説明

電線供給装置

【課題】 低い張力が安定して電線に作用するようにしたものであって、特に極小径の電線供給に最適な電線供給装置を提供すること。
【解決手段】ボビンを着脱自在に装着するボビン支持盤51を備え、ボビン支持盤51に隣接してダンサープレート26を搖動自在に設ける。ダンサープレート26にボビン支持盤51に接合するブレーキシュー35と枢軸部27を挟んで反対側にボビン軸50と平行方向に向けたガイドロール31を設ける。ダンサープレート26はブレーキシュー35がボビン支持盤51を押圧する方向にコイルバネ24により付勢されるものである。ボビンに巻付けた電線をガイドロール31に掛けてから撚り線機に供給し、電線に過度のテンションが掛かるとダンサープレート26を付勢力に抗して回動してブレーキシュー35の制動力を弱めてテンションを抑制する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撚り線機に電線を供給する電線供給装置に関するものであり、詳しくは、低い張力が安定して電線に作用するものであって、特に極小径電線の供給に好適な電線供給装置に関している。
【背景技術】
【0002】
撚り線機に電線を供給するには電線にテンションを掛ける必要があるが、特に電線の径が0.03mm程度の極小径の場合は、低い張力が安定していることが望ましい。
【0003】
従来から特許文献1に開示された電線供給装置が知られている。特許文献1に記載された供給装置は、図を参照して、巻枠ドラム35に巻かれた電線aがフライヤー8を経て引き出されるものであり、フライヤー8が電線aをほどく方向に回転して該電線aに対し引出し速度とこれに追従するフライヤー8の回転トルクにより適度の張力を与えられて繰出されるようになっている。電線供給中は、電線aの引出し速度と繰出し速度は絶えず微小な変化をしており、瞬間的に大きな張力が電線aに対し付加されることがある。
【0004】
第4図において、今、所定以上の張力が電線aに掛かると、プーリ15から引出される電線aの引張力によって振杆14が反時計方向に傾斜し、これに伴って偏心カム17がローラ19を押し、槓杆18が支点20を中心に時計方向に傾斜する。すると、ブレーキロッド16が押し下げられるので、制動杆11が支杆13を中心に反時計方向に傾斜してブレーキ片12はブレーキ盤6から離れる方向に移動する。このようにして、ブレーキ片12のブレーキ盤6に対する制動力が弱まるので、フライヤー8は電線aの張力に対応して回転し、巻枠ドラム35からの繰出し速度は無制動状態に移行して電線aに掛かる張力を緩和するものである。
【0005】
また、これとは逆に電線aに掛かる張力が所定以下に下がると、プーリ15から引出される電線aの張力が弱まるので振杆14は時計方向に傾斜して復元し、偏心カム17がローラ19を押付ける力も弱まり、これにより槓杆18は支点20を中心に反時計方向に傾斜し、ブレーキロッド16を引き上げる方向に移動させる。すると、前記の場合と逆にブレーキ片12のブレーキ盤6に対する制動力が強まり、電線aに対する張力を高めることができるものである。
【0006】
上記したように、特許文献1に記載の電線供給装置は、電線aに掛かる張力を自動的に調整して適正な張力を与えるものであるが、ブレーキ片12とブレーキ盤6の間に、振杆14,偏心カム17,ローラ19,槓杆18,ブレーキロッド16等の多くの部材を介在させているので、張力の制御がダイレクトに行われないものであった。このため、張力の変化に対する応答が鈍く、特に低い張力が不安定であり、電線の径が0.03mmのように極小径の場合は高品位な撚り線が得られないという問題があった。
【0007】
【特許文献1】特開昭54−17468号公開特許公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、低い張力が安定して電線に作用するようにしたものであって、特に極小径電線の供給に好適な電線供給装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
解決手段の第1は、ボビンを着脱自在に装着するボビン支持盤を備え、該ボビン支持盤に隣接してダンサープレートを搖動自在に設け、該ダンサープレートに上記ボビン支持盤に接合するブレーキシューと枢軸部を挟んで該ブレーキシューの反対側にボビン軸と平行方向に向けたガイドロールを設け、上記ダンサープレートは上記ブレーキシューが上記ボビン支持盤を押圧する方向に付勢されるものであり、上記ボビンに巻付けた電線を上記ガイドロールに掛けてから撚り線機に供給し、電線に過度のテンションが掛かると上記ダンサープレートを付勢力に抗して回動して上記ブレーキシューの制動力を弱めてテンションを抑制することを特徴とするものである。
解決手段の第2は、解決手段の第1において、ダンサープレートが、コイルバネによって付勢されるものであることを特徴とするものである。
解決手段の第3は、解決手段の第2において、コイルバネは、取付け位置を変更して弾性力を調整できるものであることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、ボビンを着脱自在に装着したボビン支持盤に接合するブレーキシューを設けたものであり、ブレーキシューは搖動可能なダンサープレートにガイドロールと共に設けられ、さらに、ブレーキシューはボビン支持盤を押圧する方向に付勢されており、電線の繰出し中に電線に過度のテンションが発生した場合は、電線がガイドロールを引張ってダンサープレートを回動して上記ブレーキシューのボビン支持盤に対する制動力を抑制して過度のテンションを緩和することができるものであって、電線に発生するテンションを感知するガイドロールとテンションを抑制するブレーキシューが共にダンサープレートに設けられているだけでなく、他の部材を不要にしたものであるから、従来構造と比較して張力の変化に対する応答が素早く特に低い張力が安定しているので、極小径の電線供給に有効なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は本発明に係る電線供給装置の全体を組立てた斜視図、図2はブレーキ部材の部品図及びダンサープレート取付部の断面図、図3はボビン部材の部品図及びボビン軸取付部の断面図、図4はブレーキシュー部分を示す正面図である。図1に示す電線供給装置は、1個のボビン軸を有しており、該ボビン軸から1本の電線を繰出すものである。また、撚り線機は図示していないが、例えば、撚り線機が7本の電線を撚るものである場合、電線供給装置は7基が使用される。
【0012】
電線供給装置は、機枠1と該機枠1に設けたブレーキ部材2並びにボビン部材5から構成されている。機枠1は、機枠背板10の両端部に該機枠背板10に対し直交方向に曲げた機枠庇板11が形成されており、該機枠庇板11に電線mを繰出す誘導案内部12を設けたものである。
【0013】
ブレーキ部材2は、機枠1の機枠背板10に接合する内枠板材20を有しており、該内枠板材20には長手方向に平行する両端部に当該部分を直角に折り曲げたテンションベース21が形成されている。また、テンションベース21には、長手方向に沿った長孔22が形成され、さらに長孔22にスライドピン23が摺動自在に収容されている。なお、スライドピン23にコイルバネ24が取付けられると共に当該スライドピン23は蝶ナット25によりテンションベース21に固定されている。
【0014】
内枠板材20の端部で上記コイルバネ24の延長方向にダンサープレート26が取付けボルト27により搖動自在に設けられている。28はベアリング、29はボス、30はボス29を固定する子ネジを示している。ダンサープレート26には、正面視で内枠板材20の外側に向う一端にガイドロール31が回転自在に設けられている。ガイドロール31はプラスチック製の中空体であり、ダンサープレート26に固定したガイドロール軸32にベアリング33を介して挿嵌されている。なお、ガイドロール31は、後述するボビン軸と同じ長さに形成されており、ボビン軸から繰出された電線mが該ガイドロール31及び上記誘導案内部12を経て撚り線機へ繰出されるようになっている。
【0015】
ダンサープレート26には、正面視で取付けボルト27を挟んだ反対側となる内枠板材20の内側に向かう端部に、ブレーキシュー35が小ネジ36により回転自在に設けられている。37は小ネジ36に挿嵌したカラーである。ブレーキシュー35はフエルト製である。なお、ダンサープレート26には、ブレーキシュー35の取付け位置の反対側に上記スライドピン23に固定したコイルバネ24が取付けられている。このように取付けられたダンサープレート26は、取付けボルト27を中心に搖動自在であり、また、コイルバネ24の弾力により取付けボルト27を中心に正面視で時計方向に付勢されている。
【0016】
ボビン部材5は、上記ブレーキ部材2のガイドロール31と平行方向に向けたボビン軸50を有しており、該ボビン軸50は上記機枠背板10に設けたダンサープレート26の取付け位置の近傍に設けられており、基端部にブレーキドラムを兼ねたボビン支持盤51がベアリング52を介して回転自在に設けられている。また、ボビン軸50は、先端部を小径に形成した小径部50aが設けられている。53はボビン軸50の小径部50aにベアリング54を介して挿入した楔結合部材を示しており、軸方向に向う楔型の突出部53aを備えており、ボビン軸50にボビン60を装着した時、ボビン軸50とボビン60の軸孔との間に楔結合部材53の突出部53aを挿入して両者を結合するものである。
【0017】
楔結合部材53から突出したボビン軸50には、コイルスプリング55を設けると共に当該ボビン軸50の先端部に抜止めプレート56がピン57によって回動可能に設けられている。なお、コイルスプリング55と抜止めプレート56との間にワッシャー58を挿入している。
【0018】
ボビン部材5は、ボビン軸50がブレーキ部材2のガイドロール31と平行方向に向けて設けられていると共に、ボビン支持盤51にダンサープレート26に設けたブレーキシュー35を接合させている。
【0019】
図4を参照して、ダンサープレート26は取付けボルト27を中心に回動自在であり、また、コイルバネ24によって正面視で時計方向に付勢されているので、ダンサープレート26に設けたブレーキシュー35は適度の押圧力によってボビン支持盤51に接合されて当該ボビン支持盤51に制動を与えている。
【0020】
本発明は上記の構成であって、まず、電線mを巻付けたボビン60を予め楔結合部材53を外した状態のボビン軸50に挿嵌し、次いで楔結合部材53を嵌めコイルスプリング55並びにワッシャー58を嵌めて抜止めプレート56を倒し、コイルスプリング55の弾力によって楔結合部材53をボビン60の軸孔内に押込んで当該ボビン60をボビン支持盤51に圧着する。
【0021】
ボビン軸50に装着されたボビン60は、ボビン支持盤51と一体になって回転する。そこで、ボビン60から電線mを引出し、引出した電線mはガイドロール31に掛けてから機枠庇板11に設けた誘導案内部12を経て撚り線機へ繰出されて行く。ボビン支持盤51にはブレーキシュー35によって適度の制動が加えられているので、電線mはテンションが掛かった状態で撚り線機に供給される。
【0022】
電線mが繰出されている間に電線mに過度のテンションが発生すると、電線mの張力が高まるのでガイドロール31を強く引き、ダンサープレート26をコイルバネ24の弾力に抗して反時計方向に回動し、ブレーキシュー35の制動力を弱めて電線mに加わるテンションを抑制する。また、これとは逆に、電線mに対し必要なテンションが発生していない時は、コイルバネ24の弾力が勝ってダンサープレート26をコイルバネ24の弾力によって時計方向に回動し、ブレーキシュー35の制動力を高めて電線mにテンションを与える。なお、コイルバネ24は取付け位置を変更できるので、バネの弾力を調整して最適な制動力を得ることができるものである。
【0023】
上記の作動を繰り返すことにより、電線mに対し常に適正なテンションを付与して撚り線機に供給し、高品位な電線を製造することができることになる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る電線供給装置を示す全体の斜視図。
【図2】ブレーキ部材を示しており、(a)は部品図、(b)はダンサープレート取付部の断面図。
【図3】ボビン部材を示しており、(a)は部品図、(b)はボビン軸取付部の断面図。
【図4】ダンサープレート取付部を示す正面図。
【符号の説明】
【0025】
1 機枠
2 ブレーキ部材
5 ボビン部材
10 機枠背板
11 機枠庇板
12 誘導案内部
20 内枠板材
21 テンションベース
22 長孔
23 スライドピン
24 コイルバネ
25 蝶ナット
26 ダンサープレート
27 取付けボルト
28 ベアリング
29 ボス
30 子ネジ
31 ガイドロール
32 ガイドロール軸
33 ベアリング
35 ブレーキシュー
36 小ネジ
37 カラー
50 ボビン軸
51 ボビン支持盤
52 ベアリング
53 楔結合部材
54 ベアリング
55 コイルスプリング
56 抜止めプレート
57 ピン
58 ワッシャー
60 ボビン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撚り線機に電線を供給するものであって、ボビンを着脱自在に装着するボビン支持盤(51)を備え、該ボビン支持盤に隣接してダンサープレート(26)を搖動自在に設け、該ダンサープレートに上記ボビン支持盤に接合するブレーキシュー(35)と枢軸部を挟んで該ブレーキシューの反対側にボビン軸(50)と平行方向に向けたガイドロール(31)を設け、上記ダンサープレートは上記ブレーキシューが上記ボビン支持盤を押圧する方向に付勢されるものであり、上記ボビンに巻付けた電線を上記ガイドロールに掛けてから撚り線機に供給し、電線に過度のテンションが掛かると上記ダンサープレートを付勢力に抗して回動して上記ブレーキシューの制動力を弱めてテンションを抑制することを特徴とする電線供給装置。
【請求項2】
ダンサープレート(26)は、コイルバネ(24)によって付勢されるものであることを特徴とする請求項1に記載の電線供給装置。
【請求項3】
コイルバネ(24)は、取付け位置を変更して弾性力を調整できるものであることを特徴とする請求項2に記載の電線供給装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−27874(P2006−27874A)
【公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−212633(P2004−212633)
【出願日】平成16年7月21日(2004.7.21)
【出願人】(300055454)株式会社キンレイ (2)
【Fターム(参考)】