説明

電池極板積層装置

【課題】正極板・負極板・セパレータの三者が精度良く重ねられた積層体が得られる極板積層装置を提供する。
【解決手段】ピックアンドプレース装置10は、垂直軸線まわりに回転可能に支持され、同一円周上に90°間隔で4個の吸着ヘッド13を配置した移載体11に90°の正回転または逆回転を与える。対向位置にある2個の吸着ヘッド13が降下する吸着位置には正極板供給装置14及び負極板供給装置15が配置され、前記2個の吸着ヘッド13から90°離れた角度位置にある2個の吸着ヘッド13が降下する載置位置には2個のトレイ16が配置される。ピックアンドプレース装置10は、セパレータ41U、41Dで挟んだ正極板21と、負極板31の、吸着とトレイ16への載置動作を、移載体11を交互に正回転及び逆回転させつつ所定回数繰り返して、トレイ16上に積層体Pを形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池の極板積層装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池には様々な形態のものがある。日常なじみの深い円筒形の電池は、セパレータで隔てられた正極板と負極板をコイル状に巻いて円筒形の缶に封入している。円筒形の電池は円筒面同士の間に隙間が生じ、この隙間がスペース効率を悪くするので、正極板/セパレータ/負極板/セパレータの組み合わせを何層も重ねて外観形状が板状を呈するようにした電池も開発されている。このような積層電池の例を特許文献1に見ることができる。
【0003】
間にセパレータを介在させつつ正極板と負極板を積層する電池極板積層装置の例を特許文献2、3に見ることができる。
【0004】
特許文献2に記載された装置では、帯状のセパレータの片面に正極板、他面に負極板をあてがい、この状態で正極板・セパレータ・負極板の三者を回転チャック機構でクランプする。クランプしたものを回転チャック機構が半回転させると、正極板と負極板の位置が逆転し、且つ正極板と負極板の外側にセパレータが重なった状態になる。ここへ正極板と負極板をあてがってクランプし、再び半回転させる。これを繰り返し、セパレータを間に置いて正極板と負極板が交互に並ぶ積層体を形成する。
【0005】
特許文献3に記載された装置では、移動するベルトコンベアに対しセパレータ、陽極板とセパレータ、陰極板とセパレータを順次供給して積層体を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11−297280号公報
【特許文献2】特開2005−190777号公報
【特許文献3】特開2001−93533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
積層電池においては、正極板・負極板・セパレータの三者が正確に位置決めされていることが性能の鍵を握る。この点に関し特許文献2記載の装置は、半回転ずつ回転を繰り返しつつ正極板と負極板を重ねて行く方式であり、位置決め精度を保つのは難しい。特許文献3記載の装置も、ベルトコンベアに接触している部材は真空吸着により確実に位置決めがなされるが、その上に重ねられる部材に対しては真空吸引力が及ばないので、ベルトコンベアが移動する間に位置ずれが生じる可能性がある。
【0008】
本発明は上記の点に鑑みなされたものであり、正極板・負極板・セパレータの三者が精度良く重ねられた積層体が得られる極板積層装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、間にセパレータを介在させつつ正極板と負極板を積層する電池極板積層装置であって、垂直軸線まわりに回転可能に支持され、同一円周上に90°間隔で4個の吸着ヘッドを配置した移載体を含み、当該移載体に90°の正回転または逆回転を与え、正回転から逆回転へ、あるいはその逆への切り替え時に、降下動作と上昇動作を当該移載体に与え、また前記吸着ヘッドに所定タイミングで吸引力を与えるピックアンドプレース装置と、前記4個の吸着ヘッドの中で、対向位置にある2個の吸着ヘッドが降下する吸着位置に配置された正極板供給装置及び負極板供給装置と、前記2個の吸着ヘッドから90°離れた角度位置にある2個の吸着ヘッドが降下する載置位置に配置された2個のトレイと、前記正極板供給装置に搬入される正極板または前記負極板供給装置に搬入される負極板の一方を両面からセパレータで挟むセパレータ組み合わせ装置を備え、前記ピックアンドプレース装置は、対向位置にある2個の前記吸着ヘッドによる正極板と負極板1枚ずつの吸着及び吸着した正極板と負極板の前記トレイへの載置動作を、前記移載体を交互に正回転及び逆回転させつつ所定回数繰り返すことにより、正極板、負極板、及びセパレータの積層体をトレイ上に形成することを特徴としている。
【0010】
この構成によると、静止位置にあるトレイに正極板と負極板を、一方はセパレータで挟まれている状態で、積み上げて行くので、精度良く重なった積層体を得ることができる。また、4個の吸着ヘッドを90°間隔で配置した移載体に90°の正回転または逆回転を与えてピックアンドプレースを行うものであるから、2個のトレイの一方に正極板を置き、他方に負極板を置き、次の動作では前記一方に負極板を置き、他方に正極板を置く動作を繰り返して、一時に2個の積層体を形成でき、作業効率が良い。
【0011】
また本発明は、上記構成の電池極板積層装置において、前記トレイは、搬送装置により前記載置位置に搬入、及びそこから搬出されるものであるとともに、前記積層体を保持する位置決め装置を備えることを特徴としている。
【0012】
この構成によると、順次トレイを入れ替えて行くことにより、積層体を能率良く生産できる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によると、正極板・負極板・セパレータの三者が高い位置決め精度で重ねられた積層体を、能率良く生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る電池電極積層装置の概略構成を示す正面図である。
【図2】図1の電池電極積層装置の概略構成を示す上面図である。
【図3】図2の状態に対応する搬入コンベアの平面図である。
【図4】移載体の構造と動きの説明図である。
【図5】トレイ上における極板積層動作の説明図である。
【図6】図2と同様の上面図で、本発明の第2実施形態を示すものである。
【図7】図2と同様の上面図で、本発明の第3実施形態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の第1実施形態を図1から図5までの図に基づき説明する。電池電極積層装置1は床上に据え置きされるシャーシ2を備え、このシャーシ2の正面側に、以下説明する様々な構成要素が配置される。
【0016】
シャーシ2の中央やや右寄りの位置から、ピックアンドプレース装置10が手前に突き出す。ピックアンドプレース装置10は上面に移載体11を備えている。移載体11は、4本のアーム11A、11B、11C、11Dが90°間隔で放射状に配置された構成であり、垂直軸12の上端に水平に固定されている。垂直軸12は移載体11に対し、垂直軸線まわりの回転と、降下及び上昇の動作を与える。垂直軸12が移載体11に与える回転は90°の正回転または90°の逆回転である。本明細書では、上から見て時計回りの回転を正回転、反時計回りの回転を逆回転と定義する。移載体11の降下動作と上昇動作は、正回転から逆回転へ、あるいはその逆への切り替え時に与えられる。
【0017】
移載体11のアーム11A、11B、11C、11Dには、それぞれの先端部から垂下する吸着ヘッド13が1個ずつ設けられている。計4個の吸着ヘッド13は同一円周上に90°間隔で並んでいる。吸着ヘッド13には図示しない真空源より真空吸引力が与えられる。
【0018】
ピックアンドプレース装置10の上面には、正極板供給装置14及び負極板供給装置15と、2個のトレイ16が配置される。正極板供給装置14と負極板供給装置15は、4個の吸着ヘッド13の中で、対向位置にある2個の吸着ヘッド13が降下する吸着位置に配置される。トレイ16は、前記2個の吸着ヘッド13から90°離れた角度位置にある2個の吸着ヘッド13が降下する載置位置に配置されている。本実施形態では、シャーシ2の長手方向に平行する形で2箇所の吸着位置が設定され、それと直交する形で2箇所の載置位置が設定されている。
【0019】
シャーシ2の左寄りの位置に正極板リール20が回転自在に支持されており、ここからテープ状の正極板21が引き出される。正極板21は、ダンサローラ部22、オートスプライス部23、及びカッタ部24を経て、所定長さに切断された状態で正極板供給装置14に送り込まれる。
【0020】
シャーシ2の右寄りの位置に負極板リール30が回転自在に支持されており、ここからテープ状の負極板31が引き出される。負極板31は、ダンサローラ部32、オートスプライス部33、及びカッタ部34を経て、所定長さに切断された状態で負極板供給装置15に送り込まれる。
【0021】
正極板21と負極板31を積層する際、両者間にセパレータを介在させる必要がある。本発明では、正極板21と負極板31のどちらか一方を両面からセパレータで挟むことにより、積層状態にしたとき、正極板21と負極板31の間にセパレータが介在することとなるようにする。
【0022】
本実施形態では、正極板21に対し、それを両面からセパレータで挟むセパレータ組み合わせ装置40が設けられている。セパレータ組み合わせ装置40は、正極板21の上面に重ねられるセパレータ41Uを供給するセパレータリール42Uと、正極板21の下面に重ねられるセパレータ41Dを供給するセパレータリール42Dを有する。セパレータリール42Uから引き出されたセパレータ41Uはダンサローラ部43U及びオートスプライス部44Uを経てカッタ部24の出口部に導かれる。セパレータリール42Dから引き出されたセパレータ41Dはダンサローラ部43D及びオートスプライス部44Dを経てカッタ部24の出口部に導かれる。
【0023】
所定長さに切断されてカッタ部24から出てきた正極板21はセパレータ41U、41Dで上下から挟まれた状態でシールヒータ部45へ向かう。シールヒータ部45では、正極板21を挟んだセパレータ41U、41Dが、縁同士を超音波や熱により溶着された上でカットされる。このようにしてセパレータ41U、41Dで包まれた状態となった正極板21が正極板供給装置14に送り込まれる。
【0024】
続いて電池極板積層装置1の動作を、主に図5を参照しつつ説明する。図5では、アーム11A、11B、11C、11Dがそれぞれ備える吸着ヘッド13を「A」「B」「C」「D」の符号で象徴させ、便宜的に「吸着ヘッドA」「吸着ヘッドB」「吸着ヘッドC」「吸着ヘッドD」と呼ぶものとする。
【0025】
電池極板積層装置1の図示しない制御装置は、図5(a)において、吸着ヘッドAに真空吸引力を作用させ、正極板供給装置14から正極板21を1枚吸着させる。吸着ヘッドBからは真空吸引力を遮断し、図の上方に位置するトレイ16に、前段階で吸着していた正極板21を載置させる。吸着ヘッドCには真空吸引力を作用させ、負極板供給装置15から負極板31を1枚吸着させる。吸着ヘッドDからは真空吸引力を遮断し、図の下方に位置するトレイ16に、前段階で吸着していた負極板31を載置させる。
【0026】
各吸着ヘッドが吸着動作または載置動作を完了した後、制御装置は移載体11を上昇させ、次いで90°正回転させる。すると移載体11は図5(b)の角度位置に移動する。この位置で制御装置は移載体11を降下させる。この後制御装置は、吸着ヘッドAから真空吸引力を遮断し、吸着していた正極板21を図の上方に位置するトレイ16に載置させる。吸着ヘッドBには真空吸引力を作用させ、負極板供給装置15から負極板31を1枚吸着させる。吸着ヘッドCからは真空吸引力を遮断し、吸着していた負極板31を図の下方に位置するトレイ16に載置させる。吸着ヘッドDには真空吸引力を作用させ、正極板供給装置14から正極板21を1枚吸着させる。
【0027】
各吸着ヘッドが吸着動作または載置動作を完了した後、制御装置は移載体11を上昇させ、次いで90°逆回転させる。すると移載体11は図5(c)の角度位置に移動する。これは図5(a)と同じ状態であり、図5(a)の動作が繰り返される。
【0028】
このように、2個のトレイ16に対し、吸着ヘッドAとDで正極板21の供給が行われ、吸着ヘッドBとCで負極板31の供給が行われる。
【0029】
トレイ16に正極板21と負極板31が交互に供給されるにつれ、トレイ16の上には、図4に示すように、正極板21、負極板31、及びその間に位置するセパレータ41U、41Dの積層体Pが形成されて行く。所定枚数の積層が完了したら移載体11による供給動作を停止し、載置位置からトレイ16を引き出して次行程に運ぶ。積層体Pは、電極の取り付け、容器への格納、電解液注入などの工程を経て、電池として完成する。積層体Pを載置したトレイ16を送り出した後に、空のトレイ16が送り込まれ、積層作業が再開される。
【0030】
静止したトレイ16に、セパレータ41U、41Dで挟まれた正極板21と、負極板31を積み上げて行くので、精度良く重なった積層体Pを得ることができる。しかしながら、正極板21と負極板31が積み上がるときの振動や、トレイ16を移動させるときの振動は、往々にして正極板21と負極板31の間に位置ずれを生じさせる。このような位置ずれが生じないよう、トレイ16には、積層体Pの前後左右に、図4ではブロック矢印で象徴させてある位置決め装置を設けるのが良い。位置決め装置は、壁や柱により構成することができるが、トレイ16から積層体Pを取り出す際の便宜を考慮して、開閉自在なチャック様のものとしても良い。特にトレイ16の移動時に位置ずれが生じないよう、積層体Pを上から押さえ込む要素が備えられているとなお良い。
【0031】
積層体Pの位置決め装置をトレイ16に設けるばかりでなく、載置位置にあるトレイ16の位置決め装置をピックアンドプレース装置10に設けることも、重要である。
【0032】
図6に本発明の第2実施形態を示す。第2実施形態は、トレイ16を載置位置に送り込み、そこから送り出す搬送装置50が設けられていることを特徴としている。搬送装置50は、図の上方に位置する載置位置と、図の下方に位置する載置位置のそれぞれに対して設けられる。1個の搬送装置50は、電池極板積層装置1の外から空のトレイ16を搬入して載置位置に置く搬入コンベア部51aに、積層体Pの形成が完了したトレイ16を載置位置から搬出する搬出コンベア部51bを連続させたものである。図の構成では搬送装置50はU字形に構成されており、折り返し地点を少し過ぎたところから搬出コンベア部51bが始まっている。しかしながら搬送装置50の形態はこれに限定されるものではない。例えば、電池極板積層装置1の一方の側から他方の側へ、搬入コンベア部51aと搬出コンベア部51bが直線的に連続する形にすることも可能である。
【0033】
図7に本発明の第3実施形態を示す。第3実施形態は第2実施形態の変形である。すなわち、搬入コンベア部51aと搬出コンベア部51bの間に、搬入コンベア部51aから載置位置に向かって空のトレイ16を送り込み、積層体Pの形成が完了したトレイ16を載置位置から引き出して搬出コンベア部51bに送り出す転送コンベア部51cが形成されている。なおここでも、電池極板積層装置1の一方の側から他方の側へ、搬入コンベア部51aと搬出コンベア部51bが直線的に連続する形にすることができる。
【0034】
以上本発明の実施形態を説明したが、この他、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、電池の電極積層装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0036】
1 電池電極積層装置
2 シャーシ
10 ピックアンドプレース装置
11 移載体
12 垂直軸
13 吸着ヘッド
14 正極板供給装置
15 負極板供給装置
16 トレイ
21 正極板
31 負極板
40 セパレータ組み合わせ装置
41U、41D セパレータ
50 搬送装置
P 積層体




【特許請求の範囲】
【請求項1】
間にセパレータを介在させつつ正極板と負極板を積層する電池極板積層装置であって、
垂直軸線まわりに回転可能に支持され、同一円周上に90°間隔で4個の吸着ヘッドを配置した移載体を含み、当該移載体に90°の正回転または逆回転を与え、正回転から逆回転へ、あるいはその逆への切り替え時に、降下動作と上昇動作を当該移載体に与え、また前記吸着ヘッドに所定タイミングで吸引力を与えるピックアンドプレース装置と、
前記4個の吸着ヘッドの中で、対向位置にある2個の吸着ヘッドが降下する吸着位置に配置された正極板供給装置及び負極板供給装置と、
前記2個の吸着ヘッドから90°離れた角度位置にある2個の吸着ヘッドが降下する載置位置に配置された2個のトレイと、
前記正極板供給装置に搬入される正極板または前記負極板供給装置に搬入される負極板の一方を両面からセパレータで挟むセパレータ組み合わせ装置を備え、
前記ピックアンドプレース装置は、対向位置にある2個の前記吸着ヘッドによる正極板と負極板1枚ずつの吸着及び吸着した正極板と負極板の前記トレイへの載置動作を、前記移載体を交互に正回転及び逆回転させつつ所定回数繰り返すことにより、正極板、負極板、及びセパレータの積層体をトレイ上に形成することを特徴とする電池極板積層装置。
【請求項2】
前記トレイは、搬送装置により前記載置位置に搬入、及びそこから搬出されるものであるとともに、前記積層体を保持する位置決め装置を備えることを特徴とする請求項1に記載の電池極板積層装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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