説明

電気泳動表示装置および電子機器

【課題】表示コントラストおよび反射率が高く、視認性に優れた電気泳動表示装置、およびかかる電気泳動表示装置を備えた信頼性の高い電子機器を提供すること。
【解決手段】電気泳動表示装置20は、互いに対向配置された一対の電極3、4と、該一対の電極3、4間に設けられた表示層とを備え、表示層は、一対の電極3、4間への通電により所定の方向に泳動する電気泳動粒子5と光反射粒子8とを液相分散媒6に分散してなる粒子分散液を含有している。光反射粒子8は、電気泳動粒子5より光反射率が高く、かつ、その表面に重合物Aが連結しており、該重合物Aは、光反射粒子8の表面に一端部が連結する主鎖A1と、該主鎖A1に連結し、液晶部A21を含む側鎖A2とを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体中に微粒子を分散させた分散系に電界を作用させると、微粒子は、クーロン力により液体中で移動(泳動)することが知られている。この現象を電気泳動といい、近年、この電気泳動を利用して、所望の情報(画像)を表示させるようにした電気泳動表示装置が新たな表示装置として注目を集めている。
この電気泳動表示装置は、電圧の印加を停止した状態での表示メモリー性や広視野角性を有することや、低消費電力で高コントラストの表示が可能であること等の特徴を備えている。
また、電気泳動表示装置は、非発光型(反射型)の表示デバイスであることから、ブラウン管のような発光型の表示デバイスに比べて、目に優しいという特徴も有している。
【0003】
このような電気泳動表示装置としては、電極を備える一対の基板間に、白色粒子と黒色粒子を含む電気泳動粒子(微粒子)を分散させた分散系を配置したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
この電気泳動表示装置では、画素ごとに、一対の電極間に電圧を印加し、電気泳動粒子に電界を作用させる。これにより、電気泳動粒子が泳動し、分散系における反射率が変化する。その結果、反射光を制御し、所望の情報を表示することができる。
【0004】
また、特許文献1には、表面に微細な凹凸を設けた白色粒子について開示されている。特許文献1によれば、このような凹凸を有する白色粒子は、粒子を透過する光が減り、多重反射の効果を増強することによって白色の輝度率が向上する作用を有するとしている。
しかしながら、このような白色粒子は、光透過率の抑制が十分でなく、白色粒子の後方が透けて見えることが避けられない。特に、金属による表面改質を施すことによって白色粒子の表面に凹凸を形成した場合には、金属が光を吸収してしまい、光の反射率が低下する。このため、電気泳動表示装置における表示コントラストの低下を招いていた。
【0005】
【特許文献1】特開2004−279545号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、表示コントラストおよび反射率が高く、視認性に優れた電気泳動表示装置、およびかかる電気泳動表示装置を備えた信頼性の高い電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の電気泳動表示装置は、互いに対向配置された一対の電極と、該一対の電極間に設けられた表示層とを備え、
前記表示層は、前記一対の電極間への通電により所定の方向に泳動する少なくとも1種の電気泳動粒子と光反射粒子とを液相分散媒に分散してなる電気泳動分散液を含有し、
前記光反射粒子は、前記電気泳動粒子より光反射率が高く、かつ、その表面に重合物が連結しており、該重合物は、前記光反射粒子の表面に一端部が連結する主鎖と、該主鎖に連結し、液晶部を含む側鎖とを有していることを特徴とする。
これにより、表示コントラストおよび反射率が高く、視認性に優れた電気泳動表示装置を提供することができる。
【0008】
本発明の電気泳動表示装置では、前記主鎖は、その主骨格が脂肪族炭化水素鎖で構成されていることが好ましい。
これにより、主骨格が柔軟となり、各液晶部を光反射粒子の周囲(近傍)に留めておきながら、各液晶部を比較的自由に配向させることができる。そのため、表示色の切り替え等、電気泳動表示装置の表示特性および操作性がそれぞれ向上する。
本発明の電気泳動表示装置では、前記側鎖は、前記液晶部が連結体を介して前記主鎖に連結したものであることが好ましい。
これにより、各液晶部と主鎖の離間距離を適度に維持することができる。
【0009】
本発明の電気泳動表示装置では、前記連結体は、その主骨格が脂肪族炭化水素鎖で構成されていることが好ましい。
これにより、連結部が柔軟となり、各液晶部を光反射粒子の周囲(近傍)に留めておきながら、各液晶部をさらに円滑に配向させることができる。
本発明の電気泳動表示装置では、前記連結体の前記主鎖と液晶部との間に存在する炭素の数は、5〜18であることが好ましい。
これにより、連結部の柔軟性を十分なものとしつつ、液晶部を光反射粒子の近傍に留めることができる。
【0010】
本発明の電気泳動表示装置では、前記液晶部は、電界の方向に沿って配向する配向特性を有するものであることが好ましい。
これにより、一対の電極間に電圧を印加したとき、液晶分子が電気泳動粒子の泳動を妨げるのが抑制される。このため、表示の切り替えをスムーズに行うことができる。また、電気泳動粒子の偏在を防止することができるので、安定した表示を行うことができる。また、一対の電極間に電圧が印加されていないときには、光反射粒子による反射光を表示面側に確実に指向させることができる。このため、表示の明るさおよびコントラストをより高めることができる。
【0011】
本発明の電気泳動表示装置では、前記重合物が前記光反射部に結合している密度は、0.5〜5nm/個であることが好ましい。
これにより、液晶部同士の離間距離を必要十分な距離に維持させて、光反射粒子の周囲(近傍)に存在させることができる。
本発明の電気泳動表示装置では、前記液晶部は、前記液相分散媒に対して撥液性を示す官能基を有していることが好ましい。
これにより、液晶分子は、粒子分散液中において安定的に分散することができる。
【0012】
本発明の電気泳動表示装置では、前記光反射粒子は、金属光沢を有する金属材料を主材料とするものであることが好ましい。
これにより、光反射粒子は、光反射率の高いものとなる。
本発明の電気泳動表示装置では、前記金属材料は、アルミニウムまたは銀であることが好ましい。
これにより、光反射粒子は、特に光反射率の高いものとなる。また、これらの材料は、反射によって光の色に偏りが生じ難いので、例えば、白色光を入射した場合には、白色に近い反射光が得られる。このため、光反射粒子の反射光が、電気泳動粒子の反射光の色に影響を与えるのを抑制することができる。
【0013】
本発明の電気泳動表示装置では、前記光反射粒子の大きさは、前記電気泳動粒子の粒径より大きく、かつ、可視光の最も長波長側の波長より大きいことが好ましい。
これにより、光反射粒子は、入射した外光を全反射することができるため、その光反射率を特に高めることができる。
本発明の電気泳動表示装置では、前記光反射粒子は、無帯電の状態で前記液相分散媒に分散していることが好ましい。
これにより、光反射粒子は、電界の影響を受けることなく、表示層中に分散する。したがって、電気泳動粒子の泳動を妨げることなく、光反射粒子による反射光によって表示の明るさやコントラストを高めることができる。
【0014】
本発明の電気泳動表示装置では、前記粒子分散液は、前記電気泳動粒子として、第1の電気泳動粒子と、該第1の電気泳動粒子と泳動方向が異なり、前記第1の電気泳動粒子より光反射率の低い第2の電気泳動粒子とを含んでおり、
前記光反射粒子は、前記第2の電気泳動粒子と同じ極性に帯電しており、その帯電量が、前記第2の電気泳動粒子より小さいものであることが好ましい。
これにより、光反射粒子は、第2の電気泳動粒子より遅い速度で泳動するため、常時、第1の電気泳動粒子と反対側に位置することとなり、第1の電気泳動粒子を透過する透過光を確実に反射することができる。
本発明の電気泳動表示装置では、前記第1の電気泳動粒子は、白色を呈しており、前記第2の電気泳動粒子は、黒色を呈していることが好ましい。
これにより、第1の電気泳動粒子による反射光と、第2の電気泳動粒子による反射光との間で、反射率の大きな差が生じるため、コントラストの高い表示が可能になる。
【0015】
本発明の電気泳動表示装置では、前記表示層は、隔壁を介して複数の画素空間に分割されており、
前記各画素空間の内面のうち、前記第1の電極側の内面および前記第2の電極側の内面の少なくとも一方に、前記液晶部を配向させる配向膜を有することが好ましい。
これにより、一対の電極間に電位差がないとき、重合物の液晶部を、配向膜が有する溝の形成方向に沿って配向させることができる。
本発明の電子機器は、本発明の電気泳動表示装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の電気泳動表示装置および電子機器を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の電気泳動表示装置の好適な実施形態を模式的に示す縦断面図、図2は、図1に示す電気泳動表示装置が備える光反射粒子の模式的拡大図、図3は、図2に示す光反射粒子の姿勢の変化を説明する模式図、図4〜6は、それぞれ、図2に示す液晶高分子の形成を説明するための模式図、図7、図8は、それぞれ、図1に示す電気泳動表示装置の作動を説明する断面図である。なお、以下の説明では、図1、図2、図6〜図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0017】
図1に示す電気泳動表示装置20は、表示面となる第1の基板1と、第1の基板1の下方に離間して設けられた第2の基板2と、各基板1、2間の縁部に設けられ、各基板1、2間の間隙を気密的に封止する封止部7とを有している。
また、各基板1、2と封止部7とで画成される気密空間内には、電気泳動粒子5(白色粒子5a、黒色粒子5b)および光反射粒子8を含む電気泳動分散液10が充填されている。
【0018】
さらに、前記気密空間は、隔壁72によりマトリックス状に分割されており、複数に分割されてなる各空間は、それぞれが表示内容を構成する各画素に対応する画素空間71となっている。すなわち、これらの複数の画素空間71にそれぞれ電気泳動分散液10が充填されている。そして、各画素空間71に印加される電界に応じて電気泳動粒子5を泳動させ、これにより各画素空間71における光反射率を制御する。その結果、複数の画素空間71において、光反射率の制御を連動して行うことにより反射光を制御し、電気泳動表示装置20は画像や文字等の情報を表示することができる。
【0019】
ここで、本発明では、電気泳動分散液10中に光反射粒子8が含まれている。図2に示すように、この光反射粒子8は、平坦な面を有する鱗片状をなしている。光反射粒子8の両面は、電気泳動粒子5よりも光反射率の高いものである。そのため、後述するように、高反射率の表示を可能にし、特に明るい場所における電気泳動表示装置20の視認性を高めることができる。また、特に、白色(または淡色)表示における光反射率を高めることができ、これにより、表示のコントラストを高めることができる。
また、本発明では、光反射粒子Bの表面に重合物(重合体)Aが連結している。この重合物Aは、主鎖A1と、液晶部A21を含む側鎖A2とを有している。この重合物Aについては、後に詳述する。
【0020】
以下では、1つの画素空間71について取り上げ、各部の構成について順次説明する。なお、複数の画素空間71において、以下の各部の構成は同様である。
画素空間71の底面および天井面を画成する第1の基板1および第2の基板2は、それぞれ、シート状(平板状)の部材で構成され、これらの間に配される各部材を支持および保護する機能を有する。
各基板1、2は、それぞれ、可撓性を有するもの、硬質なもののいずれであってもよいが、可撓性を有するものであるのが好ましい。可撓性を有する各基板1、2を用いることにより、可撓性を有する表示装置20、すなわち、例えば電子ペーパーを構築する上で有用な電気泳動表示装置20を得ることができる。
【0021】
また、各基板1、2を可撓性を有するものとする場合、その構成材料としては、それぞれ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリアミド(例:ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6−12、ナイロン6−66)、熱可塑性ポリイミド、芳香族ポリエステル等の液晶ポリマー、ポリフェニレンオキシド、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルイミド、ポリアセタール、スチレン系、ポリオレフィン系、ポリ塩化ビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリブタジエン系、トランスポリイソプレン系、フッ素ゴム系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0022】
このような各基板1、2の平均厚さは、それぞれ、構成材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、可撓性を有するものとする場合、20〜500μm程度であるのが好ましく、40〜200μm程度であるのがより好ましい。これにより、電気泳動表示装置20の柔軟性と強度との調和を図りつつ、電気泳動表示装置20の小型化(特に、薄型化)を図ることができる。
【0023】
また、基板2は、例えば薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor;TFT)等のスイッチング素子を含む回路(図示せず)を有している。
これらの各基板1、2のうち、第1の基板1の内部には、複数の画素空間71に跨る層状の共通電極(第1の電極)3が設けられている。
【0024】
一方、第2の基板2の内部には、各画素空間71に対応して、それぞれ層状の画素電極(第2の電極)4が設けられている。
そして、各画素電極4は、それぞれスイッチング素子に接続されている。これにより、各画素空間71の各電極3、4間には、それぞれ個別に電圧を印加することができる。
なお、共通電極3も、画素電極4と同様に複数に分割されていてもよい。
また、電気泳動表示装置20は、共通電極3および画素電極4がそれぞれストライプ状の電極となった、いわゆる「単純マトリックス駆動方式」であってもよい。
【0025】
各電極3、4の構成材料としては、それぞれ、実質的に導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、コバルト、白金、金、銀、モリブデン、タンタルまたはこれらを含む合金等の金属材料、カーボンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレン等の炭素系材料、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリ(p−フェニレン)、ポリ(p−フェニレンビニレン)、ポリフルオレン、ポリカルバゾール、ポリシランまたはこれらの誘導体等の電子導電性高分子材料、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエチレンオキシド、ポリビニルブチラール、ポリビニルカルバゾール、酢酸ビニル等のマトリックス樹脂中に、各種イオン性物質を分散させたイオン導電性高分子材料、インジウム錫酸化物(ITO)、フッ素ドープした錫酸化物(FTO)、錫酸化物(SnO)、インジウム酸化物(IO)等の導電性酸化物材料のような各種導電性材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0026】
その他、各電極3、4の構成材料としては、それぞれ、例えば、ガラス材料、ゴム材料、高分子材料等の導電性を有さない材料中に、金、銀、ニッケル、カーボン等の導電性材料(導電性粒子)を混合して、導電性を付加したような各種複合材料も使用することができる。
このような複合材料の具体例としては、例えば、ゴム材料中に導電性材料を混合した導電性ゴム、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系等の接着剤組成物中に導電性材料を混合した導電性接着剤または導電性ペースト、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、ナイロン(ポリアミド)、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、アクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ウレタン系樹脂等のマトリックス樹脂中に導電性材料を混合した導電性樹脂等が挙げられる。
このような電極3、4の平均厚さは、それぞれ、構成材料等により適宜設定され、特に限定されないが、0.05〜10μm程度であるのが好ましく、0.05〜5μm程度であるのがより好ましい。
【0027】
なお、各基板1、2および各電極3、4のうち、表示面側に配置される基板および電極(本実施形態では、第1の基板1および共通電極3)は、それぞれ、光透過性を有するもの、すなわち、実質的に透明(無色透明、有色透明または半透明)とされる。これにより、後述する電気泳動分散液10中における電気泳動粒子5の状態、すなわち電気泳動表示装置20に表示された情報(画像)を目視により容易に認識することができる。
なお、各電極3、4は、前述したような材料の単体からなる単層構造のものの他、例えば、複数の材料を順次積層したような多層積層構造のものであってもよい。すなわち、各電極3、4は、それぞれ、例えば、ITOで構成される単層構造であってもよく、ITO層とポリアニリン層との2層積層構造とすることもできる。
【0028】
各基板1、2の間には、それらの縁部に沿って枠状の封止部7が設けられている。この封止部7により、電気泳動分散液10を充填してなる空間は、気密的に封止されている。これにより、電気泳動表示装置20内への水分の浸入を防止して、電気泳動表示装置20の表示性能の劣化を防止することができる。
また、前述したように、枠状の封止部7の内側には、格子状をなす隔壁72が設けられている。この隔壁72により、枠状の封止部7の内側の空間がマトリックス状の複数の画素空間71に分割され、各画素空間71がそれぞれ気密的に封止される。
【0029】
このような封止部7および隔壁72を構成する材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂のような熱可塑性樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂のような熱硬化性樹脂等の各種樹脂材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、封止部7および隔壁72は、その厚さ(高さ)に応じて、各基板1、2間の離間距離を制御することができる。
【0030】
各基板1、2間の離間距離は、特に限定されないが、10〜500μm程度であるのが好ましく、40〜100μm程度であるのがより好ましい。この程度の離間距離を各基板1、2間に確保していれば、電気泳動表示装置20の厚さが厚くなり過ぎるのを防止しつつ、表示面側から見たとき、電気泳動分散液10を介して、第2の基板2の色が透けて見えてしまうのを防止することができる。その結果、電気泳動表示装置20における表示コントラストが低下するのを防止することができる。
【0031】
また、格子状をなす隔壁72の格子間隔(隣接する隔壁72同士の離間距離)は、電気泳動表示装置20における画素のサイズ(画素空間71の平面視のサイズ)に等しい。この画素のサイズは、表示の内容に応じて適宜設定され、特に限定されないが、50〜1000μm程度であるのが好ましく、100〜400μm程度であるのがより好ましい。これにより、情報の表示に際して十分な精細度を得ることができる。
【0032】
このような画素空間71の天井面(第1の基板1の下面)および底面(第2の基板の上面)には、それぞれ、重合物(液晶高分子)Aの液晶部A21を配向させるための配向膜91および配向膜92が設けられている。各配向膜91、92は、それぞれの表面に、互いに平行に形成された複数の溝を有しており、各溝は、例えば図1中紙面手前側から奥側に向けて延在している(形成されている)。このような溝を形成することにより、液晶部A21を、その分子軸が前記溝の形成方向と平行になるように配向させることができる。
このような各配向膜91、92の構成材料としては、特に限定されず、例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリエステル等の有機系材料、酸化ケイ素等の無機系材料、LB(Langmuir Blodgett)膜等が挙げられる。
【0033】
また、配向膜91の形成方法としては、例えば、第1の基板1上に前述したような有機系材料を成膜した後、この膜にラビング処理を施す方法等の他、酸化ケイ素等の無機系材料を斜めに蒸着する方法(斜方蒸着法)、スプレー熱分解法により無機系材料を成膜する方法、レーザー重合法、LB法、ポリイミド膜に偏光紫外線を照射する方法等のラビング処理を伴わない方法等が挙げられる。配向膜92についても、これと同様である。
【0034】
以上のような画素空間71には、電気泳動分散液10が封入されている。
この電気泳動分散液10は、2種の電気泳動粒子5(第1の粒子5aおよび第2の粒子5b)と、光反射粒子8とを液相分散媒6に分散(懸濁)してなるものである。なお、光反射粒子8については、後に詳述する。
電気泳動粒子5や光反射粒子8の液相分散媒6への分散は、例えば、ペイントシェーカー法、ボールミル法、メディアミル法、超音波分散法、撹拌分散法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて行うことができる。
【0035】
液相分散媒6としては、比較的高い絶縁性を有するものが好適に使用される。
かかる液相分散媒6としては、例えば、ベンゼン、トルエン、o−キシレン、m−キシレン、p−キシレン、混合キシレン、エチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼン、フェニルキシリルエタンなどのベンゼン系炭化水素などの芳香族炭化水素類;n−ヘキサン、n−デカンなどのパラフィン系炭化水素、アイソパー(Isopar、エクソン化学社製)などのイソパラフィン系炭化水素、1−オクテン、1−デセンなどのオレフィン系炭化水素、シクロヘキサン、デカリンなどのナフテン系炭化水素などの脂肪族炭化水素類;ケロシン、石油エーテル、石油ベンジン、リグロイン、工業ガソリン、コールタールナフサ、石油ナフサ、ソルベントナフサなどの石油や石油由来の炭化水素混合物;ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン、1,1,1−トリクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、トリクロロフルオロエタン、テトラブロモエタン、ジブロモテトラフルオロエタン、テトラフルオロジヨードエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、トリクロロフルオロエチレン、クロロブタン、クロロシクロヘキサン、クロロベンゼン、o−ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、ヨードメタン、ジヨードメタン、ヨードホルムなどのハロゲン化炭化水素類;ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどのシリコーンオイル類(有機シリコーンオイル類);ハイドロフルオロエーテルなどのフッ素系溶剤(有機フッ素系溶剤);からなる群より選択される少なくとも1種が好適に用いられる。
また、前述した有機溶媒の中でも、沸点、および引火点が高く、毒性もほとんどないことから、ヘキシルベンゼン、ドデシルベンゼンなどの長鎖アルキルベンゼン、フェニルキシリルエタンなどが特に好ましく用いられる。
【0036】
なお、液相分散媒6には、前述したものの他、例えば、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、シクロへキサン、メチルシクロへキサン等の脂環式炭化水素類、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族複素環類、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、カルボン酸塩類等を用いることができる。
【0037】
また、液相分散媒6(電気泳動分散液10)中には、必要に応じて、例えば、電解質、アルケニルコハク酸エステルのような界面活性剤(アニオン性またはカチオン性)、金属石鹸、樹脂材料、ゴム材料、油類、ワニス、コンパウンド等の粒子からなる荷電制御剤、シラン系カップリング剤等の分散剤、潤滑剤、安定化剤等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。
さらに、液相分散媒6を着色する場合には、液相分散媒6に、必要に応じて、アントラキノン系染料、アゾ系染料、インジゴイド系染料等の各種染料を溶解するようにしてもよい。
【0038】
2種の電気泳動粒子5、すなわち、第1の粒子5aおよび第2の粒子5bは、互いに反対の極性に帯電している。そのため、これら粒子5a、5bに、電界が作用すると(一対の電極3、4間に電圧が印加されると)、粒子5a、5bは、液相分散媒6中を互いに反対方向へ電気泳動する。
以下では、説明の便宜上、第1の粒子5aが正に帯電する粒子であり、第2の粒子5bが負に帯電する粒子である場合について代表して説明する。なお、この逆であってもよい。
【0039】
また、第1の粒子5aおよび第2の粒子5bは、互いに異なる色をなしている。第1の粒子5aおよび第2の粒子5bの色としては、互いに異なっていれば、それぞれ、特に限定されず、例えば、白色、黒色またはこれらの中間色(灰色)などの無彩色や、赤色、青色、緑色などの有彩色が挙げられる。
また、第1の粒子5aおよび第2の粒子5bの色の組み合わせとしては、特に限定されず、例えば、第1の粒子5aが白色の粒子、第2の粒子5bが黒色の粒子の組み合わせや、第1の粒子5aが青色の粒子、第2の粒子5bが赤色の粒子の組み合わせ等が挙げられる。これらの中でも、特に、第1の粒子5aおよび第2の粒子5bの色の組み合わせとしては、白色と黒色の組み合わせが好ましい。これにより、電気泳動表示装置20において、白黒表示が可能となり、表示コントラストが向上する。
【0040】
以下では、説明の便宜上、第1の粒子5aが白色の粒子であり、第2の粒子5bが黒色の粒子であるものについて説明する。なお、この逆であってもよい。また、以下では、説明の便宜上、第1の粒子5aを「白色粒子5a」とも言い、第2の粒子5bを「黒色粒子5b」とも言う。
このような電気泳動粒子5(白色粒子5aおよび黒色粒子5b)には、電荷を有するものであれば、いかなるものをも用いることができ、特に限定はされないが、顔料粒子、樹脂粒子またはこれらの複合粒子のうちの少なくとも1種が好適に使用される。これらの粒子は、製造が容易であるとともに、帯電量の制御を比較的容易に行うことができるという利点を有している。
【0041】
顔料粒子を構成する顔料としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック、チタンブラック等の黒色顔料、酸化チタン、酸化アンチモン等の白色顔料、モノアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、黄鉛等の黄色顔料、キナクリドンレッド、クロムバーミリオン等の赤色顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー等の青色顔料、フタロシアニングリーン等の緑色顔料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このうち、顔料粒子としては、酸化チタン粒子が白色粒子5aとして好適に用いられ、チタンブラック粒子が黒色粒子5bとして好適に用いられる。これらの粒子は、電界に対する応答性が高く、また、反射率の差が大きいことから、コントラストの高い表示を可能にするものである。
【0042】
また、樹脂粒子を構成する樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン、ポリエステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、複合粒子としては、例えば、顔料粒子の表面を樹脂材料や他の顔料で被覆したもの、樹脂粒子の表面を顔料で被覆したもの、顔料と樹脂材料とを適当な組成比で混合した混合物で構成される粒子等が挙げられる。
顔料粒子の表面を他の顔料で被覆した粒子としては、例えば、酸化チタン粒子の表面を、酸化珪素や酸化アルミニウムで被覆したものを例示することができる。
【0043】
また、電気泳動粒子5の形状は、特に限定されないが、球形状であるのが好ましい。
電気泳動粒子5は、液相分散媒6中での分散性を考慮した場合、より小さいものが好適に用いられ、具体的には、その平均粒径が、10〜500nm程度であるのが好ましく、50〜300nm程度であるのがより好ましい。電気泳動粒子5の平均粒径を前記範囲とすることにより、電気泳動粒子5同士の凝集や、液相分散媒6中における沈降を確実に防止して、液相分散媒6中に分散させることができ、その結果、電気泳動表示装置20の表示品質の劣化を好適に防止することができる。
【0044】
なお、本実施形態のように、2種の異なる粒子を用いる場合、2種の粒子の平均粒径を異ならせること、特に、白色粒子5aの平均粒径を黒色粒子5bの平均粒径より大きく設定するのが好ましい。これにより、電気泳動表示装置20の表示コントラストをより向上させることや、保持特性を向上させることができる。
具体的には、黒色粒子5bの平均粒径を50〜200nm程度、白色粒子5aの平均粒径を150〜300nm程度とするのが好ましい。
【0045】
また、電気泳動粒子5の比重は、液相分散媒6の比重とほぼ等しくなるように設定されているのが好ましい。これにより、電気泳動粒子5は、電極3、4間への電圧の印加を停止した後においても、液相分散媒6中において一定の位置に長時間滞留することができる。
すなわち、このような電気泳動表示装置20は、電極3、4間に電圧を印加した際の表示状態を、電圧の印加を止めた後でも維持し得る性質(双安定性)を有するものである。
【0046】
かかる性質(双安定性)を有する電気泳動表示装置20では、表示の切り替え時のみ、電極3、4間に電圧を印加すればよいため、消費電力を大幅に低減することが可能となる。また、電気泳動粒子5が安定的に泳動するため、電圧を小刻みに印加する等、多様なパターンで電圧を印加することができ、電気泳動粒子5の泳動をより複雑に制御することが可能となる。このため、表示品位の向上を図ることができる。
【0047】
次いで、光反射粒子8について説明する。
光反射粒子8は、前述したように、平坦な面を有する鱗片状(板状)をなしている。このような光反射粒子8の両面は、それぞれ、電気泳動粒子5よりも光反射率の高いものである。
電気泳動分散液10にこのような光反射粒子8が含まれていると、光反射粒子8の平坦な面において、表示面側から電気泳動表示装置20内に入射した外光を効率よく反射することができる。これにより、表示の反射率を高めることができ、電気泳動表示装置20における表示の明るさおよびコントラストを高めることができる。
【0048】
このような光反射粒子8は、無帯電の状態で、液相分散媒6中に分散している。そのため、光反射粒子8は、一対の電極3、4間に生じた電界の影響を受けず、画素空間71に電界が生じているか否かに関わらず、液相分散媒6中の全体にわたって分散している。これにより、後述するように、表示コントラストが向上する。
このような光反射粒子8の構成材料としては、例えば、アルミニウム、銀、金、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン等の金属材料、またはこれらの金属材料の1種または2種以上を含む合金(または混合物)、シリコン、酸化ケイ素、炭化ケイ素、窒化ケイ素等の各種シリコン系材料、グラファイト、ダイヤモンド等の各種炭素系材料、石英ガラス等の各種ガラス材料、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセテート、ポリイミド等の各種樹脂材料、アルミナ、ジルコニア等の各種セラミックス材料等が挙げられる。
【0049】
このうち、光反射粒子8には、金属光沢を有する金属材料を主材料とするものが好ましく、アルミニウムまたは銀を主材料とするものがより好ましく用いられる。これらの材料は、優れた金属光沢を有するため、光反射率の高い光反射粒子8が得られる。また、これらの材料は、反射光の色の偏りが少ないので、例えば、白色光を入射した場合には、白色に近い反射光が得られる。これにより、光反射粒子8の反射光の色が、電気泳動粒子5の反射光の色に影響を与えるのを抑制することができる。
【0050】
このような光反射粒子8は、その平均長さ(大きさ)が、前述した電気泳動粒子5の粒径より大きく、かつ、可視光の最も長波長側の波長(約800nm)より大きい。このような大きさの光反射粒子8は、入射した外光を全反射することができるため、その光反射率を特に高めることができる。
また、光反射粒子8の平均長さは、1〜40μm程度であるのが好ましく、2〜20μm程度であるのがより好ましい。光反射粒子8がこのような大きさであれば、光反射粒子8において、十分な光反射率が維持されるとともに、液相分散媒6中での動きが著しく悪化するのを防止することができる。また、液相分散媒6中において、光反射粒子8が急速に沈降したり浮上したりするのを防止することができる。
【0051】
また、光反射粒子8の平均厚さは、10〜300nm程度であるのが好ましく、20〜200nm程度であるのがより好ましい。光反射粒子8の平均厚さを前記範囲内とすることにより、光反射粒子8の重量が著しく増加するのを防止しつつ、光反射粒子8の厚さが薄くなり過ぎて、光透過率が著しく増大してしまうのを防止することができる。すなわち、このような厚さの光反射粒子8は、十分な光反射率を有するものとなる。
【0052】
なお、一対の電極3、4間(共通電極3と画素電極4との間)に電位差がないときに、液相分散媒6に対して光反射粒子8が沈降および浮上しないように、光反射粒子8の大きさおよび厚さの少なくとも一方が調整されているのが好ましい。このようにすれば、光反射粒子8は、液相分散媒6中において外力が加わらなければ、その位置を保持することができる。このため、電気泳動表示装置20は、電力を消費することなく、長期にわたって表示状態を維持することができる。
【0053】
また、このような光反射粒子8は、例えば、金属箔等の箔体を粉砕することによって作製することができる。このような方法で作製された光反射粒子8は、複数の光反射粒子8における厚さを容易に均一化することができる。このため、各光反射粒子8において、液相分散媒6に対する分散性や個々の反射特性のバラツキを抑制することができる。
上記粉砕方法としては、例えば、ジェットミル、ボールミル、リングロールミル、ハンマーミル等が挙げられ、これらを組み合わせて用いることもできる。
【0054】
図2に示すように、光反射粒子8の表面には、複数の重合物(重合体)Aが連結している。各重合物Aは、主鎖A1と、主鎖A1に連結する複数の側鎖A2とを有している。さらに、側鎖A2は、液晶性を示す液晶部A21と、液晶部A21と主鎖A1とを連結する連結部A22とを有している。すなわち、重合物Aは、いわゆる「側鎖型液晶高分子」であるとも言える。
【0055】
主鎖A1は、直鎖状をなしている。この主鎖A1は、その一端部において、光反射粒子8の面に連結(結合)している。このような主鎖A1としては、比較的柔軟であることが好ましい。これにより、各液晶部A21を光反射粒子8の周囲(近傍)に留めておきながら、液晶部A21を配向させることができる。そのため、後述するような白色表示状態と黒色表示状態との切り替え等、電気泳動表示装置20の表示特性および操作性がそれぞれ向上する。
【0056】
主鎖A1は、側鎖A2を任意の箇所に導入し得るように、後述するようなリビング重合で合成し得るものであるのが好ましい。このような主鎖A1としては、特に限定されないが、リビング重合による合成し易さを考慮した場合、その主骨格が脂肪族炭化水素鎖(特に、飽和炭化水素鎖)で構成されるものが好適に用いられる。
また、主骨格を脂肪族炭化水素鎖(特に、飽和炭化水素鎖)で構成した場合、主鎖A1の柔軟性が十分なものとなり、各液晶部A21を光反射粒子8の近傍でより円滑に配向させることができる。
【0057】
一方、各側鎖A2は、前述したように、液晶性を示す液晶部A21と、液晶部A21と主鎖A1とを連結する連結部A22とを有している。このような側鎖A2は、例えば、単体で液晶となるような分子(以下、この分子を「液晶分子B」とも言う)を連結部A22を介して主鎖A1に連結することにより形成されたものである。
各側鎖A2をこのような構成とすることにより、1つの重合物A中に、複数の液晶部A21を含ませることができる。そのため、光反射粒子8の近傍に、十分な数の液晶部A21を存在させることができ、後述するような光反射粒子8の配向がより円滑に行われることとなる。
本実施形態では、側鎖A2が連結部A22を有しているため、液晶部A21と主鎖A1とを十分に離間させることができる。そのため、各液晶部A21を円滑に配向させることができる。
【0058】
このような連結部A22は、直鎖状をなしている。また、この連結部A22は、その一端部において、主鎖A1に連結し、他端部において液晶部A21と連結している。このような主鎖A1としては、比較的柔軟であることが好ましい。連結部A22を柔軟なものとすることにより、液晶部A21を光反射粒子8の近傍にて、比較的自由に変位(配向)させることができる。そのため、後述するように、表示色の切り替え等、電気泳動表示装置20の表示特性が向上する。特に、主鎖A1および連結部A22をともに柔軟性のあるものとすることにより、前記効果がより顕著となる。
【0059】
このような連結部A22としては、例えば、その主骨格が脂肪族炭化水素鎖(特に、飽和炭化水素鎖)で構成されるものが好適に用いられる。これにより、連結部A22の柔軟性が十分なものとなり、各液晶部A21を光反射粒子8の近傍でより円滑に配向させることができる。
より具体的には、連結部A22として、例えば、−(CH−、−(CHO−、−O(CHO−等が挙げられる。なお、前記mは、1以上の任意の整数を示す。
【0060】
また、連結部A22は、これを構成する原子のうち、直鎖状に連結する炭素原子の数が個数、すなわち主鎖A1と液晶部A21との間に存在する炭素数が5〜18程度であることが好ましく、10〜15程度であることがより好ましい。これにより、連結部A22の柔軟性を十分なものとしつつ、各液晶部A21を光反射粒子8の近傍に留めておくことができる。
【0061】
このような連結部A22を介して主鎖A1に連結する液晶部A21は、電界の方向に配向する性質を有している。液晶部A21(すなわち、液晶分子B)は、ネマチック型液晶、スメクチック型液晶等の配向し得る液晶であればよいが、一対の電極3、4間に電位差があるとき、その分子軸(長軸)が、前記電極の法線方向に沿うように配向する配向特性を有するのが好ましい。すなわち、液晶部A21は、電界の方向に沿って配向する、いわゆる正の誘電異方性を有するものが好ましい。これにより、後に詳述するが、液晶部A21は、電気泳動粒子5の泳動方向を最適化するのに寄与する。
【0062】
このような液晶部A21(液晶分子B)としては、例えば、フェニルシクロヘキサン誘導体液晶、ビフェニル誘導体液晶、ビフェニルシクロヘキサン誘導体液晶、テルフェニル誘導体液晶、フェニルエーテル誘導体液晶、フェニルエステル誘導体液晶、ビシクロヘキサン誘導体液晶、アゾメチン誘導体液晶、アゾキシ誘導体液晶、ピリミジン誘導体液晶、ジオキサン誘導体液晶、キュバン誘導体液晶等が挙げられる。
【0063】
また、液晶部A21は、液相分散媒6に対して親液性を示す官能基を有するものが好ましい。このような官能基を有する液晶部A21は、電気泳動分散液10中において安定的に分散することができる。
具体的には、例えば、液相分散媒6がフッ素系分散媒である場合には、液晶部A21として、前述したようなネマチック液晶分子に、モノフルオロ基、ジフルオロ基、トリフルオロ基、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基等のフッ素系置換基を導入したものが好ましく用いられる。
【0064】
主鎖A1に結合している液晶部A21の数は、特に限定されないが、1〜20程度であるのが好ましく、5〜10程度であるのがより好ましい。液晶部A21(側鎖A2)がかかる個数で主鎖A1に結合していると、光反射粒子8の周囲に、光反射粒子8を配向させるのに十分な数の液晶部A21を存在させることができる。
以上のような重合物Aの光反射粒子8に結合している密度は、特に限定されないが、0.5〜5nm/個程度であるのが好ましく、1〜3nm/個であるのがより好ましい。これにより、液晶部A21同士の間隔を十分に保ちつつ、各液晶部A21を光反射粒子8の周囲(近傍)に存在させることができる。
【0065】
以上、重合物Aの構成について説明した。
ここで、重合物Aに含まれる各液晶部A21は、図3(a)に示すように、共通電極3および画素電極4間に電圧が印加されていない状態では、画素空間71の天井面および底面に形成された一対の配向膜91、92により、画素空間71の天井面および底面にほぼ平行に配向している。そのため、これに対応して、光反射粒子8も、その面が画素空間71の天井面および底面にほぼ平行となるように配向する。
【0066】
一方、各液晶部A21は、図3(c)に示すように、共通電極3および画素電極4間に電圧が印加されている状態では、電界の方向に配向している。そのため、各液晶部A21の配向に対応して、光反射粒子8も、その面が電界の方向にほぼ直交するように配向することとなる。すなわち、図3(b)に示すような状態を介して図3(c)に示す状態となる。
【0067】
以上のような光反射粒子8は、例えば、次のようにして製造することができる。
まず、光反射粒子8を用意し、その面(両面)上に反応層を形成する。ここでは、重合物Aとして図4に示すものを、リビング重合を用いて形成する場合を一例に挙げて説明する。図4〜6は、それぞれ、重合物Aの形成を説明するための模式図である。なお、以下の説明では、図4〜6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、図4中のnは、1以上の整数であり、特に限定されないが、10〜200であるのが好ましく、20〜100であるのがより好ましい。
【0068】
<1>まず、後述する触媒により活性化される化学結合と、光反射粒子8に化学結合する結合性基Xとを有する下記化合物(A)を重合開始剤37として用意する。
【0069】
【化1】

【0070】
ここで、光反射粒子8が金、銀、銅等の金属(貴金属)材料、またはこれらの金属材料の1種または2種以上を含む合金で構成される場合には、結合性基Xには、例えば、チオール基(SH基)、ジスルフィド基(−SS−基)、モノスルフィド基(−S−基)、カルボキシル基(−COOH基)等が選択される。
また、光反射粒子8がアルミニウム、ニッケル、クロム、錫、亜鉛、インジウム、チタン等の金属材料、またはこれらの金属材料の1種または2種以上を含む合金で構成される場合には、シランカップリング剤が好適に用いられ、結合性基Xには、例えば、加水分解でシラノール基(Si−OH基)を与える、−Si(OCH基、−Si(OC等が選択される。
【0071】
例えば、結合性基XがSH基の場合、このSH基を光反射粒子8の面に反応させる。これにより、重合開始剤37が光反射粒子8上に、金属−チオール結合(−S−)を介して結合(連結)する。
これは、例えば、上記化合物(A)で表わされる重合開始剤37を含む液体を光反射粒子8の面に選択的に接触させること等により行うことができる。なお、この溶液を光反射粒子8の面に選択的に接触させる方法には、各種液相生成膜法が用いられるが、中でも、液的吐出法が好適に用いられる。
このような工程により、図5に示すように、重合開始剤37が光反射粒子8の面に固定化(固相化)される。なお、図5では、光反射粒子8の一方の面について図示しているが、他方の面についても同様の処理を行うものである。
【0072】
次いで、液晶部A21(液晶分子B)が連結したモノマーを用意する。
このモノマーが有する重合基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、スチリル基のような炭素−炭素2重結合を含むもの、ノルボルニル基、エポキシ基、オキセタニル基等の開環反応を生起するもの等が挙げられるが、比較的重合活性が高く、安価という点では、(メタ)アクリロイル基を含むモノマーを用いることが好ましい。このモノマーの具体例としては、例えば、下記化学式(B)で表わされる化合物等が挙げられる。
【0073】
【化2】

[式中、LCは、液晶部(液晶分子)を指す。また、Rは、水素原子またはメチル基を、Rは、アルキレン基をそれぞれ表す。]
【0074】
これらのうち、例えば、液晶部A21を含む前記化学式(B)で表わされる化合物は、例えば、以下に示すようにして合成することができる。
まず、ジクロロメタン(DCM)中に液晶分子Bを溶解した後、NaFe(CO)を添加して混合し、その後、酸素ガスを供給することにより、液晶分子Bの一部に水酸基を導入する。このとき、液晶分子Bに水酸基を導入する際の反応条件としては、反応温度を0℃とし、反応時間を30分間とする。
【0075】
次に、水酸基が導入された液晶分子Bを、ジエチルエーテルまたはテトラヒドロフラン(THF)等のエーテル中に溶解する。そして、これにより得られる溶液中に、ピリジン、トリメチルアミンまたはジメチルアミン等の塩基性触媒を添加し、その後、置換または無置換の塩化アクリロイルを添加することにより、液晶分子Bの末端に置換または無置換のアクリロイル基を導入する。
以上のようにして、液晶部A21を含む前記化学式(B)で表される化合物が得られる。
【0076】
次に、図6に示すように、光反射粒子8の面に固定化された重合開始剤37(前記化学式(A)で表される化合物)を基点として、液晶部A21(液晶分子B)が連結した前記モノマーをリビング重合(特に、原子移動ラジカル重合:ATRP)により重合させて重合物Aを合成する。
このリビング重合は、触媒を含む溶液を、光反射粒子8の表面に供給した後、この溶液に、前記モノマーを添加すること等により行うことができる。
【0077】
触媒には、重合物の生長過程において、生長末端を活性化とすることができるものであればよく、例えば、遷移金属のハロゲン化物、水酸化物、酸化物、アルコキシド、シアン化物、シアン酸塩、チオシアン酸塩、アジド化物等が挙げられるが、ビピリジル、ホスフィン、一酸化炭素等の遷移金属の配位子として一般的なものを有する遷移金属錯体でもよい。これらのうち遷移金属のハロゲン化物を主成分とするものが好適である。遷移金属のハロゲン化物を主成分とする触媒は、リビング重合に適したものであることから好ましい。また、比較的安価かつ入手が容易であり、また取り扱いが容易であることからも好ましい。
【0078】
また、遷移金属としては、例えば、Cu、Fe、Au、Ag、Hg、Pd、Pt、Co、Mn、Ru、Mo、NbおよびZn等が挙げられる。
重合物Aの合成の反応場として用いる溶媒としては、例えば、水、メタノール、エタノール、ブタノールのようなアルコール類、o−ジクロロベンゼンのようなハロゲン化芳香族炭化水素類、ジエチルエーテルやテトラヒドロフラン等のエーテル類が挙げられる。
【0079】
重合開始剤37および触媒の存在下で、前記モノマーを作用させることにより、まず重合開始剤37に含まれる結合が触媒により活性化され、モノマーと化合し、重合開始剤37の、触媒により活性化された結合に含まれる原子がモノマー側に移動し、触媒により活性化される結合が成長末端として再生する。
例えば、モノマーとして前記化学式(B)で表される化合物を用い、触媒としてCuBrを用いることにより、図6に示すように、重合開始剤37にモノマーが化合するとともに、先端部(上端部)に成長末端が形成される。
【0080】
ここで、リビング重合では、重合物(液晶高分子)Aの成長過程において、成長末端が常に重合活性を有するため、モノマーが消費され、重合反応が停止した後、新たにモノマーを加えると重合反応がさらに進行する。
したがって、反応系に供給するモノマーの量を変化させることによって、重合物A中の液晶部A21の数を精度よく制御することができる。これにより、所望の分子構造を有する重合物Aを光反射粒子8の面に、簡単な工程で形成することができる。また、得られる重合物A同士の間における特性のバラツキを抑えることができる。
【0081】
前記溶液(反応液)は、重合反応を開始する前に、脱酸素処理を行っておくのが好ましい。脱酸素処理としては、例えば、アルゴンガス、窒素ガス等の不活性ガスによる真空脱気後の置換やパージ処理等が挙げられる。
また、重合反応に際して、上記の溶液の温度を所定の温度(モノマーおよび触媒が活性化する温度)まで加熱(加温)することにより、モノマーの重合反応をより迅速かつ確実に行うことができる。
この加熱の温度は、液晶部A21の耐熱温度や触媒の種類等によっても若干異なり、特に限定されないが、20〜50℃程度であるのが好ましい。また、加熱の時間(反応時間)は、加熱の温度を前記範囲とする場合、10〜20時間程度であるのが好ましい。
以上の工程により、光反射粒子8の表面に連結する重合物Aが得られる。
【0082】
以上、電気泳動表示装置20の構成について詳細に説明した。このような電気泳動表示装置20は、例えば、以下のようにして作動する。
−電気泳動表示装置20の作動−
このような電気泳動表示装置20は、次のようにして作動する。
以下、電気泳動表示装置20の作動(動作)方法について説明する。
図7および図8は、それぞれ、図1に示す電気泳動表示装置の動作方法を説明するための模式図である。なお、以下の説明では、図7、図8中の上側を「上」、下側を「下」と言う。また、以下では、説明の便宜上、白色粒子5aが正に帯電しており、黒色粒子5bが負に帯電している場合について代表して説明する。
【0083】
≪白色表示状態≫
まず、表示色として白色(白色粒子5aの色彩)が視認される状態について説明する。
図7(a)に示すように、共通電極3が負電位、個別電極4が正電位となるように、共通電極3および個別電極4間に電圧を印加すると、同図の縦方向(上下方向)に電界が生じる。この電界の作用により重合物(液晶高分子)Aの液晶部A21が、縦方向に配向する。ところで、液晶部A21は、光反射粒子8の近傍に位置しているため、液晶部A21が前記のように配向すると、それに伴って光反射粒子8も縦方向に配向する。すなわち、共通電極3および個別電極4間に電圧を印加すると、図7(a)に示すように、光反射粒子8は、その法線方向(面に垂直な方向)が電界方向と直交するように配向する。なお、前述したように、光反射粒子8は、無帯電状態であるため、前記電界が生じている状態であっても、液相分散媒6中に全体にわたって分散している。
【0084】
また、このような電圧を印加すると、光反射粒子8の配向が起こるとともに、白色粒子5aおよび黒色粒子5bがそれぞれ液相分散媒6中を泳動(電気泳動)する。具体的には、白色粒子5aは、正に帯電した粒子であるため、負電位となっている共通電極3に電気的に吸着されるように、共通電極3側(上側)に向けて泳動し、一方の黒色粒子5bは、負に帯電する粒子であるため、正電位となっている個別電極4に電気的に吸着されるように、個別電極4側(下側)に向けて泳動する(図7(a)中の矢印参照)。
【0085】
このような電圧印加状態を維持すると、図7(b)に示すように、白色粒子5aが画素空間71の天井面(配向膜91の表面)に到達、すなわち、共通電極3付近に集合する。一方の黒色粒子5bが画素空間71の底面に到達する。言い換えれば、この状態では、画素空間71内の下側に黒色粒子5bが集中する層、上側に白色粒子5aが集中する層、これら層の間に光反射粒子8が分散する層、の3層が形成されているとも言える。
【0086】
なお、電気泳動粒子5が移動(泳動)する際は、液晶部A21が縦方向に配向しているため、液相分散媒6において、液晶部A21の配向方向に直交する方向の粘性が増大するが、配向方向に平行な方向(粒子5a、5bの泳動方向)の粘性はほとんど変化しない。すなわち、この状態では、白色粒子5aは上側へ、黒色粒子5bは下側へ、それぞれ問題なくスムーズ(円滑)に移動することができる。一方、電気泳動粒子5は左右に移動し難くなるので、電気泳動粒子5、特に白色粒子5aの偏在を防止することができる。その結果、図7(b)の上方から画素空間71を見たときに、当該画素空間71の全体を白色粒子5aで確実に覆うことができ、白色表示状態における光反射率の低下を確実に防止することができる。
また、液晶分子9の配向に伴って光反射粒子8も配向するため、光反射粒子8が移動中の電気泳動粒子5の移動を妨げることも防止される。
【0087】
図7(b)に示す状態となった後に、電圧の印加を解除すると、各液晶部A21は、その分子軸が配向膜91、92の溝と平行となるように配向する。このような各液晶部A21の配向に伴って、光反射粒子8も、図7(c)に示すように、その上側の面および下側の面がそれぞれ、共通電極3および個別電極4と対向するように配向する。
これにより、電気泳動表示装置20を上方(表示面側)から見ると、図7(c)に示すように、白色粒子5aの色が見えることとなり、表示色として白色が視認される。
なお、図7(c)に示す状態のように、液晶部A21が横方向に配向すると、液相分散媒6において、液晶部A21の配向方向に直交する方向(図7中の縦方向)の粘性が増大する。
【0088】
このようにして液相分散媒6の粘性が増大すると、電気泳動粒子5が上下に移動し難くなるため、電気泳動粒子5の位置の保持性が向上する。すなわち、一対の電極3、4間への電圧印加を停止した状態における表示メモリー性が向上するので、例えば、図7(c)に示す白色表示状態の表示メモリー性の向上を図ることができる。言い換えれば、電気泳動表示装置20においては、省電力化を図りつつ、表示色(白色)の経時変化を防止することができる。
また、光反射粒子8が、その面を共通電極3と対向させるようにして浮遊しているため、この光反射粒子8に、電気泳動粒子5の移動が阻害(邪魔)されることとなる。これによっても、前記表示メモリー性が向上する。
以上のような表示メモリー性の向上は、後述する黒色表示状態についても同様である。
【0089】
ここで、従来の電気泳動表示装置では、図7(c)に示す白色表示の際に、白色ではなく、やや灰色を帯びた色に見えることが問題となっていた。この主な原因としては、白色粒子5aの光反射率が低く、光を透過してしまうため、電気泳動表示装置20を図7(c)の上方から見たとき、白色粒子5aの背後にある黒色粒子5bの色が透けて見えることが考えられる。
【0090】
そこで、本発明では、電気泳動分散液10に、電気泳動粒子5に加え、光反射粒子8を混合することとした。電気泳動分散液10中の光反射粒子8は、白色粒子5aが共通電極3付近に集まった状態の白色表示の際に、白色粒子5aと黒色粒子5bとの間に位置し、かつ、その上側の面および下側の面が、それぞれ、共通電極3および個別電極4と対向するようになっている。
【0091】
そのため、この状態では、光反射粒子8の面が黒色粒子5bをより確実に覆うとともに、この面による反射光が確実に共通電極3(表示面)側を指向する。したがって、白色粒子5aを透過した透過光を確実に反射し、電気泳動表示装置20の使用者は、白色粒子5aによる反射光のみでなく、光反射粒子8による反射光も視認することになるため、結果として白色表示における光反射率が高くなる。その結果、電気泳動表示装置20の表示の明るさおよびコントラストを高めることができる。
【0092】
≪黒色表示状態≫
次いで、表示色として黒色(黒色粒子5aの色彩)が視認される状態について説明する。
例えば、前述した白色表示状態とした後に、図8(a)に示すように、共通電極3が正電位、個別電極4が負電位となるように、共通電極3および個別電極4間に電圧を印加する。すると、同図の縦方向(上下方向)に電界が生じ、この電界の作用により光反射粒子8が、その法線方向(面に垂直な方向)が電界方向と直交するように配向する(この原理は、前述の白色表示状態で説明したのと同様である)。
【0093】
また、このような電圧を印加すると、光反射粒子8の前記配向が起こるとともに、白色粒子5aおよび黒色粒子5bがそれぞれ液相分散媒6中を泳動(電気泳動)する。具体的には、白色粒子5aは、負電位となっている個別電極4に電気的に吸着されるように、個別電極4側(下側)に向けて泳動し、一方の黒色粒子5bは、正電位となっている共通電極3に電気的に吸着されるように、共通電極3側(上側)に向けて泳動する(図8(a)中の矢印参照)。
このような電圧印加状態を維持すると、図8(b)に示すように、白色粒子5aが個別電極4付近に集合し、一方の黒色粒子5bが共通電極3付近に集合する。
【0094】
図8(b)に示す状態となった後に、電圧の印加を解除すると、図8(c)に示すように、光反射粒子8が、その上側の面および下側の面がそれぞれ共通電極3および個別電極4と対向するように配向する。
これにより、電気泳動表示装置20を上方(表示面側)から見ると、図8(c)に示すように、黒色粒子5bの色が見えることとなり、表示色として黒色が視認される。
前述したように、黒色粒子5bは、光をほとんど透過しない。したがって、黒色表示は、その光反射率が十分に小さく、光反射粒子8が表示のコントラストを損なうおそれはない。
【0095】
なお、電気泳動粒子5が移動する際は、液晶部A21が縦方向に配向しているため、液相分散媒6において、液晶分子9の配向方向に直交する方向の粘性が増大するが、配向方向に平行な方向(粒子5a、5bの泳動方向)の粘性はほとんど変化しない。すなわち、この状態では、白色粒子5aは下側へ、黒色粒子5bは上側へ、それぞれ問題なくスムーズに移動することができ、よって、白色表示状態から黒色表示状態への切り替えをスムーズに行うことができる。また、液晶部A21の配向に伴って光反射粒子8も配向するため、光反射粒子8が移動中の電気泳動粒子5の移動を妨げることも防止される。
【0096】
以上のようにして、電気泳動表示装置20は、低電力化を図りつつ表示色の経時変化を防止し、高反射率でかつ高コントラストの表示が可能になる。特に、電気泳動表示装置20では、重合物(液晶高分子)Aを光反射粒子に連結させているため、多数の液晶部A21を光反射粒子8の近傍に留めておくことができる。そのため、各液晶部A21の配向に応じて、光反射粒子8をより円滑かつ確実に配向させることができる。すなわち、光反射粒子8の姿勢(向き)の制御をより精密に行うことができる。
このような構成において、電気泳動粒子5の泳動を、画素空間71ごとに制御することによって、電気泳動表示装置20の表示面側には、白色粒子5aおよび黒色粒子5bによる反射光に基づいて、所望の情報(画像)が表示される。
【0097】
<電子機器>
以上のような電気泳動表示装置20は、各種電子機器に組み込むことができる。以下、電気泳動表示装置20を備える本発明の電子機器について説明する。
<<電子ペーパー>>
まず、本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態について説明する。
図9は、本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
図9に示す電子ペーパー600は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成される本体601と、表示ユニット602とを備えている。
このような電子ペーパー600では、表示ユニット602が、前述したような電気泳動表示装置20で構成されている。
【0098】
<<ディスプレイ>>
次に、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態について説明する。
図10は、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図である。このうち、図10中(a)は断面図、(b)は平面図である。
図10に示すディスプレイ(表示装置)800は、本体部801と、この本体部801に対して着脱自在に設けられた電子ペーパー600とを備えている。なお、この電子ペーパー600は、前述したような構成、すなわち、図9に示す構成と同様のものである。
【0099】
本体部801は、その側部(図10(a)中、右側)に電子ペーパー600を挿入可能な挿入口805が形成され、また、内部に二組の搬送ローラ対802a、802bが設けられている。電子ペーパー600を、挿入口805を介して本体部801内に挿入すると、電子ペーパー600は、搬送ローラ対802a、802bにより挟持された状態で本体部801に設置される。
【0100】
また、本体部801の表示面側(図10(b)中、紙面手前側)には、矩形状の孔部803が形成され、この孔部803には、透明ガラス板804が嵌め込まれている。これにより、本体部801の外部から、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を視認することができる。すなわち、このディスプレイ800では、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を、透明ガラス板804において視認させることで表示面を構成している。
【0101】
また、電子ペーパー600の挿入方向先端部(図10中、左側)には、端子部806が設けられており、本体部801の内部には、電子ペーパー600を本体部801に設置した状態で端子部806が接続されるソケット807が設けられている。このソケット807には、コントローラー808と操作部809とが電気的に接続されている。
このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600は、本体部801に着脱自在に設置されており、本体部801から取り外した状態で携帯して使用することもできる。
また、このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600が、前述したような電気泳動表示装置20で構成されている。
【0102】
なお、本発明の電子機器は、以上のようなものへの適用に限定されず、例えば、テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、電子新聞、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等を挙げることができ、これらの各種電子機器の表示部に、本発明の電気泳動表示装置20を適用することが可能である。
以上、本発明の電気泳動表示装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】本発明の電気泳動表示装置の好適な実施形態を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図1に示す電気泳動表示装置が備える光反射粒子の模式的拡大図である。
【図3】図2に示す光反射粒子の姿勢の変化を説明する模式図である。
【図4】図2に示す液晶高分子の形成を説明するための模式図である。
【図5】図2に示す液晶高分子の形成を説明するための模式図である。
【図6】図2に示す液晶高分子の形成を説明するための模式図である。
【図7】図1に示す電気泳動表示装置の作動を説明する断面図である。
【図8】図1に示す電気泳動表示装置の作動を説明する断面図である。
【図9】本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
【図10】本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図である。
【符号の説明】
【0104】
1‥‥第1の基板 2‥‥第2の基板 3‥‥共通電極 4‥‥画素電極 5‥‥電気泳動粒子 5a‥‥白色粒子 5b‥‥黒色粒子 6‥‥液相分散媒 7‥‥封止部 71‥‥画素空間 72‥‥隔壁 8‥‥光反射粒子 9‥‥液晶分子 91、92‥‥配向膜 10……電気泳動分散液 20‥‥電気泳動表示装置 37‥‥重合開始剤 600‥‥電子ペーパー 601‥‥本体 602‥‥表示ユニット 800‥‥ディスプレイ 801‥‥本体部 802a、802b‥‥搬送ローラ対 803‥‥孔部 804‥‥透明ガラス板 805‥‥挿入口 806‥‥端子部 807‥‥ソケット 808‥‥コントローラー 809‥‥操作部 A‥‥重合体 A1‥‥主鎖 A2‥‥側鎖 A21‥‥液晶部 A22‥‥連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向配置された一対の電極と、該一対の電極間に設けられた表示層とを備え、
前記表示層は、前記一対の電極間への通電により所定の方向に泳動する少なくとも1種の電気泳動粒子と光反射粒子とを液相分散媒に分散してなる電気泳動分散液を含有し、
前記光反射粒子は、前記電気泳動粒子より光反射率が高く、かつ、その表面に重合物が連結しており、該重合物は、前記光反射粒子の表面に一端部が連結する主鎖と、該主鎖に連結し、液晶部を含む側鎖とを有していることを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項2】
前記主鎖は、その主骨格が脂肪族炭化水素鎖で構成されている請求項1に記載の電気泳動表示装置。
【請求項3】
前記側鎖は、前記液晶部が連結体を介して前記主鎖に連結したものである請求項1または2に記載の電気泳動表示装置。
【請求項4】
前記連結体は、その主骨格が脂肪族炭化水素鎖で構成されている請求項3に記載の電気泳動表示装置。
【請求項5】
前記連結体の前記主鎖と液晶部との間に存在する炭素の数は、5〜18である請求項4に記載の電気泳動表示装置。
【請求項6】
前記液晶部は、電界の方向に沿って配向する配向特性を有するものである請求項1ないし5のいずれかに記載の電気泳動表示装置。
【請求項7】
前記重合物が前記光反射部に結合している密度は、0.5〜5nm/個である請求項1ないし6のいずれかに記載の電気泳動表示装置。
【請求項8】
前記液晶部は、前記液相分散媒に対して撥液性を示す官能基を有している請求項1ないし7のいずれかに記載の電気泳動表示装置。
【請求項9】
前記光反射粒子は、金属光沢を有する金属材料を主材料とするものである請求項1ないし8のいずれかに記載の電気泳動表示装置。
【請求項10】
前記金属材料は、アルミニウムまたは銀である請求項9に記載の電気泳動表示装置。
【請求項11】
前記光反射粒子の大きさは、前記電気泳動粒子の粒径より大きく、かつ、可視光の最も長波長側の波長より大きい請求項1ないし10のいずれかに記載の電気泳動表示装置。
【請求項12】
前記光反射粒子は、無帯電の状態で前記液相分散媒に分散している請求項1ないし11のいずれかに記載の電気泳動表示装置。
【請求項13】
前記粒子分散液は、前記電気泳動粒子として、第1の電気泳動粒子と、該第1の電気泳動粒子と泳動方向が異なり、前記第1の電気泳動粒子より光反射率の低い第2の電気泳動粒子とを含んでおり、
前記光反射粒子は、前記第2の電気泳動粒子と同じ極性に帯電しており、その帯電量が、前記第2の電気泳動粒子より小さいものである請求項1ないし12のいずれかに記載の電気泳動表示装置。
【請求項14】
前記第1の電気泳動粒子は、白色を呈しており、前記第2の電気泳動粒子は、黒色を呈している請求項13に記載の電気泳動表示装置。
【請求項15】
前記表示層は、隔壁を介して複数の画素空間に分割されており、
前記各画素空間の内面のうち、前記第1の電極側の内面および前記第2の電極側の内面の少なくとも一方に、前記液晶部を配向させる配向膜を有する請求項1ないし14のいずれかに記載の電気泳動表示装置。
【請求項16】
請求項1ないし15のいずれかに記載の電気泳動表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−60848(P2010−60848A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−226514(P2008−226514)
【出願日】平成20年9月3日(2008.9.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)