説明

電磁波放射装置

【課題】スペクトル幅が狭い電磁波を放射できスペクトル幅の調整の範囲が拡大する電磁波放射装置を提供する。
【解決手段】周期構造が電磁波放射体の放射面に露出する。周期構造においては単位構造が周期方向に周期的に配列される。複素誘電率の実部が負である負誘電率部及び複素誘電率の実部が正である正誘電率部を単位構造の各々が備える。単位構造の各々において正誘電率部及び負誘電率部が周期方向に配列される。周期構造は周期方向についての反転対称性を持たない。電磁波放射体は加熱機構に加熱され、放射面からは電磁波が放射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁波放射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に言って、金属等の負の誘電率を持つ物質からなる構造物が加熱された場合は、構造物の表面から黒体放射により電磁波が放射される。放射される電磁波の波長は広範囲に分布する。
【0003】
しかし、図46に示されるように、周期構造9002が構造物9000の表面に露出する場合は、周期構造9002により電磁波の共振器が形成され、周期構造9002の周期の略自然数分の1の波長を持つ電磁波EMWが共振器に共鳴する。このため、構造物9000が加熱された場合は、周期構造9002に共鳴する波長のスペクトル幅が狭い電磁波EMWが構造物9000の表面から放射される。
【0004】
この共鳴を利用してスペクトル幅が狭い赤外線を放射させる電磁波放射装置(赤外光源)が特許文献1に示される。特許文献1は、周期構造の格子の幅及び深さにより放射される赤外線のスペクトル幅を調整することを提案する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−324126号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1が提案するスペクトル幅の調整では、スペクトル幅の調整の範囲が限られる。特に、スペクトル幅を十分に狭くすることは困難である。
【0007】
本発明は、この問題を解決するためになされる。本発明の目的は、スペクトル幅が狭い電磁波を放射できスペクトル幅の調整の範囲が拡大する電磁波放射装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、電磁波放射装置に向けられる。
【0009】
本発明の第1の局面においては、電磁波放射体及び加熱機構が設けられる。電磁波放射体が加熱機構により加熱され、電磁波放射体の放射面から電磁波が放射される。放射面には周期構造が露出する。周期構造においては単位構造が周期方向に周期的に配列される。単位構造の各々は、複素誘電率の実部が正である正誘電率部及び複素誘電率の実部が負である負誘電率部を備える。単位構造の各々においては、正誘電率部及び負誘電率部が周期方向に配列される。周期構造は周期方向についての反転対称性を持たない。以下では、複素誘電率の実部が正であることを「正の誘電率を持つ」とも言い、複素誘電率の実部が負であることを「負の誘電率を持つ」とも言う。
【0010】
本発明の第2の局面は、本発明の第1の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第2の局面においては、負誘電率部の各々が周期方向についての反転対称性を持たない。
【0011】
本発明の第3の局面は、本発明の第1又は第2の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第3の局面においては、正誘電率部の各々が周期方向についての反転対称性を持たない。
【0012】
本発明の第4の局面は、本発明の第1の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第4の局面においては、上記の負誘電率部が第1の負誘電率部であり、第2の負誘電率部が単位構造の各々に設けられる。第2の負誘電率部は、第1の負誘電率部と異なる負の誘電率を持つ。単位構造の各々においては、第1の負誘電率部、第2の負誘電率部及び正誘電率部が周期方向に順次に配列される。
【0013】
本発明の第5の局面は、本発明の第1の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第5の局面においては、上記の正誘電率部が第1の正誘電率部であり、第2の正誘電率部が単位構造の各々に設けられる。第2の正誘電率部は、第1の正誘電率部と異なる正の誘電率を持つ。単位構造の各々においては、負誘電率部、第2の正誘電率部及び第1の正誘電率部が周期方向に順次に配列される。
【0014】
本発明の第6の局面は、本発明の第1の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第6の局面においては、上記の負誘電率部が第1の負誘電率部であり、上記の正誘電率部が第1の正誘電率部であり、第2の負誘電率部及び第2の正誘電率部が単位構造の各々に設けられる。第2の負誘電率は、第1の負誘電率部とは異なる幅を持つ。第2の正誘電率部は、第1の正誘電率部とは異なる幅を持つ。単位構造の各々においては、第1の負誘電率部、第1の正誘電率部、第2の負誘電率部及び第2の正誘電率部が周期方向に順次に配列される。
【0015】
本発明の第7の局面は、本発明の第1から第6までのいずれかの局面にさらなる事項を付加する。本発明の第7の局面においては、電磁波放射体が負の誘電率を持つ基体部をさらに備える。負誘電率部は、基体部から突出する線状突起である。正誘電率部は、線状溝である。線状突起及び線状溝は、周期方向に垂直な方向へ延在する。
【0016】
本発明の第8の局面は、本発明の第7の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第8の局面においては、線状突起の側面が線状突起の延在方向に沿って進んだ場合に周期方向に蛇行する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、周期方向についての反転対称性を周期構造が持つ場合に放射されない電磁波が放射され、スペクトル幅が狭い電磁波が放射される。これにより、スペクトル幅の調整の範囲が拡大する。
【0018】
これらの及びこれら以外の本発明の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面とともに考慮されたときに下記の本発明の詳細な説明によってより明白となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】電磁波放射体及び電磁波の模式図である。
【図2】電磁波放射体及び電磁波の模式図である。
【図3】電磁波放射体及び電磁波の模式図である。
【図4】電磁波放射体及び電磁波の模式図である。
【図5】電磁波放射体及び電磁波の模式図である。
【図6】奇関数分布を持つ電磁波が放射されやすい理由を説明する模式図である。
【図7】奇関数分布を持つ電磁波が放射されやすい理由を説明する模式図である。
【図8】奇関数分布を持つ電磁波が放射されやすい理由を説明する模式図である。
【図9】奇関数分布を持つ電磁波が放射されやすい理由を説明する模式図である。
【図10】奇関数分布を持つ電磁波が放射されやすい理由を説明する模式図である。
【図11】奇関数分布を持つ電磁波が放射されやすい理由を説明する模式図である。
【図12】奇関数分布を持つ電磁波が放射されやすい理由を説明する模式図である。
【図13】奇関数分布を持つ電磁波が放射されやすい理由を説明する模式図である。
【図14】奇関数分布を持つ電磁波が放射されやすい理由を説明する模式図である。
【図15】偶関数分布を持つ電磁波が放射されない理由を説明する模式図である。
【図16】偶関数分布を持つ電磁波が放射されない理由を説明する模式図である。
【図17】偶関数分布を持つ電磁波が放射されない理由を説明する模式図である。
【図18】偶関数分布を持つ電磁波が放射されない理由を説明する模式図である。
【図19】偶関数分布を持つ電磁波が放射されない理由を説明する模式図である。
【図20】偶関数分布を持つ電磁波が放射されない理由を説明する模式図である。
【図21】Q値のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図22】シミュレーションの対象の電磁波放射体の断面図である。
【図23】Q値のシミュレーション結果を示すグラフである。
【図24】シミュレーションの対象の電磁波放射体の断面図である。
【図25】偶関数分布を持つ電磁波が放射される理由を説明する模式図である。
【図26】偶関数分布を持つ電磁波が放射される理由を説明する模式図である。
【図27】偶関数分布を持つ電磁波が放射される理由を説明する模式図である。
【図28】偶関数分布を持つ電磁波が放射される理由を説明する模式図である。
【図29】偶関数分布を持つ電磁波が放射される理由を説明する模式図である。
【図30】偶関数分布を持つ電磁波が放射される理由を説明する模式図である。
【図31】偶関数分布を持つ電磁波が放射される理由を説明する模式図である。
【図32】偶関数分布を持つ電磁波が放射される理由を説明する模式図である。
【図33】第1実施形態の電磁波放射体の斜視図である。
【図34】第1実施形態の電磁波放射体の断面図である。
【図35】第2実施形態の電磁波放射体の断面図である。
【図36】第3実施形態の電磁波放射体の断面図である。
【図37】第4実施形態の電磁波放射体の断面図である。
【図38】第5実施形態の電磁波放射体の断面図である。
【図39】第6実施形態の電磁波放射体の断面図である。
【図40】第7実施形態の電磁波放射体の断面図である。
【図41】第8実施形態の電磁波放射体の断面図である。
【図42】第9実施形態の電磁波放射体の斜視図である。
【図43】第9実施形態の電磁波放射体の上面図である。
【図44】第10実施形態の電磁波放射装置の断面図である。
【図45】第11実施形態の電磁波放射装置の断面図である。
【図46】構造物及び電磁波の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(着想の概略)
図1の模式図は、電磁波EMW及び望ましい電磁波放射体100を示す。図2から図5までの模式図は、電磁波EMW及び従来の電磁波放射体900を示す。
【0021】
図1は、周期方向D1についての反転対称性を持たない周期構造104が電磁波放射体100の放射面102に露出する場合を示す。図2から図5までは、周期方向D1についての反転対称性を持つ周期構造904が電磁波放射体900の放射面902に露出する場合を示す。
【0022】
図1に示される電磁波EMWは、偶関数分布を持つ。図2及び図3に示される電磁波EMWは、奇関数分布を持つ。図4及び図5に示される電磁波EMWは、偶関数分布を持つ。
【0023】
図1は、電磁波EMWの波長が周期構造104の周期と同じ場合を示す。図2及び図4は、電磁波EMWの波長が周期構造904の周期と同じ場合を示す。図3及び図5は、電磁波EMWの波長が周期構造904の周期の2分の1である場合を示す。電磁波放射体100においては、周期構造104の周期方向D1についての反転対称性が乱される。周期構造が周期方向D1についての反転対称性を持つ場合には放射されない偶関数分布を有する電磁波EMWが放射面102から放射され、スペクトル幅が狭い電磁波EMWが放射面102から放射される。以下では、着想の内容が一般的に説明された後に、着想を具現化した実施形態が例示される。
【0024】
(周期構造)
周期構造104においては、単位構造106が周期方向D1に周期的に配列され、1次元格子が形成される。周期構造904においても、単位構造906が周期方向D1に周期的に配列され、1次元格子が形成される。周期構造104は、典型的には、平面に形成されるが、円周面に形成されてもよい。
【0025】
単位構造106の各々においては、負誘電率部108及び正誘電率部110が周期方向D1に配列される。単位構造906の各々においても、負誘電率部908及び正誘電率部910が周期方向D1に配列される。
【0026】
負誘電率部108及び908は、負の誘電率を持つ。正誘電率部110及び910は、正の誘電率を持つ。
【0027】
周期構造104においては、負誘電率部108及び正誘電率部110が周期方向D1に交互に配列される。周期構造904においても、負誘電率部908及び正誘電率部910が周期方向D1に交互に配列される。
【0028】
(奇関数分布及び偶関数分布)
電磁波EMWが奇関数分布を持つ場合は、周期構造104の擬対称面PSP又は周期構造904の対称面SPについて電磁波EMWの電界成分が反対称となる。電磁波EMWが偶関数分布を持つ場合は、周期構造104の擬対称面PSP又は周期構造904の対称面SPについて電磁波EMWの電界成分が対称となる。周期構造104の擬対称面PSPは、周期構造104の周期方向D1についての反転対称性の乱れがなくなれば対称面になる面である。
【0029】
(負の誘電率及び正の誘電率)
複素誘電率εは、複素屈折率Nを用いて、式(1)であらわされる。
【0030】
【数1】

【0031】
複素屈折率Nは、屈折率n及び消衰係数kを用いて、式(2)であらわされる。
【0032】
【数2】

【0033】
誘電率が負であるとは、複素屈折率εの実数成分が負であることをいう。屈折率nより消衰係数kが大きい場合に複素誘電率εの実数成分は負になる。負の誘電率を持つ物質の典型例は、金属、合金等の導電体である。
【0034】
誘電率が正であるとは、複素屈折率εの実数成分が正であることをいう。屈折率nより消衰係数kが小さい場合に複素誘電率εの実数成分は正になる。正の誘電率を持つ物質の典型例は、空気、ガラス等の誘電体である。一の構造物と他の構造物との間隙も正の誘電率を持つ正誘電率部100又は910となりうる。
【0035】
(反転対称性)
周期構造が周期方向D1についての反転対称性を持つ場合は、周期方向D1と垂直をなしその面についての対称操作に対して周期構造が対称性を持つ対称面SPが存在する。周期構造が周期方向D1についての反転対称性を持たない場合は、周期方向D1と垂直をなしその面についての対称操作に対して周期構造が対称性を持つ対称面SPが存在しない。
【0036】
(導電体の表面の近傍の電界)
導電体の内部には大きな電界が存在しない。このため、導電体の表面の近傍には、導電体の表面に垂直な電界が主に存在し、導電体の表面に平行な電界はほとんど存在しない。
【0037】
(周期構造及び電磁波の共鳴)
放射面102及び902に周期構造104及び904が露出する場合は、周期構造104及び904により電磁波EMWの共振器が形成され、周期構造104及び904の周期の略自然数分の1の波長を有する電磁波EMWが形成された共振器に共鳴する。
【0038】
(奇関数分布及び偶関数分布)
導電体の表面の近傍には導電体の表面に垂直な電界が主に存在することを考慮すると、周期方向D1についての反転対称性を周期構造904が持つ場合は、奇関数分布を持つ電磁波EMW及び偶関数分布を持つ電磁波EMWが周期構造904により形成される共振器に共鳴しうる。このことは、厳密には、周期的境界条件の下でマクスウェルの電磁方程式を解くことにより導かれる。以下では、奇関数分布を持つ電磁波EMWの共鳴が奇関数モードと呼ばれ、偶関数分布を持つ電磁波EMWの共鳴が偶関数モードと呼ばれる。奇関数分布を持つ電磁波EMWは、図2及び図3に示されるように、放射面902から放射されやすい。奇関数モードのQ値は低く、奇関数分布を持つ電磁波EMWのスペクトル幅は広い。一方、偶関数分布を持つ電磁波EMWは、図4及び図5に示されるように、放射面902から放射されない。偶関数モードのQ値は無限大であり、偶関数分布を持つ電磁波EMWのスペクトル幅は0である。偶関数分布を持つ電磁波EMWが放射面902から放射されないことは、偶関数分布を持つ電磁波EMWを利用できないことを意味する。本発明は、この偶関数分布を持つ電磁波EMWを利用できるようにするための周期構造104の工夫に関する。
【0039】
(Q値及びスペクトル幅)
Q値は、共鳴の質を表す指標である。
【0040】
式(3)に示されるように、時刻tに共振器に蓄積されている電磁波EMWのエネルギーU(t)を単位時間に共振器から失われる電磁波EMWのエネルギーΔU(t)で除した結果に電磁波EMWの角周波数ωを乗ずることによりQ値は算出される。共振器から失われる電磁波EMWのエネルギーΔU(t)は、共振器から放射される電磁波EMWのエネルギーに相当する。
【0041】
【数3】

【0042】
式(4)に示されるように、単位時間に共振器から失われる電磁波EMWのエネルギーΔU(t)は時刻tに共振器に蓄積されている電磁波EMWのエネルギーU(t)の時間tについての微分係数の正負を反転することにより算出される。
【0043】
【数4】

【0044】
式(3)及び式(4)から式(5)の微分方程式が導かれる。
【0045】
【数5】

【0046】
式(5)の微分方程式が解かれフーリエ変換されると、式(6)に示されるように、共振器から放射される電磁波EMWの周波数fを共振器から放射される電磁波EMWのスペクトル幅Δfで除した結果とQ値とが近似することが導かれる。スペクトル幅Δfは、半値全幅(FWHM)である。
【0047】
【数6】

【0048】
式(3)は、単位時間に共振器から失われる電磁波EMWのエネルギーΔU(t)が少なくなるほどQ値が大きくなることを示す。式(6)は、Q値が大きくなるほど共振器から放射される電磁波EMWのスペクトル幅Δfが狭くなることを示す。
【0049】
これらのことから、共振器から失われる電磁波EMWのエネルギーΔU(t)が小さくなるほど共振器から放射される電磁波EMWのスペクトル幅Δfが狭くなることが導かれる。また、共振器から電磁波EMWが放射されない場合は共振器から放射される電磁波EMWのスペクトル幅Δfが0になることが導かれる。放射面902から放射されやすい奇関数分布を持つ電磁波EMWのスペクトル幅Δfが広く、放射面902から放射されない偶関数分布を持つ電磁波EMWのスペクトル幅Δfが0であるのは、このためである。
【0050】
また、これらのことから、共振器から放射される電磁波EMWのエネルギーΔU(t)が0にならない範囲内で小さくされた場合は、スペクトル幅Δfが狭い電磁波EMWが放射されることが導かれる。
【0051】
さらに、これらのことから、共振器から放射される電磁波EMWのエネルギーΔU(t)を調整することにより電磁波EMWのスペクトル幅Δfを調整できることが導かれる。
【0052】
(奇関数分布を持つ電磁波が放射されやすい理由)
奇関数分布を持つ電磁波EMWが放射されやすい理由は、図6から図14までの模式図により定性的に説明される。
【0053】
図6に示されるように対称面SPについて反対称となる電界EAが発生した場合は、図7に示されるように電界EAの周りを一周する磁界MAが発生する。図7に示される電界EAが消去された状態が図8に示される。図8に示された磁界MAが整理された状態が図9に示される。
【0054】
図9に示されるように対称面SPについて対称となる磁界MBが発生した場合は、図10に示されるように磁界MBの周りを一周する電界EBが発生する。ただし、負誘電率部908の内部を通過する電界EBXは小さい。図10に示される電界EBのうち打ち消されるもの及び磁界MBが消去された状態が図11に示される。
【0055】
図11に示されるように正誘電率部910の近傍に電界ECが発生した場合は、図12に示されるように電界ECの周りを一周する磁界MCが発生し、図13に示されるように磁界MCの周りを一周する電界EDが発生し、図14に示されるように電界EDの周りを一周する磁界MDが発生する。この繰り返しにより、放射面902から電磁波EMWが放射される。
【0056】
(偶関数分布を持つ電磁波が放射されない理由)
偶関数分布を持つ電磁波EMWが放射されない理由は、図15から図20までの模式図により定性的に説明される。
【0057】
図15に示されるように対称面SPについて対称となる電界EFが発生した場合は、図16に示されるように電界EFの周りを一周する磁界MFが発生する。図16に示される電界EFが消去された状態が図17に示される。図17に示される磁界MFが整理された状態が図18に示される。
【0058】
図18に示されるように対称面SPについて反対称となる磁界MGが発生した場合は、図19に示されるように磁界MGの周りを一周する電界EGが発生する。ただし、負誘電率部908の内部を通過する電界EGXは小さい。図19に示される電界EGのうち打ち消されるもの及び磁界MGが消去された状態が図20に示される。負誘電率部908の内部を通過する電界EGXは打ち消され、図15に示される電界EFと図20に示される電界EHとは同じであり、放射面902からは電磁波EMWが放射されない。
【0059】
(奇関数分布を持つ電磁波のQ値の例)
図21のグラフは、奇関数モードのQ値のシミュレーション結果を示す。図21は、図22に示されるように周期構造904の周期が5μmであり正誘電率部910の幅が2.6μmである場合の負誘電率部908の高さLzと電磁波EMWのQ値との関係を示す。図21からは、奇関数モードのQ値の最大値は約300であることがわかる。負誘電率部908の高さLz以外のパラメータが変更されても奇関数モードのQ値の最大値が著しく大きくなることはない。この特徴は、奇関数分布を持つ電磁波EMWが放射されやすいことに由来する。Q値の最大値が約300である場合に波長が5μmの電磁波EMWが放射されるときには、当該電磁波EMWのスペクトル幅は5μm/300=約16nmになる。
【0060】
(反転対称性の乱れの導入)
図1に示されるように、電磁波放射体100においては、周期構造104の周期方向D1についての反転対称性が乱される。周期方向D1についての反転対称性を周期構造104が持たない場合は、周期方向D1についての反転対称性を周期構造が持つ場合に放射されない偶関数分布を持つ電磁波EMWが放射面102から放射される。これにより、スペクトル幅が狭い電磁波EMWが放射される。
【0061】
スペクトル幅は、周期方向D1についての反転対称性の乱れが大きくなるほど広くなり、周期方向D1についての反転対称性の乱れが小さくなるほど狭くなる。したがって、電磁波放射体100によれば、スペクトル幅の調整の範囲が拡大する。
【0062】
(反転対称性が乱された場合の偶関数分布を持つ電磁波のQ値の例)
図23のグラフは、偶関数モードのQ値のシミュレーション結果を示す。図23は、図24に示されるように周期構造104の周期が5μmであり正誘電率部110の上面の開口幅が2.6μmであり負誘電率部108の高さが2.6μmである場合の負誘電率部108の一方の側面が周期方向D1となす角度θと電磁波EMWのQ値との関係を示す。図23からは、偶関数モードのQ値は角度θが90°になる近傍で著しく大きくなり、偶関数モードのQ値は角度θの調整によって広い範囲で調整されることがわかる。
【0063】
(反転対称性が乱された場合に偶関数分布を持つ電磁波が放射される理由)
周期方向D1についての反転対称性が乱された場合に偶関数分布を持つ電磁波EMWが放射される理由は、図25から図32までの模式図により定性的に説明される。
【0064】
図25に示されるように擬対称面PSPについて対称となる電界EJが発生した場合は、図26に示されるように電界EJの周りを一周する磁界MJが発生する。図26に示される電界EJが消去された状態が図27に示される。図27に示される磁界MJが整理された状態が図28に示される。
【0065】
図28に示されるように擬対称面PSPについて反対称となる磁界MKが発生した場合は、図29に示されるように磁界MKの周りを一周する電界EMが発生する。ただし、負誘電率部908の内部を通過する電界EMXは小さい。図29に示される電界EMのうち打ち消されるもの及び磁界MKが消去された状態が図30に示される。周期方向D1についての反転対称性を周期構造904が持つ場合と異なり、周期方向D1についての反転対称性を周期構造104が持たない場合は、負誘電率部108の内部を通過する電界EMXは打ち消されず、周期方向D1に平行な電界ELが正誘電率部110の近傍に残る。正誘電率部110の近傍に残る電界ELは、周期方向D1についての反転対称性の乱れが大きくなるほど大きくなる。
【0066】
図30に示されるように正誘電率部110の近傍に電界ELが発生した場合は、図31に示されるように電界ELの周りを一周する磁界MLが発生し、図32に示されるように磁界MLの周りを一周する電界EMが発生する。この繰り返しにより、放射面102から電磁波EMWが放射される。
【0067】
(反転対称性の乱れの導入の手法)
周期方向D1についての反転対称性の乱れを導入するためには、第1の手法及び第2の手法の両方又は片方が適用される。
【0068】
第1の手法においては、負誘電率部108の各々が周期方向D1についての反転対称性を持たないようにされる。負誘電率部108の各々が周期方向D1についての反転対称性を持たない場合は、周期構造104における誘電率分布も周期方向D1についての反転対称性を持たない。このため、偶関数分布を持つ電磁波EMWが放射面102から放射される。負誘電率部108の各々に加えて、又は、負誘電率部108の各々に代えて、正誘電率部110の各々が周期方向D1についての反転対称性を持たないようにされてもよい。第1の手法は、下記の第1実施形態から第4実施形態まで及び第7実施形態において採用される。
【0069】
第2の手法においては、単位構造106の各々における負誘電率部及び正誘電率部の配列が周期方向D1についての反転対称性を持たないようにされる。そのためには、単位構造に含まれる負誘電率部及び正誘電率部の合計数が3個以上に増やされ、単位構造の各々において合計数が3個以上の負誘電率部及び正誘電率部が周期方向D1に配列される必要がある。誘電率分布が同等でない3個以上の部分A,B,C,・・・が配列される場合は、A,B,C,A,B,C,・・・という配列とC,B,A,C,B,A,・・・という配列が一致しない。このため、誘電率分布が同等でない3個以上の部分A,B,C,・・・が配列される場合は、周期構造における誘電率分布も周期方向D1についての反転対称性を持たない。誘電率分布を同等でなくする方法には、誘電率そのものを異ならせる方法と形状を異ならせる方法がある。形状は、周期方向D1の寸法の影響が大きい。第2の手法は、下記の第5実施形態から第8実施形態までにおいて採用される。
【0070】
第1の手法及び第2の手法の両方が混在して採用されてもよい。第7実施形態は、その一例である。
【0071】
(偶関数モードへのエネルギー集中)
偶関数分布を持つ電磁波EMW及び奇関数分布を持つ電磁波EMWの両方が放射面102から放射されうる場合は、Q値が高くなるモードにエネルギーが集中する。多くの場合は、奇関数モードのQ値よりも偶関数モードのQ値が大きいので、偶関数分布を持つ電磁波EMW及び奇関数分布を持つ電磁波EMWの両方が放射面102から放射されうる場合は、偶関数分布を持つ電磁波EMWが集中して放射される。
【0072】
(第1実施形態)
第1実施形態は、電磁波放射体に関する。
【0073】
図33及び図34の模式図は、第1実施形態の電磁波放射体1100を示す。図33は、斜視図である。図34は、断面図である。
【0074】
図33及び図34に示されるように、第1実施形態の電磁波放射体1100の放射面1102には周期構造1104が露出し、電磁波の共振器が放射面1102に形成される。電磁波放射体1100が加熱された場合に放射面1102から放射される電磁波は、当該共振器に共鳴する。当該共振器に共鳴する電磁波の波長は、周期構造1104の周期の略自然数分の1である。したがって、電磁波放射体1100が加熱された場合は、周期構造1104の周期の略自然数分の1の波長のスペクトル幅の狭い電磁波EMWが放射面1102から放射される。
【0075】
周期構造1104においては、単位構造1106が周期方向D1に周期的に配列される。
【0076】
単位構造1106の各々は、負誘電率部1108及び正誘電率部1110を備える。
【0077】
負誘電率部1108は負の誘電率を持つ。正誘電率部1110は正の誘電率を持つ。
【0078】
単位構造1106の各々においては、負誘電率部1108及び正誘電率部1110が周期方向D1に配列される。
【0079】
負誘電率部1108は、負の誘電率を持つ基体部1112から突出し周期方向D1に垂直な方向に延在する線状突起である。正誘電率部1110は、周期方向D1に垂直な方向に延在する線状溝である。負誘電率部1108及び正誘電率部1110は周期方向D1に交互に配列される。正誘電率部1110は、一の負誘電率部1108と他の負誘電率部1108との間の間隙である。線状溝が固体からなる誘電体で埋められ、固体からなる誘電体が正誘電率部1110とされてもよい。
【0080】
放射面1102から遠ざかる放射方向D2へ向かって、負誘電率部1108の幅は狭くなり、正誘電率部1110の幅は広くなる。幅は、周期方向の寸法をいう。負誘電率部1108の第1の側面1114は周期方向D1と垂直をなす方向から傾斜し、負誘電率部1108の第2の側面1116は周期方向D1と垂直をなす。負誘電率部1108の上面1118は放射方向D2と垂直をなす。
【0081】
負誘電率部1108の第1の側面1114の傾斜により、負誘電率部1108の各々は周期方向D1についての反転対称性を持たなくなる。また、正誘電率部1110の各々も周期方向D1についての反転対称性を持たなくなる。負誘電率部1108の各々及び正誘電率部1110の各々が周期方向D1についての反転対称性を持たない場合は、周期構造1104も周期方向D1についての反転対称性を有さない。これにより、偶関数分布を持つ電磁波EMWが放射面1102からわずかに放射され、スペクトル幅が狭い電磁波が放射面1102から放射される。周期方向D1と垂直をなす方向からの負誘電率部1108の第1の側面1114の傾斜角θ1によりスペクトル幅は調整される。
【0082】
(第2実施形態)
第2実施形態は、電磁波放射体に関する。
【0083】
図35の模式図は、第2実施形態の電磁波放射体1200の断面を示す。
【0084】
第1実施形態と第2実施形態との違いは、負誘電率部の第1の側面及び第2の側面の傾斜にある。
【0085】
第1実施形態の電磁波放射体1100においては、負誘電率部1108の第1の側面1114が周期方向D1と垂直をなす方向から傾斜し、負誘電率部1208の第2の側面1116が周期方向D1と垂直をなすが、第2実施形態の電磁波放射体1200においては、負誘電率部1208の第1の側面1214が周期方向D1と垂直をなし、負誘電率部1208の第2の側面1216が周期方向D1と垂直をなす方向から傾斜する。
【0086】
負誘電率部1208の第2の側面1216の傾斜により、単位構造1206に含まれる負誘電率部1208の各々は周期方向D1についての反転対称性を持たなくなる。また、単位構造1206に含まれる正誘電率部1210の各々も周期方向D1についての反転対称性を持たなくなる。負誘電率部1208の各々及び正誘電率部1210の各々が周期方向D1についての反転対称性を持たない場合は、周期構造1204も周期方向D1についての反転対称性を持たない。これにより、偶関数分布を持つ電磁波が放射面1202から放射され、スペクトル幅が狭い電磁波が放射面1202から放射される。周期方向D1と垂直をなす方向からの負誘電率部1208の第2の側面1216の傾斜角θ2によりスペクトル幅は調整される。
【0087】
(第3実施形態)
第3実施形態は、電磁波放射体に関する。
【0088】
図36の模式図は、第3実施形態の電磁波放射体1300の断面を示す。
【0089】
第1実施形態と第3実施形態との違いは、負誘電率部の第1の側面及び第2の側面の傾斜にある。
【0090】
第1実施形態の電磁波放射体1100においては、負誘電率部1108の第1の側面1114が周期方向D1と垂直をなす方向から傾斜し、負誘電率部1108の第2の側面1116が周期方向D1と垂直をなすが、第3実施形態の電磁波放射体1300においては、負誘電率部1308の第1の側面1314及び第2の側面1316が周期方向D1と垂直をなす方向から傾斜する。
【0091】
第1の側面1314及び第2の側面1316の傾斜により、単位構造1306に含まれる負誘電率部1308の各々は周期方向D1についての反転対称性を持たなくなる。また、単位構造1306に含まれる正誘電率部1310の各々も周期方向D1についての反転対称性を持たなくなる。負誘電率部1308の各々及び正誘電率部1310の各々が周期方向D1についての反転対称性を持たない場合は、周期構造1304も周期方向D1についての反転対称性を持たない。これにより、偶関数分布を持つ電磁波が放射面1302から放射され、スペクトル幅が狭い電磁波が放射面1302から放射される。周期方向D1と垂直をなす方向からの負誘電率部1308の第1の側面1314の傾斜角θ1及び負誘電率部1308の第2の側面1316の傾斜角θ2によりスペクトル幅は調整される。
【0092】
(第4実施形態)
第4実施形態は、電磁波放射体に関する。
【0093】
図37の模式図は、第4実施形態の電磁波放射体1400の断面を示す。
【0094】
第1実施形態と第4実施形態との違いは、負誘電率部の第1の側面、第2の側面及び上面の傾斜にある。
【0095】
第1実施形態の電磁波放射体1100においては、負誘電率部1108の第1の側面1114が周期方向D1と垂直をなす方向から傾斜し、負誘電率部1108の第2の側面1116が周期方向D1と垂直をなし、負誘電率部1108の上面1118が放射方向D2と垂直をなす。しかし、第4実施形態の電磁波放射体1400においては、負誘電率部1408の第1の側面1414及び第2の側面1416が周期方向D1と垂直をなし、負誘電率部1408の上面1418が放射方向D2と垂直をなす方向から傾斜する。
【0096】
負誘電率部1408の上面1418の傾斜により、単位構造1406に含まれる負誘電率部1408の各々は、周期方向D1についての反転対称性を持たなくなる。単位構造1406に含まれる正誘電率部1410の各々は、周期方向D1についての反転対称性を持つ。負誘電率部1408の各々が周期方向D1についての反転対称性を持たない場合は、正誘電率部1410の各々が周期方向D1についての反転対称性を持っても、周期構造1104も周期方向D1についての反転対称性を持たない。これにより、偶関数分布を持つ電磁波が放射面1402から放射され、スペクトル幅が狭い電磁波が放射面1402から放射される。負誘電率部1408の上面1418の放射方向D2と垂直をなす方向からの傾斜角θ3によりスペクトル幅は調整される。負誘電率部の各々が周期方向D1についての反転対称性を持ち正誘電率部の各々が周期方向D1についての反転対称性を持たない単位構造が採用されてもよい。
【0097】
(第5実施形態)
第5実施形態は、電磁波放射体に関する。
【0098】
図38の模式図は、第5実施形態の電磁波放射体1500の断面を示す。図38は断面図である。
【0099】
図38に示されるように、第5実施形態の電磁波放射体1500の放射面1502には周期構造1504が露出し、電磁波の共振器が放射面1502に形成される。
【0100】
周期構造1504においては、単位構造1506が周期方向D1に周期的に配列される。
【0101】
単位構造1506の各々は、第1の負誘電率部15082、第2の負誘電率部15084及び正誘電率部1510を備える。
【0102】
第1の負誘電率部15082及び第2の負誘電率部15084は負の誘電率を持つ。正誘電率部1510は正の誘電率を持つ。第1の負誘電率部15082の負の誘電率と第2の負誘電率部15084の負の誘電率とは異なる。
【0103】
単位構造1506の各々においては、第1の負誘電率部15082、第2の負誘電率部15084及び正誘電率部1510が周期方向D1に順次に配列される。
【0104】
第1の負誘電率部15082は、負の誘電率を持つ基体部1512から突出し周期方向D1に垂直な方向に延在する線状突起である。第2の負誘電率部15084は、第1の負誘電率部15082に隣接する。正誘電率部1510は、周期方向D1に垂直な方向に延在する線状溝である。正誘電率部1510は、第1の負誘電率部15082と第2の負誘電率部15084との間の間隙である。線状溝が固体からなる誘電体で埋められ、固体からなる誘電体が正誘電率部1510とされてもよい。
【0105】
第1の負誘電率部15082の各々、第2の負誘電率部15084の各々及び正誘電率部1510の各々は周期方向D1についての反転対称性を有する。しかし、誘電率分布が同等でない3個の第1の負誘電率部15082、第2の負誘電率部15084及び正誘電率部1510の配列により、周期構造1504は周期方向D1についての反転対称性を持たない。これにより、偶関数分布を持つ電磁波が放射面1502から放射され、スペクトル幅が狭い電磁波が放射面1502から放射される。第2の負誘電率部15084の幅等によりスペクトル幅は調整される。
【0106】
(第6実施形態)
第6実施形態は、電磁波放射体に関する。
【0107】
図39の模式図は、第6実施形態の電磁波放射体1600の断面を示す。
【0108】
第5実施形態と第6実施形態との違いは、第2の負誘電率部に代えて第2の正誘電率部16104が設けられることにある。
【0109】
単位構造1606の各々においては、負誘電率部1608、第2の正誘電率部16104及び第1の正誘電率部16102が周期方向D1に順次に配列される。
【0110】
負誘電率部1608は負の誘電率を持つ。第1の正誘電率部16102及び第2の正誘電率部16104は正の誘電率を持つ。第1の正誘電率部16102の正の誘電率と第2の正誘電率部16104の正の誘電率とは異なる。
【0111】
負誘電率部1608は、負の誘電率を持つ基体部1612から突出し周期方向D1に垂直な方向に延在する線状突起である。第2の正誘電率部16104は、負誘電率部1608に隣接する。第1の正誘電率部16102は、周期方向D1に垂直な方向に延在する線状溝である。第1の正誘電率部16102は、負誘電率部1608と第2の正誘電率部16104との間の間隙である。線状溝が固体からなる誘電体で埋められ、固体からなる誘電体が第1の正誘電率部16102とされてもよい。
【0112】
負誘電率部1608の各々、第1の正誘電率部16102の各々及び第2の正誘電率部16104の各々は周期方向D1についての反転対称性を有する。しかし、誘電率分布が同等でない3個の負誘電率部1608、第2の正誘電率部16104及び第1の正誘電率部16102の配列により、周期構造1504は周期方向D1についての反転対称性を持たない。これにより、偶関数分布を持つ電磁波が放射面1602から放射され、スペクトル幅が狭い電磁波が放射面1602から放射される。第2の正誘電率部16104の幅、誘電率等によりスペクトル幅は調整される。
【0113】
(第7実施形態)
第7実施形態は、電磁波放射体に関する。
【0114】
図40の模式図は、第7実施形態の電磁波放射体1700の断面を示す。
【0115】
第6実施形態と第7実施形態との違いは、第2の正誘電率部の形状にある。
【0116】
第6実施形態の電磁波放射体1600においては、第2の正誘電率部16104の幅は一定であるが、第7実施形態の電磁波放射体1700においては、放射方向D2へ向かって第2の正誘電率部17104の幅が細くなる。
【0117】
単位構造1606に含まれる負誘電率部1708の各々は周期方向D1についての反転対称性を持ち、単位構造1606に含まれる第1の正誘電率部17102及び第2の正誘電率部17104は周期方向D1についての反転対称性を持たない。周期構造1704も周期方向D1についての反転対称性を持たない。これにより、偶関数分布を持つ電磁波が放射面1702から放射され、スペクトル幅が狭い電磁波が放射面1702から放射される。第2の正誘電率部17104の幅、形状、誘電率等によりスペクトル幅は調整される。
【0118】
(第8実施形態)
第8実施形態は、電磁波放射体に関する。
【0119】
図41の模式図は、第8実施形態の電磁波放射体1800の断面を示す。
【0120】
図41に示されるように、第8実施形態の電磁波放射体1800の放射面1802には周期構造1804が露出し、電磁波の共振器が放射面1802に形成される。
【0121】
周期構造1804においては、単位構造1806が周期方向D1に周期的に配列される。
【0122】
単位構造1806の各々は、第1の負誘電率部18082、第1の正誘電率部18102、第2の負誘電率部18084及び第2の正誘電率部18104を備える。
【0123】
第1の負誘電率部18082及び第2の負誘電率部18084は負の誘電率を持つ。第1の正誘電率部18102及び第2の正誘電率部18104は正の誘電率を持つ。第1の負誘電率部18082の負の誘電率と第2の負誘電率部18084の負の誘電率とは同じであるが、異なってもよい。第1の正誘電率部18102の正の誘電率と第2の正誘電率部18104の正の誘電率とは同じであるが、異なってもよい。
【0124】
単位構造1806の各々においては、第1の負誘電率部18082、第1の正誘電率部18102、第2の負誘電率部18084及び第2の正誘電率部18104が周期方向D1に順次に配列される。
【0125】
第1の負誘電率部18082及び第2の負誘電率部18084は、負の誘電率を持つ基体部1812から突出し周期方向D1に垂直な方向に延在する線状突起である。第1の正誘電率部18102及び第2の正誘電率部18104は、周期方向D1に垂直な方向に延在する線状溝である。第1の正誘電率部18102及び第2の正誘電率部18104は、第1の負誘電率部18082と第2の負誘電率部1608との間の間隙である。線状溝が固体からなる誘電体で埋められ、固体からなる誘電体が第1の正誘電率部18102及び第2の正誘電率部18104とされてもよい。
【0126】
第1の負誘電率部18082の幅と第2の負誘電率部18084の幅とは異なる。第1の正誘電率部18102の幅と第2の正誘電率部18104の幅とも異なる。
【0127】
第1の負誘電率部18082の各々、第2の負誘電率部18084の各々、第1の正誘電率部18102の各々及び第2の正誘電率部18104の各々は周期方向D1についての反転対称性を持つ。しかし、誘電率分布が同等でない4個の第1の負誘電率部18082、第2の負誘電率部18084、第1の正誘電率部18102及び第2の正誘電率部18104の配列により、周期構造1804は周期方向についての反転対称性を持たない。これにより、偶関数分布を持つ電磁波が放射面1802から放射され、スペクトル幅が狭い電磁波が放射面1802から放射される。
【0128】
(第9実施形態)
第9実施形態は、電磁波放射体に関する。
【0129】
図42及び図43の模式図は、第9実施形態の電磁波放射体1900を示す。図42は、斜視図である。図43は、上面図である。
【0130】
図42及び図43に示されるように、第9実施形態の電磁波放射体1900の放射面1902には周期構造1904が露出し、電磁波の共振器が放射面1902に形成される。
【0131】
周期構造1904においては、単位構造1906が周期方向に周期的に配列される。
【0132】
単位構造1906の各々は、負誘電率部1908及び正誘電率部1910を備える。
【0133】
負誘電率部1908は負の誘電率を持つ。正誘電率部1910は正の誘電率を持つ。
【0134】
単位構造1906の各々においては、負誘電率部1908及び正誘電率部1910が周期的に配列される。
【0135】
負誘電率部1908は、負の誘電率を持つ基体部1912から突出し周期方向D1に垂直な方向に延在する線状突起である。正誘電率部1910は、周期方向D1に垂直な方向に延在する線状溝である。負誘電率部1908及び正誘電率部1910は周期方向D1に交互に配列される。正誘電率部1910は、一の負誘電率部1908と他の負誘電率部1908との間の間隙である。線状溝が固体からなる誘電体で埋められ、固体からなる誘電体が正誘電率部1910とされてもよい。
【0136】
負誘電率部1908の第1の側面1916は、線状突起の延在方向に沿って進んだ場合に周期方向D1に蛇行する。負誘電率部1908の第2の側面1914は周期方向D1と垂直をなす。負誘電率部1908の上面1918は放射方向D2と垂直をなす。
【0137】
負誘電率部1908の第1の側面1916の蛇行により、負誘電率部1908の各々は周期方向D1についての反転対称性を持たなくなる。また、正誘電率部1910の各々も周期方向D1についての反転対称性を持たなくなる。負誘電率部1908の各々及び正誘電率部1910の各々が周期方向D1についての反転対称性を持たない場合は、周期構造1904も周期方向D1についての反転対称性を有さない。これにより、偶関数分布を持つ電磁波が放射面1902からわずかに放射され、スペクトル幅が狭い電磁波が放射面1902から放射される。第1の側面1916の波打ちの程度によりスペクトル幅は調整される。
【0138】
(第10実施形態)
第10実施形態は、電磁波放射装置に関する。
【0139】
図44の模式図は、第10実施形態の電磁波放射装置2000の断面を示す。
【0140】
図44に示されるように、第10実施形態の電磁波放射装置2000においては、電磁波放射体2002の放射面2004以外の面に加熱機構2006が取りつけられ、電磁波放射体2002が加熱機構2006により加熱される。電磁波放射体2002が加熱された場合は、周期構造2010に共鳴する波長のスペクトル幅が狭い電磁波が放射面2004から放射される。電磁波放射体2002は、第1実施形態から第9実施形態までの電磁波放射体1000,1100,1200,1300,1400,1500,1600,1700,1800及び1900のいずれかである。電磁波放射体2002を加熱するための熱エネルギーは、どのように供給されてもよい。例えば、赤外線の照射により熱エネルギーが供給されてもよいし、熱せられた流体、例えば、オイル、ガス等により熱エネルギーが供給されてもよい。また、燃焼等の反応熱により熱エネルギーが供給されてもよい。電力が熱エネルギーに変換され、変換された熱エネルギーが供給されてもよい。
【0141】
電磁波放射装置2000から放射される電磁波の波長は制限されないが、電磁波放射装置2000から放射される電磁波は、典型的には、赤外光又は可視光である。
【0142】
(第11実施形態)
第11実施形態は、電磁波放射装置に関する。
【0143】
図45の模式図は、第11実施形態の電磁波放射装置3000の断面を示す。
【0144】
図45に示されるように、第10実施形態の電磁波放射装置3000においては、電磁波放射体3002の内部に加熱機構3006が埋められ、電磁波放射体3002が加熱機構3006により加熱される。電磁波放射体3002が加熱された場合は、周期構造3010に共鳴する波長のスペクトル幅が狭い電磁波が放射面3004から放射される。電磁波放射体3002は、第1実施形態から第8実施形態までの電磁波放射体1000,1100,1200,1300,1400,1500,1600,1700,1800及び1900のいずれかである。
【0145】
この発明は詳細に説明されたが、上記の説明は、すべての局面において例示であり、この発明は上記の説明に限定されない。例示されない無数の変形例が、この発明の範囲から外れることなく想定されうる。
【符号の説明】
【0146】
100,1100,1200,1300,1400,1500,1600,1700,1800,1900,2002,3002 電磁波放射体
102,1102,1202,1302,1402,1502,1602,1702,1802,1902,2004,3004 放射面
104,1104,1204,1304,1404,1504,1604,1704,1804,1904,2010,3010 周期構造
106,1106,1206,1306,1406,1506,1605,1706,1806,1906 単位構造
2006,3006 加熱機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波放射装置であって、
電磁波を放射する放射面を有し、周期構造が前記放射面に露出し、前記周期構造において単位構造が周期方向に周期的に配列され、複素誘電率の実部が正である正誘電率部及び複素誘電率の実部が負である負誘電率部を前記単位構造の各々が備え、前記単位構造の各々において前記正誘電率部及び前記負誘電率部が前記周期方向に配列され、前記周期構造が前記周期方向についての反転対称性を持たない電磁波放射体と、
前記電磁波放射体を加熱する加熱機構と、
を備える電磁波放射装置。
【請求項2】
請求項1の電磁波放射装置において
前記負誘電率部の各々が前記周期方向についての反転対称性を持たない
電磁波放射装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2の電磁波放射装置において、
前記正誘電率部の各々が前記周期方向についての反転対称性を持たない
電磁波放射装置。
【請求項4】
請求項1の電磁波放射装置において、
前記負誘電率部が第1の負誘電率部であり、
前記単位構造は、
前記第1の負誘電率部と異なる負の誘電率を持つ第2の負誘電率部
をさらに備え、
前記単位構造の各々において前記第1の負誘電率部、前記第2の負誘電率部及び前記正誘電率部が前記周期方向に配列される
電磁波放射装置。
【請求項5】
請求項1の電磁波放射装置において、
前記正誘電率部が第1の正誘電率部であり、
前記単位構造は、
前記第1の正誘電率部と異なる正の誘電率を持つ第2の正誘電率部
をさらに備え、
前記単位構造の各々において前記負誘電率部、前記第2の正誘電率部及び前記第1の正誘電率部が前記周期方向に配列される
電磁波放射装置。
【請求項6】
請求項1の電磁波放射装置において、
前記負誘電率部が第1の負誘電率部であり、
前記正誘電率部が第1の正誘電率部であり、
前記単位構造の各々は、
前記第1の負誘電率部とは異なる幅を持つ第2の負誘電率と、
前記第2の負誘電率部とは異なる幅を持つ第2の正誘電率部と、
をさらに備え、
前記単位構造の各々において前記第1の負誘電率部、前記第1の正誘電率部、前記第2の負誘電率部及び前記第2の正誘電率部が前記周期方向に順次に配列される
電磁波放射装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかの電磁波放射装置において、
前記電磁波放射体は、
複素誘電率の実部が負である基体部
をさらに備え、
前記負誘電率部が前記基体部から突出し前記周期方向に垂直な方向へ延在する線状突起であり、
前記正誘電率部が前記周期方向に垂直な方向へ延在する線状溝である
電磁波放射装置。
【請求項8】
請求項7の電磁波放射装置において、
前記線状突起の側面が前記線状突起の延在方向に沿って進んだ場合に前記周期方向に蛇行する
電磁波放射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【図46】
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【公開番号】特開2012−221794(P2012−221794A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−87340(P2011−87340)
【出願日】平成23年4月11日(2011.4.11)
【出願人】(000001270)コニカミノルタホールディングス株式会社 (4,463)
【Fターム(参考)】