説明

電気自動車用急速充電システムおよびその制御方法

【課題】路上でバッテリが放電状態となった電気自動車に対して、最寄りの充電スタンドまでの走行に必要な電力量だけを短時間で充電する電気自動車用急速充電システム、およびその制御方法を提供する。
【解決手段】電気自動車用急速充電システム1は、地理情報サーバ6と接続されており、電気自動車9の車種情報を取得する車種情報取得手段と、その車種情報と、停車位置および進行方向の情報と、充電スタンドの位置情報とに基づいて、電気自動車9が最寄りの充電スタンドまで走行するために必要な給電量を求める給電量算出手段と、急速充電器による充電を制御する制御手段と、を備える。給電量は渋滞や気象条件により補正される。車種情報取得手段、急速充電器および制御手段を備える充電装置2と、給電量算出手段を備える中央制御装置3と、から構成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気自動車用急速充電システムおよびその制御方法に関する。詳しくは、バッテリが放電して路上で走行不能となった電気自動車に対して、最寄りの充電スタンドまでの走行に必要な電力量だけを短時間で充電することができる電気自動車用急速充電システム、およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バッテリからの電力により走行する電気自動車が市販されるに伴い、外出先で充電を行うための充電スタンドが設置されている。従来、駐車エリアに駐車した自動車に充電ケーブルを接続するとバッテリの現在の容量を検出し、充電可能な時間を表示して有料で充電することができる充電装置が開示されている(特許文献1を参照)。また、最近では、電気自動車に対する急速充電の規格化が進められ、充電スタンドとして各種電気自動車に対応可能な急速充電器を設置することができるようになっている。
また、電気自動車のドライバーに対して、充電についての判断を支援するシステムも知られている。例えば、自車位置を検出し、予めその自車が走行する道路の形状及び充電スタンドの位置等の道路データを記憶し、検出された自車位置情報に基づいて道路データを読み出して制御することにより道路データを表示する電気自動車用ナビシステムが開示されている(特許文献2を参照)。この電気自動車用ナビシステムでは、自車の電気自動車用主電池の残存容量を検出すると共に当該残存容量情報に基づいて自車の走行可能距離を算出し、その走行可能距離情報に基づいて当該残存容量による走行可能範囲が道路データに合成して表示されるため、ドライバーは自車の残存容量で走行可能な範囲と充電スタンドの位置を表示された地図上で視認することができる。また、道路データとして、道路の勾配、コーナー、市街地等の情報を記憶し、それらによって走行可能距離を補正することができるため、地形や交通状況に応じたナビゲーションが可能とされている。
その他、電気自動車との間を通信ネットワークで結ぶことにより、電気自動車の蓄積されている燃料に応じた走行可能距離を算出し、取得した位置を用いて走行可能距離内に存在する電気自動車用の充電スタンドの情報を抽出し電気自動車に情報提供する充電スタンド情報提供サーバ等が開示されている(特許文献3を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−318288号公報
【特許文献2】特開平9−119839号公報
【特許文献3】特開2007−148590号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記のように、バッテリの電力により走行する電気自動車に対して、充電ステーション等インフラの整備が進められ、ITを用いたドライバー支援システムが開発されている。しかしながら、ガソリン自動車の場合の所謂ガス欠と同様に、電気自動車においても、走行中の道路状況の変化や電装品の使用による電力消費量の予想外の増加などの要因により、バッテリが放電して路上で走行不能となる事態が生じ得る。走行不能となった電気自動車は、非常駐車帯等に待避して救援を待つこととなるが、救援車が到着してもバッテリの充電には時間がかかる。仮に非常駐車帯等に充電器が設置されている場合であっても同様である。その理由は、急速充電器を用いても、充電には30分程度の時間を要するからである。
そうすると、電気自動車が非常駐車帯等に待避してから長時間にわたり停車することとなり、後続車への交通の安全を脅かすといった問題が発生する。このため、電気自動車のバッテリの放電による停車時間を最小限に止めることが求められている。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、路上でバッテリが放電状態となった電気自動車に対して、最寄りの充電スタンドまでの走行に必要な電力量だけを短時間で充電することができる電気自動車用急速充電システム、およびその制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の通りである。
1.電気自動車のバッテリに対して急速充電を行う急速充電器を備える電気自動車用急速充電システムであって、
前記電気自動車用急速充電システムは地理情報を提供する地理情報サーバと接続されており、
停車した前記電気自動車の車種情報を取得する車種情報取得手段と、
前記車種情報取得手段により取得された前記車種情報と、前記電気自動車の停車位置および進行方向の情報と、前記地理情報サーバから取得した充電スタンドの位置情報とに基づいて、当該電気自動車が最寄りの前記充電スタンドまで走行するために必要な充電量を給電量として求める給電量算出手段と、
前記給電量算出手段により求められた前記給電量に基づき、前記急速充電器による充電を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする。
2.上記1.において、前記電気自動車用急速充電システムは、渋滞情報および気象情報の少なくとも1つを提供する関連情報サーバと接続されており、
前記給電量算出手段は、前記電気自動車の停車位置から前記最寄りの充電スタンドまでの経路について、前記地理情報から得られる勾配、前記渋滞情報および前記気象情報のうちの1つ以上に基づき、前記必要な充電量を補正して前記給電量を求めることを特徴とする。
3.上記1.または2.において、前記急速充電器を具備する充電装置と、該充電装置と通信によって結ばれる中央制御装置と、を備え、
前記充電装置により取得した前記電気自動車の車種情報を前記中央制御装置に送信し、
前記中央制御装置は前記給電量算出手段により求めた前記給電量を前記充電装置に送信し、
前記充電装置は前記中央制御装置から受信した前記給電量に基づき前記急速充電器の出力を制御することを特徴とする。
4.上記3.において、前記充電装置は前記電気自動車の救援を行う救援車両に搭載されていることを特徴とする。
5.上記3.において、前記充電装置は路側に設置されていることを特徴とする。
6.電気自動車のバッテリに対して急速充電を行う急速充電器を備える電気自動車用急速充電システムの制御方法であって、
前記電気自動車用急速充電システムは地理情報を提供する地理情報サーバと接続されており、
停車した前記電気自動車の車種情報を取得する車種情報取得ステップと、
前記車種情報取得ステップにより取得された前記車種情報と、前記電気自動車の停車位置および進行方向の情報と、前記地理情報サーバから取得した充電スタンドの位置情報とに基づいて、当該電気自動車が最寄りの前記充電スタンドまで走行するために必要な充電量を給電量として求める給電量算出ステップと、
前記給電量算出ステップにより求められた前記給電量に基づき、前記急速充電器による充電を制御する制御ステップと、
を備えることを特徴とする。
7.上記6.において、前記電気自動車用急速充電システムは、渋滞情報および気象情報の少なくとも1つを提供する関連情報サーバと接続されており、
前記給電量算出ステップは、前記電気自動車の停車位置から前記最寄りの充電スタンドまでの経路について、前記地理情報から得られる勾配、前記渋滞情報および前記気象情報のうちの1つ以上に基づき、前記必要な充電量を補正して前記給電量を求めることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
電気自動車のバッテリに対して急速充電を行う急速充電器を備える本発明の電気自動車用急速充電システムによると、地理情報を提供する地理情報サーバと接続されており、停車した電気自動車の車種情報を取得する車種情報取得手段と、それにより取得された前記車種情報、電気自動車の停車位置ならびに進行方向の情報、および地理情報サーバから取得した充電スタンドの位置情報に基づいて給電量を求める給電量算出手段と、その給電量に基づき急速充電器による充電を制御する制御手段と、を備えるため、電気自動車の停車位置において、その車種の電気自動車が最も近い充電スタンドまで走行するために必要な分の電力量のみを急速充電することができる。これによって、電気自動車の路上での停車時間を最短とすることができ、乗員やサービス係員の安全を図るとともに交通への支障を少なくすることができる。
また、本電気自動車用急速充電システムは、渋滞情報および気象情報の少なくとも1つを提供する関連情報サーバと接続されており、前記給電量算出手段は、電気自動車の停車位置から最寄りの充電スタンドまでの経路について、勾配、渋滞情報および気象情報のうちの1つ以上に基づき、必要な充電量を補正して前記給電量を求める場合は、道路の勾配、気温や天候などの気象条件、渋滞の程度などによって調整した給電量とすることができる。これにより、長い上り坂であったり、低温または高温のためにヒータやエアコンが多用されたり、天候や渋滞のため充電スタンドまで長時間の低速走行を要したりするなど、電気自動車の電力消費量が増加することが想定される場合に適切な量の充電を行うことができる。また、経路全体で下り勾配であるような場合などには、給電量を減らす補正も可能となる。
【0008】
また、前記急速充電器を具備する充電装置と、その充電装置と通信によって結ばれる中央制御装置と、を備え、充電装置により取得した電気自動車の車種情報を中央制御装置に送信し、中央制御装置は給電量算出手段により求めた給電量を充電装置に送信し、充電装置はその給電量に基づき急速充電器の出力を制御する場合は、充電装置において複雑な情報処理を行う必要がなく、簡単な構成により電気自動車用急速充電システムを実現することができる。複数の充電装置を備える場合であっても、それぞれ電気自動車の停車位置にある充電装置と1つの中央制御装置との間が通信により結ばれ、充電装置ごとに最適な給電量で急速充電を行うことができる。
前記充電装置は電気自動車の救援を行う救援車両に搭載されている場合は、電気自動車の停車場所に急速充電器を備えた救援車両を派遣して、最寄りの充電スタンドまでの走行に必要な分の急速充電を係員によって行うことができ、電気自動車の長時間停車に伴う危険を減らすことができる。
また、前記充電装置が路側に設置されている場合は、道路の非常駐車帯等に置かれた急速充電器により、ドライバーは最短の停車時間で必要な量の充電を行うことができる。
【0009】
本発明の電気自動車用急速充電システムの制御方法によると、上記の電気自動車用急速充電システムの効果を発揮させるに好適な制御方法を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】電気自動車用急速充電システムの一実施形態を表わす概略構成図である。
【図2】本実施形態にかかる充電装置の概略構成図である。
【図3】電気自動車と最寄りの充電スタンドとの間の経路と、その経路を走行するに必要な充電量を求める例を説明する図である。
【図4】車種データおよび急速充電器データの例を説明するための図である。
【図5】充電装置と中央制御装置との間の情報の送受信を説明する図である。
【図6】充電装置における制御処理の例を示すフローチャートである。
【図7】中央制御装置における制御処理の例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)電気自動車用急速充電システムの構成
【0012】
本発明の電気自動車用急速充電システムは急速充電器を備えており、非常駐車帯等の路上においてバッテリが放電状態となり停車した電気自動車に対して、充電設備のある最寄りの充電スタンドまで走行するために必要な電力量の急速充電を行うシステムである。本電気自動車用急速充電システムが適用される道路は特に限定されず、高速道路の他、国道、県道などの一般道路であってもよい。高速道路の場合、充電スタンドは50km程度ごとに設けられたサービスエリア内に設置されることとなる。一方、電気自動車に備えられているバッテリの容量(バッテリ総電力量)や、バッテリを満充電したときに電気自動車が走行できる距離(充電走行距離)は、車種により異なる。そのバッテリが放電状態となった場合、一定の割合まで充電しようとすると、急速充電を行う場合であっても長時間を要する。例えば、電気自動車用急速充電器によりバッテリ容量の80%まで充電するには30分程度を要する。
【0013】
車種に応じた充電を行うために、本電気自動車用急速充電システムは、停車した電気自動車の車種情報を取得する車種情報取得手段を備える。車種情報の取得方法は問わないが、例えば、電気自動車の救援を行うために停車場所に到着した救援車の係員や、電気自動車の運転者等によって入力されるように構成することができる。車種またはバッテリの情報が車両に表示されている場合や、急速充電器を介して取得可能な場合には、その情報を取得するように構成することもできる。
最寄りの充電スタンドを探索するためには電気自動車の停車位置と進行方向の情報を得る必要があるが、その取得方法は特に限定されない。上記同様に係員やドライバーによって入力されるように構成することができる。また、救援車の位置情報がGPSなどにより検出できるような場合にはその検出位置を電気自動車の停車位置とすることができるし、急速充電器が高速道路の路側に設置されているような場合には、停車位置も進行方向も予め知ることができる。
【0014】
本電気自動車用急速充電システムは、地理情報を提供する地理情報サーバと接続されている。ここで、地理情報サーバは、道路、充電スタンドの位置、地形(例えば標高)などの地理情報を提供可能であればよく、具体的な構成は問わない。外部の地理情報サーバを通信ネットワークなどにより接続してもよいし、地理情報を格納した地理情報データベースを本電気自動車用急速充電システム内に備えていてもよい。地理情報サーバは、1または複数のサーバもしくはデータベースを組み合わせて構成されてもよい。
【0015】
また、本電気自動車用急速充電システムは、渋滞情報および気象情報の少なくとも1つを提供する関連情報サーバと接続可能とすることができる。ここで、関連情報サーバは、道路の渋滞情報、周辺の気象情報(気温、天候(雨、雪、霧など))などを提供可能であればよく、具体的な構成は問わない。例えば、外部の渋滞情報サーバや気象情報サーバなど、1または複数のサーバを通信ネットワークなどにより接続して構成することができる。また、例えば渋滞情報サーバからは、渋滞の他、事故や交通規制などの情報が提供されるものとすることができる。
【0016】
本電気自動車用急速充電システムは、前記車種情報取得手段により取得された車種情報と、電気自動車の停車位置および進行方向の情報と、前記地理情報サーバから取得した充電スタンドの位置情報とに基づいて、その電気自動車が最寄りの充電スタンドまで走行するために必要な充電量を給電量として求める給電量算出手段を備えている。また、この給電量算出手段は、渋滞情報および気象情報の少なくとも1つを提供する前記関連情報サーバから各情報を適宜取得可能であり、電気自動車の停車位置から最寄りの充電スタンドまでの経路について、勾配、渋滞情報および気象情報のうちの1つ以上に基づいて、必要な充電量を補正して給電量を算出するように構成することができる。
また、本電気自動車用急速充電システムは、前記給電量算出手段により求められた給電量に基づき、急速充電器による充電を制御する制御手段を備えている。
【0017】
図1は、本電気自動車用急速充電システムの一実施形態を示している。電気自動車用急速充電システム1は、中央制御装置3と、1または2以上の充電装置2とから構成されている。中央制御装置3と各充電装置2とは、通信回線4によって結ばれている。中央制御装置3は、給電量算出部31、送受信部32、車種データ記憶部33および急速充電器データ記憶部34を備え、通信ネットワーク5を介して地理情報サーバ6と接続されている。また、中央制御装置3は、気象情報サーバ71や渋滞情報サーバ72など(これらをまとめて「関連情報サーバ(7)」という。)と、通信ネットワーク5を介して接続されている。
【0018】
中央制御装置3は、コンピュータにより構成することができ、その各部機能は、ソフトウェアおよびハードウェアのいずれによって実現されてもよい。
送受信部32は、通信回線4を介して充電装置2との間で情報を送受信するように構成されている。通信回線4は、無線であるか有線であるかを問わず、例えば、電気通信事業者が提供する回線や、高速道路に沿って敷設された私設回線などが挙げられる。また、通信回線4は異なる通信回線を組み合わせたものであってもよい。
【0019】
車種データ記憶部33は、電気自動車の車種ごとに規定されたバッテリや走行距離などに関する諸元(車種データ)を格納している。外部に車種データを提供する車種情報サーバなどがある場合には、車種データ記憶部33を設けることなく、その車種情報サーバなどから適宜車種データを取得するように構成されてもよい。
急速充電器データ記憶部34は、使用される急速充電器ごとに規定された諸元(急速充電器データ)を格納している。急速充電器データは、使用する急速充電器について、後述する充電装置2側に格納されていてもよい。
【0020】
給電量算出部31は、送受信部32を介して充電装置2と情報の送受可能であり、車種データ記憶部33および急速充電器データ記憶部34に格納されているデータを読み取り可能に構成されている。また、中央制御装置3は、地理情報サーバ6、気象情報サーバ71、渋滞情報サーバ72等と接続されており、給電量算出部31はこれらのサーバから適宜情報を取得することができる。中央制御装置3と各サーバとの接続方法は問わず、例えば通信ネットワーク5を介して接続することができる。
【0021】
地理情報サーバ6は、給電量算出部31に対して、道路、充電ステーションの位置、標高など地理情報を提供するサーバである。全ての地理情報が1つのサーバから提供される必要はなく、地理情報サーバ6が複数のサーバにより構成されていてもよい。また、地理情報サーバまたは地理情報データベースが、中央制御装置3に備えられてもよい。
関連情報サーバ7のうち気象情報サーバ71は、給電量算出部31に対して、気温、天候などの気象情報を提供するサーバである。また、渋滞情報サーバ72は、給電量算出部31に対して、道路の渋滞情報、事故や交通規制等の情報を提供するサーバである。
【0022】
図2は、本実施形態にかかる充電装置の概略構成を示している。この充電装置2は、制御部21、送受信部22、操作部23、急速充電器25および電源部26を備えている。充電装置2に備えられる急速充電用の給電コネクタ251を、電気自動車9に備えられている充電コネクタレセプタクルに接続して、電気自動車9のバッテリに対して急速充電を行う。
この充電装置2は、電気自動車の救援を行う救援車に搭載されてもよいし、路側(高速道路の非常駐車帯など)に設置されてもよい。
【0023】
送受信部22は、前記通信回線4を介して、離れた場所にある前記中央制御装置3との間で情報を送受信するように構成されている。
操作部23は、電気自動車の救援を行うために停車場所に到着した救援車の係員や、電気自動車の運転者等によって、車種情報などが入力可能であるように構成される。そのために、例えば押ボタンスイッチを備えて車種を選択させるように構成することができる。また、電気自動車の停車位置や進行方向が自動的に取得されない場合には、操作部23から同様に入力されるように構成することができる。その他、送受信部22には、操作を案内するための表示器や音声案内装置を備えてもよい。
【0024】
制御部21は、送受信部22を介して、操作部23から入力された情報を中央制御装置3に送信し、中央制御装置3から送信された情報を受信可能に構成されている。また、急速充電器25と接続されており、急速充電器25の出力の制御(例えば、出力のオン、オフ)を行うように構成されている。
急速充電器25は、電気自動車のバッテリに対して急速充電可能な機器であればよく、公知の電気自動車用急速充電器を使用することができる。
電源部26は、急速充電器25に電源を供給するとともに、充電装置2内の各部電子回路に電源を供給するように構成されている。充電装置2が救援車に搭載される場合には、救援車に搭載した発電機から給電を受けるようにすることができる。また、充電装置2が路側に設置される場合には、商用電源の供給を受けるようにすることができる。
【0025】
上記実施形態においては、前記車種情報取得手段は、主として充電装置2の操作部23により構成される。前記給電量算出手段は、主として中央制御装置3の給電量算出部31により構成される。また、制御手段は、充電装置2の制御部21により構成される。
【0026】
(2)電気自動車用急速充電システムの機能および動作
図3は、急速充電器の近傍に停車した電気自動車と最寄りの充電スタンドとの間の経路と、その経路を走行するに必要な充電量を求める例を説明するための図である。同図において、地点Aは、電気自動車9が停車している位置すなわち充電装置2の現在地を示している。電気自動車9が進行する方向を進行方向aとする。また、地点Bは、地点Aから進行方向aで最も近い充電スタンドの位置を示しており、地点Aと地点Bとは道路rによって結ばれ、その道路距離をDABとする。
地点Aの位置および進行方向aの情報は、前記のとおり、救援車の係員または電気自動車のドライバーによって入力されるか、または自動的に取得することができる。高速道路の場合には、距離標(キロポスト)に示されている値を地点Aの位置として、係員またはドライバーによって入力されるようにすればよい。また、充電装置2が高速道路の非常駐車帯に設置されている場合には、その識別番号などによって位置Aおよび方向aは中央制御装置3側で自動的に取得できる。最寄りの充電スタンドの地点B、および地点AからBまでの経路rは、地理情報サーバから周辺の充電スタンドの位置を取得し、地点Aから進行方向a側にある最も近い充電スタンドを探索して決定することができる。
また、電気自動車9の車種情報は、前記のとおり、車種情報取得手段により取得することができる。車種が救援車の係員または電気自動車のドライバーによって入力される場合、具体的な車名などを選択可能とする他、車両のサイズ(例えば、大型、中型、小型)などによって選択可能としてもよい。
【0027】
停車位置から最寄りの充電スタンドまで(距離DAB)を電気自動車9が走行するために必要な充電量を給電量Pとすると、例えば、次式(1)のように給電量Pを概算することができる。
=P×(DAB/(0.8R))×k …(1)
ここで、Pは電気自動車9のバッテリ総電力量、Rはバッテリを満充電した場合の電気自動車9の走行距離(充電走行距離)である。0.8Rとしたのは、急速充電のため、実際の走行可能距離は充電走行距離Rに対して80%になると仮定したものである。また、係数kは、余裕度を与えるため、また気象や渋滞などの条件によって給電量Pを補正するために設けた係数である。
また、上記給電量Pを充電するために必要な時間を給電時間Tとすると、例えば、次式(2)のように給電時間Tを概算することができる。
=P/P …(2)
ここで、Pは上記給電量P、Pは使用する急速充電器25の出力電力である。
なお、上記計算式は1例であって、電気自動車9や急速充電器25の特性、環境条件等に基づいて、さらに正確な計算が可能である。
【0028】
図4は、中央制御装置3の車種データ記憶部33に電気自動車9の諸元を格納し、急速充電器記憶部34に急速充電器の諸元を格納する例を表わしている。電気自動車9のバッテリ総電力量や充電走行距離などは車種ごとに規定されているため、図4(a)に示すように、電気自動車の車種(EV1、EV2…)ごとに記憶されている。また、急速充電器25の出力電力などは機種ごとに定められているため、図4(b)に示すように、急速充電器の機種(QC1、QC2…)ごとに記憶されている。なお、この車種データおよび急速充電器データは1例であって、必要な場合、さらに詳細な特性値を格納しておけばよい。
そこで、例えば、充電しようとする電気自動車9が車種EV1、充電装置2に備えられている急速充電器25が機種QC2であり、最寄りの充電スタンドまでの距離DABが35kmである場合について、図4を参照して給電量Pおよび給電時間Tを上記式(1)、(2)により求めると、次のようになる(係数k=1の場合)。
=16×35/(0.8×160)=4.4(kWh)
=4.4/50=0.088(h)
すなわち、約5.3分で急速充電を行い、最寄りの充電スタンドまでの走行が可能になる。
【0029】
図5は、救援車に搭載されている充電装置2と中央制御装置3との間の情報の送受を説明する図である。まず、電気自動車9が停車している場所に救援車が到着したとき、救援車の係員92は、電気自動車9の該当する車種、現在位置および当該電気自動車の進行方向を充電装置2に入力する。現在位置や進行方向を中央制御装置で知ることができる場合には、それらの情報を充電装置2において取得する必要はない。取得した車種情報を含む充電要求情報が、充電装置2から中央制御装置3に送られる。
中央制御装置3は、充電要求情報を受信したとき、それに含まれているか自動的に認識した電気自動車9の位置および進行方向の情報と、地理情報サーバ6から取得される地理情報とに基づき、最寄りの充電スタンドの位置とそこまでの距離を判断することができる。その距離と、充電要求情報に含まれている車種情報に基づき、基本となる給電量Pを算出する。その算出に当たっては車種データを参照する。また、急速充電器データを参照すれば、給電時間Tを算出することができる。
【0030】
上記基本となる給電量Pは、気象情報サーバ71から提供される当該地域の気象情報により補正することができる。例えば、気温が高い場合や低い場合には、エアコンやヒータの使用により消費される電力量が増すため、上記給電量に所定の係数を掛ける(例えば、前記k=1.3とする)ことができる。
また、渋滞情報サーバ72から提供される渋滞情報に基づいて、現在地から最寄りの充電スタンドまでの道路の渋滞状況により、基本となる給電量Pを補正することができる。例えば、当該道路が渋滞している場合には消費電力量が増すことが予測されるため、上記給電量に渋滞の程度により所定の係数を掛ける(例えば、前記k=1.3とする)ことができる。
また、地理情報サーバ6から地形情報を取得し、経路の勾配(高低差)の程度により、基本となる給電量Pを補正することができる。例えば、当該経路が上り坂である場合には前記係数kを1.3とし、下り坂である場合には前記係数kを1未満とするなどして、上記給電量を補正することができる。
給電量Pを補正する要因は、気象や渋滞、勾配に限るものではない。また、気象条件、渋滞条件、勾配条件などを組み合わせて、総合的に給電量Pの補正方法や補正量を決定するようにすることができる。
【0031】
上記により算定された給電量の情報を含む充電指示情報が、中央制御装置3から充電装置2に送られる。給電量の情報は、上記給電量Pであってもよいし、上記給電時間Tであってもよい。使用する急速充電器の諸元は充電装置2において明らかであるため、充電装置2側で、受信した給電量Pに基づいて給電時間Tを算出してもよい。
充電装置2は、上記充電指示情報に基づいて、急速充電器の出力を給電時間Tの間オンにすることにより電気自動車9のバッテリに対して充電を行うことができる。
【0032】
(3)電気自動車用急速充電システムの制御方法
本電気自動車用急速充電システムの制御方法は、停車した電気自動車の車種情報を取得する車種情報取得ステップと、それにより取得された前記車種情報と、電気自動車の停車位置および進行方向の情報と、地理情報サーバから取得した充電スタンドの位置情報とに基づいて、当該電気自動車が最寄りの充電スタンドまで走行するために必要な充電量を給電量として求める給電量算出ステップと、給電量算出ステップにより求められた給電量に基づき、急速充電器による充電を制御する制御ステップと、を備える。
また、前記給電量算出ステップは、電気自動車の停車位置から最寄りの充電スタンドまでの経路について、地理情報から得られる勾配、渋滞情報および気象情報のうちの1つ以上に基づき、必要な充電量を補正して前記給電量を求めるようにすることができる。
【0033】
図6および図7に、本電気自動車用急速充電システムの制御処理の例を示す。
図6は、充電装置2における制御処理例である。まず、救援車の係員またはドライバーに車種情報を入力させる(S21)。電気自動車の位置や方向を自動的に取得しない場合には、それらの情報も入力させるようにすることができる。そして、取得した車種情報などを含む充電要求情報を中央制御装置3に送信する(S22)。以上が車種情報取得ステップとなる。
充電装置2は、充電要求情報を中央制御装置3に送信した後、中央制御装置3からの充電指示情報の受信を待つ(S24)。
【0034】
中央制御装置3から充電指示情報を受信した後、充電指示情報には給電量Pまたは給電時間Tの情報が含まれているため、それに基づいて急速充電を制御することができる。すなわち、急速充電器の出力をオンにして充電を開始し(S26)、急速充電器の出力電力に応じて算定される給電時間Tの経過を待つ(S27)。そして、その時間が経過したら急速充電器の出力をオフにして、充電を終了する(S28)。上記ステップS26〜S28が制御ステップに当たる。
【0035】
図7は、図6に示した充電装置2の制御処理に対応する中央制御装置3側の制御処理例である。充電装置2から充電要求情報を受信したとき、それに含まれる電気自動車の車種情報を得る(S31、32)。充電要求情報に電気自動車の位置Aや進行方向の情報が含まれる場合には、それらも同時に取得することができる。また、地理情報サーバから、道路および充電ステーションの位置情報を取得する(S33)。そして、電気自動車の位置Aから進行方向で最も近い充電ステーションの位置Bを判定し、位置Aから位置Bまでの道路距離DABを算出する(S34)。
【0036】
次に、車種データを参照して、当該電気自動車のバッテリ総電力量Pおよび充電走行距離Rと、上記距離DABとから、当該電気自動車が最寄りの充電ステーションの位置Bまで走行するために必要な給電量Pを算定する(S35)。また、関連情報サーバ7から気象情報、渋滞情報などを取得し、位置Aから位置Bまでの経路の気象条件や渋滞条件によって係数kを掛けるなどして、給電量Pを補正することができる(S36)。地理情報サーバから当該経路の地形情報を得ることにより、経路の勾配によって給電量Pを補正することもできる。
次に、充電装置2に備えられている急速充電器のデータを参照して、上記給電量Pを充電するために必要な充電時間Tを算定することができる(S37)。なお、このステップ37の内容は、充電装置2において行うようにしてもよい。
以上のステップS33〜37は、給電量算出ステップに当たる。
上記で算出された給電量Pまたは充電時間Tを含む情報は、充電指示情報として中央制御装置3から充電装置2に送信される(S38)。これによって、充電装置2側において制御ステップの処理が実行され、電気自動車のバッテリに対して給電量Pの充電が行われる。
【0037】
尚、本発明においては、以上に示した実施形態に限られず、目的、用途に応じて本発明の範囲内で種々変更した態様とすることができる。
【符号の説明】
【0038】
1;電気自動車用急速充電システム、2;充電装置、21;制御部、22;送受信部、23;操作部、25;急速充電器、251;給電コネクタ、26;電源部、3;中央制御装置、31;給電量算出部、32;送受信部、33;車種データ記憶部、34;急速充電器データ記憶部、4;充電装置と中央制御装置間の通信回線、5;通信ネットワーク、6;地理情報サーバ、7;関連情報サーバ、71;気象情報サーバ、72;渋滞情報サーバ、9;電気自動車、A;電気自動車(急速充電器)の位置、B;最寄り充電スタンドの位置、P;給電量、T;給電時間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気自動車のバッテリに対して急速充電を行う急速充電器を備える電気自動車用急速充電システムであって、
前記電気自動車用急速充電システムは地理情報を提供する地理情報サーバと接続されており、
停車した前記電気自動車の車種情報を取得する車種情報取得手段と、
前記車種情報取得手段により取得された前記車種情報と、前記電気自動車の停車位置および進行方向の情報と、前記地理情報サーバから取得した充電スタンドの位置情報とに基づいて、当該電気自動車が最寄りの前記充電スタンドまで走行するために必要な充電量を給電量として求める給電量算出手段と、
前記給電量算出手段により求められた前記給電量に基づき、前記急速充電器による充電を制御する制御手段と、
を備えることを特徴とする電気自動車用急速充電システム。
【請求項2】
前記電気自動車用急速充電システムは、渋滞情報および気象情報の少なくとも1つを提供する関連情報サーバと接続されており、
前記給電量算出手段は、前記電気自動車の停車位置から前記最寄りの充電スタンドまでの経路について、前記地理情報から得られる勾配、前記渋滞情報および前記気象情報のうちの1つ以上に基づき、前記必要な充電量を補正して前記給電量を求める請求項1記載の電気自動車用急速充電システム。
【請求項3】
前記急速充電器を具備する充電装置と、該充電装置と通信によって結ばれる中央制御装置とを備え、
前記充電装置により取得した前記電気自動車の車種情報を前記中央制御装置に送信し、
前記中央制御装置は前記給電量算出手段により求めた前記給電量を前記充電装置に送信し、
前記充電装置は前記中央制御装置から受信した前記給電量に基づき前記急速充電器の出力を制御する請求項1または2に記載の電気自動車用急速充電システム。
【請求項4】
前記充電装置は前記電気自動車の救援を行う救援車両に搭載されている請求項3記載の電気自動車用急速充電システム。
【請求項5】
前記充電装置は路側に設置されている請求項3記載の電気自動車用急速充電システム。
【請求項6】
電気自動車のバッテリに対して急速充電を行う急速充電器を備える電気自動車用急速充電システムの制御方法であって、
前記電気自動車用急速充電システムは地理情報を提供する地理情報サーバと接続されており、
停車した前記電気自動車の車種情報を取得する車種情報取得ステップと、
前記車種情報取得ステップにより取得された前記車種情報と、前記電気自動車の停車位置および進行方向の情報と、前記地理情報サーバから取得した充電スタンドの位置情報とに基づいて、当該電気自動車が最寄りの前記充電スタンドまで走行するために必要な充電量を給電量として求める給電量算出ステップと、
前記給電量算出ステップにより求められた前記給電量に基づき、前記急速充電器による充電を制御する制御ステップと、
を備えることを特徴とする電気自動車用急速充電システムの制御方法。
【請求項7】
前記電気自動車用急速充電システムは、渋滞情報および気象情報の少なくとも1つを提供する関連情報サーバと接続されており、
前記給電量算出ステップは、前記電気自動車の停車位置から前記最寄りの充電スタンドまでの経路について、前記地理情報から得られる勾配、前記渋滞情報および前記気象情報のうちの1つ以上に基づき、前記必要な充電量を補正して前記給電量を求める請求項6記載の電気自動車用急速充電システムの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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