説明

電磁接触器

【課題】固定接触子とハウジングとの隙間から進入した異物を閉じ込めることができる電磁接触器を得ること。
【解決手段】正規設置姿勢では、可動接触子23を保持するクロスバー22が水平方向に変位するように設置される電磁接触器90であって、前記クロスバー22及び可動接触子23を中央部に収容するハウジング10と、前記クロスバー22を上下から挟むように前記ハウジング10に配置され、該ハウジング10との間に隙間10bを有して固定された対の固定接触子21と、前記クロスバー22の前記隙間10bに対向する範囲に形成され、前記隙間10bから落下する異物30を捕獲する受け溝と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁石のON/OFFにより電気回路を開閉する電磁接触器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、消弧室カバー(アークカバー)の消孤隔壁(縦壁間カバー)にあけられたガス抜き穴の内側に、消孤隔壁と平行にかつこれと適宜の間隔を介して短冊状の異物侵入防止壁が設けられた電磁接触器の防塵装置において、異物侵入防止壁の消孤隔壁と対向する面の周囲にリブを土手状に巡らせて消弧隔壁との対向面を凹状とすることにより、ガス抜き穴から入り込んだ異物をこの凹部内に捕捉し、この異物が電磁接触器の開閉振動で異物侵入防止壁の周囲から滑り落ちないようにした電磁接触器の防塵装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、少なくとも2枚の前後方向の縦壁を有するハウジングと、前記縦壁間の上部に配置され前記ハウジングの前方を向く端子及び前記縦壁間の中央部寄りに配置される固定接点を有する上部固定接触子と、前記縦壁間の下部に配置され前記ハウジングの前方を向く端子及び前記縦壁間の中央部寄りに配置される固定接点を有する下部固定接触子と、前記縦壁間の中央部に配置され前記上下の固定接点に対向して配置される一対の可動接点を有する可動接触子と、前記可動接触子の前方の前記縦壁間を覆う前面カバーと、該前面カバーから突出し前記縦壁間に挿入されて前記上下の固定接触子のそれぞれの端子の中央側端部まで延在する一対の縦壁間カバーとを有し、前記固定接点及び可動接点を覆うアークカバーと、を備えた電磁接触器において、前記縦壁に前記縦壁間カバーの側部を嵌合する溝を設け、前記一対の縦壁間カバーの先端部を前記上下の固定接触子のそれぞれの端子の中央側端部の奥まで延在させ、前記縦壁間カバーの上面に、前記縦壁間カバーの側部及び先端部から該縦壁間カバーの中央部に向けて下り勾配となる傾斜面を設けたことを特徴とし、微小異物が縦壁間カバーの上面に落下すると、その微小異物は傾斜面により縦壁間カバーの中央部に移動するので、縦壁間カバーの側部と縦壁の溝との間、及び、端子の中央側端部と縦壁間カバーの先端部との間に微小隙間があっても、電磁接触器の開閉振動によって、微小異物が微小隙間を通って電磁接触器内に侵入することはなく、接点の導通不良や電磁石の動作不良の発生を低減した電磁接触器が開示されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平05−002962号公報
【特許文献2】特開2006−310184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来の技術によれば、消孤室カバー(アークカバー)から侵入した異物は閉じ込めることができるが、固定接触子とハウジングとの隙間から進入した異物は閉じ込めることはできない。そのため、内部に入ってしまった異物は、電磁接触器の開閉振動や開閉による空気の対流、他の制御機器の振動等により異物が拡散し、異物が接点付近に飛散して可動接点と固定接点の間に噛み込まれ、接触不良を起すという問題がある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、固定接触子とハウジングとの隙間から進入した異物を閉じ込めることができる電磁接触器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、正規設置姿勢では、可動接触子を保持するクロスバーが水平方向に変位するように設置される電磁接触器であって、前記クロスバー及び可動接触子を中央部に収容するハウジングと、前記クロスバーを上下から挟むように前記ハウジングに配置され、該ハウジングとの間に隙間を有して固定された対の固定接触子と、前記クロスバーの前記隙間に対向する範囲に形成され、前記隙間から落下する異物を捕獲する受け溝と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、固定接触子とハウジングとの隙間から進入した異物を閉じ込めることができる、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明に係る電磁接触器の実施の形態を示す正面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。
【図3】図3は、実施の形態の電磁接触器の非通電状態における異物落下経路を示す断面図である。
【図4】図4は、実施の形態の電磁接触器の通電状態における異物落下経路を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる電磁接触器の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態 .
図1は、本発明に係る電磁接触器の実施の形態を示す正面図であり、図2は、図1のA−A線に沿う断面図であり、図3は、実施の形態の電磁接触器の非通電状態における異物落下経路を示す断面図であり、図4は、実施の形態の電磁接触器の通電状態における異物落下経路を示す断面図である。
【0012】
図1〜図4に示すように、実施の形態の電磁接触器90は、ハウジング10と、ハウジング10の中央部に収容、配置された回路開閉機構20と、ハウジング10に取付けられ回路開閉機構20を覆うカバー11と、ハウジング10に(図2〜図4において右側に)取付けられ回路開閉機構20を作動させる図示しない電磁作動装置と、を備えている。ハウジング10及びカバー11は、ガラス繊維で強化された絶縁材料により形成されている。実施の形態の電磁接触器90は、正規設置姿勢として、図2〜図4に示すように、後述のクロスバー22が水平方向に変位するように、制御盤等の内部に設置される。
【0013】
回路開閉機構20は、対の固定接触子21と、クロスバー22と、可動接触子23と、を備えている。対の固定接触子21は、夫々、U字形に形成され、開口部を中央に向けて、クロスバー22を上下から挟むように、ハウジング10に配置、固定されている。固定接触子21の一片21aの中央寄りに固定接点21cが固着され、他片21bには、端子ネジ21dが取付けられている。実施の形態の電磁接触器90は、四対の固定接触子21を備えている。
【0014】
クロスバー22は、ハウジング10の中央部に配置され、図2の左右に変位自在となっていて、図示しない前記電磁作動装置により駆動されて左右(水平方向)に変位する。クロスバー22の四角窓22aには、固定接点21cの夫々と接触し開離する一対の可動接点23aを両端に有する細長板状の可動接触子23が、その中央部を四角窓22aの底辺に位置させるようにして、挿入され保持されている。
【0015】
可動接触子23の中央部は、接点ばね24の一端に係合している。接点ばね24は少し圧縮され、その他端が四角窓22aの上辺に係合している。電磁作動装置が非通電(開位置)である図2及び図3の状態では、可動接触子23は、接点ばね24により四角窓22aの底辺に押付けられている。
【0016】
次に、電磁接触器90の動作を説明する。図示しない電磁作動装置の励磁コイルに電流を流すと、クロスバー22及び可動接触子23が、図2の右方へ変位し、図4に示すように、固定接点21cと可動接点23aを接触させる閉位置となり、電磁接触器90は、通電状態となる。
【0017】
前記励磁コイルの電流を断つと、電磁作動装置の復帰ばねにより、クロスバー22が左方に変位し、図3に示すように、固定接点21cと可動接点23aが解離する開位置となり、電磁接触器90は、非通電状態となる。
【0018】
次に、実施の形態の電磁接触器90の特徴的な構成について説明する。固定接触子21の一片21aとハウジング10の仕切壁10aとの間には、僅かな隙間10bが存在する(電磁接触器90のような量産品においては、個々の部品の寸法を全て同一にして部品間の隙間をゼロにすることは難しく、ハウジング10のような樹脂成型品と、固定接触子21のような金属部品との間には、どうしても僅かな隙間10bができてしまう)。
【0019】
隙間10bは、図1〜図4に示す電磁接触器90の正規設置姿勢において、ハウジング10の天面10c方向を向いている。図3及び図4に示すように、天面10cに絶縁性の異物30が落下すると、電磁接触器90の開閉振動、他の機器が発生する振動及び周囲の空気の流れにより、異物30が隙間10bに進入してしまうことがある。
【0020】
図3に示すように、電磁接触器90の非通電状態(開位置)では、ハウジング10と固定接触子21と間の隙間10bに進入した異物30は、重力によりハウジング10の内部に落下していく。実施の形態の電磁接触器90の特徴的な構成として、クロスバー22には、可動接触子23と固定接触子21の閉位置、開位置に拘わらず、隙間10bに対向する範囲に、受け溝40が形成されている。
【0021】
受け溝40は、傾斜面40a、40bを有する拡幅部40cと、拡幅部40cの底部に形成された幅の狭い落し穴40dとを備えている。拡幅部40cは、電磁接触器90の非通電状態(開位置)では、異物30が傾斜面40a上に落ちるように、電磁接触器90の通電状態(閉位置)では、傾斜面40b上に落ちるように、形状・寸法が設定されている。
【0022】
拡幅部40c内に落下した異物30は、傾斜面40a、40b上を移動して落し穴40d内に収容され閉じ込められ、捕獲される。10Aクラスの小形の電磁接触器90の場合、落し穴40dは、幅1mm、深さ3mm程度の寸法に形成され、異物30は、一旦、落し穴40dに落ちると、電磁接触器90の開閉振動や、他の機器の振動により落し穴40dから飛び出すことはない。
【0023】
また、電磁接触器90の開閉動作時に、クロスバー22及び可動接触子23の動作により、ハウジング10内部に空気の対流が起こるが、その対流は、クロスバー22の拡幅部40cを通るのみで、落し穴40dは、対流の影響を受けず、異物30が対流によって飛び出すこともない。
【0024】
また、落し穴40dに閉じ込められた異物30は、ハウジング10と固定接触子21との間の隙間10bより小さいものであり、電磁接触器90の寿命が来るまでに、落し穴40dが異物30で満杯になることはない。以上説明したように、外部から進入してきた異物30を落し穴40dに閉じ込めてしまうことにより、異物30が、固定接点21c、可動接点23aに付着する確率を小さくし、電磁接触器90の接触不良を低減させることができる。
【符号の説明】
【0025】
10 ハウジング
10a 仕切壁
10b 隙間
10c 天面
11 カバー
20 回路開閉機構
21 固定接触子
21a 一片
21b 他片
21c 固定接点
21d 端子ネジ
22 クロスバー
22a 四角窓
23 可動接触子
23a 可動接点
24 接点ばね
30 異物
40 受け溝
40a、40b 傾斜面
40c 拡幅部
40d 落し穴
90 電磁接触器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正規設置姿勢では、可動接触子を保持するクロスバーが水平方向に変位するように設置される電磁接触器であって、
前記クロスバー及び可動接触子を中央部に収容するハウジングと、
前記クロスバーを上下から挟むように前記ハウジングに配置され、該ハウジングとの間に隙間を有して固定された対の固定接触子と、
前記クロスバーの前記隙間に対向する範囲に形成され、前記隙間から落下する異物を捕獲する受け溝と、
を備えることを特徴とする電磁接触器。
【請求項2】
前記受け溝は、前記クロスバーが前記可動接触子と固定接触子の閉位置、開位置に変位するのに拘わらず前記隙間に対向するように拡幅された拡幅部と、該拡幅部の底に形成され前記異物を閉じ込める幅の狭い落し穴と、を有することを特徴とする請求項1に記載の電磁接触器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2013−8580(P2013−8580A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−140874(P2011−140874)
【出願日】平成23年6月24日(2011.6.24)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)