説明

電気転てつ機

【課題】転換方向及び表示方向を簡易に設定でき、しかもコストの安価な電気転てつ機を提供する。
【解決手段】転換制御部211、221は、制御電源の極性に対応して定位動作及び第2定位動作を行う。切替部212、222は、スイッチ部SA、SBと、制御電源入力端子T10〜T40と、表示出力端子T50、T60を含んでいる。スイッチ部SA、SBは、制御電源入力端子T10〜T40及び表示出力端子T50、T60を、そのまま転換制御部211、221に接続する第1スイッチ状態と、第1スイッチ状態から極性を反転して、転換制御部211、221に接続する第2スイッチ状態との間でスイッチ動作を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道保安装置の一種である電気転てつ機に関する。
【背景技術】
【0002】
電気転てつ機は、定位転換または第2定位動作転換を指示する転換指令に従って転換モータが回転し、分岐器の開通方向を転換する機能と、分岐器が転換指令どおりに開通したことを確認する機能とを備えている(特許文献1参照)。
【0003】
一つの電気転てつ機を取り出した場合には、上述したように、単純に、一つの定位転換動作方向を考慮すればよい。しかし、鉄道線形によっては、2つの電気転てつ機を、互いに相互関係をもって動作させなければならないことも多い。例えば、第1線路から分岐線を経て、第2線路に到る進路を構成する必要がある場合は、第1線路と分岐線との分岐に第1電気転てつ機を配置し、分岐線と第2線路との合流位置に第2電気転てつ機を配置するような場合である。
【0004】
このような場合、第1電気転てつ機と第2電気転てつ機とは、定位動作方向が逆になることがある。定位動作方向を、右、左と表現すると、第1電気転てつ機の定位動作方法が右方向なら、第2電気転てつ機の定位動作方向は左方向となる。
【0005】
上述した定位動作を確保する手段として、従来は、機器室などに備えられた転てつ機制御装置から供給される制御出力及び表示出力を、第1電気転てつ機及び第2転てつ機の間をわたり、それぞれの定位動作方向に応じて組み替え、第1電気転てつ機及び第2転てつ機の定位動作を、あたかも、一台の電気転てつ機を制御する如く、制御していた。
【0006】
しかし、従来技術には、両電気転てつ機の組み合わせ、及び、組み換えが複雑であることから、組み換え工事、配線工事にミスを生じ易いという難点がある。
【0007】
上述した問題点を解決する別の従来技術として、所謂「総単動制御」と称される制御方式が知られている。この制御方式は、第1電気転てつ機及び第2電気転てつ機を、転てつ機制御装置によって個別的に、つまり、1対1の関係で制御するものである。
【0008】
しかし、「総単動制御」においては、第1電気転てつ機及び第2転てつ機のそれぞれにおいて、定位動作方向を個別的に切替設定しなければならないので、切替作業ミスが付きまとう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−349933号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、定位動作方向、及び、表示方向の切替を、ミスを生じることなく簡易に実行できる電気転てつ機を提供することである。
【0011】
本発明のもう一つの課題は、コストの安価な電気転てつ機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述した課題を解決するため、本発明に係る電気転てつ機は、転換制御部と、切替部とを有する。前記転換制御部は、制御電源の極性に対応して定位動作及び第2定位動作動作を行うものであり、その点で、従来と異なるところはない。本発明の特徴は、転換制御部に加えて、切替部を有している点にある。
【0013】
前記切替部は、スイッチ部と、制御電源入力端子と、表示出力端子とを含んでおり、前記スイッチ部は、前記制御電源入力端子及び表示出力端子を、そのまま、前記転換制御部に接続する第1スイッチ状態と、前記第1スイッチ状態から極性を反転して、前記転換制御部に接続する第2スイッチ状態との間でスイッチ動作を行う。
【0014】
上述したように、本発明に係る電気転てつ機は、切替部を有しており、この切替部のスイッチ部は、制御電源入力端子及び表示出力端子を、そのまま、転換制御部に接続する第1スイッチ状態と、前記第1スイッチ状態から極性を反転して転換制御部に接続する第2スイッチ状態との間でスイッチ動作を行うから、スイッチ部の切換操作により、電気転てつ機の定位動作方向を簡易に切り換えるとともに、それに併せて、転換方向表示も簡易に設定することができる。
【0015】
本発明に係る電気転てつ機の上述した特徴は、鉄道線形に対応して、複数の電気転てつ機を、互いに相互関係をもって動作させなければならない場合に、極めて有用である。例えば、第1線路から分岐線を経て、第2線路に到る進路を構成する必要がある場合において、第1線路と分岐線との分岐に第1電気転てつ機を配置し、分岐線と第2線路との合流位置に第2電気転てつ機を配置し、第1電気転てつ機を第2定位に制御し第2電気転てつ機を第1定位に制御するような場合である。
【0016】
このような場合、第1及び第2電気転てつ機のいずれにおいても、その切替部のスイッチ部を操作して、第1スイッチ状態又は第2スイッチ状態に設定し、転換制御部における定位動作状態を、切替えることができる。
【0017】
この定位動作方向の切り替えは、単純に、切替部の切替操作によって実行されるものであるから、転換方向及び表示方向を簡易に設定できる。しかも、切替部を追加するだけの簡単は変更で済むので、コストが安価である。
【0018】
好ましくは、切替部の電源入力端子は、外部コネクタが挿脱されるコネクタでなる。このような構成であれば、電源ケーブル接続作業、さらには信号ケーブルを、ワンタッチで行うことができるようになる。
【発明の効果】
【0019】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(a)定位動作方向、及び、表示方向の切替を、ミスを生じることなく簡易に実行できる電気転てつ機を提供することができる。
(b)コストの安価な電気転てつ機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る電気転てつ機を用いた鉄道線形を示す図である。
【図2】本発明に係る電気転てつ機に備えられた切替部の第1定位動作状態を示す図である。
【図3】本発明に係る電気転てつ機に備えられた切替部の第2定位動作状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1を参照すると、第1線路11から、分岐線路13を経て、第2線路12に到る進路RT1を構成する鉄道線形が図示されている。第1線路11と分岐線路13との分岐点には、第1電気転てつ機21が配置されており、分岐線路13と第2線路12との合流点に第2電気転てつ機22が配置されている。
【0022】
第1電気転てつ機21は、制御電源線CA11、表示電源線CA12及び表示出力線CA13によって、制御装置3に接続されており、また、第2電気転てつ機22も、制御電源線CA21、表示電源線CA22及び表示出力線CA23によって、制御装置3に接続されている。第1電気転てつ機21に接続された制御電源線CA11、表示電源線CA12及び表示出力線CA13は、第2電気転てつ機22に接続された制御電源線CA21、表示電源線CA22及び表示出力線CA23から独立しており、従って、第1電気転てつ機21及び第2電気転てつ機22は、制御装置3に対する関係では、互いに個別的である。
【0023】
制御電源線CA11、CA21は、制御電源(電圧)B24、CA24を供給するものである。制御電源B24及びCA24は、例えば、DC24Vの電源であって、制御電源B24が+V1(ボルト)のとき、制御電源C24は0(ボルト)となるような関係にある。
【0024】
表示電源線CA12、CA22は、表示電源(電圧)B24、CA24を供給するものである。表示電源B24及びCA24は、例えば、DC24Vの電源であって、表示電源B24が+V1(ボルト)のとき、表示電源C24は0(ボルト)となるような関係にある。表示電源B24、C24は、通常は、制御電源B24、C24と同じ電圧のものであるので、同一表示とした。
【0025】
表示出力線CA13、CA23は、表示出力信号B24S、C24Sを制御装置3に向けて出力する。表示出力信号B24S、C24Sは、電圧が表示電源(B24、C24)のそれと同じでよい。
【0026】
第1電気転てつ機21及び第2電気転てつ機22は、転換制御部211、221を有する。転換制御部211、221は、入力端IN11、IN12に供給される制御電源B24、CA24の極性に対応する方向の定位動作を行う。出力端IN31、IN32からは、入力端子IN11、IN12に入力される制御電源B24、CA24の極性に対応して、表示出力信号B24S、C24Sが出力される。
【0027】
本発明の特徴は、転換制御部211に加えて、切替部212、222を有している点にある。切替部212、222は、電磁リレー、半導体リレー、機械的スイッチまたはそれらの組み合わせによって構成することができる。そのうち、好ましいのは、操作の容易性、構成の簡易化という観点から、機械的スイッチを含む構成である。第1及び第2電気転てつ機21、22は、互いに同一構成になるので、以下、図2及び図3を参照し、第1電気転てつ機21を中心に説明する。図2は第1定位動作(例えば、右方向への動作)を示し、図3は第2定位動作(例えば、左方向への動作)を示している。
【0028】
まず、図2を参照すると、切替部212は、スイッチ部SA、SBと、制御電源入力端子(T10、T20)及び表示電源入力端子(T30、T40)と、表示出力端子(T50、T60)とを含んでいる。
【0029】
詳しく見ていくと、スイッチ部SAは、制御電源入力端子T10、T20を、そのまま、転換制御部211に接続する第1スイッチ状態と、第1スイッチ状態から極性を反転して、転換制御部211に接続する第2スイッチ状態との間でスイッチ動作を行う。第1スイッチ状態が第1定位動作に対応し、第2スイッチ状態が第2定位動作に対応する。
【0030】
一対の制御電源入力端子T10、T20のうち、制御電源入力端子T10は、可動接点S1の一端に接続されている。この可動接点S1は、第1定位接点N1及び第2定位接点R1の間で切り替わる。制御電源入力端子T20は、可動接点S2の一端に接続されており、可動接点S2は第1定位接点N2及び第2定位接点R2の間で切り替わる。第1定位接点N2は、第2定位接点R1と共通に接続されており、第2定位接点R2は、第1定位接点N1と共通に接続されている。
【0031】
図2の状態では、可動接点S1が第1定位接点N1に接触しており、可動接点S2が第1定位接点N2に接触している。この第1スイッチ状態は、第1定位動作に対応しており、制御電源入力端子T10に供給された電圧+V1(例えばDC24V)の制御電源B24が、転換制御部211の入力端IN11に供給され、制御電源入力端子T20に供給された電圧-V1(=0)の制御電源C24が、転換制御部211の入力端IN12に供給される。それによって、転換制御部211が、第1定位動作をするように制御される。
【0032】
次に、スイッチ部SBは、表示出力端子T50、T60を、そのまま、転換制御部211に接続する第1スイッチ状態と、第1スイッチ状態から極性を反転して、転換制御部211に接続する第2スイッチ状態との間でスイッチ動作を行う。
【0033】
一対の表示出力端子T50、T60のうち、表示出力端子T50は、可動接点S3の一端に接続されている。この可動接点S3は、第1定位接点N3及び第2定位接点R3の間で切り替わる。表示出力端子T60は、可動接点S4の一端に接続されており、可動接点S4は第1定位接点N4及び第2定位接点R4の間で切り替わる。第1定位接点N4は、第2定位接点R3と共通に接続されており、第2定位接点R4は、第1定位接点N3と共通に接続されている。
【0034】
図2の状態では、可動接点S3が第1定位接点N3に接触しており、可動接点S4が第1定位接点N4に接触している。この第1スイッチ状態は、第1定位動作に対応しており、転換制御部211の出力端IN31の表示出力電圧(B24S)が、表示出力端子T50に出力され、転換制御部211の出力端IN32の表示出力電圧(C24S)、が表示出力端子T60に出力される。
【0035】
次に、図3の第2定位動作状態では、スイッチ部SAの可動接点S1が、第1定位接点N1から、第2定位接点R1に切り替わり、可動接点S2が第1定位接点N2から第2定位接点R2に切り替わっている。この第2スイッチ状態は、第2定位動作に対応しており、制御電源入力端子T20に供給された制御電源C24が、転換制御部211の入力端IN11に供給され、制御電源入力端子T10に供給された電圧+V1の制御電源B24が、転換制御部211の入力端IN12に供給される。これにより、転換制御部211の入力端IN11、IN12で見た制御電源の極性が反転し、転換制御部211において、第2定位への転換制御動作が行われる。
【0036】
一方、スイッチ部SBでは、可動接点S3が、第1定位接点N3から第2定位接点R3に切り替わり、可動接点S4が、第1定位接点N4から第2定位接点R4に切り替わる。この第2スイッチ状態は、第2定位動作に対応しており、転換制御部211の出力端IN31の表示出力電圧(B24S)が表示出力端子T60に出力され、転換制御部211の出力端IN32の表示出力電圧(C24S)が表示出力端子T50に出力される。
【0037】
上述したように、本発明に係る電気転てつ機は、切替部212を有しており、この切替部212のスイッチ部SA、SBは、制御電源入力端子(T10、T20)、表示出力端
子(T50、T60)を、そのまま、転換制御部211に接続する第1スイッチ状態と、第1スイッチ状態から極性を反転して転換制御部211に接続する第2スイッチ状態との間でスイッチ動作を行うから、切替部212の切換操作により、電気転てつ機を、第1定位動作(右)及び第2定位動作(左)の間で切り換えることができる。したがって、定位動作方向、及び、表示方向の切替を、ミスを生じることなく簡易に実行できることになる。
【0038】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の変形態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0039】
21、22 切替部
211、221 転換制御部
212、222 スイッチ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
転換制御部と、切替部とを含む電気転てつ機であって、
前記転換制御部は、制御電源の極性に対応して定位動作及び第2定位動作を行うものであり、
前記切替部は、スイッチ部と、制御電源入力端子と、表示出力端子とを含んでおり、
前記スイッチ部は、前記制御電源入力端子及び前記表示出力端子を、そのまま前記転換制御部に接続する第1スイッチ状態と、前記第1スイッチ状態から極性を反転して、前記転換制御部に接続する第2スイッチ状態との間でスイッチ動作を行う、
電気転てつ機。
【請求項2】
請求項1に記載された電気転てつ機であって、前記電源入力端子は、外部コネクタが挿脱されるコネクタでなる、電気転てつ機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−56491(P2012−56491A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−202740(P2010−202740)
【出願日】平成22年9月10日(2010.9.10)
【出願人】(000004651)日本信号株式会社 (720)