説明

電源電圧調整回路及び情報記憶装置

【課題】情報記憶装置の低消費電力化を図る。
【解決手段】磁気ヘッド16が磁気ディスク12の読み出し又は書き込み対象データ領域上に位置していないと、判断部60が判断した場合に、サーボマークを検出した時点からのタイミングに応じて、パワーダウン制御回路36が電圧可変レギュレータを介してRDC32に供給する電圧を降下させる。この場合、RDCを機能させる必要がないタイミング(情報の読み出し又は書き込みやサーボマークの読み取りが行われないタイミング)で電圧を降下させることで、磁気ヘッドによる読み出し又は書き込みに影響を与えることなく、低消費電力化を図ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源電圧調整回路及び情報記憶装置に関し、特にヘッドとの間で情報のやり取りを行うリードチャネルに対して供給する電源電圧を調整する電源電圧調整回路、及び当該電源電圧調整回路を具備する情報記憶装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、磁気記録装置、例えばハードディスクドライブ(以下、「HDD」と呼ぶ)は、コンピュータの外部磁気記憶装置や民生用ビデオ記憶装置等に用いられている。近年、ユーザは、データ量の大きな情報(例えば動画など)を扱うことが多くなってきているため、これら情報を保存するためのHDDには、大容量化、高速化、低コスト化が求められてきている。
【0003】
HDDのSoC(System on Chip)内には、リード・ライト・チャネル(RDC)が設けられている。このRDCは、磁気ヘッドを用いてディスク媒体に書き込むデータをコード変調してヘッドICに出力したり、ディスク媒体から読み出した再生波形、すなわちヘッドICの出力信号からデータを検出してコード復調する信号処理を行うものである。
【0004】
近年、HDDは、携帯用電子機器などに搭載されて、モバイル環境において使用されたり、USB等を用いてパソコン等に外部接続され、USB規格、あるいはIEEE1394規格によるバス給電により使用されることも多くなってきている。このような環境で使用されるHDDには、特に消費電力の改善(低減)が求められる。
【0005】
これに対し、特許文献1には、記憶装置のリードライト回路部に対し、実際のリードライト動作中も低消費電力化を実現するために、リードライト回路部の必要とする箇所のみ活性化するパワーセーブ技術が提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開平9−73704号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の技術を用いれば、記憶装置のうちのリードライトに不必要な箇所における電力消費を低減できるので、ある程度の低消費電力化は可能である。しかるに、更なる低消費電力化は今後も期待されるところであり、低消費電力化のための新たな技術の出現が待望されている。
【0008】
そこで本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、低消費電力化を図ることが可能な電源電圧調整回路及び情報記憶装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に記載の電源電圧調整回路は、情報記録媒体に対する情報の読み出し又は書き込みを実行するヘッドの位置と、ホストから入力されるコマンドとの関係から、前記ヘッドが前記コマンドで指定されたデータ領域上に位置しているか否かを判断する判断部と、前記判断部により、前記ヘッドが前記コマンドで指定されたデータ領域上に位置していないと判断された場合に、前記情報記録媒体上のサーボマークを検出した時点からのタイミングに応じて、前記ヘッドとの間で情報のやりとりをするリードチャネルに対して供給する電源電圧の制御目標値を調整する電圧制御部と、を備える電源電圧調整回路である。
【0010】
これによれば、ヘッドが情報記憶媒体の読み出し又は書き込み対象のデータ領域上に位置していないことが判断部により判断された場合に、サーボマークを検出した時点からのタイミングに応じて、電圧制御部がリードチャネルに供給される電源電圧の制御目標値を調整するので、情報の読み出し又は書き込み及びサーボマークの読み取りの必要がないようなタイミング(リードチャネルを機能させる必要がないタイミング)で電源電圧を降下させることができる。これにより、ヘッドによる読み出し又は書き込みに影響を与えることなく低消費電力化を図ることが可能となる。
【0011】
本明細書に記載の情報記憶装置は、情報記録媒体への情報の読み出し又は書き込みを実行するヘッドと、前記ヘッドとの間で情報のやりとりを行うリードチャネルと、前記リードチャネルに対して、電源電圧を供給する電源電圧供給部と、前記電源電圧の制御目標値を調整する、本明細書に記載の電源電圧調整回路と、を備える情報記憶装置である。
【0012】
これによれば、本明細書に記載の電源電圧調整回路を具備しているので、低消費電力化を図ることが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本明細書に記載の電源電圧調整回路及び情報記憶装置は、低消費電力化を図ることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の情報記憶装置の一実施形態であるHDD100について、図1〜図7に基づいて詳細に説明する。
【0015】
図1は、本実施形態のHDD100の構成を概略的に示す図である。この図1に示すように、HDD100は、情報記憶媒体としての磁気ディスク12と、磁気ディスク12を回転駆動するスピンドルモータ(Spindle Motor(SPM))14と、磁気ディスク12に対するデータの書き込みや磁気ディスク12からのデータの読み出しを実行する磁気ヘッド(HEAD)16と、磁気ヘッド16を磁気ディスク12上でシーク(移動)するボイスコイルモータ(Voice Coil Motor(VCM))18と、サーボコンボ(Servo Combo(SVC))30と、スピンドルモータ14やボイルコイルモータ18などの駆動制御を実行するシステムオンチップ(System on Chip(SoC))20と、電源電圧供給部としての電圧可変レギュレータ22と、マルチプレクサ(multiplexer(MUX))46と、を備えている。
【0016】
SoC20は、ハードディスクコントローラ(Hard Disk Controller(HDC))26、SDRAM(Synchronous Dynamic Random Access Memory)28、リード・ライト・チャネル(RDC)32、電圧確認部としてのADコンバータ(ADC)34、電圧制御部としてのパワーダウン制御回路36、マイクロプロセッシングユニット(Micro Processing Unit(MPU))24、及び各部の動作制御を行うファームウェア等が高度に集積化されたものである。
【0017】
ハードディスクコントローラ26は、磁気ヘッド16の位置とコマンドの内容とを比較することにより磁気ヘッド16が読み出し又は書き込み対象のデータ領域上に位置しているか否かを判断する判断部60と、サーボフレームカウンタの値に基づいて電圧制御のタイミングを検出するタイミング検出部70とを含んでいる。また、ハードディスクコントローラ26は、エラー訂正回路、バッファ・コントロール回路、キャッシュ・コントロール回路、及びインタフェース制御回路(いずれも不図示)等も含んでおり、リード/ライト制御等も実行する。SDRAM28は、データのバッファ用として使用される高速アクセスが可能なメモリである。
【0018】
RDC32は、ライトデータを磁気ディスク12に書き込む(記録する)ための変調回路や、ライトデータをシリアルデータに変換するパラレル/シリアル変換回路や、磁気ディスク12からデータを読み出す(再生する)ための復調回路等を備えている。RDC32は、ヘッドIC(Head Integrated Circuit(HDIC))40との間でデータ(信号)をやりとりする。ヘッドIC40は、ライトデータに従って磁気ヘッド16に供給すべき電流の極性を切り替えることにより磁気ディスク12にデータを記録し、また磁気ヘッド16により再生されたリードデータをRDC32へ出力する。
【0019】
ADコンバータ34は、温度センサ42の出力や電圧可変レギュレータ22から出力される電圧値をモニタリングし、MPU24やパワーダウン制御回路36に出力する。
【0020】
パワーダウン制御回路36は、パワーダウンイネーブル信号や制御信号を電圧可変レギュレータ22に供給するものである。このパワーダウン制御回路36は、制御レジスタ54と、制御テーブルと、比較器44とを有している。制御レジスタ54は、パワーダウン制御に用いるサーボフレームカウンタのカウント値を算出するものである。制御テーブルは、情報を読み出し又は書き込みする対象のゾーンと、RDC32に供給する電圧値の制御信号との関係を示すテーブル(図6参照)である。比較器44は、制御テーブルに基づいて、電圧可変レギュレータ22に対して、制御信号を供給する。
【0021】
MPU24は、HDD100の全体の制御、主にヘッドのポジショニング制御、インタフェース制御、各周辺LSIの初期化や設定、ディフェクト管理などを行う。
【0022】
電圧可変レギュレータ22は、外部電源から供給される電源電圧を、SoC20内の各部や、SoC20外部の各部に供給する。電圧可変レギュレータ22は、少なくともRDC32に対して供給する電圧値を変更することができるようになっている。例えば、電圧可変レギュレータ22は、パワーダウン制御回路36から出力される制御信号値に基づいて電圧値を変更して、RDC32に対して供給を行う。また、電圧可変レギュレータ22は、パワーダウン制御回路36から出力されるパワーダウンイネーブル信号がアサートされているか、ネゲートされているかに応じて電圧値を変更して、RDC32に対して電源電圧を供給する。本実施形態では、図5等に示すように、パワーダウンイネーブル信号がアサートされている場合に1.2Vの電源電圧をRDC32に供給し、ネゲートされている場合に1.0Vの電源電圧をRDC32に供給する。
【0023】
SVC30は、スピンドルモータ14及びボイスコイルモータ18を駆動制御し、磁気ディスク12における磁気ヘッド16のサーボ(位置決め)制御を行う。
【0024】
マルチプレクサ46は、温度センサ42の出力及び電圧可変レギュレータ22から出力される電圧値のいずれかを選択的にADコンバータ34に出力するものである。
【0025】
次に、上記のように構成されるHDD100を用いた、磁気ディスク12に対するデータの書き込み方法、及び磁気ディスク12からのデータの読み出し方法、並びに電源電圧の制御方法について図2、図3のフローチャートに沿って説明する。
【0026】
図2のフローチャートが開始される前提として、電源電圧制御のための初期設定はすでに終了しているものとする。この初期設定には、パワーダウン制御回路36の制御レジスタ54の設定、パワーダウンイネーブル信号がアサートされた場合の電圧値(ここでは1.2V)及びネゲートされた場合の電圧値(ここでは1.0V)の設定が含まれる。また、初期設定には、パワーダウン制御回路36が、予めSoC20の内部メモリにパラメータとして展開されているゾーン情報に基づいて、シリンダ、ゾーン、電圧値及び制御信号値の関係を示す制御テーブル(図6参照)を作成する設定が含まれる。
【0027】
まず、HDD100の電源が投入されると、MPU24は、図2のステップS12において、磁気ディスク12を回転するとともに、磁気ヘッド16を磁気ディスク12上に移動し、最初のサーボマークの検出を開始する。この最初のサーボマークの検出にあたって、MPU24(ファームウェア)は、図4の時点A1に示すように、サーボゲートをアサートする。また、磁気ディスク12の回転は、MPU24がSVC30を介してスピンドルモータ14を駆動制御することにより実行し、磁気ヘッド16の移動は、MPU24がSVC30を介してボイスコイルモータ18を駆動制御することにより実行する。
【0028】
次のステップS14では、ハードディスクコントローラ26(タイミング検出部70)が、磁気ヘッド16にてサーボマークを検出するまで待機する。そして、サーボマークを検出した時点(サーボマークディテクト信号が出力された図4に示すA2の時点)で、ハードディスクコントローラ26(タイミング検出部70)が、ステップS16において、サーボフレームカウンタのカウントを開始する(ステップS16)。
【0029】
次いで、ハードディスクコントローラ26(タイミング検出部70)は、ステップS18において、カウント値がaに到達したか否かを判断する。ここで、値aは、磁気ヘッド16が位置している磁気ディスク12上の半径位置(ここでは、ゾーン)それぞれに対応して予め定められている値である。このステップS18の判断が肯定されると、ハードディスクコントローラ26は、ステップS20においてサーボゲートをネゲートする(図4の時点A3参照)。
【0030】
次いで、ハードディスクコントローラ26は、ステップS22において、最初のサーボマーク検出直後の動作中であるか否かを判断する。ここでの判断が肯定されると、ステップS24に移行する。
【0031】
次のステップS24では、ハードディスクコントローラ26(タイミング検出部70)が、サーボフレームカウンタのカウント値がNに到達するまで待機する。ここで、値Nは、磁気ヘッド16が位置しているディスク上の半径位置(例えばゾーン)それぞれに対応して予め定められている値であるものとする。ここでの判断が肯定されると、ステップS26において、ハードディスクコントローラ26が、サーボゲートをアサートし(図4の時点B参照)、ステップS14に戻る。
【0032】
次いで、ステップS14においてサーボマークの検出が行われると、ステップS16においてサーボフレームカウンタのカウントが開始される(図4の時点C参照)。そして、ハードディスクコントローラ26(タイミング検出部70)は、次のステップS18において、カウント値がaに到達したか否かを判断する。このステップS18の判断が肯定されると、ハードディスクコントローラ26は、ステップS20においてサーボゲートをネゲートする(図4の時点D参照)。次いで、ハードディスクコントローラ26は、ステップS22において、最初のサーボマーク検出直後の動作中であるか否かを判断し、ここでの判断が否定された場合には、ステップS28に移行する。なお、ステップS22の判断が否定された段階で、図3のフローチャートが図2のフローチャートと並行して開始される。
【0033】
図3のフローチャートでは、まず、ステップS60において、ハードディスクコントローラ26がホストからコマンド(ここでは、磁気ディスク12にデータを書き込むためのコマンドとする)を受信するまで待機する。また、ホストからのコマンドを受信した後も、ハードディスクコントローラ26は、ステップS62において、磁気ヘッド16が読み出し又は書き込み対象のデータ領域に到達するまで待機する。
【0034】
一方、図2のステップS28では、ハードディスクコントローラ26(判断部60)が、サーボマークから検出した情報と、ホストからのコマンドとを比較した結果に基づいて、磁気ヘッド16が読み出し又は書き込み対象のデータ領域に到達したか否かを判断する。ここでの判断が否定された場合には、ステップS30に移行する。なお、ホストからのコマンドを受信していない場合にも、ここでの判断は否定され、ステップS30に移行する。
【0035】
次のステップS30では、ハードディスクコントローラ26(タイミング検出部70)が、サーボフレームカウンタのカウント値がbに到達したか否かを判断する。ここで、値bは、値aに所定数k(例えばk=3)を加算した値である。この値b(=a+k)は制御レジスタ54により算出される。ここでの判断が肯定されると、ステップS32に移行し、パワーダウン制御回路36が、パワーダウンイネーブルをアサートする(図4の時点E参照)。このように、本実施形態では、サーボゲートがアサートされている間(時点B〜D間)は、電源電圧を降下させないので、サーボ情報の読み取り処理に対する影響を回避することができる。
【0036】
次いで、ステップS34では、ADコンバータ34が、RDC32に供給されている電源電圧の値を測定する。この測定結果は、パワーダウン制御回路36に送られる。
【0037】
次のステップS36では、ハードディスクコントローラ26(タイミング検出部70)が、カウント値がcに到達するまで待機する。ここで、値cは、値Nから所定数kを減算した値である。この値c(=N−k)は制御レジスタ54により算出される。
【0038】
次いでステップS38では、パワーダウン制御回路36が、パワーダウンイネーブルをネゲートする(図5の時点F参照)。
【0039】
次いで、ステップS40では、ハードディスクコントローラ26(タイミング検出部70)が、カウント値がNに到達するまで待機する。本実施形態では、上述のように、サーボゲートをアサートする前の段階(時点F)からRDC32に供給する電圧を上昇させているので、図5に示すカウント値がcからNになるまでの期間(補償期間)中に、電源電圧が1.2Vまで上昇するようになっている。
【0040】
その後、カウント値がNに到達した時点で、次のステップS42に移行し、ADコンバータ34が、RDC32に供給されている電源電圧の値を測定する。この測定結果は、パワーダウン制御回路36に送られる。
【0041】
なお、ステップS34、S42における測定の結果、電圧値が所望の値(ステップS34では1.0V、ステップS40では、1.2V)からかけ離れていた場合には、例えば、ハードディスクコントローラ26がエラーを出力するものとする。ただし、これに限らず、電圧値が所望の値からかけ離れていた場合には、レジスタで用いる値kを補正(フィードバック制御)することとしても良い。
【0042】
その後、ハードディスクコントローラ26は、サーボゲートをアサートし(ステップS26)、ステップS14に戻る。なお、次のデータ領域も、上記と同様、読み出し又は書き込み(ここでは、書き込み)を行わないデータ領域であった場合には、ステップS14〜S42を上述した順番で実行することにより、図5の時点D’→E’→F’→G’のように、電源電圧が制御される。この場合にも、時点D’〜E’、時点F’〜G’の間(補償期間の間)に電源電圧の昇降が行われているので、サーボゲートがアサートされている間は、電源電圧が1.2Vに維持されている。
【0043】
一方、図2のステップS14→S16→S18→S20→S22を経て、ステップS28の判断が肯定された場合、すなわち読み出し又は書き込み対象のデータ領域に到達した場合には、ステップS40に直接移行する。この場合、図3のステップS62における判断も肯定されるので、ステップS64において、パワーダウン制御回路36のファームウェアが、ゾーンに応じた電圧制御を以下のようにして実行する。
【0044】
パワーダウン制御回路36(比較器44)は、図6に示すテーブルに基づいて、ホストから入力されたコマンドが指定するゾーン番号から電圧値を決定し、制御信号値を生成する。例えば、ホストから受信したコマンドにおいて指定されていたゾーン番号が「2」であった場合には、電圧が「1.18V」に決定され、制御信号値「3」が生成される。
【0045】
その後、パワーダウン制御回路36(比較器44)は、電圧可変レギュレータ22に対して、制御信号値を供給する。そして、電圧可変レギュレータ22は、当該制御信号値に基づいて、図7の時点H(サーボフレームカウンタのカウント値がaの時点)から、時点I(サーボフレームカウンタのカウント値がcの時点)までの間、電源電圧制御を実施し、制御後の電源電圧をRDC32に対して供給する。
【0046】
なお、上記のようにしてRDC32に対する電源電圧の供給が開始された後、MPU24が、電圧可変レギュレータ22から正確な電源電圧(設定された電圧)が供給されているか否かの確認を行うこととしても良い。この場合、正確な電源電圧が供給されているか否かは、例えば、電圧可変レギュレータ22に入力された制御信号値と、パワーダウン制御回路36において設定された値とが一致しているか否かにより確認することができる。また、マルチプレクサ46とADコンバータ34を介して取得した電圧可変レギュレータ22の出力値(電圧値)が、設定された電圧となっているか否かにより確認することもできる。この確認の結果、設定された電圧となっていなかった場合には、再度電圧可変レギュレータ22に制御信号値を供給することもできる。
【0047】
そして、上記電源電圧制御を行っている間に、RDC32では、書き込むデータの信号処理を行い、ステップS66において、そのデータの信号をヘッドIC40に転送する。ヘッドIC40では、磁気ヘッド16を用いて、転送信号を指定されたゾーン(シリンダ)に書き込む。
【0048】
次いでステップS68では、データ転送が終了するまで待機し、データ転送が終了した段階でステップS60に戻る。
【0049】
一方、図2では、ステップS40において、ハードディスクコントローラ26(タイミング検出部70)が、カウント値がNに到達するまで待機する。そして、カウント値がNに到達した後は、ステップS42において、ADコンバータ34が、RDC32に供給されている電源電圧の値を測定し、ハードディスクコントローラ26が、サーボゲートをアサートした後(ステップS26)、ステップS14に戻る。
【0050】
なお、上記においては、磁気ディスク12に対してデータを書き込む場合の処理シーケンスについて説明したが、磁気ディスク12からデータを読み込む場合も、データのやりとりの方向は異なるものの基本的には同様の処理が行われる。
【0051】
以上詳細に説明したように、本実施形態によると、ハードディスクコントローラ26(判断部60)により、磁気ヘッド16が磁気ディスク12の読み出し又は書き込み対象データ領域上に位置していないと判断された場合に、サーボマークを検出した時点からのタイミングに応じて、パワーダウン制御回路36が電圧可変レギュレータ22を介してRDC32に供給する電圧を調整する(電圧可変レギュレータ22の制御目標値をパワーダウンイネーブル信号を用いて調整する)ので、RDC32を機能させる必要がないタイミング(情報の読み出し又は書き込みやサーボマークの読み取りが行われないタイミング)で電圧を降下させることができる。これにより、磁気ヘッド16による読み出し又は書き込み(データの読み出し又は書き込みや、サーボ情報の読み取りなど)に影響を与えることなく、低消費電力化を図ることができる。
【0052】
また、本実施形態のような低消費電力化が図られたHDD100は、携帯用電子機器などに搭載される場合や、パソコン等に外部接続され、USB規格、あるいはIEEE1394規格によりバス給電されるような場合など、外部電源から供給される電圧値が小さい場合にも好適に適用することができる。
【0053】
また、本実施形態では、ハードディスクコントローラ26(タイミング検出部70)が、RDC32に供給する電源電圧を降下させるタイミングを、サーボマーク検出時点からカウントされるサーボフレームカウンタの値に基づいて検出するので、簡易な方法で、電圧を降下させるタイミングを判断することができる。
【0054】
また、本実施形態では、サーボゲートがアサートされる前後の補償期間において、電圧を昇降させるので、サーボゲートがアサートされている間は常にサーボマークの検出に必要な電圧を供給することができる。これにより、サーボ情報の読み取りを高精度に行うことができる。
【0055】
また、本実施形態では、サーボゲートがアサートされている間に、サーボマークの検出に必要な電圧が供給されているか否かを確認することとしているので、当該確認結果を用いて補償期間の長さを変更したり、エラーを出力したりすることで、データの読み出し又は書き込みに対する影響を抑制しつつ、低消費電力化を図ることが可能である。
【0056】
また、本実施形態では、磁気ヘッド16が読み出し又は書き込み対象のデータ領域上に位置している場合にも、磁気ヘッド16の転送レートに応じた電源電圧を供給するようにしているので、データを読み出し又は書き込みしている間の低消費電力化を図ることができる。この場合、電圧可変レギュレータ22からは、RDC32と、その他のSoC20内部ブロック(内部の構成要素)には独立に電源電圧が供給されるので、RDC32の電源電圧を変化させることが、SoC20内部の他のブロックや、外部ブロック(ヘッドIC40、磁気ヘッド16、ボイスコイルモータ18、スピンドルモータ14等)に影響を与えることはない。
【0057】
また、本実施形態によると、パワーダウン制御回路36は、ヘッドIC40がデータの書き込み又は読み出しを実行する磁気ディスク12上のゾーンと、磁気ディスク12上の各ゾーンと各ゾーンの転送レートに応じた電圧値との関係を示す制御テーブルに基づいて、RDC32に与える電圧値を決定するので、適切な電圧値を簡易に決定することが可能である。
【0058】
なお、上記実施形態では、図1に示す温度センサ42の計測結果に応じた電源電圧制御を行うこととしても良い。例えば、低温ほどSoC20を構成する半導体の動作が高効率になると考えられるので、読み出し又は書き込み対象でないデータ領域上に磁気ヘッド16が存在する場合で、温度が常温に比べて低い場合には、図4、図5及び図7で示した電圧(通常時1.2V、電圧降下時1.0V)をより低く設定(例えば、通常時1.1V、電圧降下時0.9Vなどに設定)することとしても良い。また、これとは逆に、温度が比較的高い場合には、図4等で示した電圧をより高く設定(例えば、通常時1.3V、電圧降下時1.0Vなどに設定)することとしても良い。これにより、温度に依存して変化するRDC32の特性を考慮した、高精度な電圧制御を行うことが可能である。
【0059】
また、読み出し又は書き込み対象のデータ領域上に磁気ヘッド16が存在する場合にも、図1に示す温度センサ42の計測結果に応じた電源電圧制御を行うこともできる。この場合、例えば、図6に示すようなテーブルを、温度に応じて複数用意しておき、温度センサ42の計測結果に応じてテーブルを使い分けるようにすることとしても良い。例えば、常温の場合、図6のテーブル(上限1.2V,下限1.0V)を用い、低温の場合、図6のテーブルの上限と下限を下降させたテーブル(例えば上限が1.1Vで、下限が0.9Vのテーブル)を用い、高温の場合、図6のテーブルの上限と下限を上昇させたテーブル(例えば上限が1.3Vで、下限が1.1Vのテーブル)を用いることとしても良い。この場合にも、温度に依存して変化するRDC32の特性を考慮した、高精度な電圧制御を行うことが可能である。
【0060】
なお、上記実施形態では、図2のフローチャートを常時実行する場合について説明したが、これに限られるものではない。例えば、HDD100に設けたスイッチを介して、ユーザが「通常モード」と「パワーセーブモード」を設定できるようにしておき、「パワーセーブモード」のときのみ、図2のフローチャートを実行するようにしても良い。また、ユーザによる設定に応じてモードを切り替える場合に限らず、例えば、ACアダプタを介して外部電源に接続される場合には、「通常モード」、USBケーブルを介して外部電源に接続される場合には「パワーセーブモード」というように、HDD100の使用状態に応じて、モードを切り替えることとしても良い。
【0061】
なお、上記実施形態では、図6に示すように、ゾーンごとに電圧値を異ならせる場合について説明したが、これに限らず、例えば、電圧可変レギュレータ22の性能上、細かい電圧制御ができない場合には、複数ゾーンごとに電圧値を異ならせることとしても良い。
【0062】
また、上記実施形態では、補償期間経過後、電圧値の確認を行うこととしたが、これに限らず、電圧値の確認は必ずしも行わなくても良い。
【0063】
なお、上記実施形態では、タイミング検出部70が、サーボフレームカウンタを0からNまでカウントアップする場合について説明したが、これに限らず、例えば、Nから0までカウントダウンすることとしても良い。
【0064】
上述した実施形態は本発明の好適な実施の例である。但し、これに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変形実施可能である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】一実施形態に係るHDDのブロック図である。
【図2】磁気ディスクに対するデータの記録再生方法及び電源電圧の制御方法について示すフローチャート(その1)である。
【図3】磁気ディスクに対するデータの記録再生方法及び電源電圧の制御方法について示すフローチャート(その2)である。
【図4】電源電圧の制御について説明するための図(その1)である。
【図5】電源電圧の制御について説明するための図(その2)である。
【図6】読み書きを行うデータ領域上に磁気ヘッドが存在する場合の電圧制御テーブルを示す図である。
【図7】電源電圧の制御について説明するための図(その3)である。
【符号の説明】
【0066】
12 磁気ディスク(情報記録媒体)
16 磁気ヘッド(ヘッド)
22 電圧可変レギュレータ(電源電圧供給部)
32 RDC(リードチャネル)
34 ADコンバータ(電圧確認部)
36 パワーダウン制御回路(電圧制御部)
60 判断部
70 タイミング検出部
100 HDD(情報記憶装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報記録媒体に対する情報の読み出し又は書き込みを実行するヘッドの位置と、ホストから入力されるコマンドとの関係から、前記ヘッドが前記コマンドで指定されたデータ領域上に位置しているか否かを判断する判断部と、
前記判断部により、前記ヘッドが前記コマンドで指定されたデータ領域上に位置していないと判断された場合に、前記情報記録媒体上のサーボマークを検出した時点からのタイミングに応じて、前記ヘッドとの間で情報のやりとりをするリードチャネルに対して供給する電源電圧の制御目標値を調整する電圧制御部と、を備える電源電圧調整回路。
【請求項2】
前記サーボマークを検出した時点からのタイミングを、前記サーボマーク検出時点からカウントされるサーボフレームカウンタの値に基づいて検出するタイミング検出部を更に備える請求項1に記載の電源電圧調整回路。
【請求項3】
前記電圧制御部は、前記サーボマークの検出タイミングを示すサーボゲートがアサートされている間は、前記電源電圧が前記サーボマークの検出に必要な電圧となるように、前記タイミングを決定することを特徴とする請求項1又は2に記載の電源電圧調整回路。
【請求項4】
前記サーボゲートがアサートされている間の電源電圧の値を確認する電圧確認部を更に備える請求項1〜3のいずれか一項に記載の電源電圧調整回路。
【請求項5】
前記電圧制御部は、前記リードチャネルの温度に応じて、前記電源電圧の制御目標値を変更することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の電源電圧調整回路。
【請求項6】
前記電圧制御部は、前記判断部による判断の結果、前記ヘッドが前記コマンドで指定されたデータ領域上に位置している場合に、前記電源電圧の制御目標値を前記ヘッドの転送レートに応じた値に調整することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の電源電圧調整回路。
【請求項7】
前記電圧制御部は、前記ヘッドが前記情報の読み出し又は書き込みを実行する前記情報記録媒体上のゾーンに応じて、前記電源電圧の制御目標値を調整することを特徴とする請求項6に記載の電源電圧調整回路。
【請求項8】
情報記録媒体への情報の読み出し又は書き込みを実行するヘッドと、
前記ヘッドとの間で情報のやりとりを行うリードチャネルと、
前記リードチャネルに対して、電源電圧を供給する電源電圧供給部と、
前記電源電圧の制御目標値を調整する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の電源電圧調整回路と、を備える情報記憶装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−153005(P2010−153005A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−332588(P2008−332588)
【出願日】平成20年12月26日(2008.12.26)
【出願人】(309033264)東芝ストレージデバイス株式会社 (255)