説明

電気泳動表示装置の製造方法、電気泳動表示装置および電子機器

【課題】マイクロカプセルを、互いに重なり合うことなく単層になるように配置することができ、これにより表示性能の高い電気泳動表示装置を効率よく製造可能な電気泳動表示装置の製造方法、かかる製造方法により製造された電気泳動表示装置、およびかかる電気泳動表示装置を備えた電子機器を提供すること。
【解決手段】本発明の電気泳動表示装置の製造方法は、第1の電極3上に第1のバインダ層41を形成する工程と、第1のバインダ層41上に複数のマイクロカプセル40を供給する工程と、複数のマイクロカプセル40のうち、第1のバインダ層41に接していないものを除去する工程と、第2の電極4の下面にあらかじめ第2のバインダ層42を形成しておき、複数のマイクロカプセル40と第2のバインダ層42とが密着するように、マイクロカプセル40上に第2の電極4を重ねる工程とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気泳動表示装置の製造方法、電気泳動表示装置および電子機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、液体中に微粒子を分散させた分散系に電界を作用させると、微粒子は、クーロン力により液体中で移動(泳動)することが知られている。この現象を電気泳動といい、近年、この電気泳動を利用して、所望の情報(画像)を表示させるようにした電気泳動表示装置が新たな表示装置として注目を集めている。
この電気泳動表示装置は、電圧の印加を停止した状態での表示メモリー性や広視野角性を有することや、低消費電力で高コントラストの表示が可能であること等の特徴を備えている。
【0003】
また、電気泳動表示装置は、非発光型(反射型)の表示デバイスであることから、ブラウン管のような発光型の表示デバイスに比べて、目に優しいという特徴も有している。
このような電気泳動表示装置としては、電極を有する一対の基板間に、電気泳動粒子(微粒子)を分散させた分散系を封入した多数のマイクロカプセルを配設したマイクロカプセル型のものが知られている(例えば、特許文献1参照)。このマイクロカプセル型の電気泳動表示装置では、多数のマイクロカプセル同士の隙間にバインダが充填されている。
【0004】
このような電気泳動表示装置を製造する場合、まず、マイクロカプセル、バインダおよび液体を混合し、混合液を電極上に塗布する。その後、混合液中の液体を除去することによってバインダが固化し、電極上にマイクロカプセルが固定される。
しかしながら、この製造方法では、マイクロカプセルとバインダとを混合して供給されるため、混合液の粘性が高くなり、マイクロカプセル同士が厚さ方向に重なり合う場合がある。このようにマイクロカプセル同士が重なり合ってしまうと、マイクロカプセル内の電気泳動粒子に作用する電界の強度が不均一になる。その結果、電気泳動粒子の泳動が不均一になり、表示ムラやコントラストの低下等を招くことが知られている。
また、マイクロカプセルとバインダとを混合する際に、気泡を巻き込んでしまうおそれもある。巻き込まれた気泡は、電界がマイクロカプセルに作用するのを阻害し、電気泳動粒子の泳動を妨げることが懸念されている。
【0005】
【特許文献1】特開2007−58151号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、マイクロカプセルを、互いに重なり合うことなく単層になるように配置することができ、これにより表示性能の高い電気泳動表示装置を効率よく製造可能な電気泳動表示装置の製造方法、かかる製造方法により製造された電気泳動表示装置、および信頼性の高い電気泳動表示装置を備えた電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記の本発明により達成される。
本発明の電気泳動表示装置の製造方法は、板状の第1の電極上に第1のバインダ層を形成する工程と、
前記第1のバインダ層上に、少なくとも1種の電気泳動粒子を含む電気泳動分散液が内部空間に充填された複数のカプセルを供給することにより、前記第1のバインダ層を介して前記第1の電極上に前記複数のカプセルを固定してなる電気泳動表示シートを得る工程と、
前記複数のカプセルのうち、前記第1のバインダ層に接してないものを除去する工程と、
前記複数のカプセル上に、第2のバインダ層を形成する工程と、
前記第2のバインダ層上に板状の第2の電極を配置する工程とを有することを特徴とする。
これにより、カプセルを、互いに重なり合うことなく単層になるように配置することができ、これにより表示性能の高い電気泳動表示装置を効率よく製造することができる。
【0008】
本発明の電気泳動表示装置の製造方法は、板状の第1の電極上に第1のバインダ層を形成する工程と、
前記第1のバインダ層上に、少なくとも1種の電気泳動粒子を含む電気泳動分散液が内部空間に充填された複数のカプセルを供給することにより、前記第1のバインダ層を介して前記第1の電極上に前記複数のカプセルを固定してなる電気泳動表示シートを得る工程と、
前記複数のカプセルのうち、前記第1のバインダ層に接してないものを除去する工程と、
板状の第2の電極上にあらかじめ第2のバインダ層を形成しておき、前記各カプセルと前記第2のバインダ層とが密着するように、前記電気泳動表示シートと前記第2の電極とを重ね合わせる工程とを有することを特徴とする。
これにより、カプセルを、互いに重なり合うことなく単層になるように配置することができ、これにより表示性能の高い電気泳動表示装置を特に効率よく製造することができる。
【0009】
本発明の電気泳動表示装置の製造方法では、前記第1の電極には、その表面が凹んでなる凹部が設けられており、
前記第1のバインダ層は、前記凹部内に選択的に形成されることが好ましい。
これにより、第1のバインダ層によって固定されるカプセルの粒径をある程度揃えることができる。すなわち、著しく小さいカプセルや著しく大きいカプセルが、第1のバインダ層に接触し難くなるため、固定され難くなる。その結果、大きさの不揃いなカプセルを簡単に除去することができ、電気泳動表示装置の表示ムラを抑制することができる。
【0010】
本発明の電気泳動表示装置の製造方法では、前記第1の電極に設けられた前記凹部の深さは、前記複数のカプセルの体積平均粒子径をdとしたとき、0.1d〜0.25dであることが好ましい。
これにより、比較的大きなカプセルが第1の電極に設けられた凹部に入り込んだ後は、比較的小さなカプセルが凹部に入り難くなる。その結果、カプセルの選別をより確実に行うことができる。
【0011】
本発明の電気泳動表示装置の製造方法では、前記第1のバインダ層の平均厚さは、前記第1の電極に設けられた前記凹部の深さの10〜60%であることが好ましい。
これにより、第1のバインダ層は、十分な接着力を確保することができる。また、仮に凹部内に入り込んだカプセルによって第1のバインダ層が凹部の外に押し出されたとしても、押し出された第1のバインダ層が盛り上がって第2のバインダ層に接触してしまうのを確実に防止することができる。
【0012】
本発明の電気泳動表示装置の製造方法では、前記複数のカプセルを供給する際に、前記複数のカプセルを揮発性の分散媒に分散してなるカプセル分散液を、前記第1のバインダ層上に塗布して液状被膜を形成した後、該液状被膜中から前記分散媒を揮発・除去することにより、前記複数のカプセルを残存させることが好ましい。
これにより、カプセルのみを第1のバインダ層上に特に簡単に配置することができる。
【0013】
本発明の電気泳動表示装置の製造方法では、前記分散媒は、前記各カプセルよりも比重の小さいものであることが好ましい。
これにより、第1のバインダ層上にカプセル分散液を供給した際に、カプセルが速やかに沈降する。これにより、カプセルのみを第1のバインダ層上に効率よく配置することができる。
【0014】
本発明の電気泳動表示装置の製造方法では、前記複数のカプセルのうち、前記第1のバインダ層に接していないものを除去する工程の前に、前記電気泳動表示シートを厚さ方向に圧縮することにより、前記各カプセルを前記第1のバインダ層に押し付けることが好ましい。
これにより、比較的大きなカプセルが優先的に押圧されることとなり、優先的に第1の電極に設けられた凹部に入り込むことができる。その結果、複数のカプセルは、凹部に入り込むカプセルと、入り込めないカプセルとに、大きさによって選別することができる。
本発明の電気泳動表示装置の製造方法では、前記電気泳動表示シートを圧縮する際の圧力は、0.01〜0.2MPaであることが好ましい。
これにより、カプセルを破壊することなく、カプセルを第1のバインダ層に確実に押し付けることができる。
【0015】
本発明の電気泳動表示装置の製造方法では、前記複数のカプセルのうち、前記第1のバインダ層に接していないものを除去する工程において、前記電気泳動表示シートを傾ける過程を経ることにより、前記第1のバインダ層に接していない前記カプセルを落下させて除去することが好ましい。
これにより、第1の電極に対して固定されていないカプセルを、電気泳動表示シート上から落下させることによって、簡単に除去することができる。
【0016】
本発明の電気泳動表示装置の製造方法では、前記複数のカプセルのうち、前記第1のバインダ層に接していないものを除去する工程において、前記電気泳動表示シートに振動を加えることにより、前記第1のバインダ層に接していない前記カプセルを除去することが好ましい。
これにより、第1の電極に対して固定されていないカプセルを、電気泳動表示シート上から振り落とすことによって、簡単に除去することができる。
本発明の電気泳動表示装置の製造方法では、前記第2のバインダ層は、その一部が前記カプセル同士の隙間を充填するように形成されることが好ましい。
これにより、第2のバインダ層は、第1の電極と第2の電極との間を確実に絶縁することができる。
【0017】
本発明の電気泳動表示装置の製造方法では、前記第2の電極には、その表面が凹んでなる凹部が設けられており、
前記第2のバインダ層は、その一部が前記第2の電極に設けられた前記凹部に入り込むように形成されていることが好ましい。
これにより、第2のバインダ層は、第2の電極に対して確実に接着されている。このため、電気泳動表示シート上に第2のバインダ層が接着した第2の電極を重ね合わせた際に、仮に第2のバインダ層が接着された側が鉛直下方を向いていたとしても、第2のバインダ層が脱落してしまうのを確実に防止することができる。
【0018】
本発明の電気泳動表示装置の製造方法では、前記第2の電極に設けられた前記凹部の深さは、前記複数のカプセルの体積平均粒子径をdとしたとき、0.12d〜0.5dであることが好ましい。
これにより、カプセルに電界を作用させ得る第2の電極の有効面積を十分に確保するとともに、各バインダ間の離間距離を十分に確保することができる。その結果、電気泳動表示装置は、電極間の電流のリークが確実に防止され、消費電力の低減が図られるとともに、表示特性に優れたものとなる。
【0019】
本発明の電気泳動表示装置の製造方法では、前記複数のカプセルの体積平均粒子径は、20〜60μmであることが好ましい。
これにより、カプセルは、強固であり、かつ高い表示特性を示すものとなる。
本発明の電気泳動表示装置の製造方法では、前記カプセルは、ほぼ球状をなしていることが好ましい。
これにより、カプセルは、圧縮力が付与されたとしても、十分な耐圧性および耐ブリード性を有するものとなる。このため、電気泳動表示装置は、長期間安定的に動作し得るものとなる。
【0020】
本発明の電気泳動表示装置は、本発明の電気泳動表示装置の製造方法により製造されたことを特徴とする。
これにより、表示性能の高い電気泳動表示装置が得られる。
本発明の電子機器は、本発明の電気泳動表示装置を備えることを特徴とする。
これにより、信頼性の高い電子機器が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の電気泳動表示装置の製造方法、電気泳動表示装置および電子機器を添付図面に示す好適実施形態に基づいて詳細に説明する。
<電気泳動表示装置>
まず、本発明の電気泳動表示装置について説明する。
図1は、本発明の電気泳動表示装置の縦断面を模式的に示す図である。なお、以下では、説明の都合上、図1中の上側を「上」、下側を「下」として説明を行う。
【0022】
図1に示す電気泳動表示装置20は、電気泳動表示シート(フロントプレーン)21と、回路基板(バックプレーン)22と、電気泳動表示シート21と回路基板22との間を気密的に封止する封止部7とを有している。
電気泳動表示シート21は、基部1と基部1の下面に設けられた第1の電極3とを備える基板11と、この基板11の下面側に設けられた複数のマイクロカプセル40とを有している。これらのマイクロカプセル40は、電気泳動粒子5を含む電気泳動分散液10を内部空間に内包している。
【0023】
また、基部1の下面には、複数の凹部101が設けられている。そして、前述の第1の電極3は、各凹部101の表面(下面)に沿って設けられている。
一方、回路基板22は、基部2と基部2の上面に設けられた複数の第2の電極4とを備える対向基板12と、この対向基板12(基部2)に設けられた、例えばTFT等のスイッチング素子を含む回路(図示せず)とを有している。
【0024】
また、基部2の上面には、複数の凹部201が設けられている。そして、前述の第2の電極4は、各凹部201の表面(上面)に沿って設けられている。
また、各マイクロカプセル40は、それぞれ、その上方の一部が凹部101に入り込んでおり(収納されており)、下方の一部の凹部201に入り込んでいる(収納されている)。
このような電気泳動表示シート21および回路基板22を備える電気泳動表示装置20では、第1の電極3と第2の電極4との間に電圧を印加することによって、電気泳動粒子5を電気泳動させる。これにより基板11の上面の表示部に所望の情報(画像)を表示することができる。
【0025】
以下、各部の構成について順次説明する。
基部1および基部2は、それぞれ、シート状(平板状)の部材で構成され、これらの間に配置される各部材を支持および保護する機能を有する。
各基部1、2は、それぞれ、可撓性を有するもの、硬質なもののいずれであってもよいが、可撓性を有するものであるのが好ましい。可撓性を有する基部1、2を用いることにより、可撓性を有する電気泳動表示装置20、すなわち、例えば電子ペーパーを構築する上で有用な電気泳動表示装置20を得ることができる。
【0026】
また、各基部(基材層)1、2が可撓性を有するものである場合、その構成材料としては、それぞれ、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン、変性ポリオレフィン、ポリアミド、熱可塑性ポリイミド、ポリエーテル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリウレタン系、塩素化ポリエチレン系等の各種熱可塑性エラストマー等、またはこれらを主とする共重合体、ブレンド体、ポリマーアロイ等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0027】
このような基部1、2の平均厚さは、それぞれ、構成材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、可撓性を有するものとする場合、20〜500μm程度であるのが好ましく、25〜250μm程度であるのがより好ましい。これにより、電気泳動表示装置20の柔軟性と強度との調和を図りつつ、電気泳動表示装置20の小型化(特に、薄型化)を図ることができる。
これらの基部1、2のマイクロカプセル40側の面、すなわち、基部1の下面および基部2の上面に、層状(膜状)をなす第1の電極3および第2の電極4が設けられている。
【0028】
第1の電極3と第2の電極4との間に電圧を印加すると、これらの間に電界が生じ、この電界が電気泳動粒子(表示粒子)5に作用する。
本実施形態では、第1の電極3が共通電極とされ、第2の電極4がマトリックス状(行列状)に分割された個別電極(スイッチング素子に接続された画素電極)とされており、第1の電極3と1つの第2の電極4とが重なる部分が1画素を構成する。
【0029】
なお、第1の電極3も、第2の電極4と同様に複数に分割するようにしてもよい。
また、第1の電極3がストライプ状に分割され、第2の電極4も同様にストライプ状に分割され、これらが交差するように配置された形態であってもよい。
各電極3、4の構成材料としては、それぞれ、実質的に導電性を有するものであれば特に限定されず、例えば、銅、アルミニウムまたはこれらを含む合金等の金属材料、カーボンブラック等の炭素系材料、ポリアセチレン、ポリフルオレンまたはこれらの誘導体等の電子導電性高分子材料、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート等のマトリックス樹脂中に、NaCl、Cu(CFSO等のイオン性物質を分散させたイオン導電性高分子材料、インジウム酸化物等の導電性酸化物材料のような各種導電性材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0030】
このような電極3、4の平均厚さは、それぞれ、構成材料、用途等により適宜設定され、特に限定されないが、0.05〜10μm程度であるのが好ましく、0.05〜5μm程度であるのがより好ましい。
なお、各基部1、2および各電極3、4のうち、表示面側に配置される基部および電極(本実施形態では、基部1および第1の電極3)は、それぞれ、光透過性を有するもの、すなわち、実質的に透明(無色透明、有色透明または半透明)とされる。これにより、後述する電気泳動分散液10中における電気泳動粒子5の状態、すなわち電気泳動表示装置20に表示された情報(画像)を目視により容易に認識することができる。
【0031】
電気泳動表示シート21では、第1の電極3の下方に、第1のバインダ層41を介してマイクロカプセル含有層400が設けられている。
このマイクロカプセル含有層400は、電気泳動分散液10をカプセル本体(殻体)401内に封入した複数のマイクロカプセル40が、第2のバインダ層42で固定(保持)されてなるものである。
【0032】
カプセル本体(殻体)401の構成材料は、例えば、ゼラチン、アラビアゴムとゼラチンとの複合材料、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、尿素樹脂、ポリアミド、ポリエーテルのような各種樹脂材料が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
ゼラチンとしては、無処理のものの他、例えば、石灰処理ゼラチン、酸処理ゼラチン、カルシウム等の含有量を減らした脱灰ゼラチン、酸化処理を施しメチオニン残基を減じたゼラチン等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
また、カプセル本体401の構成材料には、架橋剤により架橋(立体架橋)を形成したものを用いるようにしてもよい。これにより、カプセル本体401の柔軟性を維持しつつ、強度を向上させることができる。その結果、マイクロカプセル40が容易に崩壊するのを防止することができる。
なお、カプセル本体401は、単層構造であってもよいが、複数層が積層してなる積層構造であってもよい。この場合、各層の構成材料は、同じであっても異なっていてもよい。
【0034】
カプセル本体401内に封入された電気泳動分散液10は、少なくとも1種の電気泳動粒子5(本実施形態では、着色粒子5bと白色粒子5aとの2種)を液相分散媒6に分散(懸濁)してなるものである。
電気泳動粒子5の液相分散媒6への分散は、例えば、ペイントシェーカー法、ボールミル法、メディアミル法、超音波分散法、拡散分散法等のうちの1種または2種以上を組み合わせて行うことができる。
液相分散媒6としては、カプセル本体401に対する溶解性が低く、かつ比較的高い絶縁性を有するものが好適に使用される。
【0035】
かかる液相分散媒6としては、例えば、各種水(蒸留水、純水、イオン交換水、RO水等)、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン等のアルコール類、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、ギ酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルイソプロピルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ペンタン、ヘキサン、オクタン等の脂肪族炭化水素類(流動パラフィン)、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼンのような長鎖アルキル基を有するベンゼン類等の芳香族炭化水素類、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化炭化水素類、ピリジン、ピラジン、フラン、ピロール、チオフェン、メチルピロリドン等の芳香族復素環類、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド等のアミド類、カルボン酸塩またはその他の各種油類等が挙げられ、これらを単独または混合物として用いることができる。
【0036】
また、液相分散媒6(電気泳動分散液10)中には、必要に応じて、例えば、電解質、界面活性剤(アニオン性またはカチオン性)、金属石鹸、樹脂材料、ゴム材料、油類、ワニス、コンパウンド等の粒子からなる荷電制御剤、チタン系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、シラン系カップリング剤等の分散剤、潤滑剤、安定化剤等の各種添加剤を添加するようにしてもよい。
【0037】
界面活性剤としては、例えば、アルケニルコハク酸エステル、アルケニルコハク酸ポリイミド等が挙げられる。
さらに、液相分散媒6には、必要に応じて、アントラキノン系染料、アゾ系染料、インジゴイド系染料、トリフェニルメタン系染料、ピラゾロン系染料、スチルベン系染料、ジフェニルメタン系染料、キサンテン系染料、アリザリン系染料、アクリジン系染料、キノンイミン系染料、チアゾール系染料、メチン系染料、ニトロ系染料、ニトロソ系染料等の各種染料を溶解するようにしてもよい。
【0038】
電気泳動粒子5には、電荷を有し、電界が作用することにより、液相分散媒6中を電気泳動し得る粒子であれば、いかなるものをも用いることができ、特に限定はされないが、顔料粒子、樹脂粒子またはこれらの複合粒子のうちの少なくとも1種が好適に使用される。これらの粒子は、製造が容易であるとともに、電荷の制御を比較的容易に行うことができるという利点を有している。
【0039】
顔料粒子を構成する顔料としては、例えば、アニリンブラック、カーボンブラック、チタンブラック等の黒色顔料、酸化チタン、酸化アンチモン、硫酸バリウム、硫化亜鉛、亜鉛華、酸化珪素、酸化アルミニウム等の白色顔料、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、イソインドリノン、黄鉛、黄色酸化鉄、カドミウムイエロー、チタンイエロー、アンチモン等の黄色顔料、モノアゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、キナクリドンレッド、クロムバーミリオン等の赤色顔料、フタロシアニンブルー、インダスレンブルー、紺青、群青、コバルトブルー等の青色顔料、フタロシアニングリーン等の緑色顔料等が挙げられ、これらのうち1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0040】
また、樹脂粒子を構成する樹脂材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、尿素系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリスチレン、ポリエステル等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、複合粒子としては、例えば、顔料粒子の表面を樹脂材料や他の顔料で被覆したもの、樹脂粒子の表面を顔料で被覆したもの、顔料と樹脂材料とを適当な組成比で混合した混合物で構成される粒子等が挙げられる。
顔料粒子の表面を他の顔料で被覆した粒子としては、例えば、酸化チタン粒子の表面を、酸化珪素や酸化アルミニウムで被覆したものを例示することができ、かかる粒子は、白色粒子5aとして好適に用いられる。
【0041】
また、カーボンブラック粒子またはその表面を被覆した粒子は、着色粒子(黒色粒子)5bとして好適に用いられる。
また、電気泳動粒子5の形状は、特に限定されないが、球形状であるのが好ましい。
電気泳動粒子5の平均粒径は、10〜500nm程度であるのが好ましく、20〜300nm程度であるのがより好ましい。電気泳動粒子5の平均粒径を前記範囲とすることにより、電気泳動粒子5同士の凝集や、液相分散媒6中における沈降を確実に防止することができ、その結果、電気泳動表示装置20の表示品質の劣化を好適に防止することができる。
【0042】
なお、本実施形態のように、2種の異なる粒子を用いる場合、2種の粒子の平均粒径を異ならせること、特に、白色粒子5aの平均粒径を着色粒子5bの平均粒径より大きく設定するのが好ましい。これにより、電気泳動表示装置20の表示コントラストをより向上させることや、保持特性を向上させることができる。
具体的には、着色粒子5bの平均粒径を20〜100nm程度、白色粒子5aの平均粒径を150〜300nm程度とするのが好ましい。
【0043】
また、電気泳動粒子5の比重は、液相分散媒6の比重とほぼ等しくなるように設定されているのが好ましい。これにより、電気泳動粒子5は、電極3、4間への電圧の印加を停止した後においても、液相分散媒6中において一定の位置に長時間滞留することができる。すなわち、電気泳動表示装置20に表示された情報が長時間保持されることとなる。
また、マイクロカプセル40は、その大きさがほぼ均一であることが好ましい。これにより、電気泳動表示装置20では、表示ムラの発生が防止または低減され、より優れた表示性能を発揮することができる。
【0044】
また、マイクロカプセル40は、ほぼ球状(球形状)をなしているのが好ましい。これにより、マイクロカプセル40は、圧縮力が付与されたとしても、十分な耐圧性および耐ブリード性を有するものとなる。このため、電気泳動表示装置20は、長期間安定的に動作し得るものとなる。
なお、本明細書中において、マイクロカプセル40の耐圧性とは、「マイクロカプセル40に圧力がかかったとき、マイクロカプセル40が潰れずに耐えること」を言い、マイクロカプセル40の耐ブリード性とは、「マイクロカプセル40内に封入された液相分散媒6がマイクロカプセル40の外側に散逸されないこと」を言うものとする。
【0045】
また、マイクロカプセル40の体積平均粒子径は、20〜60μm程度であるのが好ましく、30〜50μm程度であるのがより好ましい。マイクロカプセル40の粒径がこのような範囲であることにより、マイクロカプセル40は、強固であり、かつ高い表示特性を示すものとなる。
このようなマイクロカプセル40は、マイクロカプセル含有層400において、縦横に単層で(厚さ方向に重なることなく1個ずつ)並んでいる。これにより、マイクロカプセル40が互いに厚さ方向に重なって複数層を形成している場合に比べて、各々のマイクロカプセル40に対して確実に電界を作用させることができる。このため、各マイクロカプセル40における電気泳動粒子50の泳動を確実に制御することができ、表示のコントラストをより高めることができる。
【0046】
また、前述したように、各マイクロカプセル40の上方の一部は、基板11の下面に設けられた複数の凹部101内に入り込んでおり、一方、各マイクロカプセル40の下方の一部は、対向基板12の上面に設けられた複数の凹部201内に入り込んでいる。このように、各凹部101、201内にマイクロカプセル40が入り込んでいることにより、マイクロカプセル40に電界を作用させ得る各電極3、4の有効面積を大きくすることができる。これにより、マイクロカプセル40内において電気泳動粒子5が泳動する領域の面積が大きくなり、電気泳動表示装置20は、コントラスト等の表示性能において特に優れたものとなる。
【0047】
また、各凹部101、201内にマイクロカプセル40が入り込んでいることにより、マイクロカプセル40の位置を確実に規制することができるため、マイクロカプセル含有層400において、マイクロカプセル40が偏在するのを確実に防止することができる。
また、各マイクロカプセル40は、第1のバインダ層41を介して凹部101に固定されている。
この第1のバインダ層41には、第1の電極3およびカプセル本体401(マイクロカプセル40)との親和性(密着性)に優れ、かつ、絶縁性に優れる樹脂材料(絶縁性または微小電流のみが流れる樹脂材料)が好適に用いられる。
【0048】
このような第1のバインダ層41の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、オレフィン系樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、セルロース系樹脂、シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂等の各種樹脂材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
このうち、第1のバインダ層41の構成材料は、アクリル系樹脂を主材料とするものが好ましい。これにより、第1のバインダ層41は、透光性に優れたものとなり、その結果、表示特性の向上を図ることができる。
【0049】
また、凹部101の深さDは、マイクロカプセル40の粒径に応じて適宜設定されるが、マイクロカプセル40の体積平均粒子径dとしたとき、0.1d〜0.25d程度であるのが好ましく、0.1d〜0.2d程度であるのがより好ましい。凹部101の深さDを前記範囲内とすることにより、マイクロカプセル40に電界を作用させ得る第1の電極3の有効面積を十分に確保することができる。また、凹部101の深さDを前記範囲内とすることにより、1つのマイクロカプセル40が一旦凹部101内に入り込むと、別のマイクロカプセル40が凹部101内に入り難くなる。したがって、1つの凹部101に複数のマイクロカプセル40が入り込むのを確実に防止することができる。これにより、電気泳動表示装置20における表示ムラの発生を防止することができる。
【0050】
一方、各マイクロカプセル40は、第2のバインダ層42を介して凹部201に固定されている。
この第2のバインダ層42にも、第2の電極4およびカプセル本体401(マイクロカプセル40)との親和性(密着性)に優れ、かつ、絶縁性に優れる樹脂材料が好適に用いられる。
このような第2のバインダ層42の構成材料には、前述した第1のバインダ層41の構成材料と同様の材料を用いることができる。
【0051】
また、凹部201の深さDは、マイクロカプセル40の粒径に応じて適宜設定されるが、マイクロカプセル40の体積平均粒子径をdとしたとき、0.12d〜0.5d程度であるのが好ましく、0.15d〜0.3d程度であるのがより好ましい。凹部201の深さDを前記範囲内とすることにより、マイクロカプセル40に電界を作用させ得る第2の電極4の有効面積を十分に確保するとともに、各バインダ層41、42間の離間距離sを十分に確保することができる。その結果、電気泳動表示装置20は、電極3、4間の電流のリークが確実に防止され、消費電力の低減が図られるとともに、表示特性に優れたものとなる。
【0052】
なお、各凹部101、201の深さD、Dが、前記下限値を下回った場合、各電極3、4の、マイクロカプセル40の表面に臨む面積が小さくなるため、マイクロカプセル40の狭い領域にしか電界を作用させることができず、表示特性(コントラスト等)が低下するおそれがある。一方、凹部101または凹部201の深さが、前記上限値を上回った場合、各電極3、4間の離間距離sが著しく短くなり、電極3、4間のリーク電流が著しく増大するおそれがある。
また、凹部101の深さDおよび凹部201の深さDは、互いに異なっているのが好ましい。これにより、相対的に深い方の凹部によってマイクロカプセル40を確実に固定することができる一方、対向する相対的に浅い方の凹部によって、各電極3、4間の離間距離sが著しく小さくならないようにすることができる。
【0053】
本実施形態では、凹部201が凹部101より深くなっている。
なお、第1のバインダ層41の平均厚さは、0.5〜10μm程度であるのが好ましく、1〜5μm程度であるのがより好ましい。これにより、第1のバインダ層41の光透過性と接着力との最適化を図ることができる。
一方、第2のバインダ層42は、各マイクロカプセル40と凹部201(第2の電極4)との間に介挿され、これらを固定するとともに、各マイクロカプセル40同士の隙間に充填されている。これにより、第2のバインダ層42は、第1の電極3と第2の電極4との間を確実に絶縁することができる。
【0054】
なお、第2のバインダ層42の平均厚さは、マイクロカプセル40の粒径に応じて適宜設定される。
また、基部1と基部2との間であって、それらの縁部に沿って、封止部7が設けられている。この封止部7により、各電極3、4およびマイクロカプセル含有層400が気密的に封止されている。これにより、電気泳動表示装置20内への水分の浸入を防止して、電気泳動表示装置20の表示性能の劣化をより確実に防止することができる。
【0055】
封止部7の構成材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、オレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂のような各種樹脂材料等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
なお、封止部7は、必要に応じて設ければよく、省略することもできる。
このような電気泳動表示装置20は、次のようにして動作する。
【0056】
以下、電気泳動表示装置20の作動(動作)方法について説明する。
図2は、図1に示す電気泳動表示装置の動作方法を説明するための模式図である。なお、以下の説明では、図2中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
電気泳動表示装置20の第1の電極3と第2の電極4との間に電圧を印加すると、これらの間に電界が生じる。この電界にしたがって、電気泳動粒子5(着色粒子5b、白色粒子5a)は、いずれかの電極に向かって電気泳動する。
【0057】
ここで、例えば、白色粒子5aとして正電荷を有するものを用い、着色粒子(黒色粒子)5bとして負電荷のものを用いた場合、図2(A)に示すように、第2の電極4を正電位とすると、白色粒子5aは、第1の電極3側に移動して、第1の電極3に集まる。一方、着色粒子5bは、第2の電極4側に移動して、第2の電極4に集まる。このため、電気泳動表示装置20を上方(表示面側)から見ると、白色粒子5aの色が見えること、すなわち、白色が見えることになる。
【0058】
これとは逆に、図2(B)に示すように、第2の電極4を負電位とすると、白色粒子5aは、第2の電極4側に移動して、第2の電極4に集まる。一方、着色粒子5bは、第1の電極3側に移動して、第1の電極3に集まる。このため、電気泳動表示装置20を上方(表示面側)から見ると、着色粒子5bの色が見えること、すなわち、黒色が見えることになる。
【0059】
このような構成において、電気泳動粒子5(白色粒子5a、着色粒子5b)の帯電量や、電極3または4の極性、電極3、4間の電位差等を適宜設定することにより、電気泳動表示装置20の表示面側には、白色粒子5aおよび着色粒子5bの色の組み合わせや、電極3、4に集合する粒子の数等に応じて、所望の情報(画像)が表示される。
なお、基部1に設けられた凹部101および基部2に設けられた凹部201は、必要に応じて設ければよく、省略することもできる。
ここで、本発明の電気泳動表示装置の他の構成例について説明する。
図3に示す電気泳動表示装置20は、図1に示す電気泳動表示装置20から、各凹部101、201を省略したものである。すなわち、第1の電極3の表面および第2の電極4の表面は、それぞれ平坦面である。
【0060】
<電気泳動表示装置の製造方法>
≪第1実施形態≫
次に、図1に示す電気泳動表示装置20を製造する方法(本発明の電気泳動表示装置の製造方法)の第1実施形態について説明する。
図4は、それぞれ、本発明の電気泳動表示装置の製造方法の第1実施形態を説明するための模式図である。なお、以下の説明では、図4中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
【0061】
本実施形態にかかる電気泳動表示装置20の製造方法は、[1A]板状の第1の電極3上に第1のバインダ層41を形成する第1の工程と、[2A]第1のバインダ層41上に、複数のマイクロカプセル40を供給する第2の工程と、[3A]複数のマイクロカプセル40のうち、第1のバインダ層41に接していないものを除去する第3の工程と、[4A]複数のマイクロカプセル40上に第2のバインダ層42を形成する第4の工程と、[5A]第2のバインダ層42上に第2の電極4を配置する第5の工程とを有する。以下、各工程について順次説明する。
【0062】
[1A]まず、図4(a)に示すように、基部1と、その上面に設けられた第1の電極3とを有する基板11を用意する。
第1の電極3は、例えば、各種化学蒸着法、各種物理蒸着法のような成膜方法により形成することができる。
次に、図4(b)に示すように、第1の電極3上に第1のバインダ層41を形成する。
第1のバインダ層41は、その構成材料を溶媒に溶解してなる溶液を、第1の電極3上に供給して液状被膜を得た後、液状被膜中の溶媒を除去することによって得られる。
【0063】
溶媒としては、例えば、硝酸、硫酸、アンモニア、過酸化水素、水、二硫化炭素、四塩化炭素等の無機溶媒や、メチルエチルケトン(MEK)等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン(DME)等のエーテル系溶媒、メチルセロソルブ、フェニルセロソルブ等のセロソルブ系溶媒、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、トルエン等の芳香族炭化水素系溶媒、メチルピロリドン等の芳香族複素環化合物系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMA)等のアミド系溶媒、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン化合物系溶媒、酢酸エチル、酢酸メチル、ギ酸エチル等のエステル系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等の硫黄化合物系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、アクリロニトリル等のニトリル系溶媒、ギ酸、酢酸、トリクロロ酢酸、トリフルオロ酢酸等の有機酸系溶媒のような各種有機溶媒、または、これらを含む混合溶媒等が挙げられる。
【0064】
また、第1の電極3上に溶液を供給する方法としては、例えば、例えば、ディッピング法、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット法、マイクロコンタクトプリンティング法等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0065】
なお、液状被膜中から溶媒を除去する方法には、例えば、液状被膜を加熱する方法、液状被膜に赤外線を照射する方法、液状被膜に超音波を付与する方法等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせた方法を用いることができる。
また、図4(a)に示す基部1には、その上面が凹没してなる凹部が複数設けられており、第1の電極3は、この凹部の内面を含む基部1の上面全体に設けられている。すなわち、基板11の上面には、第1の電極3の上面が凹没してなる凹部101が設けられている。
そして、第1のバインダ層41は、図4(b)に示すように、凹部101内のみに部分的(選択的)に設けられている。
【0066】
なお、凹部101内に設けられた第1のバインダ層41の厚さは、凹部101の深さDの10〜60%程度であるのが好ましく、20〜50%程度であるのがより好ましい。第1のバインダ層41の量(厚さ)を前記のように設定することにより、十分な接着力を確保することができる。また、仮に凹部101内に入り込んだマイクロカプセル40によって第1のバインダ層41が凹部101の外に押し出されたとしても、押し出された第1のバインダ層41が盛り上がって第2のバインダ層42に接触してしまうのを確実に防止することができる。
【0067】
また、第1のバインダ層41の量(厚さ)を前記範囲内に設定することにより、第1のバインダ層41によって固定されるマイクロカプセル40の粒径をある程度揃えることができる。すなわち、著しく小さいマイクロカプセル40や著しい大きいマイクロカプセル40が、第1のバインダ層41に接触し難くなるため、固定され難くなる。これにより、大きさの不揃いなマイクロカプセル40が容易に除去され、電気泳動表示装置20の表示ムラを抑制することができる。
【0068】
[2A]次に、図4(c)に示すように、第1のバインダ層41上に複数のマイクロカプセル40を供給する。これにより、第1のバインダ層41を介して第1の電極3上に複数のマイクロカプセル40を固定してなる電気泳動表示シート21が得られる。
マイクロカプセル40の供給は、例えば、複数のマイクロカプセル40を分散媒に分散してなる分散液(マイクロカプセル分散液)を第1のバインダ層41上に供給した後、分散媒を除去することによって行う。
【0069】
分散媒としては、前述した溶媒と同様のものが挙げられるが、その中でもマイクロカプセル40より比重の小さいものが好ましい。このような分散媒を用いることにより、第1のバインダ層41上にマイクロカプセル分散液を供給した際に、マイクロカプセル40が速やかに沈降する。これにより、マイクロカプセル40のみを第1のバインダ層41上に効率よく配置することができる。
【0070】
また、分散媒は、揮発性のものが好ましい。揮発性の分散媒を用いることにより、後述する分散媒を除去する過程において、分散媒を揮発・除去することができる。これにより、マイクロカプセル40のみを第1のバインダ層41上に特に簡単に配置することができる。
分散液の供給方法には、前記工程[1A]で挙げた溶液の供給方法と同様の方法を用いることができる。
【0071】
また、分散媒を除去する方法には、前記工程[1A]で挙げた分散媒の除去方法と同様の方法を用いることができる。
なお、マイクロカプセル40を供給した後、必要に応じて、マイクロカプセル40を第1のバインダ層41に押さえ付けるように圧縮する。これにより、比較的大きなマイクロカプセル40が優先的に押圧されることとなり、優先的に凹部101内に入り込むことができる。比較的小さなマイクロカプセルは、凹部に入り込んだ比較的大きなマイクロカプセル同士の間に存在し、あるものはマイクロカプセル40と電極3の隙間に存在するが大部分の小さなカプセルは大きなカプセルの上部に押し出される。その結果、供給されたマイクロカプセル40は、凹部101内に入り込むマイクロカプセル40と、入り込めないマイクロカプセル40とに、大きさによって選別されることとなる。
【0072】
この場合、マイクロカプセル40を押圧する際の圧力は、0.01〜0.2MPa程度であるのが好ましく、0.05〜0.1MPa程度であるのがより好ましい。圧力を前記範囲内に設定することにより、マイクロカプセル40を破壊することなく、第1のバインダ層41に確実に押し付けることができる。
また、マイクロカプセル40を供給した後、必要に応じて、第1のバインダ層41を加熱する。これにより、第1のバインダ層41に粘着性を発現させ、マイクロカプセル40を第1のバインダ層41に確実に固定することができる。
【0073】
このとき、第1のバインダ層41の加熱温度は、その構成材料に応じて適宜設定されるが、一例としては、好ましくは50〜120℃程度、より好ましくは70〜100℃程度とされる。加熱温度をこのような範囲に設定すれば、第1のバインダ層41に十分な接着性が発現するとともに、マイクロカプセル40が熱によって変質・劣化するのを防止することができる。
【0074】
[3A]次に、複数のマイクロカプセル40のうち、第1のバインダ層41に接していないものを除去する。これにより、マイクロカプセル40を、厚さ方向に重なることなく1個ずつ(単層に)並べることができる。その結果、各マイクロカプセル40に対して確実に電界を作用させることができるようになり、電気泳動表示装置20における表示のコントラストを高めることができる。
【0075】
マイクロカプセル40を除去する方法としては、例えば、電気泳動表示シート21を傾ける方法、電気泳動表示シート21に振動を加える方法、またはこれらを組み合わせた方法等が挙げられる。
このうち、図4(d)に示すように、電気泳動表示シート21を傾けた場合、凹部101内に入り込めなかったマイクロカプセル40、すなわち、第1のバインダ層41に接していないマイクロカプセル40は、電気泳動表示シート21上から落下する。その結果、電気泳動表示シート21上には、図4(e)に示すように、凹部101内に入り込んだマイクロカプセル40のみが残存し、それ以外のマイクロカプセル40は簡単に除去されることとなる。
【0076】
一方、電気泳動表示シート21に振動を加えた場合、凹部101内に入り込めなかったマイクロカプセル40、すなわち、第1のバインダ層41に接していないマイクロカプセル40は、電気泳動表示シート21から振り落とされる。その結果、電気泳動表示シート21上には、凹部101内に入り込んだマイクロカプセル40のみが残存し、それ以外のマイクロカプセル40は除去されることとなる。
【0077】
ところで、従来の電気泳動表示装置の製造方法では、マイクロカプセルをバインダ溶液に分散してなるマイクロカプセル分散液を、電極上に塗布し、これを乾燥させることによってマイクロカプセルを電極上に配置していた。この方法では、マイクロカプセル同士が厚さ方向に重なり合ってしまうことが頻発していた。こうなると、電気泳動粒子の泳動が阻害され、コントラストの低下等を招いていた。
【0078】
また、従来の方法では、塗布したマイクロカプセル分散液に気泡が巻き込まれ易いという問題があった。巻き込まれた気泡は、マイクロカプセルに対する電界の作用を阻害し、電気泳動粒子の泳動が妨げる。その結果、正しい表示が行われないという問題があった。
さらに、不可避的に含まれた金属イオンがバインダ中に分散してしまうおそれがある。この金属イオンは、電極間にリーク電流が発生する要因となっていた。
【0079】
これに対し、本実施形態にかかる製造方法によれば、マイクロカプセルとバインダとを別々に供給するようにしたため、第1のバインダ層41によって固定されないマイクロカプセル40は脱落し易くなり、複数のマイクロカプセル40が厚さ方向に重なり難くなる。このため、マイクロカプセル40を効率よく単層に配置することができ、表示のコントラストを高めることができる。
【0080】
また、前述したように、マイクロカプセル40を大きさによって選別することにより、第1のバインダ層41によって固定されるマイクロカプセル40の大きさを揃えることができる。これにより、電気泳動表示装置20における表示ムラの低減を図ることができる。
さらに、マイクロカプセルとバインダとを混ぜ合わせるプロセスを経ないため、バインダ中に気泡を巻き込み難いという利点がある。このため、気泡によって電気泳動粒子5の泳動が妨げられることが防止され、正しい表示を行わせることができる。また、金属イオンがバインダ中に分散し難くなるため、電極間にリーク電流が生じるのを抑制することができる。
【0081】
また、基部1に設けられた凹部101は、その深さDが、基部2に設けられた凹部201の深さDより浅くなっている。
ここで、凹部101の深さDは、マイクロカプセル40の体積平均粒子径dとしたとき、0.1d〜0.25d程度であるのが好ましい。凹部101の深さDを前記範囲内のように比較的浅くすることにより、比較的大きなマイクロカプセル40は凹部101内に入り込んだ後、比較的小さなマイクロカプセル40は凹部101内に入り難くなる。その結果、マイクロカプセル40の選別をより確実に行うことができる。
【0082】
[4A]次に、複数のマイクロカプセル40上に、前述の第1のバインダ層41と同様の方法で、第2のバインダ層42を構成する材料を含む溶液を供給する。これにより、溶液は、マイクロカプセル40上に液状被膜を形成するとともに、マイクロカプセル40同士の隙間に浸透する。その後、供給した溶液を乾燥することによって、図5(f)に示すような、マイクロカプセル40上およびマイクロカプセル40同士の隙間に設けられた第2のバインダ層42が形成される。
【0083】
ここで、第2のバインダ層42は、第1のバインダ層41に接触するように形成されてもよいが、接触しないように形成されるのが好ましい。この場合、第2のバインダ層42を形成するための溶液が、下方に流れ落ちないようにすれば、第1のバインダ層41に接触しないように第2のバインダ層42を形成することができる。
具体的には、第2のバインダ層42を形成するための溶液は、粘性が高くなるように設定される。これにより、溶液の流動性を低下させ、溶液が第1のバインダ層41に流れ落ちるのを防止することができる。
なお、溶液の粘度は、第2のバインダ層42を構成する材料と溶媒との混合比率、溶液の温度等を適宜設定することにより調整することができる。
【0084】
[5A]次に、図5(g)に示すように、第2のバインダ層42上に、第2の電極4を備えた基部2(対向基板12)を配置する。
第2の電極4は、基部2の下面に、前述の第1の電極3と同様の方法で形成することができる。
また、図5(g)に示す対向基板12には、その下面が上方に凹んでなる凹部201が設けられている。
【0085】
なお、工程[5A]の後、必要に応じて、基部1と基部2とが近付くようにこれらを圧縮する。これにより、図5(h)に示すように、凹部201に、各マイクロカプセル40が確実に入り込む。
その結果、各マイクロカプセル40は、その下方の一部が凹部101内に入り込む一方、上方の一部が凹部201内に入り込むことができる。これにより、各マイクロカプセル40の位置を確実に規制することができる。
【0086】
また、工程[2A]と同様、必要に応じて、得られたものを加熱する。これにより、第1のバインダ層41および第2のバインダ層42に接着性が発現し、マイクロカプセル40をより確実に固定することができる。
次に、図5(i)に示すように、電気泳動表示シート21および対向基板12(回路基板22)の縁部に沿って、封止部7を形成する。
これは、電気泳動表示シート21(基部2)と回路基板22(基部1)との間であって、これらの縁部に沿って封止部7を形成するための材料を、例えば、ディスペンサ等により供給し、固化または硬化させることにより形成することができる。
以上のようにして、図1に示す電気泳動表示装置20が得られる。
【0087】
≪第2実施形態≫
次に、図1に示す電気泳動表示装置20を製造する方法(本発明の電気泳動表示装置の製造方法)の第2実施形態について説明する。
図6は、本発明の電気泳動表示装置の製造方法の第2実施形態を説明するための模式図である。なお、以下の説明では、図6中の上側を「上」、下側を「下」と言う。
以下、第2実施形態にかかる電気泳動表示装置の製造方法について説明するが、前記第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項については、その説明を省略する。
【0088】
本実施形態にかかる電気泳動表示装置の製造方法は、第4の工程および第5の工程が異なること以外は、前記第1実施形態と同様である。
すなわち、本実施形態にかかる電気泳動表示装置20の製造方法は、[1B]板状の第1の電極3上に第1のバインダ層41を形成する第1の工程と、[2B]第1のバインダ層41上に、複数のマイクロカプセル40を供給する第2の工程と、[3B]複数のマイクロカプセル40のうち、第1のバインダ層41に接していないものを除去する第3の工程と、[4B]板状の第2の電極4の下面にあらかじめ第2のバインダ層42を形成しておき、複数のマイクロカプセル40と第2のバインダ層42とが密着するように、複数のマイクロカプセル40上に第2の電極4を重ねる工程(第4の工程および第5の工程)とを有する。以下、各工程について順次説明する。
【0089】
[1B]まず、前記第1実施形態と同様にして、上面に第1の電極3が設けられた基部1を用意する。
次いで、前記第1実施形態と同様にして、第1の電極3上に第1のバインダ層41を形成する。
[2B]次に、前記第1実施形態と同様にして、第1のバインダ層41上に複数のマイクロカプセル40を供給する。これにより、電気泳動表示シート(フロントプレーン)21を得る。
【0090】
[3B]次に、基部2の下面に、第2の電極4を形成する。これにより、回路基板(バックプレーン)22(対向基板12)を得る。
次に、図6(a)に示すように、第2の電極4の下面に第2のバインダ層42を形成する。
この第2のバインダ層42は、前記第1実施形態と同様にして形成することができる。
【0091】
なお、対向基板12は、前記第1実施形態と同様、下面に凹部201を有している。また、第2の電極4は、対向基板12の下面全体に設けられている。
また、第2のバインダ層42は、この第2の電極4を覆うように、対向基板12の下面全体に形成される。このため、第2のバインダ層42の一部は、凹部201に入り込むこととなる。その結果、第2のバインダ層42は、凹部201に入り込んだ部分がアンカー効果をもたらし、第2の電極4に対して確実に接着されることとなる。
【0092】
なお、第2のバインダ層42の形成は、通常、形成面が上を向く状態(図6(a)を上下に反転させた状態)で行う。そして、第2の電極4上に第2のバインダ層42を形成した後、再び上下反転させ、図6(a)に示す状態とする。この際、第2のバインダ層42は、自重によって脱落することなく、第2の電極4に対して確実に貼り付いていることができる。これは、前述したように、第2のバインダ層42と第2の電極4とが確実に接着されているためである。
【0093】
次に、図6(a)に示すように、マイクロカプセル40と第2のバインダ層42とが密着するように、電気泳動表示シート21上に対向基板12(回路基板22)を重ね合わせる(図6(b)参照)。
その後、封止部7を形成することにより、図6(c)に示すように、図1に示す電気泳動表示装置20が得られる。
【0094】
なお、電気泳動表示シート21と、第2のバインダ層42を備える回路基板22とを重ね合わせる際には、図6(a)とは逆に、マイクロカプセル40が配置された面が鉛直下向きになるように電気泳動表示シート21を保持した状態で、その下側から、第2のバインダ層42を備える回路基板22を重ね合わせるようにしてもよい。このようにすれば、仮に、複数のマイクロカプセル40のうち、第1のバインダ層41に接していない不要なマイクロカプセル40(厚さ方向に重なり合ったマイクロカプセル40)は、電気泳動表示シート21と回路基板22とを重ね合わせる過程で、電気泳動表示シート21から自然に落下する。したがって、特別な処理を施すことなく、この不要なマイクロカプセル40を簡単に除去することができる。
【0095】
本実施形態では、第4の工程と第5の工程とを同時に行うことができるため、作業効率の向上を図ることができる。
また、本実施形態では、第2のバインダ層42をあらかじめ第2の電極4に接着させた状態で、電気泳動表示シート21に対して重ね合わされるため、第2のバインダ層42と第2の電極4との間に、気泡が残存し難いという利点が得られる。
このようにして製造された電気泳動表示装置20は、コントラストが高く、かつ表示ムラの少ない、表示性能に優れたものとなる。
【0096】
<電子機器>
以上のような電気泳動表示装置20は、各種電子機器に組み込むことができる。以下、電気泳動表示装置20を備える本発明の電子機器について説明する。
<<電子ペーパー>>
まず、本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態について説明する。
図7は、本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
図7に示す電子ペーパー600は、紙と同様の質感および柔軟性を有するリライタブルシートで構成される本体601と、表示ユニット602とを備えている。
このような電子ペーパー600では、表示ユニット602が、前述したような電気泳動表示装置20で構成されている。
【0097】
<<ディスプレイ>>
次に、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態について説明する。
図8は、本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図である。このうち、図8中(a)は断面図、(b)は平面図である。
図8に示すディスプレイ(表示装置)800は、本体部801と、この本体部801に対して着脱自在に設けられた電子ペーパー600とを備えている。なお、この電子ペーパー600は、前述したような構成、すなわち、図7に示す構成と同様のものである。
【0098】
本体部801は、その側部(図8(a)中、右側)に電子ペーパー600を挿入可能な挿入口805が形成され、また、内部に二組の搬送ローラ対802a、802bが設けられている。電子ペーパー600を、挿入口805を介して本体部801内に挿入すると、電子ペーパー600は、搬送ローラ対802a、802bにより挟持された状態で本体部801に設置される。
【0099】
また、本体部801の表示面側(図8(b)中、紙面手前側)には、矩形状の孔部803が形成され、この孔部803には、透明ガラス板804が嵌め込まれている。これにより、本体部801の外部から、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を視認することができる。すなわち、このディスプレイ800では、本体部801に設置された状態の電子ペーパー600を、透明ガラス板804において視認させることで表示面を構成している。
【0100】
また、電子ペーパー600の挿入方向先端部(図8中、左側)には、端子部806が設けられており、本体部801の内部には、電子ペーパー600を本体部801に設置した状態で端子部806が接続されるソケット807が設けられている。このソケット807には、コントローラー808と操作部809とが電気的に接続されている。
このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600は、本体部801に着脱自在に設置されており、本体部801から取り外した状態で携帯して使用することもできる。
【0101】
また、このようなディスプレイ800では、電子ペーパー600が、前述したような電気泳動表示装置20で構成されている。
なお、本発明の電子機器は、以上のようなものへの適用に限定されず、例えば、テレビ、ビューファインダ型、モニタ直視型のビデオテープレコーダ、カーナビゲーション装置、ページャ、電子手帳、電卓、電子新聞、ワードプロセッサ、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、テレビ電話、POS端末、タッチパネルを備えた機器等を挙げることができ、これらの各種電子機器の表示部に、本発明の電気泳動表示装置を適用することが可能である。
以上、本発明の電気泳動表示装置の製造方法、電気泳動表示装置および電子機器を、図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0102】
例えば、前記実施形態では、マイクロカプセルは、隣り合う2つの画素電極(電極)にまたがるように配置されているが、本発明では、これに限らず、例えば、マイクロカプセルが、隣り合う3つ以上の画素電極にまたがるように配置されていてもよく、また、隣り合う画素電極にまたがらないように配置されていてもよく、また、これらが混在していてもよい。
また、本発明の電気泳動表示装置の製造方法は、前記各実施形態を組み合わせたものでもよい。
また、本発明の電気泳動表示装置の製造方法は、必要に応じて、任意の工程を追加することもできる。
【実施例】
【0103】
次に、本発明の具体的実施例について説明する。
1.電気泳動表示装置の製造
(実施例1)
<1>まず、アルミニウムで構成される第1の電極を備えたPET基板(基板)を用意した。なお、PET基板および第1の電極には、全体にわたって凹部(平均深さ:5μm)が設けられている。
一方、アクリル系樹脂をケトン系溶媒に溶解してバインダ溶液を調製した。
次いで、このバインダ溶液を、第1の電極上に塗布し、乾燥させた。これにより、第1のバインダ層を得た。なお、第1のバインダ層は、第1の電極に設けられた凹部内にのみ、選択的に設けるようにした。また、第1のバインダ層の平均厚さは2μmであった。
【0104】
<2>次に、電気泳動分散液を内包してなる複数のマイクロカプセル(体積平均粒子径:40μm)を用意し、これを分散媒に分散してマイクロカプセル分散液を調製した。
次いで、この分散液を、第1のバインダ層上に塗布し、乾燥させた。これにより、複数のマイクロカプセルを第1のバインダ層上に配置した。
その後、マイクロカプセルを0.1MPaの圧力で第1のバインダ層に対して押圧した。これにより、マイクロカプセルを第1の電極に設けた凹部に入り込ませた。
次いで、マイクロカプセルを配置したPET基板を傾け、振動を与えることによって、凹部に入り込んでいないマイクロカプセルを選択的に振り落とした。
【0105】
<3>一方、アクリル系樹脂をケトン系溶媒に溶解してバインダ溶液を調製した。
次いで、このバインダ溶液を、配置した複数のマイクロカプセル上に塗布した。これにより、バインダ溶液は、複数のマイクロカプセル上に液状被膜を形成するとともに、マイクロカプセル同士の隙間に浸透した。その後、塗布したバインダ溶液を乾燥させることにより、第2のバインダ層を形成した。
【0106】
<4>また、ITOで構成される第2の電極を備えたPET基板(対向基板)を用意した。なお、PET基板および第2の電極には、全体にわたって凹部(平均深さ:10μm)が設けられている。また、PET基板には、あらかじめTFT回路が形成されている。
次いで、第2の電極を備えるPET基板を、第2のバインダ層と第2の電極とが密着するように、第2のバインダ層上に重ね合わせた。これにより、PET基板、第1の電極、第1のバインダ層、マイクロカプセル、第2のバインダ層、第2の電極およびPET基板がこの順で積層してなる積層体が得られた。
【0107】
<5>次に、この積層体を、厚さ方向に0.1MPaの圧力で圧縮した。これにより、マイクロカプセルを第2の電極に設けた凹部に入り込ませた。
次に、圧縮した積層体を、80℃で加熱した。これにより、第1のバインダ層および第2のバインダ層の接着性を促進し、マイクロカプセルを固定した。
次に、積層体の縁部(外周部)をエポキシ系接着剤で封止した。これにより、図1に示す電気泳動表示装置を得た。
【0108】
(実施例2)
第2の電極上に、あらかじめ第2のバインダ層を形成した後、第2のバインダ層とマイクロカプセルとが接触するように、マイクロカプセル上に、形成した第2のバインダ層、第2の電極およびPET基板を重ね合わせるようにした以外は、前記実施例1と同様にして電気泳動表示装置を得た。
なお、第2の電極上にあらかじめ形成した第2のバインダ層は、第2の電極上の全面に設けるようにした。また、第2の電極に設けられた凹部は、第2のバインダ層によって充填するようにした。
【0109】
(実施例3)
基板(第1の電極を備えたPET基板)および対向基板(第2の電極を備えたPET基板)として、それぞれ凹部のないものを用いた以外は、前記実施例1と同様にして電気泳動表示装置を得た。
(実施例4)
基板(第1の電極を備えたPET基板)および対向基板(第2の電極を備えたPET基板)として、それぞれ凹部のないものを用いた以外は、前記実施例2と同様にして電気泳動表示装置を得た。
【0110】
(比較例1)
マイクロカプセルとバインダとを別々に供給するのではなく、バインダを溶媒に溶解してなるバインダ溶液に、マイクロカプセルを分散して、マイクロカプセル分散液を調製し、これを第1の電極上に塗布することによって、マイクロカプセルとバインダとを同時に供給するようにした以外は、前記実施例1と同様にして電気泳動表示装置を得た。
【0111】
(比較例2)
マイクロカプセルとバインダとを別々に供給するのではなく、バインダを溶媒に溶解してなるバインダ溶液に、マイクロカプセルを分散して、マイクロカプセル分散液を調製し、これを第1の電極上に塗布することによって、マイクロカプセルとバインダとを同時に供給するようにした以外は、前記実施例2と同様にして電気泳動表示装置を得た。
【0112】
2.評価
2.1 表示のコントラスト比およびリーク電流の測定
各実施例および各比較例で得られた電気泳動表示装置について、表示のコントラスト比と、リーク電流とを測定した。
なお、表示のコントラスト比は、着色表示領域における反射率をRc、白表示領域における反射率Rwとしたとき、Rw/Rcから求めた。
また、リーク電流の測定は、以下の測定条件に基づいて測定した。
<リーク電流測定条件>
・印加電圧 :DC15V
・印加時間 :400ミリ秒
・測定時間 :印加後、安定状態にて測定(定常リーク電流)
【0113】
2.2 マイクロカプセルの配列および巻き込まれた気泡の有無の評価
各実施例および各比較例で得られた電気泳動表示装置の断面を観察し、マイクロカプセルの配列と、バインダ層の内部に巻き込まれた気泡の有無を、それぞれ以下の評価基準にしたがって評価した。なお、これらの評価は、電気泳動表示装置の断面を光学顕微鏡および走査型電子顕微鏡で観察することによって行った。
【0114】
<マイクロカプセルの配列の評価基準>
○:ほぼ単層に配列している
×:マイクロカプセル同士が重なり合った部分が多数ある
<バインダ層に巻き込まれた気泡の有無の評価基準>
◎:ほとんど気泡が巻き込まれていない
○:微小な気泡がわずかに巻き込まれている
△:所々に大きな気泡が巻き込まれている
×:全体に多数の気泡が分布している
以上、2.1、2.2の評価結果を表1に示す。
【0115】
【表1】

【0116】
表1に示すように、各実施例で得られた電気泳動表示装置は、いずれも、各比較例で得られた電気泳動表示装置に比べ、表示のコントラスト比に優れていた。
特に、基板および対向基板に凹部が設けられている場合(実施例1および実施例2)は、凹部が設けられていない場合(実施例3および実施例4)に比べて、表示のコントラスト比が特に高かった。
【0117】
また、各実施例で得られた電気泳動表示装置は、いずれも、各比較例で得られた電気泳動表示装置に比べ、単位面積当たりのリーク電流が小さかった。
ここで、実施例1で得られた電気泳動表示装置の縦断面の光学顕微鏡による観察像を図9に示す。また、比較例1で得られた電気泳動表示装置の縦断面の光学顕微鏡による観察像を図10に示す。なお、図9、10のうち、(a)は観察像であり、(b)は(a)の観察像において、マイクロカプセルの輪郭を強調して示した図である。
【0118】
実施例1で得られた電気泳動表示装置では、図9からも明らかなように、マイクロカプセル同士が厚さ方向(図9の上下方向)に重なり合うことなく単層に並んでいた。また、バインダ層にはほとんど気泡が含まれていなかった。
一方、比較例1で得られた電気泳動表示装置では、図10からも明らかなように、厚さ方向(図10の上下方向)に重なり合ったマイクロカプセルが認められた。また、バインダ層の内部には多数の気泡が含まれていた。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】本発明の電気泳動表示装置の縦断面を模式的に示す図である。
【図2】図1に示す電気泳動表示装置の作動原理を示す模式図である。
【図3】本発明の電気泳動表示装置の他の構成例の縦断面を模式的に示す図である。
【図4】本発明の電気泳動表示装置の製造方法の第1実施形態を説明するための模式図である。
【図5】本発明の電気泳動表示装置の製造方法の第1実施形態を説明するための模式図である。
【図6】本発明の電気泳動表示装置の製造方法の第2実施形態を説明するための模式図である。
【図7】本発明の電子機器を電子ペーパーに適用した場合の実施形態を示す斜視図である。
【図8】本発明の電子機器をディスプレイに適用した場合の実施形態を示す図である。
【図9】実施例1で得られた電気泳動表示装置の縦断面の観察像である。
【図10】比較例1で得られた電気泳動表示装置の縦断面の観察像である。
【符号の説明】
【0120】
1‥‥基部 2‥‥基部 3‥‥第1の電極 4‥‥第2の電極 5、5a、5b‥‥電気泳動粒子 6‥‥液相分散媒 7‥‥封止部 10‥‥電気泳動分散液 11‥‥基板 12‥‥対向基板 101、201‥‥凹部 20‥‥電気泳動表示装置 21‥‥電気泳動表示シート 22‥‥回路基板 40‥‥マイクロカプセル 400‥‥マイクロカプセル含有層 401‥‥カプセル本体 41‥‥第1のバインダ層 42‥‥第2のバインダ層 600‥‥電子ペーパー 601‥‥本体 602‥‥表示ユニット 800‥‥ディスプレイ 801‥‥本体部 802a、802b‥‥搬送ローラ対 803‥‥孔部 804‥‥透明ガラス板 805‥‥挿入口 806‥‥端子部 807‥‥ソケット 808‥‥コントローラー 809‥‥操作部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状の第1の電極上に第1のバインダ層を形成する工程と、
前記第1のバインダ層上に、少なくとも1種の電気泳動粒子を含む電気泳動分散液が内部空間に充填された複数のカプセルを供給することにより、前記第1のバインダ層を介して前記第1の電極上に前記複数のカプセルを固定してなる電気泳動表示シートを得る工程と、
前記複数のカプセルのうち、前記第1のバインダ層に接してないものを除去する工程と、
前記複数のカプセル上に、第2のバインダ層を形成する工程と、
前記第2のバインダ層上に板状の第2の電極を配置する工程とを有することを特徴とする電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項2】
板状の第1の電極上に第1のバインダ層を形成する工程と、
前記第1のバインダ層上に、少なくとも1種の電気泳動粒子を含む電気泳動分散液が内部空間に充填された複数のカプセルを供給することにより、前記第1のバインダ層を介して前記第1の電極上に前記複数のカプセルを固定してなる電気泳動表示シートを得る工程と、
前記複数のカプセルのうち、前記第1のバインダ層に接してないものを除去する工程と、
板状の第2の電極上にあらかじめ第2のバインダ層を形成しておき、前記各カプセルと前記第2のバインダ層とが密着するように、前記電気泳動表示シートと前記第2の電極とを重ね合わせる工程とを有することを特徴とする電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1の電極には、その表面が凹んでなる凹部が設けられており、
前記第1のバインダ層は、前記凹部内に選択的に形成される請求項1または2に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記第1の電極に設けられた前記凹部の深さは、前記複数のカプセルの体積平均粒子径をdとしたとき、0.1d〜0.25dである請求項3に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1のバインダ層の平均厚さは、前記第1の電極に設けられた前記凹部の深さの10〜60%である請求項3または4に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記複数のカプセルを供給する際に、前記複数のカプセルを揮発性の分散媒に分散してなるカプセル分散液を、前記第1のバインダ層上に塗布して液状被膜を形成した後、該液状被膜中から前記分散媒を揮発・除去することにより、前記複数のカプセルを残存させる請求項1ないし5のいずれかに記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記分散媒は、前記各カプセルよりも比重の小さいものである請求項6に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記複数のカプセルのうち、前記第1のバインダ層に接していないものを除去する工程の前に、前記電気泳動表示シートを厚さ方向に圧縮することにより、前記各カプセルを前記第1のバインダ層に押し付ける請求項1ないし7のいずれかに記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記電気泳動表示シートを圧縮する際の圧力は、0.01〜0.2MPaである請求項8に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記複数のカプセルのうち、前記第1のバインダ層に接していないものを除去する工程において、前記電気泳動表示シートを傾ける過程を経ることにより、前記第1のバインダ層に接していない前記カプセルを落下させて除去する請求項1ないし9のいずれかに記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記複数のカプセルのうち、前記第1のバインダ層に接していないものを除去する工程において、前記電気泳動表示シートに振動を加えることにより、前記第1のバインダ層に接していない前記カプセルを除去する請求項1ないし10のいずれかに記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記第2のバインダ層は、その一部が前記カプセル同士の隙間を充填するように形成される請求項1ないし11のいずれかに記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記第2の電極には、その表面が凹んでなる凹部が設けられており、
前記第2のバインダ層は、その一部が前記第2の電極に設けられた前記凹部に入り込むように形成されている請求項1ないし12のいずれかに記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記第2の電極に設けられた前記凹部の深さは、前記複数のカプセルの体積平均粒子径をdとしたとき、0.12d〜0.5dである請求項13に記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項15】
前記複数のカプセルの体積平均粒子径は、20〜60μmである請求項1ないし14のいずれかに記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項16】
前記カプセルは、ほぼ球状をなしている請求項1ないし15のいずれかに記載の電気泳動表示装置の製造方法。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれかに記載の電気泳動表示装置の製造方法により製造されたことを特徴とする電気泳動表示装置。
【請求項18】
請求項17に記載の電気泳動表示装置を備えることを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−198725(P2009−198725A)
【公開日】平成21年9月3日(2009.9.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−39184(P2008−39184)
【出願日】平成20年2月20日(2008.2.20)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【出願人】(000004628)株式会社日本触媒 (2,292)