説明

電界放出型電子源撮像装置

【課題】電界放出型電子源アレイ部を備えた電界放出型電子源撮像装置を高精細化する。
【解決手段】複数の電子源セルが配置された電界放出型電子源アレイ部15に対向して、入射光を電気信号に変換する光電変換膜3を含むターゲット部14が配置されている。電子源セルから放出された電子ビームがターゲット部に入射してターゲット部に蓄積された電荷に応じた電気信号が映像信号として取り出される。ターゲット部から取り出される映像信号の実質的な映像周波数が高められるように、電子ビームのターゲット部に対する入射位置を時間の経過とともに変化させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電界放出型電子源を用いた電界放出型電子源撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体微細加工技術の進展により、半導体などの基板にミクロンオーダーの微細な冷陰極構造を多数集積化する真空マイクロエレクトロニクス技術が注目を集めている。これらの技術によって得られる微小冷陰極構造を備えた電界放出型電子源は、平面型の電子放出特性や高い電流密度が期待できること、熱陰極とは異なりヒーター等の熱源を必要としないこと等から、低消費電力型の次世代フラットディスプレイ用電子源、センサ、平面型撮像装置用電子源として期待が集まっている。
【0003】
このような電界放出型電子源が多数配置された電界放出型電子源アレイ部を用いた電界放出型電子源撮像装置の一例を図15を用いて説明する(特許文献1参照)。この電界放出型電子源撮像装置は、前面パネル115と、背面パネル117と、側面外周器116とがフリットガラス又はインジウム等の封着材料119,133により固着固定され、その内部が真空に保持された真空容器118を備える。
【0004】
前面パネル115の内面には、例えば外部からの入射光111を透過する透光性導電膜113と、透光性導電膜113の表面に形成された、外部からの入射光111に応じて電荷を生成する例えばアモルファスセレンを主体とする光電変換膜112とからなるターゲット部114が形成されている。
【0005】
背面パネル117の内面には、エミッタ電極125と、エミッタ電極125上に形成された複数の冷陰極素子(エミッタ)124と、各冷陰極素子124の周辺に形成された絶縁層126と、冷陰極素子124から電子を取り出す為の電圧を印加するゲート電極128とが集積一体化された電界放出型電子源アレイ部129が形成されている。冷陰極素子124から放出された電子ビームをメッシュ電極120の貫通孔を通過させてターゲット部114にランディング(入射)させることにより、ターゲット部114の光電変換膜112上に結像した入射光111による画像を読み取ることが可能となる。
【0006】
電界放出型電子源としては、一般的に、半導体基板やガラスの表面上に、先端が先鋭な冷陰極素子を形成し、その周りに絶縁層及びこの絶縁層上にゲート電極を形成して、冷陰極素子とゲート電極との間に電圧を印加して冷陰極素子の先端から電子放出を行なうスピント(Spindt)型を代表例として挙げることができる。その他には、カソード電極とゲート電極との間に絶縁層を形成し、絶縁層に電圧を印加してトンネル効果により電子放出を行なうMIM(Metal Insulator Metal)型、カソード電極とエミッタ電極との間に微小ギャップを設け、これら電極間に電圧を印加して微小ギャップから電子放出を行なうSCE(Surface Conduction Electron Source)型、あるいは電子源にDLC(Diamond Like Carbon)やCNT(Carbon Nanotube)等の炭素系材料を用いた電界放出型電子源を例として挙げることができる。
【0007】
このような電界放出型電子源を含む電界放出型電子源アレイ部では、個々の電子源からの電子放出量が微量であることから、撮像装置として使用する場合には、複数の電子源を一単位とする電子源セル(以下、単に「セル」という)を形成し、各セルに含まれる複数の電子源から電子ビームを放出させることにより、所定の動作を行うのに必要な電流量を確保している。
【0008】
このセルは平面上に、例えばマトリクス状に配置される。詳細には、縦方向に延びたストライプ状の複数のエミッタ電極が横方向に等ピッチで配置され、横方向に延びたストライプ状の複数のゲート電極が縦方向に等ピッチで配置され、これら複数のエミッタ電極と複数のゲート電極とが交差する各位置にセルが配置される。電界放出型電子源装置の駆動時には、エミッタ電極及びゲート電極を順次選択して所定の電圧を印加することにより、選択されたエミッタ電極とゲート電極とが交差する位置のセルから電子ビームが順次放出される。各セルから放出された電子ビームがターゲット部を走査することで、入射光による画像を電気的に読み出すことができる。
【特許文献1】特開2000−48743号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、このような電界放出型電子源撮像装置では、読み出される画像の解像度は、電界放出型電子源アレイ部に含まれるセルの数で決定されてしまう。例えば、横方向に640セル、縦方向に480セルが配置されたVGA画素を有する電界放出型電子源アレイ部を用いた電界放出型電子源撮像装置であれば、640×480のVGA相当の解像度の映像信号しか得ることができない。
【0010】
更に解像度を上げてより良好な画像を読み出す場合には、各画素のサイズを小さくして画素数を増やす必要がある。画素サイズを小さくするためには、画素に一対一に対応するセルのサイズを小さくする必要がある。この結果、例えばスピント型の電界放出型電子源であれば、セルに含まれる冷陰極素子の数が減少する。また、MIMやCNTのような電子放出が面で行われる電界放出型電子源であれば、セルの面積が小さくなり、その電子放出能力が低下する。
【0011】
しかも、電界放出型電子源アレイ部は、セルだけでは無く、セルを駆動する為の電圧供給用の配線パターンや、場合によっては駆動の為の回路等を含んでいる。従って、これらが必要とする面積も、画素数を増加させるに従い増加する。
【0012】
その為、画素数を増やすに従いセルの大きさは加速度的に小さくなり、その結果、1つのセルから放出される電子ビームの電流量も加速度的に減少していく。
【0013】
従って、ある値以上の画素数を有する電界放出型電子源撮像装置では、入射光に応じてターゲット部に発生し蓄積された電荷を読み出すのに必要な電子ビーム電流量を確保することが不可能になり、撮像装置として機能しなくなってしまう。
【0014】
本発明は、上記の問題を解決し、電界放出型電子源アレイ部を備えた電界放出型電子源撮像装置を高精細化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明の電界放出型電子源撮像装置は、複数の電子源セルが配置された電界放出型電子源アレイ部と、前記電界放出型電子源アレイ部に対向して配置され、入射光を電気信号に変換する光電変換膜を含むターゲット部とを備え、前記電子源セルから放出された電子ビームが前記ターゲット部に入射して前記ターゲット部に蓄積された電荷に応じた電気信号が映像信号として取り出される電界放出型電子源撮像装置であって、前記ターゲット部から取り出される前記映像信号の実質的な映像周波数が高められるように、前記電子ビームの前記ターゲット部に対する入射位置を時間の経過とともに変化させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、電界放出型電子源アレイ部が有するセルの数以上に実質的な画素数が増加された高精細な画像を撮影できる電界放出型電子源撮像装置を提供することができる。
【0017】
従来は、1つのセルから放出された電子ビームのターゲット部に対する入射位置は不変であり、この入射位置に蓄積された電荷を画素情報として読み出していた。従って、1つのセルに対して1つの画素が対応し、1つの画素情報を得ていた。
【0018】
これに対して、本発明では、1つのセルから放出された電子ビームのターゲット部に対する入射位置を時間の経過とともに変化させる。従って、入射位置が変化する過程で、各入射位置に蓄積された電荷を順次読み出せば、1つのセルに対して複数の画素が対応することになり、複数の画素情報を得ることができる。電子ビームを放出するセルを順に切り替えて、各セルごとに同様に電子ビームのターゲット部に対する入射位置を時間の経過とともに変化させる。この結果、実在するセルの数以上に実質的な画素数が飛躍的に増大し、ターゲット部から取り出される映像信号の実質的な映像周波数が高まる。かくして、撮影画像の解像度が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
上記の本発明の電界放出型電子源撮像装置が、更に、前記電界放出型電子源アレイ部と前記ターゲット部との間に、前記電子源セルから放出された前記電子ビームを偏向させ且つ加速する機能を有する偏向加速電極を備えることが好ましい。
【0020】
これにより、電子ビームのターゲット部に対する入射位置を時間の経過とともに容易に変化させることができる。
【0021】
1つのセルから放出された電子ビームのターゲット部に対する入射位置を時間の経過とともに変化させるためには、電子ビームを偏向させる必要があり、これは電界又は磁界を用いることで実現できる。
【0022】
磁界により電子ビームを偏向させる場合、電界放出型電子源撮像装置の外に磁界を発生する大きな偏向ユニットを設置しなければならなくなり、撮像装置が大型化し、且つその重量が増大する。また偏向ユニットから磁界が外界に洩れるのを防止するための磁気シールドが必要となるので、撮像装置は更に大型化し、且つその重量は増大する。
【0023】
これに対して、電界放出型電子源アレイ部とターゲット部との間に、電子ビームを偏向させる電界を発生する偏向加速電極を設置する場合、撮像装置の外に更なる部材の取り付けが不要である。従って、撮像装置が大型化するのを防止できる。また、電極は、磁界を発生する偏向ユニットに比べて小型軽量である。
【0024】
従って、電子ビームの偏向を偏向加速電極を用いて行うことにより、磁界を発生する偏向ユニットを用いて行う場合に比べて、小型且つ軽量の撮像装置を実現することができる。
【0025】
上記の本発明の電界放出型電子源撮像装置において、前記電界放出型電子源アレイ部が、同一平面上に並べて配置された複数の電界放出型電子源アレイ基板からなることが好ましい。
【0026】
これによりX線撮影などに必要な大画面化に対応した大型の電界放出型電子源撮像装置を低コストで提供することができる。
【0027】
即ち、大画面化のために大型の電界放出型電子源アレイ基板を用いる場合、このような大型の電界放出型電子源アレイ基板は製造設備が高価であり且つ歩留まりが悪いので、撮像装置が高コストになってしまう。
【0028】
これに対して、個別に作成された比較的小型の複数の電界放出型電子源アレイ基板を同一平面上に並べて配置する場合、小型の電界放出型電子源アレイ基板は歩留まり良く低コストで製造できるので、撮像装置のコスト上昇を抑えることができる。
【0029】
なお、複数の電界放出型電子源アレイ基板を並べて配置した場合、隣り合う電界放出型電子源アレイ基板間の境界に対応する位置の画素が欠落し、画像に切れ目が入ってしまう問題がある。ところが、境界付近のセルから放出された電子ビームを境界側に偏向させることにより、画素の欠落(画像の切れ目)が実質的に目立たない画像を撮影することが可能になる。
【0030】
以下、本発明を具体的な実施の形態を示しながら詳細に説明する。
【0031】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源撮像装置の側面断面図である。
【0032】
図1に示すように、本実施の形態1に係る電界放出型電子源撮像装置は、光透過性のガラスからなる前面パネル1と、背面パネル5と、側面外周器4とで形成された真空容器を備える。前面パネル1と側面外周器4、及び、背面パネル5と側面外周器4は、例えば高温焼成用のフリットガラスや、低温封着用のインジウムなどの真空封着材7により固着され封着されて、真空容器内は真空に保たれている。以下の説明の便宜のために、前面パネル1及び背面パネル5の法線方向と平行な軸をZ軸とする。Z軸と垂直な平面に含まれる、互いに直交する2軸をX軸及びY軸とする。
【0033】
背面パネル5の内面上には、電界放出型電子源アレイ9が形成された半導体基板(電界放出型電子源アレイ基板)6からなる電界放出型電子源アレイ部15が設置されている。半導体基板6上には、スペーサー部8bを一体に備える偏向加速電極8が設置固定されている。前面パネル1の偏向加速電極8と対向する内面上には、前面パネル1側から、透光性の陽極電極2と光電変換膜3とがこの順に積層されてなるターゲット部14が設けられている。電極43が前面パネル1を貫通し、その一端が陽極電極2に接続されている。光電変換膜3は、真空容器外から前面パネル1及び陽極電極2を通過した入射光に応じて電荷を発生し蓄積する。ターゲット部14は、電界放出型電子源アレイ部15から放出された電子ビームにより走査されることにより、蓄積された電荷に応じた電気信号を時系列映像信号として陽極電極2及び電極43を通じて真空容器外に出力する。
【0034】
前面パネル1、背面パネル5、側面外周器4からなる真空容器内には、余分なガスを吸着除去することにより、内部を高真空に保持する為のゲッターポンプ(図示せず)が設置されている。
【0035】
図2は、本実施の形態1に係る電界放出型電子源撮像装置の分解斜視図である。図2を用いて、電界放出型電子源撮像装置の組み立て方法の一例を簡単に説明する。
【0036】
背面パネル5上にフリットガラス7aを付与し、この上に環状の側面外周器4を載置して、約400℃程度の高温で焼成して、背面パネル5と側面外周器4とをフリットガラス7aを介して接合する。
【0037】
偏向加速電極8のスペーサー部8bと半導体基板6とを例えば陽極接合や共晶接合などの接合方法により接合する。背面パネル5上の側面外周器4で囲まれた部分に、偏向加速電極8が搭載された半導体基板6を、ダイボンディングして設置固定する。
【0038】
偏向加速電極8への給電は、半導体基板6から、偏向加速電極8のスペーサー部8bと半導体基板6との接合部及びスペーサー部8bを介して行われる。偏向加速電極8へ給電するための半導体基板6上の配線パターンは、背面パネル5上に形成された配線パターンとワイヤーボンディング(図示せず)により接続される。これにより、偏向加速電極8への給電は、真空容器の外側より行なうことができる。
【0039】
半導体基板6上には、複数のセル(電子源セル)をマトリクス状に並べた電界放出型電子源アレイ9が形成されている。各セルは、複数(一実施例では100個)の冷陰極素子(エミッタ)を含む。
【0040】
半導体基板6上の電界放出型電子源アレイ9の複数のセルと、偏向加速電極8に設けられた複数の電子ビーム通過孔(貫通孔)80とは一対一に対応している。各セルの中心を通るZ軸と平行な軸が、このセルと対応する偏向加速電極8の電子ビーム通過孔80のほぼ中心を通るように(一実施例では、セルの中心を通るZ軸と平行な軸に対する電子ビーム通過孔80の中心の位置ずれ量が3μm程度以下となるように)、半導体基板6と偏向加速電極8とは高精度に位置合わせされる。
【0041】
このようにして組み立てられた背面パネル5、側面外周器4、偏向加速電極8、及び半導体基板6からなる背面パネル構造体は、真空装置内で例えば約120℃〜350℃程度の温度でガス出しの為の空焼きされる。
【0042】
空焼きが済んだ背面パネル構造体は、真空内にて、前面パネル1と、インジウムを付着させた金属リング7bにより接合一体化されて、内部が真空に封着された真空容器となる。
【0043】
半導体基板6上に形成される電界放出型電子源アレイ9は、図3に示される様に、エミッタ電極18と、エミッタ電極18上に形成され、先端が先鋭化された冷陰極素子(エミッタ)19と、冷陰極素子19の周辺に形成された絶縁層17と、絶縁層17上に設けられ、冷陰極素子19を取り囲む開口が形成されたゲート電極16等からなる多数の電界放出型電子源が集積されてなる。
【0044】
エミッタ電極18は、Y軸と平行なストライプ状に、X軸方向に等ピッチで複数本配置されている。ゲート電極16は、X軸と平行なストライプ状に、Y軸方向に等ピッチで複数本配置されている。Z軸と平行な方向から見て、複数のエミッタ電極18と複数のゲート電極16とが交差する複数の交点位置に複数のセルがマトリクス状に配置される。一実施例では、セルがX軸方向に640セル、Y軸方向に480セル、即ちVGA画素相当で配置されている。各セルは一辺が20μm程度の正方形であり、この中の一辺が10μm程度の正方形の領域内に複数の冷陰極素子19が均一に配置されている。
【0045】
一実施例では、同一セル内の複数の冷陰極素子19にはエミッタ電極18を介して30Vの基準電位から0Vに低下するパルス状のエミッタ電位が印加され、冷陰極素子19を取り囲む絶縁層17上に形成されたゲート電極16には例えば30Vの基準電位から中位の60Vに上昇するパルス状のゲート電位が印加される。冷陰極素子19とゲート電極16との間に形成される電位差により、冷陰極素子19の先端から電子10が放出される。
【0046】
エミッタ電極18及びゲート電極16は、背面パネル5上に、真空容器の内外を繋ぐように形成された配線パターンと接続されている。冷陰極素子19に与えられるエミッタ電位及びゲート電極16に与えられるゲート電位は、真空容器の外側からこの配線パターンを介して供給される。
【0047】
図4は偏向加速電極8の電界放出型電子源アレイ部15に対向する側から見た斜視図である。偏向加速電極8は、複数の電子ビーム通過孔80(図4では図示を省略)がマトリクス状に配置された電極部8aと、電極部8aを取り囲むようにその周囲に配置された枠状のスペーサー部8bとを備える。
【0048】
電極部8aは、ゲート電極16に比べて相対的に高電位が印加されることにより電界放出型電子源アレイ部15のセルから放出された電子ビームを加速する機能と、時間の経過とともに変化する電位が印加されることにより電子ビームをX軸方向及びY軸方向に偏向させてターゲット部14に対する入射位置を変化させる機能とを有している。
【0049】
スペーサー部8bは、電極部8aよりもZ軸方向寸法(厚さ)が大きく、偏向加速電極8の単体での機械的強度を向上させる機能と、電界放出型電子源アレイ9と電極部8aとを離間させ(一実施例ではその距離は100μm程度である)、且つ両者間の距離を高精度に維持する機能とを有している。
【0050】
図5は、電極部8aの一例の分解斜視図である。図示したように、第1電極板8a1及び第2電極板8a2には複数の電子ビーム通過孔80がマトリクス状に配置されている。第1電極板8a1の一方の面には、絶縁層上に、櫛状の第1水平偏向加速電極11aと櫛状の第2水平偏向加速電極11bとが、個々の電子ビーム通過孔80をX軸方向に挟むように配置されている。第2電極板8a2の一方の面には、絶縁層上に、櫛状の第1垂直偏向加速電極12aと櫛状の第2垂直偏向加速電極12bとが、個々の電子ビーム通過孔80をY軸方向に挟むように配置されている。このような第1電極板8a1と第2電極板8a2とがZ軸方向に積層されて電極部8aが構成される。
【0051】
図6A及び図6Bは、電極部8aの別の例を示しており、図6Aは電極部8aの第1面(例えばターゲット部14に対向する面)の斜視図であり、図6Bは電極部8aの第2面(例えば電界放出型電子源アレイ部15に対向する面)の斜視図である。図6Aに示すように、電極部8aの第1面には、絶縁層上に、櫛状の第1水平偏向加速電極11aと櫛状の第2水平偏向加速電極11bとが、個々の電子ビーム通過孔80をX軸方向に挟むように配置されている。図6Bに示すように、電極部8aの第2面には、絶縁層上に、櫛状の第1垂直偏向加速電極12aと櫛状の第2垂直偏向加速電極12bとが、個々の電子ビーム通過孔80をY軸方向に挟むように配置されている。
【0052】
第1水平偏向加速電極11a及び第2水平偏向加速電極11b、第1垂直偏向加速電極12a及び第2垂直偏向加速電極12bに印加する電圧を、電界放出型電子源アレイ9のエミッタ電極18及びゲート電極16に印加する電圧に同期して変化させることにより、同一のセルから放出された電子ビームのターゲット部14に対する入射位置を時間的に変化させることができる。以下にこれを説明する。
【0053】
図7は、本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源撮像装置において偏向加速電極8の作用を説明する図であり、(A)はターゲット部14に対する電子ビーム10の衝突位置と偏向加速電極8とを示した平面図、(B)は電子ビーム10の軌道をY軸と平行な方向に沿って見た側面図、(C)は電子ビーム10の軌道をX軸と平行な方向に沿って見た側面図である。ここでは、偏向加速電極8として、図6A及び図6Bに示したように、電極部8aのターゲット部14に対向する面に第1水平偏向加速電極11a及び第2水平偏向加速電極11bが配置され、電界放出型電子源アレイ部15に対向する面に第1垂直偏向加速電極12a及び第2垂直偏向加速電極12bが配置された偏向加速電極を用いる場合を説明する。図7(B)では、第1水平偏向加速電極11aを「X1」、第2水平偏向加速電極11bを「X2」と表示し、図7(C)では、第1垂直偏向加速電極12aを「Y1」、第2垂直偏向加速電極12bを「Y2」と表示している。図7(B)において、「E1」、「E2」は、Y軸と平行なストライプ状の複数のエミッタ電極18のうちの互いに隣り合う2つのエミッタ電極を示す。図7(C)において、「G1」、「G2」は、X軸と平行なストライプ状の複数のゲート電極16のうちの互いに隣り合う2つのゲート電極を示す。
【0054】
図8A,図8B,図8Cは、ある期間において各電極へ印加される電位波形を示したタイミングチャートである。図8A〜図8Cにおいて、G1,E1,E2,X1,X2,Y1,Y2は、それぞれ同じ符号が付された図7に示した電極への電位波形を示している。ここでは、複数のゲート電極16のうちゲート電極G1が選択されて、このゲート電極G1の電位が基準電位(例えば30V)よりも高い中位(例えば60V)に維持される場合を説明する。横軸は時間軸であり、時間が経過するにしたがって各電極に印加される電位波形は図示したように変化する。
【0055】
図8Aでは、ゲート電極G1に中位の電位が印加され、且つ、第1垂直偏向加速電極Y1に第2垂直偏向加速電極Y2よりも相対的に高電位が印加されている。この状態において、時刻TA1にてエミッタ電極E1の電位が基準電位(例えば30V)から低下(例えば0V)すると、ゲート電極G1とエミッタ電極E1との交点に位置するセルから電子ビーム10が放出される。第1垂直偏向加速電極Y1には第2垂直偏向加速電極Y2よりも相対的に高電位が印加されているので、図7(C)に示すように、Y軸方向には、電子ビーム10は、偏向加速電極8の近傍においてY軸の正の方向に偏向されて、軌道LAに沿って進む。この状態において、時刻TA1,TA2,TA3へと時間が経過するにしたがって、第1水平偏向加速電極X1に印加される電位は徐々に上昇し、第2水平偏向加速電極X2に印加される電位は徐々に減少するので、図7(B)に示すように、X軸方向には、電子ビーム10は、偏向加速電極8の近傍においてX軸の負の側から正の側へと時間が経過するにしたがって徐々に偏向されて、その軌道は軌道L1,L2,L3へと変化する。
【0056】
次に、ゲート電極G1、第1垂直偏向加速電極Y1、第2垂直偏向加速電極Y2の電位が上記のままで、時刻TA4にてエミッタ電極E1の電位が基準電位へ戻り、エミッタ電極E2の電位が基準電位(例えば30V)から低下(例えば0V)する。この結果、電子ビーム10が放出されるセルは、ゲート電極G1とエミッタ電極E2との交点に位置するセルへ変化する。この状態において、時刻TA4,TA5,TA6へと時間が経過するにしたがって、第1水平偏向加速電極X1に印加される電位は徐々に上昇し、第2水平偏向加速電極X2に印加される電位は徐々に減少するので、図7(B)に示すように、X軸方向には、電子ビーム10は、偏向加速電極8の近傍においてX軸の負の側から正の側へと時間が経過するにしたがって徐々に偏向されて、その軌道はL4,L5,L6へと変化する。
【0057】
以上の結果、図8Aの時刻TA1からTA6へと時間が経過するにしたがって、電子ビーム10がターゲット部14上に形成するスポットの位置は、X軸方向に図7(A)に示すPA1からPA6へと移動する。このようにして、相対的に低電位を印加するエミッタ電極を順に切り替えて同様の動作を行うことで、ターゲット部14上で電子ビーム10のスポットを、Y軸方向位置を一定にしたまま、X軸方向にターゲット部14の一端から他端まで移動させることができる。かくして、X軸方向に沿った1ラインの走査が完了する。
【0058】
次いで、図8Bに示すように、ゲート電極G1の電位を上記のままで、第1垂直偏向加速電極Y1及び第2垂直偏向加速電極Y2に同電位が印加される。
【0059】
この状態において、時刻TB1にてエミッタ電極E1の電位が基準電位(例えば30V)から低下(例えば0V)すると、ゲート電極G1とエミッタ電極E1との交点に位置するセルから電子ビーム10が放出される。第1垂直偏向加速電極Y1及び第2垂直偏向加速電極Y2には同電位が印加されているので、図7(C)に示すように、Y軸方向には、電子ビーム10は、偏向加速電極8の近傍において偏向されることなく、軌道LBに沿って進む。この状態において、時刻TB1,TB2,TB3へと時間が経過するにしたがって、第1水平偏向加速電極X1に印加される電位は徐々に上昇し、第2水平偏向加速電極X2に印加される電位は徐々に減少するので、図7(B)に示すように、X軸方向には、電子ビーム10は、偏向加速電極8の近傍においてX軸の負の側から正の側へと時間が経過するにしたがって徐々に偏向されて、その軌道は軌道L1,L2,L3へと変化する。
【0060】
次に、ゲート電極G1、第1垂直偏向加速電極Y1、第2垂直偏向加速電極Y2の電位が上記のままで、時刻TB4にてエミッタ電極E1の電位が基準電位へ戻り、エミッタ電極E2の電位が基準電位(例えば30V)から低下(例えば0V)する。この結果、電子ビーム10が放出されるセルは、ゲート電極G1とエミッタ電極E2との交点に位置するセルへ変化する。この状態において、時刻TB4,TB5,TB6へと時間が経過するにしたがって、第1水平偏向加速電極X1に印加される電位は徐々に上昇し、第2水平偏向加速電極X2に印加される電位は徐々に減少するので、図7(B)に示すように、X軸方向には、電子ビーム10は、偏向加速電極8の近傍においてX軸の負の側から正の側へと時間が経過するにしたがって徐々に偏向されて、その軌道はL4,L5,L6へと変化する。
【0061】
以上の結果、図8Bの時刻TB1からTB6へと時間が経過するにしたがって、電子ビーム10がターゲット部14上に形成するスポットの位置は、X軸方向に移動する。このようにして、相対的に低電位を印加するエミッタ電極を順に切り替えて同様の動作を行うことで、ターゲット部14上で電子ビーム10のスポットを、Y軸方向位置を一定にしたまま、X軸方向にターゲット部14の一端から他端まで移動させることができる。かくして、X軸方向に沿った1ラインの走査が完了する。
【0062】
次いで、図8Cに示すように、ゲート電極G1の電位を上記のままで、第1垂直偏向加速電極Y1に第2垂直偏向加速電極Y2よりも相対的に低電位が印加される。
【0063】
この状態において、時刻TC1にてエミッタ電極E1の電位が基準電位(例えば30V)から低下(例えば0V)すると、ゲート電極G1とエミッタ電極E1との交点に位置するセルから電子ビーム10が放出される。第1垂直偏向加速電極Y1には第2垂直偏向加速電極Y2よりも相対的に低電位が印加されているので、図7(C)に示すように、Y軸方向には、電子ビーム10は、偏向加速電極8の近傍においてY軸の負の方向に偏向されて、軌道LCに沿って進む。この状態において、時刻TC1,TC2,TC3へと時間が経過するにしたがって、第1水平偏向加速電極X1に印加される電位は徐々に上昇し、第2水平偏向加速電極X2に印加される電位は徐々に減少するので、図7(B)に示すように、X軸方向には、電子ビーム10は、偏向加速電極8の近傍においてX軸の負の側から正の側へと時間が経過するにしたがって徐々に偏向されて、その軌道は軌道L1,L2,L3へと変化する。
【0064】
次に、ゲート電極G1、第1垂直偏向加速電極Y1、第2垂直偏向加速電極Y2の電位が上記のままで、時刻TC4にてエミッタ電極E1の電位が基準電位へ戻り、エミッタ電極E2の電位が基準電位(例えば30V)から低下(例えば0V)する。この結果、電子ビーム10が放出されるセルは、ゲート電極G1とエミッタ電極E2との交点に位置するセルへ変化する。この状態において、時刻TC4,TC5,TC6へと時間が経過するにしたがって、第1水平偏向加速電極X1に印加される電位は徐々に上昇し、第2水平偏向加速電極X2に印加される電位は徐々に減少するので、図7(B)に示すように、X軸方向には、電子ビーム10は、偏向加速電極8の近傍においてX軸の負の側から正の側へと時間が経過するにしたがって徐々に偏向されて、その軌道はL4,L5,L6へと変化する。
【0065】
以上の結果、図8Cの時刻TC1からTC6へと時間が経過するにしたがって、電子ビーム10がターゲット部14上に形成するスポットの位置は、X軸方向に移動する。このようにして、相対的に低電位を印加するエミッタ電極を順に切り替えて同様の動作を行うことで、ターゲット部14上で電子ビーム10のスポットを、Y軸方向位置を一定にしたまま、X軸方向にターゲット部14の一端から他端まで移動させることができる。かくして、X軸方向に沿った1ラインの走査が完了する。
【0066】
以上のようにしてゲート電極G1を選択した場合の走査が終了する。その後、ゲート電極G1とY軸方向に隣り合うゲート電極G2を選択して、上記と同様の走査を行う。これを、全てのゲート電極18についてY軸方向に順に行うことで1フィールドの走査が完了する。
【0067】
このように、本実施の形態では、1つのセルから放出された電子ビーム10を偏向加速電極8を用いてX軸方向及びY軸方向に偏向することにより、電界放出型電子源アレイ部15の実際のセルの配置よりも高密度にターゲット部14を電子ビーム10で走査することができる。
【0068】
例えば、図8Aにおいてゲート電極G1とエミッタ電極E1との交点に位置するセルから電子ビームが放出されている場合において、時刻TA1,TA2,TA3において陽極電極2から出力される電気信号をサンプリングする。即ち、時間が経過するにしたがって電子ビーム10のターゲット部14に対する入射位置をX軸方向に移動させながら、1つのセルに対してX軸方向に異なる3地点で蓄積電荷を検出する。したがって、1つのセルに対してX軸方向に1地点で蓄積電荷を検出していた従来の撮像装置に比べて、本実施の形態によればX軸方向の解像度を3倍に向上させることができる。なお、1つのセルに対してサンプリングを行う回数は3回に限定されない。サンプリングのタイミングを変えることにより、2回にしても良いし、4回以上にしても良い。
【0069】
また、例えば、ゲート電極G1上に位置するセルから電子ビームが放出されている場合において、第1垂直偏向加速電極Y1及び第2垂直偏向加速電極Y2に印加する電位を図8A、図8B、図8Cのように3通りに変化させる。即ち、電子ビーム10のターゲット部14に対する入射位置をY軸方向に移動させて、1つのゲート電極16に対してY軸方向位置が異なる3ラインでターゲット部14を走査する。したがって、1つのゲート電極16に対して1ラインの走査を行っていた従来の撮像装置に比べて、本実施の形態によればY軸方向の解像度を3倍に向上させることができる。なお、1つのゲート電極16に対して走査を行うライン数は3に限定されない。第1垂直偏向加速電極Y1及び第2垂直偏向加速電極Y2に印加する電位の組み合わせを変えることにより、2にしても良いし、4以上にしても良い。
【0070】
以上の結果、本実施の形態によれば、電界放出型電子源アレイ部15の実際のセルの数以上に実質的な画素数を増加させることができる。従って、ターゲット部14から取り出される映像信号の実質的な映像周波数が高められるので、高解像度の画像を撮影することができる。また、同じ電界放出型電子源アレイ部15を用いながら、サンプリング周波数や偏向加速電極8に印加する電圧を変えることで、得られる画像の解像度を自由に設定することが可能である。
【0071】
更に、高解像度画像を得るために個々のセルを小さくする必要がないので、高解像度化してもターゲット部14に蓄積された電荷を読み出すのに必要な電子ビーム電流量を確保することができる。
【0072】
上記の説明では、電子ビーム10を偏向させるために真空容器内の電界放出型電子源アレイ部15とターゲット部14との間に偏向加速電極8を配置したが、電子ビーム10を偏向させるための手段はこれに限定されない。例えば、図9に示すように真空容器外に配置した偏向磁界を発生させる偏向装置23を用いることができる。図9において、24は、ゲート電極16に比べて相対的に高電位が印加されることにより電界放出型電子源アレイ部15のセルから放出された電子ビームを加速する機能を有する加速電極である。加速電極24には、偏向加速電極8と同様に電子ビームが通過する複数の電子ビーム通過孔がマトリクス状に配置されている。
【0073】
(実施の形態2)
本実施の形態2では、大画面化への適用例を説明する。
【0074】
電界放出型電子源撮像装置の大画面化は、例えば入射光としてX線を用いる場合に必要となる。X線は光学レンズを用いて集束して光電変換膜上に結像させることができない。従って、例えばレントゲンに代表される医療用のX線による画像を電界放出型電子源撮像装置を用いて撮影する場合には、被写体(例えば人体)と同等の大きさの光電変換膜が必要である。その結果、光電変換膜に入射する電子ビームを放出する電界放出型電子源アレイもこれと同等の大きさが必要となる。
【0075】
しかしながら、殆どの電界放出型電子源アレイは半導体製造工程を用いて半導体基板(またはガラス基板)上に作られることが多い。従って、単一の半導体基板上に大面積の電界放出型電子源アレイを形成することは、設備の大型化と、これに伴う設備償却費の増大とを招き、コスト面において不利である。
【0076】
また、半導体基板上での単位面積あたりの欠陥発生率が一定であると仮定すれば、電界放出型電子源アレイを大画面化するために半導体基板を大きくすればするほど、1枚の半導体基板に発生する欠陥数は増大するので、電界放出型電子源アレイの良品率は加速度的に減少する。そのため、不良品の破棄による生産歩留まりの低下を招き、良品のコストが増大する。
【0077】
本実施の形態2はこのような問題を解決する。
【0078】
図10は、本発明の実施の形態2に係る電界放出型電子源撮像装置の側面断面図である。図11は本実施の形態2に係る電界放出型電子源撮像装置の分解斜視図である。これらの図において、実施の形態1と同じ構成及び作用を有する部材には同一の符号を付してそれらについて説明を省略する。
【0079】
本実施の形態2では、背面パネル5の内面上に、電界放出型電子源アレイ(図示を省略)がそれぞれ形成された4枚の半導体基板6s,6t,6u,6vが並んで設置されており、4枚の半導体基板6s,6t,6u,6v上に、スペーサー部を一体に備える4つの偏向加速電極8s,8t,8u,8vがそれぞれ設置固定されている。即ち、本実施の形態2では、電界放出型電子源アレイがそれぞれ個別に作成された4枚の半導体基板6s,6t,6u,6vを繋ぎ合わせて大面積の電界放出型電子源アレイ部15を構成している。図11では、4つの偏向加速電極8s,8t,8u,8v、背面パネル5と側面外周器4とを接合するフリットガラス7a、側面外周器4と前面パネル1とを接合するインジウム等からなる金属リング7bの図示を省略している。また、図10では半導体基板6u,6v及び偏向加速電極8u,8vの図示を省略している。
【0080】
一般に、電界放出型電子源アレイが形成された半導体基板を隣り合わせて配置すると、その境界においてセルが欠落してしまう。従って、該境界に対応する位置の画素が欠落した画像が撮影されてしまう。
【0081】
図12は、本実施の形態2に係る電界放出型電子源撮像装置において、X軸方向に隣り合う半導体基板6s,6t間の境界近傍での電子ビーム10の軌道を示した部分拡大側面断面図である。本実施の形態2では、ターゲット部14を電子ビーム10でX軸方向に走査する場合、隣り合う半導体基板6s,6tの境界近傍において、偏向加速電極8sは軌道10sで示すように電子ビームをX軸方向に境界の側(X軸の正の側)に偏向させ、偏向加速電極8tは軌道10tで示すように電子ビームをX軸方向に境界の側(X軸の負の側)に偏向させる。これと同様に、Y軸方向に隣り合う半導体基板の境界近傍でも、それぞれに対応する偏向加速電極は電子ビームをY軸方向に境界の側に偏向させる。
【0082】
この結果、電界放出型電子源アレイがそれぞれ形成された複数の半導体基板を同一平面上に並べて配置することにより、隣り合う半導体基板間の境界にセルが存在しない領域が発生しても、電子ビームをこの境界側に偏向させることで、画素の欠落(画像の切れ目)が実質的に目立たない画像を撮影することが可能になる。
【0083】
また、大画面化する場合には、背面パネル5上に搭載する半導体基板の数を増やせば足り、個々の半導体基板を大型化する必要はない。従って、歩留まりの良い低コストの半導体基板を用いることができる。よって、X線撮影などを行う場合に必要な大画面化と低コスト化とを実現できる。
【0084】
以上のように、本実施の形態2によれば、撮影画像の劣化を招くことなく、大画面化と低コスト化とを両立させることができる。
【0085】
図10及び図11では、4枚の半導体基板6s,6t,6u,6vを用いる例を示したが、本発明はこれに限定されず、使用する半導体基板の数は必要なターゲット部14の大きさ等を考慮して適宜変更することができる。
【0086】
上記のように電界放出型電子源アレイがそれぞれ形成された複数の半導体基板を用いて電界放出型電子源撮像装置を大画面化する場合、出力される映像信号の雑音特性を良好にする等の目的で、ターゲット部も複数に分割することが好ましい場合がある。
【0087】
この場合、複数の半導体基板の配置及び分割された複数のターゲット領域の配置によってはアセンブリー誤差などの問題が生じる可能性がある。
【0088】
この問題を解消するためには、映像信号の読み出しを以下のように行うことが好ましい。
【0089】
例えば、図13に示すように、2枚の半導体基板6a,6bをY軸方向に並べ、ターゲット部14としてY軸方向に3分割された3つのターゲット領域14a,14b,14cを形成する。
【0090】
そして、半導体基板6a,6b上のセルから放出された電子ビームでターゲット領域14a,14b,14cを図13の紙面の上から下に、X軸に平行なラインLa1,La2,La3,La4,Lb1,Lb2,Lb3,Lb4に沿って順次走査する。ここで、ラインLa1,La2,La3,La4を走査する電子ビームは半導体基板6a上のセルから放出され、ラインLb1,Lb2,Lb3,Lb4を走査する電子ビームは半導体基板6b上のセルから放出される。この走査では、電子ビームを上述した手法により、X軸方向及びY軸方向に偏向させる。
【0091】
ターゲット領域14aの上端近傍をラインLa1に沿って走査する場合、及び、ターゲット領域14aのY軸方向の中央近傍をラインLa2に沿って走査する場合には、ターゲット領域14aから映像信号を得る。
【0092】
ターゲット領域14aとターゲット領域14bとの境界近傍をラインLa3に沿って走査する場合には、ターゲット領域14a及びターゲット領域14bから映像信号を得る。
【0093】
ターゲット領域14bのY軸方向の中央近傍をラインLa4,Lb1に沿って走査する場合には、ターゲット領域14bから映像信号を得る。
【0094】
ターゲット領域14bとターゲット領域14cとの境界近傍をラインLb2に沿って走査する場合には、ターゲット領域14b及びターゲット領域14cから映像信号を得る。
【0095】
ターゲット領域14cのY軸方向の中央近傍をラインLb3に沿って走査する場合、及び、ターゲット領域14cの下端近傍をラインLb4に沿って走査する場合には、ターゲット領域14cから映像信号を得る。
【0096】
このように、走査するラインの位置に応じて映像信号の読み出しを行うターゲット領域を変え、隣り合うターゲット領域間の境界近傍に沿って走査する場合には、この隣り合うターゲット領域の両方から映像信号を得ることにより、複数の半導体基板と複数のターゲット領域とのXY面内でのアセンブリー誤差(特にZ軸回りの回転誤差)がたとえ生じても、映像信号の読み出しを何らの問題なく行うことが出来る。
【0097】
上述した実施の形態1,2では、先端が先鋭な冷陰極素子が形成され、その周りに絶縁層及びこの絶縁層上にゲート電極が形成され、冷陰極素子とゲート電極との間に電圧を印加して冷陰極素子の先端から電子放出を行なうスピント(Spindt)型の電界放出型電子源を備えた電界放出型電子源撮像装置を説明したが、本発明の電界放出型電子源撮像装置はこれに限定されない。例えば、カソード電極とゲート電極との間に絶縁層を形成し、絶縁層に電圧を印加してトンネル効果により電子放出を行なうMIM(Metal Insulator Metal)型、カソード電極とエミッタ電極との間に微小ギャップを設け、これら電極間に電圧を印加して微小ギャップから電子放出を行なうSCE(Surface Conduction Electron Source)型、あるいは電子源にDLC(Diamond Like Carbon)やCNT(Carbon Nanotube)等の炭素系材料を用いた電界放出型電子源を備えた電界放出型電子源撮像装置であっても良い。
【0098】
CNT等の炭素系材料を用いた電界放出型電子源の一例を図14に示す。
【0099】
基板上に、無数のカーボンナノチューブ(CNT)からなるCNT層59が形成されている。CNT層59を取り囲むように、集束電極60が形成されている。CNT層59の上方にはCNT層59から電子を引き出すためのゲート電極61が形成されている。ゲート電極61には、無数の電子ビーム通過孔が形成されている。カーボンナノチューブからなるセルの平面視形状は四角形である。複数のセルがX軸方向及びY軸方向にマトリックス状に配置されている。Y軸方向に並んだ複数のセルは互いに電気的に接続されてエミッタラインを形成する。ゲート電極61は、X軸方向に並んだ複数のセル上に配置されてゲートラインを形成する。複数のエミッタラインのうちの1つと、複数のゲートラインのうちの1つを選択することにより、選択されたエミッタラインとゲートラインとの交点に位置するセルから電子ビーム10が放出される。
【産業上の利用可能性】
【0100】
本発明によれば、電界放出型電子源を用いた電界放出型電子源撮像装置の高精細化及び大面積化を達成することができるので、その工業的意味は大きく、広範囲に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1は、本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源撮像装置の側面断面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源撮像装置の分解斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源撮像装置に搭載される電界放出型電子源アレイの側面断面図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源撮像装置に搭載される偏向加速電極の斜視図である。
【図5】図5は、本発明の実施の形態1に係る偏向加速電極の電極部の一例の分解斜視図である。
【図6A】図6Aは、本発明の実施の形態1に係る偏向加速電極の電極部の別の例の第1面の斜視図である。
【図6B】図6Bは、本発明の実施の形態1に係る偏向加速電極の電極部の別の例の第2面の斜視図である。
【図7】図7は、本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源撮像装置において偏向加速電極の作用を説明する図であり、(A)はターゲット部に対する電子ビームの衝突位置と偏向加速電極とを示した平面図、(B)は電子ビーム軌道をY軸と平行な方向に沿って見た側面図、(C)は電子ビーム軌道をX軸と平行な方向に沿って見た側面図である。
【図8A】図8Aは、本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源撮像装置において、偏向加速電極によって電子ビームをY軸の正の方向に偏向させる場合の各電極へ印加される電位波形を示したタイミングチャートである。
【図8B】図8Bは、本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源撮像装置において、偏向加速電極によって電子ビームをY軸方向に偏向させない場合の各電極へ印加される電位波形を示したタイミングチャートである。
【図8C】図8Cは、本発明の実施の形態1に係る電界放出型電子源撮像装置において、偏向加速電極によって電子ビームをY軸の負の方向に偏向させる場合の各電極へ印加される電位波形を示したタイミングチャートである。
【図9】図9は、本発明の実施の形態1に係る別の電界放出型電子源撮像装置の側面断面図である。
【図10】図10は、本発明の実施の形態2に係る電界放出型電子源撮像装置の側面断面図である。
【図11】図11は、本発明の実施の形態2に係る電界放出型電子源撮像装置の分解斜視図である。
【図12】図12は、本発明の実施の形態2に係る電界放出型電子源撮像装置において、隣り合う半導体基板間の境界近傍での電子ビーム軌道を示した部分拡大側面断面図である。
【図13】図13は、本発明の実施の形態2に係る電界放出型電子源撮像装置において、複数の半導体基板及び複数のターゲット領域の配置の一例を示した平面図である。
【図14】図14は、本発明に係る電界放出型電子源撮像装置に搭載される別の電界放出型電子源アレイの側面断面図である。
【図15】図15は、従来の電界放出型電子源撮像装置の側面断面図である。
【符号の説明】
【0102】
1 前面パネル
2 陽極電極
3 光電変換膜
4 側面外周器
5 背面パネル
6,6a,6b,6s,6t,6u,6v 半導体基板(電界放出型電子源アレイ基板)
7 真空封着材
7a フリットガラス
7b 金属リング
8,8s,8t,8u,8v 偏向加速電極
8a 電極部
8a1 第1電極板
8a2 第2電極板
8b スペーサ部
9 電界放出型電子源アレイ
10 電子ビーム
11a 第1水平偏向加速電極
11b 第2水平偏向加速電極
12a 第1垂直偏向加速電極
12b 第2垂直偏向加速電極
14 ターゲット部
14a,14b,14c ターゲット領域
15 電界放出型電子源アレイ部
16 ゲート電極
17 絶縁層
18 エミッタ電極
19 冷陰極素子
23 偏向装置
24 加速電極
43 電極
59 CNT層
60 集束電極
61 ゲート電極
80 電子ビーム通過孔
111 入射光
112 光電変換膜
113 透光性導電膜
114 ターゲット部
115 前面パネル
116 側面外周器
117 背面パネル
118 真空容器
119,133 封着材料
120 メッシュ電極
124 冷陰極素子
125 エミッタ電極
126 絶縁層
128 ゲート電極
129 電界放出型電子源アレイ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子源セルが配置された電界放出型電子源アレイ部と、前記電界放出型電子源アレイ部に対向して配置され、入射光を電気信号に変換する光電変換膜を含むターゲット部とを備え、前記電子源セルから放出された電子ビームが前記ターゲット部に入射して前記ターゲット部に蓄積された電荷に応じた電気信号が映像信号として取り出される電界放出型電子源撮像装置であって、
前記ターゲット部から取り出される前記映像信号の実質的な映像周波数が高められるように、前記電子ビームの前記ターゲット部に対する入射位置を時間の経過とともに変化させることを特徴とする電界放出型電子源撮像装置。
【請求項2】
更に、前記電界放出型電子源アレイ部と前記ターゲット部との間に、前記電子源セルから放出された前記電子ビームを偏向させ且つ加速する機能を有する偏向加速電極を備える請求項1に記載の電界放出型電子源撮像装置。
【請求項3】
前記電界放出型電子源アレイ部が、同一平面上に並べて配置された複数の電界放出型電子源アレイ基板からなる請求項1に記載の電界放出型電子源撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図8C】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−262789(P2008−262789A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−104172(P2007−104172)
【出願日】平成19年4月11日(2007.4.11)
【出願人】(503217783)MT映像ディスプレイ株式会社 (176)
【Fターム(参考)】