説明

電磁誘導式熱風発生及び発電装置

【課題】簡単な構成で、一般家庭や農業分野において、高効率で、安全且つ経済的な熱源として有用な電磁誘導式熱風発生及び発電装置を提供する。
【解決手段】装置全体の略中央に発電用コイル4を固定して設ける。その両側面を挟持するように一対の平盤状回転体1を同軸4a上に設け、各々の平盤状回転体1から対称に導電材を含む発熱部2と、発熱部2近傍に熱風捕捉板10を配置し、熱風排出口11aを設けた風洞11で覆い、この風洞11内で回転して送風するファン8を平盤状回転体1と同軸4a上に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石を用いて渦電流を発生させて得たジュール熱により熱風を発生させ、発生した熱風をハウス栽培の加温、家屋の暖房や積雪溶解に使用すると共に、発電用コイルで発電した電力の再利用が可能な電磁誘導式熱風発生及び発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から交流電流により交流磁界を発生させて行う誘導加熱の手法を用いた電磁誘導式加熱装置が種々提案されている。例えば、導電性の被加熱体と交流磁場発生手段から構成される誘導加熱装置において、直流磁場発生手段を永久磁石とし、この直流磁場に交流磁場を作用させることにより、被加熱体を急速に加熱するようにした誘導加熱装置(特許文献1参照)や渦電流が発生可能なロータリーの外周に複数の永久磁石を配置した加熱装置(特許文献2参照)等が提案されている。一方、変換元の電力を電動機に入力し、その回転運動を同軸上の発電機に伝達、発電し電気エネルギーに戻す電動発電装置も知られており、この電動発電装置は、交流電力の周波数変換では交流電動機と交流電動機とで構成する。また、直流から交流を得るときは直流電動機と交流発電機とで、直流の電圧変換では直流電動機と直流発電機とで構成する。変圧器が電圧の変換しかできないのに対し、電動発電機では機構上、電力で発電機を作動させて発電する形となるため、電動機と発電機の組み合わせ方によって電圧変換・周波数変換・直流−交流変換など様々な電力変換に対応できる点が特徴であり、古くから用いられてきた。
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−343541号公報
【特許文献2】再公表WO2003/053103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の装置は、複写機におけるトナーの定着や工業用材料の乾燥・加熱に応用したものであり、一般家庭における熱原や農業分野、とくにハウス栽培における加温装置としての応用例はほとんど無いのが実情である。本発明は上記のような従来技術の課題に鑑み、簡単な構成で、一般家庭や農業分野において、高効率で、安全且つ経済的な熱源として有用な電磁誘導式熱風発生及び発電装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的を達成するため、本発明の電磁誘導式熱風発生及び発電装置は、内部に永久磁石が配置され、回転可能に設けられた平盤状回転体と、この平盤状回転体の一方側面近傍に配置して設けられると共に、前記永久磁石による磁界中に配置された導電材を含む発熱部と、該発熱部近傍に配置して設けられると共に、複数の熱風流通孔が穿孔された熱風捕捉板と、前記平盤状回転体の他方側面近傍に配置して設けられる発電用コイルとからなることを第1の特徴とする。また、熱風捕捉板の熱風流通孔が螺旋状に配置されていることを第2の特徴とする。さらに、熱風捕捉板に、熱風流通孔の配置に倣ってガイド板が立設されていることを第3の特徴とする。またさらに、熱風流通孔は、その熱風流入端から流出端に向かって漸次狭小するテーパ状に形成されていることを第4の特徴とする。加えて、発電用コイルの両側面を挟持するように一対の平盤状回転体を同軸上に設けたことを第5の特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の電磁誘導式熱風装置は、以下の優れた効果がある。
(1)渦電流により導電材料を発熱させる自己発熱なので、熱効率がよく、二酸化炭素の発生がなく、エコロジーな熱源である。また、使用する商用電力消費量は少なく、ランニングコストを低く抑えることができる。
(2)回転体内に永久磁石を配置し、導電材料の近傍で回転させるだけの簡単な構造なので、故障しにくく、メンテナンスもし易い。
(3)温度調整は、回転数の調整だけで済むので、容易である。
(4)複数の熱風流通孔が穿孔された熱風捕捉板により、発熱部で発生したジュール熱を効率良く捕集できる。
(5)平盤状回転体の他面側のコイルを配置したので発電が可能でありこれを再度電力として使用できるので、さらに効率が増大する。
(6)発電用コイルは鉄心等のヨーク無し(空芯コイル)としたので、回転抵抗が極小で効率良く発電できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明では、金属板等の導電材の近傍に、強力な磁力を有する永久磁石を内部に配置した平盤状回転体を高速回転させることによって、導電材にN,Sの磁極が交互に横切り、その結果、電磁誘導現象により導電材自体には渦電流が発生し、この渦電流が熱エネルギーに変換されて導電材が発熱する。
【0008】
導電材としては、磁力により渦電流が発生し易い、銅、銀、アルミニウム、ステンレスなどの良導電体の金属を選択するのが好ましい。
【0009】
永久磁石としては、例えば、ネオジウム系磁石、サマリウム系磁石などの表面3000ガウス以上の永久磁石を使用するのが好ましい。永久磁石の磁力の強さが強いほど導電材は高温に発熱する。永久磁石は導電材の周りを数100rpm以上で回転させる。必要発熱量や用途にあわせて、永久磁石の強さや極数、回転数は決定される。発熱温度調整はロータの回転数の調整により容易に行うことができる。
【0010】
熱風捕捉板の材質としては、導電材と同様に、銅、銀、アルミニウム、ステンレスなどの良導電体の金属を選択するのが好ましい。また、熱風流通孔の数及び穿孔位置は任意であるが、螺旋状やインボリュート曲線状に配置するのが望ましい。
【0011】
さらに、発電用コイルを固定して設け、その両側面を挟持するように一対の平盤状回転体を同軸上に設け、各々の平盤状回転体から対称に導電材を含む発熱部と、発熱部近傍に配置して設けられると共に、複数の熱風流通孔が穿孔された熱風捕捉板とを配置し、熱風排出口を設けた風洞で覆い、この風洞内で回転して送風するファンを平盤状回転体と同軸上に配置している。
【実施例】
【0012】
図1は本発明に係る電磁誘導式熱風発生及び発電装置の一実施例を示す側面断面図、図2は回転体内の永久磁石の配置図、図3は、熱風捕捉部の(a)は平面断面図、(b)は正面断面図である。
【0013】
図1に示すように、本発明の電磁誘導式熱風発生及び発電装置は、複数の永久磁石1aが任意の間隔をおいて固定された平盤状回転体1の一方側面の近傍に、発熱部2としてのアルミニウム製の円板と、この円板の近傍に略同径の熱風捕捉部10が連結棒2aにより連結固定配置されている。
【0014】
発熱部2と熱風捕捉部10の熱風捕捉板6には、その周縁から突出して各々4箇所の鍔部2a及び6bが一体に形成され、この鍔部2a及び6bに脚立部2aの先端を挿通させてナット締めして固定する。
【0015】
さらに、装置全体の略中央には発電用コイル4を固定して設け、その両側面を挟持するように一対の平盤状回転体1を同軸4a上に設け、各々の平盤状回転体1から対称に導電材を含む発熱部2と、発熱部2近傍に配置して設けられると共に、熱風捕捉板6とを配置し、熱風排出口11aを設けた風洞11で覆い、この風洞11内で回転して送風するファン8を平盤状回転体1と同軸4a上に配置する。
【0016】
図2に示すように、永久磁石1aは回転体1の円周に沿って等間隔に配置する。磁石1aは、それぞれN極とS極とが交互に位置するように配置しても良いし、同極同士が隣接するように配置しても良い。配置する個数も任意である。回転体1は、モータ3にVベルト3aを介して連結された回転軸4により高速回転する。尚、本実施例においてモータ3の電源は商用電源5としたが、太陽光、水力、風力等の自然界のエネルギーを用いて電源とすることが有益なことは言うまでもない。
【0017】
熱風捕捉部10は、発熱部2で発生したジュール熱を捕捉収集する装置であり、図2に示すように、複数の熱風流通孔6aが穿孔されたアルミ製の熱風捕捉板6の上面に熱風排気筒7aを有する略円筒状のカバー7で被覆して設けられる。本実施例では、熱風流通孔6aは螺旋状に穿孔配置され、この配置に倣って帯状のガイド板9が螺旋状に立設される。そして、送風ファン8により引圧して発熱部2で発生したジュール熱を熱風として熱風排出口11aから送風できるようにされている。
【0018】
ここで、熱風流通孔6aは、その熱風流入端から流出端に向かって漸次狭小するテーパ状に形成することで、熱風の捕捉効果並びに流入速度を高めるようにされている。尚、熱風流通孔の数、形状及び穿孔位置は任意であり、本実施例に限定されないことは言うまでもない。また、本発明では発熱部2と熱風捕捉板6を同一部材とし、双方の機能を兼ねる構成にしているが別体としてもよい。
【0019】
さらに、回転体1と発電コイル4により発電し、この発電コイル4から生じる電力は、昇圧手段等を介してモータ3で使用する電力として供給しても良いし、別途電気機器の電源として使用することも勿論可能である。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明装置は、農業分野での温室ハウス栽培における加温装置として、また、家屋の暖房や積雪溶解用の熱原として使用でき実用性が高く極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る電磁誘導式熱風発生及び発電装置の一実施例を示す側面断面図である。
【図2】回転体内の永久磁石の配置図である。
【図3】熱風捕捉部の(a)は平面断面図、(b)は正面断面図である。
【符号の説明】
【0021】
1 回転体
1a 永久磁石
2 導電材(発熱部)
2a 連結棒
3 モータ
3a Vベルト
4 発電コイル
4a シャフト(回転軸)
5 商用電源
6 熱風捕捉板
6a 熱風流入孔
6b 熱風捕捉板の鍔部
7 熱風捕捉板のカバー
7a 熱風排出筒
8 送風ファン
9 ガイド板
10 熱風捕捉部
11 風洞
11a熱風排出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に永久磁石が配置され、回転可能に設けられた平盤状回転体と、この平盤状回転体の一方側面近傍に配置して設けられると共に、前記永久磁石による磁界中に配置された導電材を含む発熱部と、該発熱部近傍に配置して設けられると共に、複数の熱風流通孔が穿孔された熱風捕捉板と、前記平盤状回転体の他方側面近傍に配置して設けられる発電用コイルとからなることを特徴とする電磁誘導式熱風発生及び発電装置。
【請求項2】
熱風捕捉板の熱風流通孔が螺旋状に配置されていることを特徴とする請求項1記載の電磁誘導式熱風発生及び発電装置。
【請求項3】
熱風捕捉板に、熱風流通孔の配置に倣ってガイド板が立設されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の電磁誘導式熱風発生及び発電装置。
【請求項4】
熱風流通孔は、その熱風流入端から流出端に向かって漸次狭小するテーパ状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の電磁誘導式及び発電装置。
【請求項5】
発電用コイルの両側面を挟持するように一対の平盤状回転体を同軸上に設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の電磁誘導式熱風発生及び発電装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−49130(P2011−49130A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−230973(P2009−230973)
【出願日】平成21年8月25日(2009.8.25)
【出願人】(594103862)
【Fターム(参考)】