説明

電池の検査方法及び電池の検査装置

【課題】X線透視画像に基づいて捲回電極体を有する電池の異物検査を行う際に、X線透視画像から周期的な濃淡変化を除去することで異物を精度良く検出することができる電池の検査方法及び検査装置を提供する。
【解決手段】捲回電極体3を有する電池2に対してX線照射を行うことで前記電池2のX線透視画像を取得し、当該X線透視画像に基づいて、前記捲回電極体3の異物検査を行う電池の検査方法であって、前記捲回電極体3に起因して前記X線透視画像に周期的に現れる濃淡パターンである繰り返しパターンを、前記X線透視画像から除去する工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線照射により電池内部における異物の有無を検査する電池の検査方法及び検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、製品内部に存在する金属異物を非破壊で検査する方法や装置として、X線透視撮影によるものは一般的である。例えば、電池に対してX線撮影を行うことで電池内部の電極を検査する方法もしくは装置は公知となっている(特許文献1、2参照)。
【0003】
特許文献1においては、内部に捲回電極体が封入された二次電池の内部検査方法として、捲回電極体の捲回形状をX線撮影により検査する旨が記載されている。
【0004】
特許文献2においては、電極基板を有する電池にX線を照射して電極基板の透過像を取得し、その透過像に基づいて電極基板に異物が存在するか否かを検知する旨が記載されている。
【0005】
このように、特許文献1、2では、電池ケース外部からX線を照射することで、電池のX線撮影を行い、電池本体内部に有する電極体の捲回形状の検査や電極基板に異物が存在するかどうかを検査することが示されている。
【0006】
また、リチウム電池の製造時においては、電池内部に金属異物が混入した場合、電池性能が低下するなどの不具合が発生する虞があるため、製造時に幾つかの検査工程を設けることで電池内部に金属異物が混入することを防ぐための対策が施されている。
【0007】
また、一般的なリチウム電池においては、図4(a)(b)に示すように、セパレータを介してフィルム状の正極材、負極材を対向させ、ロール状に捲回形成された捲回電極体が電池内部に封入される。このような捲回電極体を有するリチウム電池においては、従来から、X線を用いて透視撮影を行い、X線透視画像により異物の存在を検出(異物によるX線の吸収を画像の濃淡として検出)する検査方法が用いられている。また、リチウム電池の信頼性及び安全性をさらに向上させるため、上記検査方法においては内部の金属異物の有無を非破壊で精度良く自動検出する技術が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−171960号公報
【特許文献2】特開2006−179424号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
現状、X線透視画像を用いて上記のような捲回電極体を有するリチウム電池などの電池内部に存在する異物の検査を行った場合、図3に示す電池の湾曲部(捲回電極体のロール端部)にX線を照射して撮像したX線透視画像上では、図5に示すように階段状・筋状の周期的な濃淡変化(濃淡パターン)が確認される。このような周期的な濃淡変化が現れる原因としては、電池(捲回電極体)の湾曲部においては、複数のフィルム状電極が層状かつ湾曲状に捲回形成されており、X線透過方向(図3における矢印方向)における電極の厚みが湾曲部外側へ行くに従って減少するのに応じてX線吸収が湾曲部の外側に向って行くに従って徐々に小さくなることに起因している。
【0010】
例えば、電池の異物検査をした際に、図5に示すX線透視画像上に異物が撮像された場合、特に前述した周期的な濃淡変化と異物による濃淡変化(異物によるX線吸収により暗く撮像される部分)とが重なり合うと異物の有無の判別がつかなくなり、異物の未検出・誤検出の原因となる。すなわち、図3に示したような捲回電極体を内部に有するリチウム電池にX線を照射して異物検査を行う場合、捲回電極体の扁平部(捲回電極体の長手方向中央部)におけるX線透視画像では周期的な濃淡変化は出現しないが、捲回電極体のロール端部の湾曲部(丸みを帯びた部分)におけるX線透視画像では前述したように周期的な濃淡変化が出現するため、捲回電極体の扁平部において容易に見つけられるような異物であっても、同様の異物が捲回電極体のロール端部に存在した場合では周期的な濃淡変化の影響により見つけることが困難となり、異物の未検出・誤検出の原因となる。
【0011】
そこで、本発明は、X線透視画像に基づいて捲回電極体を有する電池の異物検査を行う際に、X線透視画像から周期的な濃淡変化を除去することで異物を精度良く検出することができる電池の検査方法及び検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0013】
即ち、請求項1においては、
捲回電極体を有する電池に対してX線照射を行うことで前記電池のX線透視画像を取得し、当該X線透視画像に基づいて、前記捲回電極体の異物検査を行う電池の検査方法であって、
前記捲回電極体に起因して前記X線透視画像に周期的に現れる濃淡パターンを、前記X線透視画像から除去する工程を有するものである。
【0014】
請求項2においては、
前記濃淡パターンを除去する工程は、
前記X線透視画像に対してフーリエ変換を行い、パワースペクトルを取得するフーリエ変換工程と、
前記濃淡パターンに対応する周波数成分のみを0とするフィルタ画像を作成し、当該フィルタ画像を用いて前記パワースペクトルから前記濃淡パターンに対応する周波数成分を除去する処理を行うフィルタ処理工程と、
前記フィルタ処理工程によりフィルタ処理されたパワースペクトルに対してフーリエ逆変換を行うフーリエ逆変換工程と、を有するものである。
【0015】
請求項3においては、
捲回電極体を有する電池に対してX線照射を行うことで前記電池のX線透視画像を取得し、当該X線透視画像に基づいて、前記捲回電極体の異物検査を行う電池の検査装置であって、
前記捲回電極体に起因して前記X線透視画像に周期的に現れる濃淡パターンを、前記X線透視画像から除去する手段を有するものである。
【0016】
請求項4においては、
前記濃淡パターンを除去する手段は、
前記X線透視画像に対してフーリエ変換を行い、パワースペクトルを取得するフーリエ変換手段と、
前記濃淡パターンに対応する周波数成分のみを0とするフィルタ画像を作成し、当該フィルタ画像を用いて前記パワースペクトルから前記濃淡パターンに対応する周波数成分を除去する処理を行うフィルタ処理手段と、
前記フィルタ処理手段によりフィルタ処理されたパワースペクトルに対してフーリエ逆変換を行うフーリエ逆変換手段と、を有するものである。
【発明の効果】
【0017】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0018】
請求項1においては、電池のX線透視画像から捲回電極体に起因する周期的な濃淡変化を除去することで金属異物の未検出・誤検出を防止することが可能となり、金属異物の検出精度が向上する。
【0019】
請求項2においては、電池のX線透視画像から捲回電極体に起因する周期的な濃淡変化を容易に除去することができる。
【0020】
請求項3においては、電池のX線透視画像から捲回電極体に起因する周期的な濃淡変化を除去することで金属異物の未検出・誤検出を防止することが可能となり、金属異物の検出精度が向上する。
【0021】
請求項4においては、電池のX線透視画像から捲回電極体に起因する周期的な濃淡変化を容易に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るX線検査装置の全体構成を示す概略図。
【図2】本発明の一実施形態に係る電池の検査方法の処理フローを示す図。
【図3】角型電池断面を模式的に示す平面断面図。
【図4】一般的なリチウム電池の内部構造を示す図であり、(a)は円筒型リチウム電池を示す一部破断説明図、(b)は角型リチウム電池を示す一部破断説明図。
【図5】X線撮影結果(角型電池湾曲部)を示す図。
【図6】X線透視画像の原画像(異物あり)を示す図。
【図7】原画像のフーリエ変換後のパワースペクトルを示す図。
【図8】フィルタ画像を示す図。
【図9】フーリエ逆変換処理後の画像を示す図。
【図10】異物が存在する原画像を示す図。
【図11】異物が存在する処理画像を示す図。
【図12】図10(原画像)、図11(処理画像)における各左丸囲み部の異物プロファイルを示す図。
【図13】図10(原画像)、図11(処理画像)における各中丸囲み部の異物プロファイルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、発明の実施の形態を説明する。
本実施形態に係る電池の検査方法及び検査装置は、捲回電極体を有する電池に対してX線照射を行うことで前記電池のX線透視画像を取得し、当該X線透視画像に基づいて、前記捲回電極体の異物検査を行う方法及び装置である。すなわち、捲回電極体に存在するX線を吸収する異物が画像の濃淡として表されるX線透視画像に基づいて電池内部の異物を検出する方法及び装置である。
また、本実施形態に係る電池の検査方法及び検査装置は、捲回電極体を電池ケース内部に有する電池の一例であるリチウム電池を製造する際に、捲回電極体内の異物検出を非破壊で行う検査工程において適用可能である。特に、捲回電極体を有する電池にX線を照射してX線透視画像を取得した場合に、捲回電極体を有する電池の構造上、電池の湾曲部におけるX線透視画像上にほぼ一定間隔で筋状の周期的な濃淡パターン(以下、縞状パターンという)が生じるが、本実施形態に係る電池の検査方法及び検査装置は、このような縞状パターンがX線透視画像上に現れた状態においても未検出・誤検出することなく異物検出することを可能とする検査方法及び検査装置である。以下に、本実施形態に係る電池の検査方法及び検査装置について具体的に説明する。
【0024】
まず、本実施形態に係る電池の検査方法を適用する電池の検査装置であるX線検査装置の概略構成について図1を用いて説明する。
X線検査装置1は、図1に示すように、検査対象である捲回電極体3を有する電池2にX線照射を行って電池2のX線透視画像を撮像することで捲回電極体3の内部に存在する異物を非破壊で検出する装置である。
X線検査装置1は、前記捲回電極体3を有する電池2に対してX線の照射を行うX線照射手段4と、前記電池2を透過したX線により電池2のX線透視画像を撮像するX線透視画像撮像手段6と、前記X線透視画像撮像手段6により取得した画像に対して所定の画像処理を行う画像処理手段7と、前記X線透視画像撮像手段6により取得した画像及び当該取得した画像に対して画像処理手段7により所定の画像処理を施した処理画像等を表示する画像表示手段8と、から主に構成される。
【0025】
また、画像処理手段7は、捲回電極体3に起因して前記X線透視画像に周期的に現れる縞状パターンを前記X線透視画像から除去する手段であり、前記X線透視画像(原画像)に対してフーリエ変換を行い、パワースペクトルを取得するフーリエ変換手段と、前記縞状パターンに対応する周波数成分のみを0とするフィルタ画像を作成し、当該フィルタ画像を用いて前記パワースペクトルから前記縞状パターンに対応する周波数成分を除去する処理を行うフィルタ処理手段と、前記フィルタ処理手段によりフィルタ処理されたパワースペクトルに対してフーリエ逆変換を行うフーリエ逆変換手段と、を具備する。
また、画像処理手段7としては、例えば、画像処理プログラムを備え、実行可能であるパーソナルコンピュータを適用することができる。
【0026】
このように構成されたX線検査装置1を用いて捲回電極体3の内部に存在する異物の検出を行う場合には、X線照射手段4(X線源)から電池2に向かってX線を照射すると、X線透過部分とX線吸収部分とが陰影(明暗)で表されるX線透視画像がX線透視画像撮像手段6により撮像される。また、電池2内を通過するX線は捲回電極体3内の異物が存在する部分で吸収されるので、異物の大きさ等に応じた吸収スポットがX線透視画像(原画像)上に出現する。こうして撮像された原画像に基づいて捲回電極体3内に異物が存在しているかどうか、又は、異物が捲回電極体3のどの位置に存在しているかを知ることができる。また、X線検査装置1は、検査対象物である電池2に対してX線を照射して、X線透視画像を取得し、当該X線透視画像に対して所定の画像処理を行うことが可能である。さらに、画像処理されたX線透視画像に基づいて所定のデータ解析を行い、電池2内部の捲回電極体3における異物の有無を判定することが可能である。
なお、本実施形態における異物とは、金属異物のことを指すが、特に金属異物に限定するものではなく、X線を吸収する物質であれば前記X線検査装置1により検出可能である。
【0027】
ここで、図3に示すように、本実施形態に係る検査対象物である捲回電極体3を有する電池2においては、電池2の長手方向両端における湾曲部においてX線照射方向に対して層状構造を有することになる。このような層状構造が存在すると、X線透視画像(原画像)において縞状パターンが現れる(図5参照)。このような縞状パターンが現れた原画像においては、異物の吸収により撮像される濃淡像(陰影像)と縞状パターンとが重なった場合に異物を見逃してしまい、異物の未検出や誤検出の原因になる。
【0028】
そこで、上記のような縞状パターンの存在による異物の未検出や誤検出を防止するために本実施形態に係る電池の検査方法を上述したX線検査装置1に適用する。以下に、本実施形態に係る電池の検査方法について具体的に説明する。
【0029】
次に、前記X線検査装置1に適用する電池の検査方法について図2を用いて実施形態、及び実施形態に基づく実施例を説明する。
本実施形態に係る電池の検査方法は、前記捲回電極体3に起因して前記X線透視画像に周期的に現れる縞状パターンを、前記X線透視画像から除去する検査方法であり、図2に示すように、フーリエ変換工程S10、フィルタ処理工程S20、フーリエ逆変換工程S30、及び異物検出処理工程S40を主に具備する。本実施形態に係る電池の検査方法は、前記縞状パターンをX線透視画像上の空間周波数として扱い、縞状パターンに対応する周波数成分を空間周波数フィルタにより除去する方法である。以下、各工程について説明する。
【0030】
フーリエ変換工程S10は、前記X線透視画像(原画像)に対してフーリエ変換を行い、パワースペクトルを取得する工程である。
すなわち、フーリエ変換工程S10では、前記画像処理手段7に入力されたX線透視画像(原画像)に対して、前記画像処理手段7における前記フーリエ変換手段により2次元フーリエ変換処理を行って、パワースペクトル(例えば、図7参照)を取得する工程である。
なお、パワースペクトルとは、所定の画像データ(本実施形態では原画像データ)を2次元フーリエ変換した後の各周波数成分における絶対値を2乗したものであり、当該各周波数成分における絶対値の2乗を強度の周波数分布として濃淡(本実施形態ではグレースケール)により表したものである。
フーリエ変換工程S10が終了したら、フィルタ処理工程S20に移行する。
【0031】
フィルタ処理工程S20は、前記縞状パターンに対応する周波数成分のみを0とするフィルタ画像(例えば、図8参照)を作成し、当該フィルタ画像を用いて前記パワースペクトルから前記縞状パターンに対応する周波数成分を除去する処理を行う工程である。
すなわち、前記フィルタ処理手段により前記縞状パターンに対応する周波数成分のみを0とするようなフィルタ画像(空間周波数フィルタ)を作成し、当該フィルタ画像を前記フーリエ変換工程S10にて取得した前記パワースペクトルに乗算する工程である。
フィルタ処理工程S20が終了したら、フーリエ逆変換工程S30に移行する。
【0032】
フーリエ逆変換工程S30は、前記フィルタ処理工程S20によりフィルタ処理されたパワースペクトルに対してフーリエ逆変換を行う工程である。
すなわち、フーリエ逆変換工程S30では、フィルタ処理工程S20により前記縞状パターンに対応する周波数成分のみを0とするフィルタ処理がされたパワースペクトルに対して、前記画像処理手段7における前記フーリエ逆変換手段によりフーリエ逆変換処理を行って、フィルタ処理された原画像(処理画像)であるX線透視画像を再現する工程である。
フーリエ逆変換工程S30が終了したら、異物検出処理工程S40に移行する。
【0033】
異物検出処理工程S40は、前記フーリエ変換工程S10、フィルタ処理工程S20、及びフーリエ逆変換工程S30によりX線透視画像の原画像から縞状パターンが除去されたX線透視画像(処理画像)に基づいて異物を検出処理する工程である。
異物検出処理工程S40が終了したら、異物の有無などの検出結果は画像表示手段8に表示され、当該検出結果は電池2の商品番号と対比できるように所定の記録手段に記録される。以下、上述した本発明に係る実施形態の実施例を挙げて電池の検査方法をより具体的に説明する。
【実施例】
【0034】
本発明に係る実施形態の実施例について説明する。
前述したX線検査装置1を用いて捲回電極体3を内部に有する角型の電池2における異物の有無の検査を行うために、電池2の扁平部がX線照射手段4(X線源)と対向するようにX線検査装置1内に電池2を載置する。すなわち、X線照射手段4とX線透視画像撮像手段6との間に電池2をセットした状態でX線による電池2内の金属異物検査を実施する。
X線検査装置1に電池2をセット後、X線照射手段4の一端から電池2に対してX線を照射する。当該X線は電池2を透過して、電池2のX線透視画像がX線透視画像撮像手段6により撮像される。そうして、撮像されたX線透視画像は画像処理手段7に入力され、当該画像処理手段7は電池2のX線透過画像(原画像)を取得する(図6参照。図6における丸囲み部分は異物の存在箇所を示している)。
【0035】
次に、取得したX線透視画像(原画像)に対して、画像処理手段7が有するフーリエ変換手段によりフーリエ変換処理が行われ、図7に示すように、パワースペクトルが取得される(フーリエ変換工程S10)。このパワースペクトルのY軸上(図7における楕円囲み部分)に縞状パターンの周波数成分(Y軸上の輝点)が明確に確認できる。
【0036】
続いて、図7上において、縞状パターンに対応する周波数成分を所定のフィルタ処理により除去する。すなわち、フィルタ処理手段にて、前記フィルタ処理に適用する空間周波数フィルタとして、縞状パターンに対応する周波数成分のみを0とするようなフィルタ画像を作成し(図8参照)、図7に示すパワースペクトルに乗算する(フィルタ処理工程S20)。
なお、上記フィルタ処理では、当該フィルタ処理に用いるフィルタ画像(空間周波数フィルタ)を図7に示すように作成しているが、この図7で示すフィルタ画像の中心点に対して上下対称に並ぶ複数の黒点は、縞状パターンに対応する周波数成分(図8のY軸上に存在する周波数成分)の位置と対応している部分であり、「0」を表している。上記フィルタ処理では、このように作成したフィルタ画像をパワースペクトルに乗算することで、縞状パターンに対応する周波数成分を「0」とすることが可能となる。
【0037】
次に、フィルタ処理されたパワースペクトルに対して、前記画像処理手段7における前記フーリエ逆変換手段によりフーリエ逆変換処理を行って、図9に示すX線透視画像(フィルタ処理された原画像:処理画像)を再現した(フーリエ逆変換工程S30)。図9に示すように、筋状の周期的な縞状パターンの存在が軽減されていることがわかる。つまり、この処理画像を異物検出処理の際の検査対象画像として用いて異物の検出処理を行うことで異物の未検出や誤検出をなくして、異物の有無を容易に判定することが可能となる。
【0038】
ここで、異物の有無を判定する際における本実施形態に係る電池の検査方法の適用の有無による効果(縞状パターンの軽減効果)を確認するために、金属異物が存在した状態におけるX線透視画像(縞状バターン除去前の原画像)と、当該原画像をフィルタ処理により縞状パターンが除去された処理画像の各画像において金属異物が存在する部分のプロファイルを比較した。
まず、縞状バターン除去前の原画像である図10及び縞状パターン除去後の処理画像である図11のそれぞれにおける左丸囲み部分、中丸囲み部分、及び右丸囲み部分には、金属異物の存在が確認できる。図10、図11において、これら金属異物が存在する同じ箇所をそれぞれ比較すると、図10に示す縞状パターンが除去されていない状態においては、縞状パターンの存在により金属異物の有無(濃淡変化)が判別しづらい。一方、図11に示す縞状パターンが除去された状態においては、縞状パターンに邪魔されることなく異物の有無(濃淡変化)を確認することが可能となる。
【0039】
さらに、図10及び図11における左丸囲み部分と中丸囲み部分のそれぞれのY方向プロファイルを比較した結果を図12、図13に示す。
図12は、原画像(図11)と処理画像(図12)のそれぞれの左丸囲み部分おけるY方向プロファイルを比較するための比較プロファイルである。
図13は、原画像(図11)と処理画像(図12)のそれぞれの中丸囲み部分おけるY方向プロファイルを比較するための比較プロファイルである。
また、図12、図13においては、横軸がY座標、縦軸が画像の輝度である。
図12、図13のそれぞれおいて原画像と処理画像のプロファイルを比較すると、筋状の周期的な縞状パターンに対応するY座標部分(図12、図13の矢印で示す筋部)においては原画像に対して処理画像の輝度が上昇しているが、異物に対応するY座標部分においては原画像と処理画像との間でほとんど輝度の変化が認められない。すなわち、この結果から本実施形態にて行ったフィルタ処理では、筋状の周期的な縞状パターンが取り除かれるとともに、金属異物の濃淡変化が所定の輝度として保存されていることがわかる。
また、図10における右丸囲み部分では、周期的な縞状パターンにおける筋状部分と金属異物の存在が重なっている。このような部分においても、フィルタ処理結果では、金属異物の存在が保存され、異物の濃淡変化が確認できた(図示せず)。
上記のように、金属異物の輝度に変化を与えずに縞状パターンが除去されたことで、未検出・誤検出を防いで異物を容易に検出することが可能となる。
【0040】
なお、上述した前記処理画像全体から輝度の二次元プロファイルを画像処理手段7により自動取得し、輝度が所定の閾値以下となる部分を異物が存在する部分であると判定するように構成して、X線検査装置1により自動的に異物の有無を検出させることも可能である。
【0041】
以上のように、本実施形態に係る電池2の検査方法は、
捲回電極体3を有する電池2に対してX線照射を行うことで前記電池2のX線透視画像を取得し、当該X線透視画像に基づいて、前記捲回電極体3の異物検査を行う電池の検査方法であって、
前記捲回電極体3に起因して前記X線透視画像に周期的に現れる濃淡パターンである縞状パターンを、前記X線透視画像から除去する工程を有するため、電池2のX線透視画像から捲回電極体3に起因する周期的な濃淡変化である縞状パターンを除去することで金属異物の未検出・誤検出を防止することが可能となり、金属異物の検出精度が向上する。
【0042】
また、前記縞状パターンを除去する工程は、
前記X線透視画像に対してフーリエ変換を行い、パワースペクトルを取得するフーリエ変換工程と、
前記縞状パターンに対応する周波数成分のみを0とするフィルタ画像を作成し、当該フィルタ画像を用いて前記パワースペクトルから前記縞状パターンに対応する周波数成分を除去する処理を行うフィルタ処理工程と、
前記フィルタ処理工程によりフィルタ処理されたパワースペクトルに対してフーリエ逆変換を行うフーリエ逆変換工程と、を有するため、電池のX線透視画像から捲回電極体に起因する周期的な濃淡変化である縞状パターンを容易に除去することができる。
【0043】
また、本実施形態に係るX線検査装置1は、
捲回電極体3を有する電池2に対してX線照射を行うことで前記電池2のX線透視画像を取得し、当該X線透視画像に基づいて、前記捲回電極体3の異物検査を行う電池2の検査装置であって、
前記捲回電極体3に起因して前記X線透視画像に周期的に現れる濃淡パターンである縞状パターンを、前記X線透視画像から除去する手段を有するため、電池2のX線透視画像から捲回電極体3に起因する周期的な濃淡変化である縞状パターンを除去することで金属異物の未検出・誤検出を防止することが可能となり、金属異物の検出精度が向上する。
【0044】
また、前記縞状パターンを除去する手段は、
前記X線透視画像に対してフーリエ変換を行い、パワースペクトルを取得するフーリエ変換手段と、
前記濃淡パターンに対応する周波数成分のみを0とするフィルタ画像を作成し、当該フィルタ画像を用いて前記パワースペクトルから前記濃淡パターンに対応する周波数成分を除去する処理を行うフィルタ処理手段と、
前記フィルタ処理手段によりフィルタ処理されたパワースペクトルに対してフーリエ逆変換を行うフーリエ逆変換手段と、を有するため、電池のX線透視画像から捲回電極体に起因する周期的な濃淡変化である縞状パターンを容易に除去することができる。
【0045】
本発明は、捲回体を有する電池の構造上、X線撮影画像上に生じるほぼ一定間隔の筋状の濃淡繰返しである縞状パターンをX線撮影画像上の空間周波数として扱い、空間周波数フィルタにより除去するものである。本発明は、捲回体を有する電池内部の異物検査において広く適用することが可能である。また、本発明は、完成電池内に電解液を注入後にX線を用いて異物確認を行う際の電極端部の検出を可能にする方法でもあり、完成品の検査のみならず、信頼性や安全性評価時における電池の検査においても好適な検査方法である。
【符号の説明】
【0046】
1 X線検査装置
2 電池
3 捲回電極体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
捲回電極体を有する電池に対してX線照射を行うことで前記電池のX線透視画像を取得し、当該X線透視画像に基づいて、前記捲回電極体の異物検査を行う電池の検査方法であって、
前記捲回電極体に起因して前記X線透視画像に周期的に現れる濃淡パターンを、前記X線透視画像から除去する工程を有することを特徴とする電池の検査方法。
【請求項2】
前記濃淡パターンを除去する工程は、
前記X線透視画像に対してフーリエ変換を行い、パワースペクトルを取得するフーリエ変換工程と、
前記濃淡パターンに対応する周波数成分のみを0とするフィルタ画像を作成し、当該フィルタ画像を用いて前記パワースペクトルから前記濃淡パターンに対応する周波数成分を除去する処理を行うフィルタ処理工程と、
前記フィルタ処理工程によりフィルタ処理されたパワースペクトルに対してフーリエ逆変換を行うフーリエ逆変換工程と、を有することを特徴とする請求項1に記載の電池の検査方法。
【請求項3】
捲回電極体を有する電池に対してX線照射を行うことで前記電池のX線透視画像を取得し、当該X線透視画像に基づいて、前記捲回電極体の異物検査を行う電池の検査装置であって、
前記捲回電極体に起因して前記X線透視画像に周期的に現れる濃淡パターンを、前記X線透視画像から除去する手段を有することを特徴とする電池の検査装置。
【請求項4】
前記濃淡パターンを除去する手段は、
前記X線透視画像に対してフーリエ変換を行い、パワースペクトルを取得するフーリエ変換手段と、
前記濃淡パターンに対応する周波数成分のみを0とするフィルタ画像を作成し、当該フィルタ画像を用いて前記パワースペクトルから前記濃淡パターンに対応する周波数成分を除去する処理を行うフィルタ処理手段と、
前記フィルタ処理手段によりフィルタ処理されたパワースペクトルに対してフーリエ逆変換を行うフーリエ逆変換手段と、を有することを特徴とする請求項3に記載の電池の検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図8】
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【図12】
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【図13】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−287442(P2010−287442A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−140620(P2009−140620)
【出願日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】