説明

電線処理機における電線装着装置および電線装着方法

【課題】電線装着時の詰まりを有効に防止すると共に、より簡単により短時間で電線の装着を可能とする電線処理機における電線装着装置を提供する。
【解決手段】フロントクランプ2と対の電線保持手段49、50とを有する電線把持機構14と、電線10を送給・排出する処理電線給排機構11と、交換電線供給機構87とを備える。フロントクランプ2は、電線送給方向に対して直交する上向きに開口する交換電線供給溝59を備える。フロントクランプ2の把持解除姿勢および電線保持手段49、50の保持解除姿勢で、交換電線供給機構87の交換用電線供給位置への移動操作により、フロントクランプ2の交換電線供給溝59および対の電線保持手段49、50の互いに離隔された相互間の間隙を通じて、フロントクランプ2および対の電線保持手段49、50にまたがって交換用電線10を受け渡し可能とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、処理する電線の終了や電線の線種変更時等において、電線処理機に新たな電線を供給する電線処理機における電線装着装置および電線装着方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電線処理機として、例えば、電線供給リール等から繰り出された電線を測長して所定長さに切断すると共に、電線端部の被覆部を剥取処理して端子を圧着する端子圧着装置等がある。
【0003】
また、電線供給リールに巻き付けられた電線終了による別の電線供給リールへの交換に伴う電線装着作業や電線の線種変更による別の電線供給リールへの交換に伴う電線装着作業の容易化を図って、加工効率の向上を図るべく、自動的に電線を交換可能とした電線自動交換装置が提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
即ち、特許文献1に開示の電線自動交換装置によれば、交換電線供給機構の各クランプ部にわたって、予め交換用電線を把持させておく。そして、端子圧着装置による所定の加工処理が終了して、電線を交換する場合には、電線把持機構のフロントクランプによる電線の把持が解除されると共に、対の分割保持手段が互いに離隔操作された保持解除姿勢とされる。
【0005】
この状態で、加工電線給排機構の対の電線送給部が逆転駆動され、その逆転駆動により電線が電線送給方向と逆方向に勢いよく排出され、電線端部が電線把持機構より電線送給方向上流側に排出される。
【0006】
その後、電線把持機構が所定位置に移動操作され、交換電線供給機構のクランプ部で把持された交換用電線が電線把持機構における対の分割保持手段間に案内される。そして、対の分割保持手段が互いに接近操作された電線ガイド姿勢とされ、両分割保持手段により電線を送給可能に保持した状態が得られる。その後、各クランプ部による電線の把持が解除され、交換用電線が各クランプ部から各分割保持手段に受け渡される。
【0007】
このようにして交換用電線が受け渡された電線把持機構は、対の電線送給部が予め離隔操作されて待機している電線送給位置に戻され、この状態で対の電線送給部が接近操作されて電線の電線送給方向下流側端部が両電線送給部で挟持された状態が得られる。
【0008】
そして、この状態で、対の電線送給部が正転駆動されると、電線が電線送給方向に沿って順次送給され、電線送給方向下流側に配置された筒状のフロントクランプ内に挿入案内することにより電線交換作業が終了し、その後は、同様にして電線の加工処理が行える構造とされていた。
【0009】
【特許文献1】特開2002−8462号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、前記特許文献1に開示のような電線自動交換装置によれば、交換電線供給機構で保持された交換用電線を、電線把持機構の対の分割保持手段に受け渡す工程と、対の分割保持手段に受け渡された電線を加工電線給排機構により電線送給方向に送り出し、フロントクランプ内に挿入案内する工程とが必要であった。
【0011】
また、その入口から出口に至り筒状に閉じた構造のフロントクランプに電線を送り込む方式であり、フロントクランプ内で電線先端が引っ掛かったりして、電線の挿入案内時に電線詰まりを生じるおそれがあった。そしてまた、このような電線詰まりを防止すべく、挿入速度を遅く設定すれば、時間を要するという欠点があった。
【0012】
そこで、本発明は上記のような問題点に鑑み、電線装着時の詰まりを有効に防止すると共に、より簡単により短時間で電線の装着を可能とする電線処理機における電線装着装置および電線装着方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための電線処理機における電線装着装置の技術的手段は、電線を処理する電線処理機が、電線送給方向下流側に電線を解除自在に把持するクランプ手段を有すると共に、電線送給方向上流側に電線を送給可能に保持する互いに接近操作された電線ガイド姿勢と電線の保持を解除する互いに離隔操作された保持解除姿勢とに接離操作自在な対の電線保持手段を有する電線把持機構と、前記クランプ手段と前記対の電線保持手段との相互間に位置して、クランプ手段の把持解除姿勢および対の電線保持手段の電線ガイド姿勢で前記電線把持機構に保持された電線を電線処理部に対して送給・排出する処理電線給排機構と、交換用電線を解除自在に把持するクランプ部を備え、前記電線把持機構に交換用電線を受け渡す交換電線供給位置と、該交換電線供給位置から退避した交換電線待機位置とで往復移動操作自在とされた交換電線供給機構と、を備えてなる電線処理機における電線装着装置において、前記クランプ手段は、電線送給方向に対して交差する方向に開口する交換電線供給溝を備え、前記クランプ手段の把持解除姿勢および前記対の電線保持手段の保持解除姿勢で、前記交換電線供給機構の前記交換電線供給位置への移動操作により、クランプ手段の前記交換電線供給溝および対の電線保持手段の互いに離隔された相互間の間隙を通じて、クランプ手段および対の電線保持手段にまたがって交換用電線を受け渡し可能とされている点にある。
【0014】
また、前記交換電線供給溝が上向きに開口されると共に、前記対の電線保持手段の前記保持解除姿勢における相互間の間隙が上向きに開放状とされ、前記交換電線供給機構により交換用電線を上方から受け渡し可能とされている構造としてもよい。
【0015】
さらに、前記クランプ手段の前記交換電線供給溝を開閉自在に閉鎖するシャッターが備えられ、前記対の電線保持手段の前記離隔操作に連動して、前記シャッターが開操作される構造としてもよい。
【0016】
また、前記対の電線保持手段の前記離隔操作および前記接近操作と、前記シャッターの開操作および閉操作とを連動させるリンク機構が備えられている構造としてもよい。
【0017】
さらに、前記電線把持機構は、前記クランプ手段の電線送給方向下流側に電線が挿通される開閉調整自在なノズル開口を有する電線ノズル部を備えると共に、前記対の電線保持手段に電線送給方向に沿って送給される電線の外径を測定する電線径測定機構を備え、前記リンク機構は、前記電線径測定機構で測定された電線径の大小に応じて、前記ノズル開口を大小調整する機能を有すると共に、前記対の電線保持手段の前記離隔操作による前記保持解除姿勢でノズル開口を開放姿勢とする機能を有する構造としてもよい。
【0018】
また、上記課題を解決するための電線処理機における電線装着方法の技術的手段は、電線送給方向下流側に電線を解除自在に把持するクランプ手段を有すると共に、電線送給方向上流側に電線を送給可能に保持する互いに接近操作された電線ガイド姿勢と電線の保持を解除する互いに離隔操作された保持解除姿勢とに接離操作自在な対の電線保持手段を有する電線把持機構と、前記クランプ手段と前記対の電線保持手段との相互間に位置して、クランプ手段の把持解除姿勢および対の電線保持手段の電線ガイド姿勢で前記電線把持機構に保持された電線を電線処理部に対して送給・排出する処理電線給排機構とを備え、交換電線待機位置で交換用電線を把持するクランプ部を、交換電線供給位置に移動操作して交換用電線を前記電線把持機構に受け渡す電線処理機における電線装着方法において、前記クランプ手段の把持解除姿勢および前記対の電線保持手段の保持解除姿勢で、前記交換用電線を把持するクランプ部の前記交換電線供給位置への移動操作により、クランプ手段に備えられた電線送給方向に対して交差する方向に開口する交換電線供給溝および対の電線保持手段の互いに離隔された相互間の間隙を通じて、クランプ手段および対の電線保持手段にまたがって交換用電線を受け渡す点にある。
【0019】
さらに、前記対の電線保持手段の前記離隔操作に連動させて、前記交換電線供給溝を開閉自在に閉鎖する前記クランプ手段に備えられたシャッターを、開操作させる方法であってもよい。
【0020】
また、前記対の電線保持手段の前記離隔操作および前記接近操作に連動するリンク機構を介して、前記シャッターが開操作および閉操作する方法であってもよい。
【0021】
さらに、前記電線把持機構は、前記クランプ手段の電線送給方向下流側に電線が挿通される開閉調整自在なノズル開口を有する電線ノズル部を備えると共に、前記対の電線保持手段に電線送給方向に沿って送給される電線の外径を測定する電線径測定機構を備え、前記リンク機構により、前記電線径測定機構で測定された電線径の大小に応じて、前記ノズル開口を大小調整すると共に、前記対の電線保持手段の前記離隔操作による前記保持解除姿勢で前記ノズル開口を開放する方法であってもよい。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明の電線処理機における電線装着装置によれば、クランプ手段は、電線送給方向に対して交差する方向に開口する交換電線供給溝を備え、クランプ手段の把持解除姿勢および対の電線保持手段の保持解除姿勢で、交換電線供給機構の交換電線供給位置への移動操作により、クランプ手段の交換電線供給溝および対の電線保持手段の互いに離隔された相互間の間隙を通じて、クランプ手段および対の電線保持手段にまたがって交換用電線を受け渡し可能とされており、交換用電線をクランプ手段と対の電線保持手段の双方にまたがっていわゆる同時に受け渡す方式であるため、前述従来のように、一旦、電線把持機構の対の電線保持手段に受け渡した後、対の電線保持手段に受け渡された電線を処理電線給排機構により電線送給方向に送り出してクランプ手段に案内する方式と比較して、より簡単に、より短時間で電線の装着を行うことができる。
【0023】
しかも、クランプ手段に対しては、開口する交換電線供給溝を通じて交換用電線を受け渡す方式であり、前述従来のような筒状のクランプ手段に電線を挿入案内する場合の電線詰まりの発生も有効に防止できるという利点がある。
【0024】
また、交換電線供給溝が上向きに開口されると共に、対の電線保持手段の保持解除姿勢における相互間の間隙が上向きに開放状とされ、交換電線供給機構により交換用電線を上方から受け渡し可能とされている構造とすれば、交換用電線の受け渡し作業がより容易の行えるという利点がある。
【0025】
さらに、クランプ手段の交換電線供給溝を開閉自在に閉鎖するシャッターが備えられ、対の電線保持手段の離隔操作に連動して、シャッターが開操作される構造とすれば、交換用電線の受け渡し作業が効率よく行える利点がある。
【0026】
また、対の電線保持手段の離隔操作および接近操作と、シャッターの開操作および閉操作とを連動させるリンク機構が備えられている構造とすれば、連動機構が簡単な構造によって提供できる。
【0027】
さらに、電線把持機構は、クランプ手段の電線送給方向下流側に電線が挿通される開閉調整自在なノズル開口を有する電線ノズル部を備えると共に、対の電線保持手段に電線送給方向に沿って送給される電線の外径を測定する電線径測定機構を備え、リンク機構は、電線径測定機構で測定された電線径の大小に応じて、ノズル開口を大小調整する機能を有すると共に、対の電線保持手段の離隔操作による保持解除姿勢でノズル開口を開放姿勢とする機能を有する構造とすれば、構成部材の兼用化が有効に図れるため、製造コストの低減が図れるという利点がある。
【0028】
また、本発明の電線処理機における電線装着方法によれば、クランプ手段の把持解除姿勢および対の電線保持手段の保持解除姿勢で、交換用電線を把持するクランプ部の交換電線供給位置への移動操作により、クランプ手段に備えられた電線送給方向に対して交差する方向に開口する交換電線供給溝および対の電線保持手段の互いに離隔された相互間の間隙を通じて、クランプ手段および対の電線保持手段にまたがって交換用電線を受け渡す方法であり、交換用電線をクランプ手段と対の電線保持手段の双方にまたがっていわゆる同時に受け渡すため、前述従来のように、一旦、電線把持機構の対の電線保持手段に受け渡した後、対の電線保持手段に受け渡された電線を処理電線給排機構により電線送給方向に送り出してクランプ手段に案内する方法と比較して、より簡単に、より短時間で電線の装着を行うことができる。
【0029】
しかも、クランプ手段に対しては、開口する交換電線供給溝を通じて交換用電線を受け渡す方法であり、前述従来のような筒状のクランプ手段に電線を挿入案内する場合の電線詰まりの発生も有効に防止できるという利点がある。
【0030】
さらに、対の電線保持手段の離隔操作に連動させて、交換電線供給溝を開閉自在に閉鎖するクランプ手段に備えられたシャッターを、開操作させる方法とすれば、交換用電線の受け渡し作業がより効率よく行える利点がある。
【0031】
また、対の電線保持手段の離隔操作および接近操作に連動するリンク機構を介して、シャッターが開操作および閉操作する方法とすれば、連動機構が簡単な構造によって提供できる。
【0032】
さらに、電線把持機構は、クランプ手段の電線送給方向下流側に電線が挿通される開閉調整自在なノズル開口を有する電線ノズル部を備えると共に、対の電線保持手段に電線送給方向に沿って送給される電線の外径を測定する電線径測定機構を備え、前記リンク機構により、電線径測定機構で測定された電線径の大小に応じて、ノズル開口を大小調整すると共に、対の電線保持手段の離隔操作による保持解除姿勢でノズル開口を開放する方法とすれば、構成部材の兼用化が有効に図れるため、製造コストの低減が図れるという利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の第1の実施形態を図面に基づいて説明すると、図1において、1は電線処理機の一例としての端子圧着装置で、フロントクランプ2を有する測長ユニット3と、電線処理部としてのカッターユニット4と、リアクランプ5と、フロント端子圧着ユニット6と、リア端子圧着ユニット7と、フロント移動手段8と、リア移動手段9とから主構成されている。
【0034】
前記フロントクランプ2およびリアクランプ5は、電線10を解除自在に把持するクランプ手段として構成されており、前記カッターユニット4は電線10の切断処理や被覆部の剥取処理が行えるように構成されている。
【0035】
前記測長ユニット3は、電線10を電線送給方向Pに沿って送給すると共に反対方向に電線10を排出する処理電線給排機構11と、処理電線給排機構11によって送給される電線10の電線長を測長する測長機構12とを備え、測長機構12は処理電線給排機構11の電線送給方向P上流側に配置されている。そして、処理電線給排機構11は端子圧着装置1の架台13に取付固定され、フロントクランプ2および測長機構12は、架台13に取付固定されたフロント移動手段8に、一体的に移動操作自在に支持されている。ここに、これらフロントクランプ2や測長機構12等により、電線10を解除自在に把持する電線把持機構14が構成されている。
【0036】
前記フロント移動手段8は、フロントクランプ2および測長機構12をカッターユニット4位置とフロント端子圧着ユニット6位置との相互間で、移動操作自在に支持すると共に、カッターユニット4位置やフロント端子圧着ユニット6位置で、カッターユニット4方向やフロント端子圧着ユニット6方向に移動操作自在に支持している。即ち、フロントクランプ2および測長機構12を電線送給方向Pおよび電線送給方向Pに直交する水平方向に移動操作自在に支持している。
【0037】
また、前記リア移動手段9は、リアクランプ5をカッターユニット4位置とリア端子圧着ユニット7位置との相互間で、移動操作自在に支持すると共に、カッターユニット4位置やリア端子圧着ユニット7位置で、カッターユニット4方向やリア端子圧着ユニット7方向に移動操作自在に支持している。即ち、リアクランプ5を電線送給方向Pおよび電線送給方向Pに直交する水平方向に移動操作自在に支持している。
【0038】
そして、測長ユニット3によって、電線送給方向Pに沿って所定長さ送給された電線10が、フロントクランプ2およびリアクランプ5によりそれぞれ把持され、その状態でカッターユニット4により切断処理されて、フロントクランプ2により把持された電線10と、リアクランプ5により把持された電線10とに分離され、その後、各クランプ2、5に把持された電線10端末部は、カッターユニット4によりその被覆部が剥取処理される。
【0039】
フロントクランプ2に把持された電線10は、その後、フロント端子圧着ユニット6位置に移動操作され、フロント端子圧着ユニット6によりその被覆剥取部分に端子が圧着される。そして、端子の圧着処理後、フロントクランプ2に把持された電線10はカッターユニット4と対向する初期位置に戻される。
【0040】
一方、フロントクランプ2側の電線10に端子の圧着処理が行われる間に、リアクランプ5側の電線10もリア端子圧着ユニット7位置に移動操作され、リア端子圧着ユニット7によりその被覆剥取部分に端子が圧着され、その後、電線10は所定の電線排出部に排出され、リアクランプ5はカッターユニット4と対向する初期位置に戻される。
【0041】
そして、前述同様、測長ユニット3の作動により、電線送給方向Pに沿って電線10が所定長さ送給され、同様の動作の繰り返しにより、両端部に端子が圧着された所定の電線長を有するハーネスが順次製造される。
【0042】
なお、測長ユニット3の電線送給方向P上流側には、電線供給リール等から繰り出された電線10を案内するプレフィーダ機構等が必要に応じて適宜配置される。
【0043】
前記処理電線給排機構11は、従来同様、例えば特許文献1に開示の加工電線給排機構と同様に構成されている。即ち、図2に示されるように、架台13に立設状に取付固定された基板15の一側面側には、駆動ローラ16、17が備えられ、基板15の他側面側には、各駆動ローラ16、17と共に一体的に回転駆動される従動プーリ18、19が備えられている。
【0044】
さらに、基板15の他側面側には、正逆駆動操作自在なサーボモータ20が備えられ、サーボモータ20の駆動軸に装着された駆動プーリ21、前記従動プーリ18、19、中継プーリ22およびテンションプーリ23間にわたって駆動ベルト24が循環回走自在に巻装されている。
【0045】
また、各駆動ローラ16、17の一側には、それぞれ支持台(図示省略)を介して、複数の従動ローラ26a、26b、26c、27a、27b、27cおよびテンションローラ28、29が備えられ、これら上下の駆動ローラ16、17、従動ローラ26a、26b、26c、27a、27b、27cおよびテンションローラ28、29間にわたって、それぞれ送出ベルト30、31が循環回走自在に巻装されている。
【0046】
そして、前記両支持台の上下方向の接離操作により、各送出ベルト30、31が接離操作自在とされ、各従動ローラ26a、26b、26c、27a、27b、27c間の各送出ベルト30、31で電線10を上下両側より解除自在に挟持するように構成されている。そして、この挟持状態で、各送出ベルト30、31が所定方向に循環回走されることにより、電線10が電線送給方向Pに沿って順次送給され、逆方向に循環回走されることにより、電線10が電線送給方向Pと逆方向に戻されて排出されるように構成されている。ここに、これら駆動ローラ16、17、従動ローラ26a、26b、26c、27a、27b、27c、テンションローラ28、29、送出ベルト30、31等により対の電線送給部32、33が構成される。
【0047】
前記電線把持機構14は、特許文献1と同様、図3や図4に示されるように、電線送給方向Pに長い支持部材35を備え、該支持部材35がフロント移動手段8に移動操作自在に支持されている。そして、前記フロントクランプ2と測長機構12とは、電線送給方向Pに適宜離隔して支持部材35に装着されており、図3の仮想線で示すように、フロントクランプ2と測長機構12間に処理電線給排機構11の電線送給部32、33が位置するように構成されている。即ち、処理電線給排機構11における電線送給部32、33の電線送給方向P上流側に測長機構12が位置され、電線送給部32、33の電線送給方向P下流側にフロントクランプ2が位置するように構成されている。
【0048】
測長機構12は、電線送給方向Pに沿って供給される電線10の一側面側に転動自在に当接される測長ローラ36と、電線10の他側面側に摺動自在に当接される従動体としての従動ローラ体37とを備えている。また、測長ローラ36は支持部材35側に転動自在に支持され、測長用のロータリタイプのエンコーダ(図示省略)が直結状に連結されており、測長ローラ36の回転量を検出するように構成されている。
【0049】
これに対し、従動ローラ体37は支持部材35上に支持された支持台38に、支持ブラケット39を介して測長ローラ36方向に対して移動自在に支持されると共に、付勢バネ40により測長ローラ36方向に常時付勢された構造とされ、付勢バネ40による付勢力下、測長ローラ36方向に接近離隔移動可能とされている。なお、従動ローラ体37は特許文献1と同様、回動範囲が一定角度に規制された構造とされている。
【0050】
また、測長ローラ36および従動ローラ体37の電線送給方向P上流側および下流側に位置して、電線ガイドブロック41a、41b、42a、42bがそれぞれ対向配置されており、互いに対向する各電線ガイドブロック41a、41b、42a、42bの対向面にそれぞれ電線10を電線送給方向Pに沿って案内する半円形状の電線ガイド溝が形成されている。そして、互いに対向する各電線ガイドブロック41a、41b、42a、42bの一方が支持部材35側に装着され、他方が支持台38に装着された構造とされている。
【0051】
前記支持台38は、エアシリンダ等からなる操作シリンダ43の出退操作により測長ローラ36方向に接近離隔操作自在に支持部材35上に支持されており、支持台38が測長ローラ36方向に接近操作された際、各電線ガイドブロック41a、41b、42a、42bの対向面が互いに当接され、互いに対向する電線ガイド溝により電線10を遊挿案内する円形の電線遊挿孔が形成されるように構成されている。
【0052】
また、測長ローラ36および従動ローラ体37と、電線送給方向P上流側の電線ガイドブロック42a、42bとの間に位置して、電線10の巻き癖等を解消するための伸線機構を構成する伸線用ローラ群45、46が電線送給方向Pに沿ってそれぞれ転動自在に備えられ、一方の伸線用ローラ群46は支持部材35側に装着され、他方の伸線用ローラ群45は支持ブラケット47を介して支持台38に支持されている。そして、各伸線用ローラ群45、46は互いに電線送給方向Pに沿って適宜距離位置ずれ配置され、支持台38が測長ローラ36方向に接近操作された際、両伸線用ローラ群45、46により電線送給方向Pに沿ってジグザグ状の電線案内経路を形成する構造とされている。
【0053】
さらに、各種の電線10径に対応すべく、伸線用ローラ群45が支持された支持ブラケット47は対向する伸線用ローラ群46方向に対して接近離隔自在となるべく、支持台38側に支持されると共に、付勢バネ48により常時付勢された構造とされ、付勢バネ48による付勢力下、対向する伸線用ローラ群46方向に対して接近離隔移動可能に構成されている。
【0054】
そして、図3に示されるように、支持台38が測長ローラ36方向に接近操作された電線ガイド姿勢にあっては、電線送給方向P上流側および下流側の電線ガイドブロック41a、41b、42a、42bの各電線ガイド溝で形成された電線遊挿孔によって電線10が遊挿案内され、電線送給方向P上流側および下流側の電線ガイドブロック41a、41b、42a、42b間においては、電線10が両側の測長ローラ36と従動ローラ体37で挟持状に保持されると共に、両側の各伸線用ローラ群45、46で挟持状に保持される。
【0055】
また、図4に示される如く、支持台38が測長ローラ36方向と反対方向に離隔操作された保持解除姿勢にあっては、各電線ガイドブロック41a、41b、42a、42b、各伸線用ローラ群45、46および、従動ローラ体37と測長ローラ36がそれぞれ側方向、即ち電線送給方向Pに直交する水平方向に所定長さ離隔して、上向きに開放状とされ、電線10の保持が解除される。
【0056】
ここに、支持台38に備えられた各電線ガイドブロック41a、42a、伸線用ローラ群45および従動ローラ体37と、支持部材35側に備えられた各電線ガイドブロック41b、42b、伸線用ローラ群46および測長ローラ36とにより接離操作自在な対の電線保持手段49、50が構成されている。
【0057】
また、測長機構12の電線送給方向P下流側に配置された電線ガイドブロック41a、41bの近傍に位置して、固定ローラ51と可動ローラ52とが配置されており、固定ローラ51は支持部材35側に転動自在に固定され、可動ローラ52は支持部材35側に固定されたガイド筒53に沿って摺動自在に支持された支持杆54の一端部に転動自在に固定されている。この際、可動ローラ52は固定ローラ51に接近離隔移動可能に支持杆54に支持された構造とされ、かつ支持台38と同じ方向に移動自在に支持された構造とされている。そして、固定ローラ51と可動ローラ52により電線送給方向Pに沿って案内される電線10を両側より挟持状に案内する構造とされている。
【0058】
前記フロントクランプ2は、図3ないし図7に示されるように、支持部材35に装着された爪支持ブラケット55と、該爪支持ブラケット55の遊端部上面側に固定された固定爪56と、エアシリンダ等からなる操作シリンダ57により固定爪56に対し接離操作自在とされた可動爪58とを備え、図6仮想線で示されるように、可動爪58の固定爪56に対する接近操作により、固定爪56と可動爪58との間を通過する電線10を押圧状に挟持して解除自在に把持する構造とされている。
【0059】
また、可動爪58の固定爪56から離隔操作された把持解除姿勢で、爪支持ブラケット55と固定爪56と可動爪58とにより、上方に開口する交換電線供給溝59を形成する構成とされている。そして、この交換電線供給溝59上方を開閉自在に閉鎖するシャッター60が備えられており、該シャッター60はその閉姿勢で、図3や図5に示されるように固定爪56と可動爪58の上面側にまたがった状態とされ、シャッター60の開姿勢では、図4や図7に示されるように、可動爪58側に退避される構造とされている。
【0060】
そして、可動爪58の出退方向は、適宜ガイド手段62により前記支持台38の移動方向と同じ方向に移動する構造とされ、また、シャッター60の移動方向も可動爪58と同様、適宜ガイド手段62により前記支持台38の移動方向と同じ方向に移動する構造とされている。また、シャッター60は、適宜装着された付勢バネ64により閉方向に常時付勢状態とされている。
【0061】
さらに、シャッター60における電線送給方向P上流側および爪支持ブラケット55における固定爪56の電線送給方向P上流側に、それぞれ電線ガイドブロック65a、65bが対向配置されており、互いに対向する電線ガイドブロック65a、65bの対向面にそれぞれ電線10を電線送給方向Pに沿って案内する半円形状の電線ガイド溝が形成されている。そして、シャッター60の閉姿勢で、両電線ガイドブロック65a、65bの対向面が互いに当接され、互いに対向する電線ガイド溝により電線10を遊挿案内する円形の電線遊挿孔が形成されるように構成されている。
【0062】
また、フロントクランプ2の電線送給方向P下流側には、電線送給方向Pに沿って電線10が挿通される開閉調整自在なノズル開口を有する電線ノズル部67が備えられており、この電線ノズル部67は、爪支持ブラケット55における固定爪56の電線送給方向P下流側に固定された固定ノズルガイド68と、該固定ノズルガイド68に対して接近離隔操作自在に配置された可動ノズルガイド69とから構成されている。そして、固定ノズルガイド68に対する可動ノズルガイド69の接近離隔移動により、固定ノズルガイド68と可動ノズルガイド69とで形成されるされるノズル開口が大小調整される構造とされている。
【0063】
可動ノズルガイド69は、支持部材35側に固定されたガイドレール70に沿って摺動自在に支持された支持杆71の中間部に支持ブラケット72を介して取付け固定されている。そして、ガイドレール70に沿って支持杆71が摺動移動されることにより、可動ノズルガイド69は固定ノズルガイド68に接近離隔移動される構造とされている。この際、可動ノズルガイド69は可動爪58やシャッター60と同様、前記支持台38の移動方向と同じ方向に移動する構造とされている。
【0064】
また、図3、図4および図7に示されるように、前記固定ローラ51が固定された支持杆54の他端部と、可動ノズルガイド69が固定された支持杆71の一端部とが、リンク機構74を介して連動連結されており、該リンク機構74は、支持部材35側にそれぞれ上下方向の軸心を有する支軸75a、75bを介して中間部が揺動自在に支持された第1リンク76と第2リンク77とを備えている。
【0065】
そして、第1リンク76の一端部における二叉部76a内に、支持杆54の端部に突設された係合軸54aが摺動自在に嵌合され、第1リンク76の他端部に突設された係合軸76bが第2リンク77の他端部における二叉部77a内に摺動自在に嵌合されている。また、第2リンク77の他端部に設けられ係合軸77bは、支持杆71に取付け固定されたスライドガイド部材78に備えられた電線送給方向Pに平行なスライド溝78a内に摺動自在に嵌合されている。
【0066】
さらに、第1リンク76の係合軸76b側の端部と支持部材35との相互間、および第2リンク77の二叉部77a側の端部と支持部材35との相互間には、それぞれ引張バネ79、80が張設状に配置されている。そして、図3に示されるように、各引張バネ79、80の引張力によって、可動ローラ52が固定ローラ51側に弾発付勢状に当接され、可動ノズルガイド69が固定ノズルガイド68側に弾発付勢状とされて互いに噛合状となる構造とされている。
【0067】
そして、固定ローラ51と可動ローラ52との協働により、固定ローラ51と可動ローラ52間を挟持状態で電線送給方向Pに沿って案内される電線10の外径の大小に応じて、可動ローラ52が固定ローラ51に対して離隔操作もしくは接近操作されると、支持杆54、リンク機構74、支持杆71等を介して可動ノズルガイド69が固定ノズルガイド68に対して離隔操作もしくは接近操作され、固定ノズルガイド68と可動ノズルガイド69とで形成されるノズル開口が大小調整されるように構成されている。ここに、固定ローラ51と可動ローラ52とにより電線送給方向Pに沿って供給される電線10の外径を測定する電線径測定機構81を構成している。
【0068】
また、図3、図4および図7に示されるように、支持杆71の固定ノズルガイド68方向の端部には、断面L字状のシャッター操作部材83が取付け固定されており、シャッター60におけるシャッター操作部材83の対応位置には、支持杆71のガイドレール70に沿った移動操作により、シャッター操作部材83が接離自在に当接係合される係合突部60aが備えられている。
【0069】
そして、通常の電線10の加工処理において、可動ローラ52の固定ローラ51に対する接離操作に連動して、支持杆71がガイドレール70に沿って移動操作され、可動ノズルガイド69が固定ノズルガイド68に対して接離操作される際には、シャッター操作部材83と係合突部60aとは互いに干渉しないように、相互間に適宜長さの干渉回避空間が確保されている。
【0070】
また、前記支持台38における測長ローラ36方向と反対側の端部には、リンク機構74に接離自在に当接されるリンク機構係合部38aが第1リンク76の一端部に上下方向に対してオーバーラップ状に備えられており、リンク機構係合部38aに対応する第1リンク76の一端部には、支持台38が測長ローラ36方向と反対方向に離隔操作された際に、接離自在に当接される支持台係合部76cがリンク機構係合部38aに対向して突設状に備えられている。
【0071】
そして、図3に示されるような支持台38が測長ローラ36方向に接近操作された電線ガイド姿勢より、支持台38が測長ローラ36方向と反対方向に離隔操作されると、リンク機構係合部38aが支持台係合部76cに当接係合して、第1リンク76が引張バネ79の引張力に抗して揺動操作される。
【0072】
この支持台38の離隔操作に伴う第1リンク76の揺動により、対の電線保持手段49、50が互いに離隔する保持解除姿勢とされると共に、リンク機構74を介して電線ノズル部67の固定ノズルガイド68と可動ノズルガイド69、および電線径測定機構81の固定ローラ51と可動ローラ52がそれぞれ互いに離隔操作される。またこの際、支持杆71はガイドレール70に沿ってより大きく移動操作され、シャッター操作部材83が係合突部60aに係合し、付勢バネ64の付勢力に抗してシャッター60を開操作する。この状態で操作シリンダ57の作動により、可動爪58が固定爪56から離隔した把持解除姿勢とされると、図4に示されるように、電線10が送給される電線送給方向Pに沿って、対の電線保持手段49、50や電線径測定機構81やフロントクランプ2の交換電線供給溝59や電線ノズル部67がそれぞれ適宜間隔を有して上向きに開放される構造とされている。
【0073】
そして、この状態より支持台38が初期の電線ガイド姿勢に戻されると、付勢バネ64の付勢力や引張バネ79、80の引張力により、リンク機構74やシャッター60が初期位置の戻され、図3に示されるような状態に戻される。
【0074】
また、図1や図8に示されるように、処理電線給排機構11の近傍に位置して、例えば、架台13上に立設された支持杆85に交換用電線10を供給する交換電線供給機構87が備えられている。この交換電線供給機構87は、特許文献1に開示の従来の交換電線供給機構と略同様に構成されており、支持杆85の上端部に取付ブラケット88を介して装着されると共に上下方向に出退操作自在なロッドを有するエアシリンダ等からなる操作シリンダ89と、ロッドの突出端部であるロッド下端部に装着されて、ロッドの出退操作により昇降操作自在とされたクランプ機構部90とを備える。
【0075】
また、クランプ機構部90は、ロッド下端部に装着された昇降台91と、交換用電線10をその長手方向に離隔して解除自在に把持すべく、電線送給方向Pに離隔して昇降台91に装着された対のクランプ部92と、各クランプ部92による交換用電線10の把持を解除するエアシリンダ等からなる対の解除シリンダとを備える。
【0076】
各クランプ部92は、従来同様、昇降台91に固定状とされた上側の固定爪92aと、該固定爪92aに下側より接離自在な可動爪92bとを備え、固定爪92aと可動爪92bとの間に交換用電線10を把持可能に構成されている。
【0077】
そして、解除シリンダの作動により可動爪92bが固定爪92aに対して離隔操作され、交換用電線10の把持が解除される構造とされている。
【0078】
なお、従来同様、各固定爪92aの所定位置には、可動爪92bの上下動をガイドすると共に両爪92a、92b間に挿入される電線10の挿入量を規制するガイド体がそれぞれ備えられている。また、両クランプ部92に把持される交換用電線10の先端部を位置決めすべく、電線送給方向P下流側に位置して昇降台91に位置決めストッパが適宜備えられている。
【0079】
そして、本実施形態における交換電線供給機構87においては、電線把持機構14におけるフロントクランプ2と対の電線保持手段49、50との相互間にまたがって交換用電線10を受け渡すべく、対のクランプ部92は電線保持手段49、50における電線ガイドブロック42a、42bの電線送給方向P上流側と、電線ノズル部67の電線送給方向P下流側とに対応する位置にそれぞれ備えられた構造とされると共に、各クランプ部92に対する電線10の把持側は、電線把持機構14が移動操作される側とされている。
【0080】
また、昇降台91の昇降時における操作シリンダ89の軸心回りの回動を規制すべく、昇降台91に一対のガイド杆94が突設され、各ガイド杆94は取付ブラケット88に備えられた各ガイド筒95内を摺動案内されるように構成されている。
【0081】
そして、図8の仮想線で示される如く、電線把持機構14は保持された電線10が処理電線給排機構11によって送給・排出される電線送給位置Aと、処理電線給排機構11による電線送給位置Aから一側方に退避して、対のクランプ部92によって交換用電線10が受け渡される交換用電線受渡位置Bとに移動操作自在とされている。
【0082】
これに対し、クランプ部92は、電線把持機構14の交換用電線受渡位置Bにおいて図4に示されるようなフロントクランプ2の把持解除姿勢および対の電線保持手段49、50の保持解除姿勢等の電線送給方向Pに沿った部分が上向きに開放された状態で、交換用電線10を供給して受け渡す交換用電線供給位置Dと、上方の実線で示される交換用電線10を把持して待機する交換電線待機位置Eとで昇降(往復)移動操作自在とされており、クランプ部92の昇降位置は、電線10が送給される電線送給経路より所定距離だけ一側方に位置する構造とされている。
【0083】
次に、本実施形態にかかる交換電線供給機構87による電線10の線種交換時等における交換動作を説明する。
【0084】
端子圧着装置1による所定の加工処理が終了して、電線10を交換する場合には、電線把持機構14が電線送給位置Aに位置しており、図3に示されるように、その直前まで使用中の電線10は、対の電線送給部の送出ベルト30、31で挟持され、その電線送給方向P下流側ではフロントクランプ2で把持されると共に、電線送給方向P上流側では対の電線保持手段49、50や、固定ローラ51と可動ローラ52で保持されている。また、交換電線供給機構87の各クランプ部92にわたって、予め交換用電線10を把持させておく。
【0085】
次に、適宜備えられたスイッチの操作によって電線交換信号が入力されると、先ず操作シリンダ57の作動によりフロントクランプ2による電線10の把持が解除されて把持解除姿勢とされる。この状態で、電線10の先端部に圧着された端子部分を除去すべく、処理電線給排機構11における両送出ベルト30、31の正転駆動により、電線10が少量送り出されてカッターユニット4によりその先端部が切断される。
【0086】
その後、操作シリンダ43の作動により支持台38が離隔操作される。ここに、両電線保持手段49、50が互いに離隔操作された保持解除姿勢となり、また、支持台38の離隔操作に伴って、リンク機構係合部38aと支持台係合部76cとの係合により、リンク機構74が操作され、可動ローラ52が固定ローラ51から離隔操作されると共に、可動ノズルガイド69が固定ノズルガイド68から離隔操作され、さらにはシャッター60が開操作され、図4に示されるように、電線10に対する保持が解除された状態が得られる。
【0087】
そして、この状態で、対の電線送給部32、33が逆転駆動され、両送出ベルト30、31の逆転駆動により電線10が電線送給方向Pと逆方向に勢いよく排出され、電線10端部が電線把持機構14より電線送給方向P上流側に排出される。
【0088】
この電線10の排出後、電線把持機構14はフロント移動手段8によって交換用電線受渡位置Bに移動操作される。
【0089】
電線把持機構14が交換用電線受渡位置Bに移動すると、交換電線供給機構87の操作シリンダ89が作動され、操作シリンダ89の作動により交換用電線10を把持した各クランプ部92が交換用電線供給位置Dに下降操作される。
【0090】
各クランプ部92が交換用電線供給位置Dに移動すると、両クランプ部92間に位置する電線10が、電線把持機構14の両電線保持手段49、50間、固定ローラ51と可動ローラ52間、電線ガイドブロック65a、65b間、固定爪56と可動爪58間の交換電線供給溝59内、および固定ノズルガイド68と可動ノズルガイド69間に相対的に案内されて供給される。
【0091】
この状態で、操作シリンダ57の作動により、可動爪58が固定爪56方向に移動操作され、電線10を把持する。次に、操作シリンダ43の作動により支持台38が接近操作されると、両電線保持手段49、50が互いに接近操作された電線ガイド姿勢となり、また、支持台38の接近操作に伴って、リンク機構係合部38aと支持台係合部76cとの係合が解除され、リンク機構74が初期状態に復帰されるため、固定ローラ51と可動ローラ52との相互間に電線10が把持され、両電線ガイドブロック65a、65b間および交換電線供給溝59内を通じて電線ノズル部67の固定ノズルガイド68と可動ノズルガイド69との相互間のノズル開口より電線10の端部が突出状とされた状態、即ち、電線10を送給可能に保持した状態が得られる。そして、この状態で各クランプ部92による電線10の把持が解除される。ここに、交換用電線10が各クランプ部92から電線把持機構14に受け渡される。
【0092】
電線10が電線把持機構14に受け渡されると、電線把持機構14は交換用電線受渡位置Bより電線送給位置Aと反対方向に所定距離移動操作される。この退避位置移動により電線10は各クランプ部92より離脱する。そして、この電線把持機構14の退避位置移動後、操作シリンダ89等の作動により各クランプ部92が初期位置の交換電線待機位置Eに上昇復帰される。また、この交換電線待機位置Eに復帰された各クランプ部92に次の交換用電線10を適宜把持させておけばよい。
【0093】
各クランプ部92が交換電線待機位置Eに移動すると、対の電線送給部32、33が予め離隔操作された両送出ベルト30、31の離隔状態で待機している電線送給位置Aに、前記退避位置に移動して待機していた電線把持機構14が移動操作され、受け渡された電線10が、対の電線送給部32、33における両送出ベルト30、31間に位置した状態が得られる。
【0094】
次に、この状態より対の電線送給部32、33が接近操作されて、電線10の交換作業が終了する。
【0095】
そして、この状態で、対の電線送給部32、33が正転駆動されると、両送出ベルト30、31の正転駆動により電線10が電線送給方向Pの沿って順次送給され、前述同様、電線10の加工処理が行える。
【0096】
本実施形態は以上のように構成されており、電線10の交換動作に際して、予め交換電線供給機構87の両クランプ部92で把持された交換用電線10を、電線把持機構14の互いに離隔操作させた対の電線保持手段49、50間、固定ローラ51と可動ローラ52間、電線ガイドブロック65a、65b間、交換電線供給溝59内、固定ノズルガイド68と可動ノズルガイド69間に、上方から落とし込むことにより、それらにまたがっていわゆる同時に受け渡す方式であるため、従来のように、一旦、電線把持機構の対の電線保持手段に受け渡した後、対の電線保持手段に受け渡された電線を処理電線給排機構により電線送給方向に送り出してフロントクランプに案内する方式と比較して、より簡単に、より短時間で電線の装着を行うことができる。
【0097】
しかも、フロントクランプ2に対しては、開口する交換電線供給溝59を通じて交換用電線10を受け渡す方式であり、従来のような筒状のフロントクランプに電線を挿入案内する場合のような電線詰まりの発生も有効に防止できるという利点がある。
【0098】
また、固定ノズルガイド68と可動ノズルガイド69間、フロントクランプ2の交換電線供給溝59および電線ガイドブロック65a、65b間が上向きに開口されると共に、対の電線保持手段49、50の保持解除姿勢における相互間の間隙や固定ローラ51と可動ローラ52間が上向きに開放状とされ、交換電線供給機構87により交換用電線10を上方から受け渡し可能な構造とされているため、従来のように電線把持機構14を一旦、退避位置に移動操作した後、交換電線供給機構87の各クランプ部92を交換用電線供給位置Dに移動操作し、その後、電線把持機構14を交換用電線受渡位置Bに位動操作する方式と比較して、直接、交換用電線受渡位置Bに移動操作した状態で、交換電線供給機構87の各クランプ部92を交換用電線供給位置Dに移動操作すればよく、交換用電線10の受け渡し作業がより容易かつ効率よく行えるという利点がある。
【0099】
さらに、フロントクランプ2の交換電線供給溝59を開閉自在に閉鎖するシャッター60が、対の電線保持手段49、50の離隔操作に連動して、開閉操作される構造であり、この点からも交換用電線10の受け渡し作業がより効率よく行える利点がある。
【0100】
また、電線把持機構14は、フロントクランプ2の電線送給方向P下流側に電線10が挿通される開閉調整自在なノズル開口を有する電線ノズル部67を備えると共に、対の電線保持手段49、50側に電線送給方向Pに沿って送給される電線10の外径を測定する電線径測定機構81を備え、リンク機構74を介して、電線径測定機構81で測定された電線径の大小に応じて、ノズル開口を大小調整する機能を有する構造とされ、このリンク機構74を利用して、対の電線保持手段49、50の離隔操作および接近操作と、シャッター60の開操作および閉操作とを連動させる構造としているため、さらには、対の電線保持手段49、50の離隔操作による保持解除姿勢でノズル開口を開放姿勢とする構造としているため、構成部材の兼用化が有効に図れるため、製造コストの低減が図れるという利点がある。
【0101】
さらに、リンク機構74を利用して、対の電線保持手段49、50の離隔操作および接近操作と、シャッター60の開操作および閉操作とを連動させる構造であり、連動機構が簡単な構造で安価に提供できる利点もある。
【0102】
図9は、第2の実施形態における要部概略図を示しており、第1の実施形態と同様構成部分は同一符号を付し、その説明を省略する。
【0103】
即ち、本実施形態においては、フロントクランプ2におけるシャッター60が操作シリンダ97の出退操作により、交換電線供給溝59を開閉操作する構造とされている。そして、操作シリンダ43と操作シリンダ97の動作を同期させて作動させる構成とされている。また、その他の構造は第1の実施形態と同様に構成されている。
【0104】
従って、本実施形態においても、上記構成部材の兼用化を除き、上記同様の効果が得られる。
【0105】
なお、上記実施形態において、フロントクランプ2における交換電線供給溝59や対の電線保持手段49、50等が上向きに開放状とされる構造を示しているが、横向に開放状とされる構造等であってもよく、電線10を供給するための開放の向きは何ら実施形態に限定されない。
【0106】
また、対のクランプ部92の往復移動方向として上下方向とした構造を示しているが、側方向であってもよく、実施形態の方向に何ら限定されない。
【0107】
さらに、循環回走される送出ベルト30、31で電線10を送給する構造を示しているが、回転駆動される対の駆動ローラにより電線10を解除自在に挟持し、各駆動ローラの回転により電線10を送給する構造であってもよい。
【0108】
また、対の電線保持手段49、50に測長機構12を備えた構造を示しているが、処理電線給排機構11側のサーボモータ20に測長用のロータリタイプのエンコーダを備え、測長機能を有する構造としてもよい。
【0109】
さらに、シャッター60の開閉操作と対の電線保持手段49、50の離隔接近操作とを連動させるためのリンク機構74の形状や構造も、何ら実施形態の形状や構造に限られない。
【0110】
また、電線処理機の一例として端子圧着装置1を示しているが、その他の電線処理機であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0111】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す概略平面図である。
【図2】同処理電線給排機構の概略説明図である。
【図3】電線把持機構の平面図である。
【図4】同動作説明図である。
【図5】図3のV−V線断面矢視図である。
【図6】図5のVI−VI線断面矢視図である。
【図7】図4のVII−VII線矢視図である。
【図8】交換電線供給機構の概略説明図である。
【図9】第2の実施形態を示す概略説明図である。
【符号の説明】
【0112】
1 端子圧着装置
2 フロントクランプ
3 測長ユニット
4 カッターユニット
8 フロント移動手段
10 電線
11 処理電線給排機構
12 測長機構
13 架台
14 電線把持機構
35 支持部材
38 支持台
45 伸線用ローラ群
46 伸線用ローラ群
49 電線保持手段
50 電線保持手段
51 固定ローラ
52 可動ローラ
59 交換電線供給溝
60 シャッター
67 電線ノズル部
68 固定ノズルガイド
69 可動ノズルガイド
74 リンク機構
81 電線径測定機構
83 シャッター操作部材
87 交換電線供給機構
92 クランプ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線を処理する電線処理機が、電線送給方向下流側に電線を解除自在に把持するクランプ手段を有すると共に、電線送給方向上流側に電線を送給可能に保持する互いに接近操作された電線ガイド姿勢と電線の保持を解除する互いに離隔操作された保持解除姿勢とに接離操作自在な対の電線保持手段を有する電線把持機構と、
前記クランプ手段と前記対の電線保持手段との相互間に位置して、クランプ手段の把持解除姿勢および対の電線保持手段の電線ガイド姿勢で前記電線把持機構に保持された電線を電線処理部に対して送給・排出する処理電線給排機構と、
交換用電線を解除自在に把持するクランプ部を備え、前記電線把持機構に交換用電線を受け渡す交換電線供給位置と、該交換電線供給位置から退避した交換電線待機位置とで往復移動操作自在とされた交換電線供給機構と、を備えてなる電線処理機における電線装着装置において、
前記クランプ手段は、電線送給方向に対して交差する方向に開口する交換電線供給溝を備え、
前記クランプ手段の把持解除姿勢および前記対の電線保持手段の保持解除姿勢で、前記交換電線供給機構の前記交換電線供給位置への移動操作により、クランプ手段の前記交換電線供給溝および対の電線保持手段の互いに離隔された相互間の間隙を通じて、クランプ手段および対の電線保持手段にまたがって交換用電線を受け渡し可能とされていることを特徴とする電線処理機における電線装着装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電線処理機における電線装着装置において、
前記交換電線供給溝が上向きに開口されると共に、前記対の電線保持手段の前記保持解除姿勢における相互間の間隙が上向きに開放状とされ、前記交換電線供給機構により交換用電線を上方から受け渡し可能とされていることを特徴とする電線処理機における電線装着装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の電線処理機における電線装着装置において、
前記クランプ手段の前記交換電線供給溝を開閉自在に閉鎖するシャッターが備えられ、前記対の電線保持手段の前記離隔操作に連動して、前記シャッターが開操作されることを特徴とする電線処理機における電線装着装置。
【請求項4】
請求項3に記載の電線処理機における電線装着装置において、
前記対の電線保持手段の前記離隔操作および前記接近操作と、前記シャッターの開操作および閉操作とを連動させるリンク機構が備えられていることを特徴とする電線処理機における電線装着装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電線処理機における電線装着装置において、
前記電線把持機構は、前記クランプ手段の電線送給方向下流側に電線が挿通される開閉調整自在なノズル開口を有する電線ノズル部を備えると共に、前記対の電線保持手段に電線送給方向に沿って送給される電線の外径を測定する電線径測定機構を備え、
前記リンク機構は、前記電線径測定機構で測定された電線径の大小に応じて、前記ノズル開口を大小調整する機能を有すると共に、前記対の電線保持手段の前記離隔操作による前記保持解除姿勢でノズル開口を開放姿勢とする機能を有することを特徴とする電線処理機における電線装着装置。
【請求項6】
電線送給方向下流側に電線を解除自在に把持するクランプ手段を有すると共に、電線送給方向上流側に電線を送給可能に保持する互いに接近操作された電線ガイド姿勢と電線の保持を解除する互いに離隔操作された保持解除姿勢とに接離操作自在な対の電線保持手段を有する電線把持機構と、
前記クランプ手段と前記対の電線保持手段との相互間に位置して、クランプ手段の把持解除姿勢および対の電線保持手段の電線ガイド姿勢で前記電線把持機構に保持された電線を電線処理部に対して送給・排出する処理電線給排機構とを備え、
交換電線待機位置で交換用電線を把持するクランプ部を、交換電線供給位置に移動操作して交換用電線を前記電線把持機構に受け渡す電線処理機における電線装着方法において、
前記クランプ手段の把持解除姿勢および前記対の電線保持手段の保持解除姿勢で、前記交換用電線を把持するクランプ部の前記交換電線供給位置への移動操作により、クランプ手段に備えられた電線送給方向に対して交差する方向に開口する交換電線供給溝および対の電線保持手段の互いに離隔された相互間の間隙を通じて、クランプ手段および対の電線保持手段にまたがって交換用電線を受け渡すことを特徴とする電線処理機における電線装着方法。
【請求項7】
請求項6に記載の電線処理機における電線装着方法において、
前記対の電線保持手段の前記離隔操作に連動させて、前記交換電線供給溝を開閉自在に閉鎖する前記クランプ手段に備えられたシャッターを、開操作させることを特徴とする電線処理機における電線装着方法。
【請求項8】
請求項7に記載の電線処理機における電線装着方法において、
前記対の電線保持手段の前記離隔操作および前記接近操作に連動するリンク機構を介して、前記シャッターが開操作および閉操作することを特徴とする電線処理機における電線装着方法。
【請求項9】
請求項8に記載の電線処理機における電線装着方法において、
前記電線把持機構は、前記クランプ手段の電線送給方向下流側に電線が挿通される開閉調整自在なノズル開口を有する電線ノズル部を備えると共に、前記対の電線保持手段に電線送給方向に沿って送給される電線の外径を測定する電線径測定機構を備え、
前記リンク機構により、前記電線径測定機構で測定された電線径の大小に応じて、前記ノズル開口を大小調整すると共に、前記対の電線保持手段の前記離隔操作による前記保持解除姿勢で前記ノズル開口を開放することを特徴とする電線処理機における電線装着方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−66214(P2008−66214A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245134(P2006−245134)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【Fターム(参考)】