説明

電池用セパレータシート及び電池

【課題】セパレータの薬品に対する耐性を向上させる。
【解決手段】ポリオレフィン系樹脂材料からなる基材層上に、フッ素の含有量が25%以下であるポリイミドを含む耐熱層を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一次電池や二次電池等において正極及び負極との間に介在され、耐薬品性が高い電池用セパレータシート及びこのセパレータシートを用いた電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のポータブル化、コードレス化が進んでおり、これらの駆動用電源として小型、軽量で高エネルギー密度を有する一次電池や二次電池等の要望が高まっている。また、電子機器の更なる高機能化、高電力化に伴って、充電により繰り返し使用することができる二次電池において、更なる高エネルギー密度化が求められると共に、安全性の向上が求められている。
【0003】
例えば、円筒型の電池は、正極と負極との間にセパレータを介在させて巻回した巻回電極体が電解質と共に電池缶内に収められている。このような電池では、正極と負極との間にセパレータを介在させることで、正極と負極との間を絶縁し、電解質を保持して電極間のイオン導電性を確保している。ここで、電解質とは、例えば、有機溶媒に電解質塩を溶解させた非水電解液が用いられる。有機溶媒としては、炭酸エチレンや炭酸ジエチルが用いられる。このため、二次電池に用いられるセパレータは、炭酸エチレンや炭酸ジエチルに対する耐性がなければ、炭酸エチレンや炭酸ジエチルにより溶解又は白化を生じ、正極と負極間の絶縁が維持されず短絡を生じてしまう。
【0004】
セパレータとしては、例えばポリオレフィンからなる多孔質基材上に、ポリイミドを含有する耐熱層を形成し、多孔質化したものがある。このような構成のセパレータでは、耐熱性を有するものの、炭酸エチレンや炭酸ジエチルに対する耐性が低いため、二次電池の安全性を十分に確保することができない場合がある。
【0005】
ポリイミドとしては、例えば特許文献1に、フッ素を含有するポリイミドが記載されている。特許文献1では、フッ素を含有するポリイミドを光学材料として用いることが記載されているのみであり、二次電池に用いられる炭酸エチレンや炭酸ジエチルに耐性があるとまではいえない。
【0006】
したがって、セパレータとしては、炭酸エチレンや炭酸ジエチルに対する耐性を有するものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−179659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような従来の実情に鑑みて提案されたものであり、電池の電解液に用いられる炭酸エチレンや炭酸ジエチルに対する耐性が向上した電池用セパレータ、及びこのセパレータを用いた電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成する本発明に係る電池用セパレータは、ポリオレフィン系樹脂材料からなる基材層と、フッ素の含有量が25%以下であり、ポリイミドを含む耐熱層とを有することを特徴とする。
【0010】
上述した目的を達成する本発明に係る電池は、正極と負極とがセパレータを介して対向配置され、電解質を含み、セパレータは、ポリオレフィン系樹脂材料からなる基材層と、フッ素の含有量が25%以下であり、ポリイミドを含む耐熱層とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ポリオレフィン系樹脂材料からなる基材層上の耐熱層を、フッ素を25%以下の範囲で含有するポリイミドにより形成しているため、炭酸エチレンや炭酸ジエチルに対する耐性を十分に有する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明を適用した二次電池の断面図である。
【図2】本発明を適用した二次電池用セパレータシートの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明が適用された電池用セパレータ、このセパレータの製造方法及びこのセパレータを用いた電池について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
電池としては、例えば電極反応物質としてリチウム(Li)を用いる、いわゆるリチウムイオン二次電池がある。このリチウムイオン二次電池を例に挙げて説明する。図1に示すように、リチウムイオン二次電池(以下、二次電池1という)は、いわゆる円筒型といわれるものであり、ほぼ中空円柱状の電池缶2の内部に、一対の帯状の正極3と帯状の負極4とがセパレータ5を介して巻回された巻回電極体6を有している。二次電池1は、電池缶2内に巻回電極体6及び図示しない電解質が装填されている。
【0015】
電池缶2は、例えばニッケル(Ni)のめっきがされた鉄(Fe)により構成されており、一端部が閉鎖され他端部が開放されている。電池缶2の開放端部には、電池蓋7と、この電池蓋7の内側に設けられた安全弁機構8及び熱感抵抗素子(Positive Temperature Coefficient;PTC素子)9とが、ガスケット10を介してかしめられることにより取り付けられており、電池缶2の内部は密閉されている。
【0016】
巻回電極体6は、例えば、センターピン21を中心に巻回されている。巻回電極体6の正極3にはアルミニウム(Al)等よりなる正極リード22が接続されており、負極4にはニッケル(Ni)等よりなる負極リード23が接続されている。正極リード22は安全弁機構8に溶接されることにより電池蓋7と電気的に接続されており、負極リード23は電池缶2に溶接され電気的に接続されている。
【0017】
[正極]
正極3は、例えば、長尺状の正極集電体31の両面に正極活物質層32が設けられた構造である。正極集電体31は、例えば、アルミニウム箔等の金属箔により構成されている。正極活物質層32は、例えば、正極活物質として、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な正極材料を1種又は2種以上含んでおり、必要に応じてグラファイト等の導電剤及びポリフッ化ビニリデン等の結着剤を含んで構成されている。
【0018】
リチウムを吸蔵及び放出することが可能な正極材料としては、例えば、リチウム酸化物、リチウムリン酸化物、リチウム硫化物又はリチウムを含む層間化合物等のリチウム含有化合物を用い、これらを2種以上混合して用いてもよい。エネルギー密度を高くするには、リチウムと遷移金属元素と酸素(O)とを含むリチウム含有化合物が好ましく、中でも、遷移金属元素として、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)及び鉄(Fe)からなる群のうちの少なくとも1種を含むものであればより好ましい。このようなリチウム含有化合物としては、例えば、層状岩塩型の構造を有するリチウム複合酸化物、スピネル型の構造を有するリチウム複合酸化物、又はオリビン型の構造を有するリチウム複合リン酸塩等が挙げられる。なお、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な正極材料としては、これらの他にも、MnO、V、V13、NiS、MoS等のリチウムを含まない無機化合物も挙げられる。
【0019】
[負極]
負極4は、例えば、長尺状の負極集電体41の両面に負極活物質層42が設けられた構造である。負極集電体41は、例えば、銅箔等の金属箔により構成されている。負極活物質層42は、負極活物質として、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料が用いられ、これらのいずれか1種又は2種以上を含んで構成されている。負極活物質層42には、必要に応じて結着剤を含んで構成されている。
【0020】
リチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料としては、例えば、黒鉛、難黒鉛化性炭素、易黒鉛化性炭素、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維又は活性炭等の炭素材料が挙げられる。このうち、コークス類には、ピッチコークス、ニードルコークス又は石油コークス等がある。有機高分子化合物焼成体というのは、フェノール樹脂やフラン樹脂等の高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいい、一部には難黒鉛化性炭素又は易黒鉛化性炭素に分類されるものもある。また、高分子材料としてはポリアセチレン又はポリピロール等がある。これら炭素材料は、充放電時に生じる結晶構造の変化が非常に少なく、高い充放電容量を得ることができると共に、良好なサイクル特性を得ることができるので好ましい。特に黒鉛は、電気化学当量が大きく、高いエネルギー密度を得ることができ好ましい。また、難黒鉛化性炭素は、優れた特性が得られるので好ましい。更にまた、充放電電位が低いもの、具体的には充放電電位がリチウム金属に近いものが、電池の高エネルギー密度化を容易に実現することができるので好ましい。
【0021】
また、リチウムを吸蔵及び放出することが可能な負極材料としては、リチウムを吸蔵及び放出することが可能であり、金属元素及び半金属元素のうちの少なくとも1種を構成元素として含む材料も挙げられる。このような材料を用いれば、高いエネルギー密度を得ることができるからである。特に、炭素材料と共に用いるようにすれば、高エネルギー密度を得ることができると共に、優れたサイクル特性を得ることができるのでより好ましい。この負極材料は、金属元素又は半金属元素の単体でも合金でも化合物でもよく、またこれらの1種又は2種以上の相を少なくとも一部に有するようなものでもよい。
【0022】
この負極材料を構成する金属元素又は半金属元素としては、例えば、マグネシウム(Mg)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛(Zn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)又は白金(Pt)が挙げられる。これらは結晶質のものでもアモルファスのものでもよい。
【0023】
[セパレータ]
セパレータ5は、正極3と負極4との間に介在し、正極3と負極4との間を絶縁し、液状の電解質である非水電解液を保持し、多孔質であるため、正極3及び負極4との間のイオン伝導性を確保することができる。セパレータ5は、図2に示すように、例えば、基材層51と、基材層51の両面上にそれぞれ設けられたフッ素の含有量が25%以下であるポリイミドを含有する耐熱層52とを有する。
【0024】
基材層51としては、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン系樹脂材料を用いた多孔質膜であり、これらの材料を単独又は混合して、又は複数種類を共重合させたものを用いることができる。
【0025】
特に、ポリエチレン(PE)は、100℃以上160℃以下の範囲内において樹脂材料が溶融して孔を目詰まりさせる、いわゆるシャットダウン効果を得ることができ、かつ電気化学的安定性に優れているため、基材層51を構成する材料として好ましい。また、他にも電気化学的安定性を備えた樹脂であれば、ポリエチレン(PE)又はポリプロピレン(PP)に混合させるか、又は共重合させて用いることができる。
【0026】
耐熱層52は、基材層51上に形成され、多孔質であり、フッ素を含有するポリイミドを含むものである。この耐熱層51は、フッ素を含有することによって、非水電解液の有機溶媒の炭酸エチレンや炭酸ジエチルに対する耐性を有する。また、この耐熱層52は、熱的安定性が高く、電池内部の温度が上昇した場合であっても、基材層51の収縮を抑制し、セパレータ5全体の収縮を抑えることができる。
【0027】
ポリイミドには、フッ素が25%以下、好ましくは15%以下含有されている。フッ素の含有量が25%よりも多い場合には、C−F結合の大きな双極子モーメントが多くなるため、極性が高くなり、炭酸エチレンや炭酸ジエチルに対する耐性が低下し、炭酸エチレンや炭酸ジエチルにより溶解や白化が生じてしまう。なお、耐熱層52は、フッ素が含有されていれば有機溶媒に対する耐性やセパレータ5の収縮を抑制できるという効果が得られるが、フッ素の含有量は1%以上、より好ましく10%以上とすることで十分に効果を得ることができる。フッ素の含有量は、{(フッ素の原子量の総数)÷(ポリイミドを構成する元素の原子量総数)}×100により算出する。
【0028】
また、このポリイミドは、フッ素が含有されているため、正極活物質層や負極活物質層にポリフッ化ビニリデン等のフッ素系高分子化合物が含有されている場合に接着性が向上する。しかし、フッ素が25%よりも多い場合には、正極や負極との接着性は良好であるが、炭酸エチレンや炭酸ジエチルに対する耐性が低下してしまう。
【0029】
このポリイミドは、炭酸エチレンや炭酸ジエチルに対する耐性を有しつつ、耐熱層51を形成する際に使用するN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等には可溶である。
【0030】
具体的に、フッ素を含有するポリイミドとしては、例えば下記の化学式1及び2に示すものが挙げられる。化学式1に示すポリイミドのフッ素含有量は、14.7%であり、化学式2に示すポリイミドのフッ素含有量は、24.6%である。
【0031】
【化1】

【0032】
【化2】

【0033】
耐熱層52の厚みは、0.5μm以上、5.0μm以下であることが好ましい。耐熱層52の厚みが0.5μmより薄い場合には、熱的安定性が低下し、5.0μmより厚い場合は、セパレータ5の膜厚の増加により電池容量が低下してしまう。
【0034】
なお、セパレータ5には、耐熱層52に例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)やポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等のフッ素系ポリマーを含有させてもよく、又は耐熱層52上にフッ素系ポリマーを含有する接着層を設けるようにしてもよい。セパレータ5では、耐熱層52にフッ素系ポリマーを含有させたり、接着層を設けることによって、負極や正極との接着性が更に向上する。ポリフッ化ビニリデンは、電気化学的安定性が高く、正極近傍の酸化雰囲気下でも酸化分解しにくいため、微少ショートの発生が抑制され、正極3及び負極4との接着性が高いものである。接着層の厚みは、0.1μm以上、10μm以下であることが好ましい。接着層の厚みが0.1μmより薄い場合には、正極3及び負極4との接着性が劣ってしまい、10μmより厚い場合は、正極3及び負極4との接着性が高いが、セパレータ5の膜厚の増加により電池容量が低下してしまう。
【0035】
セパレータ5の総厚は、5μm以上、30μm以下の範囲内であることが好ましい。セパレータ5の厚みが薄い場合には、正極3と負極4との間で短絡が発生することがあり、厚みが厚い場合には、電池容量が低下してしまう。
【0036】
以上のような構成からセパレータ5では、基材層51上に形成された耐熱層52をフッ素の含有量が25%以下であるポリイミドにより形成することによって、非水電解液の炭酸エチレンや炭酸ジエチルに対する耐性を有するため、溶解や白化が生じず、正極3と負極4との間の絶縁を維持し、イオン導電性も維持することができる。
【0037】
セパレータ5の製造方法は、ポリオレフィン系樹脂材料からなる多孔質の基材層51を用意して、フッ素の含有量が25%以下であるポリイミドを含む耐熱層52を形成する工程を有する。
【0038】
例えば、セパレータ5の製造方法は、多孔質の基材層51を用意し、この基材層51上に耐熱層52を形成するにあたって、フッ素を25%以下含有するポリイミドをNMPに加えたポリイミドNMP溶液を作製し、このポリイミドNMP溶液をドクターブレード、バーコーター、ロールコータ等で塗布する。
【0039】
そして、このポリイミドが塗布された基材層51は、多孔質の孔がポリイミドNMP溶液によって塞がれてしまう。孔が塞がっている場合には、基材層51の孔を再生すると共に、ポリイミドNMP溶液を塗布して耐熱層となる層を多孔質にする。この孔の再生は、例えば水やエタノール、メタノール等のポリイミドに対して貧溶媒のミストを吹きかけたり、風を吹きかけることによって、基材層51の孔を再生及び耐熱層52となる層を多孔質にする。
【0040】
次に、ポリイミドNMP溶液中のNMPを乾燥により揮発させて、ポリイミドを含有する耐熱層を基材層51上に形成する。以上により、セパレータ5を製造することができる。
【0041】
[非水電解液]
以上のようにして作製したセパレータ5を介して、正極3及び負極4を巻回した巻回電極体6と共に、電池蓋7に装填される電解質としては、液状の非水電解液を用いる。非水電解液には、二次電池に一般的に使用される電解質塩と有機溶媒が使用可能である。
【0042】
溶媒としては、炭酸エチレン(EC)等の環状の炭酸エステルを用いることができ、更に、プロピレンカーボネート(PC)を混合して用いることにより、二次電池のサイクル特性を向上させることができる。
【0043】
また、溶媒としては、これらの環状の炭酸エステルに加えて、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、又はこれらの鎖状の炭酸エステル類を用いることができる。
【0044】
更にまた、溶媒としては、2,4−ジフルオロアニソール、ビニレンカーボネート(VC)又はフルオロエチレンカーボネート(FEC)を含むことが好ましい。2,4−ジフルオロアニソールは放電容量を向上させることができ、また、ビニレンカーボネートやフルオロエチレンカーボネートはサイクル特性を向上させることができるからである。よって、これらを混合して用いれば、放電容量及びサイクル特性を向上させることができるので好ましい。
【0045】
電解質塩としては、例えば六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF)、六フッ化アンチモン酸リチウム(LiSbF)、過塩素酸リチウム(LiClO)、四塩化アルミニウム酸リチウム(LiAlCl)等の無機リチウム塩や、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(LiN(CFSO)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(LiN(CSO)、及びリチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CFSO)等のパーフルオロアルカンスルホン酸誘導体等が挙げられ、これらを1種単独又は2種以上を組み合わせて使用することも可能である。中でも、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)は、高いイオン伝導性を得ることができると共に、サイクル特性を向上させることができるので好ましい。
【0046】
二次電池1は、例えば次のようにして製造することができる。
【0047】
先ず、正極活物質と、導電剤と、結着剤とを混合して正極合剤を調製し、この正極合剤をN−メチル−2−ピロリドン(NMP)等の溶剤に分散させてペースト状の正極合剤スラリーを作製する。次に、この正極合剤スラリーを正極集電体31に塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより正極活物質層32を形成し、正極3を形成する。
【0048】
また、負極活物質と、結着剤とを混合して負極合剤を調製し、この負極合剤をN−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に分散させてペースト状の負極合剤スラリーを作製する。次に、この負極合剤スラリーを負極集電体41に塗布し溶剤を乾燥させ、ロールプレス機等により圧縮成型することにより負極活物質層42を形成し、負極4を作製する。
【0049】
続いて、正極集電体31に正極リード22を溶接等により取り付け、負極集電体41に負極リード23を溶接等により取り付ける。その後、正極3と負極4とをセパレータ5を介して巻回し、正極リード22の先端部を安全弁機構8に溶接すると共に、負極リード23の先端部を電池缶2に溶接して、巻回した正極3及び負極4を一対の絶縁板で挟み電池缶2の内部に収納する。正極3及び負極4を電池缶2の内部に収納した後、電解液を電池缶2の内部に注入し、セパレータ5に含浸させる。その後、電池缶2の開口端部に電池蓋7、安全弁機構8及び熱感抵抗素子9を、ガスケット10を介してかしめることにより固定する。これにより、図1に示す二次電池1が得られる。
【0050】
この二次電池1では、セパレータ5において、基材層51上にフッ素の含有量が25%以下のポリイミドを含有する耐熱層52が形成されており、この耐熱層52の非水電解液における溶媒に対して耐性が高いため、セパレータ5が非水電解液と接しても溶解せずに形状や特性を維持することができる。これにより、二次電池1では、セパレータ5が溶媒に溶解せず、維持されているため、電極間の短絡が生じることなく、安全性を十分確保することができる。
【0051】
なお、以上では、二次電池として円筒型のリチウムイオン二次電池を例に挙げて説明したが、このことに限定されず、本発明のセパレータは、楕円型又は多角形型の二次電池、正極及び負極を折り畳んだり又は積み重ねた構造を有する二次電池にも同様に適用することができる。加えて、いわゆるコイン型、ボタン型又は角型等の二次電池にも適用することができる。また、二次電池だけではなく、一次電池にも適用することができる。
【実施例】
【0052】
次に、本発明の具体的な実施例について、実際に行った実験結果に基づいて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0053】
<耐薬品性評価>
フッ素を含有するポリイミドを含む耐熱層のEC、DECに対する耐性について評価した。まず、実施例及び比較例で使用するフッ素を含有するポリイミドを合成した。
【0054】
(合成例1)
PI(BPDA/HFBAPP)の合成:フッ素含有率14.7%
先ず、窒素気流下、機械攪拌装置およびディーン・スターク管を備えた1L四口フラスコに、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン(HFBAPP)85.83g(165.6mmol)とNMP400gを加え、溶解するまで攪拌した。
【0055】
続いて、ニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)49.17g(167.1mmol)とNMP365gを加え、溶解するまで攪拌した。
【0056】
次に、オイルバスを用いて、80℃で2時間、加熱攪拌した。副生する水の共沸剤であるトルエンを50g加え、オイルバスを用いて、195℃で3時間、加熱攪拌した。加熱中において、ディーン・スターク管への水の捕捉を目視で確認した。195℃/3時間経過後、容器内を減圧にすることで、加えたトルエンおよび副生した水をディーン・スターク管より回収した。冷却後、内容物を取り出し、下記の化学式1に示すポリイミド(BPDA/HFBAPP)を含有するポリイミドNMP溶液を得た。尚、設定固形分濃度は15.0%である。
【0057】
【化3】

【0058】
(合成例2)
PI(6FDA/HFBAPP)の合成:フッ素含有率24.6%
先ず、窒素気流下、機械攪拌装置およびディーン・スターク管を備えた1L四口フラスコに、HFBAPP72.42g(139.7mmol)とNMP300gを加え、溶解するまで攪拌した。
【0059】
続いて、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)62.58g(140.9mmol)とNMP465gを加え、溶解するまで攪拌した。
【0060】
次に、オイルバスを用いて、80℃で2時間、加熱攪拌した。副生する水の共沸剤であるトルエンを50g加え、オイルバスを用いて、195℃で3時間、加熱攪拌した。加熱中において、ディーン・スターク管への水の捕捉を目視で確認した。195℃/3時間加経過後、容器内を減圧にすることで、加えたトルエンおよび副生した水をディーン・スターク管より回収した。冷却後、内容物を取り出し、下記の化学式2に示すポリイミド(6FDA/HFBAPP)を含有するポリイミドNMP溶液を得た。尚、設定固形分濃度は15.0%である。
【0061】
【化4】

【0062】
(合成例3)
PI(6FDA/TFMB)の合成:フッ素含有率31.3%
先ず、窒素気流下、機械攪拌装置およびディーン・スターク管を備えた500mL四口フラスコに、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル(TFMB)15.63g(48.81mmol)とNMP100gを加え、溶解するまで攪拌した。
【0063】
続いて、6FDA21.87g(49.23mmol)とNMP112.5gを加え、溶解するまで攪拌した。
【0064】
次に、オイルバスを用いて、80℃で2時間、加熱攪拌した。副生する水の共沸剤であるトルエンを20g加え、オイルバスを用いて、195℃で3時間、加熱攪拌した。加熱中において、ディーン・スターク管への水の捕捉を目視で確認した。195℃/3時間経過後、容器内を減圧にすることで、加えたトルエンおよび副生した水をディーン・スターク管より回収した。冷却後、内容物を取り出し、下記の化学式3に示すポリイミド(6FDA/TFMB)を含有するポリイミドNMP溶液を得た。尚、設定固形分濃度は15.0%である。
【0065】
【化5】

【0066】
(膜作製)
次に、合成したポリイミドを用いて、EC、DECの耐性を確認するために膜を形成した。上記合成例で得た各ポリイミドNMP溶液を、ドクターブレードを用いて、十分に平滑なガラス板上に流延した。100℃/10min、仮乾燥を行った後に、200℃/1hourで溶剤であるNMPを揮発させた。冷却の後に、水道水に浸漬し、ポリイミド膜をガラス板から剥離させた。剥離したポリイミド膜は、十分にワイピングの後、130℃の真空オーブンで5時間乾燥し、評価に供した。尚、膜厚は10〜15μmであった。実施例1では、合成例1のポリイミドを用い、実施例2では、合成例2のポリイミドを用い、比較例1では合成例3のポリイミドを用いた。
【0067】
(耐薬品性評価)
耐薬品性評価には、下記の化学式4に示す炭酸エチレンと化学式5に示す炭酸ジエチルを用いた。炭酸エチレン(EC)の融点は36℃、沸点は238℃であり、炭酸ジエチル(DEC)の融点は−43℃、沸点は127℃である。上記作製した各ポリイミド膜を2cm角にカットし、炭酸エチレン又は炭酸ジエチルで満たしたサンプル瓶に入れた(炭酸エチレンは予め融解させてからサンプルを入れた。)。その上で、60℃の恒温ジャーミルで4日間攪拌した。取り出して、ポリイミド膜の表面状態で判断した。評価結果を表1に示す。表1中、溶解・白化の場合は、NGとし、変化がない場合は、OKとした。
【0068】
【化6】

【0069】
【化7】

【0070】
耐薬品性評価の評価結果を表1に示す。
【0071】
【表1】

【0072】
実施例1及び2では、フッ素の含有量が25%以下の範囲で含有されているため、共にECと接しても溶解や白化が起きなかった。また、フッ素の含有量が24.60%である実施例2ではDECに対する耐性がやや劣ってしまった。
【0073】
これらに対して、フッ素の含有量が25%を超えている比較例1では、フッ素の含有量が多いため、EC及びDEC共に耐性を示さず、溶解や白化が生じた。
【0074】
したがって、この評価から、ECに対する耐性が得られるフッ素の含有量は、25%以下であり、DECに対する耐性が得られるフッ素の含有量は、15%以下であることがわかる。
【符号の説明】
【0075】
1 二次電池、2 電池缶、3 正極、4 負極、5 セパレータ、6 巻回電極体、7 電池蓋、8 安全弁機構、9 熱感抵抗素子、10 ガスケット、51 基材層、52 耐熱層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂材料からなる基材層と、
フッ素の含有量が25%以下であるポリイミドを含む耐熱層とを有することを特徴とする電池用セパレータシート。
【請求項2】
上記フッ素の含有量が15%以下であることを特徴とする請求項1記載の電池用セパレータシート。
【請求項3】
上記ポリイミドは、下記の化学式1又は化学式2であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電池用セパレータシート。
【化1】

【化2】

【請求項4】
正極と負極とがセパレータを介して対向配置され、電解質を含み、
上記セパレータは、ポリオレフィン系樹脂材料からなる基材層と、フッ素の含有量が25%以下であるポリイミドを含む耐熱層とを有することを特徴とする電池。
【請求項5】
上記フッ素の含有量が15%以下であることを特徴とする請求項4記載の電池。
【請求項6】
上記ポリイミドは、下記の化学式1又は化学式2であることを特徴とする請求項4又は請求項5記載の電池。
【化3】

【化4】


【図1】
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【図2】
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