説明

電気泳動表示装置および電子機器

【課題】電気光学装置、電気光学装置の駆動方法、電子機器を提供する。
【解決手段】本発明の電気泳動表示装置は、第1基板と第2基板との間に電気泳動層を挟持してなる電気泳動表示装置であって、第1基板上の表示領域に画素電極、周辺領域に第1電極および第2電極が設けられ、第2基板上の表示領域に共通電極、周辺領域に第1電極および第2電極と対向するとともに共通電極とは絶縁された第3電極が設けられ、電気泳動層は表示領域および周辺領域に設けられており、第1電極と第2電極とは互いに独立に駆動され、第3電極は電気的に孤立した電極である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液晶表示デバイスに代表される表示装置は、薄型、軽量、低消費電力等の特徴を活かしてOA機器、情報端末、時計、テレビなどの各分野に利用されている。現在、これら携帯電話をはじめとするデバイスは、より薄く、より軽くかつ丈夫であることが要求されている。
【0003】
一方、カラー表示や動画表示という点においては液晶表示デバイスに劣るものの、薄さ軽さおよび低消費電力を実現し得る表示体として、電子泳動ディスプレイ(Electrophoretic Display:EPD)は紙に近い性質を持つ読むことを目的とした「電子ペーパー」として開発が進められている。代表的な電子ペーパーであるマイクロカプセル型EPDは、帯電粒子が分散した溶媒をマイクロカプセルに封入し、マイクロカプセルの上下に形成した電極に電圧印加して電界を発生させることにより帯電粒子の分布を変化させてコントラストを得る表示体である。電圧印加を止めても静電気力や分子間力によって引きつけられた帯電粒子が電極付近に留まることから、電力を消費せずに表示画像を保持し続けられるという特長を有する。
【0004】
さらに、マイクロカプセル型EPDは、液晶ディスプレイのような透過光や有機ELディスプレイのような発光ではなく、帯電粒子や溶媒そのものの色(反射光)を観察するため、視野角の依存がなく紙のように目に優しく長時間の凝視にも耐えられるといった利点がある。
【0005】
このような特徴を活かして表示機能付きカードへの応用、さらに、フレキシブル化による曲面ディスプレイや繰り返し曲げが可能な紙のような表示体等への応用が期待されている。ここで、紙のような薄さと同時に紙をイメージできる外観を実現するためには、画像表示に寄与し得る実効的な領域をより広く確保することが重要である。
【0006】
EPDをはじめとするフレキシブルモジュールは、屈曲性の高さという特長を活かして曲げた状態で表示を行う製品として曲面ディスプレイや、屈曲性をより活かして繰り返し曲げに耐えうる製品、例えば表示機能付きカード等を視野に入れた開発が進められている。このような表示機能付きカードにEPDモジュールを内蔵する場合、カード規格に準拠する厚み(総厚0.76±0.08μm以下)を実現するための薄型化のみならず、限られた表示エリア(54.0×85.6mm)を有効活用する表示が重要である。また、将来の紙製品の置換えを視野に入れた場合、紙をイメージできる外観、すなわち超狭額縁化を実現することが非常に重要である。
【0007】
通常、EPDには、電気泳動材料中に存在する水分量が変化することに伴って表示特性も変化してしまうといった課題がある。
そこで、従来のEPDモジュールにおいては周辺環境信頼性を確保する目的で、たとえば特許文献1に示される防湿構造が提案されている。ただし、この防湿構造をEPDモジュールに適用した場合、電気泳動シートおよび駆動基板の外側に防湿のためのエリアを確保する必要があり、狭額縁構造の実現は極めて困難である。例えば、駆動基板の端部までの領域で防湿性を維持する方法として、電気泳動シートを駆動基板よりも小さくし、防湿シートの端部と駆動基板の端部とを一致させることも可能であるが、この場合でも最も外側の表示用画素電極から駆動基板の端部(防湿シートの端部)までが額縁幅となり、この幅以下の狭額縁化は困難である。
【0008】
一方、画面全体の表示品質を均一に保つことで駆動基板の表示領域を広げる方法として、特許文献2には行列状画素を有する表示部の外周に遮光部で遮光されたダミー画素が設けられ、ダミー画素の外側にシフトレジスターが設けられた液晶表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−72128号公報
【特許文献2】特開平5−241153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、上記特許文献2の構造においても表示用画素電極の周囲に設けられたダミー画素は走査線および表示線とのコンタクトが取られていないことから、ダミー画素領域は画像表示に寄与し得る実効的な領域とは言えない。
以上より、限られた表示エリアの有効活用が要求されるカードや、紙のような電子ペーパー製品の実現には額縁幅の広がりは著しく商品性を低下させてしまうといった問題がある。
【0011】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み成されたものであって、狭額縁幅を実現するとともに、画像表示に寄与し得る実効的な領域をより広く確保することが可能な電気泳動表示装置および電子機器を提供することを目的の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電気泳動表示装置は、上記課題を解決するために、第1基板と第2基板との間に挟持される電気泳動層と、前記第1基板上の表示領域に設けられる画素電極と、前記第1基板上の周辺領域に設けられる第1電極および第2電極と、前記第2基板上の表示領域に設けられる共通電極と、前記第2基板上の周辺領域に設けられる前記共通電極とは絶縁された第3電極と、を備え、前記電気泳動層は、前記表示領域および前記周辺領域に設けられており、前記第1電極と前記第2電極とは互いに独立に駆動され、前記第3電極は電気的に孤立していることを特徴とする。
【0013】
本発明では、第1基板上の周辺領域に第1および第2電極が設けられ、第2基板上の周辺領域に第3電極が設けられており、第1電極と第2電極とは互いに独立に駆動され、第3電極は電気的に孤立した電極とされている。そのため、第1電極および第2電極にそれぞれ異なる電位が入力されると、これら各電極に入力される電位に応じて、電気的に孤立した第3電極内において電位の分離が生じる。第3電極のうち、第1電極に対向する領域と第2電極に対向する領域とで電位分布が異なり、かかる電位分布によって周辺領域側の電気泳動素層が駆動するようになっている。その結果、第1電極および第2電極の各々に入力される電位に応じて表示画像を表示することができる。
【0014】
また、前記第1電極は前記第2電極よりも前記表示領域側に配置されており、前記画素電極および前記第1電極には第1電位が入力され、前記第2電極および前記共通電極には前記第1電位と異なる第2電位が入力されることが好ましい。
【0015】
本発明によれば、画素電極と第1電極には第1電位が入力され、第2電極および共通電極には第1電位とは異なる第2電位が入力される構成となっていることから、電気的に孤立した第3電極と第2電極との間に表示領域と反対方向の電界が生じる。そして、第3電極のうち第1電極と対向する領域には、第3電極のうち第2電極と対向する領域とは逆極性の電荷が誘起される結果として、表示領域と同方向の電界が生じる。これにより、第1電極が形成された領域においては、表示領域のうち最も外側に配置された画素と同様の表示を行うことが可能となる。よって、見かけ上の表示領域が広くなるとともに狭額縁化が可能となる。
【0016】
また、前記第1電極、前記第2電極および第3電極が、前記第1基板あるいは前記第2基板の各辺に沿って設けられていることが好ましい。
【0017】
本発明によれば、第1電極および第2電極が第1基板の各辺に沿って設けられていることから、電気泳動表示装置全体において表示領域の拡大とともに狭額縁化が可能となっている。
【0018】
また、前記第2電極が共通電極用配線からなることが好ましい。
【0019】
本発明によれば、第2電極が共通電極用配線としての機能を兼ねることにより、別途共通電極配線を形成する必要がなくなる。これにより、構造の簡素化により製造性の向上や、額縁領域の狭小化といった効果を得ることができる。
【0020】
また、前記第2電極が前記第1電極の幅の半分以下の幅で形成されていることが好ましい。
【0021】
本発明によれば、第2電極が第1電極の幅の半分以下の幅で形成されていることから、従来の額縁幅よりも半分以下の額縁幅が実現される。
【0022】
本発明の電子機器は、本発明の電気光学装置を備えたことを特徴とする。
本発明によれば、画像表示に寄与し得る実効的な表示領域をより広く確保することが可能な表示体を備えているので、信頼性の高い高品位の電子機器となる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】(a)本実施形態に係る電気泳動表示装置の全体構成を示す図、(b)素子基板の平面構成を示す図。
【図2】マイクロカプセルの模式図。
【図3】電気泳動表示装置の動作説明図。
【図4】電気泳動表示装置の電圧印加状態を示す図。
【図5】素子基板の角部における第1電極および第2電極の形状を示す平面図。
【図6】電子機器の一例を示す図。
【図7】電子機器の一例を示す図。
【図8】電子機器の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態につき、図面を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0025】
[第1実施形態]
図1(a)は、本発明の電気泳動表示装置100の概略構成を示す断面図である。
電気泳動表示装置100は、素子基板30と対向基板31との間に複数のマイクロカプセル20が配列された電気泳動層32を挟持してなる電気泳動パネル2を備えている。電気泳動パネル2はその表示領域7において、素子基板30の電気泳動層32側には複数の画素電極35が配列形成されており、電気泳動層32は接着剤層33を介して画素電極35と接着されている。
【0026】
素子基板30は、ガラス基板や石英基板からなり、その表面上に駆動層22、走査線駆動回路61およびデータ線駆動回路62等を有している。素子基板30の構成材料としては、ガラス基板や石英基板のほかに、例えばシリコン基板、ガリウム砒素基板などの無機基板や、ポリイミド、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルスルホン(PES)、芳香族ポリエステル(液晶ポリマー)等で構成されるプラスチック基板(樹脂基板)などが挙げられる。素子基板30は、例えば30〜100μm程度の厚さを有する板状部材である。
なお、素子基板30は、画像表示面とは反対側に配置されるため透明なものでなくてもよい。
【0027】
駆動層22は、素子基板30の内面30aのうち平面視で複数の画素電極35と重なる領域に設けられた層である。平面的な駆動層22の形成領域は、表示領域7と略一致しており、走査線駆動回路61及びデータ線駆動回路62はこの駆動層22の周縁部、つまり周辺領域8側に設けられている。これら走査線駆動回路61及びデータ線駆動回路62はデータ線や走査線に電気的に接続されており、駆動層22(各画素)に信号を供給するようになっている。ここで、周辺領域8は、表示領域7と、素子基板30の外縁との間の領域である。
【0028】
表示領域7に形成される駆動層22は、絶縁層24、複数の画素電極35、各画素電極35に接続される複数のトランジスタ(不図示)を有している。画素電極35は、平面視で例えばマトリクス状に配列された電極である。トランジスタは画素電極35毎に設けられた素子であって、周辺領域8に形成されている走査線駆動回路61およびデータ線駆動回路62から延びるデータ線及び走査線などが接続されている。素子基板30上には、これら各部を覆うようにしてシリコン酸化膜やシリコン窒化膜からなる絶縁層24が形成されている。
【0029】
絶縁層24上の表示領域7側には複数の画素電極35が設けられ、周辺領域8側には表示領域7側から順に第1電極14および第2電極15が設けられている。第1電極14は、第2電極15よりも表示領域7側に配置され、第2電極15は基板上の最も外側(周縁部)に位置する。第1電極14と第2電極15とは、互いに異なる配線に接続されており、独立に駆動することができる。
画素電極35、第1電極14および第2電極15は、Cu箔上にニッケルめっきと金めっきとをこの順で積層したものや、Al、ITO(インジウム錫酸化物)などにより形成された電極である。
【0030】
画素電極35は、上述したように走査線とデータ線との交点に形成される画素ごとに設けられて、各画素電極35の面積は同一である。第1電極14は、表示領域7のすぐ外側であって走査線駆動回路61およびデータ線駆動回路62上に設けられており、素子基板30の所定の幅を有し各辺に沿って形成されている。第2電極15は、第1電極14のすぐ外側であって第1電極14同様に走査線駆動回路61およびデータ線駆動回路62上に設けられており、素子基板30の各辺に沿って形成されている。
本実施形態において第2電極15は、図1(b)に示すように第1電極14の幅W1の半分以下の幅W2で形成されている。また、この第2電極15は、電気泳動シートの共通電極37へ電圧を印加するための共通電極配線としての機能も兼ねている。
【0031】
一方、対向基板31はガラスやプラスチック等からなる基板であり、画像表示側に配置されるため透明基板とされる。対向基板31の内面31aには、表示領域7側に複数の画素電極35と対向する共通電極37が形成され、周辺領域8側に第1電極14および第2電極15と対向する第3電極16が形成されている。そして、これら共通電極37および第3電極16上に電気泳動層32が設けられている。
共通電極37および第3電極16は、MgAg、ITO、IZO(インジウム・亜鉛酸化物)などから形成された透明電極である。第3電極16は、共通電極37とは分離しており電気的に孤立したフローティング電極である。
これら共通電極37および第3電極16は、対向基板31上に上記金属材料からなる層を形成した後、画素電極35と第1電極14との境界の直上において分割することによって形成されたものであって、上述したようにそれぞれ電気的に絶縁されてフローティング状態となっている。
【0032】
電気泳動層32は、対向基板31と、対向基板31上に固定された複数のマイクロカプセル20とにより電気泳動シートとして取り扱われるのが一般的である。製造工程において、電気泳動シートは接着剤層33の表面に保護用の離型シートが貼り付けられた状態で取り扱われる。そして、別途製造された素子基板30(画素電極35や各種回路などが形成されている)に対して離型シートを剥がした電気泳動シートを貼り付けることによって表示部および非表示部が形成される。
【0033】
本実施形態の電気泳動層32は表示領域7から周辺領域8にかけて設けられており、これら各領域7,8を一度に覆う大きさを有している。従来の構成においては表示領域7のみに電気泳動層32が設けられていたが、本実施形態では表示領域7だけでなく周辺領域8にも電気泳動層32が設けられている。
【0034】
図2はマイクロカプセルの模式断面図である。
マイクロカプセル20は、図2に示すように、例えば50μm程度の粒径を有しており、内部に分散媒21と、複数の白色粒子(電気泳動粒子)27と、複数の黒色粒子(電気泳動粒子)26とを封入した球状体である。マイクロカプセル20は、共通電極と画素電極35とで挟持され、1つの画素40内に1つ又は複数のマイクロカプセル20が配置される。
【0035】
マイクロカプセル20の外殻部(壁膜)は、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチルなどのアクリル樹脂、ユリア樹脂、アラビアゴムなどの透光性を持つ高分子樹脂などを用いて形成される。
分散媒21は、白色粒子27と黒色粒子26とをマイクロカプセル20内に分散させる液体である。分散媒21としては、水、アルコール系溶媒(メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、メチルセルソルブなど)、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチルなど)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなど)、脂肪族炭化水素(ぺンタン、ヘキサン、オクタンなど)、脂環式炭化水素(シクロへキサン、メチルシクロへキサンなど)、芳香族炭化水素(ベンゼン、トルエン、長鎖アルキル基を有するベンゼン類(キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘブチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼンなど))、ハロゲン化炭化水素(塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタンなど)、カルボン酸塩などを例示することができ、その他の油類であってもよい。これらの物質は単独又は混合物として用いることができ、さらに界面活性剤などを配合してもよい。
【0036】
白色粒子27は、例えば、二酸化チタン、亜鉛華、三酸化アンチモン等の白色顔料からなる粒子(高分子あるいはコロイド)であり、例えば負に帯電されて用いられる。黒色粒子26は、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック等の黒色顔料からなる粒子(高分子あるいはコロイド)であり、例えば正に帯電されて用いられる。
これらの顔料には、必要に応じ、電解質、界面活性剤、金属石鹸、樹脂、ゴム、油、ワニス、コンパウンドなどの粒子からなる荷電制御剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シラン系カップリング剤等の分散剤、潤滑剤、安定化剤などを添加することができる。
また、黒色粒子26および白色粒子27に代えて、例えば赤色、緑色、青色などの顔料を用いてもよい。かかる構成によれば、表示領域7に赤色、緑色、青色などを表示することができる。
【0037】
このような構成の電気泳動パネル2には、図1(a)に示すように、対向基板31の外面側に防湿フィルム12が設けられている。対向基板31はプラスチックなどの基板からなるため、ガラス基板からなる素子基板30側に比べると防湿性が低くなりやすいことから、対向基板31の外面全体を覆うようにして防湿フィルム12が設けられている。
【0038】
防湿フィルム12は、無機膜が形成された複数のフィルムが接着剤を介して積層されてなる多層フィルムタイプの防湿フィルムであって、例えば、シリカやアルミナ等の透明で且つ防湿性を有する無機膜をポリカーボネートやPETのような有機フィルムに形成することによって防湿性能を付加したフィルムを用いる。
なお、素子基板30は防湿性が高いガラス基板などからなるため必ずしも防湿フィルムが必要というわけではないが、ガラス以外の材料からなる場合には素子基板30の外面上にも防湿フィルムを設けてもよい。
【0039】
また、電気泳動パネル2には、電気泳動層32および対向基板31の周囲を囲むようにして封止材6が形成されている。封止材6は、素子基板30の周縁部上に配置され、対向基板31の側端面31bにかけて形成されている。この封止材6によって電気泳動層32の周囲が封止されることにより、電気泳動層32に対する防湿性が確保される。封止材6の材料としては、例えばエポキシ樹脂などの樹脂材料が挙げられる。
【0040】
次に、上記のように構成された電気泳動表示装置100の動作を簡単に説明する。
図3は、電気泳動表示装置100の動作説明図である。図3(a)は、表示領域7の全体が黒表示されている状態を示す図である。図3(b)は、表示領域7に画像を表示させる際の動作状態を示す図である。
【0041】
まず、図3(a)に示す初期状態では、表示領域7において、共通電極37側に黒色粒子26が引き寄せられ、画素電極35側に白色粒子27が引き寄せられており、表示領域7における画素40はいずれも黒表示状態である。また、周辺領域8において、第3電極16側に黒色粒子26が引き寄せられ、第1電極14および第2電極15側に白色粒子27が引き寄せられており、周辺領域8側も黒表示状態である。
【0042】
このように、表示領域7および周辺領域8を黒表示にする場合、共通電極37が相対的に低電位、画素電極35が相対的に高電位に保持される。これにより、正に帯電した黒色粒子26が共通電極37に引き寄せられる一方、負に帯電した白色粒子27が画素電極35に引き寄せられる。その結果、共通電極37側からこの画素を見ると黒色(B)が認識される。
【0043】
かかる状態の表示領域7を白表示にする場合には、表示領域7における各画素40に画像データに対応する電位をそれぞれ入力する。すなわち、不図示のコントローラから走査線駆動回路およびデータ線駆動回路に画像データを供給し、走査線駆動回路およびデータ線駆動回路から各走査線およびデータ線を介して各画素40に画素電極35に画像データに対応する電位を入力する。
【0044】
このように、表示領域7を白表示にする場合、共通電極37が相対的に高電位、画素電極35が相対的に低電位に保持される。これにより、図3(b)に示すように、負に帯電した白色粒子27が共通電極37に引き寄せられる一方、正に帯電した黒色粒子26が画素電極35に引き寄せられる。その結果、表示面側となる共通電極37側からこの画素を見ると、白色(W)が認識される。
【0045】
一方、周辺領域8においては、第3電極16は、電気的に孤立した電極であるため、その電位Vcomはフローティング電位Vfである。
そして、表示領域7のうち最も外側(周辺領域8側)の画素電極35Aと第1電極14とに第1電位として、ハイレベル電位VH(例えば+20V)が入力され、第2電極15には、ローレベル電位VL(例えば0V:GND)が入力される。画素電極35Aと第1電極14とが同電位になり、共通電極37と第2電極15とが同電位になると、電気的に分離された共通電極37と第2電極15との間に表示領域7と反対方向の電界が生じて、第3電極16のうち第2電極15と対向する領域16Bにはマイナスの電荷が誘起され(図4)、第3電極16のうち第1電極14と対向する領域16Aには、領域16Bの電荷とは逆極性のプラスの電荷が誘起される(図4)。その結果として、表示領域7と同じ方向の電界が生じる。
【0046】
電気的に孤立している第3電極16のフローティング電位Vfは、当該第3電極16と対向する第1電極14および第2電極15の電極分布に応じて変化する。すなわち、第3電極16の第1電極14と対向する領域16A側では最も外側に配置された画素電極35と同様の表示が行われ、第3電極16の第2電極15と対向する領域16B側では黒表示のままとなる。
よって、ここでは、表示領域7全体と周辺領域8のうち表示領域7側の一部領域(第1電極14側の領域)が白表示となり、周辺領域8の他の領域(第2電極15側の領域)が黒表示となり額縁領域として機能する。
【0047】
図4に示すように、従来の額縁幅110Wbは表示領域7の最も外側の画素電極35の端部から素子基板30および対向基板31の端部までの長さであったが、本実施形態における額縁幅110Waは従来の額縁幅110Wbの半分以下の長さにまで狭くなっている。
【0048】
本実施形態の電気泳動表示装置100では、素子基板30上の表示領域7には複数の画素電極35が設けられている一方、素子基板30上の周辺領域8には第1電極14および第2電極15が設けられている。また、対向基板31の表示領域7には共通電極37が設けられている一方、対向基板31の周辺領域8には第1電極14および第2電極15と対向する第3電極16が設けられている。
このため、第1電極14および第2電極15にそれぞれ異なる電位が入力されると、これら各電極14,15に入力される電位に応じて、電気的に孤立した第3電極16内における電位の分離が生じる。第3電極16のうち第1電極14に対向する領域16Aと、第2電極15に対向する領域16Bとで電位分布が異なり、かかる電位分布によって、周辺領域側の電気泳動層32が駆動するようになっている。その結果、第1電極14および第2電極15の各々に入力される電位に応じて表示画像を表示することができる。
【0049】
具体的に、本実施形態では、第1電極14は表示領域7の外側で第2電極15よりも内側に配置されており、画素電極35および第1電極14には第1電位が入力されて同電位とされ、第2電極15と共通電極37には第1電位とは異なる第2電位が入力されて同電位とされている。
これにより、電気的に孤立した第3電極16と第2電極15との間に表示領域7と反対方向の電界が生じる。そして、第3電極16のうち第1電極14と対向する領域には、第3電極16のうち第2電極15と対向する領域16Aとは逆極性の電荷が誘起される結果として、表示領域7と同方向の電界が生じる。これにより、第1電極14が形成された領域においては、表示領域7のうち、最も外側に配置された画素と同様の表示を行うことが可能となる。よって、見かけ上の表示領域が広くなるとともに狭額縁化が可能となる。
【0050】
また、本実施形態では、第1電極14、第2電極15および第3電極16が素子基板30あるいは対向基板31の各辺に設けられていることから、電気泳動表示装置100全体として表示領域が拡大し、視認性の良好な表示体となる。
【0051】
また、本実施形態では第2電極15が共通電極用配線からなっている。第2電極15が共通電極用配線としての機能を兼ねることにより、別途共通電極配線を形成する必要がなくなる。これにより、構造の簡素化により製造性の向上や、狭額領域の狭小化といった効果を得ることができる。
【0052】
また、本実施形態では、第2電極15の幅W2が、第1電極14の幅W1の半分以下の幅で形成されていることから、従来の狭額縁幅よりも半分以下の額縁幅が実現される。これにより、電気泳動表示装置100としての商品性を著しく向上させる効果がある。
【0053】
図5に素子基板の角部における第1電極および第2電極の平面形状を示す。
図5(a)に示すように、素子基板30の角部において、第1電極14および第2電極15の占める面積の割合は1:3となっているが、(b),(c)に示すように1:1の割合で互いに等しい面積となっていてもよい。第1電極14および第2電極15の占める面積の割合が1:3の場合、表示領域7を白表示にした場合、第2電極15の面積に対して第1電極14の面積が小さいため、周りの黒表示の影響を受けてグレー表示になってしまう。一方、第1電極14および第2電極15の占める面積の割合が1:1になっている場合には、第2電極15側の黒表示の影響を受けることなく、第1電極14側において白表示が可能となる。これにより、高コントラストの表示が可能となる。
【0054】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0055】
例えば、先の実施形態では、第1電極14、第2電極15、第3電極16が素子基板30の周辺に沿って設ける構成としたが、走査線駆動回路61およびデータ線駆動回路62が形成された領域上にのみ形成してもよい。あるいは、枠形状ではなく、基板の各辺に設けるようにしてもよい。
【0056】
(電子機器)
次に、上記実施形態の電気光学装置(電気泳動表示装置100,200)を、電子機器に適用した場合について説明する。
図6は、腕時計1000の正面図である。腕時計1000は、時計ケース1002と、時計ケース1002に連結された一対のバンド1003とを備えている。
時計ケース1002の正面には、上記各実施形態の電気光学装置からなる表示部1005と、秒針1021と、分針1022と、時針1023とが設けられている。時計ケース1002の側面には、操作子としての竜頭1010と操作ボタン1011とが設けられている。竜頭1010は、ケース内部に設けられる巻真(図示は省略)に連結されており、巻真と一体となって多段階(例えば2段階)で押し引き自在、かつ、回転自在に設けられている。表示部1005では、背景となる画像、日付や時間などの文字列、あるいは秒針、分針、時針などを表示することができる。
【0057】
図7は電子ペーパー1100の構成を示す斜視図である。電子ペーパー1100は、上記実施形態の電気光学装置を表示領域1101に備えている。電子ペーパー1100は可撓性を有し、従来の紙と同様の質感及び柔軟性を有する書き換え可能なシートからなる本体1102を備えて構成されている。
【0058】
図8は、電子ノート1200の構成を示す斜視図である。電子ノート1200は、上記の電子ペーパー1100が複数枚束ねられ、カバー1201に挟まれているものである。カバー1201は、例えば外部の装置から送られる表示データを入力する図示は省略の表示データ入力手段を備える。これにより、その表示データに応じて、電子ペーパーが束ねられた状態のまま、表示内容の変更や更新を行うことができる。
【0059】
以上の腕時計1000、電子ペーパー1100、及び電子ノート1200によれば、本発明に係る画像表示に寄与し得る実効的な表示領域をより広く確保することが可能な電気光学装置が採用されているので、信頼性の高い高品位の電子機器となる。
【0060】
なお、上記の電子機器は、本発明に係る電子機器を例示するものであって、本発明の技術範囲を限定するものではない。例えば、携帯電話、携帯用オーディオ機器などの電子機器の表示部にも、本発明に係る電気光学装置は好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
100 電気泳動表示装置(電気光学装置)、2 電気泳動パネル、6 封止材、7 表示領域、8 周辺領域、12 防湿フィルム、14 第1電極、15 第2電極、16 第3電極、16A 領域、16B 領域、30 素子基板、31 対向基板、32 電気泳動層、35 画素電極、37 共通電極、40 画素、61 走査線駆動回路、62 データ線駆動回路、Vf フローティング電位、W1 幅、W2 幅、110b 額縁幅、1000 腕時計(電子機器)、1100 電子ペーパー(電子機器)、1200 電子ノート(電子機器)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1基板と第2基板との間に挟持される電気泳動層と、
前記第1基板上の表示領域に設けられる画素電極と、
前記第1基板上の周辺領域に設けられる第1電極および第2電極と、
前記第2基板上の表示領域に設けられる共通電極と、
前記第2基板上の周辺領域に設けられる前記共通電極とは絶縁された第3電極と、を備え、
前記電気泳動層は、前記表示領域および前記周辺領域に設けられており、
前記第1電極と前記第2電極とは互いに独立に駆動され、前記第3電極は電気的に孤立していることを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項2】
前記第1電極は前記第2電極よりも前記表示領域側に配置されており、
前記画素電極および前記第1電極には第1電位が入力され、
前記第2電極および前記共通電極には前記第1電位と異なる第2電位が入力されることを特徴とする請求項1記載の電気泳動表示装置。
【請求項3】
前記第1電極、前記第2電極および第3電極が、前記第1基板あるいは前記第2基板の各辺に沿って設けられていることを特徴とする請求項1または2記載の電気泳動表示装置。
【請求項4】
前記第2電極が共通電極用配線からなることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電気泳動表示装置。
【請求項5】
前記第2電極が前記第1電極の幅の半分以下の幅で形成されていることを特徴とする請求項1または2記載の電気泳動表示装置。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の電気泳動表示装置を備えたことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−180360(P2011−180360A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44232(P2010−44232)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】