説明

電源用チョークコイル

【課題】2つのインダクタを共有するコアで実現し、相互干渉の無い電源用チョークコイルを提供する。
【解決手段】直方体状の磁気コア12と、直方体状の磁気コア12に巻回する第1コイル14と、第1コイルと直交する方向に、コイルに重ねて直方体状の磁気コアに巻回する第2コイル16とを備え、第1コイル14と第2コイル16に交互に電流を流して、1つの磁気コアを共有した2つのチョークコイルとして機能させることを特徴とする電源用チョークコイルである。磁気コアのコア材は、ダストコア、磁気異方性コア、ギャップ付コア、アモルファスコア又は鉄系合金、あるいは、それぞれのコア材を組み合わせてもよい。第1コイル14及び第2コイル16は絶縁被膜で被覆された線状コイルであり、磁気コア12に複数回巻回されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インターリーブ方式によるスイッチング電源の力率補正回路に使用されるチョークコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
電源ユニットに含まれる高調波成分は入力電流が非正弦波状であることから発生するが、この高調波電流を規格値以下に抑えるためには、小電力単電源の機器では入力にインダクタを挿入し、中・大電力の電子機器では力率改善機能を持ったプリレギュレータPFC(Power Factor Correct)回路を搭載し、いったん高電圧の直流に変換する。
【0003】
PFC回路を小型で高効率かつ低価格で実現する手段のひとつに、インターリーブ制御方式がある。インターリーブ制御は、電源を複数系統に分けて各相に位相差をもたせ、リップルなどを互いに打ち消しあう制御方式である。2相のインターリーブ方式の場合には、正電流をA相、負電流をB相とする2つの電流位相が180度の位相差を持つことでリップルを相殺することを目的としている。トータルの部品点数は増えるが、個々のインダクタや出力コンデンサ、スイッチング素子などを大幅に軽減でき実装の薄型化も可能あり、複数系統になることで発熱も分散されるメリットもある。
【0004】
図20は、インターリーブ方式のセミブリッジレスPFC回路の一例を示す図である。交流入力ACの両端子は、2つのインダクタLaとLbに接続されている。ダイオードD1とスイッチング素子Q1及びダイオードD2とスイッチング素子Q2は、それぞれスイッチング動作セルを構成し、交流入力ACの正極及び負極のハーフラインサークル毎に、2つのスイッチング動作セルが存在している。スイッチング素子Q1とQ2はパワーMOSFETを使用している。スイッチング動作セルからの電流は、コモンFPCブーストコンデンサCoに流れ、充電を行う。さらに最終段には負荷R0が接続されている。スイッチング素子Q1とQ2は、ハーフラインサークル毎にパルス制御回路C1とC2により駆動される。
【0005】
2つのダイオードDa及びDbは、PFCの出力グランドが入力ラインにリンクされ、DaとDbがリターンパスを提供する。これにより、入力ライン電圧はフローティングではなく、通常のグランド基準となる。ダイオードDc及びDdは、最初のスタートアップ時にコモンFPCブーストコンデンサCoをピーク充電し、Coがピーク充電されてコンバータが動作し始めた後は、PFCコンバータの電力はDc及びDdに印加されない。
【0006】
このセミブリッジレスPFC回路においては、2相のインターリーブ方式であり、2つのインダクタを使用している。2つのインダクタはチョークコイルを使用しており、図21に示すようにプリント基板130に端子を半田付けして、搭載されている。チョークコイルの構成は、トロイダルコア132にエナメル線134を複数回巻いた構造である。
【0007】
プリント基板130に搭載されたチョークコイルは、他の半導体部品等と比べて大きなスペースを占めている。
【0008】
このため、インターリーブ方式のPFC回路に使用するチョークコイルにおいて、2つのコイル巻線を有していて、実質的に2個の独立したチョークコイルとして機能する2イン1構造を有し、コスト低減及び外形寸法の小型化を図ることのできるインターリーブ用PFCチョークコイルが提案されている(例えば特許文献1等参照)。
【0009】
また、インターリーブ方式を利用して小型、軽量、低リプル化を実現した例としては、2個のトランスを使用して平滑回路がほとんど必要のない、DC−DCコンバータの提案もある(例えば特許文献2等参照)。
【0010】
さらに、トランスの小型軽量化を目的として、可飽和リアクタトランスのコアは、2つのU字形の珪素鋼板の打抜き鉄心を互いに磁束方向が直交するように組み合わせる、又は、一つの渦巻き鉄心を分断して得られるU字形鉄心を、互いに磁束方向が直交するように組み合わせる、又は、2つのE字形の珪素鋼板の打抜き鉄心を、互いに磁束方向が直交するように組み合わせる等により、直角に交差させたコイル相互の結合をなくす方法の提案も提案されている(例えば特許文献3等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2010−258395号公報
【特許文献2】特開2003−102175号公報
【特許文献3】特開平07−335456号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、インターリーブ方式のFPC回路においては、複数系統に分けて各相にインダクタとしてのチョークコイルを接続しているため、装置の小型化が困難であった。2相のインターリーブ制御では、ハーフラインサークル毎に交互にチョークコイルに電流を流しているが、共有のコアを使用して2つのインダクタを実現したとしても相互に電気的干渉を生じてしまい、この相互干渉を避けるためには、個別のチョークコイルを使用することが必要となっていた。
【0013】
本発明は、上記問題点を解決し、共有するコアでも相互干渉の無いチョークコイルを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、直方体状の磁気コアと、直方体状の磁気コアに巻回する第1コイルと、第1コイルと直交する方向に、コイルに重ねて直方体状の磁気コアに巻回する第2コイルとを備え、第1コイルと第2コイルに交互に電流を流して、1つの磁気コアを共有した2つのチョークコイルとして機能させることを特徴とする電源用チョークコイルである。
【0015】
磁気コアのコア材は、ダストコア、磁気異方性コア、ギャップ付コア、アモルファスコア又は鉄系合金、あるいは、それぞれのコア材を組み合わせてもよい。
【0016】
電源用チョークコイルは、第1コイル及び第2コイルは絶縁被膜で被覆された線状コイルであり、磁気コアに複数回巻回されている。また、第1コイル及び第2コイルは板状コイルであり、第1コイルと第2コイルは、絶縁物質を挟んで磁気コアに巻回されていてもよい。
【0017】
第1コイル及び第2コイルは絶縁被膜で覆われた線状コイルであり、さらに、線状コイルに重ねて第1コイルと同方向に板状の第3コイルと、第2コイルと同方向に板状の第4コイルとを備え、第1コイルと第3コイル及び第2コイルと第3コイルは変圧器として機能させることが可能である。
【0018】
板状コイルには、磁気コアからの他の相の磁束面となる側面にスリットを設けている。
【0019】
コイルを巻回した磁気コアの外周面を囲う外側コアを備えることにより、磁束の漏れを防ぐことができる。
【0020】
これらの電源用チョークコイルは、インターリーブ方式による電源回路に利用され、ブリッジレス力率補正回路、倍電圧整流型力率補正回路、昇圧コンバータまたはカレントダブラー整流平滑回路のインダクタとして利用することで小型化等の効果が得られる。また、変圧器を構成する電源用チョークコイルは、リンギングカレントコンバータに利用することができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明による電源用チョークコイルによれば、直方体状の磁気コアに、直交する方向に巻回した2つのコイルにより、1つの磁気コアを共有した2つのチョークコイルとして動作させることができるので、電源回路中に占めるチョークコイルのスペースを減少させ、電源装置全体として小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明による電源用チョークコイルの外観図
【図2】磁気コアの外観図
【図3】外側コアの外観図
【図4】図1の電源用チョークコイルを外側コアで囲った状態を示した説明図。
【図5】板状コイルを使用した電源用チョークコイルの構造を示した外観図
【図6】線状コイルに、さらに板状コイルを重ねた電源用チョークコイルの外観図
【図7】本発明による電源用チョークコイルを利用したブリッジレス力率補正回路を示した回路図
【図8】外側コアで囲った電源用チョークコイルをプリント基板に搭載した状態を示した説明図
【図9】図7のブリッジレス力率補正回路における交流入力波形とスイッチング素子の駆動波形を示したタイムチャート
【図10】図7のブリッジレス力率補正回路のA相動作を示した説明図
【図11】図7のブリッジレス力率補正回路のB相動作を示した説明図
【図12】本発明による電源用チョークコイルを搭載したブリッジレス力率補正回路の電源基板側面を示した説明図
【図13】本発明による電源用チョークコイルを利用した倍電圧整流型力率補正回路を示した回路図
【図14】本発明による電源用チョークコイルを利用したインターリーブ方式昇圧コンバータを示した回路図
【図15】図14のインターリーブ方式昇圧コンバータの動作波形を示したタイムチャート
【図16】本発明による電源用チョークコイルを利用したカレントダブラー整流平滑回路図を示した回路図
【図17】図16のカレントダラー整流平滑回路の動作波形を示したタイムチャート
【図18】本発明による電源用チョークコイルを利用したインターリーブ方式RCC回路を示した回路図
【図19】図18のインターリーブ方式RCCの動作波形を示したタイムチャート
【図20】従来のブリッジレス力率補正回路を示した回路図
【図21】従来のブリッジレス力率補正回路に使用されているトロイダルコアを示した説明図
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の電源用チョークコイル及びその電源用チョークコイルを利用した電源回路について、図面に基づいて以下に説明する。
【0024】
図1は、本発明による電源用チョークコイルの外観図を示している。電源用チョークコイル10は、直方体状の磁気コア12に絶縁被覆で覆われた線状の第1コイル14を複数回巻回し、コイルの始端と終端を引き延ばして、始端を第1端子18、終端を第2端子20としている。磁気コア12に巻回された第1コイル14は、磁気コア12と第1コイル14により1個のインダクタを形成している。
【0025】
そして、絶縁被覆で覆われた線状の第2コイル16を、第1コイルと直交する方向に磁気コア12に複数回巻回し、コイルの始端と終端を引き延ばして、始端を第3端子22、終端を第2端子24とする。磁気コア12に巻回された第2コイル16は、磁気コア12と第2コイル16により、磁気コア12と第1コイル14により形成されたインダクタとは別の1個のインダクタを形成している。
【0026】
この様にして形成されたチョークコイルは、2つのコイルが直交しているため、交互に動作させても、発生する磁束が直交しているため、磁気的な結合がなく、このため他のインダクタを動作させても電気的な影響を与えることが無い。また、交互に位相差のある電流を流しており、電流を流すタイミングの違いでコア内磁束の最大値が抑えられるように設定することが出来る。
【0027】
図2は、本発明による電源用チョークコイル10の磁気コア12を示している。直方体状の形状であり、磁気コア12の4つの側面には、コイルを巻回するための切り込んだ溝を設けている。この形状により、直交する2つのコイルを、端部からのズレがなく確実に磁気コア12に巻回することができる。磁気コア12のコア材は、ダストコア、磁気異方性コア、ギャップ付コア、アモルファスコア又は鉄系合金等が使用できる。また、それぞれのコア材を組み合わせて使用してもよい。
【0028】
図3は、外側コアを示した外観図である。外側コア26は、電源用チョークコイル10を囲うようにして配置し、電源用チョークコイル10から発生した磁束のリターン経路を形成する。このため、電源用チョークコイル10の磁束が外部に漏れるのを防ぐことができる。図3に示した外側コア26は、電源用チョークコイル10の周囲を囲む形状であるが、電源用チョークコイル10の全体を囲うために、外側コア26の上部に蓋を設けた構造としてもよい。勿論、持続が外部に漏れても他の電気回路に影響が発生しないような場合には、敢えて外側コア26を設ける必要は無い。
【0029】
図4は、電源用チョークコイル10に、図3で示した外側コア26を組み合わせた図である。図4(A)は上方からの外観図であり、図4(B)は下方からの外観図である。外側コア26と電源用チョークコイル10の間には微小な間隙を設けている。第1コイル14からの第1端子18と第2端子20、及び、第2コイル16からの第3端子22と第4端子24は、先端部の絶縁被膜は剥がされ、回路部品を搭載するプリント基板の電極パターンにハンダ付けされ固定される。
【0030】
図5は、コイルを板状コイルとして直交させた電源用チョークコイル30である。第1板状コイル32と第2板状コイル34は、絶縁物質36を挟んで、磁気コア12に巻回されている。絶縁物質36を挟むのは、板状コイルは導体のため、重ね合わせたときにお互いを電気的に分離するためである。第1板状コイル32と第2板状コイル34が直交しているため、他の板状コイルを動作させている時には、側面部が磁束の通過する空間となる。このため、第1板状コイル32と第2板状コイル34の側面部にはスリット38を設けて、渦電流損を抑えている。板状コイルの材料は、銅板等である。板状コイルは、特に大電流用のチョークコイルとして適している。
【0031】
図6は、図1で示した電源用チョークコイル10にたいして、さらに板状コイルを重ねた電源用チョークコイル40である。磁気コア12に、線状の第1コイル14と第2コイル16を直交して巻回し、さらに重ねて第1板状コイル32と第2板状コイル34が、絶縁物質36を挟んで、磁気コア12に巻回されている。この様な構造では、第1コイル14と第1板状コイル32が双方向に巻回されており、変圧器構造となっている。同様に、第2コイル16と第2板状コイル34が同方向に巻回されており、変圧器構造となっている。即ち、磁気コア12を共有した2つの変圧器を備える電源用チョークコイルである。
【0032】
次に、本発明による電源用チョークコイルを具体的電源回路に適用したいくつかの例について説明する。
【0033】
図7は、本発明による電源用チョークコイル10を利用したブリッジレスFPCを示した回路図である。基本的な回路構成は、図20で示した従来のブリッジレスFPCと同様であるが、インダクタLaとLbを、本発明による電源用チョークコイル10を使用している。交流入力ACの両端から、電源用チョークコイル10の第1コイル14で構成されるインダクタLaと電源用チョークコイル10の第2コイル16で構成されるインダクタLbとに接続されている。
【0034】
図8は、プリント基板52に本発明による電源用チョークコイル10を搭載した状態を示している。この例では、磁束の外部への漏れを防ぐために、電源用チョークコイル10は外部コア26で囲まれている。プリント基板52の裏側には、電源用チョークコイル10を接続するための電極パターンが形成されている。第1コイル14からの第1端子18は、第1電極パターン42に、第1コイル14からの第2端子20は、第2電極パターン44に接続されている。また、第2コイル16からの第3端子22は、第3電極パターン46に、第2コイル16からの第4端子24は、第4電極パターン48に接続されている。インターリーブ方式は、第1電極パターン42と第2電極パターン44を使用して流す電流と、第3電極パターン46と第4電極パターン48を使用して流す電流とを相互に流す制御を行っている。
【0035】
図9は、交流入力と、パルス制御回路C1,C2からスイッチングパルス信号C1OUT,C2OUTが出力され、MOSFETで構成されるスイッチング素子Q1,Q2を制御するスイッチングパルスを示した説明図である。交流入力は、正極をA相、負極をB層としている。インターリーブ方式は、このA層とB層を交互にスイッチングパルスで制御するが、パルス制御回路C1はA相を、パルス制御回路C2はB相を制御する。
【0036】
交流入力は、正弦波電圧であり、この電圧波形がA相のときはパルス制御回路C1からのスイッチングパルス信号C1OUTによりスイッチング素子Q1をオン・オフするが、この場合にインダクタLaを流れる電流は、スイッチング素子Q1のオン・オフにより三角波状の電流となる。この場合、インダクタLaに流れる電流が0にならないように、スイッチング素子Q1のオン・オフを制御するのが電流連続モードであり、インダクタLaに流れる電流が0になったときにスイッチング素子Q1のオン・オフを制御するのが電流臨界モードであり、インダクタLaに流れる電流が0となる一定の時間を有するようにスイッチング素子Q1のオン・オフを制御するのが電流不連続モードである。
【0037】
図10は、図7で示したブリッジレスFPC回路50の動作を説明する図であり交流入力がA相の場合を示している。図10(A)はブリッジレスFPC回路50におけるA相での電流の流れを示し、図10(B)は、その場合に、プリント基板52に搭載された電源用チョークコイル10に接続されている第1電極パターン42と第2電極パターン44に電流が流れていること示すため、電極パターンに斜線を加えている。第3電極パターン46と第4電極パターン48には電流は流れていない。
【0038】
A相での動作モードでは、パワーMOSFETを使用したスイッチング素子Q1とダイオードD1で動作セルを構成し、スイッチング素子Q1及びダイオードD1は、そのハーフラインサイクルにわたってブーストスイッチングモードで動作する。スイッチング素子Q1のオン・オフ制御は、パルス制御回路C1で行われる。
【0039】
最初のスタート時にダイオードDcからの電流によりブーストコンデンサCoが充電され、ピーク充電になるとコンパレータ(図示せず)が動作するため、その後ダイオードDcには電圧は印加されず、動作モードに影響を与えない。ブーストコンデンサCoがピーク充電されると、A相電流Iaは、電源チョークコイルの第1コイル14と磁気コア12で構成されるインダクタLaと、ダイオードD1を通ってブーストコンデンサCoと負荷Roに流れる。
【0040】
リターンダイオードDbは、PFCの出力ラインが入力ラインにリンクされ、Dbがリターンパスとなる。これにより、入力ライン電圧はフローティングではなく、通常のグランド基準となる。また、スイッチング素子Q2のボディダイオードDq2が電流のリターンパスとして導通する。このため、ボディダイオードDq2での電圧降下が、ダイオードDbでの電圧降下よりも小さい場合は、リターンパスでの電流がダイオードDbに流れにくくなるので、ダイオードDbは、オン電圧の低いものを選定して、リターン電流が他相のパワーMOSFETに流れないようにしている。
【0041】
図11は、図7で示したブリッジレスFPC回路50の動作を説明する図であり交流入力がB相の場合を示している。図11(A)はブリッジレスFPC回路50におけるB相での電流の流れを示し、図11(B)は、その場合に、プリント基板52に搭載された電源用チョークコイル10に接続されている第3電極パターン46と第4電極パターン48に電流が流れていること示すため、電極パターンに斜線を加えている。第1電極パターン42と第2電極パターン44には電流は流れていない。
【0042】
B相での動作モードもA相と同様であり、パワーMOSFETを使用したスイッチング素子Q2とダイオードD2で動作セルを構成し、スイッチング素子Q2及びダイオードD2は、そのハーフラインサイクルにわたってブーストスイッチングモードで動作する。スイッチング素子Q2のオン・オフ制御は、パルス制御回路C2で行われる。
【0043】
最初のスタート時にダイオードDdからの電流によりブーストコンデンサCoが充電されるが、その後ダイオードDdには電圧は印加されず、動作モードに影響を与えない。ブーストコンデンサCoがピーク充電されると、B相電流Ibは、電源チョークコイルの第2コイル16と磁気コア12で構成されるインダクタLbと、ダイオードD2を通ってブーストコンデンサCoと負荷Roに流れる。
【0044】
リターンダイオードDaは、PFCの出力ラインが入力ラインにリンクされ、Daがリターンパスとなる。また、スイッチング素子Q1のボディダイオードDq1が電流のリターンパスとして導通する。リターンダイオードDaについてもターンダイオードDaと同じく、オン電圧の低いものを選定している。
【0045】
A相とB相では、本発明による直交コイルにより磁気コアを共有しているので、2相のインターリーブ方式においても1個のチョークコイルであっても電磁結合が無く、それぞれ他の相の回路電位を変化させることなく相互作用が発生しない。さらに、従来は2つのインダクタを使用しなければならなかったが、1個のチョークコイルで2個のインダクタを実現しており、プリント基板上に搭載した場合は、実装スペースが少なくできるため、電源の小型化に効果的である。
【0046】
図12は、本発明による電源用チョークコイルを搭載したFPCの側面の概略を示している。電源用チョークコイル10は1個であり、スイッチング素子Q1,ダイオードD1、ブーストコンデンサCoやヒートシンク54等の回路部品を搭載しても小型で薄い電源が実現できる。
【0047】
次に、本発明の直交コイル方式による電源用チョークコイルを利用した回路例について説明する。
【0048】
図13は、倍電圧整流型PFC回路である。交流入力ACと、ダイオードD1とダイオードD2が並列に接続されている。ダイオードD1とダイオードD2は逆方向に接続され、さらに、それぞれのダイオードは、本発明による電源用チョークコイル10に接続される。電源用チョークコイル10には直交した第1コイル14からなるインダクタLaと第2コイル16からなるインダクタLbとが存在し、ダイオードD1とインダクタLa、ダイオードD2とインダクタLbとが接続されている。さらに、インダクタLaはブーストコンデンサCo1,インダクタLbはブーストコンデンサCo2に接続している。ダイオードD1とインダクタLa間にはMOSFETによるスイッチング素子Q1が接続されている。ダイオードD2とインダクタLb間にもMOSFETによるスイッチング素子Q2が接続されている。
【0049】
チョークコイル10には、交流入力のハーフサイクルごとにインダクタLaとインダクタLbに交互に電流が流れ、それぞれの電流は、ブーストコンデンサCo1とブーストコンデンサCo2に流れて充電を行う。従って、出力端子のプラスとマイナス間は直列接続されたブーストコンデンサCo1とブーストコンデンサCo2により倍電圧が発生する。
【0050】
インダクタLaにはA相電流Iaが、インダクタLbにはB相電流Ibが流れることになるが、それぞれ交互に電流が流れることになるため、本発明による直交コイル方式による電源用チョークコイルを適用できる。この場合も、それぞれの電流が同時に流れることはなく、磁束も直交しているため、相互に電気的な影響を与えることはない。
【0051】
図14は、インターリーブ方式昇圧コンバータ回路62であり、入力は直流入力である。インダクタLa、ダイオードD1とスイッチング素子Q1で構成される第1の昇圧コンバータと、インダクタLb、ダイオードD2とスイッチング素子Q2で構成される第2の昇圧コンバータの2つの昇圧コンバータを備え、ブーストコンデンサCoと負荷Roに電流を流す。この2つの昇圧コンバータで使用されるインダクタに、本発明の直交コイル方式を用いた電源用チョークコイルを適用している。
【0052】
2つの昇圧コンバータは、スイッチング素子Q1のパルス制御回路C1と、スイッチング素子Q2のパルス制御回路C2により制御され、インダクタLaを流れる電流ILaとインダクタLbを流れる電流ILbとは180度逆位相で動作している。
【0053】
図15は、図14に示したインターリーブ方式昇圧コンバータ回路62において、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2を動作させるパルス制御回路C1のスイッチングパルス信号C1OUTとパルス制御回路C2のスイッチングパルス信号C2OUTと、インダクタLaに流れるインダクタ電流ILaと、インダクタLbに流れるインダクタ電流ILbと、トータル電流ITOTALを示している。コンデンサCoへの入力電流は、トータル電流ITOTALであって、2つのインダクタ電流ILa及びILbの和である。2つのインダクタのリップル電流は逆位相であるため、互いに打ち消しあい、インダクタによる入力リップル電流は小さくなる。デューティ比が50%のとき、インダクタのリップル電流が最も打ち消しあうことになる。
【0054】
電流は、連続モードでは2つのインダクタにインダクタ電流ILa及びILbが同時に流れるためコア体積を大きくしなければならず、また、2つのインダクタ電流ILa及びILbを重ね合わせたときのリプルが大きくなる。従って、2つの昇圧コンバータを備えた場合の動作モードは、臨界モードまたは不連続モードとする必要がある。このため、インターリーブ方式が適用された昇圧コンバータでは、本発明の直交コイル方式による電源用チョークコイルが好適であり、2つのインダクタを1つのチョークコイルで実現できる。
【0055】
図16は、カレントダブラー整流平滑回路64を示した図である。交流入力ACの両端子が、インダクタLaとインダクタLbに接続され、インダクタLaとインダクタLbの他の端子が接続され、さらにコンデンサCoと負荷Roに接続されている。交流入力ACとインダクタLa及びインダクタLbの間にはスイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2が接続されて、パルス制御回路C1とパルス制御回路C2は、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2を交互に動作させている。
【0056】
交流入力が正となるA相では、スイッチング素子Q1がオフ、スイッチング素子Q2がオンに制御されている。従ってこの場合は、インダクタLaを流れるインダクタ電流ILaと、スイッチング素子Q2からインダクタLbに流れるインダクタ電流ILbとの和がコンデンサCo及び負荷Roに流れる。
【0057】
交流入力ACが負となるB相では、スイッチング素子Q1がオン、スイッチング素子Q2がオフに制御されている。従ってこの場合は、交流入力AcからインダクタLbを流れるインダクタ電流ILbと、スイッチング素子Q1からインダクタLあに流れるインダクタ電流ILbとの和総電流ITOTALがコンデンサCo及び負荷Roに流れる。
【0058】
図17は、図16に示したカレントダブラー整流平滑回路64において、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2を動作させるパルス制御回路C1のスイッチングパルス信号C1OUTとパルス制御回路C2のスイッチングパルス信号C2OUTと、インダクタLaに流れるインダクタ電流ILaと、インダクタLbに流れるインダクタ電流ILbと、トータル電流ITOTALを示している。コンデンサCoへの入力電流は、トータル電流ITOTALであって、2つのインダクタ電流ILa及びILbの和である。
【0059】
カレントダブラー整流平滑回路64においても、インターリーブ方式昇圧コンバータ回路62と同様に、2つのインダクタのリップル電流は逆位相であるため、互いに打ち消しあい、インダクタによる入力リップル電流は小さくなる。デューティ比が50%のとき、インダクタのリップル電流が最も打ち消しあうことになる。
【0060】
電流モードについても動作モードは、臨界モードまたは不連続モードとする必要があり、2つのコイルを直交させているため、1つの磁気コアを共有していても相互のコイルによる磁気的結合は無く、他のコイルによる回路に電気的な影響を与えることが無い。
【0061】
図18は、インターリーブ方式RCC(Ringing Choke Converter)回路66を示している。一般にRCCは、トランスに帰還巻線を設け、スイッチング動作を自励発振型として構成されるが、図18に示したインターリーブ方式RCC回路では、スイッチング動作を、パルス制御回路C1とパルス制御回路C2のスイッチングパルス信号により、スイッチング素子Q1とスイッチング素子Q2のインターリーブ動作させることで行い、リンギングチョークトランスは、図6で示した2つの変圧器構造のチョークコイル40を使用している。直流電源DCから、2つのリンギングチョークトランスを並行に接続し、プラス側はダイオードD1,D2を介して接続している。
【0062】
第1のリンギングチョークトランスは、インダクタLa1を電源用チョークコイル40の第1コイル14、インダクタLa2をチョークコイル40の第1板状コイル32として構成される。第2のリンギングチョークトランスは、インダクタLb1をチョークコイル40の第2コイル16、インダクタLb2を電源用チョークコイル40の第1板状コイル34として構成される。
【0063】
図19は、図18に示したインターリーブ方式RCC回路66において、スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2を動作させるパルス制御回路C1からのスイッチングパルス信号C1OUTとパルス制御回路C2からのスイッチングパルス信号C2OUT、インダクタLa1に流れるインダクタ電流IA1、インダクタLa2に流れるインダクタ電流IA2、インダクタLb1に流れるインダクタ電流IB1、インダクタLb2に流れるインダクタ電流IB2、トータル電流ITOTALを示している。コア内トータル電流ITOTALは、それぞれのインダクタ電流の和である。2つのリンギングチョークトランスにおける電流は逆位相であり、互いのリップル電流が打ち消しあい、トータルでのリップル電流が小さくなる。
【0064】
RCC回路ではトランスを使用するが、この場合においても、本発明による直交コイル方式による変圧器構造の電源用チョークコイルを利用することで、1個の小型部品の搭載でよく、電源回路の小型化に効果がある。
【0065】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明はその目的と利点を損なうことのない適宜の変形を含み、更に、上記の実施形態よる限定は受けない。
【符号の説明】
【0066】
10,30,40 電源用チョークコイル
12 磁気コア
14 第1コイル
16 第2コイル
18 第1端子
20 第2端子
22 第3端子
24 第4端子
26 外側コア
32 第1板状コイル
34 第2板状コイル
36 絶縁物質
38 スリット
42 第1電極パターン
44 第2電極パターン
46 第3電極パターン
48 第4電極パターン
50 ブリッジレスPFC回路
52 プリント基板
54 ヒートシンク
60 倍電圧整流型PFC回路
62 インターリーブ方式昇圧コンバータ回路
64 カレントダラー整流平滑回路
66 インターリーブ方式RCC
AC 交流入力
DC 直流入力
D1,D2,Dc,Dd ダイオード
Da,Db リターンダイオード
Dq1,Dq2 ボディダイオード
La,La1,La2,Lb,Lb1,Lb2 インダクタ
Q1,Q2 スイッチング素子
C1,C2 パルス制御回路
C1OUT,C2OUT スイッチングパルス信号
Co ブーストコンデンサ
Ro 負荷
La,ILb,IA1,IA2,IB1,IB2 インダクタ電流
TOTAL トータル電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直方体状の磁気コアと、
前記直方体状の磁気コアに巻回する第1コイルと、
前記第1コイルと直交する方向に、前記コイルに重ねて前記直方体状の磁気コアに巻回する第2コイルとを備え、
前記第1コイルと前記第2コイルに交互に電流を流して、1つの磁気コアを共有した2つのチョークコイルとして機能させることを特徴とする電源用チョークコイル。
【請求項2】
請求項1記載の電源用チョークコイルにおいて、
前記磁気コアのコア材は、ダストコア、磁気異方性コア、ギャップ付コア、アモルファスコア又は鉄系合金、あるいは、それぞれのコア材の組み合わせであること、
を特徴とする電源用チョークコイル。
【請求項3】
請求項1記載の電源用チョークコイルにおいて、
前記第1コイル及び前記第2コイルは絶縁被膜で被覆された線状コイルであり、前記磁気コアに複数回巻回されていること、
を特徴とする電源用チョークコイル。
【請求項4】
請求項1記載の電源用チョークコイルにおいて、
前記第1コイル及び前記第2コイルは板状コイルであり、前記第1コイルと前記第2コイルは、絶縁物質を挟んで前記磁気コアに巻回されていること、
を特徴とする電源用チョークコイル。
【請求項5】
請求項1記載の電源用チョークコイルにおいて、
前記第1コイル及び前記第2コイルは絶縁被膜で覆われた線状コイルであり、
さらに、前記線状コイルに重ねて前記第1コイルと同方向に板状の第3コイルと、前記第2コイルと同方向に板状の第4コイルとを備え、
前記第1コイルと前記第3コイル及び前記第2コイルと前記第3コイルは変圧器として機能すること、
を特徴とする電源用チョークコイル。
【請求項6】
請求項4乃至5のいずれかに記載の電源用チョークコイルにおいて、
前記板状コイルは、前記磁気コアからの他の相の磁束面となる側面にスリットを設けたこと
を特徴とする電源用チョークコイル。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれかに記載の電源用チョークコイルにおいて、
コイルを巻回した前記磁気コアの外周面を囲う外側コアを備えたこと、
を特徴とする電源用チョークコイル。
【請求項8】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電源用チョークコイルにおいて、
前記電源用チョークコイルは、インターリーブ方式によるブリッジレス力率補正回路のインダクタとして利用すること、
を特徴とする電源用チョークコイル。
【請求項9】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電源用チョークコイルにおいて、
前記電源用チョークコイルは、インターリーブ方式による倍電圧整流型力率補正回路のインダクタとして利用すること、
を特徴とする電源用チョークコイル。
【請求項10】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電源用チョークコイルにおいて、
前記電源用チョークコイルは、インターリーブ方式による昇圧コンバータのインダクタとして利用すること、
を特徴とする電源用チョークコイル。
【請求項11】
請求項1乃至4のいずれかに記載の電源用チョークコイルにおいて、
前記電源用チョークコイルは、カレントダブラー整流平滑回路のインダクタとして利用すること、
を特徴とする電源用チョークコイル。
【請求項12】
請求項5乃至6のいずれかの記載の電源用チョークコイルにおいて、
前記電源用チョークコイルは、インターリーブ方式によるリンギングチョークコンバータのトランスとして利用すること、
を特徴とする電源用チョークコイル。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate


【公開番号】特開2012−134201(P2012−134201A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−282686(P2010−282686)
【出願日】平成22年12月20日(2010.12.20)
【出願人】(000103208)コーセル株式会社 (80)