説明

電磁石装置

【課題】電磁石装置を提供する。
【解決手段】電磁石装置は、強磁性磁束ガイドと、磁束ガイドに隣接して配置された絶縁導電体と、磁束ガイドと導電体との間に介在され、磁束ガイドと導電体との間の相対動作を許容するように構成された少なくとも1つの弾性変形部材を含む中間支持構造体とを備え、相対動作は、磁束ガイドおよび導電体の熱膨張または収縮によって生じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも部分的に磁性磁束ガイドによって取り囲まれた、封入された導電体を有する電磁石装置に関する。とりわけ、本発明は、高温環境下で使用される電磁石装置に関する。
【背景技術】
【0002】
過酷な環境下で作動できる電磁石装置を有することが望ましい多くの装置が存在する。例えば、高温環境下や、装置の大きな振動にさらされる環境下である。このような装置は、航空機エンジンまたは原子力発電所内で、モータ、発電機、ソレノイド、バルブアクチュエータ、ポンプおよび制御棒機構等を含む場合がある。
【0003】
強磁性磁束ガイドと、高分子化合物によって絶縁された導電体とを有する電磁石装置は一般によく知られている。しかしながら、高温となる装置においては、高温下での電気的または機械的故障を防ぐため、従来の高分子材料に代わる他の電気絶縁体が必要とされる。可能な代替の電気絶縁体は、セラミック材料である。
【0004】
セラミック絶縁体および似たような代替品を使用する場合、セラミックと磁性磁束ガイドを形成する材料との間で熱膨張の相対的な係数が一致しないことにより、問題が発生しうる。このように熱膨張が一致しない結果、セラミック絶縁体が電気的または機械的に故障することにつながりうる。このような問題は、構成要素の大きさが概して増加することにより熱膨張差が増加する大型の機械においては、とりわけ深刻である。セラミック絶縁体および封入材料とともに生産されるコイルはまた、高分子材料ベースのコイルと比較してかなり低い機械的適合性を有している。
【0005】
セラミック絶縁体もまた、長期間高いレベルの振動に晒された場合、電気的または機械的に劣化することもあり、このような絶縁体が用いられる装置を制限しうる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、この従来技術の問題に対処しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、電磁石装置において、強磁性磁束ガイドと、磁束ガイドに隣接して配置された絶縁導電体であって、絶縁はセラミック材料によってなされている、導電体と、磁束ガイドと絶縁導電体との間に介在され、磁束ガイドと導電体との間の相対動作を許容するように構成された少なくとも1つの弾性変形部材を含む中間支持構造体とを備え、相対動作は、磁束ガイドおよび導電体の一方または両方の熱膨張または収縮によって生じる、電磁石装置を提供する。
【0008】
弾性変形部材は、電磁石装置において、隣接する絶縁導電体と強磁性磁束ガイドとの間で様々な程度の異なる熱膨張をとりうる。このため、装置に著しい熱が発生した後、それがなければ構成要素の境界に存在するであろう潜在的に有害なストレスを低減するであろう。これは、装置の寿命を長くすることに寄与するであろう。
【0009】
中間支持構造体はまた、高いレベルの振動に晒されたとき、隣接する部品間にある程度の機械衝撃抵抗をもたらすであろう。
【0010】
弾性変形部材は、弧状の経路に沿って導電体と強磁性磁束ガイドとの間を延びていても良い。弾性変形部材は、真っ直ぐであっても良い。弾性変形部材は、複数の曲率半径を有する曲がった経路に沿っていても良い。弾性変形部材は、蛇行する経路に沿っていても良い。弧状の弾性変形部材、曲がった弾性変形部材、または蛇行する弾性変形部材により、中間支持構造体に座屈または不可逆の塑性変形を生じさせることなく、部材の弾性変形を制御することが可能となる。
【0011】
絶縁導電体は、コイルからなっていても良い。コイルは延ばされることができる。コイルは、横断面が円形または多角形、規則的または不規則的であっても良い。好ましくは、コイルは円筒形である。
【0012】
絶縁導電体は、封入されていても良い。封入材料はセラミックであっても良い。適当なセラミック材料は、Al、MgO、MgO、ZrO、または商業的に利用可能な封入材料(例えばResbond(登録商標)920)として用いられる様々な他のセラミックスを含む。セラミック絶縁材料は、高分子の配線システムよりも通常高い温度に耐えうる。
【0013】
電磁石装置は、250℃超過の温度で用いられるものであっても良い。電磁石装置は、10Wと500kWとの間の範囲の電気出力を有していても良い。しかしながら、当業者は、本発明が他の適当な範囲の電気出力に適用されうることを理解するであろう。封入されたコイルの直径は、20mmから0.5mの範囲内であっても良い。
【0014】
弾性変形部材は、弧状の経路に沿って圧縮され、絶縁導電体と強磁性磁束ガイドとを押圧するようになっていても良い。絶縁導電体がコイルからなる場合、この押圧力は、強磁性磁束ガイド内でコイルを中心合わせするように作用し、有利にはコイルの軸方向の移動を防止する摩擦保持力を生じうる。
【0015】
弾性変形部材は、封入されたコイル上の第1点と、強磁性磁束ガイド上の第2点との間で実質的に延びうる。第1点および第2点は、コイルの軸を通る直線に沿って半径方向に離間していても良い。
【0016】
1つの弾性変形部材または各弾性変形部材は、それぞれ接触部を介して絶縁導電体および強磁性磁束ガイドに接触しても良い。このような構成において、使用時に、熱は弾性変形部材を介して絶縁導電体から強磁性磁束ガイドへ流れうる。
【0017】
接触部は、1つの弾性変形部材または各弾性変形部材と一体化されていても良い。接触部は、円形、多角形または不規則的な接触面領域を有していても良い。
【0018】
接触部は、複数の弾性変形部材を横切って延びていても良い。好ましくは、少なくとも1つの接触部が2つの隣接する弾性変形部材間に延びている。2つの隣接する弾性変形部材間に延びている接触部を有することにより、絶縁導電体のユニット表面領域から複数の経路へ熱を流すことが可能となる。これにより、1つの弾性変形部材の場合と比べて、より大きい、連結された断面領域を提供することが可能となるので、1つの接触部からの熱の流れを増加することができる。
【0019】
中間支持構造体は、強磁性磁束ガイドに一体化された部分からなっていても良い。強磁性磁束ガイドに一体化された部分からなっている中間支持構造体を有することにより、電磁石装置の組み立てをより簡単にすることができる。
【0020】
中間支持構造体は、絶縁導電体を受容するスリーブの形状からなっていても良い。スリーブは、シート材料から形成されていても良い。シート材料は、スリーブを形成するより前にその上に形成された弾性変形部材を有していても良い。スリーブは、管であっても良い。弾性変形部材は、スリーブに一体化された部分からなっていても良い。あるいは、弾性変形部材は、溶着、拡散接合および超音波溶着からなる群のうちの1つにより、シート材料または管に取り付けられていても良い。
【0021】
スリーブを形成するシート材料は、金属から構成されていても良い。接触部および弾性変形部材の両方または一方が、金属から構成されていても良い。一般に金属は、中間支持構造体のための熱伝導性および曲げ剛性という観点から適切な材料をもたらす。弾性変形部材および接触部を構成するのに適した金属は、例えばアルミニウム、チタンおよびケイ素鋼である。
【0022】
絶縁導電体が封入されたコイルからなる場合、スリーブは、コイルの外周表面または内周表面の一方または両方を完全に取り囲んでも良い。あるいは、スリーブは、コイルの外周表面または内周表面の一方または両方を部分的に取り囲んでも良い。
【0023】
導電体が細長いコイルからなる場合、弾性変形部材は、コイルと強磁性磁束ガイドとの表面接触を最大化し、その一方から他方への熱の流れを改善するように、コイルの全長に渡って延びていても良い。
【0024】
中間支持構造体は、少なくとも1つの非導電部を有していても良い。非導電部は、例えば通電電流が時間変化するかまたは一時的である場合、中間支持構造体内でコイル外周に循環する電流を妨げるように構成されていても良い。
【0025】
スリーブは、頂部および谷部を有する波形状の構造からなっていても良い。頂部は、2つの隣接する弾性変形部材と、封入されたコイルに隣接する、結合された接触部とによって形成されても良い。谷部は、2つの隣接する弾性変形部材と、強磁性磁束ガイドに隣接する、結合された接触部とを含んでいても良い。波形状の構造は、実質的にスリーブを形成することができるシート材料として形成するのが比較的簡単である。波形状の構造により、接触部および弾性変形部材の構造を簡単にすることもできる。
【0026】
頂部および谷部は、丸みのある輪郭を有していても良い。頂部および谷部の接触部は、同軸となるようにコイルの軸周りに湾曲していても良い。頂部および谷部が同軸の接触部を有することにより、封入されたコイルと強磁性磁束ガイドと接触表面領域を相対的に大きくし、強磁性磁束ガイドからの熱の流れをより効率的にすることができる。
【0027】
波形状のスリーブの頂部および谷部は、封入されたコイルを冷却剤により冷却するためのダクトを形成してもよい。冷却剤は、気体または液体であってもよい。
【0028】
以下の図面を参照することにより、本発明の実施の形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態による電磁石装置を示す断面図。
【図2】図2は、図1に示す中間支持構造体の一部を示す拡大図。
【図3】図3a−cは、本発明の中間支持構造体の他の実施の形態を示す図。
【図4】図4は、本発明の中間支持構造体の他の実施の形態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、線形アクチュエータの一部を形成するソレノイドの形態をとる電磁石装置10を示している。ソレノイドは、図1において断面で示されている、細長い円筒状の密封コイル(potted coil)12の形態をとる導電体を含んでいる。密封コイル12は、固定子の形態をとる強磁性磁束ガイド14の対応する円筒孔内に収納されている。密封コイル12の内側円筒面は、強磁性の電機子(図示せず)を滑動可能に収納できる空間16を画定し、コイルへの電圧の付加により電機子が第1位置から第2位置へ作動するようになっている。
【0031】
密封コイル12は、円筒螺旋状に巻回されてセラミック絶縁材料内に封入された導電体を有する。セラミック材料はAlからなる。しかしながら、当業者は、本発明に他のセラミックスまたは非セラミック封入材料を利用できることを認識するであろう。
【0032】
技術分野で公知であるように、セラミック絶縁体は、一般に機械的および電気的に劣化することなく高温に晒すことが可能な、既存の高分子絶縁配線システムと比較した場合、優れた熱特性を示す。これにより、装置の作動に不利な影響を及ぼすことなく、高温環境に長時間晒すことが可能となる。
【0033】
しかしながら、強磁性磁束ガイド14とともにセラミック密封コイル12を使用することは、要素の熱膨張性が異なることにより高温環境下で問題を引き起こす。ケイ素鋼から作製された強磁性磁束ガイド14および電気的に絶縁されたセラミックスの典型的な熱膨張係数は、それぞれおよそ13.0×10−6/℃および6.0×10−6/℃であろう。ゆえに、250℃超の作動温度は、とりわけ大きな装置においては、長さおよび体積の熱膨張において形状による大きな相違を導く。このことは、隣接する絶縁要素と磁石要素間との境界で大きなストレスを生む結果となり、これは絶縁材料が早い時期に機械的および電気的不具合を生じることにつながる。
【0034】
本発明は、密封コイル12と強磁性磁束ガイド14との境界において、細長い波形状のスリーブ18の形状からなる中間支持構造体18を提供する。波形状のスリーブの頂部20と谷部22とは(これらは恣意的に名付けられている)装置10の長さに沿って延びており、ソレノイドの長手軸に平行である。温度が上昇した場合、波形状のスリーブ18は、(装置の構成要素における特定の構成、材料および温度によって)径方向に圧縮または膨張し、これにより密封コイル12と強磁性磁束ガイド14との間で相対的な移動を許容する。ゆえに、装置10が高温環境下で用いられる際、密封コイル12と強磁性磁束ガイド14との間におけるストレスは、波形状のスリーブ18の圧縮または膨張によって吸収される。境界でのストレスが減少することにより、密封コイル12を封入する絶縁セラミックスの機械的および電気的故障を減少させることに寄与する。
【0035】
図2に更に明確に示されているように、頂部20と谷部22とは、強磁性磁束ガイド14の内周表面および密封コイル12の外周表面に対して配置された、複数の弾性変形部材24および接触部26からなっている。
【0036】
弾性変形部材24は湾曲した板の形態からなり、これは、それぞれ密封コイル12の外周表面および強磁性磁束ガイド14の内周表面上の2つの半径方向に離間した点の間で弧状の経路内に延びている。弾性変形部材24の湾曲により、中間支持構造体の座屈または不可逆的な樹脂変形を生じることなく、制御された部材の変形をもたらすことが可能となる。ゆえに、装置10が冷却された後、中間支持構造体18は元の形状に戻る。
【0037】
波形状のスリーブ18は、装置10が高いレベルの振動を受けたとき、この結果生じる密封コイル12の劣化を減らすよう、密封コイル12と強磁性磁束ガイド14との間の相対動作のいくつかを吸収するように作用することも可能である。
【0038】
弾性変形部材24は、密封コイル12の外周表面と強磁性磁束ガイド14の内周表面との間で交互に並ぶ接触部20、22に対して互いに連結されており、これにより波形状を形成する。この波形状は、弾性変形部材24の湾曲を除いて輪郭が実質的に矩形であり、相対的に広い接触表面領域の接触部26をもたらす。このことは、密封コイル12からの熱を、弾性変形部材24を介して強磁性磁束ガイド14へ効果的に伝達するのに役立つ。
【0039】
波形状構造の頂部20と谷部22とは、密封コイル12を流体の流れにより空冷するためのダクトをも提供する。この流体は、例えば空気等の気体または液体であっても良い。ダクトを冷却装置に連結するためのシステムは、本技術分野で公知である。
【0040】
弾性変形部材24の湾曲は、電磁石装置10の製造中にそれらに圧力が加えられることを許容し、これにより接触部26上に押圧力が生じて、密封コイル12と強磁性磁束ガイド14との間に摩擦保持力をもたらすようになっている。この摩擦保持力は、密封コイル12を強磁性磁束ガイド14内で中心に配置することを補助し、他の機械的拘束を必要とすることなく軸方向移動を妨げる。しかしながら、当業者は、装置を更に保持するために、ある用途においては、更なる機械的拘束、例えば皿ばねまたは波形ワッシャーが望ましいことを認識するであろう。
【0041】
図2に示されているように、スリーブ18の実線および破線は、温度上昇の前後で生じる、2つの個々の波の休止および圧縮状態をそれぞれ示している。ゆえに、高温環境下に晒される前に、波形状構造18は実線に示される位置に休止している。所定の温度に上昇した後、強磁性磁束ガイド14および密封コイル12はともに(特定の構造に応じて)異なる程度に膨張し、これによりスリーブ18を破線の位置に圧縮する。当業者は、圧縮(または膨張)は、装置10の材料および具体的な構造上の寸法に依存するであろうことを認識するであろう。
【0042】
このような構成により、波形状のスリーブはコイル12に対して半径方向に圧縮し、スリーブ18の内側または外側の連結部と、密封コイル12および強磁性磁束ガイド14の各表面との間における横方向の移動は、ほとんどないか全くない。かくして、各表面間での摩耗および損傷に関するあらゆる滑動を減らすことができ、これにより電磁石装置10の寿命を保つことができる。
【0043】
スリーブ18は、密封コイル12の周囲に巻装されるとともに強磁性磁束ガイド14内に挿入される前に予め形成された波形状を有するチタンから構成される。これは、装置10を構成するための簡単かつ安価な方法を提供する。このスリーブ状の構成により、密封コイル12がスリーブ18によって部分的にのみ取り囲まれることが可能となり、これにより密封コイル12の周囲に環状の導電性経路が生じることを防止する。ゆえに、一時的または時間変化するコイル電流が生じている間、スリーブ18内に寄生電流(およびその結果としての磁場)が発生することがない。
【0044】
中間支持構造体はチタンから構成され、これにより望ましい温度耐性、機械的弾性変形、および熱伝導性を提供し、密封コイル12からの熱を伝達するのに寄与する。本発明のスリーブ18は非磁性金属からなるが、当業者は、装置10の用途に応じて、他の非磁性金属または磁性金属が望ましい場合もあることを認識するであろう。当業者はまた、構成要素の材料および寸法を認識することができ、かつ電磁石装置10の用途、例えば電力および作動温度により、中間支持構造体18にどういった曲げ剛性および熱伝導性が要求されるかが決定されるであろう。
【0045】
弾性変形部材24は様々な形状をとっても良い。図1および図2に示す実施の形態において、弾性変形部材24は湾曲した板からなる。図3a−cおよび図4は、中間支持構造体18の弾性変形部材24および接触部26の他の実施の形態を示す。
【0046】
図3aは、両端で弾性変形部材124に連結された、密封コイルに接触するための接触部126aを有する中間支持構造体118の拡大された図である。弾性変形部材124は、強磁性密封磁束ガイド114において1つの接触部126bに収束し、断面が略カクテルグラス形状を有するように湾曲している。上述した実施の形態と同様、実線および破線は、中間支持構造体118の休止および圧縮状態をそれぞれ示している。
【0047】
図3bは、密封コイルに接触するための接触部226を有する中間支持構造体218の拡大図である。図3aに示す実施の形態と同様に、接触部226は、その両端で弾性変形部材224に連結されている。しかしながら、図3bに示す弾性変形部材224は、図3aに示す実施の形態のように強磁性磁束ガイド214の一点に収束するのではなく、強磁性磁束ガイド214にそれぞれ分離して隣接する、離間した接触部226a、226bに対して、それぞれ取り付けられている。図3bに示す実施の形態の弾性変形部材224は、波形輪郭をもたらすように複数の半径を有する、湾曲した経路に沿っている。
【0048】
図3cに示す実施の形態は、弾性変形部材324が、それぞれゴブレット形状を形成するように対称的に内方に尖らせた経路に追従するという違いを除き、図3bに示す実施の形態と同様である。
【0049】
図3a−cの実線および破線は、温度が上昇する前後における、各構成体の休止および圧縮状態をそれぞれ示している。ゆえに、高温環境下に晒される前、構成体は実線に示される位置に休止する。所定の温度に上昇した後、強磁性磁束ガイド114、214、314および密封コイルは、ともに様々な程度に膨張し、これにより波形状のスリーブ118、218、318を破線の位置に圧縮するであろう。当業者は、圧縮(または膨張)は、電磁石装置の材料および具体的な構造上の寸法に依存するであろうことを認識するであろう。
【0050】
図4は、本発明の他の実施の形態による中間支持構造体を部分的に拡大して示している。本実施の形態による弾性変形部材424は直線的であり、強磁性磁束ガイド414の接触部426上にある共通点から密封コイルへ向けて、V字形状を形成するように張り出している。密封コイル412に接触するための分離された接触部426a、426bは、各弾性変形部材424の先端に取り付けられており、互いに向けて延びている。接触部426a、426bの遠位端は互いに連結されておらず、強磁性磁束ガイド414上の共通する接触部426の上方に、離間した間隙が設けられるようになっている。このような構成により、密封コイル412上の接触部426a、426bは、密封コイル412の熱膨張により互いに対して横方向に移動自在となり、これにより、そうでなければ座屈に繋がるであろう弾性変形部材の長さ方向に沿ったストレスを緩和する。
【0051】
中間支持構造体の寸法および材料は、強磁性磁束ガイドおよび密封コイルの寸法および材料と、電磁石装置が用いられる用途および環境とに依存するであろうことは、当業者によって認識されるであろう。
【0052】
当業者はまた、封入材料はセラミック材料に限定されるものではなく、本発明は導電体とそれを取り囲む強磁性磁束ガイドとの間の熱膨張が不均衡であることに悩まされるあらゆる電磁石装置において実現可能であることを認識するであろう。
【0053】
上述した実施の形態は、封入された円筒コイルを有する線形アクチュエータに関するものであるが、他の封入されるかまたは封入されていない導体形態の形状を用いることも可能であることを認識できる。実際、本発明は、上述した記載の全体と同一の問題に悩まされるあらゆる電磁石装置に適用可能である。例えば、電磁石装置は、密封コアのように巻線されたモータまたは他のアクチュエータであっても良い。また、当業者は、本発明がアクチュエータと同様に電磁石センサーにおいても実現できることを認識するであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁石装置において、
強磁性磁束ガイドと、
前記磁束ガイドに隣接して配置された絶縁導電体であって、前記絶縁はセラミック材料によってなされている、導電体と、
前記磁束ガイドと前記導電体との間に介在され、前記磁束ガイドと前記導電体との間の相対動作を許容するように構成された少なくとも1つの弾性変形部材を含む中間支持構造体とを備え、
前記相対動作は、前記磁束ガイドおよび前記導電体の一方または両方の熱膨張または収縮によって生じる、電磁石装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの弾性変形部材は、弧状の経路に沿って前記導電体と前記強磁性磁束ガイドとの間に延びている、請求項1記載の電磁石装置。
【請求項3】
前記弾性変形部材は、それぞれ接触部を介して前記絶縁導電体および前記強磁性磁束ガイドに接触しており、熱が前記弾性変形部材を介して前記絶縁導電体から前記強磁性磁束ガイドに流れることが可能となっている、請求項1または2記載の電磁石装置。
【請求項4】
少なくとも1つの前記接触部は、2つの隣接する弾性変形部材間に伸びている、請求項3記載の電磁石装置。
【請求項5】
前記絶縁導電体は、封入されたコイルからなり、前記中間支持構造体は、前記封入されたコイルの外周表面または内周表面の一方または両方を取り囲むスリーブからなる、請求項1乃至4のいずれか一項記載の電磁石装置。
【請求項6】
前記中間支持構造体は、実質的に前記コイルの長手方向に沿って延びる、請求項5記載の電磁石装置。
【請求項7】
前記スリーブは、波形状の構造からなる、請求項5または6記載の電磁石装置。
【請求項8】
波形状の前記スリーブの頂部および谷部は、前記封入されたコイルを空冷するためのダクトを形成する、請求項6または7記載の電磁石装置。
【請求項9】
前記弾性変形部材は、前記強磁性磁束ガイドと前記封入されたコイルとの間に力を及ぼすことにより前記コイルの軸方向移動を防止する保持摩擦力を提供するように圧迫される、請求項5乃至9のいずれか一項記載の電磁石装置。
【請求項10】
前記中間支持構造体は、前記強磁性磁束ガイドに一体化された部分からなる、請求項1乃至9のいずれか一項記載の電磁石装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−49540(P2012−49540A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−182961(P2011−182961)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(590005438)ロールス‐ロイス、パブリック、リミテッド、カンパニー (21)
【氏名又は名称原語表記】ROLLS−ROYCE PUBLIC LIMITED COMPANY
【Fターム(参考)】