説明

電池用水素吸蔵合金、それを用いた負極、およびニッケル水素二次電池

【課題】 高容量でかつサイクル寿命と−30℃付近までの低温における放電容量の双方
が向上された水素吸蔵合金を提供するものである。
【解決手段】 一般式1:R1−aMgNiで表され、少なくとも2H型の
積層構造をもつLaMgNi14型結晶相と3Rの積層構造をもつLaMgNi
相の2相を含むことを特徴とする電池用水素吸蔵合金。R:La,Ce,Pr,Nd、S
mから選ばれる少なくとも1種、M:Fe,Co,Mn,Cu,Ti,Zr,V,Nb,
Ta,Cr,Mo,Wから選ばれる少なくとも1種、X:Al,Ga,Zn,Sn,Si
,B,C,Pから選ばれる少なくとも1種、0<a<0.25、3.0≦b≦4.0、0
≦c≦1.0、0.1≦d≦1.0、3.6<b+c+d≦4.05(原子比)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高容量かつ長寿命で、低温から高温まで容量が高いニッケル水素二次電池用
水素吸蔵合金、それを用いた負極、およびニッケル水素二次電池に関する。本発明の電池
は、ハイブリッド自動車および電気自動車等に好適である。
【背景技術】
【0002】
水素吸蔵合金は、安全にかつ容易にエネルギー源としての水素を貯蔵できる合金であり
、新しいエネルギー変換および貯蔵用として非常に注目されている。機能性材料としての
水素吸蔵合金の応用分野は、水素の貯蔵・輸送、熱の貯蔵・輸送、熱―機械エネルギーの
変換、水素の分離・精製、水素同位体の分離、水素を活物質とした電池、合成化学におけ
る触媒、など広範囲にわたって提案されている。
特に、水素を可逆的に吸蔵・放出することが可能な水素吸蔵合金を二次電池の負極材料
として使用することが盛んに行われている。このニッケル水素二次電池は、様々な種類の
小型化で、軽量なポータブル電子機器の電源として使用されている。ポータブル機器は高
性能化、高機能化および小型化が進められており、このようなポータブル機器における
長時間駆動を可能にするためには、二次電池の体積あたりの放電容量を大きくする必要が
ある。また、最近では体積あたりの放電容量を高くするのと併せて、軽量化すなわち重量
あたりの放電容量を大きくすることが望まれている。
LaNi系希土類水素吸蔵合金は、常温常圧付近で水素と反応し、また化学的安定性
が比較的高いため、現在、電池用水素吸蔵合金としての研究が広く進められ、市販されて
いる二次電池用負極として使用されている。
しかしながら、LaNi型の希土類水素吸蔵合金を含む負極を備えた市販の2次電池
の放電容量は理論容量の80%以上に達しており、これ以上の高容量化には限界がある。
ところで希土類―Ni系金属間化合物には前述したLaNi系合金以外にも多数存在
している。例えば、Mat.Res.Bull.11 p.1241(1976)(非特許
文献1)には希土類元素をLaNi合金よりも多く含む金属間化合物が、LaNi5型の希土類
系金属間化合物に比べて常温付近で多量の水素を吸蔵することが開示されている。また、
Laサイトを希土類とMgの混合物にした系については、以下に示す2つの文献に知られてい
る。1つはJ.Less-common metals 73 339(1980)(非特許文献2)にLa1-xMgx
Ni2で表される水素吸蔵合金が報告されている。しかしながら、この水素吸蔵合金は水素
との安定性が高すぎて、水素を放出し難いため、二次電池の放電時に水素を完全に放出さ
せることが困難であるという問題点有する。一方、日本金属学会第120回春季大会講演
概要p.289(1997)(非特許文献3)には組成がLaMg2Ni9で表される水素吸蔵合金
が報告されているが、この系も充放電時の水素の放出が吸蔵に比べて小さいという問題点
がある。
【0003】
また、特開昭63−271348号公報(特許文献1)には、一般式、Mm1−x
NiCoで表される水素吸蔵合金を含む水素吸蔵電極が開示されている。一方、
特開昭62−271349号公報(特許文献2)には、La1−xNiCo
で表される水素吸蔵合金を含む水素吸蔵電極が開示されている。
しかしながら、これら水素吸蔵電極を備えた二次電池は放電容量が低く、かつサイクル
寿命が短いという問題がある。さらには、自動車用途に使用した場合、低温での放電特性
も一層の改善が必要となる。
また、国際公開WO97/03213号公報(特許文献3)および米国特許公報584
0166号(特許文献4)には、組成が下記一般式(i)であらわされ、特定の逆位相境
界を有する水素吸蔵合金を含む水素吸蔵電極が開示されている。この水素吸蔵合金の結晶
構造はCaCu5型単相からなる。
(R1−x)(Ni1−y (i)
この(i)式において、RはLa,Ce,Pr,Ndまたはこれらの混合元素を示す。LはGd,Tb,Dy,
Ho,Er,Tm,Yb,Lu,Y,Sc,Mg,Caまたはこれらの混合元素を示す。一方、MはCo,Al,Mn,Fe,Cu,Z
r,Ti,Mo,Si,V,Cr,Nb,Hf,Ta,W,B,Cまたはこれらの混合元素を示す。また、原子比x、yお
よびzは0.05≦x≦0.4、0≦y≦0.5、3.0≦z<4.5である。
この水素吸蔵合金は前記一般式(i)で表される組成を有する合金の溶湯を表面に平均
最大高さが30〜150μmの凹凸を有するロール上に、過冷度50〜500℃、冷却速
度1000〜10000℃/秒の冷却条件で、0.1〜2mm厚さに均一に凝固させた後
、熱処理を施すことにより製造される。また、この条件を外れると得られた合金は、CaCu
5型結晶構造の結晶粒とCeNi型結晶構造からなり、LaNi型単相が得られな
いことが報告されている。
しかしながら、組成が前述した(i)式で表され、特定の逆位相境界を有し、かつ結晶
構造がCaCu5構造である水素吸蔵合金を含む負極を備えた二次電池は、特に自動車用に必
要な低温での放電容量およびサイクル寿命が低い方という問題点がある。
さらに、特開平11−29832号公報(特許文献5)には、組成が下記(ii)に示
す一般式で表され、かつ空間群がP63/mmcである六方晶構造を有する水素吸蔵材が
開示されている。
(R1−x(Ni7−Y−Z−α―βMnNbαβ (ii)
ただし、前記(ii)において、Rは希土類元素またはミッシュメタル(Mm)、AはM
g,Ti,Zr,Th,Hf,SiおよびCaより選択された少なくとも1種、CはGa
、Ge、In,Sn,Sb,Tl,PbおよびBiより選択された少なくとも1種を示す

また、X,Y,Z,α、βおよびnは、0<X≦0.3、0.3≦Y≦1.5、0<Z
≦0.3、0≦α≦1、0≦β≦1、0.9≦n≦1.1を示す。
この(ii)で表される組成を有する水素吸蔵合金においては、RとAの原子比の合計
を1とした際のMnの原子比が、0.135以上、0.825以下である。
しかしながら、この水素吸蔵合金は水素吸蔵、放出反応の可能性に劣るため、水素吸蔵
放出量が少ないとという問題点がある。また、この水素吸蔵合金を含む負極を備えた電池
は水素吸蔵放出反応の可逆性に劣り、その上作動電圧が低くなるため、放電容量が低くな
る。
【0004】
ところで、特開平10−1731号公報(特許文献6)の特許請求の範囲には、A
19で表される組成を有する金属間化合物の相を含む水素吸蔵合金が開示されている。た
だし、前記AはLa,Ce,Pr,Sm,Nd,Mm,Y,Gd,Ca,Mg,Ti,Z
r,Hfから選ばれる少なくとも1種以上の元素であり、前記TはB,Bi,Al,Si
,Cr,V,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,SnおよびSbからなる群より選ば
れる少なくとも1種以上の元素である。
この公開公報には、A19の組成を有する金属間化合物の相を含む水素吸蔵合金の
作製方法として、以下に説明する方法が開示されている。まず、ATの組成を有する金
属間化合物の相を含む合金と、ATの組成を有する金属間化合物の相を有する金属間化
合物の相を含む合金を混合してメカニカルアロイングすることにより、ATとAT
ほかに、A19の組成を有する金属間化合物の相を形成する。ついで、得られた合金
と、ATの組成を有する金属間化合物の相を含む合金とを混合する、もしくはメカニカ
ルアロイングすることにより、A19相とAT相とを含む水素吸蔵合金を得る。こ
の水素吸蔵合金では、前記公開公報の図1に示すように、結晶粒全体がA19で表さ
れる組成を有する領域から構成されている。
さらに、国際公開WO01/048841号公報(特許文献7)には下記の(iii)
で表される水素吸蔵合金が示されている。
R1-a-bMgaTbNi1z-x-y-αM1xM2Mnα (iii)
ただし、Rは希土類元素(前記希土類元素にはYが含まれる)から選ばれる少なくとも1
種の元素、TはCa、Ti,ZrおよびHfから選ばれる少なくとも1種の元素、M1はFe,Coから選
ばれる少なくとも1種の元素、M2はAl,Ga,Zn,Sn,Cu,Si,B,Nb,W,Mo,V,Cr,Ta,Li,PおよびS
から選ばれる少なくとも1種の元素であり、原子比a,b、x、y、αおよびZは0.1
5≦a≦0.37、0≦b≦0.3,0≦x≦1.3、0≦y≦0.5、0≦α≦0.1
35、2.5≦z≦4.2 をそれぞれ示す。
しかしながら、本発明の中でハイブリッド自動車用としてさらに最適な水素吸蔵合金を
開発する必要があった。
また、特開平11−323469号公報(特許文献8)には下記(iV)で表される水
素吸蔵合金が開示されている。すなわち、
(Mg1−a−bR1M1)Ni (iV)
ただし、R1はYを含む希土類元素から選ばれる少なくとも1種の元素、M1はMgより
も電気陰性度のおおきな元素(ただし、前記R1の元素、Cr,Mn,Fe,Co,Cu
ZnおよびNiを除く)から選ばれる少なくとも1種の元素、a,b、およびzはそれぞ
れ0.1≦a≦0.8、0<b≦0.9、1−a−b>0、3≦z≦3.8として規定さ
れる。
しかしながら、この水素吸蔵合金においても、ハイブリッド自動車用の水素吸蔵合金と
しての最適化がなされておらず、本用途への水素吸蔵合金の最適化が必要であった。
【0005】
【特許文献1】特開昭63−271348号公報
【特許文献2】特開昭62−271349号公報
【特許文献3】国際公開WO97/03213号公報
【特許文献4】米国特許公報5840166号
【特許文献5】特開平11−29832号公報
【特許文献6】特開平10−1731号公報
【特許文献7】国際公開WO01/048841号公報
【特許文献8】特開平11−323469号公報
【非特許文献1】Mat.Res.Bull.11 p.1241(1976)
【非特許文献2】J.Less-common metals 73 339(1980)
【非特許文献3】日本金属学会第120回春季大会講演概要p.289(1997)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、LaNi型の組成に比べてLaサイトが多量に含まれているタイプに属す
る組成を有する水素吸蔵合金における水素との安定性が高すぎて水素を放出し難いという
問題点およびアルカリ電解液により腐食酸化を受けやすいという問題点が改善され、水素
吸蔵、放出量が高い水素吸蔵合金を提供するものであり、特にハイブリッド自動車に適し
たレート特性、低温特性に優れた高容量、長寿命水素吸蔵合金を提供するものである。
また、本発明は、Ni水素二次電池の課題であった高容量でかつサイクル寿命と−30℃
付近までの低温における放電容量の双方が向上された電池用水素吸蔵合金、これを用いた
負極、およびニッケル水素二次電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の電池用水素吸蔵合金は、一般式1として
1−aMgNi (1)
R:La,Ce,Pr,Nd、Smから選ばれる少なくとも1種
M:Fe,Co,Mn,Cu,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wから選ば
れる少なくとも1種
X:Al,Ga,Zn,Sn,Si,B,C,Pから選ばれる少なくとも1種
0<a<0.25
3.0≦b≦4.0
0≦c≦1.0
0.1≦d≦1.0
3.6<b+c+d≦4.05
で表され、少なくとも2H型の積層構造をもつLaMgNi14型結晶相と3Rの積層
構造をもつLaMgNi型相の2相を含むことを特徴とする電池用水素吸蔵合金。
である。また、第二の電池用水素吸蔵合金は、一般式2として
1−a―xMgNi (2)
R:La,Ce,Pr,Nd、Smから選ばれる少なくとも1種
A:Ca,Sr,Baから選ばれる少なくとも1種
M:Fe,Co,Mn,Cu,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wから選ば
れる少なくとも1種
X:Al,Ga,Zn,Sn,Si,B,C,Pから選ばれる少なくとも1種
0<a<0.25
0<x≦0.5
3.0≦b≦4.0
0≦c≦1.0
0.1≦d≦1.0
3.6<b+c+d≦4.05
で表され、少なくとも2H型の積層構造をもつLaMgNi14型結晶相と3Rの積層
構造をもつLaMgNi型相の2相を含むことを特徴とする電池用水素吸蔵合金であ
る。
また、本発明にかかるニッケル水素二次電池用負極は一般式1として
1−aMgNi (1)
R:La,Ce,Pr,Nd、Smから選ばれる少なくとも1種
M:Fe,Co,Mn,Cu,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wから選ば
れる少なくとも1種
X:Al,Ga,Zn,Sn,Si,B,C,Pから選ばれる少なくとも1種
0<a<0.25
3.0≦b≦4.0
0≦c≦1.0
0.1≦d≦1.0
3.6<b+c+d≦4.05
で表され、少なくとも2H型の積層構造をもつLaMgNi14型結晶相と3Rの積層
構造をもつLaMgNi型相の2相を含む水素吸蔵合金を用いたことを特徴とするニ
ッケル水素二次電池用負極である。
【0008】
本発明に用いる第二のニッケル水素二次電池用負極は、一般式2として
1−a―xMgNi (2)
R:La,Ce,Pr,Nd、Smから選ばれる少なくとも1種
A:Ca,Sr,Baから選ばれる少なくとも1種
M:Fe,Co,Mn,Cu,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wから選ば
れる少なくとも1種
X:Al,Ga,Zn,Sn,Si,B,C,Pから選ばれる少なくとも1種
0<a<0.25
0<x≦0.5
3.0≦b≦4.0
0≦c≦1.0
0.1≦d≦1.0
3.6<b+c+d≦4.05
で表され、少なくとも2H型の積層構造をもつLaMgNi14型結晶相と3Rの積層
構造をもつLaMgNi型相の2相を含む水素吸蔵合金を用いることを特徴とするニ
ッケル水素電池用負極である。
本発明のニッケル水素二次電池は、一般式1として
1−aMgNi (1)
R:La,Ce,Pr,Nd、Smから選ばれる少なくとも1種
M:Fe,Co,Mn,Cu,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wから選ば
れる少なくとも1種
X:Al,Ga,Zn,Sn,Si,B,C,Pから選ばれる少なくとも1種
0<a<0.25
3.0≦b≦4.0
0≦c≦1.0
0.1≦d≦1.0
3.6<b+c+d≦4.05
で表され、少なくとも2H型の積層構造をもつLaMgNi14型結晶相と3Rの積層
構造をもつLaMgNi型相の2相を含む水素吸蔵合金を用いた負極と正極と電解液
とからなることを特徴とするニッケル水素二次電池。
また、第二のニッケル水素二次電池は一般式2として、
1−a―xMgNi (2)
R:La,Ce,Pr,Nd、Smから選ばれる少なくとも1種
A:Ca,Sr,Baから選ばれる少なくとも1種
M:Fe,Co,Mn,Cu,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wから選ば
れる少なくとも1種
X:Al,Ga,Zn,Sn,Si,B,C,Pから選ばれる少なくとも1種
0<a<0.25
0<x≦0.5
3.0≦b≦4.0
0≦c≦1.0
0.1≦d≦1.0
3.6<b+c+d≦4.05
で表され、少なくとも2H型の積層構造をもつLaMgNi14型結晶相と3Rの積層
構造をもつLaMgNi型相の2相を含む水素吸蔵合金を用いた負極と正極と電解液
とからなることを特徴とするニッケル水素二次電池である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の電池用水素吸蔵合金は、ニッケル水素二次電池の課題であった高容量でかつサイ
クル寿命と−30℃付近までの低温における放電容量の双方が向上されたものである。ま
た、それを用いたニッケル水素二次電池用負極並びにニッケル水素二次電池は優れた特性
を具備するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明にかかる電池用水素吸蔵合金、これを用いた負極、およびニッケル水素二次電池に
ついて説明する。
本発明の電池用水素吸蔵合金は、一般式1として
1−aMgNi (1)
R:La,Ce,Pr,Nd、Smから選ばれる少なくとも1種
M:Fe,Co,Mn,Cu,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wから選ば
れる少なくとも1種
X:Al,Ga,Zn,Sn,Si,B,C,Pから選ばれる少なくとも1種
0<a<0.25
3.0≦b≦4.0
0≦c≦1.0
0.1≦d≦1.0
3.6<b+c+d≦4.05
で表され、少なくとも2H型の積層構造をもつLaMgNi14型結晶相と3Rの積層
構造をもつLaMgNi型相の2相を含むことを特徴とする電池用水素吸蔵合金であ
る。
ここで、RはLa,Ce,Pr,Nd,Smである。Rは水素吸蔵能力を決める元素であ
り、La,Pr,Ndが主となることが寿命特性の観点から好ましい。なお、これら以外
の希土類元素(ランタノイド族)が10原子%まで含まれてもよい。
MgはRと同様に水素吸蔵能を決める元素であるが、Rとの比率(a)で容量、寿命が決
まる。その量は0<a<0.25である。Mgを含まないと充放電特性が悪く、0.25
を超えると容量が低下しすぎてしまい問題となる。好ましくは、0.05≦x≦0.23
であり、さらに好ましくは0.1≦x≦0.20である。
Niは水素吸蔵合金における水素の放出、電解液中での化学反応の活性化に有効な元素
であり、その量bは3≦b≦4である。3未満の場合、吸蔵した水素の放出が困難であり
、一方4を超えると容量は低下する。好ましくは、3.1≦b≦3.9であり、さらに好
ましくは3.2≦b≦3.8である。Mは充放電サイクル特性の向上、あるいは高容量化
に有効な元素であり、その量は0≦c≦1.0である。好ましいM元素は、Co,Fe,
Mn、Cuである。cは1を超えると容量が低下する。好ましくは、0.05≦c≦0.
8である。XはAl,Ga,Zn,Sn,Si,B,C,Pから選ばれる少なくとも1種
であり、充放電サイクル寿命特性に効果がある。その量は1を超えると容量が低下してし
まう。好ましくは0.1≦d≦0.9である。XのうちAl、Zn,Sn、Siが寿命特
性の観点から好ましい。
ここで容量、サイクル寿命および低温特性、レート特性に効果的なものがbとcの合計量
であり、3.6<b+c+d≦4.05である。3.6以下ではレート特性が不十分とな
り、一方4.05を超えると低温特性が劣化してくる。好ましくは、3.65≦b+c≦
4.0である。
【0011】
また、本発明の第二の水素吸蔵合金は、一般式2として
1−a―xMgNi (2)
R:La,Ce,Pr,Nd、Smから選ばれる少なくとも1種
A:Ca,Sr,Baから選ばれる少なくとも1種
M:Fe,Co,Mn,Cu,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wから選ば
れる少なくとも1種
X:Al,Ga,Zn,Sn,Si,B,C,Pから選ばれる少なくとも1種
0<a<0.25
0<x≦0.5
3.0≦b≦4.0
0≦c≦1.0
0.1≦d≦1.0
3.6<b+c+d≦4.05
で表され、少なくとも2H型の積層構造をもつLaMgNi14型結晶相と3Rの積層
構造をもつLaMgNi型相の2相を含むことを特徴とする電池用水素吸蔵合金であ
る。
ここで、R,M,XおよびNiについては、第一の水素吸蔵合金と同じであり、Aについ
てはCa,Sr,Baから選ばれる少なくとも1種以上である。Aはサイクル寿命を保っ
たまま容量を増大させる元素である。好ましい元素はCaである。その量xは0<x≦0
.5であり、0.5を超えるとサイクル寿命が低下する。好ましくは0.05≦x≦0.
40である。
本発明にかかる水素吸蔵合金にはN,O,Fなどの元素が不純物として本願発明合金の
特性を阻害しない範囲で含まれていてもよい。なお、これらの不純物は各々1wt%以下
の範囲であることが好ましい。
本発明の水素吸蔵合金は、その結晶構造は少なくともCaCu5型は含まず、少なくと
も2H型の積層構造をもつLaMgNi14型結晶相と3Rの積層構造をもつLa
gNi型相の2相を含む。その他、2H型の積層構造をもつLaMgNi相、3R
型の積層構造をもつLaMgNi14相、2H型のLaMgNi19相、3R型のL
MgNi19相のいずれかが30%含まれていてもよい。ここで、30%とはTEM
評価によって得られる、視野200nm×200nmの範囲で、10枚観察し、その面積
比の平均値とする。
【0012】
本発明のニッケル水素二次電池用負極は、一般式1あるいは一般式2の水素吸蔵合金を
用いた負極である。また、本発明のニッケル水素二次電池は正極と電解液と一般式1ある
いは一般式2に示す水素吸蔵合金を用いた負極からなるものである。
本発明の水素吸蔵合金にかかる製造方法は、通常の溶解〜鋳造〜熱処理でよく、鋳造時に
冷却鋳型あるいは冷却板を用いて冷却してもよい。熱処理は不活性雰囲気中で600〜融
点直下の範囲で、1時間から20時間行うのが好ましい。また、熱処理の際、蒸気圧の高
いMgが含まれているため、Ar, Heなど不活性雰囲気の加圧下としてもよい。
特に熱処理後の冷却速度は、5℃/分以下にすることが好ましく、さらに好ましくは3℃
/分、最も好ましくは1℃/分である。
本発明の水素吸蔵合金は、その特性をより発揮させるために、表面処理を行っても良い。
その方法は、酸処理、アルカリ処理などいずれの方法でもよく、粉末表面近傍のNi濃度
を相対的に高くすることが好ましい。酸は塩酸、硝酸、シュウ酸を用いるのが好ましく、
アルカリ処理の場合は電解液のKOH水溶液で良いが、NaOH水溶液を用いてもよい。
この場合、水溶液の濃度は30〜80重量%の水酸化アルカリを含むことが好ましく、ま
た処理温度は室温以上での処理がよく、処理時間を短くするには40℃以上、さらに好ま
しくは60℃以上沸点までが好ましい。
この場合、工程としては水素吸蔵合金粉末をアルカリ水溶液中に浸漬する工程であり、
場合によっては表面処理された粉末を水洗する工程からなる。
表面処理に用いる水素吸蔵合金の平均粒径は、5〜50μmが好ましい。5μm未満で
は表面処理により水素吸蔵部が減少し、結果として水素吸蔵量が低下する。一方、50μ
mを超えると、表面処理により生じる比表面積が小さく、高率放電、温度特性の向上が不
十分となる。
【0013】
また、アンモニア添加による表面処理と同時、または時間を遅らせて金属塩を添加して
もよい。使用可能な金属は特に限定されないが、Mg,Ca,Srなどのアルカリ土類金属、Ni,C
o,Cuなどの遷移金属、Yを含む希土類金属があり、その塩には塩化物、硫酸塩、硝酸塩お
よびアンモニウム塩などがある。使用する金属塩の量は、最終的に水素吸蔵合金表面に酸
化物がおよび/または水酸化物が生成する量と関連するため、他の条件などにも依存性も
考慮して設定する。
これらの金属塩を使用する前記水素吸蔵合金の表面処理は、例えばアンモニアが残存する
水素吸蔵合金粉末を投入し、加熱撹拌して懸濁状態で反応を進行させる。さらにpHが酸
性または中性である場合には、水酸化アルカリなどを添加して液性をアルカリ性にする。
これらの操作における温度は特に限定されず、室温から100℃の任意の液温で行えばよ
く、望ましい液温は40〜80℃である。
これらの操作により、水素吸蔵合金粉末表面に金属酸化物や金属水酸化物が析出するた
め、水素吸蔵合金の寿命が延び、所望特性を有する水素吸蔵合金が提供できることになる

本発明の水素吸蔵合金への表面処理は、公知の初期充放電での電極活性化、自己放電特
性、高率放電特性およびサイクル寿命への効果以外に、自動車に用いられる電池に必要な
温度特性も実現する。
【0014】
次に、電池の製造方法について述べる。
1)負極
この負極は、例えば前述した水素吸蔵合金の粉末に導電材を添加し、高分子結着剤および
水とともに混錬してペーストを調整し、前記ペーストを導電材基板に充填し、乾燥した後
、成形することにより作製される。
前記水素吸蔵合金が担持される導電性基板としては、例えばパンチドメタル、エキスパン
デッドメタル、ニッケルネットなどの二次元基板や、フェルト状金属多孔体、スポンジ状
金属基板などの三次元基板をあげることができる。
前記負極には、さらに結着剤を含有させることができる。前記結着剤としては例えばカ
ルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリル酸ナトリウム,ポリテトラ
フルオロエチレンなどを挙げることができる。また、前記負極には導電材を含有させても
よい。前記導電材としては、例えばカーボンブラックなどを挙げることができる。また、
ペースト中にY,Er、Yb、Smなどの希土類金属酸化物、
Mn、LiMn、Nb、SnOなどの酸化物を添加してもよい。負極
中に前記酸化物を含有することによって、高温でのサイクル寿命を改善することが可能に
なる。また、添加する酸化物の種類は1種類もしくは2種類以上にすることができる。酸
化物の添加量は前記水素吸蔵合金に対して0.2〜5wt%の範囲にすることが好ましい
。より好ましい範囲は0.4〜2wt%である。
【0015】
2)正極
この正極は、アルカリ電解液中で安定して充放電が可能であれば良く、例えば活物質であ
る水酸化ニッケル粉末に導電材料を添加し、結着剤および水とともに混錬してペーストを
調製し、前記ペーストを導電性基板に充填し、乾燥した後、成形することにより作製され
る。
前記水酸化ニッケル粉末は、亜鉛酸化物、コバルト酸化物、亜鉛水酸化物およびコバルト
水酸化物の群から選択される少なくとも一つの化合物と、水酸化ニッケルとの混合物を保
持していることが好ましい。このような水酸化ニッケル粉末を含む正極と、前記負極とを
備えたニッケル水素二次電池は充放電容量および低温放電特性を著しく向上することがで
きる。
前記導電材料としては、例えばコバルト酸化物、コバルト水酸化物、金属コバルト、金属
ニッケル、炭素などを挙げることができる。
前記結着剤としては例えばカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリアクリ
ル酸ナトリウム,ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニルアルコールなどを挙げること
ができる。
前記導電性基板としては、例えばニッケル、ステンレスまたはニッケルメッキが施された
金属から形成された網状、スポンジ状、繊維状、もしくはフェルト状の金属多孔体を挙げ
ることができる。
3) セパレータ
このセパレータとしては例えばポリプロピレン不織布、ナイロン不織布、ポリプロピレ
ン繊維とナイロン繊維を混織した不織布のような高分子不織布などを挙げることができる

特に、表面が親水化処理されたポリプロピレン不織布はセパレータとして好適である。
4) アルカリ電解液
このアルカリ電解液としてはたとえば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶
液、水酸化カリウム水溶液、NaOHとLiOH混合液、KOHとLiOH混合液、KO
H、LiOHとNaOHの混合液などを用いることが出来る。
本発明にかかるニッケル水素二次電池は、たとえば以下に説明する方法で製造される。ま
ず、正極および負極の間にセパレータを介在させて電極群を作製した後、この電極群を容
器内に収納したのち、前記容器にアルカリ電解液を注入した後、封口処理を行う。ついで
、室温以上の温度に保持した後に初充電を施すか、あるいは初充電を施した後に室温以上
の温度に保持することにより、前記二次電池を製造することができる。また、前記負極の
水素吸蔵合金粉末の平均粒径は15〜50μmの範囲にすることが好ましい。平均粒径が
10μm未満では、サイクル寿命が短くなり、一方50μmを超えると低温特性が低下す
る傾向にある。また、導電性基板にペーストを均一に塗布できなくなる可能性があり、電
池特性がばらついてしまう。
【0016】
本発明にかかるニッケル水素二次電池の一例である円筒形ニッケル水素二次電池を図1に
示す。図1に示すように、水素吸蔵合金を含む負極11とニッケル酸化物を含む正極12
との間に電気絶縁性を有するセパレータ13を介装して密閉容器14内に収容し、この密
閉容器14内にアルカリ電解液を充填して構成される。
すなわち、水素吸蔵合金を含む水素吸蔵合金電極(負極)11は、非焼結式ニッケル電極
(正極)12との間にセパレータ13を介在して渦巻状に捲回され、有底円筒状の容器1
4内に収納されている。アルカリ電解液は、前記容器14内に収容されている。中央に穴
15を有する円形の封口板16は、前記容器14の上部開口部に配置されている。リング
状の絶縁性ガスケット17は、前記封口板16の周縁と前記容器14の上部開口部内面と
の間に配置され、前記上部開口部を内側に縮径するカシメ加工により前記容器14に前記
封口板16を前記ガスケット17を介して気密に固定している。正極リード18は、一端
が前記正極12に接続され、他端が前記封口板16の下面に接続されている。帽子形状を
なす正極端子19は、前記封口板16上に前記穴15を覆うように取り付けられている。
ゴム製の安全弁20は、前記封口板16と前記正極端子19で囲まれた空間内に前記穴1
5を塞ぐように配置されている。絶縁チューブ21は、前記正極端子19および前記容器
14の上端に載置される鍔紙22を固定するように前記容器14の上端付近に取り付けら
れている。
【0017】
本発明にかかるニッケル水素二次電池は、前述した図1に示すような円筒形ニッケル水
素二次電池のほかに、正極と負極とをセパレータを介して交互に積層した構造の電極群と
アルカリ電解液とが有底矩形筒状の容器内に収納された構造の角型ニッケル水素二次電池
に同様に適用することができる。
このような電池によれば、高い放電容量を維持しつつ、−30℃付近の低温特性とサイ
クル寿命の双方を満足することが出来る。
本発明にかかる電池用水素吸蔵合金、負極あるいはNi水素二次電池はハイブリッド自動車
、および電気自動車用途に好適である。ハイブリッド自動車は外燃機関もしくは内燃機関
と、例えばモータからなる電気駆動手段と前記電気駆動手段用の電源とを具備する。前記
電源は、本発明にかかるニッケル水素二次電池を具備する。ハイブリッド自動車には、外
燃機関もしくは内燃機関が発電機を駆動し、発電した電力と前記二次電池からの電力によ
り電気駆動手段が車輪を駆動するものと、外燃機関もしくは内燃機関ならびに電気駆動手
段の双方の駆動力を使い分けて車輪を駆動するものとが包含される。
本発明にかかる電気自動車は駆動電源として本発明にかかるニッケル水素二次電池を具備
する。このような本発明のNi水素二次電池を用いれば、ハイブリッド自動車および電気
自動車によれば、燃費などの走行性能を高くすることが出来る。
【0018】
(実施例)
(実施例1〜66、比較例1〜15)
表1に示す実施例1〜66の合金について、Ar雰囲気下で高周波誘導加熱炉により作製
した。得られた母合金をAr雰囲気中で1000℃、5時間熱処理を行い、その後1℃/
min.の速さで冷却した。得られた合金は、粗粉砕後ハンマーミルで微粉砕後、平均粒
径20μmとした。なお、それぞれの合金はTEM観察により、主相(2H−La3MgNi14相と
3R−La2MgNi9相)の割合を評価した。
この合金粉末100重量部に対して、市販のカルボニル法で調整されたニッケル粉末を
0.5重量%とケッチェンブラック粉末を0.5重量部とを添加して混合した。この混合
粉末100重量部に対して、ポリテトラフルオロエチレン1重量部、ポリアクリル酸ナト
リウム0.2重量部、カルボキシルメチルセルロース0.2重量部、および水50重量部
を加えて撹拌し、ペーストを調整した。表面にニッケルめっきが施された鉄製穿孔薄板に
得られたペーストを塗布し、乾燥することにより塗工板を得た。得られた塗工板にロール
プレスを施すことにより、厚さ調整を行った後、所望の寸法に裁断し、水素吸蔵合金を含
む負極を作製した。
一方、セパレータとしてアクリル酸がグラフト共重合されたポリオレフィン系不織布を
用意した。
この負極と1500mAhの公称容量を有する公知技術によって作製されたペースト式ニ
ッケル正極とを、その間に前記セパレータを介在させながら渦巻き状に捲回することによ
り電極群を作製した。
得られた電極群と7molのKOH、0.5molのNaOHおよび0.5molのL
iOHを含むアルカリ電解液2.5mlとを友底円筒状容器内に収納し、封口することに
より、前述した図1に示す構造を有し、公称容量が1500mAhで、AAサイズの円筒
形ニッケル水素二次電池を組み立てた。
【0019】
一方、比較例1〜15について、下記に示すそれぞれの手法で材料を作製し、評価用に
供した。
比較例1は、高周波誘導加熱炉を用いてAr雰囲気中で溶解した後、単ロール鋳造装置を用
いて、厚さ0.3〜0.4mmの帯状合金を作製し、得られた合金を850℃、4時間熱
処理することにより、評価用試料に供した。
比較例2は高周波溶解した溶湯を冷却板上に鋳込んだ後、890℃で12時間Ar雰囲気中
にて熱処理し、評価用試料に供した。
比較例3は、まずLaNi3とLaNi4を100gづつ混合し、鋼球の入った遊星型ボールミルの
中で、室温、アルゴン雰囲気中で10時間メカニカルアロイング処理を行った後、この合
金10gとLaNi5合金100gを同様の条件でメカニカルアロイングし、LaNi3、LaNi4、L
a5Ni19、LaNi5相からなる試料を作製した。
比較例4はアーク溶解炉で表に示した組成の合金をAr雰囲気中で作製した後、900℃で
12時間熱処理を行い、測定用試料とした。
比較例5は高周波誘導加熱炉を用いてAr雰囲気中で溶解したのち、900℃で10時間熱
処理を行った。
比較例6〜14は高周波誘導加熱炉を用いてAr雰囲気中で溶解したのち、900℃で10
時間熱処理を行った。
比較例15はLa0.7Mg0.3Ni2.5Co0.5は、高周波誘導加熱炉を用いて
Ar雰囲気中で溶解したのち、900℃で10時間熱処理を行った。得られた試料は、結晶
構造の解析の結果、3R-PuNi3型のLa2MgNi9相が50%、2H-Ce2Ni7型のLa3MgNi14相が25%
、2H-Pr5Co19型のLa4MgNi19相が15%、C15b型のLaMgNi4相が9%であった。
【0020】
上記した比較例の試料は、いずれもジェットミルにより粉砕し、平均粒径20μmとした
後、実施例と同様の方法で二次電池を作製した。
得られた実施例1〜66および比較例1〜15の二次電池について、室温で36時間放
置した。引き続き、150mAで15時間充電後、150mAの電流で電池電圧が0.8
Vになるまで放電する充放電サイクルを2回行った。この後、45℃の環境下で充放電サ
イクルを繰り返し、放電容量が1サイクル目の放電容量の80%以下に達するまでのサイ
クル数を測定し、前記サイクル数および1サイクル目の放電容量を表 に示す。なお、充
放電サイクルの充電過程充電電流を1500mAにし、充電時の最大電圧から10mV低
下したときに充電を終了する−ΔV法を用いて行った。一方、放電過程は3000mAの
電流で電池電圧が1.0Vになるまで行った。
評価は、容量、充放電サイクル寿命、低温特性(室温に比較した−30℃の放電容量)
、高率放電特性である。
表1〜3から明らかなとおり、本発明の水素吸蔵合金を用いたニッケル水素二次電池は優
れた特性を持ち合わせており、通常のデジカメ用電池など一般の単3,4を置き換える市
販電池から、ハイブリッド自動車用に適した電池であることがわかる。
【0021】
【表1】

【0022】
【表2】

【0023】
【表3】

【0024】
(実施例67〜70)
表1に示す実施例1の組成の母合金について、同様の条件で作製した。得られた母合金は
Ar雰囲気中で1000℃、5時間熱処理を行い、その後種々の速度で400℃まで冷却
した。それぞれの冷却速度は、実施例67は5℃/min.、実施例68は2.5℃/m
in.,実施例69は0.5℃/min.実施例70は0.1℃/min.である。得ら
れた合金は、それぞれ粗粉砕した後、ハンマーミルで微粉砕を行い、平均粒径20μmと
した。
実施例1と同様にして負極を作製した。こののち、正極、セパレータとともに電池を作製
し、評価に供した。
得られた実施例67〜72の二次電池について、室温で36時間放置した。引き続き、
150mAで15時間充電後、150mAの電流で電池電圧が0.8Vになるまで放電す
る充放電サイクルを2回行った。この後、45℃の環境下で充放電サイクルを繰り返し、
放電容量が1サイクル目の放電容量の80%以下に達するまでのサイクル数を測定し、前
記サイクル数および1サイクル目の放電容量を表 に示す。なお、充放電サイクルの充電
過程充電電流を1500mAにし、充電時の最大電圧から10mV低下したときに充電を
終了する−ΔV法を用いて行った。一方、放電過程は3000mAの電流で電池電圧が1
.0Vになるまで行った。
評価は、容量、充放電サイクル寿命、低温特性(室温に比較した−30℃の放電容量)
、高率放電特性である。
表4から明らかなとおり、本発明の水素吸蔵合金を用いたニッケル水素二次電池は優れた
特性を持ち合わせており、通常のデジカメ用電池など一般の単3,4を置き換える市販電
池から、ハイブリッド自動車用に適した電池であることがわかる。
【0025】
(実施例71〜89)
実施例1と同様にして、実施例71〜89の水素吸蔵合金を作製した。平均粒径を25
μmとして粉砕した後に、実施例71〜74は50重量%のKOH水溶液を60℃として
、この中に水素吸蔵合金粉末を浸漬させて表面処理を行った。実施例75〜78は60重
量%のNaOH水溶液を70℃として、この中に水素吸蔵合金粉末を浸漬させて表面処理
を行った。実施例79〜80は塩酸を用いてpHを2に設定し、40℃水溶液中で、水素
吸蔵合金粉末を浸漬させて表面処理を行った。実施例81〜82は硝酸を用いてpHを2
に設定し、60℃とした水溶液中で、水素吸蔵合金粉末を浸漬させて表面処理を行った。
実施例83〜84はシュウ酸を用いてpH4に設定し、50℃とした水溶液中で表面処理
、実施例85〜89はアンモニアによる表面処理を行った。
得られた水素吸蔵合金粉末を用い、実施例1と同様にして負極を作製した。こののち、正
極、セパレータとともに電池を作製し、評価に供した。
得られた実施例71〜89および比較例1〜10の二次電池について、室温で36時間
放置した。引き続き、150mAで15時間充電後、150mAの電流で電池電圧が0.
8Vになるまで放電する充放電サイクルを2回行った。この後、45℃の環境下で充放電
サイクルを繰り返し、放電容量が1サイクル目の放電容量の80%以下に達するまでのサ
イクル数を測定し、前記サイクル数および1サイクル目の放電容量を表 に示す。なお、
充放電サイクルの充電過程充電電流を1500mAにし、充電時の最大電圧から10mV
低下したときに充電を終了する−ΔV法を用いて行った。一方、放電過程は3000mA
の電流で電池電圧が1.0Vになるまで行った。
評価の数値化としては、容量、寿命、低温特性、高率放電特性である。
表4から明らかなとおり、本発明の水素吸蔵合金を用いたニッケル水素二次電池は優れた
特性を持ち合わせており、ハイブリッド自動車用、および電気自動車用に適した電池であ
ることがわかる。
【0026】
(実施例90〜94)
実施例1と同様にして、実施例90〜94の水素吸蔵合金を作製した。平均粒径を25μ
mとして粉砕した後に、負極を作製する際に希土類酸化物を1重量%混合させた。
得られた水素吸蔵合金粉末を用い、実施例1と同様にして負極を作製した。こののち、正
極、セパレータとともに電池を作製し、評価に供した。
得られた実施例90〜94の二次電池について、室温で36時間放置した。引き続き、
150mAで15時間充電後、150mAの電流で電池電圧が0.8Vになるまで放電す
る充放電サイクルを2回行った。この後、45℃の環境下で充放電サイクルを繰り返し、
放電容量が1サイクル目の放電容量の80%以下に達するまでのサイクル数を測定し、前
記サイクル数および1サイクル目の放電容量を表 に示す。なお、充放電サイクルの充電
過程充電電流を1500mAにし、充電時の最大電圧から10mV低下したときに充電を
終了する−ΔV法を用いて行った。一方、放電過程は3000mAの電流で電池電圧が1
.0Vになるまで行った。
表2から明らかなとおり、本発明の水素吸蔵合金を用いたニッケル水素二次電池は優れた
特性を持ち合わせており、通常の単2、3、4などの電池のみならず、ハイブリッド自動
車用、および電気自動車用に適した電池であることがわかる。
【0027】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係るニッケル水素二次電池の一実施形態を部分的に破断して示す斜視図。
【符号の説明】
【0029】
11 水素吸蔵合金電極(負極)
12 非焼結式ニッケル電極(正極)
13 セパレータ
14 容器
15 穴
16 封口板
17 絶縁性ガスケット
18 正極リード
19 正極端子
20 安全弁
21 絶縁チューブ
22 鍔紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式1:R1−aMgNi
R:La,Ce,Pr,Nd、Smから選ばれる少なくとも1種
M:Fe,Co,Mn,Cu,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wから選ば
れる少なくとも1種
X:Al,Ga,Zn,Sn,Si,B,C,Pから選ばれる少なくとも1種
0<a<0.25
3.0≦b≦4.0
0≦c≦1.0
0.1≦d≦1.0
3.6<b+c+d≦4.05
で表され、少なくとも2H型の積層構造をもつLaMgNi14型結晶相と3Rの積層
構造をもつLaMgNi型相の2相を含むことを特徴とする電池用水素吸蔵合金。
【請求項2】
一般式2:R1−a―xMgNi
R:La,Ce,Pr,Nd、Smから選ばれる少なくとも1種
A:Ca,Sr,Baから選ばれる少なくとも1種
M:Fe,Co,Mn,Cu,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wから選ば
れる少なくとも1種
X:Al,Ga,Zn,Sn,Si,B,C,Pから選ばれる少なくとも1種
0<a<0.25
0<x≦0.5
3.0≦b≦4.0
0≦c≦1.0
0.1≦d≦1.0
3.6<b+c+d≦4.05
で表され、少なくとも2H型の積層構造をもつLaMgNi14型結晶相と3Rの積層
構造をもつLaMgNi型相の2相を含むことを特徴とする電池用水素吸蔵合金。
【請求項3】
一般式1:R1−aMgNi
R:La,Ce,Pr,Nd、Smから選ばれる少なくとも1種
M:Fe,Co,Mn,Cu,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wから選ば
れる少なくとも1種
X:Al,Ga,Zn,Sn,Si,B,C,Pから選ばれる少なくとも1種
0<a<0.25
3.0≦b≦4.0
0≦c≦1.0
0.1≦d≦1.0
3.6<b+c+d≦4.05
で表され、少なくとも2H型の積層構造をもつLaMgNi14型結晶相と3Rの積層
構造をもつLaMgNi型相の2相を含む水素吸蔵合金を用いたことを特徴とするニ
ッケル水素二次電池用負極。
【請求項4】
一般式2:R1−a―xMgNi
R:La,Ce,Pr,Nd、Smから選ばれる少なくとも1種
A:Ca,Sr,Baから選ばれる少なくとも1種
M:Fe,Co,Mn,Cu,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wから選ば
れる少なくとも1種
X:Al,Ga,Zn,Sn,Si,B,C,Pから選ばれる少なくとも1種
0<a<0.25
0<x≦0.5
3.0≦b≦4.0
0≦c≦1.0
0.1≦d≦1.0
3.6<b+c+d≦4.05
で表され、少なくとも2H型の積層構造をもつLaMgNi14型結晶相と3Rの積層
構造をもつLaMgNi型相の2相を含む水素吸蔵合金を用いることを特徴とするニ
ッケル水素二次電池用負極。
【請求項5】
一般式1:R1−aMgNi
R:La,Ce,Pr,Nd、Smから選ばれる少なくとも1種
M:Fe,Co,Mn,Cu,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wから選ば
れる少なくとも1種
X:Al,Ga,Zn,Sn,Si,B,C,Pから選ばれる少なくとも1種
0<a<0.25
3.0≦b≦4.0
0≦c≦1.0
0.1≦d≦1.0
3.6<b+c+d≦4.05
で表され、少なくとも2H型の積層構造をもつLaMgNi14型結晶相と3Rの積層
構造をもつLaMgNi型相の2相を含む水素吸蔵合金を用いた負極と正極と電解液
とからなることを特徴とするニッケル水素二次電池。
【請求項6】
一般式2:R1−a―xMgNi
R:La,Ce,Pr,Nd、Smから選ばれる少なくとも1種
A:Ca,Sr,Baから選ばれる少なくとも1種
M:Fe,Co,Mn,Cu,Ti,Zr,V,Nb,Ta,Cr,Mo,Wから選ば
れる少なくとも1種
X:Al,Ga,Zn,Sn,Si,B,C,Pから選ばれる少なくとも1種
0<a<0.25
0<x≦0.5
3.0≦b≦4.0
0≦c≦1.0
0.1≦d≦1.0
3.6<b+c+d≦4.05
で表され、少なくとも2H型の積層構造をもつLaMgNi14型結晶相と3Rの積層
構造をもつLaMgNi型相の2相を含む水素吸蔵合金を用いた負極と正極と電解液
とからなることを特徴とするニッケル水素二次電池。

【図1】
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【公開番号】特開2008−71687(P2008−71687A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−251002(P2006−251002)
【出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(303058328)東芝マテリアル株式会社 (252)
【Fターム(参考)】