られた微細な空間に区分けする方法を用いて電気泳動表示素子を製造してもよく、当業者間ではこの方法はマイクロカプセル法として知られる。このタイプの電気泳動表示素子では、個々のマイクロカプセルのサイズは、5〜500μm、好ましくは25〜250μmの範囲である。個々のマイクロカプセルに表示液を内包させてカプセル外殻を形成する方法としては、in−situ法、界面重合法、コアセルベーション法等従来の方法により形成することが可能である。その際マイクロカプセルの壁材としては、ポリウレタン、ポリ尿素、ポリ尿素−ポリウレタン、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホンアミド、ポリカーボネート、ポリスルフィネート、エポキシ樹脂、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ポリ酢酸ビニル、ゼラチン、アラビアゴム等が挙げられる。スペーサーを介した一対の基板間に、電気泳動表示素子用分散液を内包したマイクロカプセルがバインダーとともに充填された構造をとる。一対の基板間の幅(セルの厚み)は上記と同様の範囲が好ましく用いられる。
【0103】
電気泳動表示素子の色表示の方式、および電圧を印加する方式としては、公知のアップ/ダウン・スイッチング・モード、インプレーン・スイッチング・モード又はデュアル・スイッチング・モードを有してよく、各モードに適した公知の電極形状が形成されて用いられる。アップ/ダウン・スイッチング・モードではポリマー粒子等の帯電体は基板の厚み方向に電気泳動して色表示を実現する(例えば図1−図3)。インプレーン・スイッチング・モードではポリマー粒子等の帯電体は基板の平面方向に電気泳動して色表示を実現する。デュアル・スイッチング・モードではポリマー粒子等の帯電体は厚み方向、平面方向のいずれかあるいは両方に電気泳動して色表示を実現する(図4、図5)。電極は一対の基板の少なくとも一方に形成される。前面基板に形成する際は電極としてITO、ZnO、IZO、PEDOT/PSS等の導電性高分子など、公知の透明電極が好ましく用いられる。背面基板に形成する際は電極の材質は任意であり、各種金属等が用いられる。電極はセル内で電気泳動表示素子用分散液と直接接していてもよく、電極間隔を過度に広げるおそれがなければ、樹脂製の保護膜、フィルム等で覆われ、分散液とは隔てられていても良い。
【0104】
本発明の電気泳動表示素子用分散液を用いた電気泳動表示素子は、上記いずれの方式においても、すなわち微細な空間に区分けする方法、色表示・電圧印加の方式がいずれであっても、色隠蔽性に起因するコントラストが良好で、分散安定性に起因する表示の保持性、長期安定性が良好で、電気泳動性に起因する応答速度が良好である。
【実施例】
【0105】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例、及び比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。ポリマー粒子の合成例とそのポリマー粒子を含む分散液の作製例を以下に記載する。
【0106】
<実施例1 ポリマー粒子1を含む分散液1Aの作製>
スチレン40部、ブチルアクリレート10部、t−ドデシルメルカプタン3部、及び、顔料としてカーボンブラック(「#2600」(商品名)、三菱化学社製)50部を混合し、攪拌機で分散させた後、ポリビニルアルコール10%水溶液(「ゴーセノールGL03」、日本合成化学社製)100部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10%水溶液10部と蒸留水350部とを添加し、攪拌機としてホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて更に分散させて第1エマルジョン1を得た。その後、得られた第1エマルジョン1を、高圧ホモジナイザー(「マイクロフルイダイザーM110Y」、みづほ工業社製)を用いて70MPaの圧力で乳化分散させて乳化分散液を得た。この乳化分散液をセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら窒素置換した後、油溶性開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)5部を加え、75℃で4時間重合を行い、シード粒子を含有する第2エマルジョン1を得た。その後、得られた第2エマルジョン1の固形分濃度を18%に調整した。
得られた第2エマルジョン1中のシード粒子を透過型電子顕微鏡「H−7650」(日立ハイテクノロジーズ社製)にて観察したところ平均粒子径が180nmの粒子であった。なお、得られたシード粒子は、いわゆる密実の粒子であった。シード粒子の重合安定性、重合転化率(%)の測定結果を表1に示す。
【0107】
得られたシード粒子を含む第2エマルジョン1を100部と、メチルメタクリレート56部、ジビニルベンゼン27部、ブチルアクリレート6部、及びアクリル酸2部からなるモノマー成分(ii)とを混合し、攪拌機で分散して分散液を得た。その後、この分散液にポリビニルアルコール10%水溶液(「ゴーセノールGL03」、日本合成化学社製)100部と蒸留水300部とを添加して撹拌機で予備分散した。その後、高圧ホモジナイザー(「マイクロフルイダイザーM110Y」、みづほ工業社製)を用いて70MPaの圧力で乳化分散させて乳化分散液を得た。この乳化分散液をセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら窒素置換した後、水溶性開始剤として過硫酸カリウム3%水溶液20部を加え、75℃で4時間重合を行い、ポリマー粒子1が分散した第3エマルジョン1を得た。
得られた第3エマルジョン1中のポリマー粒子1を透過型電子顕微鏡にて観察したところ1つの空隙を有していた。平均粒子径、空隙径、空隙の割合、重合安定性の測定結果を表2に示す。
【0108】
<分散液1Aの作製>
得られた第3エマルジョン1をスプレードライ処理によって乾燥させ、続けて解砕処理によって粒子の凝集を解き、ポリマー粒子1の粉末を得た。ドデシルベンゼン100部と、ポリマー粒子1の粉末を10部、分散剤として日本ルーブリゾール(株)製「solsperse17000」5部とを混合し、超音波処理を行い分散液1Aを作製した。
この分散液1Aを用いた色隠蔽性、電気泳動性、分散安定性、コントラスト比の評価結果を表2に示す。
【0109】
<実施例2 ポリマー粒子2含む分散液2Aと分散液2Bの作製>
スチレン52部、ブチルアクリレート18部、t−ドデシルメルカプタン3部、及び、顔料としてカーボンブラック(「#2600」(商品名)、三菱化学社製)30部を混合し、攪拌機で分散させた後、ポリビニアルコール10%水溶液100部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10%水溶液10部と蒸留水350部とを添加し、攪拌機で更に分散させて第1エマルジョンを得た。その後、得られた第1エマルジョンを、高圧ホモジナイザー(「マイクロフルイダイザーM110Y」、みづほ工業社製)を用いて70MPaの圧力で乳化分散させて乳化分散液を得た。この乳化分散液をセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら窒素置換した後、油溶性開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)5部を加え、75℃で4時間重合を行い、シード粒子を含有する第2エマルジョン2を得た。その後、得られた第2エマルジョン2の固形分濃度を18%に調整した。
得られた第2エマルジョン2中のシード粒子を透過型電子顕微鏡にて観察したところ平均粒子径が160nmの粒子であった。なお、得られたシード粒子は、いわゆる密実の粒子であった。シード粒子の重合安定性、重合転化率(%)の測定結果を表1に示す。
【0110】
得られたシード粒子を含む第2エマルジョン2を100部と、メチルメタクレート52.4部、ジビニルベンゼン27部、ブチルアクリレート6部、及びアクリル酸2部からなるモノマー成分(ii)と、カーボンブラック(「#2600」(商品名)、三菱化学社製)20部とを混合し、攪拌機で分散させて分散液を得た。その後、この分散液にポリビニアルコール10%水溶液100部と蒸留水300部とを添加し、攪拌機で更に分散させた。その後、高圧ホモジナイザー(「マイクロフルイダイザーM110Y」、みづほ工業社製)を用いて70MPaの圧力で乳化分散させて乳化分散液を得た。この乳化分散液をセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら窒素置換した後、開始剤として過硫酸カリウム3%水溶液20部を加え、75℃で4時間重合を行い、ポリマー粒子2が分散した第3エマルジョン2を得た。
得られた第3エマルジョン2中のポリマー粒子2を透過型電子顕微鏡にて観察したところ1つの空隙を有していた。平均粒子径、空隙径、空隙の割合、重合安定性の測定結果を表2に示す。
【0111】
<分散液2Aの作製>
得られた第3エマルジョン2をスプレードライ処理によって乾燥させ、続けて解砕処理によって粒子の凝集を解き、ポリマー粒子2の粉末を得た。ドデシルベンゼン100部と、ポリマー粒子2の粉末を10部、分散剤としてsolsperse17000を5部混合し、超音波処理を行い分散液2Aを得た。この分散液2Aを用いた色隠蔽性、電気泳動性、分散安定性、コントラスト比の評価結果を表2に示す。
【0112】
<分散液2Bの作製>
得られた第3エマルジョン2をロータリーエバポレーターを用いて濃縮し、溶剤を加えて希釈し超音波処理するという手法を繰り返し、イソプロピルアルコール、トルエン、ドデシルベンゼンの順に溶剤置換し、粒子の濃度をドデシルベンゼン100部に対し10部となるよう調整した。粒子10部に対しsolsperse17000を5部混合し、超音波処理を行い分散液2Bを得た。この分散液2Bを用いた色隠蔽性、電気泳動性、分散安定性、コントラスト比の評価結果を表2に示す。
【0113】
<実施例3 ポリマー粒子3含む分散液3Aの作製>
メチルメタクリレート72部、ジビニルベンゼン20部、及びブチルアクリレート8部からなるモノマー成分(iii)と、顔料として銅フタロシアニン(「CROMOPHTAL Blue 4GNP」(商品名)、チバ・ジャパン社製)30部を混合し、攪拌機で分散させて分散液を得た。その後、この分散液にポリビニルアルコール10%水溶液100部と蒸留水300部とを添加し、攪拌機で更に分散させた。その後、高圧ホモジナイザーを用いて70MPaの圧力で乳化分散させて第4エマルジョン3を得た。この第4エマルジョン3をセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら窒素置換した後、水溶性開始剤として過硫酸カリウム3%水溶液20部を加え、75℃で4時間重合を行い、ポリマー粒子3が分散した第5エマルジョン3を得た。
得られた第5エマルジョン3中のポリマー粒子3を透過型電子顕微鏡にて観察したところ1つの空隙を有していた。平均粒子径、空隙径、空隙の割合、重合安定性の測定結果を表2に示す。
【0114】
<分散液3Aの作製>
得られた第5エマルジョン3をスプレードライ処理によって乾燥させ、続けて解砕処理によって粒子の凝集を解き、ポリマー粒子3の粉末を得た。ドデシルベンゼン100部と、ポリマー粒子3の粉末を10部、分散剤としてビックケミー・ジャパン(株)製「DISPERBYK−2155」を5部混合し、超音波処理を行い、分散液3Aを得た。この分散液3Aを用いた色隠蔽性、電気泳動性、分散安定性、コントラスト比の評価結果を表2に示す。
【0115】
<実施例4 ポリマー粒子4含む分散液4Aの作製>
スチレン40部、ブチルアクリレート10部、t−ドデシルメルカプタン3部、及び、顔料としてハロゲン化銅フタロシアニン(「IRGALITE Green 6G」(商品名)、チバ・ジャパン社製)50部を混合し、攪拌機で分散させた後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10%水溶液10部と蒸留水350部とを添加し、攪拌機で分散して第1エマルジョン4を得た。その後、得られた第1エマルジョン4を、高圧ホモジナイザーを用いて70MPaの圧力で乳化分散させて乳化分散液を得た。この乳化分散液をセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら窒素置換した後、水溶性開始剤として過硫酸カリウム3%水溶液20部を加え、75℃で4時間重合を行い、シード粒子が分散した第2エマルジョン4を得た。その後、得られた第2エマルジョン4の固形分濃度を18%に調整した。
得られた第2エマルジョン4中のシード粒子を透過型電子顕微鏡にて観察したところ平均粒子径が180nmの粒子であった。なお、得られたシード粒子は、いわゆる密実の粒子であった。シード粒子の重合安定性、重合転化率(%)の測定結果を表1に示す。
得られたシード粒子を含む第2エマルジョン4を100部と、メチルメタクリレート45部、ジビニルベンゼン38部、およびブチルアクリレート8部からなるモノマー成分(ii)を混合し、攪拌機で分散させて分散液を得た。その後、この分散液にポリビニルアルコール10%水溶液100部と蒸留水300部とを添加し、攪拌機で予備分散させた。その後、高圧ホモジナイザーを用いて70MPaの圧力で乳化分散させて乳化分散液を得た。この乳化分散液をセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら窒素置換した後、水溶性開始剤として過硫酸カリウム3%水溶液20部を加え、75℃で4時間重合を行い、ポリマー粒子4が分散した第3エマルジョン4を得た。
得られた第3エマルジョン4中のポリマー粒子4を透過型電子顕微鏡にて観察したところ1つの空隙を有していた。平均粒子径、空隙径、空隙の割合、重合安定性の測定結果を表2に示す。
【0116】
<分散液4Aの作製>
得られた第3エマルジョン4をスプレードライ処理によって乾燥させ、続けて解砕処理によって粒子の凝集を解き、ポリマー粒子4の粉末を得た。ドデシルベンゼン100部と、ポリマー粒子4の粉末を10部、DISPERBYK−2155を5部混合し、超音波処理を行い分散液4Aを得た。この分散液4Aを用いた色隠蔽性、電気泳動性、分散安定性、コントラスト比の評価結果を表2に示す。
【0117】
<実施例5 ポリマー粒子5含む分散液5Aの作製>
スチレン40部、ブチルアクリレート10部、t−ドデシルメルカプタン3部、スチレン/ブチルアクリレートを主成分として重合済みの4μm径のシード粒子25部、及び、顔料としてカーボンブラック25部を混合し、攪拌機で分散させた後、ポリビニルアルコール10%水溶液30部とドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10%水溶液10部と蒸留水350部とを添加し、攪拌機で分散させて第1エマルジョン5を得た。その後、得られた第1エマルジョン5をセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら窒素置換した後、油溶性開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)5部を加え、75℃で4時間重合を行い、シード粒子を含有する第2エマルジョン5を得た。その後、得られた第2エマルジョン5の固形分濃度を18%に調整した。
得られた第2エマルジョン5中のシード粒子を透過型電子顕微鏡にて観察したところ平均粒子径が4.8μmの粒子であった。なお、得られたシード粒子は、いわゆる密実の粒子であった。シード粒子の重合安定性、重合転化率(%)の測定結果を表1に示す。
得られたシード粒子を含む第2エマルジョン5を100部と、スチレン56部、ジビニルベンゼン27部、ブチルアクリレート6部、及びアクリル酸2部からなるモノマー成分(ii)と、カーボンブラック10部とを混合し、攪拌機で分散して分散液を得た。その後、この分散液にポリビニルアルコール10%水溶液100部と蒸留水300部とを添加して撹拌機で予備分散した後、この乳化分散液をセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら窒素置換した後、水溶性開始剤として過硫酸カリウム3%水溶液20部を加え、75℃で4時間重合を行い、ポリマー粒子5が分散した第3エマルジョン5を得た。
得られた第3エマルジョン5中のポリマー粒子5を透過型電子顕微鏡にて観察したところおおよそ1つの空隙を有していた。平均粒子径、空隙径、空隙の割合、重合安定性の測定結果を表2に示す。
【0118】
<分散液5Aの作製>
得られた第3エマルジョン5を分散液2Bと同様の方法で溶剤置換し、粒子の濃度をドデシルベンゼン100部に対し10部となるよう調整した。粒子10部に対しsolsperse17000を5部混合し、超音波処理を行い分散液5Aを得た。この分散液5Aを用いた色隠蔽性、電気泳動性、分散安定性、コントラスト比の評価結果を表2に示す。
【0119】
<実施例6 ポリマー粒子6含む分散液6Aの作製>
実施例1で得られたシード粒子を含む第2エマルジョン1を100部と、メチルメタクリレート23部、ジビニルベンゼン40部、ブチルアクリレート6部、及びアクリル酸2部からなるモノマー成分(ii)とを混合し、攪拌機で分散して分散液を得た。その後、この分散液にポリビニルアルコール10%水溶液100部と蒸留水300部とを添加して撹拌機で予備分散した。その後、高圧ホモジナイザー(「マイクロフルイダイザーM110Y」、みづほ工業社製)を用いて70MPaの圧力で乳化分散させて乳化分散液を得た。この乳化分散液をセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら窒素置換した後、水溶性開始剤として過硫酸カリウム3%水溶液20部を加え、75℃で4時間重合を行い、ポリマー粒子6が分散した第3エマルジョン6を得た。
得られた第3エマルジョン6中のポリマー粒子6を透過型電子顕微鏡にて観察したところ1つの空隙を有していた。平均粒子径、空隙径、空隙の割合、重合安定性の測定結果を表2に示す。
【0120】
<分散液6Aの作製>
得られた第3エマルジョン6を分散液2Bと同様の方法で溶剤置換し、粒子の濃度をドデシルベンゼン100部に対し10部となるよう調整した。粒子10部に対しsolsperse17000を5部混合し、超音波処理を行い分散液6Aを得た。この分散液6Aを用いた色隠蔽性、電気泳動性、分散安定性、コントラスト比の評価結果を表2に示す。
【0121】
<実施例7 ポリマー粒子7含む分散液7Aの作製>
実施例1で得られたシード粒子を含む第2エマルジョン1を100部と、メチルメタクリレート40部、ジビニルベンゼン20部、ブチルアクリレート6部、及びアクリル酸2部からなるモノマー成分(ii)と、カーボンブラック30部とを混合し、攪拌機で分散して分散液を得た。その後、この分散液にポリビニルアルコール10%水溶液100部と蒸留水300部とを添加して撹拌機で予備分散した。その後、高圧ホモジナイザー(「マイクロフルイダイザーM110Y」、みづほ工業社製)を用いて70MPaの圧力で乳化分散させて乳化分散液を得た。この乳化分散液をセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら窒素置換した後、水溶性開始剤として過硫酸カリウム3%水溶液20部を加え、75℃で4時間重合を行い、ポリマー粒子7が分散した第3エマルジョン7を得た。
得られた第3エマルジョン7中のポリマー粒子7を透過型電子顕微鏡にて観察したところおおよそ1つの空隙を有していた。平均粒子径、空隙径、空隙の割合、重合安定性の測定結果を表2に示す。
【0122】
<分散液7Aの作製>
得られた第3エマルジョン7を分散液2Bと同様の方法で溶剤置換し、粒子の濃度をドデシルベンゼン100部に対し10部となるよう調整した。粒子10部に対しsolsperse17000を5部混合し、超音波処理を行い分散液7Aを得た。この分散液7Aを用いた色隠蔽性、電気泳動性、分散安定性、コントラスト比の評価結果を表2に示す。
【0123】
<比較例1 ポリマー粒子11を含む分散液11Aの作製>
実施例1で得られたシード粒子を含む第2エマルジョン1を100部と、メチルメタクリレート56部、スチレン25部、ジビニルベンゼン2部、ブチルアクリレート6部、及びアクリル酸2部からなるモノマー成分(ii)とを混合し、攪拌機で分散して分散液を得た。その後、この分散液にポリビニルアルコール10%水溶液100部と蒸留水300部とを添加して撹拌機で予備分散した。その後、高圧ホモジナイザーを用いて70MPaの圧力で乳化分散させて乳化分散液を得た。この乳化分散液をセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら窒素置換した後、水溶性開始剤として過硫酸カリウム3%水溶液20部を加え、75℃で4時間重合を行い、ポリマー粒子11分散した第3エマルジョン11を得た。
得られた第3エマルジョン11中のポリマー粒子11を透過型電子顕微鏡にて観察したところ、空隙を有しているものと空隙のないものがまちまちであり、空隙を有しているものでも空隙は小さかった。平均粒子径、重合安定性、空隙を有する粒子については空隙径と空隙の割合、の測定結果を表3に示す。
<分散液11Aの作製>
得られた第3エマルジョン11を実施例1と同様の方法で乾燥させポリマー粒子11の粉末を得た。ドデシルベンゼン100部と、ポリマー粒子11の粉末を10部、分散剤としてsolsperse17000を5部とを混合し、超音波処理を行い分散液11Aを得た。この分散液11Aを用いた色隠蔽性、電気泳動性、分散安定性、コントラスト比の評価結果を表3に示す。
【0124】
<比較例2 ポリマー粒子12を含む分散液12Aの作製>
実施例1で得られたシード粒子を含む第2エマルジョン1を100部と、ジビニルベンゼン70部、ブチルアクリレート6部、及びアクリル酸2部からなるモノマー成分(ii)とを混合し、攪拌機で分散して分散液を得た。その後、この分散液にポリビニルアルコール10%水溶液100部と蒸留水300部とを添加して撹拌機で予備分散した。その後、高圧ホモジナイザー(「マイクロフルイダイザーM110Y」、みづほ工業社製)を用いて70MPaの圧力で乳化分散させて乳化分散液を得た。この乳化分散液をセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら窒素置換した後、水溶性開始剤として過硫酸カリウム3%水溶液20部を加え、75℃で4時間重合を行い、ポリマー粒子12が分散した第3エマルジョン12を得た。
得られた第3エマルジョン12中のポリマー粒子12を透過型電子顕微鏡にて観察したところ1つの大きな空隙を有していたが、外側の一部に穴が開いた粒子や、穴が大きくお椀型に見える粒子も見られた。平均粒子径、空隙径、空隙の割合、重合安定性の測定結果を表3に示す。
【0125】
<分散液12Aの作製>
得られた第3エマルジョン12を分散液2Bと同様の方法で溶剤置換し、粒子の濃度をドデシルベンゼン100部に対し10部となるよう調整した。粒子10部に対しsolsperse17000を5部混合し、超音波処理を行い分散液12Aを得た。この分散液12Aを用いた色隠蔽性、電気泳動性、分散安定性、コントラスト比の評価結果を表3に示す。
【0126】
<比較例3 ポリマー粒子13を含む分散液13Aの作製>
スチレン75部、ブチルアクリレート20部、t−ドデシルメルカプタン3部、および顔料としてカーボンブラック5部を混合し、攪拌機で分散させた後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10%水溶液10部と蒸留水350部とを添加し、攪拌機で分散して第1エマルジョン13を得た。その後、得られた第1エマルジョン13を、高圧ホモジナイザーを用いて70MPaの圧力で乳化分散させて乳化分散液を得た。この乳化分散液をセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら窒素置換した後、水溶性開始剤として過硫酸カリウム3%水溶液20部を加え、75℃で4時間重合を行い、シード粒子が分散した第2エマルジョン13を得た。その後、得られた第2エマルジョン13の固形分濃度を18%に調整した。
得られた第2エマルジョン13中のシード粒子を透過型電子顕微鏡にて観察したところ平均粒子径が150nmの粒子であった。なお、得られたシード粒子は、いわゆる密実の粒子であった。シード粒子の重合安定性、重合転化率(%)の測定結果を表1に示す。
得られたシード粒子を含む第2エマルジョン13を100部と、メチルメタクリレート55部、ジビニルベンゼン28部、ブチルアクリレート6部、及び、アクリル酸2部からなるモノマー成分(ii)を混合し、攪拌機で分散させて分散液を得た。その後、この分散液にポリビニルアルコール10%水溶液100部と蒸留水300部とを添加し、攪拌機で予備分散させた。その後、高圧ホモジナイザーを用いて70MPaの圧力で乳化分散させて乳化分散液を得た。この乳化分散液をセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら窒素置換した後、水溶性開始剤として過硫酸カリウム3%水溶液20部を加え、75℃で4時間重合を行い、ポリマー粒子13が分散した第3エマルジョン13を得た。
得られた第3エマルジョン13中のポリマー粒子13を透過型電子顕微鏡にて観察したところおおよそ1つの空隙を有していた。平均粒子径、空隙径、空隙の割合、重合安定性の測定結果を表3に示す。
【0127】
<分散液13Aの作製>
得られた第3エマルジョン13をスプレードライ処理によって乾燥させ、続けて解砕処理によって粒子の凝集を解き、ポリマー粒子13の粉末を得た。ドデシルベンゼン100部と、ポリマー粒子13の粉末を10部、solsperse17000を5部とを混合し、超音波処理を行い分散液13Aを得た。この分散液13Aを用いた色隠蔽性、電気泳動性、分散安定性、コントラスト比の評価結果を表3に示す。
【0128】
<比較例4 ポリマー粒子14を含む分散液14Aの作製>
実施例1で得られたシード粒子を含む第2エマルジョン1を100部と、メチルメタクリレート30部、ジビニルベンゼン20部、ブチルアクリレート6部、及びアクリル酸2部からなるモノマー成分(ii)と、カーボンブラック40部とを混合し、攪拌機で分散して分散液を得た。その後、この分散液にポリビニルアルコール10%水溶液100部と蒸留水300部とを添加して撹拌機で予備分散した。その後、高圧ホモジナイザー(「マイクロフルイダイザーM110Y」、みづほ工業社製)を用いて70MPaの圧力で乳化分散させて乳化分散液を得た。この乳化分散液をセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら窒素置換した後、水溶性開始剤として過硫酸カリウム3%水溶液20部を加え、75℃で4時間重合を行い、ポリマー粒子14が分散した第3エマルジョン14を得た。
得られた第3エマルジョン14中のポリマー粒子14を透過型電子顕微鏡にて観察したところおおよそ1つの空隙を有していたが、粒子は真球状ではなくゴツゴツした形状をしたものがある程度見られた。平均粒子径、空隙径、空隙の割合、重合安定性の測定結果を表3に示す。
【0129】
<分散液14Aの作製>
得られた第3エマルジョン14を分散液2Bと同様の方法で溶剤置換し、粒子の濃度をドデシルベンゼン100部に対し10部となるよう調整した。粒子10部に対しsolsperse17000を5部混合し、超音波処理を行い分散液14Aを得た。この分散液14Aを用いた色隠蔽性、電気泳動性、分散安定性、コントラスト比の評価結果を表3に示す。
【0130】
<比較例5 ポリマー粒子15を含む分散液15Aの作製>
スチレン40部、ブチルアクリレート10部、t−ドデシルメルカプタン5部、及び、顔料としてカーボンブラック50部を混合し、攪拌機で分散させた後、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10%水溶液100部と蒸留水350部とを添加し、攪拌機としてホモミキサー(特殊機化工業社製)を用いて更に分散させて第1エマルジョン15を得た。その後、得られた第1エマルジョン15を、高圧ホモジナイザー(「マイクロフルイダイザーM110Y」、みづほ工業社製)を用いて70MPaの圧力で乳化分散させて乳化分散液を得た。この乳化分散液をセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら窒素置換した後、油溶性開始剤としてAIBN(アゾビスイソブチロニトリル)7部を加え、75℃で4時間重合を行い、シード粒子を含有する第2エマルジョン15を得た。その後、得られた第2エマルジョン15の固形分濃度を18%に調整した。
得られた第2エマルジョン15中のシード粒子を透過型電子顕微鏡にて観察したところ平均粒子径が50nmの粒子であった。なお、得られたシード粒子は、いわゆる密実の粒子であった。シード粒子の重合安定性、重合転化率(%)の測定結果を表1に示す。
得られたシード粒子を含む第2エマルジョン15を100部と、メチルメタクリレート35部、ジビニルベンゼン15部、ブチルアクリレート6部、及びアクリル酸2部からなるモノマー成分(ii)とを混合し、攪拌機で分散して分散液を得た。その後、この分散液にポリビニルアルコール10%水溶液50部と、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム10%水溶液50部と、蒸留水300部とを添加して撹拌機で予備分散した。その後、高圧ホモジナイザー(「マイクロフルイダイザーM110Y」、みづほ工業社製)を用いて70MPaの圧力で乳化分散させて乳化分散液を得た。この乳化分散液をセパラブルフラスコに投入し、攪拌しながら窒素置換した後、水溶性開始剤として過硫酸カリウム3%水溶液20部を加え、75℃で3時間重合を行い、ポリマー粒子15が分散した第3エマルジョン15を得た。
得られた第3エマルジョン15中のポリマー粒子15を透過型電子顕微鏡にて観察したところ、一部には空隙が見られたが、空隙のない粒子も見られた。また、空隙が微小であるため空隙径を正確に測定することは難しかった。平均粒子径、空隙径、空隙の割合、重合安定性の測定結果を表3に示す。
【0131】
<分散液15Aの作製>
得られた第3エマルジョン15をスプレードライ処理によって乾燥させ、続けて解砕処理によって粒子の凝集を解き、ポリマー粒子15の粉末を得た。ドデシルベンゼン100部と、ポリマー粒子15の粉末を10部、分散剤としてsolsperse17000を5部とを混合し、超音波処理を行い分散液15Aを作製した。この分散液15Aを用いた色隠蔽性、電気泳動性、分散安定性、コントラスト比の評価結果を表3に示す。
【0132】
<比較例6 分散液16Aの作製>
ドデシルベンゼン100部と、カーボンブラック10部、solsperse17000を5部とを混合し、超音波処理を行い分散液16Aを得た。この分散液16Aを用いた色隠蔽性、電気泳動性、分散安定性、コントラスト比の評価結果を表3に示す。
【0133】
上記実施例、比較例で得られたポリマー粒子、分散液に関して、以下の方法により評価した。評価結果を表2、表3に示す。
【0134】
[平均粒子径]:
透過型電子顕微鏡「H−7650」(日立ハイテクノロジーズ社製)によって観察される粒子の径のうち最も長い値を粒子径として測定し、観察視野中に存在する100個の粒子の上記粒子径の平均値を算出する。
【0135】
[重合安定性]:
分散液を調製後、ガラス板に流し、ガラス板上に残った凝集物の量を目視にて評価を行う。評価基準を以下に示す。
○:良好(凝集物の発生がほとんどない)
△:やや不安定(凝集物の発生がやや多い)
×:不安定(凝集物の発生が多い)
【0136】
[顔料の含有率]:
ポリマー粒子中のポリマーの総質量に対する顔料の質量の割合を、重合前に添加した量から理論値として求める。ポリマーの総質量は、添加したモノマー成分、オリゴマー成分、およびポリマー成分の和とし、乳化剤、分散剤、開始剤、連鎖移動剤等の重量は除いて計算する。(実際は乳化剤、分散剤、開始剤、連鎖移動剤等は一部がポリマー粒子中に取り込まれていると予想されるが、取り込まれた量の正確な把握が困難であるため、前記の理論値としている。)
【0137】
[空隙が占める体積の総量の割合]:
透過型電子顕微鏡「H−7650」(日立ハイテクノロジーズ社製)によって観察される粒子を任意に10個選択し、これらの粒子について、下記の式(1)によって「空隙が占める体積の総量の割合」を算出する。
式(1):[(空隙の総体積)/{4π(粒子の外径/2)/3}]×100
(既に上述したように、例えば、粒子内部の空隙が1つの場合、{(空隙の内径)/(粒子の外径)}×100により算出することができる。)
【0138】
[色隠蔽性]:
上記実施例、比較例で作製した分散液を用い、簡易に評価用セルを作製することによって行う。図7において、数cm角のガラス基板31上に、中央を1cm角程度にくりぬいた、100μm厚のPETフィルム32をスペーサーとして置き、くりぬいた中央部分に分散液33を数滴滴下し、上からもう1枚のガラス基板31で押さえて気泡が入らないように封止する。分散液がすき間から漏れないよう、一対のガラス基板はクリップ等で強く挟むか、端面を接着剤や粘着テープで固定する。有色の分散液の場合、白上質紙の上に評価用セルを置き、白色の分散液の場合、黒上質紙の上に評価用セルを置き、下地の上質紙の隠蔽具合を目視確認した。評価基準を以下に示す。
○:上質紙の色が見えない
△:上質紙の色が少し確認できる
×:上質紙の色が分散液の色と混ざって見える
【0139】
[電気泳動性]:
上記実施例、比較例で作製した分散液を用いる。図8において、ガラス基板41上に一定の間隔を設けて一対の電極42と43が平面方向に形成されている。電極42と43に挟まれた領域に分散液44を滴下して薄く広げ、基板上の平面方向に一定電圧を印加する。その際の、分散液中のポリマー粒子等の泳動の様子を、真上45から顕微鏡で観察する。電極間の間隔と印加電圧の関係は100V/100μm間隔とした。また、電圧を印加する方向(+と−)を交互に逆転させて複数回電圧を印加し、繰り返し泳動する様子を同様に評価した。評価基準を以下に示す。
○:電圧を印加するとスムーズに泳動し、かつ繰り返し泳動させても動きが悪化することは無い。
△:電圧を印加するとゆっくり泳動する。あるいは、何回か繰り返し泳動させると徐々に動きが遅くなっていく。
×:電圧を印加しても泳動しない。あるいは、初回は泳動するがその後は泳動しなくなり繰り返し泳動しない。
【0140】
[分散安定性]:
上記実施例、比較例で作製した分散液を用い、サンプルビンに分散液を入れて静置し、24時間後の沈降具合を目視確認した。評価基準を以下に示す。
○:良好(沈降がほとんどない)
△:やや不安定(沈降が見られるが、軽く振り混ぜればすぐに分散状態に戻る)
×:不安定(沈降が見られサンプルビン底面に堆積しており、軽く振り混ぜただけでは分散状態に戻らない)
【0141】
[コントラスト比]:
1)隔壁付き基板の作製方法: 片面ITO電極付きの10cm角ガラス基板のITO面に感光性ネガ型樹脂組成物(JSR(株)製オプトマーNNシリーズ)を、硬化後厚みが100μmとなるようアプリケーターでコートし、80℃のホットプレート上で4分間加熱し溶剤を揮発させた。格子パターンのフォトマスクを介して300mJ/cm2の露光量で露光をし、未露光部分をアルカリ性現像液(JSR(株)製CD−150CRの1%水溶液)で現像し、基板上のパターニング部分を超純水で軽く洗浄した。その後、230℃で30分焼成することで、100μm±5μmの高さの格子状の隔壁を形成した。隔壁で区切られた正方形の領域は900μm角、隔壁の幅は平均で70μmであった。図9の51に相当する。
2)セルの作製方法: セルの構成を図9に示す。色分け表示の方式としては、図2で示すように、透明媒体中に本発明のポリマー粒子と、該ポリマー粒子とは色が異なり、比較的色隠蔽性の高い粒子を共存させる方式とする。この場合、2色の粒子の泳動性が異なることで電圧印加したときの色分けが可能となる。具体的には、上記実施例、比較例で作製した分散液115部に対して、白色の粒子としてSX866(A)(JSR(株)製)粉末を20部加え、超音波処理を行い、表示特性評価用の分散液を得た。該分散液(図9の53に相当)を上記で作製した隔壁付き基板51上に数滴滴下し、2cm角程度の面積の領域に分散液を行き渡らせた後、隔壁を形成していない片面ITO電極付きガラス基板52を、該ITO面が内側(分散液と接する側)になるように隔壁付き基板51上に置いて分散液を封止し、基盤51と52の端面を接着剤や粘着テープで固定して電気泳動表示素子を作製した。
3)評価条件: 上記で作製した電気泳動表示素子の基板51と52のITO電極間に。100V(おおよそ100V/100μm間隔に相当する)の強さで電圧を印加して分散液中の粒子を電気泳動させた。その後、BYK Gardner社製分光測色計TCS IIを用い、測定径10mmφ、D65光源、拡散照明、2°視野(di:2°)の条件で色特性(CIE1931:XYZ座標)を測定し、得られたY値を視感反射率として評価に用い、素子の両面のY値の比をコントラスト比として算出した。なお、同じ条件で新聞紙の白部分(無印字の部分)と黒部分(ベタ印刷部分)のコントラスト比を測定したところ6:1であった。
【0142】
評価結果を表1、表2、表3に示す。






【0143】
【表1】

【0144】
【表2】















【0145】
【表3】

【0146】
表1は、本発明のポリマー粒子を得る前段階である、シード粒子を含むエマルジョンを作製した結果を示す。第2エマルジョン1、第2エマルジョン2、第2エマルジョン4、第2エマルジョン13では、顔料の含有量および種類が異なるものの、重合安定性、重合転化率は概ね良好で、同程度のサイズのシード粒子が得られた。第2エマルジョン5では、粒径の大きなシード粒子を得るため、モノマー、顔料と同時に、あらかじめ粒径の大きいシード粒子を添加している。重合はシード粒子の周囲で起こり、顔料を含有する大粒径のシード粒子が得られた。他の第2エマルジョンに比べやや重合転化率が下がるものの、ポリマー粒子作製の支障になるほどではない。第2エマルジョン15では、小粒径のシード粒子を作製している。顔料自体の粒径を無視できないこと、反応条件の若干の変更により、重合安定性はやや落ちるものの目的とするシード粒子が得られた。
【0147】
表2の、実施例1、実施例2、実施例3、実施例4では、顔料の種類と量が主に異なっているが、いずれも空隙を有するポリマー粒子が得られており、表3の比較例よりも色隠蔽性、電気泳動性、分散安定性、コントラスト比が良好であった。
また、実施例5では粒径が大きいポリマー粒子の場合であり、この粒子は内部に空隙を有し、色隠蔽性、電気泳動性、コントラスト比が良好であった。実施例6では空隙の割合の大きいポリマー粒子を、実施例7では顔料の含有率が高いポリマー粒子を作製しているが、いずれも色隠蔽性、電気泳動性、分散安定性は良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明のポリマー粒子および該ポリマー粒子を含んだ分散液は、優れた電気泳動性、分散安定性を有し、かつ十分な色隠蔽性を有するため、電気泳動表示素子用ポリマー粒子および電気泳動表示素子用分散液として好適であり、該分散液を用いた電気泳動表示素子は良好な表示特性を有する。該電気泳動表示素子は、電子書籍、電子新聞、電子書類、電子広告(デジタルサイネージ)、携帯電話、携帯情報端末、ノートパソコン、値札、時計、等の各種情報表示装置、画像表示装置に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本発明の電気泳動表示素子の模式図である。
【図2】本発明の電気泳動表示素子の模式図である。
【図3】本発明の電気泳動表示素子の模式図である。
【図4】本発明の電気泳動表示素子の模式図である。
【図5】本発明の電気泳動表示素子の模式図である。
【図6】マイクロカップ法によって隔壁を形成する一例の模式図(断面図)
【図7】評価用セル作製の概要を示す図である。
【図8】評価用セル作製の概要を示す図である。
【図9】評価用セル作製の概要を示す図である。
【符号の説明】
【0150】
1 前面基板
2 背面基板
3 透明媒体
4 ポリマー粒子
5 ポリマー粒子(ポリマー粒子4とは色が異なる)
6 透明媒体
7 ポリマー粒子
8 粒子(ポリマー粒子7とは色が異なる)
9 着色媒体
10 ポリマー粒子(着色媒体9とは色が異なる)
11 着色媒体
12 ポリマー粒子(着色媒体11とは色が異なる)
13 ポリマー粒子(着色媒体11およびポリマー粒子12とは色が異なる)
14 着色媒体
15 ポリマー粒子(着色媒体14とは色が異なる)
16 粒子(着色媒体14およびポリマー粒子15とは色が異なる)
21 基板
22 基板
23 媒体
24 粒子
26 隔壁
27 シール層
31 ガラス基板
32 PETフィルム
33 色隠蔽性評価用の分散液
41 ガラス基板
42 電極
43 電極
44 電気泳動性評価用の分散液
45 真上(顕微鏡観察時の視点)
51 隔壁付き基板
52 片面ITO電極付きガラス基板
53 表示特性(コントラスト比)評価用の分散液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料を含む平均粒子径が100nm〜10μmのポリマー粒子であり、前記顔料がポリマー相にのみあり、前記ポリマー粒子内部に少なくとも1つの空隙が形成されている電気泳動表示素子用ポリマー粒子。
【請求項2】
前記顔料の含有率が、前記ポリマー粒子中のポリマーの質量に対して、3〜60質量%である請求項1に記載の電気泳動表示素子用ポリマー粒子。
【請求項3】
前記空隙が占める体積の総量の割合が、粒子全体の体積に対して、2〜50体積%である請求項1または2に記載の電気泳動表示素子用ポリマー粒子。
【請求項4】
前記顔料が、有機着色顔料及び無機着色顔料よりなる群から選択される少なくとも一種である請求項1〜3のいずれか一項に記載の電気泳動表示素子用ポリマー粒子。
【請求項5】
顔料と、モノマー成分(i)と、の混合物を水性媒体に分散させて第1エマルジョンを得る第一工程と、
得られた前記第1エマルジョンの混合物中の前記モノマー成分(i)を重合させてシード粒子を含む第2エマルジョンを得る第二工程と、
得られた前記第2エマルジョンに、重合性架橋モノマー及び水溶性モノマーを含有するモノマー成分(ii)を添加した後、前記モノマー成分(ii)を重合させてポリマー粒子を含む第3エマルジョンを得る第三工程と、を備える電気泳動表示素子用ポリマー粒子の製造方法。
【請求項6】
顔料と、重合性架橋モノマーを含有するモノマー成分(iii)と、の混合物を水性媒体に分散させて第4エマルジョンを得る第四工程と、
得られた前記第4エマルジョンの混合物中の前記モノマー成分(iii)を重合させてポリマー粒子を含む第5エマルジョンを得る第五工程と、を備える電気泳動表示素子用ポリマー粒子の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の電気泳動表示素子用ポリマー粒子を含む電気泳動表示素子用分散液。
【請求項8】
請求項7に記載の電気泳動表示素子用分散液を用いて形成された電気泳動表示素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−170225(P2011−170225A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−35668(P2010−35668)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】