説明

電気泳動表示装置、電気泳動シートおよび電子機器

【課題】電気泳動素子に対する十分な防湿性を確保しつつ狭額縁化を実現し得る電気泳動表示装置および電子機器電気光学装置、電気光学装置の駆動方法、電子機器を提供する。
【解決手段】電気泳動表示装置は、第1基板14と第2基板15との間に電気泳動層31が挟持されてなる電気泳動素子と、前記第1基板の前記電気泳動層とは反対側の面上に配置される第1の保護フィルム12と、前記第1基板および前記第2基板の外側にそれぞれ配置される一対のカバーシートと、前記一対のカバーシート間に配置され前記電気泳動素子の周囲を囲むコアシートと、少なくとも前記第1の保護フィルム12と前記コアシートと一方の前記カバーシートとが基板面方向で重畳し互いに貼り合わされてなる封止部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置、電気泳動シートおよび電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示デバイスに代表される平面表示装置は、薄型、軽量、低消費電力などの特徴を生かしてOA機器、情報端末、時計、テレビなどの各分野に利用されている。現在、これら携帯電話をはじめとするデバイスは、より薄く、より軽くかつ丈夫であることが要求されている。
一方、カラー表示や動画表示という点においては液晶表示デバイスに劣るものの、薄さ軽さおよび低消費電力を実現し得る表示体として、電気泳動ディスプレイ(Electrophoretic Display:EPD)は紙に近い性質を持つ読むことを目的とした「電子ペーパー」として開発が進められている。
【0003】
代表的な電子ペーパーであるマイクロカプセル型EPDは、帯電粒子が分散された溶媒をマイクロカプセルに封入し、マイクロカプセルの上下に形成した電極に電圧を印加して電界を発生させることにより帯電粒子の分布を変化させてコントラストを得る表示体である。電圧印加を止めても静電気力や分子間力によって引きつけられた帯電粒子が電極付近に留まることから、電力を消費せずに表示画像を保持し続けられるという特長を有する。
さらに、液晶ディスプレイのような透過光や有機ELディスプレイのような発光ではなく、帯電粒子や溶媒そのものの色(反射光)を観察するため、視野角依存がなく、紙のように目に優しく長時間の凝視にも耐えられるといった利点がある。
【0004】
電気泳動ディスプレイの特長である紙のような見易さは、帯電粒子からの反射光を観察する、いわゆる反射型の表示体であることから、太陽光の下での使用に対して非常に有利である。ただし、使用環境として屋外を想定した場合、温湿度変化による劣化が懸念されるため、十分な耐湿性が必要となる。
【0005】
この課題を解決するために、特許文献1に示されるように電気泳動層への水分浸入を防ぐために電気泳動層の上下に保護フィルムを配置し、さらに周囲に防湿樹脂を配置する構造が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−72128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記構成では、水分の拡散経路となる防湿樹脂の封止領域の断面積を小さくする工夫もされているが、この構造で十分な防湿性を確保するためには、防湿樹脂材料そのものの十分な防湿性に加えて、上下の保護フィルムとの強力な密着性も要求される。保護フィルムと防湿樹脂の密着性が不十分であると、保護フィルムの剛性によって生じる復元力が界面剥離力となり防湿シート近傍の防湿樹脂の分子間隔が広がる、あるいは界面剥離が生じることにより、この界面が水分拡散の経路となり電気泳動層に浸入してEPDの表示状態が変化するといった不具合が生じる可能性がある。
そこで、さらに外縁を覆う封止部を形成し、フィルムの復元力による界面剥離を低減させる工夫もなされている。ただし、この構造では封止幅が広がることとなり、周辺非表示エリアの拡大を招き、電子ペーパーの商品性を著しく損なうといった問題がある。
【0008】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、周辺非表示エリアを拡大することなく十分な防湿性を有する電気泳動表示装置および電子機器を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の電気泳動表示装置は、上記課題を解決するために、基板と、前記基板と対向配置される支持層と、前記基板と前記支持層との間に配置される電気泳動層と、前記支持層の前記電気泳動層とは反対側の面に配置される接着層と、前記基板の外面側に配置される第1の保護フィルムと、前記接着層の外面側に配置され前記第1の保護フィルムと貼り合わされることにより前記電気泳動層を封止する第2の保護フィルムと、を備え、前記接着層が少なくとも前記支持層の側面に回り込むようにして設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、支持層の電気泳動層とは反対側の面に配置され第2の保護フィルムを接着保持するための接着層が支持層の側面に回り込むようにして配置されており、この接着層が電気泳動層の側面に配置される保護フィルムの接着保持を兼ねることによって、極めて狭い封止幅で電気泳動層への水分の浸入を防ぐことが可能となる。すなわち、周辺に防湿樹脂を用いる構造や、保護フィルム同士を貼り合わせた後に外縁を覆う封止部を形成する構造に比べて著しく狭額縁な電気泳動表示装置を実現できる。
【0011】
また、前記支持層の側面に回り込むようにして折り返された前記接着層の折り返し部に第1の保護フィルムが貼り付けられていることが好ましい。
【0012】
本発明によれば、電気泳動層の側面に回り込むようにして折り返された接着層の折り返し部に第1の保護フィルムが貼り付けられており、第1の保護フィルムと第2の保護フィルムとが同じ接着層によって接着保持されることとなり、フィルムどうしの剥離等が防止される。
このようにして接着層が電気泳動層の側面に配置される保護フィルムの接着保持を兼ねることによって狭額縁幅を実現しつつ電気泳動層に対する防湿性を高めることができる。
【0013】
また、接着層および前記第2保護フィルムのいずれか一方が防湿性を有していることが好ましい。
本発明によれば、接着層および第2保護フィルムのいずれか一方が防湿性を有していることにより、素子基板が防湿性を有していない材料からなる場合にも素子基板側の防湿性を確保することができる。これにより、従来の構成のように表示パネルを封止する一対の保護フィルムによる封止性を確保するために封止部の封止幅を広くしなくても、額縁幅を広げることなく電気泳動層に対する十分な防湿性を確保することができる。また、接着層および第2保護フィルムのいずれか一方が防湿性を有していることにより、いずれか他方は防湿性を有しない安価な接着層あるいは保護フィルムを用いることができる。これにより、構成部材にかかるコストを削減することができる。
【0014】
本発明の電気泳動シートは、上記課題を解決するために、透明基板と、前記透明基板上に配置される電気泳動層と、前記電気泳動層の前記透明基板とは反対側の面上に配置される接着支持層と、前記透明基板の外面側に貼り付けられる第1の保護フィルムと、前記接着支持層の外面側に貼り付けられ前記第1の保護フィルムと貼り合わされることで前記電気泳動層を封止する第2の保護フィルムと、を備え、前記接着支持層が、少なくとも前記電気泳動層の側面へ回り込むようにして設けられていることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、接着支持層の電気泳動層とは反対側の面上に配置され、第2の保護フィルムを接着保持するための接着支持層が電気泳動層の側面に回り込むようにして配置されており、この接着支持層が電気泳動層の側面に配置される第1の保護フィルムの接着保持を兼ねることによって、極めて狭い封止幅で電気泳動層への水分の浸入を防ぐことが可能となる。すなわち、周辺に防湿樹脂を用いる構造や、保護フィルム同士を貼り合わせた後に外縁を覆う封止部を形成する構造に比べて狭額縁な電気泳動表示装置を実現できる点に効果がある。
【0016】
また、前記電気泳動層の側面に回り込むようにして折り返された前記接着支持層の折り返し部に前記第1の保護フィルムが貼り付けられていることが好ましい。
本発明によれば、電気泳動層の側面に回り込むようにして折り返された接着支持層の折り返し部に第1の保護フィルムが貼り付けられていることから、第1の保護フィルムと第2の保護フィルムとが同じ接着層によって接着保持されることとなり、フィルム同士の剥離等が防止される。
このようにして接着層が電気泳動層の側面に配置される保護フィルムの接着保持を兼ねることによって狭額縁幅を実現しつつ電気泳動層に対する防湿性を高めることができる。
【0017】
また、電気泳動層が複数のマイクロカプセルを有してなり、これら複数のマイクロカプセル上に接着支持層が貼り付けられていることが好ましい。
従来より、電気泳動シートは素子基板上へ貼り付けるための接着剤層が設けられるのが一般的であるが、本発明の接着支持層は素子基板に代えて電気泳動層を支持するとともに接着機能も有することから、上記接着剤層としての機能も兼ね備えている。これにより接着剤層を省くことができ、製造が容易になるとともに電気泳動シートを薄型化することができる。
【0018】
また、接着支持層が防湿性を有していることが好ましい。
本発明によれば、接着支持層が防湿性を有しているので、第2の保護フィルムとして防湿性を有しない安価なフィルムを用いることが可能となる。これにより、フィルムにかかるコストを削減することができる。
【0019】
本発明の電気泳動表示装置は、先に記載の電気泳動シートと、前記電気泳動シートを覆うとともに当該電気泳動シートを封止する一対の保護フィルムと、を備えていることを特徴とする。
本発明の電気泳動表示装置は、先の述べた本発明の電気泳動シートを備えていることから、保護フィルム同士の剥離が防止された防湿性に優れた表示部となる。これにより、周辺非表示エリアを拡大することなく十分な防湿性を確保可能である。
したがって、電気泳動素子に対する十分な防湿性を確保しつつ狭額縁化を実現し得る電気泳動表示装置を提供することができる。
【0020】
本発明の電子機器は、先に記載した本発明の電気泳動表示装置を備えていることを特徴とする。
【0021】
本発明によれば、電気泳動素子に対する十分な防湿性を確保しつつ狭額縁化を実現し得る表示部を備えたことにより、信頼性に優れた電子機器となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)電気泳動表示装置の概略構成を示す部分断面図、(b)マイクロカプセルの概略構成を示す断面図。
【図2】第1実施形態の変形例を示す断面図。
【図3】第2実施形態の電気泳動表示装置の概略構成を示す部分断面図。
【図4】第3実施形態の電気泳動表示装置の概略構成を示す部分断面図。
【図5】第3実施形態の電気泳動表示装置の変形例を示す部分断面図。
【図6】保護フィルムの変形例を示す平面図。
【図7】電子機器の一例を示す図。
【図8】電子機器の一例を示す図。
【図9】電子機器の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0024】
[第1実施形態]
以下、本発明の電気泳動表示装置の構成について図を参照して説明する。
図1(a)は、電気泳動表示装置の概略構成を示す部分断面図、(b)はマイクロカプセルの概略構成を示す断面図である。
電気泳動表示装置100は、透明基板14と素子基板15との間に複数のマイクロカプセル20を配列してなる電気泳動層31が挟持されてなる電気泳動パネル2が、一対の保護フィルム12,13によって封止された構成となっている。
【0025】
素子基板15は、ガラスからなる基板であり、画像表示面とは反対側に配置されるため透明なものでなくてもよい。素子基板15の表面上には、不図示の選択トランジスタ、走査線、データ線などが形成された回路層(不図示)が形成されており、この回路層の最表層に画素電極35が配列形成されている。画素電極35は、MgAg、ITO、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)などから形成された透明電極である。
本実施形態では、素子基板15として、厚さ100μmの無アルカリガラスAN100(旭硝子社製)を用いている。
【0026】
一方、透明基板14は、ガラスやプラスチック等からなる基板であり、画像表示側に配置されるため透明基板とされる。透明基板14の電気泳動層31側には複数の画素電極35と対向する共通電極(図示略)が形成されており、共通電極上に電気泳動層31が設けられている。共通電極は、画素電極35とともに電気泳動層31に電圧を印加する電極であり、MgAg(マグネシウム銀)、ITO(インジウム・スズ酸化物)、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)などから形成された透明電極である。
【0027】
電気泳動層31は、透明基板14と、透明基板14上に固定された複数のマイクロカプセル20とにより電気泳動シートとして取り扱われるのが一般的である。製造工程において、電気泳動シートは接着剤層33の表面に保護用の離型シートが貼り付けられた状態で取り扱われる。そして、別途製造された素子基板15(画素電極35や各種回路などが形成されている)に対して離型シートを剥がした電気泳動シートを貼り付けることによって表示部7が形成される。本実施形態における電気泳動層31の厚さは約230μmである。
【0028】
マイクロカプセル20は、図1(b)に示すように、例えば50μm程度の粒径を有しており、内部に分散媒21と、複数の白色粒子(電気泳動粒子)27と、複数の黒色粒子(電気泳動粒子)26とを封入した球状体である。マイクロカプセル20は、共通電極と画素電極35とで挟持され、1つの画素40内に1つ又は複数のマイクロカプセル20が配置される。
【0029】
マイクロカプセル20の外殻部(壁膜)は、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチルなどのアクリル樹脂、ユリア樹脂、アラビアゴムなどの透光性を持つ高分子樹脂などを用いて形成される。
分散媒21は、白色粒子27と黒色粒子26とをマイクロカプセル20内に分散させる液体である。分散媒21としては、水、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、メチルセルソルブなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、脂肪族炭化水素(ぺンタン、ヘキサン、オクタンなど)、脂環式炭化水素(シクロへキサン、メチルシクロへキサンなど)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、長鎖アルキル基を有するベンゼン類(キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼンなど))、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなど)、カルボン酸塩などを例示することができ、その他の油類であってもよい。これらの物質は単独又は混合物として用いることができ、さらに界面活性剤などを配合してもよい。
【0030】
白色粒子27は、例えば、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色顔料からなる粒子(高分子あるいはコロイド)であり、例えば負に帯電されて用いられる。黒色粒子26は、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料からなる粒子(高分子あるいはコロイド)であり、例えば正に帯電されて用いられる。
これらの顔料には、必要に応じ、電解質、界面活性剤、金属石鹸、樹脂、ゴム、油、ワニス、コンパウンドなどの粒子からなる荷電制御剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シラン系カップリング剤等の分散剤、潤滑剤、安定化剤などを添加することができる。
また、黒色粒子26および白色粒子27に代えて、例えば赤色、緑色、青色などの顔料を用いてもよい。かかる構成によれば、表示部7に赤色、緑色、青色などを表示することができる。
【0031】
このような構成の電気泳動パネル2は、図1(a)に示すように一対の保護フィルム12,13によって被覆され、その全体が封止されている。
【0032】
保護フィルム12,13は、電気泳動パネル2の平面視における面積よりも大きい形状とされ、その周縁部12a,13aが電気泳動パネル2から張り出している。保護フィルム12は電気泳動パネル2の画像表示面側である透明基板14の外面(電気泳動層31とは反対側の面)上に配置され、不図示の接着剤層を介して透明基板14と貼り合わされている。保護フィルム13(一方の保護フィルム)は素子基板15の外面(電気泳動層31とは反対側の面)上に配置され、後述する接着層11を介して素子基板15と貼り合わされている。
【0033】
透明基板14側に配置される保護フィルム12には、無機膜が形成された複数のフィルムが接着剤を介して積層されてなる多層フィルムタイプの保護フィルムであって、例えば、シリカやアルミナ等の透明で且つ防湿性を有する無機膜をポリカーボネートやPETのような有機フィルムに形成することによって防湿性能を付加したフィルムを用いる。
一方、素子基板15側に配置される保護フィルム13は、ガラスからなる素子基板15自体が防湿性を有していることから、防湿性を有していないフィルムを用いることができる。
【0034】
保護フィルム12,13は、これらの周縁部12a,13a同士がこれらの間に配置された接着層17を介して貼り合わされている。接着層17としては、例えばエチレンメタクリル酸共重合体ホットメルト剤等の熱可塑性接着材、エポキシ系接着剤のような熱硬化型接着材、あるいはアクリル系接着剤のようなUV効果型接着材等が適宜選択される。
【0035】
このような保護フィルム12,13は真空ラミネート処理を行って貼り合わせることが好ましい。これにより空気等を内包させることなく隙間なく貼り合わせることができる。
ここで、保護フィルム12の端部(周縁部)は電気泳動層31の側面31c側へと折り返されて保護フィルム13の端部(周縁部)と貼り合わされている。
【0036】
接着層11は、電気泳動パネル2の素子基板15と保護フィルム13との間に配置され、素子基板15の外面15b(素子基板15の電気泳動層31とは反対側の面)全体を覆っている。この接着層11は、素子基板15の外面15bから側面15cへと回り込むようにして設けられており、本実施形態では、素子基板15の側周面全体に設けられている。この接着層11の折り返し部11aに表示面側に配置された保護フィルム12の折り返された部分が貼り合わされている。
【0037】
本実施形態では、保護フィルム12のみが接着層11の折り返し部11a上に貼り合わされているが、図2に示すように、保護フィルム12だけでなく保護フィルム13の端部も折り返し部11a上に貼り合わされていてもよい。
【0038】
接着層11は両面接着フィルムからなっており、素子基板15(本実施形態ではガラス)の線膨張係数に近い材料を用いて形成されていることが好ましい。また、接着層11の厚みは約50μである。また、この接着層11については防湿性を有していることが好ましい。これにより、防湿性を有する保護フィルム12とこの接着層11とによって電気泳動層31に対する防湿性がより一層高められる。
【0039】
このようにして本実施形態の電気泳動表示装置100が構成されている。
【0040】
本実施形態の電気泳動表示装置100によれば、電気泳動パネル2の下面(素子基板15)側の保護フィルム13を接着保持するための接着層11が電気泳動パネル2の側面に配置される保護フィルム12の接着保持を兼ねることによって、極めて狭い封止幅でマイクロカプセル20への水分の浸入を防ぐことが可能となる。すなわち、周辺に防湿樹脂を用いる構造や、保護フィルム12,13どうしの貼り合わせ後に外縁を覆う封止部を形成する構造に比べて著しく狭額縁な電気泳動表示装置100を実現できる点に効果がある。
また、本実施形態では、電気泳動パネル2の側面に回り込むようにして折り返された接着層11の折り返し部11aに保護フィルム12が貼り付けられていることから、上下の保護フィルム12,13が同じ接着層11によって接着保持されることとなり、フィルム同士の剥離等が防止される。
このようにして接着層11が電気泳動層31の側面に配置される保護フィルム12の接着保持を兼ねることによって、電気泳動パネル2に対する十分な防湿性を確保しつつ狭額縁化を実現し得る電気泳動表示装置100を提供することができる。
【0041】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態の電気泳動表示装置について述べる。
図3は、第2実施形態の電気泳動表示装置の概略構成を示す部分断面図である。
図3に示すように、本実施形態の電気泳動表示装置200は先の実施形態と基本構成は同様であるが、素子基板25がプラスチックにより構成され、素子基板25側の保護フィルム23が防湿性を有している点において異なっている。
【0042】
先に記載した実施形態においてはガラス基板からなる素子基板が用いられていたが、本実施形態では、プラスチック基板を素子基板25として用いている。プラスチック基板からなる素子基板25は、ガラス基板のような高い防湿特性を有していない。このため、素子基板25側を覆う保護フィルム23(第2の保護フィルム)としては、透明基板14側を覆っている保護フィルム12と同様に、無機膜が形成された複数のフィルムが接着剤を介して積層されてなる多層フィルムタイプの保護フィルムであって、例えば、シリカやアルミナ等の透明で且つ防湿性を有する無機膜をポリカーボネートやPETのような有機フィルムに形成することによって防湿性能を付加したフィルムを用いる。
【0043】
本実施形態の構成によれば、素子基板25としてプラスチックなどの防湿特性の低い基板を用いて電気泳動パネル2を構成する場合でも、封止用の保護フィルムとして防湿性を有する上記保護フィルム12,23を用いることによって電気泳動層31に対する十分な防湿性を確保することができる。
また、プラスチック基板はガラス基板に比べて軽く、電気泳動表示装置の軽量化を図ることが可能である。
【0044】
[第3実施形態]
次に、第3実施形態の電気泳動表示装置300について述べる。
図4は、第3実施形態の電気泳動表示装置の概略構成を示す部分断面図である。
図4に示すように、本実施形態の電気泳動表示装置300は、複数のマイクロカプセル20からなる電気泳動層31と、当該電気泳動層31(複数のマイクロカプセル20)上に貼り付けられた接着剤層33と、当該接着剤層33の電気泳動層31とは反対側の面上に貼り付けられる接着支持層41と、を有してなる電気泳動シート50を備え、この電気泳動シート50が防湿性能を有した一対の保護フィルム12,23によって封止された構成となっている。
【0045】
本実施形態では、接着支持層41の折り返し部41aが接着剤層33の電気泳動層31とは反対側の面全体を覆うとともに、その接着剤層33の側面33cだけでなく電気泳動層31および透明基板14の各側面31c,14cまでも覆うようにして設けられている。この接着支持層41の折り返し部41aには表示面側に配置された保護フィルム12が貼り付けられている。
【0046】
本実施形態の電気泳動表示装置300は、素子基板を有しておらず外部接続構造となっている。つまり、外部から電気泳動層31に対して電圧を印加することから、接着支持層41は導電性を有していることが好ましい。これにより、電気泳動層31に対する電圧印加を効率よく行える。
また、素子基板に代えて接着支持層41が電気泳動層31を支持する構成となっている。
【0047】
本実施形態の構成では、電気泳動シート50の底面(表示面とは反対側の面)から側面にかけて接着支持層41が設けられており、この折り返し部41a上に透明基板14側から折り返された保護フィルム12が貼り付けられている。このため、電気泳動シート50と保護フィルム12との間には隙間が生じにくく、密着性が高い。また、電気泳動層31の周囲には防湿性を有した接着支持層41と保護フィルム12とが二重に配置されることになるため、防湿性が向上し、表示劣化を長期的に防止することができる。
【0048】
なお、先の各実施形態における電気泳動シートの接着剤層33を省略して、図5に示すように電気泳動層31(複数のマイクロカプセル)上に接着支持層41を直接貼り付けるようにしてもよい。これにより、電気泳動装置の薄型化を図ることができる。
【0049】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0050】
例えば、電気泳動パネル2の表示面側に設けられる保護フィルム12として、図6に示すように電気泳動パネル2や電気泳動シート50の形状に合わせて切り込み120を入れておいてもよい。
【0051】
本発明の構造は、電気泳動ディスプレイや電気泳動シートに限らず、電子粉体方式等の表示保持性を有する電子ペーパーディスプレイおよび表示シートに対する高防湿かつ狭額縁を兼ね備えた構造としても活用可能である。
さらに、本発明の構成は、高防湿かつ狭額縁な液晶ディスプレイ用の構造としても活用可能である。
【0052】
また、接着層11および保護フィルム13のいずれか一方が防湿性を有していることが好ましい。接着層11および保護フィルム13のいずれか一方が防湿性を有していることにより、素子基板15が防湿性を有していない材料からなる場合にも、素子基板15側の防湿性を確保することができる。これにより、従来の構成のように、電気泳動パネル2を封止する一対の保護フィルムによる封止性を確保するためにこれらフィルム同士が貼り合わされてなる封止部の封止幅を広くしなくても、額縁幅を広げることなく電気泳動層31に対する十分な防湿性を確保することができる。また、接着層11および保護フィルム13のいずれか一方が防湿性を有していることにより、いずれか他方は防湿性を有しない安価な接着層あるいは保護フィルムを用いることができる。これにより構成部材にかかるコストを削減することができる。
【0053】
(電子機器)
次に、上記実施形態の電気泳動装置(100,200,300)を、電子機器に適用した場合について説明する。
図7は、腕時計1000の正面図である。腕時計1000は、時計ケース1002と、時計ケース1002に連結された一対のバンド1003とを備えている。
時計ケース1002の正面には、上記各実施形態の電気光学装置からなる表示部1005と、秒針1021と、分針1022と、時針1023とが設けられている。時計ケース1002の側面には、操作子としての竜頭1010と操作ボタン1011とが設けられている。竜頭1010は、ケース内部に設けられる巻真(図示は省略)に連結されており、巻真と一体となって多段階(例えば2段階)で押し引き自在、かつ、回転自在に設けられている。表示部1005では、背景となる画像、日付や時間などの文字列、あるいは秒針、分針、時針などを表示することができる。
【0054】
図8は電子ペーパー1100の構成を示す斜視図である。電子ペーパー1100は、上記実施形態の電気光学装置を表示領域1101に備えている。電子ペーパー1100は可撓性を有し、従来の紙と同様の質感および柔軟性を有する書き換え可能なシートからなる本体1102を備えて構成されている。
【0055】
図9は、電子ノート1200の構成を示す斜視図である。電子ノート1200は、上記の電子ペーパー1100が複数枚束ねられ、カバー1201に挟まれているものである。カバー1201は、例えば外部の装置から送られる表示データを入力する図示は省略の表示データ入力手段を備える。これにより、その表示データに応じて、電子ペーパーが束ねられた状態のまま、表示内容の変更や更新を行うことができる。
【0056】
以上の腕時計1000、電子ペーパー1100、および電子ノート1200によれば、本発明に係る電気泳動装置が採用されているので、防湿性および耐久性に優れ、信頼性の高い表示部を備えた電子機器となる。また、狭額縁化とされた電気泳動表示装置を備えているので、視認性の良好な表示部を備えた電子機器となる。
【0057】
なお、上記の電子機器は、本発明に係る電子機器を例示するものであって、本発明の技術範囲を限定するものではない。例えば、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの電子機器の表示部にも、本発明に係る電気泳動表示装置は好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0058】
100,200,300 電気泳動表示装置、11 接着層、11a 折り返し部、2 保護フィルム(第1の保護フィルム)、12a 周縁部、13 保護フィルム(第2の保護フィルム)、 14 透明基板、15 素子基板、15b 外面、15c 側面、20 マイクロカプセル、23 保護フィルム(第2の保護フィルム)、25 素子基板、30 透明基板、31 電気泳動層、31c 側面、33 接着剤層、33c 側面、35 画素電極、40 画素、41 接着支持層、41a 折り返し部、50 電気泳動シート、1000 腕時計(電子機器)、1100 電子ペーパー(電子機器)、1200 電子ノート(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板と対向配置される支持層と、
前記基板と前記支持層との間に配置される電気泳動層と、
前記支持層の前記電気泳動層とは反対側の面に配置される接着層と、
前記基板の外面側に配置される第1の保護フィルムと、
前記接着層の外面側に配置され前記第1の保護フィルムと貼り合わされることにより前記電気泳動層を封止する第2の保護フィルムと、を備え、
前記接着層が少なくとも前記支持層の側面に回り込むようにして設けられていることを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項2】
前記支持層の側面に回り込むようにして折り返された前記接着層の折り返し部に前記第1の保護フィルムが貼り付けられていることを特徴とする請求項1記載の電気泳動表示装置。
【請求項3】
前記接着層および前記第2の保護フィルムのいずれか一方が防湿性を有していることを特徴とする請求項1または2記載の電気泳動表示装置。
【請求項4】
透明基板と、
前記透明基板上に配置される電気泳動層と、
前記電気泳動層の前記透明基板とは反対側の面上に配置される接着支持層と、
前記透明基板の外面側に配置される第1の保護フィルムと、
前記接着支持層の外面側に配置され前記第1の保護フィルムと貼り合わされることで前記電気泳動層を封止する第2の保護フィルムと、を備え、
前記接着支持層が、少なくとも前記電気泳動層の側面へ回り込むようにして設けられていることを特徴とする電気泳動シート。
【請求項5】
前記電気泳動層の側面に回り込むようにして折り返された前記接着支持層の折り返し部に前記第1の保護フィルムが貼り付けられていることを特徴とする請求項4記載の電気泳動シート。
【請求項6】
前記電気泳動層が複数のマイクロカプセルを有してなり、
これら複数のマイクロカプセル上に前記接着支持層が貼り付けられていることを特徴とする請求項4または5記載の電気泳動シート。
【請求項7】
前記接着支持層が防湿性を有していることを特徴とする請求項4から6のいずれか一項に記載の電気泳動シート。
【請求項8】
請求項4から7に記載の電気泳動シートと、
前記電気泳動シートを覆うとともに当該電気泳動シートを封止する一対の保護フィルムと、を備えていることを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項9】
請求項1から3、8のいずれかに記載の電気泳動表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−186335(P2011−186335A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−53664(P2010−53664)
【出願日】平成22年3月10日(2010.3.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】