説明

電球

【課題】 光の出射効率を低下させることなく、ランプの外観向上や擬似的な点灯の防止を実現することのできる電球を提供する。
【解決手段】 フィラメント16を収容するバルブ15の表面部に微細な凹凸を形成したフロスト加工面30を設け、このフロスト加工面30上に光透過性膜31を積層する。これにより、光透過性膜31の膜厚を厚く形成することなく、ランプ1の非点灯時に外光がバルブ15を透過することを防止し、ランプ1の外観向上や擬似的な点灯の防止を実現する。同時に、光透過性膜31の薄膜化によって、電球10がバルブ15から出射する光の出射効率が向上する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両のテールランプ、ポジションランプ、ターンシグナルランプ、ストップランプ、フォグランプ等をはじめとする各種車載ランプの光源として好適な電球や、その他装飾用ランプ、照明用ランプ、表示用ランプ等の光源として好適な電球に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、例えば、車載ランプ等のランプとして、拡散ステップを設けない、いわゆる素通しタイプの前面カバーを用いたものが広く普及している。ところで、この種のランプにおいては、灯室内に配設されるバルブのフィラメント等が前面カバー越しに透過して視認されるため、外観上好ましくなく、このような外観上要請に対して対策を行う必要がある。また、この種のランプにおいては、特にバルブを所定の機能色に着色した有色ガラスで構成した場合に、バルブを通過した太陽光等の外光がリフレクタで反射してあたかも点灯しているように見えることがあり、このような擬似的な点灯に対しても対策を行う必要がある。
【0003】
これに対処し、例えば特許文献1には、電球のバルブ表面の最も外側に、バルブ表面全体を覆うように50Å〜300Åの膜厚の金属膜を形成する技術が開示されている。
【特許文献1】特開2002−110107公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術を用い、単にバルブ表面に金属膜を形成しただけの構成で上述のフィラメント等の視認やランプの擬似的な点灯に対して対策する場合、十分な効果を実現するためには、金属膜の膜厚を厚く形成する必要がある。その一方で、金属膜の膜厚を厚く形成する程、点灯時にフィラメントから発する光の出射効率は低下する。
【0005】
本発明は、光の出射効率を低下させることなく、ランプの外観向上や擬似的な点灯の防止を実現することのできる電球を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、フィラメントを収容するバルブの表面部に形成したフロスト加工面と、前記フロスト加工面上に積層した有色の光透過性膜と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明の電球によれば、光の出射効率を低下させることなく、ランプの外観向上や擬似的な点灯の防止を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を説明する。図面は本発明の一実施形態に係わり、図1は電球の要部断面図、図2は図1のI部の拡大断面図、図3はランプに差し込む外光の挙動を示す説明図、図4はフィラメントから発する光の挙動を示す説明図、図5は電球の変形例を示す側面図、図6は光透過性膜の変形例を示す要部断面図である。
【0009】
図3,4において符号1は、ランプの一例としての車載のターンシグナルランプを示す。このランプ1は、内面に反射面5aを有するリフレクタ5と、このリフレクタ5の前面開口部を覆うことでリフレクタ5との間に灯室7を画成する前面カバー6と、図示しないホルダを介してリフレクタ5に保持されて灯室7内にバルブ15を露呈する電球10とを有する。ここで、本形態において、前面カバー6は、いわゆる素通しタイプの前面カバーである。すなわち、本形態の前面カバー6は、例えば、拡散ステップ等を廃止した無色透明なポリカーボネイト製のカバー体であり、基本的には、透過光を所望の方向に屈折させたり拡散させる作用を持たない。
【0010】
図1に示すように、電球10のバルブ15は、例えば、着色成分としてTiO及びFeを適量添加して機能色(アンバー色)に着色したアルカリ・アルカリ土類ケイ酸ガラス製の中空ガラス管であり、内部にフィラメント16を収容する。
【0011】
フィラメント16は例えばタングステンコイルからなり、弓状に湾曲したフィラメント16の両端には、一対の内部導入線17の先端部がそれぞれ接続している。また、バルブ15の基部には、一対のピンチシール部21を備えたウェッジベース部20が連設しており、各内部導入線17の基端は、各ピンチシール部21内において、図示しないジュメットワイヤに接続している。さらに、各ピンチシール部21には略U字状に折曲する一対の外部導入線22(一方のみを図示)がそれぞれ固設しており、各ピンチシール部21内において、各外部導入線22にはジュメットワイヤがそれぞれ接続している。そして、これら外部導入線22、ジュメットワイヤ、及び内部導入線17を通じて、フィラメント16への通電が実現するようになっている。
【0012】
また、ウェッジベース部20は、内端がバルブ15内に連通する排気管部23を、ピンチシール部21間に有する。この排気管部23は例えばキセノンを主体とする不活性ガスをバルブ15内に封入するためのもので、排気管部23の外端は、バルブ15内を排気し、不活性ガスを所定圧力で導入した後に封止切られる。
【0013】
さらに、ウェッジベース部20は、扁平な係止溝24を有する。これら係止溝24は、電球10をリフレクタ5に保持するホルダ(図示せず)にウェッジベース部20を係止するためのもので、例えば型押しにより形成が可能である。
【0014】
このような電球10において、図2に示すように、バルブ15は、表面部に微細な凹凸を形成したフロスト加工面30を有し、さらに、フロスト加工面30上に有色(例えば、金属色或いは白色系)の光透過性膜31を有する。
【0015】
ここで、フロスト加工面30は、例えば、バルブ15の表面全域に対して周知のサンドブラスト処理を施すことで形成することが可能である。なお、フロスト加工面30は、サンドブラスト処理以外にも、例えば、バルブ15を所定のフロスト処理液に浸漬する、周知のケミカルエッチング処理によっても形成可能である。
【0016】
また、光透過性膜31は、例えば、周知のスパッタリング法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等を用い、フロスト加工面30上に、Al、Mo、Ti、Ta、或いはAg等の金属薄膜を積層することで形成可能である。ここで、光透過性膜31をフロスト加工面30上に成膜することにより、当該光透過性膜31を構成する薄膜材の各分子32は、図2に示すように、空隙を有して粗く不規則に配列する。
【0017】
次に、上述の構成のランプ1の非点灯時及び点灯時の作用について、図3,4を参照して説明する。
図3に示すように、ランプ1の非点灯時において、前面カバー6を透過してバルブ15に照射する太陽光等の外光は、そのほとんどが、バルブ15を透過することなく表面部で乱反射する。すなわち、バルブ15の表面部に入射した外光は、先ず、光透過性膜31内において、粗く不規則に配列した各分子32間で乱反射を繰り返し、その何割かが、フロスト加工面30に到達することなく外部に出射する。さらに、フロスト加工面30に到達した外光も、当該フロスト加工面30の微細な凹凸によって鏡面反射し、光透過性膜31内で再び乱反射した後、外部に出射する。
【0018】
そして、これら光透過性膜31及びフロスト加工面30の作用によって、バルブ15に照射する外光の大半がバルブ15内を通過することなく表面部で乱反射することにより、バルブ15内に収容したフィラメント16等の構成部品が外部から視認されることを防止でき、さらに、外光によってバルブ15の機能色がリフレクタ5に映り込むことに起因する疑似点灯等の問題を解消することが可能となる。
【0019】
一方、図4に示すように、ランプ1の点灯時において、フィラメント16が発する光は、バルブ15を透過する際にフロスト加工面30の微細な凹凸によって乱され、さらに、光透過性膜31内で乱反射した後、外部に出射する。
【0020】
そして、このようにフィラメント16から発する光の規則性がバルブ15を透過する際に失われることにより、リフレクタ5で反射することなくランプ1外に直接出射する光がフィラメント16等の形状を投写することを防止できる。なお、このような構成においても、フィラメント16から発する光は、勿論、バルブ15を透過する際に機能色に変換される。
【0021】
このような実施形態によれば、バルブ15の表面部に設けたフロスト加工面30上に光透過性膜31を積層することにより、当該光透過性膜31の膜厚を厚く形成することなく、ランプ1の外観向上や擬似的な点灯の防止を実現することができる。
【0022】
すなわち、フロスト加工面30上に光透過性膜31を設けることにより、各分子32の配列が粗く不規則な光透過性膜31をバルブ15の表面部に形成することができ、この粗く不規則に配列した薄膜材の分子32によってバルブ15の表面部に入射した外光を効率よく乱反射させることができる。さらに、フロスト加工面30の微細な凹凸によって、バルブ15の表面部に入射した外光を鏡面反射させることができる。従って、光透過性膜31の膜厚を厚く形成することなくランプ1の非点灯時に外光がバルブ15を透過することを防止でき、ランプ1の外観向上や擬似的な点灯の防止を実現することができる。
【0023】
同時に、光透過性膜31の薄膜化によって、電球10がバルブ15から出射する光の出射効率を向上することができる。
【0024】
ここで、上述の実施形態においては、バルブ15の表面部全域にフロスト加工面30及び光透過性膜31を設けた構成について説明したが、例えば図5に示すように、バルブ15の先端側の表面部に対して限定的に、フロスト加工面30及び光透過性膜31を設けた構成であっても良い。
【0025】
また、光透過性膜31は、屈折率の異なる薄膜材料を個別に積層した2層以上の多層構造としても良い。例えば、図6に示すように、光透過性膜31は、高屈折率の薄膜材を用いた第1の膜31aと、低屈折率の薄膜材を用いた第2の膜31bとで構成することが可能である。この場合、高屈折率の薄膜材として、例えばTaを用い、低屈折率の薄膜材として、例えばSiOを好適に用いることが可能である。そして、このように、光透過性膜31を多層膜で構成することにより、当該光透過性膜31の全体としての膜厚を小さくした場合にも、各層の屈折率の違いにより、より効果的な光の乱反射を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】電球の要部断面図
【図2】図1のI部の拡大断面図
【図3】ランプに差し込む外光の挙動を示す説明図
【図4】フィラメントから発する光の挙動を示す説明図
【図5】電球の変形例を示す側面図
【図6】光透過性膜の変形例を示す要部断面図
【符号の説明】
【0027】
10…電球、15…バルブ、16…フィラメント、30…フロスト加工面、31…光透過性膜、31a…膜、31b…膜
代理人 弁理士 伊 藤 進

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィラメントを収容するバルブの表面部に形成したフロスト加工面と、
前記フロスト加工面上に積層した有色の光透過性膜と、
を具備したことを特徴とする電球。
【請求項2】
前記光透過性膜は、金属色或いは白色であることを特徴とする請求項1記載の電球。
【請求項3】
前記光透過性膜は、異なる屈折率を有する少なくとも2種類の材料を個別に積層した多層膜であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の電球。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−140014(P2006−140014A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−328175(P2004−328175)
【出願日】平成16年11月11日(2004.11.11)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)