説明

電池端子の構造

【発明の詳細な説明】
[産業上の利用分野]
この発明は、一般に電池端子の構造に関するものであり、特に、電力貯蔵用レドックスフロー電池などの積層型電池の端子構造に関するものである。
[従来の技術]
電力会社は、安定した電力を需要家に供給するために、電力の需要に合せて発電を行なう必要がある。このため、電力会社は、常に、最大需要に見合った発電設備を建設し、需要に即応して発電を行なっている。しかしながら、第4図の電力需要曲線Aで示すように、昼間および夜間では、電力の需要に大きな差が存在する。同様の現象は、週、月および季節間でも生じている。
そこで、電力を効率よく貯蔵することが可能であれば、オフピーク時、余剰電力(第4図の符号Xで示した部分に相当する)を貯蔵し、ピーク時にこれを放出すれば、第4図の符号Yで示した部分を賄うことができる。このようにすると、需要の変動に対応することができるようになり、電力会社は常にほぼ一定の電力(第4図の破線Zに相当する量)のみを発電すればよいことになる。このようなロードレベリングを達成することができれば、発電設備を軽減することが可能となり、かつエネルギの節約ならびに石油等の燃料節減にも大きく寄与することができる。
そこで、従来より種々の電力貯蔵法が提案されている。たとえば、揚水発電が既に実施されているが、揚水発電では設備が消費地から遠く隔った所に設置されている。したがって、この方法においては、送変電損失を伴うこと、ならびに環境面での立地に制約があることなどの問題点がある。それゆえに、揚水発電に代わる新しい電力貯蔵技術の開発が望まれており、その1つとしてレドックスフロー型2次電池の開発が進められている。
第5図は、従来より提案されているレドックスフロー型2次電池の概略構成図である。レドックスフロー電池は、セル1、正極波タンク6および負極液タンク5を備える。セル1内は、たとえばイオン交換膜からなる隔膜2により仕切られており、一方側が正極セル1aを構成し、他方側が負極セル1bを構成している。正極セル1aおよび負極セル1b内には、それぞれ電極として正極4または負極3が設けられている。正極セル1aには正極用電解液を導入するための正極用電解液導入管30が設けられている。また、正極セル1aには、該正極セル1a内に入っていた正極用電解液を流出させる正極用電解液流出管31が設けられている。正極用電解液導入管30の一端および正極用電解液流出管31の一端は、正極タンク6に連結されている。
負極セル1bには、負極用電解液を導入するための負極用電解液導入管32が設けられている。また、負極セル1bには、負極セル1b内に入っていた負極用電解液を流出させる負極用電解液流出管33が設けられている。負極用電解液導入管32の一端および負極用電解液流出管33の一端は、負極電解液タンク5に連結されている。
第5図に示したレドックスフロー型2次電池では、たとえば鉄イオン、クロムイオンのような原子価の変化するイオンの水溶液を正極液タンク6、負極液タンク5に貯蔵し、これをポンプP1,ポンプP2により、セル1に送液し、酸化還元反応により、充放電を行なう。
たとえば、正極活物質としてFe3+/Fe2+、負極活物質としてCr2+/Cr3+を用い、それぞれ、塩酸溶液とした場合、各酸化還元系の両極3,4における電池反応は、下記の式のようになる。




上述の式の電気化学反応により、約1Vの電圧が得られる。
ところで、レドックスフロー電池では、その発生電圧を高めるため、セルを直列に複数個接続した多段接続型のレドックスフロー電池が提唱されている。第6図に、電池セルの拡散分解図を示す。第6図を参照して、セル1には、図中、左から、双極板15、負極板13、隔膜12、正極板14および双極板16の構成要素が順に配列される。多段接続型は、このセル1が多数積層されたものである。そして、その両端部が、端子板17および端子板18で把持される。
双極板15は、カーボン板(またはカーボンを含んだプラスチック板)15aと該カーボン板15aの周辺部に嵌め入れた状態で、これを固定するプラスチック材料からなるフレーム15bとからなる。双極板16も、同様である。負極板13は、炭素繊維板13aと該炭素繊維板13aの周辺部に合わせ入れた状態で、これをフレーム13bとからなる。正極板14も、同様である。隔膜12は、イオン交換膜から構成される。また、端子板17,18は銅板で構成される。
[発明が解決しようとする課題]
従来の電池セルは以上のように構成されているが、以下に述べる問題点があった。
第7図は、従来の電池端子の断面図である。電池端子とは、第6図および第7図を参照して、電池セル1の最も外側の双極板15(または16)と端子板17(または18)との接合部の構造をいう。第7図を参照して、カーボン板15aの周辺部に嵌め入れた状態で、これをフレーム15bが固定している。端子板17は、カーボン板15に圧着または接着で接合される。
電池セルは、第6図に示すセル1を多数積層し、その両端に第7図に示す電池端子20を配置し、両側からボルトにより周囲を締付けることにより構成される。
ところで、従来の電池端子は以上のように構成されていたので、第7図を参照して、両側からボルトで締付けられる際に、カーボン板15aとフレーム15bの界面100に応力が集中し、カーボン板15aが破損するという問題点があった。
この発明は、上記のような問題点を解決するためになされたもので、カーボン板が破損しないように改良された電池端子構造を提供することを目的とする。
[課題を解決するための手段]
この発明は、電池セルの両側に取付けられ、該電池セルに電気の取出・送入を行なう電池端子構造に係るものである。
当該電池端子は、カーボンを含む平板と、上記平板に重ね合わされるように設けられ、リード端子を含む金属板と、を備えている。当該電池端子は、さらに、重ね合わされた上記平板および上記金属板の周辺部に嵌め入れた状態で、これらを固定するフレームを備えている。
[作用]
この発明によれば、カーボンを含む平板と金属板とを重ね合わせ、一体化させ、この一体化物の周辺部にフレームを嵌め入れている。したがって、電池セルの作製時、すなわち、ボルト等によって締付けを行なう場合において、フレームと上記一体化物の周辺部との界面における応力が金属板にも分散される。したがって、カーボンを含む平板にかかる応力集中は緩和される。また、金属板による補強効果も加わり、カーボンを含む平板の破損は防止される。
[実施例]
以下、この発明の一実施例を図について説明する。
第1図は、本発明の一実施例にかかる電池端子構造の正面図であり、第2図は、第1図におけるII−II線に沿う断面図である。
第1図および第2図を参照して、カーボン板15aと、該カーボン板15aと同じ大きさを有する銅板17が重ね合わされ、一体化されている。カーボン板15aと銅板17は、圧着だけでなく、導電性接着剤で接着されてもよい。この一体化物の周辺部分に嵌め入れた状態で、フレーム15bがこれらを固定している。フレーム15bは、たとえば塩化ビニール樹脂板で形成される。
以上の構造を有する電池端子を構成し、一方で、電極面積3000cm2を有するセルを作製し、これを60セル積層させた電池セルを作製した。この電池セルの両側に第2図R>図に示す電池端子を配置し、両側からボルトによる締付けを行なった。この際、カーボン板15aの破損が認められなかった。また、電池セルを用いてレドックスフロー電池を構成し、充放電試験を行なうと、何のトラブルもなく、良好な性能を示すことがわかった。
なお、上記実施例では、銅板17とカーボン15aとの一体化物の周辺部をフレーム15bで挟んで固定する場合を例示したが、この発明はこれに限られるものでなく、これらの界面に接着剤を入れて固定してもよい。
また、上記実施例では、カーボン板15aと銅板17とが同じ大きさである場合を提示したが、この発明はこれに限られるものでなく、第3図に示すように、銅板17がカーボン板15より小さくてもよい。
さらに、上記実施例では、双極板20にカーボン板15aを用いた場合を例示したが、この発明はこれに限られたものでなく、カーボン板15aの代りにカーボンを含む樹脂を用いてもよい。
以上、本発明を要約すると次のとおりである。
(1) 特許請求の範囲第1項に記載の電池端子構造であって、 前記電池セルはレドックスフロー電池の電池を含む。
(2) 特許請求の範囲第1項に記載の電池端子構造であって、前記平板と前記金属板は同じ大きさである。
(3) 特許請求の範囲第1項に記載の電池端子構造であって、前記金属板は銅板である。
(4) 特許請求の範囲第1項に記載の電池端子構造であって、 前記平板および前記金属板の周辺部と前記フレームとの固定は、接着剤で行なわれている。
[発明の効果]
以上説明したとおり、この発明によれば、カーボンを含む平板と金属板とを重ね合わせ、これらを一体化させ、この一体化物の周辺部にフレームを嵌め入れている。したがって、電池セルの作製時、すなわちボルト等によって締付けを行なった場合において、フレームと上記一体化物の周辺部との界面における応力が金属板にも分散される。したがって、カーボンを含む平板にかかる応力集中が緩和される。また、金属板による補強効果も加わり、カーボンを含む平板の破損が防止される。したがって、電力貯蔵用システムとしての信頼性が向上するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
第1図は、この発明の一実施例にかかる電池端子構造の正面図である。
第2図は、第1図におけるII−II線に沿う断面図である。
第3図は、この発明の他の実施例にかかる電池端子構造の断面図である。
第4図は、電力需要曲線を示す図である。
第5図は、従来のレドックスフロー電池の一例を示す概略構成図である。
第6図は、従来のセルの拡散分解図である。
第7図は、従来の電池端子構造の断面図である。
図において、1は電池セル、15aはカーボン板、15bはフレーム、17は銅板、20は電池端子構造である。
なお、各図中、同一符号は同一または相当部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】電池セルの両側に取付けられ、該電池セルに電気の取出・送入を行なう電池端子の構造であって、カーボンを含む平板と、前記平板に重ね合わされるように設けられ、リード端子を含む金属板と、重ね合わされた前記平板および前記金属板の周辺部に嵌め入れた状態で、これらを固定するフレームと、を備えた電池端子の構造。

【第1図】
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【第2図】
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【第3図】
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【第4図】
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【第5図】
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【第6図】
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【第7図】
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【特許番号】特許第2998969号(P2998969)
【登録日】平成11年11月5日(1999.11.5)
【発行日】平成12年1月17日(2000.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平2−103527
【出願日】平成2年4月19日(1990.4.19)
【公開番号】特開平4−4566
【公開日】平成4年1月9日(1992.1.9)
【審査請求日】平成9年2月20日(1997.2.20)
【出願人】(999999999)住友電気工業株式会社
【上記1名の代理人】
【識別番号】999999999
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎 (外2名)
【出願人】(999999999)関西電力株式会社
【上記1名の代理人】
【識別番号】999999999
【弁理士】
【氏名又は名称】深見 久郎 (外1名)
【参考文献】
【文献】特開 昭61−284057(JP,A)
【文献】特開 昭58−71569(JP,A)