説明

電気的接続部材の製造方法

【発明の詳細な説明】
〔産業上の利用分野〕
本発明は、電気回路部品同士を電気的に接続する際に用いられる電気的接続部材の製造法に関する。
〔従来の技術〕
電気回路部品同士を電気的に接続する方法としては、ワイヤボンディング方法、TAB(Tape Automated Bonding)法等が従来より知られている。ところがこれらの方法にあっては、両電気回路部品間の接続点数の増加に対応できない、コスト高である等の難点があった。このような難点を解決すべく、絶縁性の保持体中に複数の導電部材を互いに絶縁して備えた構成をなす電気的接続部材を用いて、電気回路部品同士を電気的に接続することが公知である(特開昭63−222437号公報,特開昭63−224235号公報等)。
第2図は、このような電気的接続部材を用いた電気回路部品間の電気的接続を示す模式図であり、図中31は電気的接続部材、32,33は接続すべき電気回路部品を示す。電気的接続部材31は、金属または合金からなる複数の導電部材34を、夫々の導電部材34同士を、電気的に絶縁して電気的絶縁材料からなる保持体35中に備えて構成されており、導電部材34の一端38を一方の電気回路部品32側に露出させ、導電部材34の他端39を他方の電気回路部品33側に露出させている(第2図(a))。そして、一方の電気回路部品32の接続部36と電気回路部品32側に露出した導電部材34の一端38とを合金化することにより両者を接合し、他方の電気回路部品33の接続部37と電気回路部品33側に露出した導電部材34の他端39とを合金化することにより両者を接合し、電気回路部品32,33同士を電気的に接続する(第2図(b))。
このような電気的接続部材においては、以下に示すような利点がある。
■ 導電部材の大きさを微細にすることにより、電気回路部品の接続部を小型化し、またそのため接続点数を増加させることができ、よって電気回路部品同士のより高密度な接続が可能である。
■ 厚みが異なる電気回路部品であっても、電気的接続部材の厚みを変更することにより電気回路部品の高さを常に一定にすることが可能となり、多層接続が容易に行え、より高密度な実装が可能である。
■ 電気回路部品の接続部と接続される導電部材の突出高さを高くすることにより、電気回路部品の接続部が表面から落ち込んだものであっても安定した接続を行うことが可能となり、複雑な形状をなす電気回路部品同士であっても容易に接続することが可能である。
■ 電気回路部品から発生する熱が電気的接続部材の保持体を通して放熱されるため熱による電気特性変動は極めて小さい。また放熱特性が優れているため熱疲労の影響が小さく信頼性も高くなる。
■ 電気回路部品同士の接続における接続長が短くなるので、インピーダンスを低減できて電気回路部品の高速化を図ることが可能である。
電気回路部品同士の電気的な多点接続を行うための上述した電気的接続部材の製造方法としては、特願昭63−133401号に提案されたものがある。以下、この製造方法についてその工程を模式的に示す第3図に基づき簡単に説明する。
まず、銅板等の金属シートからなる基本51を準備し、(第3図(a))、この基体51上に、スピンコータによりネガ型感光性樹脂52を塗布して、100℃前後の温度にてプリベイクを行う(第3図(b))。所定パターンをなしたフォトマスク(図示せず)を介して光を感光性樹脂52に照射した(露光した)後、現像を行う。露光された部分には感光性樹脂52が残存し、露光されない部分は現像処理により感光性樹脂52が除去されて複数の穴53が形成される(第3図(c))。200〜400℃まで温度を上げて感光性樹脂52の硬化を行った後、エッチング液中に基体51を浸漬させてエッチングを行い、穴53に連通する凹部54を基体51を形成する(第3図(d))。次いで、基体51を共通電極として金メッキを施して、穴53,凹部54に金55を充填し、バンプが形成されるまで金メッキを続ける(第3図(e))。最後に基体51をエッチングにより除去して、電気的接続部材31を製造する(第3図(f))。
このようにして製造される電気的接続部材31にあっては、金55が導電部材34を構成し、感光性樹脂52が保持体35を構成する。なお電気的接続部材31における各部分の寸法は、感光性樹脂52(保持体35)の厚さを約10μm、穴53(導電部材34)の直径を約15μm,ピッチを約40μmとし、導電部材34の突出量を表裏とも数μm程度とする。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、上述したような特願昭63−133401号に提案された製造方法においては、以下に述べるような問題点が残存しており、更なる改良の余地があった。
従来では、浸漬エッチングにより基体に形成される凹部の形状によって、製造される電気的接続部材における導電部材の突出部の形状が限定される。つまり、この浸漬エッチングでは、その拡がりを精密に制御することは困難であり、導通部材の突出部の形状(突出高さ,面積,体積等)の高精度の制御は行い難いという問題点がある。
更に、従来例のように露光,現像しても、基体が露出しにくく凹部形状が不揃になるため、バンプ形状に不均一になるという問題点がある。
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、導電部材の突出形状を限定する凹部を基体でなく樹脂に形成することにより、導電部材の突出部の形状を精度良く制御でき、安定した特性を有する電気的接続部材を製造できる電気的接続部材の製造方法を提供することを目的とする。
〔課題を解決するための手段〕
本発明に係る電気的接続部材の製造方法は、電気的絶縁材からなる保持体と、該保持体中に互いに絶縁状態にて備えられた複数の導電部材とを有し、前記各導電部材の一端が前記保持体の一方の面において露出しており、前記各導電部材の他端が前記保持体の他方の面において露出している電気的接続部材を製造する方法において、基体上に第1の樹脂を設ける工程と、該第1の樹脂上に前記保持体となる感光性の第2の樹脂を設ける工程と、該第2の樹脂を露光,現像して該第2の樹脂に複数の穴を形成し、前記第1の樹脂を露出させる工程と、前記第1の樹脂の一部をエッチングして前記穴に連通する凹部を前記第1の樹脂に形成する工程と、前記穴及び凹部に前記導電部材となる導電材料を充填する工程と、前記第1の樹脂及び基体を除去する工程とを有することを特徴とする。
〔作用〕
本発明の電気的接続部材の製造方法にあっては、基体に設けた第1の樹脂に、導電部材の突出部の形状を限定する凹部を形成する。そうすると、設けられた第1の樹脂の厚さにより凹部の深さは容易に制御されることとなって、導電部材の突出部の形状の制御は容易である。更にエッチングが容易にでき、しかも基体を容易に露出できるように第1の樹脂を選択することにより、バンプ形状が均一で信頼性が高い電気的接続部材を容易に入手可能となる。
〔実施例〕
以下、本発明はその実施例を示す図面に基づいて具体的に説明する。
第1図は本発明の製造工程を示す模式的断面図である。まず、基体である銅板1上に第1の樹脂であるエポキシ樹脂2を例えばスピンコータにより塗布し硬化させる(第1図(a))。ここで、この第1の樹脂であるエポキシ樹脂2の厚さにて、製造する電気的接続部材における導電部材の一側の突出部の突出高さが限定されるので、所望の突出高さに合うように厚さを設定する。次に、エポキシ樹脂2上に第2の樹脂であるネガ型の感光性樹脂のポリイミド樹脂3を例えばスピンコータにより塗布する(第1図(b))。なお、塗布するポリイミド樹脂3の膜厚は、硬化収縮による減少を考慮して、製造される電気的接続部材における保持体の所望の膜厚よりも厚くしておく。
次に、所定パターンをなしたフォトマスク(図示せず)を介して光をポリイミド樹脂3に照射した(露光した)後、現像を行う。本例では、露光された部分にはポリイミド樹脂3が残存し、露光されない部分は現像処理によりポリイミド樹脂3が除去されて、複数の穴4がポリイミド樹脂3に形成される(第1図(c))。その後、ポリイミド樹脂3の硬化を行う。次に、このような処理がなされたものを、エポキシ樹脂に対してエッチングスピードが早いが銅,ポリイミド樹脂に対して遅いエッチング液中に浸漬させてエポキシ樹脂2のエッチングを行い、穴4の近傍のエポキシ樹脂2の一部をエッチング除去して、穴4に連通する凹部5をエポキシ樹脂2に形成する(第1図(d))。この際、形成する凹部5の径は、穴4の径よりは大きく隣合う穴4の外周までの距離の半分よりは小さいこととする。このように、凹部5の大きさを制御しておくことにより、隣合う導電部材同士が導通することなくしかも導電部材の抜け落ちがない電気的接続部材を製造できる。
次いで、銅板1を共通電極として用いた金メッキにより、穴4,凹部5に金6を充填し、ポリイミド樹脂3の表面より金6が突出するまで金メッキを続ける(第1図(e))。銅はエッチングするが金及びポリイミド樹脂はエッチングしないエッチング液を用いて、金属エッチングにより銅板1を除去した後(第1図(f))、エポキシ樹脂は溶解するがポリイミド樹脂は溶解しないような溶媒を用いて、エポキシ樹脂2を除去し、電気的接続部材31を製造する(第1図(g))。
このようにして製造される電気的接続部材31にあっては、金6が導電部材34を構成し、ポリイミド樹脂3が保持体35を構成する。なお、製造される電気的接続部材31における各部分の寸法は従来例と同じである。
本発明では、導電部材34の突出部の形状となる凹部5を樹脂(エポキシ樹脂)に形成するので、金属性の基体に凹部を形成する従来例と比べて、形成する凹部の形状を容易に制御することができる。
上述した実施例では、第1の樹脂としてエポキシ樹脂2を用いたが、これに限らず、例えば東京応化のOMRシリーズのような一般的なレジスト等を使用できる。また、この第1の樹脂は、感光性であっても良く非感光性であっても良い。
また、保持体となる第2の樹脂としてポリイミド樹脂3を用いたが、感光性の樹脂であれば、これ以外にもエポキシ樹脂,シリコン樹脂等を使用しても良い。また、このような樹脂中に、粉体,繊維,板状体,棒状体,球状体等の所望の形状をなした、無機材料,金属材料,合金材料の一種または複数種が、分散して含有せしめても良い。含有される金属材料,合金材料として具体的には、Au,Ag,Cu,Al,Be,Ca,Mg,Mo,Fe,Ni,Co,Mn,W,Cr,Nb,Zr,Ti,Ta,Zn,Sn,Pb−Sn等があげられ、含有される無機材料として、SiO2,B2O3,Al2O3,Na2O,K2O,CaO,ZnO,BaO,PbO,Sb2O3,As2O3,La2O3,ZrO2,P2O5,TiO2,MgO,SiC,BeO,BP,BN,AlN,B4C,TaC,TiB2,CrB2,TiN,Si3N4,Ta2O5等のセラミック,ダイヤモンド,ガラス,カーボン,ボロン等があげられる。
また、本実施例ではメッキにより金6を充填して導電部材34を形成することとしたが、他の方法、例えばCVD(chemical vapor deposition)による選択成長を行うこととしても良い。
本発明で製造される電気的接続部材では、配線パターンが存在するものもある。その際、配線パターンは保持体の内部に存在していても良いし、保持体の一方又は両方の面上に存在しても良い。備えられている個々の導電部材と配線パターンとは電気的に接続されていても良いし、接続されていなくても良い。更に、その電気的接続は、保持体の内部で接続されていても良いし、保持体の面の一方又は両方で接続されていても良い。配線パターンの材質は金属材料に限らず、他の導電材料でも良い。なお、導電部材の接続部の端は凸状になっている方が好ましい。また、電気的接続部材は、1層あるいは2層以上の多層からなるものでも良い。
また本実施例では導電部材34の材料として金6を使用したが、金(Au)の他に、Cu,Ag,Be,Ca,Mg,Mo,Ni,W,Fe,Ti,In,Ta,Zn,Al,Sn,Pb−Sn等の金属または合金を使用できる。導電部材34は、一種の金属及び合金から形成されていても良いし、数種類の金属及び合金を混合して形成されていても良い。また、金属材料に有機材料または無機材料の一方あるいは両方を含有せしめた材料でも良い。なお導電部材34の断面形状は、円形,四角形その他の形状とすることができるが、応力の過度の集中を避けるためには角がない形状が望ましい。また、導電部材34は保持体35中に垂直に配する必要はなく、保持体35の一方の面側から保持体35の他方の面側に斜行していても良い。また、導電部材34の太さに特に限定されない。なお、導電部材34の露出部は保持体35と同一の面としても良いし、保持体35の面から突出させても良い。ただ、安定して電気回路部品の接続部と接続を行い、接続部の信頼性を確保するためには、電気回路部品の接続部と接続される導電部材34は、保持体35から安定して突出することが望ましい。
更に本実施例では基体としては銅板1を用いたが、これに限らず、Au,Ag,Be,Ca,Mg,Mo,Ni,W,Fe,Ti,In,Ta,Zn,Al,Sn,Pb−Sn等の金属または合金の薄板を使用できる。但し、最終工程において基体のみを選択的にエッチング除去するので、導電部材34の材料と基体に用いる材料とは異ならせておく必要がある。
〔発明の効果〕
本発明の製造方法では、導電部材の突出部の形状を限定する凹部を樹脂に形成することにしたので、凹部の形状制御を容易に行うことが可能となり、導電部材の突出部の形状を高精度に制御した電気的接続部材を製造することができる、また残渣発生が少ない樹脂を選択することが可能であるので均一な電気的接続部材を容易に製造可能となる等、本発明は優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明に係る製造方法の工程を示す模式的断面図、第2図は電気的接続部材の使用例を示す模式図、第3図3図は従来の製造方法の工程を示す模式的断面図である。
1……銅板、2……エポキシ樹脂、3……ポリイミド樹脂、4……穴、5……凹部、6……金、31……電気的接続部材、34……導電部材、35……保持体

【特許請求の範囲】
【請求項1】電気的絶縁材からなる保持体と、該保持体中に互いに絶縁状態にて備えられた複数の導電部材とを有し、前記各導電部材の一端が前記保持体の一方の面において露出しており、前記各導電部材の他端が前記保持体の他方の面において露出している電気的接続部材を製造する方法において、基体上に第1の樹脂を設ける工程と、該第1の樹脂上に前記保持体となる感光性の第2の樹脂を設ける工程と、該第2の樹脂を露光,現像して該第2の樹脂に複数の穴を形成し、前記第1の樹脂を露出させる工程と、前記第1の樹脂の一部をエッチングして前記穴に連通する凹部を前記第1の樹脂に形成する工程と、前記穴及び凹部に前記導電部材となる導電材料を充填する工程と、前記第1の樹脂及び基体を除去する工程とを有することを特徴とする電気的接続部材の製造方法。

【第2図(a)】
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【第2図(b)】
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【第1図】
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【第3図】
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【特許番号】第2796872号
【登録日】平成10年(1998)7月3日
【発行日】平成10年(1998)9月10日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−85416
【出願日】平成2年(1990)3月30日
【公開番号】特開平3−283375
【公開日】平成3年(1991)12月13日
【審査請求日】平成9年(1997)3月10日
【出願人】(999999999)キヤノン株式会社
【出願人】(999999999)住友金属工業株式会社
【参考文献】
【文献】特開 平2−49385(JP,A)
【文献】特開 平3−182083(JP,A)
【文献】特開 平3−192666(JP,A)