説明

電流活性化先端基焼結(CATS)を使用して製造されるデバイス

【課題】電流を使った粉末の焼結を使用して製造されるナノデバイスおよびマイクロデバイスに関し、大きな標本を加工する時は、大きな電量を必要とし、シンプルな形状の製造に限定されるデバイスの提供。
【解決手段】マイクロスケールまたはナノスケールの先端を持つ電極であり、マイクロスケールまたはナノスケール粉末の存在下で電極先端に電流を加えることを含むプロセスを使用して製造されるナノワイヤー、ナノチューブまたは量子ドットなどの1D、2D、または3D層状マイクロまたはナノ部品デバイス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本発明は、電流を使った粉末の焼結を使用して製造されるナノデバイスおよびマイクロデバイス、および特に1D、2D、または3D部品加工のための電流の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
電流を使った粉末の焼結(すなわち、放電プラズマ焼結(SPS))は、現在精力的な研究および世界的な関心の対象となっている。現在SPSは、ナノ粉末およびカーボンナノチューブ複合材料を含む多数のバルク材料粉末系を成功裏に圧密するための主要なプロセスと考えられている。しかし、場合によって本プロセスは、大きな標本を加工する時、大きな直流電流(数千アンプ)を必要とし、通常、大量でシンプルな形状(すなわち、円盤/短い円筒)の製造に限定されている。
【0003】
特許文献1は、パルス電流の存在下、高圧でナノサイズ結晶を連続的塊に圧縮することにより作られ、好ましくは放電プラズマ焼結によって作られる、赤外線検知器をナノサイズ結晶から保護するための光学窓の製造方法を開示している。結果得られる材料は、従来の単結晶サファイアの代替として好ましい優れた光学的および機械的特性を持つ。
【0004】
特許文献2は、化合物膜の形成プロセスを開示しており、これには制御された全組成物を持つナノ粉末材料を形成すること、および1つの固溶体粒子を含めることを含む。ナノ粉末材料は基板の上に堆積して基板上に層を形成し、層は少なくとも1つの適切な雰囲気中で反応して化合物膜を形成する。化合物膜は、放射線検出器または太陽電池の加工に使用され得る。
【0005】
特許文献3は、ダイヤモンドナノチップまたはナノチューブを含む、縦に配列されたナノスケールのダイヤモンド構造を開示している。さらに具体的には、このようなダイヤモンド構造を起伏の激しい多結晶基板上に堆積させるための装置および方法が開示されている。この構造は少なくとも、マイクロ電子デバイス中のヒートスプレッダとして使用され得る。
【0006】
特許文献4は、一般に電子用途で使用される熱交換システムを開示している。さらに具体的には、本発明は、配向マイクロスケール経路を持つ熱交換器本体およびこのような本体の加工方法に関する。しかし、層形成は、既知の化学的蒸着技術を使用して行われる。
【0007】
特許文献5は、金型表面に対応する構造のある金型を使って、マイクロからナノサイズの構造を持つ製品を加工する方法を開示しており、これでは鋳造材料を含む流体は前述の金型表面と接触させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,148,480号明細書
【特許文献2】米国特許第7,091,136号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2006/0104885号明細書
【特許文献4】米国特許出願公開第2005/0039885号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0028875号明細書
【発明の概要】
【0009】
本発明は、電流を使った粉末の焼結を使用して製造されるナノデバイスおよびマイクロデバイス、および特に1D、2D、または3D部品加工のための電流の使用に関する。このようなサイズの部品は、医療機器、半導体、ろ過システム、さらにナノサイズおよびマイクロサイズの部品を必要とする他の多くのデバイスにおいて有用である。
【0010】
好ましい実施形態では、本明細書に開示された焼結プロセスで加工されたナノワイヤーは、円筒形を特徴とする。
【0011】
別の好ましい実施形態では、本明細書に開示された焼結プロセスで加工されたナノワイヤーで、ここでさらにワイヤーの内径は1ナノメートルから10マイクロメートルの間である。
【0012】
別の好ましい実施形態では、本明細書に開示された焼結プロセスで加工された、ニッケルチタンまたは形状記憶特性を持つ類似の物質の粉末を使用したナノワイヤー外科用ステントで、ここで、ステントは以下を含むグループの形状を特徴とするナノワイヤーメッシュから成る:チューブ、コイル、リング、メッシュまたは外科用ステントで一般的に見られる他の形状。
【0013】
別の好ましい実施形態では、本明細書に開示された焼結プロセスで加工された、有機または無機焼結粉末材料を使用した分子ワイヤーデバイスで、デバイスは以下を含むグループの形状を特徴とする分子ワイヤーから成る:単一らせん、二重らせん、鎖、四面体、球体、円筒、円錐あるいは、有機または無機分子で一般的に見られる他の形状。
【0014】
別の好ましい実施形態では、織りナノワイヤーから成るシートで、格子またはダイヤモンド型のいずれかのメッシュパターンを特徴とし、ここでこのようなシートはフィルターまたは膜として機能する。
【0015】
別の好ましい実施形態では、ナノワイヤーメッシュフィルターまたは膜で、ここでデバイスは、伝導性およびイオン化を含むがこれに限定されない膜関連特性を持つ焼結粉末材料を使用して加工される。
【0016】
別の好ましい実施形態では、本明細書に開示された焼結プロセスで加工され、内径が1ナノメートルから10マイクロメートルの間のチューブ状のデバイスであり、ここでこのようなチューブの壁は中空ではなく、このようなナノチューブの長さは可変である。
【0017】
別の好ましい実施形態では、本明細書に開示された焼結プロセスで加工されたチューブ状デバイスであり、ここでチューブ状デバイスは1つ以上の壁を含み、それぞれは一連の格子状三角形、四角形、五角形、六角形または八角形を含む。
【0018】
別の好ましい実施形態では、本明細書に開示された焼結プロセスで加工された量子ドットである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】電流活性化先端基焼結(CATS)プロセスの実施形態の図解である。この図は、ナノ部品を加工するためのナノチップの使用を示す一例である。
【図2】焼結領域が1D、2D、または3Dの、鍛造または刻印された機構または部品であることを示すプロセスの図解である。
【図3】焼結領域が1D、2D、または3Dの圧延機構または部品であることを示すプロセスの図解である。
【図4】焼結領域が1D、2D、または3Dの連結機構または部品であることを示すプロセスの図解である。
【図5】焼結領域が1D、2D、または3Dの充填された穴または割れ目であることを示すプロセスの図解である。
【図6】プロセスが柔軟性のある先端用に変更されていることを示すプロセスの図解である。
【図7】プロセスが中空先端用に変更されていることを示すプロセスの図解である。
【図8】プロセスがローラー、ボールアタッチメント付き先端用に変更されていることを示すプロセスの図解である。
【図9】プロセスが、埋め込み個別(離散)フィーダー、または埋め込み連続フィーダー付きの先端用に変更されていることを示すプロセスの図解である。
【図10】プロセスが1D、2D、または3Dパターン先端用に変更されていることを示すプロセスの図解である。
【図11】1D、2D、または3Dパターンの先端の動きを制御するために、プロセスが1D、2Dまたは3D、およびロボット位置/動作の制御機構を提供するように変更されていることを示すプロセスの図解である。
【図12】1D、2D、または3Dパターンの先端の動きを制御するために、プロセスが1D、2Dまたは3D、およびロボット位置/動作の制御機構を提供するように変更されていることを示すプロセスの図解である。
【図13】プロセスが層状粒子/粉末用に変更されているか、またはプロセスが連続層状粒子/粉末用に変更されていることを示すプロセスの図解である。
【図14】プロセスが1D、2D、または3Dパターンの粒子/粉末用に変更されているか、または粒子/粉末の動きを制御するために、1D、2Dまたは3Dおよびロボット位置/動作の制御機構を提供するように変更されていることを示すプロセスの図解である。
【図15】焼結領域が1D、2D、または3Dの押出機構または部品であることを示すプロセスの図解である。
【図16】プロセスが連続粒子/粉末フィーダー用に変更されていることを示すプロセスの図解である。
【図17】プロセスが個別粒子/粉末フィーダー用に変更されていることを示すプロセスの図解である。
【図18】ナノワイヤーの図解である。
【図19】ナノワイヤーステントの図解である。
【図20】二重らせん形状の分子ワイヤーの図解である。
【図21】ナノワイヤー膜の図解である。
【図22】ナノチューブの図解である。
【図23】球体量子ドットの図解である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0021】
以下の定義は、本発明の詳細説明を理解する手助けとして提供されるものである。
【0022】
当技術分野で定義されているように、サブミクロンの粉末は平均粒子サイズが1マイクロメートル未満の材料である。本発明の重要な関心事項は、1D、2D、または3D部品を加工するためのナノスケールの粉末およびセラミックのナノ構造層である。ナノスケールの粉末(ナノ粉末)は、平均粒子サイズが100ナノメートル未満(好ましくは標準偏差が25 nm未満)で、界面原子がかなりの割合を占めるサブミクロン粉末である。したがって、本開示中のナノスケール粉末への言及は、これらの特性を持つ粉末を指すことを意図するが、当然ながら材料の任意の性質に対する臨界長は、このような長さは常にサブミクロンであるものの、対象の性質によってはより小さい場合やより大きい場合がある。
【0023】
サブミクロンの層は、1マイクロメートル未満の厚さを持つ層である。本発明で特に注目すべきことは、閉じ込め特性サイズより小さいサイズ(当然1ミクロン未満、好ましくは100 nm未満)に閉じ込められた、厚さを持つ層または微小構造、またはその両方として具体的に定義されるナノ構造層である。したがって、本開示中のナノ構造への言及は、これらの特性を持つ層を指すことを意図する。
【0024】
電流を使ったナノ粉末の焼結、すなわち、放電プラズマ焼結(SPS)は、現在精力的な研究および世界的な関心の対象となっている。現在SPSは、ナノ粉末およびカーボンナノチューブ複合材料を含む多数のバルク材料粉末系を成功裏に圧密するための主要なプロセスと考えられている。しかし、場合によって本プロセスは、大きな標本を加工する時、大きな直流電流(数千アンプ)を必要とし、通常、大量でシンプルな形状(すなわち、円盤/短い円筒)の製造に限定されている。
【0025】
ナノサイズまたはマイクロサイズの粉末から層状1D、2D、または3D部品(例えば、マイクロ部品およびナノ部品)を加工するために電流を使用することは、まだ効果的に対処されていない。したがって、本発明は、先行技術の1つ以上の問題に対処する複数のマイクロサイズおよびナノサイズのデバイスを提供する。このアイデアは、各焼結経路に沿ってその場でナノサイズまたはマイクロサイズの粉末の連続層が堆積される時、3D層状加工に拡大され得る。このプロセスで物理的対象(すなわち、ID、2Dおよび3Dのマイクロ部品およびナノ部品)を、CADデータソースから直接加工できる。
【0026】
マイクロ/ナノスケール上のSPS条件を強化するために、マイクロ/ナノスケール電極先端を通して粉末に圧力を加えることができる。さらに、ナノ加工の目的で、ナノサイズの部品を加工する場合には、焼結のために必要な電流密度を生成するために必要な電流量は比較的小さい。
【0027】
本プロセスは、金属、合金、セラミック、カーボンナノチューブなどを含む幅広い材料に適用され得る。ナノおよびマイクロセラミック部品の焼結では、電極材料の選択によって、電極材料のジュール加熱を起こすことができ、これは次に熱を焼結されるセラミックの層に伝導して、局所的SPS条件を強化する。(5)本プロセスはまた、粉体を使用するメリットも有し、これによって制御された空隙率を持ち得るナノ部品およびマイクロ部品の製造が可能となり、1つ以上の材料から均一な複合ナノ部品およびマイクロ部品を製造し得る。
【0028】
本発明は以下を含むさまざまな焼結製品を含む:(1)ラピッドプロトタイピング(ラピッドプロトタイピングのレーザー焼結方法に似ているが、より高い密度で行う)、(2)量子ドット、ナノワイヤー、ナノチューブ、ナノ膜、RFIDマーカー、ナノツール等を含むマイクロ/ナノスケール合金およびセラミック製品。
【0029】
本明細書に開示された焼結プロセスの1つ以上を使用して製品が作られる場合、本発明の範囲内として考えられる製品には、コンデンサ、バリスタ、抵抗器、誘導器、およびEMIフィルターなどの電子機器、および圧力センサー、加速度計、圧電器、画像表示、光スイッチ、バイオセンサー、化学センサー、および同類のものなどのMEMSデバイスを含む。
【0030】
SPSプロセスには、粉末に圧力がかけられている間に、粉末/ダイス配置を通したパルス高電流の通過を伴う。電流は、主にジュール加熱によって配置物を加熱する。本プロセスの優れた利点には、従来の加熱速度よりもはるかに高い加熱速度を使用しながら、かなり短い時間内に、非常に低い温度でナノ粉末を焼結する(およびナノ構造を維持する)能力が含まれる。相転移速度も、電流の本質的性質のために、同じ温度で従来の加熱方法を使用した場合よりも40倍速いことが報告されている。
【0031】
本発明は、以下を含むプロセスを使用して加工した、1D、2D、または3D形状を持つ複数のマクロ、マイクロ、またはナノ機構または部品である:単一または複数の先端を持つ電極を提供し、単一、複数の粒子または粉末の存在下で電流および/または電圧を電極に加え、前述の粉末を先端の下または周りで焼結して機構または部品の形状を形成し、これらはすべて環境制御の有無にかかわらず実施される。
【0032】
先端は、マクロスケール、マイクロスケールまたはナノスケールであり得る。これは柔軟または剛性、中身が詰まっているかまたは中空または有孔である。さらに、先端は任意の形状であり得、静止位置で使用したり、または無制限の幾何学的動きに沿って任意の方向に動かすことができる。圧力は加えても加えなくてもよく、これは先端上に加えるか、または気圧制御を使用し得る。先端およびシステムは、X-Y-Zの動きおよびロボットマニピュレーター型の動きを含む多くの動きの程度、および位置決め制御を有する。焼結プロセスを活性化するために、電流または電圧を加えることができる。強度/電圧制御を行いながら、電流(交流(AC)、直流(DC)、パルスDCおよび界磁電流および/または電圧)を加えることができる。プロセスアプローチの一例として、堆積したナノ粉末の層を考える場合、電極の先端(例えば、ナノスケールの先端)(図1)を通して電流と圧力の両方を粉末に加えて、局所的SPS条件を強化し、その結果、焼結を強化することができる。粉末の焼結領域の形状とサイズ両方を、例えば、電極先端の位置および経路を制御することによって制御することができる。したがって、(マクロスケールからナノスケールまでの)非常に明確で複雑な形状および機構を加工することができる。例えば、複数のスケールにおける異なる材料の機能マトリクスの製造である。焼結は、層状または非層状粉末に対して行うことができる。粉末は1D、2Dおよび3D構造にパターン化するか、または非パターンとすることができる。本発明者は、このプロセスを「電流活性化先端基焼結(CATS)」と名づけた。本アイデアは、例えば、3D焼結ナノ部品(先端のタイプおよび使用される粉末のサイズによっては、マイクロ部品またはマクロ部品でもあり得る)を作るために、粉末の連続層を各焼結経路に沿ってその場で堆積させ、その後焼結する時、3D加工に拡大することができる。さらに、システムデザインによっては(例えば、基板および先端材料)、必要に応じてSPSに比べて非常に高い圧力を加えることができ、これは、超高速の焼結、ひいては超高速の製造を可能にする効果を持つ。
【0033】
例えば堆積したナノ粉末の層を考える場合、電極の先端(例えば、ナノチップ)(図1)を通して電流と圧力の両方を粉末に加えて、局所的SPS条件を強化し、その結果、焼結を強化することができる。
【0034】
必要とされる焼結によって、環境は重要な役割を果たす場合も、そうでない場合もある。環境温度は制御することができ(先端から生成される熱だけではなく、粉末または粉末層の加熱も含む)、圧力も制御できる。
【0035】
一部のシステムでは、環境制御は使用されない。しかし、他の場合は、(真空、気体または液体を使用した)環境制御が使用される。環境制御の一例は、先端およびシステムを酸化または他の反応から守るために不活性ガス雰囲気を使用することである。他の場合では、気体混合物を、組成(液体混合物でも可能)、圧力および温度に関して制御し、焼結中または離れている間の先端の下または周りの反応を促進し得る。もちろん、先端の選択は、作業中の先端の損傷を避けるために重要となる。一例は、焼結作業中に気体が先端の下で粉末と反応して特定の化合物を形成する時である。非反応性の気体または液体を使用することもできる。例えば、CATSプロセスの特定の段階では、例えばより良好な焼結を促進するために、不活性ガス圧も使用または変化し得る。代わりに真空を使用することができ、真空中の焼結は高密度の製品を促進することがよく知られていることから、その利点の2つの例には先端の保護と焼結の強化が含まれる。他の例では、多孔質のマクロ、マイクロ、またはナノ機能および部品を作る必要があり得る。この場合、多孔質材料を作る戦略が用いられ、例えば、焼結プロセスが完了する前に停止する、または犠牲的プレースホルダーとなってあとに多孔質形状を残す粒子または繊維または他の形状物を粉末混合物に追加するなどである。
【0036】
また先端の形状も可変で、例えば、先端はアルファベットのC(彫刻または型押し)などの形状を持つことがあり、粉末に押し付けられた時、対応する類似の焼結形状を生成するはずである。先端の機能はもう一つの重要点である。先端は単に粉末に接触させるか、または圧力を加えることができる。この例では、焼結中に加圧作業が行われる。当然ながら、先端は鍛造、押出、ロール、打刻、引き込み、接合するように作用し得る。例えば、中空デザインの先端は、電流と熱をその下の粉末に加え、その後加圧によって粉末は間接型押出作業で穴に押出される。このアイデアの他の置換およびバリエーションが、複数穴、異なる形状の穴、中空押出を可能にするマンドレル型デザイン等で、本明細書で検討されている。同様に、ローラー付きの先端は、電流およびローリング圧密作用を通して加熱/焼結の両方を提供することができる。接合に加えて、打刻も適用できる。
【0037】
先端は、粉末(間欠的または連続的に)、気体または液体を例えば先端内の中空の空洞を通して放出する別の機能も持ち得る。生産速度の向上または別の機能の提供のために、複数の先端を使用することもできる。穴または割れ目/隙間を粉末で塞ぐことも、先端焼結の後に可能である。このプロセスは、その後の先端焼結に続いて、材料の穴または欠けを塞ぐために使用できる。これは修理作業のために重要である。粉末は、修理されている材料と同じ場合もそうでない場合もある。
【0038】
プロセスは、金属、合金、複合材料、セラミック、炭素材料、半導体、超電導体、反応システム、ポリマー、金属間化合物、ガラス、金属ガラス、多孔質材料、スマート材料、傾斜機能材料、階層的材料、生体適合性材料およびその組み合わせを含む広範囲の材料に適用できると考えられる。これらの一部は、気体または液体との反応を通して形成される。
【0039】
焼結プロセスに使用されるセラミックおよび金属粉末には、銀、銅、金、青銅、真ちゅう、鉄、タングステン、ジルコニア、窒化ケイ素、酸化イットリウム、酸化アルミニウム、アルミナ、チタン・ニッケル合金、炭化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛および窒化チタンが含まれるがこれに限定されない。
【0040】
粉末の焼結領域の形状とサイズ両方を、電極先端の位置および経路を制御することによって、制御することができる。したがって、マクロスケールからナノスケールまでの非常に明確で複雑な形状および機構を加工することができ、コンピューター支援設計(CAD)ソースから直接、物理的対象を加工することができる。さらに、模様が接触面の上にある時、またはない時、先端は静止モードで使用することもできる。これにより、模様/先端の下の機構の焼結が可能になる(すなわち、インプリント焼結機構)。また、先端に通り穴を配置した場合、先端が表面に接触し、圧力を加えた時に先端穴への逆押出が可能になるため、穴のデザインによっては、マイクロまたはナノワイヤーのどちらかおよびマイクロ/ナノチューブを作るために使用され得る。当然ながら、生産速度を向上させるために、複数の先端を同時に(静止または移動モードのどちらかで)使用することもできる。また重要な特徴は、焼結機構を特徴付け、標本を取り除くことなく視覚映像および空間特性マップを作成するために、先端はその場で使用され得るということである。一旦、機構が焼結されると、そのままにしておくか、または必要に応じて除去することができる。除去プロセスには、粒子が磁性の場合は、オン/オフ磁性機能を使用して、焼結およびその後の機構のリリースを可能にすることが含まれ得る。
【0041】
開示のプロセスを使用して、従来より非常に低い温度で非常に短時間に、高密度または低密度の物理的対象を形成することができる。焼結プロセスは、例えば多孔質ナノワイヤーなど、制御された空隙率レベルの多孔質物を形成するように制御することもできる。多数のセラミック、金属、形状記憶合金などを含む幅広い粉末材料を本開示のプロセスで使用できる。出願者はこのプロセスに対して「電流活性化先端基焼結」(CATS)という用語を作った。このCATSプロセスは、はんだ材料を使用せずに電子部品を接合することによって、従来のはんだ付け作業の代わりに使用され得る。
【0042】
本アイデアは、例えば、ナノ粉末の連続層が各焼結経路に沿ってその場で堆積し、その後焼結される時、3Dナノ加工に拡大され得る。3D焼結ナノ部品、マイクロ部品、またはマクロ部品を作るために、ユーザーは先端のタイプおよび使用する粉末のサイズを変えるだけでよい。
【0043】
さらに、システムデザインによっては、(例えば、基板および先端材料)、SPSに比べて非常に高い圧力を、先端を通して加えることができ、これは、超高速の焼結、ひいては超高速の製造を可能にする効果を持つ。
【0044】
前述のように、注意のほとんどは、ダイス/抜き型配置を使った、バルクおよび比較的大きな粉末塊のSPSに向けられている。位置および経路制御付きのSPS自動化を必要とする、1D、2D、または3D層状粉末を使用して作られるデバイスへのシフトは期待されていない。というのもこれは電極先端デザインおよび材料選択の考慮と知識に加えて、マイクロおよびナノチップデザインの知識、および電流の通過、必要に応じた高レベルの圧力、およびナノまたはマイクロ電極先端の経路と位置の正確な制御を可能とする変更の知識を必要とするからである。したがって、これは学際的発明である。
【0045】
開示のプロセスは、コンピューター支援設計(CAD)データソースから直接、物理的対象を加工することもできる。繰り返しになるが、CADプロセスは、電極先端および高電流で先端の位置と経路を制御して層内のナノまたはマイクロ粉末焼結プロセスを活性化し1D、2D、または3D物体を形成する手段を使用する。
【0046】
開示の焼結プロセスで製造される可能性のある物体またはデバイスの中で、好ましい実施形態における、内径が1ナノメートルから10マイクロメートルの間の円筒状ナノワイヤーがある。
【0047】
別の好ましい実施形態では、外科用ステントがニッケルチタンまたは形状記憶特性を持つ類似の物質で加工され、ここで、ステントはチューブ、コイル、リング、メッシュまたは外科用ステントで一般的に見られる他の形状を含むグループからの形状に作られたナノワイヤーメッシュから成る。このようなステントは血管手術において特に有用である。
【0048】
別の好ましい実施形態では、本明細書に開示された焼結プロセスは、有機または無機焼結粉末材料を使用した分子ワイヤーを加工するために使用され、次にワイヤーは以下を含むグループからの形状に作られる:単一らせん、二重らせん、鎖、四面体、球体、円筒、円錐または、有機または無機分子で一般的に見られる他の形状。
【0049】
別の好ましい実施形態では、格子またはダイヤモンド型のいずれかのパターンの織りナノワイヤーから成るシートで、ここでこのようなシートはフィルターまたは膜として機能する。このようなシートデバイスは、焼結粉末の組成によっては可変サイズの穿孔を持ち、伝導性およびイオン化など、他の有用な膜関連特性のために加工され得る。
【0050】
別の好ましい実施形態では、本明細書に開示された焼結プロセスは内径が1ナノメートルから10マイクロメートルの間のチューブ状デバイスを加工するために使用され、ここでこのようなチューブの壁は中空ではなく、このようなナノチューブの長さは可変である。
【0051】
さらに好ましい実施形態では、チューブ状デバイスは1つ以上の壁を含み、それぞれは一連の格子状三角形、四角形、五角形、六角形または八角形を含む。
【0052】
本発明主題は、溶液堆積、蒸着などの既存のナノテクノロジー製造技術と組み合わせることができることも検討されている。
【0053】
(参考文献)
K. Morsi, V.V. Patel, K.S. Moon, J.E. Garay, J. Mater. Sci. 43 (2008) 12.
V. Mamedov, Powder Metall. 45 (4) (2002) 322-328
M. Nygren, Z. Shen, Spark plasma sintering: possibilities and limitations, in: Key Engineering Materials, pp. 264-268, Euro Ceramics VIII (2004) 719-724
U. Anselmi-Tamburini, J.E. Garay, Z.A. Munir, A. Tacca, F. Maglia, G. Spinolo, J. Mater. Res. 19 (2004) 3225
R. Chaim, Mater. Sci. Eng. A A443 (2007) 25-32
Z.A. Munir, U. Anselmi-Tamburini, M. Ohyanagi, JMater. Sci. 41 (2006) 763-777
H.B. Huntington, Diffusion in Solids, Academic Press, New York, 1975, p. 306
K. Morsi et al., Scripta Mater. (2009), doi:10.1016/j.scriptamat.2008.12.049
【0054】
当業者のレベルの教示に関連し、特許請求された発明の主題を一般人が理解するために必要な任意の開示を含むため、本明細書に引用された参考文献、特に K. Morsi et al., Scripta Mater. (2009), doi:10.1016/j.scriptamat.2008.12.049、テキストおよび図、および任意のその他は、その全体が本明細書に組み込まれる。上述の実施形態は、本発明の範囲から逸脱することなく改変され得ること、またはわずかな変更を行うことができることは当業者には明確である。したがって、本発明の範囲は以下の請求項の範囲およびその公平な同等物によって決定される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形を特徴とする、本明細書に開示された焼結プロセスで加工されたナノワイヤー。
【請求項2】
さらに、ワイヤーの内径が1ナノメートルから10マイクロメートルの間であることを含む、請求項1記載のナノワイヤー。
【請求項3】
本明細書に開示された焼結プロセスで加工された、ニッケルチタンまたは形状記憶特性を持つ類似の物質の粉末を使用したナノワイヤー外科用ステントで、チューブ、コイル、リング、メッシュまたは外科用ステントで一般的に見られる他の形状を含むグループの形状を特徴とするナノワイヤーメッシュから成る、ステント。
【請求項4】
本明細書に開示された焼結プロセスで加工された、有機または無機焼結粉末材料を使用した分子ワイヤーデバイスで、単一らせん、二重らせん、鎖、四面体、球体、円筒、円錐または、有機または無機分子で一般的に見られる他の形状を含むグループの形状を特徴とする分子ワイヤーから成る、デバイス。
【請求項5】
織りナノワイヤーから成るシートで、格子またはダイヤモンド型のいずれかのメッシュパターンを特徴とし、フィルターまたは膜として機能するシート。
【請求項6】
さらにデバイスが、伝導性およびイオン化を含むがこれに限定されない膜関連特性を持つ焼結粉末材料を使用して加工される、請求項5記載のシート。
【請求項7】
本明細書に開示された焼結プロセスで加工され、内径が1ナノメートルから10マイクロメートルの間であり、このようなチューブの壁は中空ではなく、このようなナノチューブの長さは可変である、チューブ状デバイス。
【請求項8】
さらにチューブ状デバイスが1つ以上の壁を含み、それぞれが一連の格子状三角形、四角形、五角形、六角形または八角形を含む、請求項7記載のチューブ状デバイス。
【請求項9】
本明細書に開示された焼結プロセスで加工された量子ドット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【公開番号】特開2013−36156(P2013−36156A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−187049(P2011−187049)
【出願日】平成23年8月30日(2011.8.30)
【出願人】(511211070)サン ディエゴ ステイト ユニバーシティー リサーチ ファンデーション (1)
【Fターム(参考)】