説明

電界結合式電気錠

【課題】給電効率に優れ取付けが容易な電気錠を提供することを目的とする。
【解決手段】高周波電圧発生部4と、当該高周波電圧発生部4で生じた高周波電圧が供給される第1活電電極A1とをドア枠3の側に設けると共に、ドア1の側に、ドア1を閉扉した際に第1活電電極A1に近接対向して第1活電電極A1から生じる電界を検出する第2活電電極A2と、検出された電界に基づいて電力を蓄える蓄電ユニット6と、電力により駆動される錠部2と、を設け、ドア枠3の側から第1活電電極A1および第2活電電極A2を介してドア1の側に至る活電経路と、これとは別にドア枠3の側とドア1の側とを電気的に接続する受動経路を設けてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触式の給電機構を備えた電気錠に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ドアの電気錠を構成するのに、錠部をドアの側に設け、この錠部に駆動電流を供給する駆動電源をドア枠の側に設けて、ドア枠とドアとを非接触な状態に維持したまま錠部に電力を供給するものがある。
例えば、従来の電気錠として、以下の特許文献1に示す技術がある。
この電気錠は、ドアとドア枠又は壁などとの間の配線を不要とし、且つ、見栄えが良い電気錠の提供を目的とするもので、次のような構成を有する。
即ち、この電気錠は、ドアに設置された電気錠と、ドア枠又は壁等に設置され電気的な手段により電気錠の施錠や解錠を決定し電気錠を制御するための制御信号を出力する施解錠決定手段を備えている。電気錠の施錠並びに解錠は、電気錠制御部が、施解錠決定手段からの制御信号に基づいて行う。電気錠制御部と施解錠決定手段との間の信号伝送は信号伝送手段が行う。この信号伝送手段は、例えばドアとドア枠とに夫々設けられたコイル間の電磁誘導を利用して行われる。
この結果、ドアとドア枠又は壁などとの間に電源供給や信号伝送のための電気ケーブルを配線する必要がなく、電気ケーブルの断線事故を防止し、施解錠決定手段がドア枠や壁などに設置されているので、ドアに施解錠決定手段が設置されている場合に比べて、ドアの外観を良くし得るとの記載がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10―25935号公報 (図1、〔0008〕段落)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来の電気錠のごとく電磁誘導方式のものでは、ドア枠の側とドアの側とに互いに正確に位置合わせされた一対の誘導コイルを配置する必要がある。ただし、両者の位置関係が正確でない場合、給電効率が極端に悪くなるという欠点があった。
また、ドアやドア枠は金属で構成される場合も多いが、電磁誘導方式の場合、金属製のドアに磁場が吸収されてしまい、やはり給電効率が低下する。適用可能なドアの種類が制限されてしまうことも汎用性に欠けることとなって好ましくない。
以上のごとく、従来の非接触式の給電機構を備えた電気錠は解決すべき課題が多く存在する。
【0005】
そこで本発明は係る従来の課題を解決し、給電効率に優れ取付けが容易な電気錠を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(第1特徴構成)
本発明に係る電界結合式電気錠の特徴構成は、高周波電圧発生部と、当該高周波電圧発生部で生じた高周波電圧が供給される第1活電電極とをドア枠の側に設けると共に、ドアの側に、前記ドアを閉扉した際に前記第1活電電極に近接対向して前記第1活電電極から生じる電界を検出する第2活電電極と、前記検出された電界に基づいて電力を蓄える蓄電ユニットと、前記電力により駆動される錠部と、を設け、
前記ドア枠の側から前記第1活電電極および前記第2活電電極を介して前記ドアの側に至る活電経路と、これとは別に前記ドア枠の側と前記ドアの側とを電気的に接続する受動経路を設けた点にある。
【0007】
(作用効果)
本構成のごとく電界結合式の給電機構を用いることで、第1活電電極と第2活電電極との間には必要な対向面積を確保できればよく、従来の電磁誘導方式における送受電コイルどうしの芯合わせのように厳密な位置合わせを強いられるものではない。よって、ある程度の建付け誤差が避けられないドアに対しても電界結合式の給電機構は適切に用いることができる。
また、第1活電電極と第2活電電極とは互いに対向する構造であれば良く、省スペースで且つ取り付けそのものが簡単になる。
さらに、電界は金属を過熱することがないから、金属で構成されるドア枠やドアに対しても電界給電方式の電気錠は適用可能である。
このように、本構成の電気錠であれば、給電効率に優れ、取付けが容易な電気錠を得ることができる。
【0008】
(第2特徴構成)
本発明に係る電界結合式電気錠は、前記受動経路が、前記ドア枠の側に設けられた第1受動電極と、前記ドアを閉扉した際に前記第1受動電極に近接対向するよう前記ドアの側に設けられた第2受動電極とを備えて構成することができる。
【0009】
(作用効果)
本構成のごとく、受動経路に第1受動電極と第2受動電極とを備えることで、ドアの開閉状態が判別できるようになる。即ち、ドアが閉じ状態にあるときは、活電経路に通電して活電電極間に電界が形成されると、それに付随して受動電極どうしの間にも電界が形成される。一方、ドアが開き状態にある場合には、活電電極どうしは離間するから電界結合は行われず、受動電極間にも電界は形成されない。よって、受動電極間の電界の形成状況をモニターすることで、ドア開閉状態をドア枠の側で判別することができる。
【0010】
(第3特徴構成)
本発明に係る電界結合式電気錠は、前記錠部を格納すると共に前記第2受動電極と電気的に接続された金属ケースを備えて構成することができる。
【0011】
(作用効果)
本構成のごとく、第2受動電極を錠部の金属ケースに電気的に接続することで、金属ケースのうち特にドア枠の側に向く部位などは受動電極の一部として機能させることができる。その結果、受動電極が備える電界検出機能をさらに向上させることができる。
【0012】
(第4特徴構成)
本発明に係る電界結合式電気錠は、前記ドア枠の側に於いて、前記錠部から出退する係止部を受け止める被係止部を備えたプレート部材と、前記第1活電電極とを一体に構成すると共に、当該プレート部材の一部を前記第1受動電極として用い、前記ドアの側に於いて前記錠部および前記第2活電電極を格納する金属ケースを備え、当該金属ケースの一部を前記第2受動電極として用いることができる。
【0013】
(作用効果)
このようにドア枠の側に装着する部材とドアの側に装着する部材とを夫々一体化することで、錠としての機能を有する錠部とプレート部材との位置合わせ、および、電力供給機能を有する第1活電電極と第2活電電極との位置合わせ、さらには、電界形成を判別する機能を有する第1受動電極と第2受動電極との位置合わせを同時に行うことができる。よって取付作業効率に優れた電気錠を得ることができる。
【0014】
(第5特徴構成)
本発明に係る電界結合式電気錠は、前記第1活電電極を前記第1受動電極が覆い、前記第2活電電極を前記第2受動電極が覆うように構成することができる。
【0015】
(作用効果)
本構成のごとくドア枠の側及びドアの側の夫々の部位に於いて、活電電極が受動電極に覆われることで、活電電極に外乱が及ぶのを有効に防止することができる。この結果、電界強度が強く維持されて給電効率に優れた電気錠を得ることができる。
【0016】
(第6特徴構成)
本発明に係る電界結合式電気錠は、前記ドア枠および前記ドアを金属で構成し、前記ドア枠の一部を前記第1受動電極として用いるとともに、前記ドアの一部を前記第2受動電極として用いることができる。
【0017】
(作用効果)
本構成のごとく、受動電極をドア枠の全体あるいはドアの全体で構成することで、受動電極の面積を非常に大きく確保することができる。このため、ドアとドア枠の側に設けた活電電極を広い範囲で覆うこととなり、外部にノイズ源がある場合でもノイズの影響が大幅に低減される。よって、給電特性が非常に安定した電気錠を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態に係る電界結合式電気錠の概要を示す斜視図。
【図2】給電ユニットの概要を示す説明図。
【図3】第1実施形態の電気錠の等価回路を示す説明図。
【図4】第2実施形態に係る電界結合式電気錠の概要を示す斜視図。
【図5】第2実施形態の電気錠の等価回路を示す説明図。
【図6】第3実施形態に係る電界結合式電気錠の概要を示す斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
〔第1の実施形態〕
(概要)
本発明に係る第1の実施形態を図1乃至図3を用いて説明する。
本発明に係る電界結合式電気錠K(以下、単に「電気錠」と称する)は、ドア1に設けた錠部2に対してドア枠3の側から電力を供給して開閉動作させるものである。電力の供給は、互いに対向配置した一対の電極間に高周波電圧を印加することで発生する電界を利用する。この方式は、従来から存在する、例えば、対向配置させた一対のコイルを用いる電磁誘導方式の電気錠とは給電の仕組みや装置構成が全く異なる。
【0020】
本実施形態に係る電気錠Kの構成を図1に示す。併せて、当該電気錠Kの構成を示すブロック図を図2に示す。ドア枠3の側には、高周波電圧発生部4と第1活電電極A1とを有する送電ユニットU1を設けてある。高周波電圧発生部4は、通常の家庭用交流電流などを用いてさらに周波数の高い高周波電圧を発生させるものである。第1活電電極A1は、この高周波電圧発生部4で生成した高周波電圧をドア1の側に供給する電極である。
【0021】
ドア1の側には、電力によって駆動される錠部2と、前記第1活電電極A1からの電力を錠部2に伝達する第2活電電極A2を有する受電ユニットU2が設けられている。受電ユニットU2としては、主に、前記第2活電電極A2と、この第2活電電極A2で受け取った交流電圧を直流に変換するAC/DCコンバータ5と、電力を蓄える蓄電ユニット6とを備えている。
尚、錠部2とは、主に施錠・解錠に際して錠部2の側に設けた係止部7を作動させるモータやドアノブ8等の機構部を含むユニット全体をいう。ドア枠3の側には、錠部2の側から突出した係止部7を受け止める被係止部9が設けてあるが、広義においてはドア枠3の側の部材も含めて錠部2という。
【0022】
(活電電極)
ドア枠3の側の送電ユニットU1からドア1側の受電ユニットU2に至る給電経路を活電経路10という。一方、これと並行してドア枠3の側とドア1の側とを電気的に接続する経路を受動経路11という。
ここで説明する活電電極は、上記活電経路10の一部を構成する。活電電極には、ドア枠3の側に設けた第1活電電極A1と、ドア1の側に設けた第2活電電極A2とがある。図1に示すごとくこれら活電電極は、所定面積の平板状の部位を有する。第1活電電極A1と第2活電電極A2との間には、活電経路10に高周波電圧を印加した場合に極性の異なる電界が交互に発生する。この電界の強さに応じてドア1の側に電力が供給される。よって、第1活電電極A1および第2活電電極A2の対向面積は、供給する電力の大きさ等に応じて適宜変更することが可能である。
【0023】
電界結合方式では、活電電極どうしの対向面がある程度確保できていれば、従来の電磁誘導方式の電磁コイルのごとく双方の位置合わせを厳密に行う必要はない。ただし、双方の活電電極どうしを正確に位置合わせすることは両電極間の給電効率の良否に影響する。よって、双方の電極は極力正確に位置合わせするのが望ましい。
また、一方の活電電極を大きく形成することも可能である。しかし、両活電電極間に形成される電界の強さは小さい方の電極面積で決定されるから、位置合わせが正確になされるならば一方の電極面積を敢えて大きくする必要はない。
【0024】
(受動電極)
第1活電電極A1と第2活電電極A2との間で電界結合を形成するためには、これら活電経路10と並行して受動経路11を形成しなければならない。図1には、受動経路11の一部を構成する受動電極を示してある。ここでは、受動電極として、ドア枠3の側に設ける第1受動電極B1と、ドア1の側に設ける第2受動電極B2とを備えた例を示す。図1では、第1受動電極B1および第2受動電極B2は、互いに対向近接配置された第1活電電極A1と第2活電電極A2とを対向方向外側から挟むように配置してある。また、第1受動電極B1と第2受動電極B2とは、第1活電電極A1あるいは第2活電電極A2とほぼ同じ大きさに形成してある。
【0025】
受動電極は、主には、活電経路10に高周波電圧を印加した際に、電界結合が確実に発生しているか否かを検知する検知機能を有する。活電電極間に電界が形成されると、それに付随して受動電極間にも電界が形成される。よって、この受動電極間の電圧をモニタすることで、活電電極間で電界が形成されたか否か、即ち、ドア1が閉じ状態にあるか開き状態にあるかをドア枠3の側で判別することができる。
【0026】
尚、受動電極の大きさは、図1のごとく活電電極と必ずしも同じ大きさである必要はない。受動電極の大きさは例えば以下の観点から適宜決定することができる。
【0027】
一つは、形成される電界の安定性の観点である。受動電極は面積が広いほど第1受動電極B1と第2受動電極B2との間に形成される電界は強くなる。よって、ある程度の面積を有することで上記電界発生の検知機能が向上する。また、面積が大きい分、双方の受動電極を離間させても良いから、ドア1の電気錠Kを構成する場合にはドア1の建付け誤差の吸収範囲が広くなって好ましい。
【0028】
もう一つは活電電極のシールド効果の観点である。図1に示すごとく、第1受動電極B1および第2受動電極B2は、第1活電電極A1と第2活電電極A2とを挟む状態に配置してある。これにより、双方の活電電極にノイズが載るのを防止している。この点においては、夫々の受動電極は、近接して配置される活電電極よりも大きなものであるとノイズの遮蔽効果が高まって好ましい。
【0029】
さらに、シールド効果を高めるためには、例えば、図1において、第1受動電極B1あるいは第2受動電極B2を格納しているケース12を金属製とし、夫々の受動電極とケース12とを電気的に連通させる。これにより、第1活電電極A1あるいは第2活電電極A2は、略直方体をしたケース12の一方面に露出し、これを取り囲む他の五面はケース12の金属表面が覆うこととなる。本構成とすることで、夫々の活電電極に周囲からのノイズが載るのを効果的に阻止することができる。この形態では、ケース12の底面、即ち、ドア枠3に対向する二面のうちドア枠3から遠い側の面が受動電極となり、施錠解錠の状態を判別するセンサとして機能する。また、当該底面を含む五つの面、換言すれば、第2活電電極A2を有するドア枠3の側に向く面を除く五つの面は、第2活電電極A2に対するノイズ遮断機能を発揮することとなる。
【0030】
(蓄電ユニット)
図1に示すごとくドア1の側には蓄電ユニット6を設けてあり、この蓄電ユニット6に対してドア枠3の側から電力を供給して蓄電ユニット6を充電する。例えば、ドア枠3の側に設けた図外の100V交流電源からドア1の側に電力を供給し、AC/DCコンバータ5を介して交流を直流に変換したのち蓄電ユニット6に電力を蓄える。この蓄電は、ドア1が閉じ状態にあるとき、即ち、第1活電電極A1と第2活電電極A2とが対向位置にあるときに行われる。
【0031】
蓄電ユニット6に蓄えられた電力は、例えばドア1を開く際のモータ駆動に用いられる。解錠操作は、例えば錠部2に設けた操作ボタン13により行う。解錠動作によって蓄電ユニット6の電力が消費されても、順次、ドア枠3の側から電力が供給されるので、蓄電ユニット6は常に満充電状態を保つことができる。蓄電手段としては、充放電可能な二次電池やコンデンサユニットなどを用いることができる。
【0032】
(錠部)
本実施形態に係る錠部2は、図1に示すごとく、送電ユニットU1および受電ユニットU2に隣接して設けてある。当該錠部2のケース12は金属で構成してある。この錠部2は受電ユニットU2の金属製のケース15に電気的に接続しておく。これにより、ケース12のうち特にドア枠3の側に向く部位などは受動電極の一部として機能するから、受動電極が備える電界検出機能とシールド機能とがさらに向上する。
【0033】
(実施例)
本発明の電気錠Kは具体的には以下のように実施することができる。第1・第2活電電極A1,A2および第1・第2受動電極B1,B2として、ドアの厚みに収まる幅の金属プレートを用い、これを図1に示すごとく、平面方向が互いに平行となるように四枚のプレートを配置した。
これらのうち、ドア枠3の側の第1受動電極B1は、ドア枠3に固定されて被係止部9としての孔部を備えたプレート部材14に電気的に接続した。一方、ドア1の側の第2受動電極B2は、錠部2の金属ケース12に電気的に接続した。
【0034】
電源として例えば一般家庭用の100V交流電源をスイッチング素子を用いた高周波電圧発生部4で変換し、高周波・高電圧を第1活電電極A1と第2活電電極A2との間に発生させて電界結合状態とした。この周波数および電圧を調節することにより、ドアとドア枠との間の隙間(約8mm)を電力伝送するのに最適な制御を行った。
【0035】
高周波電圧発生部4からは、第1活電電極A1に対して常に或いは定期的に高周波の電圧が印加される。よって、ドア1が閉じ状態にある場合には、受動電極の側でも電界が周期的に変化する。逆に、ドア1が開き状態にある場合には、活電電極どうしあるいは受動電極どうしが離間するから、夫々の間の部位に電界は発生しない。よって、電圧の周期的変化の有無を送電ユニットU1の側でモニタすることでドア1の開閉状態を判別することができる。
【0036】
〔第1の別実施形態〕
上記実施形態のごとく、受動経路11に受動電極を備えた電気錠Kであれば、通電回路が確実に確保できるから木製のドア1にも適用可能である。しかし、図4、図5に示すごとく、ドア1が金属製の場合には、上記受動電極は必ずしも必要ではない。つまり、ドア枠3およびドア1が金属で構成される場合、ドア1を閉めた状態では、ドア枠3の端面とドア1の端面との間に互いに平行な対向面が形成される。この面を受動電極として利用する。よって、送電ユニットU1は第1活電電極A1を備えると共に、上記第1の実施形態における第1受動電極B1に代えて、当該第1受動電極B1をに接続していた配線をドア枠3に接地する構成とすると好適である。
【0037】
一方、ドア1の側でも、受電ユニットU2は第2活電電極A2を備えると共に、上記第1の実施形態における第2受動電極B2に代えて、当該第2受動電極B2に接続していた配線をドア1に接地する構成とすると好適である。これらの等価回路を図5に示す。
【0038】
このような構成によっても、電界結合式の電気錠Kを構成することができる。ただし、本構成の場合、ドア1の開閉状態をドア枠3の側で判別することは困難となる。つまり、受電電極として機能するドア枠3あるいはドア1は、その対向面の面積、あるいは、金属ボリュームが極めて大きい。そのため、活電電極どうしの間に形成された電界に対応して、これらドア枠3とドア1との間に電界が形成されたとしても、電圧変化の測定はドア枠3などの一箇所に於いてされるから、当該位置で測定できる電圧変化は極めて小さいものとなる。
【0039】
ただし、このことは、外部からノイズが載るような場合には、ノイズの影響が希釈されるから、ドア枠3やドア1は非常に安定した受動電極となる。つまり、活電電極のシールド効果の高い電気錠Kを得ることができる。
【0040】
〔第2の別実施形態〕
送受電ユニットU1,U2および錠部2の金属ケース12等は、例えば図6に示すように、それらを一体に形成することができる。具体的には、ドア枠3の側に設ける第1活電電極A1及び高周波電圧発生部4は金属ケース12の中に併せて組み込み、この金属ケース12に錠の被係止部9も一体形成する。ドア枠3の側の第1受電電極は、錠の被係止部9を構成するプレート状の部位16をそのまま利用する。
【0041】
一方、ドア1の側に設ける第2活電電極A2及び錠部2、蓄電ユニット6等は共通の金属ケース12に一体的に組み込む。第2受動電極B2は、金属ケース12の側面のうち係止部7が出退する面、即ち、ドア枠3の側に対向する面部をそのまま利用する。
【0042】
このようにドア枠3の側に装着する部材と、ドア1の側に装着する部材とを一体化することで、錠部2の係止部7と被係止部9との位置合わせと、送受電ユニットU1,U2の位置合わせとを同時に行えるため電気錠Kの取付効率が向上する。
【0043】
〔第3の別実施形態〕
上記実施形態では、第1受動電極B1及び第2受動電極B2を設けることでドア1の開閉状態を判別できる例を示した。それに加え、例えば、以下の構成を備えることで、錠の施解錠状態をも判断することが可能となる。このような構成は集合住宅などに用いると便利な場合がある。
【0044】
即ち、図2に示すごとく、例えば、AC/DCコンバータ5と電気錠Kとの間に、電気錠Kに対して施解錠指令を出力可能な施解錠判別部17を設けておく。この施解錠判別部17に対して、ドア枠3の側に設けた施解錠管理端末18から施錠指令や解錠指令を入力し、これにより、例えば第1活電電極A1に入力する高周波電圧の周波数を変化させる。この周波数の変化を施解錠判別部17が認識し、電気錠Kに施錠指令あるいは解錠指令を送信する。同時に、施解錠判別部17は、当該判別部の内部に有する例えば図外のオンオフ回路を連続的に動作させる。このオンオフの切り替わりは受動電極間に生じる電界に影響し、施解錠管理端末18でこれを検知して電気錠Kの施解錠状態を認識することができる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明に係る電気錠は、建物のドアの他、自動車或いは電車のドア、更には冷蔵庫や自動販売機のドアなど錠部の施錠・解錠を電気的に行うものであれば何れのドアに対しても適用可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 ドア
2 錠部
3 ドア枠
4 高周波電圧発生部
6 蓄電ユニット
7 係止部
9 被係止部
10 活電経路
11 受動経路
12 錠部の金属ケース
14 プレート部材
15 ケース
A1 第1活電電極
A2 第2活電電極
B1 第1受動電極
B2 第2受動電極
K 電気錠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高周波電圧発生部と、当該高周波電圧発生部で生じた高周波電圧が供給される第1活電電極とをドア枠の側に設けると共に、
ドアの側に、
前記ドアを閉扉した際に前記第1活電電極に近接対向して前記第1活電電極から生じる電界を検出する第2活電電極と、
前記検出された電界に基づいて電力を蓄える蓄電ユニットと、
前記電力により駆動される錠部と、を設け、
前記ドア枠の側から前記第1活電電極および前記第2活電電極を介して前記ドアの側に至る活電経路と、これとは別に前記ドア枠の側と前記ドアの側とを電気的に接続する受動経路を設けてある電界結合式電気錠。
【請求項2】
前記受動経路が、
前記ドア枠の側に設けられた第1受動電極と、前記ドアを閉扉した際に前記第1受動電極に近接対向するよう前記ドアの側に設けられた第2受動電極とを備えている請求項1に記載の電界結合式電気錠。
【請求項3】
前記錠部を格納すると共に前記第2受動電極と電気的に接続された金属ケースを備えている請求項2に記載の電界結合式電気錠。
【請求項4】
前記ドア枠の側に於いて、前記錠部から出退する係止部を受け止める被係止部を備えたプレート部材と前記第1活電電極とを一体に構成すると共に、当該プレート部材の一部を前記第1受動電極として用い、前記ドアの側に於いて前記錠部および前記第2活電電極を格納する金属ケースを備え、当該金属ケースの一部を前記第2受動電極として用いる請求項2又は3に記載の電界結合式電気錠。
【請求項5】
前記第1活電電極が前記第1受動電極で覆われ、前記第2活電電極が前記第2受動電極で覆われている請求項2又は3に記載の電界結合式電気錠。
【請求項6】
前記ドア枠および前記ドアを金属で構成し、前記ドア枠の一部を前記第1受動電極として用いるとともに、前記ドアの一部を前記第2受動電極として用いている請求項2から5の何れか一項に記載の電界結合式電気錠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−96174(P2013−96174A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−241414(P2011−241414)
【出願日】平成23年11月2日(2011.11.2)
【出願人】(000194918)ホシデン株式会社 (527)