説明

電気泳動表示装置

【課題】 フレキシビリティを有する薄型の電気泳動表示装置を提供する。
【解決手段】 対向配置させた基板間に、少なくとも絶縁性液体、1種類以上の帯電粒子及び基板間に形成された構造材とを備えた電気泳動表示装置であって、上記構造材のうち少なくとも表示部に存する部分が、基板に固定されていないことを特徴とする電気泳動表示装置。
【効果】 電気泳動表示装置における粒子同士の凝集や偏在を抑制し、表示品位や駆動特性を損なうことなく、また、フレキシビリティを有する電気泳動表示装置においても変形に対応して安定した基板間隔(ギャップ)を維持することができ、しかも、低コストで製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電界等の作用により可逆的に視認状態を変化させることができる電気泳動表示装置に関し、更に詳しくは、フレキシビリティを有する薄型の電気泳動表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報機器の発達に伴い、表示装置の低消費電力化、薄型化、フレキシブル化等の需要が増してきており、これらの需要に合わせた表示装置の研究、開発が盛んに行われている。
【0003】
このような表示装置の1つとして、Harold D. Leesらにより発明された電気泳動表示装置(例えば、特許文献1参照)が知られている。この電気泳動表示装置は、少なくとも一方が透明な2枚の電極基板を適当なスペーサーを介して対向配置し、この電極基板間に、プラスかマイナスいずれかの電荷を帯びた泳動粒子(顔料粒子などの微粒子)をこれと異なる色に着色された溶媒中に分散させ、この分散液を基板間に充填して表示パネルとした構成となっている。そして、この表示パネルに電界を印加して透明電極面に表示を得ようとするものである。
【0004】
この電極基板間に充填される電気泳動表示用液は、二酸化チタン等の泳動粒子と、この泳動粒子と色のコントラストを付けるための染料を溶解させたキシレン、テトラクロロエチレン、パラフィン、シリコーンオイル等の低誘電率の分散溶媒、界面活性剤等の分散剤、及び電荷付与剤等の添加剤とから構成されている。この電気泳動表示用液に電界を印加することによりインキ中の泳動粒子が透明電極側に移動し、表示面には微粒子の色が現れ、これと逆方向の電界を印加することにより泳動粒子は反対側に移動し、表示面には染料により着色された分散液の色が現れる。
【0005】
このような電気泳動表示装置は、電界の向きを制御することにより所望の表示を得ることができる表示装置であり、低コストで、視野角が通常の印刷物並に広く、消費電力が小さく、表示のメモリー性を有する等の長所を持つことから安価な表示装置として注目されている。
【0006】
しかしながら、電気泳動表示用液に用いられる微粒子は、長時間保存されたような場合に粒子同士が凝集したり、あるいは、繰り返し表示を行っているうちに粒子が偏在するなどして、表示の劣化が生じやすいといった課題を有している。
【0007】
このような表示面における電気泳動表示微粒子の偏在による表示の不均一を防止する方法として、従来より電気泳動表示用液を微細に隔離された多数の小部屋(セル)に充填することにより、粒子同士の凝集や偏在を抑制する方法や、小部屋(セル)の構成、製造方法などが多く提案されてきている(例えば、特許文献2〜8参照)。
【0008】
上記手法などによれば、粒子同士の凝集や偏在を抑制することが可能になるが、多数の小部屋(セル)を形成する壁などは基板に固定、接着等された状態で形成されているため、薄型の電気泳動表示装置として湾曲させたような場合には、壁と基板の間に応力が働き、壁の破損や表示の劣化が生じやすいといった課題を有している。
【0009】
また、電極間の間隔を一定に保持するために、若しくは分散系の厚みを一定に保持するために絶縁性の多孔性層よりなる阻止物を介装した表示装置が提案されている(例えば、特許文献9参照)。この方法によれば、短絡が阻止され、厚みを均一に保持でき、分散液の横方向の流動が阻止等されるものであるが、少なくとも表示に存する部分が基板に固定されていない場合の効果については、特に言及されていない。
【0010】
一方で、電気泳動表示用液をマイクロカプセルに封入して表示粒子として利用する方法(例えば、特許文献10参照)や、無色分散媒中に色調及び電気泳動性が互いに異なる少なくとも2種類の電気泳動性微粒子を分散した液をマイクロカプセル内に内包した例も提案されてきている(例えば、特許文献11参照)。
しかしながら、この手法によれば、薄型の電気泳動表示装置として湾曲させたような場合であっても、ある程度の柔軟性を有するために応力が緩和されるものであるが、マイクロカプセルの調製やその塗工といった工程を経る必要があり、電気泳動表示装置の作製に煩雑な手法を採らなければならないといった課題を有している。
【特許文献1】米国特許3612758号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献2】特開昭49−61075号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献3】特開平5−61075号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献4】特開2001−159765号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献5】特開2002−148662号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献6】特開2002−292736号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献7】特開2004−20640号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献8】特許第3189958号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献9】特公昭50−15355号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献10】特許第2551783号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【特許文献11】WO98/03896号公報(特許請求の範囲、実施例等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来技術の課題等に鑑み、これを解消しようとするものであり、電気泳動表示装置における粒子同士の凝集や偏在を抑制し、表示品位や駆動特性を損なうことなく、また、フレキシビリティを有する電気泳動表示装置においても変形に対応して安定した基板間隔(ギャップ)を維持することができ、しかも、低コストで製造できる電気泳動表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは、上記従来の課題等を解決するために、鋭意検討した結果、対向配置させた基板間に、少なくとも絶縁性液体、1種類以上の帯電粒子及び基板間に形成された構造材とを備えた電気泳動表示装置において、上記構造材のうち少なくとも表示部に存する部分を特定構造とすることにより、上記目的の電気泳動表示装置が得られることを見い出し、本発明を完成するに至ったのである。
【0013】
すなわち、本発明の電気泳動表示装置は、対向配置させた基板間に、少なくとも絶縁性液体、1種類以上の帯電粒子及び基板間に形成された構造材とを備えた電気泳動表示装置であって、上記構造材のうち少なくとも表示部に存する部分が、基板に固定されていないことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、電気泳動表示装置における粒子同士の凝集や偏在を抑制し、表示品位や駆動特性を損なうことなく、また、フレキシビリティを有する電気泳動表示装置においても変形に対応して安定した基板間隔(ギャップ)を維持することができ、しかも、低コストで製造できる電気泳動表示装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、本発明の実施形態を図面を参照しながら詳しく説明する。
図1は、本発明の電気泳動表示装置の実施形態の一例を示す図面であり、(a)は電気泳動表示装置の概略断面図、(b)は本発明の要旨となる構造材が基板間に固定されていない状態を示す(a)の丸印部分の部分拡大断面図、(c)は構造材の斜視図である。
【0016】
本実施形態の電気泳動表示装置Aは、対向配置させた基板10,15間に、少なくとも絶縁性液体、1種類以上の帯電粒子及び基板間に形成された構造材20とを備えたものであり、上記構造材20のうち少なくとも表示部に存する部分が、基板10に固定されていないことを特徴とするものである。
【0017】
本発明において、対向配置された基板10,15としては、例えば、透明樹脂フィルムや透明ガラス等にITO、ZnOなどの透明導電性材料を塗工法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の蒸着法などにより形成した光透過性のものや、樹脂フィルム、樹脂板、ガラス、セラミックス等の非導電性物質表面に金属等の導電性材料膜(層)を形成したものや、金属板を用いることができる。
これらの基板10,15は、フォトエッチングのような従来用いられている方法により、パターン形成したものを用いることも可能であるし、液晶等で使用されているTFT(Thin Film Transistor)基板等を用いることも可能であるが、これらに限定されるものではない。
また、表示装置として用いる上では、対向基板のうち少なくとも一方が光透過性の基板を用いることとなるが、表示面側だけでなく、背面側も光透過性の基板とすることも当然可能である。
【0018】
本発明に用いる絶縁性液体としては、従来より電気泳動表示に用いられている各種タイプのものを用いることができる。
具体的には、芳香族系炭化水素、へキサン、シクロヘキサン、ケロシン、アイソパー、パラフィン系炭化水素等の脂肪族炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、リン酸エステル類、フタル酸エステル類、カルボン酸エステル類、塩素化パラフィン、N,N−ジブチル−2−ブトキシ−5−ターシャリオクチルアニリン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0019】
本発明に用いる帯電微粒子としては、有色または無色(白色)の無機顔料粒子、有機顔料粒子、高分子微粒子等を用いることができる。本発明で規定する顔料粒子とは、分散媒として用いる絶縁性液体との組み合わせにおいて、絶縁性液体に対する溶解性が低いものであり、絶縁性液体中において分散された粒子状態で存在できるものをいう。
【0020】
用いることができる無機顔料粒子としては、例えば、二酸化チタン、硫化亜鉛、炭酸カルシウム、シリカ、ケイ酸カルシウム、酸化アンチモン、カオリン、雲母、硫酸バリウム、グロスホワイト、アルミナホワイト、タルク、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、カドミウムオレンジ、モリブデートオレンジ、ベンガラ、鉛丹、銀朱、カドミウムレッド、褐色酸化鉄、亜鉛鉄、クロムブラウン、クロムグリーン、酸化クロム、ビリジアン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、紺青、コバルトブルー、群青、セルリアンブルー、コバルトバイオレット、カーボンブラック、鉄黒、黒色低次酸化チタン、アルミニウム粉、銅粉、鉛粉、錫粉、亜鉛粉等が挙げられる。
【0021】
用いることができる有機顔料粒子としては、例えば、ファストイエロー、ジスアゾイエロー、縮合アゾイエロー、イソインドリンイエロー、キノフタロインイエロー、ベンズイミダゾロンイエロー、モノアゾイエローレーキ、ジニトロアニリンオレンジ、ペリノンオレンジ、ナフトールレッド、トルイジンレッド、パーマネントカーミン、ブリリアントファストスカーレット、ローダミン6Gレーキ、パーマネントレッド、レーキレッド、プリリアントカーミン、ナフトールレッド、キナクリドンマゼンタ、縮合アゾレッド、ナフトールカーミン、べリレンスカーレッド、縮合アゾスカーレッド、ペリレンレッド、キナクリドンレッド、ジケトピロロピロールレッド、ベンズイミダゾロンブラウン、フタロシアニングリーン、ビクトリアブルーレーキ、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー、ローダミンBレーキ、メチルバイオレットレーキ、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。
【0022】
用いることができる高分子微粒子としては、従来公知の方法で製造される有機ポリマーからなる高分子微粒子を使用することが可能であり、例えば、乳化重合を利用した方法、シード乳化重合法、ソープフリー重合法、分散重合法、懸濁重合法、シード重合法、シード重合+重合収縮を利用した方法、W/O/Wエマルジョンの懸濁重合による方法、スプレードライの液滴の表面乾燥を利用した方法、ポリマーエマルジョンを電解質固体粒子の添加により凝集させるシード凝集法等が挙げられるが、これらの方法によって作製されたものに限定されるものではない。
【0023】
また、高分子微粒子の材料としては、従来公知のポリマー材料から選ばれるものを、電気泳動表示用として使用する透明な分散媒に溶解しない組合せにおいて用いることができる。これらの例としては、スチレン系、スチレン−アクリル系、スチレン−イソプレン系、ジビニルベンゼン系、メチルメタクリレート系、メタクリレート系、エチルメタクリレート系、エチルアクリレート系、n−ブチルアクリレート系、アクリル酸系、アクリロニトリル系、アクリルゴム−メタクリレート系、エチレン系、エチレン−アクリル酸系、ナイロン系、シリコーン系、ウレタン系、メラミン系、ベンゾグアナミン系、フェノール系、フッ素(テトラクロロエチレン)系、塩化ビニリデン系、4級ピリジニウム塩系、合成ゴム、セルロース、酢酸セルロース、キトサン、アルギン酸カルシウム等のポリマー材料及び、これらのポリマー材料に対して架橋を行うことで耐溶剤性機能を向上させたポリマー材料を挙げることができ、特に、架橋アクリル系樹脂を成分に含む材料が耐溶剤性の点から好ましいが、これらのポリマー材料に限定されるものではない。
【0024】
更に、これらの高分子微粒子は、公知の方法によって染料や顔料によって着色されたものであっても良く、例えば、高分子微粒子の合成前にモノマーを着色してから上記手法を用いて製造する方法や、高分子微粒子の製造途中で着色する方法や、高分子微粒子を製造した後に着色する方法等を挙げることができる。
更に、別の方法としては、予め合成することによって得られた上記ポリマー材料中に染料や顔料を物理的に分散するなどした後に、所望の粒子サイズになるまで粉砕して得ることもできるが、着色された高分子微粒子としては、これら手法によって得られたものに限られるものではない。
【0025】
これら帯電粒子は、少なくとも1種類以上使用されるものであるが、1種類の帯電粒子を使用する場合には、帯電粒子の色と色調が異なり、粒子の移動に伴ってコントラスト表示可能な色に着色された絶縁性液体と組み合わせて用いられることになる。
例えば、帯電粒子として白色粒子が使用される場合には、絶縁性液体の色をオイルブルー等の油溶性染料等で着色したタイプとして用いられることになる。
【0026】
一方で、2種類の帯電粒子を使用する場合には、互いの帯電が逆になるような粒子で、更にコントラスト表示可能な色調の異なる粒子を組み合わせて用いられることになる。
例えば、一方の粒子として負帯電の白色粒子が選択された場合に、他方の粒子として正帯電の黒色粒子を選択して組み合わせることができる。この場合の絶縁性液体の色は、無色透明であることが好ましいが、絶縁性液体を更に着色する等して用いることも可能である。更には、帯電粒子の帯電量や色の異なる2種以上の粒子を適宜組み合わせて使用することも可能である。
【0027】
本発明において、電気泳動表示用液を構成する上記絶縁性液体、1種類以上の帯電粒子の他に、電荷調整剤、分散剤、界面活性剤、吸湿剤等の従来より電気泳動表示に用いられている各種タイプのものを適宜用いることもできる。
【0028】
本発明の基板10,15間に設けられる構造材20は、少なくとも適正な基板間隔維持や、対向基板の接触によるショート等を防止することが可能で、帯電粒子同士の凝集や偏在を抑制する効果を有するものであれば、その構造等は特に限定されない。
用いることができる構造材20としては、例えば、PETフィルムに正方形や六角形等の方形形状、円形形状、楕円形形状等の形状の孔をレーザー加工により形成したものや、繊維を編んで形成した織物体のようなものを挙げることができる。更には、熱可塑性の樹脂を用い、ホットエンボスのような方法で井桁状の構造を形成した構造体を用いることも可能であるが、これらに限定されるのではなく、上記効果を有する構造体であればよい。
好ましくは、高開口率を有し、かつ、帯電粒子同士の凝集や偏在を抑制することができるように、微細な小部屋(セル)を形成できるような構造体が望ましく、このような構造体を形成しやすいPETフィルムに正方形や六角形等の方形形状、円形形状等の形状の孔をレーザー加工により形成したものや、電気泳動表示用液の充填も容易となる繊維を編んで形成した平織等の織物体が望ましく、更に好ましくは、製造性、コスト等から、電気泳動表示用液の充填も容易となる繊維を編んで形成した平織等の織物体が望ましい。
図1(c)は、PETフィルムに正方形の形状の孔をレーザー加工により形成した構造材の一例を示すものである。
【0029】
本発明において、基板10,15間に形成された構造材20は、該構造材20のうちの少なくとも表示部に存する部分が、図1(b)に示すように、該基板20に固定されていないことが必要である。本実施形態では、構造材20が基板10との間に隙間16を有することにより固定されない構造となる。この隙間の長さtとしては、好ましくは、基板間隔(基板間の距離)、各構造材の種類・大きさや、絶縁性液体や1種類以上の帯電粒子を含む電気泳動表示用液の種類・充填量種等により変動するが、0〜5μmに調整されているものが望ましい。なお、ここでいう0μmとは、基板と構造材が接着等により固定化されている状態ではなく、単に接している状態を示すものである。
【0030】
本発明の構造材20は、該基板10に固定されていないため、電気泳動表示媒体が外部からの力により多少変形した場合にも、変形に応じて構造体20が移動可能なことにより、その応力を逃がすことができ、電気泳動表示装置の破損を抑制することが可能となる。
特に、フレキシビリティを有する薄型の電気泳動表示装置においては、変形可能なことに特徴を有するものであるが、このような電気泳動表示装置において絶大な効果を発揮することになる。
また、少なくとも表示部に存する部分が、基板10及び/又は15に固定されていないため、表示品位や駆動特性を損ないにくいものとなり、変形に対応して安定した基板間隔(ギャップ)を維持することも可能である。
【0031】
本発明の構造材20は、該構造材20のうち少なくとも表示部に存する部分が、該基板10に固定されていなければ、表示部以外の部分が該基板15に固定されていてもよく、例えば、表示部の反対側となる背面側の部分が基板15に固定されていてもよいものである。一方で、表示部だけに該構造体20が配置され、表示部以外には該構造材が配置されていないような電気泳動表示装置(図3)であってもよい。
例えば、構造体20を基板10,15間に挟持する際の利便性のために、表示以外の部分を接着剤などで基板10及び/又は15に固定することも可能であり、または、電気泳動表示用液を基板10,15間に封じ込めるために用いるシール材で固定することも可能であるが、これらに限定されるものではない。
図3及び図4は、本発明の電気泳動表示装置の使用状態の一例、他例を平面態様(表示内容ABC表示)で示す説明図である。図3は、本発明の構造材20のうち表示部以外の部分が、該基板10に固定されていないものであり、図4は表示部以外の部分が基板10に固定されている構造である。
【0032】
図5は、本発明の実施形態の電気泳動表示装置の製造工程の一例を示す説明図であり、図6は、従来用いられているフォトリソ法による電気泳動表示装置の製造工程の一例を示す説明図である。
図5は、基板15の電極面上に、予めPETフィルムに正方形の孔をレーザー加工により形成した構造材を接着させることなく載せた後、シール材30を基板15の外周上に塗布し、更に電気泳動表示用液を該シール材30により囲まれた領域内に充填し、最後に基板10を被せて、シール材30にUV光を照射して張り合わせる工程を示すものである。
【0033】
一方、図6は、基板15の電極面上に、UV硬化型の樹脂を塗布し、硬化させたくない部分(電気泳動表示用液を充填する部分)にフォトマスクを被せてUV光を照射したあと、非硬化部分を洗浄して取り除き、該硬化部分にはUV硬化型接着剤を塗布すると共に、シール材30を基板15の外周上に塗布し、更に電気泳動表示用液を該シール材30により囲まれた領域内に充填し、最後に基板10を被せて、シール材30にUV光を照射して張り合わせる工程を示すものである。
【0034】
図5のように構成される本実施形態の電気泳動表示装置Aでは、構造材20が少なくとも表示部分となる基板10部分に固定されていないため、電気泳動表示媒体が外部からの力により多少変形した場合にも、変形に応じて構造体20が移動可能なことにより、その応力を逃がすことができ、電気泳動表示装置の破損を抑制することが可能となり、表示装置における粒子同士の凝集や偏在を抑制し、表示品位や駆動特性を損なうことなく、また、フレキシビリティを有する電気泳動表示装置においても変形に対応して安定した基板間隔(ギャップ)を維持することができ、しかも、低コストで製造できる電気泳動表示装置が得られるものとなる。
一方、図6のように従来の電気泳動表示装置では、構造体20が基板10,15に接着され固定された状態となるため、外部からの力により多少変形した場合には、構造体20と基板10,15の接着面に応力が加わり接着部が破壊されやすく、変形に対応した安定表示がされにくいものとなる。
【実施例】
【0035】
次に、試験例(実施例及び比較例)により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
下記方法により電気泳動表示媒体を得た。
【0036】
(電気泳動表示装置の作製)
下記各工程により、図1に準拠した電気泳動表示装置を得た。
1)用いた基板10、15
前面基板10:厚さ125μmのITO−PETフィルム表面に、表面抵抗値が
300Ω/□となるように形成された基板
背面基板15:厚さ400μmのポリイミドフィルム基板に銅の薄膜を形成し、
そこにエッチング法で7セグメントパターンが形成された基板
基板間隔: 50μm
2)構造材20
図1(c)に示すような厚さ50μmのPETフィルムをレーザー加工にて0.4mm×0.4mmの正方形の孔を0.1mm間隔をあけてメッシュ構造となる構造材を作製。
3)用いた電気泳動用表示液
絶縁性液体としてキシレン中に、帯電粒子として親油化処理された酸化チタン(粒径約0.3μm)とカーボンブラックにて着色された樹脂粒子(粒径約1μm)とヒドロキシラウリルアミンとを添加して得られたインキ。
【0037】
4)電気泳動表示装置の作製
実施例用として、図1(a)のように、上記背面基板の電極面上に、上記2)の構造材を載せて、背面基板の外周上にUV硬化型の接着剤を塗布した後、構造材の孔部に上記3)で得られた電気泳動表示用液を充填してから前面板を被せ、UV光を照射して張り合わせることにより、表示部が10cm×10cmで、シール部の幅が7mmの電気泳動表示装置を作製した。
一方、比較例用として、上記背面基板の電極面上に、上記2)の構造材をUV硬化型の接着剤を用いてUV光を照射して接着し、背面基板の外周上と前面基板に接する構造材部分にUV硬化型の接着剤を塗布した後、構造材の孔部に上記3)で得られた電気泳動表示用液を充填してから前面板を被せ、UV光を照射して張り合わせることにより、表示部が10cm×10cmで、シール部の幅が7mmの電気泳動表示装置を作製した。
【0038】
得られた実施例及び比較例の電気泳動表示装置を下記方法により、繰り返し変形試験を行い、表示性能を評価した。
(繰り返し評価試験法)
電気泳動表示装置の互いに向かい合う辺のシール部分を、シリコーンゴムシートを緩衝材として用いて電気泳動表示装置が外れないように金属製固定具を挟んで固定した後、側面から見たとき曲率がR=100となるように前面基板側及び背面基板側に、交互に1000回(片側500回)繰り返し変形させた。
【0039】
上記1000回の繰り返し変形試験結果において、比較例はセル壁がはがれ、周辺の表示が劣化し、剥がれる際に基板を損傷したのか、接着が剥がれた部分の異物のためか分からないが、電圧(60V)をかけて再表示させても再生不能であった。
これに対して、本発明となる実施例は、1000回の繰り返し変形試験後であっても、良好な表示が可能であることが判った。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明の電気泳動表示装置の実施形態の一例を示す図面であり、(a)は電気泳動表示装置の概略断面図、(b)は本発明の要旨となる構造材が基板間に固定されていない状態を示す(a)の丸印部分の部分拡大断面図、(c)は構造材の斜視図である。
【図2】(a)及び(b)は各構造材の他例を示す部分平面図である。
【図3】本発明の電気泳動表示装置の使用状態の一例を平面態様で示す説明図である。
【図4】本発明の電気泳動表示装置の使用状態の他例を平面態様で示す説明図である。
【図5】本発明の実施形態の電気泳動表示装置の製造工程の一例を示す説明図である。
【図6】従来の電気泳動表示装置の製造工程の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0041】
A 電気泳動表示装置
10 基板
15 基板
20 構造材
30 シール材
40 UV硬化樹脂
50 フォトマスク


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対向配置させた基板間に、少なくとも絶縁性液体、1種類以上の帯電粒子及び基板間に形成された構造材とを備えた電気泳動表示装置であって、上記構造材のうち少なくとも表示部に存する部分が、基板に固定されていないことを特徴とする電気泳動表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−148009(P2007−148009A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−342303(P2005−342303)
【出願日】平成17年11月28日(2005.11.28)
【出願人】(000005957)三菱鉛筆株式会社 (692)