説明

電気泳動表示装置、時計、電子機器

【課題】耐衝撃性を備えた電気泳動表示装置、これを備えた時計及び電子機器を提供すること。
【解決手段】この電気泳動表示装置は、電気泳動表示パネル5と、パネル枠52とを備える。電気泳動表示層63は、電気泳動表示層63の周縁部を含む領域に設けられる封止部67によって透明基板61と背面基板65との間に封止され、パネル枠52には、封止部67を避けて背面基板65と接触する突起53が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置、時計、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、電気泳動層を有する電気泳動表示パネルを備えた表示装置が知られている(例えば、特許文献1)。このような表示装置では、電気泳動層を湿潤な環境から保護するために、電気泳動層の周縁部に設けられた封止材によって電気泳動層を封止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−115686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、電気泳動層の周縁部に設けられた封止材は樹脂からなるため、衝撃等によって当該封止材に負荷がかかると、せん断応力によって封止材が境界面から剥離し、電気泳動層に外部から水分(湿気)が浸入するおそれがある。
【0005】
本発明はこのような問題点に鑑みてなされたものである。本発明のいくつかの態様によれば、耐衝撃性を備えた電気泳動表示装置、これを備えた時計及び電子機器を提供することができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明は、透明基板と、共通電極が形成された共通電極層と、電気泳動表示層と、前記電気泳動表示層を駆動するための駆動電極が形成された駆動電極層と、背面基板とが、表面側から積層された電気泳動表示パネルと、前記電気泳動表示パネルのパネル枠とを備えた電気泳動表示装置であって、前記電気泳動表示層は、前記電気泳動表示層の周縁部を含む領域に設けられる封止部によって前記透明基板と前記背面基板との間に封止され、前記パネル枠は、前記封止部を避けて前記電気泳動表示パネルと接触するように形成されたことを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、衝撃を受けたとしても、パネル枠は封止部と接触しないため、衝撃によって封止部が剥離することを防止することができ、電気泳動表示層への水分の浸入を抑制することができる。
【0008】
(2)また本発明において、前記パネル枠は、前記封止部を避けて前記背面基板と接触するように形成されてもよい。
【0009】
本発明によれば、衝撃を受けたとしても、パネル枠は背面基板と接触し封止部とは接触しないため、衝撃によって封止部が剥離することを防止することができる。
【0010】
(3)また本発明において、前記パネル枠に、前記封止部を避けて前記背面基板と接触する突起を設けるようにしてもよい。
【0011】
本発明によれば、衝撃を受けたとしても、パネル枠に設けられた突起が背面基板と接触し封止部とは接触しないため、衝撃によって封止部が剥離することを防止することができる。
【0012】
(4)また本発明において、前記パネル枠に、前記封止部との接触を避けるための溝を設けるようにしてもよい。
【0013】
本発明によれば、衝撃を受けたとしても、パネル枠に設けられた溝によりパネル枠は封止部と接触しないため、衝撃によって封止部が剥離することを防止することができる。
【0014】
(5)また本発明の時計は、前記本発明に係る電気泳動表示装置を備えたことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、衝撃を受けたとしても、パネル枠は封止部と接触しないため、衝撃によって封止部が剥離することを防止することができ、電気泳動表示層への水分の浸入を抑制することが可能な時計を提供することができる。
【0016】
(6)また本発明の電子機器は、前記本発明に係る電気泳動表示装置を備えたことを特徴とする。
【0017】
本発明によれば、衝撃を受けたとしても、パネル枠は封止部と接触しないため、衝撃によって封止部が剥離することを防止することができ、電気泳動表示層への水分の浸入を抑制することが可能な電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本実施形態に係る電気泳動表示装置を備えた腕時計の正面図。
【図2】図1のA−A’断面模式図。
【図3】電気泳動表示パネルとパネル枠の背面模式図。
【図4】電気泳動表示パネルとパネル枠の構成を概略的に示す断面模式図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。
【0020】
図1は、本実施形態に係る電気泳動表示装置を備えた腕時計1の正面図である。
【0021】
同図に示すように、腕時計1は、時計ケース2(外装ケース)と、当該時計ケース2に連結された一対のバンド(図示せず)とを主体として構成されている。時計ケース2は、ステンレス等の金属又はプラスチック樹脂等の樹脂からなる。時計ケース2の正面には、表示部50と、太陽電池3(ソーラーパネル)とが設けられている。時計ケース2の側面には、操作ボタン10が設けられており、時計ケース2の正面下部にも3つの操作ボタン11が設けられている。
【0022】
図2は、図1のA−A’断面模式図である。
【0023】
同図に示すように、時計ケース2の内部には、回路基板42と、二次電池(図示せず)とアンテナ44と、表示部50と、太陽電池3とが収容されている。回路基板42に実装される回路や、二次電池、アンテナ44は、回路基板42に取り付けられる回路ケース4に収容される。
【0024】
回路基板42には、発振回路、分周回路を含む計時回路や、電気泳動表示パネル5を駆動する駆動回路、制御IC、コンデンサなどが実装されている。
【0025】
表示部50は、例えばアクティブマトリクス駆動の電気泳動表示パネル5によって構成されており、回路基板42の時計正面側に配置され、パネル枠52により保持されている。表示部50の表示面は、ここでは矩形になっている。表示面の形状については、矩形のほか、例えば、円形状、正八角形状、十六角形状など、他の形状になっていても構わない。また、電気泳動表示パネル5は、セグメント駆動の電気泳動表示パネルであってもよい。
【0026】
太陽電池3は、発電した電力を二次電池に供給するものであり、電気泳動表示パネル5の時計正面側に離隔配置され、時計ケース2内部に設けられた太陽電池受け部22とパネル枠52とにより挟持されることで固定されている。二次電池に蓄電された電力は、回路基板42や電気泳動表示パネル5に供給される。
【0027】
また太陽電池3と電気泳動表示パネル5との間には2つのLED光源(図示せず)が設けられている。
【0028】
時計ケース2の正面側には、ガラス製又は樹脂製の透明カバー7(風防ガラス)が設けられている。時計ケース2の背面側(裏側)には、裏蓋9が螺合されている。裏蓋9及び透明カバー7によって時計ケース2の内部の密封性が確保されている。
【0029】
図3は、電気泳動表示パネル5とパネル枠52の背面模式図である。
【0030】
同図に示すように、パネル枠52は、電気泳動表示パネル5の周囲を囲む略矩形型に形成されている。パネル枠52は、後述する封止部を避けて電気泳動表示パネル5と接触するように形成されている。
【0031】
本実施形態では、パネル枠52の内周面54に、封止部を避けて電気泳動表示パネル5の側面(外周面)と接触する複数の突起53を、所定間隔をおいて複数設けている。
【0032】
ここで、パネル枠に設けられた突起53と電気泳動表示パネル5の側面との間には僅かな隙間が生じている。これは、製造上の誤差により、パネル枠52が最小許容寸法となり、電気泳動表示パネル5が最大許容寸法となった場合に、突起53と電気泳動表示パネル5の側面の間の距離が0となるように公差を設定しているためである。従って、腕時計1が動かされたり衝撃を受けたりした場合には、電気泳動表示パネル5はパネル枠52内で水平方向(図3中左右方向或いは上下方向)に僅かに移動する。そして、電気泳動表示パネル5が水平方向に移動した場合には、電気泳動表示パネル5の側面は、パネル枠52の内周面54に設けられた突起53に接触することになる。
【0033】
なお図3に示す例では、パネル枠52の4つの内周面54のそれぞれに、2つの突起53を設けているが、パネル枠52の4つの内周面54のうち、互いに対向する2つの内周面54のそれぞれに2つの突起53を設けるようにしてもよい。
【0034】
図4は、電気泳動表示パネル5とパネル枠52の構成を概略的に示す断面模式図である。以下の説明においては、主として電気泳動表示パネル5がアクティブマトリクス駆動の電気泳動表示パネルである場合を例にとり説明するが、電気泳動表示パネル5は、セグメント駆動の電気泳動表示パネルであってもよい。
【0035】
電気泳動表示パネル5は、透明基板61と、共通電極層62(透明電極層)と、電気泳動表示層63と、電気泳動表示層63を駆動するための複数の画素電極(駆動電極に対応)が形成された画素電極層64(駆動電極層に対応)と、素子基板65(背面基板に対応)とが表面側から積層されて構成されている。なお、透明基板61の表面には、カバーガラス66(防水ガラス)が接着されている。カバーガラス66の表面側は電気泳動表示パネル5の表示面になっている。
【0036】
共通電極層62は、電気泳動表示層63に対する共通電極として形成されている。素子基板65には、各画素電極に対する電圧供給を行う半導体回路層が形成されている。本実施形態において、半導体回路層はTFT回路層として形成され、TFT回路層には、直交配置された複数の走査線と、複数のデータ線が設けられ、両者の交差部分には、各画素電極に対する供給電圧を制御するためのスイッチング素子が設けられている。各画素電極は、例えば配線基板上に形成された銅箔により構成される。なお、素子基盤65の裏面には、回路基板45から供給される駆動信号が入力される入力端子(図示せず)が形成されている。この入力端子は、電波受信感度を劣化させないために、アンテナ44から離れた位置に配置するのが好ましい。すなわち、本実施形態の場合においては、腕時計1を正面視したとき、電気泳動表示パネル5の下半分の領域内に入力端子を形成するのが好ましい。
【0037】
電気泳動表示パネル5が、セグメント駆動の電気泳動表示パネルである場合には、各画素電極はセグメント電極(駆動電極に対応)に、画素電極層64はセグメント電極層(駆動電極層に対応)に、素子基板65は図示しない駆動回路に配線接続された配線基板(背面基板に対応)にそれぞれ対応する。
【0038】
素子基板65は、例えばガラス基板、石英基板、シリコン基板、ガリウム砒素基板などの無機基板や、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネイト(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)等で構成されるプラスチック基板(樹脂基板)などを用いた基板上に不図示の半導体回路層が形成された構成になっている。なお、本実施形態においては、好適な事例として無機基板を用いることとして説明する。
【0039】
電気泳動表示パネル5が、セグメント駆動の電気泳動表示パネルである場合には、配線基板(素子基板65に対応)は、例えばポリイミドやガラスエポキシ等で構成され、表面側に銅箔を貼り付けてセグメント電極(画素電極に対応)を形成する。
【0040】
透明基板61は電気泳動表示層63を保持する基板であり、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリカーボネイト(PC)など光透過性の高い材料からなる基板である。
【0041】
共通電極層62は、ITO(Indium Tin Oxide)などによる透明な電極材で構成されている。画素電極層64の画素電極は、画素毎に設けられているが、共通電極層62は各画素に対して共通なものとされている。
【0042】
電気泳動表示層63は、複数のマイクロカプセル63aと、マイクロカプセル63aを保持するためのバインダ材(図示せず)を含んで構成されている。バインダ材は、透明電極層62及び画素電極層64とマイクロカプセル63aとの接着剤としても機能してもよい。バインダ材は、マイクロカプセル63aのカプセル壁膜に対する親和性が良好で、透明電極層62及び画素電極層64と接着性に優れ、かつ絶縁性の良い接着剤であることが好ましい。
【0043】
電気泳動表示層63は、裏面側(画素電極層64側)に、画素電極層64との接着性を高めるための接着層(図示せず)をさらに含んでも良い。接着層は、画素電極層64と接着性に優れ、かつ絶縁性の良い接着剤であることが好ましい。
【0044】
マイクロカプセル63aは、多数の帯電粒子が分散した電気泳動粒子分散液が封入されている。電気泳動粒子分散液には、黒色の電気泳動粒子(以下、黒粒子という)と、白色の電気泳動粒子(以下、白粒子という)とが分散され、二色の粉体流体方式の電気泳動層が構成されている。これら黒粒子及び白粒子は、互いに異なる極性に帯電しており、本実施形態では、黒粒子がマイナス(負)に帯電し、白粒子がプラス(正)に帯電している。
【0045】
また、電気泳動表示層63は、電気泳動表示層63の周縁部とを含む領域に設けられたエポキシ樹脂等による封止材67(封止部)により、透明基板61と素子基板65との間に封止されている。これにより、電気泳動表示層63が湿潤な環境から保護されることになり、電気泳動粒子の特性変化が抑制される。また、画素電極層64の周縁部にも封止材67が設けられ、これにより、画素電極層64が腐食することを防止している。
【0046】
ここで、本実施形態においては、パネル枠52の内周面に突起53が設けられ、突起53は、封止材67を避けて剛体である素子基板65(背面基板)と接触するように形成されている。すなわち、突起53は、パネル枠52の内周面において、封止材67と素子基板65との境界面67aの高さと同じかそれ以下の高さの位置に設けられている。
【0047】
このようにすると、腕時計1が衝撃等を受けたことにより電気泳動表示パネル5が図4中右方向に移動したとしても、パネル枠52に設けられた突起53が背面基板65と接触するものの、パネル枠52は封止材67には接触しないため、衝撃等によって封止材67に負荷がかかることを防止することができる。すなわち、衝撃等による負荷で封止部76が境界面67aから剥離することを防止することができ、電気泳動表示層63への水分(湿気)の浸入を抑制することができる。
【0048】
本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更を加えることができる。
【0049】
例えば、前記実施形態では、パネル枠52に封止材67を避けて素子基板65と接触する突起53を設ける場合を例にとり説明したが、パネル枠52の内周面に、封止材67との接触を避けるための溝を設けるようにしてもよい。そして、パネル枠52の溝が設けられた部分以外の部分が素子基板65と接触するようにパネル枠52を形成するようにしてもよい。
【0050】
また、前記実施形態では、マイクロカプセル型の電気泳動方式の表示層を用いる場合を例にとり説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、これ以外の電気泳動方式の表示層を用いる場合、例えば水平移動型電気泳動方式や垂直移動型電気泳動方式の表示層を用いる場合にも適用可能である。
【0051】
また、本実施形態では、電気泳動表示装置を腕時計等の時計に適用する場合を例にとり説明したが、本発明はこれに限らず、これ以外の電子機器用の電気泳動表示装置として用いることが可能である。
【0052】
ここにおいて、電子機器は、前述した電気泳動表示装置を表示部として備えるあらゆる機器を意味するものであり、ディスプレイ装置、テレビジョン装置、電子ブック、電子ペーパー、電子手帳、電卓、携帯電話、携帯情報端末等を含む。
【符号の説明】
【0053】
1 腕時計、2 時計ケース(外装ケース)、3 太陽電池、4 回路ケース、5 電気泳動表示パネル、7 透明カバー、8 LED光源、9 裏蓋、10 操作ボタン、11 操作ボタン、22 太陽電池受け部、42 回路基板、44 アンテナ、50 表示部、52 パネル枠、53 突起、54 内周面、60 カバーガラス、61 透明基板、62 共通電極層、64 画素電極層(駆動電極層)、65素子基板(背面基板)、67 封止材(封止部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板と、共通電極が形成された共通電極層と、電気泳動表示層と、前記電気泳動表示層を駆動するための駆動電極が形成された駆動電極層と、背面基板とが、表面側から積層された電気泳動表示パネルと、
前記電気泳動表示パネルのパネル枠とを備え、
前記電気泳動表示層は、前記電気泳動表示層の周縁部を含む領域に設けられる封止部によって前記透明基板と前記背面基板との間に封止され、
前記パネル枠は、前記封止部を避けて前記電気泳動表示パネルと接触するように形成された電気泳動表示装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記パネル枠は、前記封止部を避けて前記背面基板と接触するように形成された電気泳動表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記パネル枠に、前記封止部を避けて前記背面基板と接触する突起を設けた電気泳動表示装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかにおいて、
前記パネル枠に、前記封止部との接触を避けるための溝を設けた電気泳動表示装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電気泳動表示装置を備えた時計。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電気泳動表示装置を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−191329(P2011−191329A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−54794(P2010−54794)
【出願日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】