説明

電線等の解体分別装置における切断検出装置

【課題】芯線の周りに線状体が巻回された同心より線を、線状体を巻き戻して芯線を取り出す解体分別装置において、線状体の切断を確実に検出し装置の損傷等を防止する。
【解決手段】第1回転体10を前方に、第2回転体20を後方に設置するとともに、それらに軸支される静止した巻き取り機構30を中間に設ける。モータ56により両回転体を線状体の巻回方向とは逆方向に同期して回転させ、線状体を両回転体の周辺部に取り付けた案内管4を通過させて、第2回転体20の後方で収束させる。第1回転体10の軸受け部53の前方には、線状体の通過する孔が形成されたガイド板19Aが装着されており、ガイド板19Aは電気的に絶縁されるとともに同心より線との間に低圧の電圧が印加されている。切断した線状体がガイド板19Aに接触するとその間に電流が流れ、これを検出することにより線状体の切断を検知できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芯線の周りに他の線状体が巻回された、例えば電線等の同心より線を解体し分別する装置に関し、さらに詳しくは、同心より線の解体を円滑に遂行し、かつ、線状体等の切断を検出するため、装置に装着するガイド板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
工業製品のリサイクル、つまり、廃棄する製品から使用可能な資源を回収し有効利用を図ることは、省資源あるいは環境問題への対処から各種の製品について要請されている。電線についてもその例外ではなく、耐用年数を経過した電線を交換するにあたり、回収した使用済み電線の再資源化は重要な課題である。電線のリサイクルは現実にも様々な形で実施され、また、効率的な再資源化に向けて、回収した電線を解体し材料別に分別するための技術開発も精力的に行われている。
【0003】
高圧送電線用に通常使用される鋼心アルミより線(ACSR)は、鋼の芯線の周りに多数のアルミ線をより線としたものである。このような電線においては、回収した使用済み鋼心アルミより線をリサイクルのため分別するには、一例として特開2002−100253号公報に開示されているように、電線を細かく切断し、切断した電線に振動等を与えてアルミ線と鋼線とを分離する方法がある。これにより、より線がばらばらとなり、その後電磁石を用いて鋼線とアルミ線を分別して回収することが可能であって、分別のためのコストは比較的低く、資源価値の大きいアルミニュウムを不純物の混在が殆どない状態で回収することができる。
【0004】
電線の中には、通信用の光ファイバを芯線に内蔵させ、周りにアルミ被覆鋼線等を巻回した光ファイバ複合架空地線(以下「OPGW」という。)と呼ばれる電線がある。OPGWは、例えば高圧送電線の鉄塔の最上部に敷設される避雷用の電線として用いられ、これを敷設することにより、エネルギ伝送のための送電システムが情報通信用にも利用されることとなる。図11に示されるとおり、OPGWの中心には光ファイバを収容するアルミ管が芯線として配置してあり、その周りをアルミ被覆の施された8本の鋼線(線状体)がより線となって取り巻いている。アルミ管の中にはU字状の3本の溝が形成された溝付アルミ線がはめ込まれており、各々のU字状の溝には3心、6心等多心の光ファイバケーブルが収納されている。OPGWの中には、アルミ被覆鋼線を多重に巻回したもの、鋼線とアルミ線を多重に巻回したものあるいは溝付アルミ線を備えていないものも存在する。このようなOPGWについても、耐用年数の経過したもの等は新しいOPGWと交換するため回収することとなる。
【0005】
回収した後のOPGWを再資源化するには、中心のアルミ管や溝付アルミ線を周囲のアルミ被覆鋼線と分別して取り出すことが必要である。しかし、上記の特許文献に示されるような方法を採用しOPGWを細かく切断した場合には、中心のアルミ管等に収容された光ファイバが同時に細かく切断され、その状態で分離されたアルミ管等の中に残存することとなる。短寸に切断された膨大な数のアルミ管等から光ファイバを効率よく分別するのは不可能であって、資源価値の高いアルミニュウムを不純物なく取り出すことが非常に困難である。したがって、回収したOPGWは、産業廃棄物として廃棄せざるを得ないのが現実であった。
【0006】
こうした状況を踏まえ、本出願人は、OPGW等の同心より線を解体し、中心のアルミ管等と周囲に巻回されたアルミ被覆鋼線等とを切断することなく分別するコンパクトかつ簡易な装置を開発して、先に特願2005−68490として出願した。この解体分別装置は、前方及び後方に2個の回転体を設置し、その間に、2個の回転体に軸支される静止した巻き取り機構を配置する。2個の回転体の外周には、同心より線に巻かれた線状体の本数と等しい数の案内管が掛け渡され、これを通して線状体が後方に導かれる。2個の回転体は、線状体の巻き方向とは逆の方向に回転駆動され、これにより線状体が巻き戻されて、中心の芯線を巻き取り機構に巻き取ることができる。同心より線がOPGWである場合には、芯線のアルミ管をそのまま取り出すことが可能であり、取り出したアルミ管を長手方向に切開したり光ファイバを抜き取ったりすることにより光ファイバを分離し、アルミニュウムを不純物のない状態で容易に分別することができる。
つまり、この解体分別装置は、芯線及び線状体をそのままの状態で解体し分別して回収できるもので、本発明の基礎となる装置であることから、図6〜図10により、この解体分別装置の構成及びOPGWを分別するときの作動について詳しく説明する。
【0007】
本出願人が開発した解体分別装置1は、図6の全体図に示すように、OPGWを解体するための第1回転体10及び第2回転体20を備え、それらの中間に芯線であるアルミ管を巻き取るための巻き取り機構30が配置されている。巻き取り機構30の周囲には、巻き戻されたOPGWの周囲の鋼線(線状体)のそれぞれが通過する複数の案内管4が配置され、鋼線はこれを通過した後第2回転体20に到る。案内管4としては、断面が完全に円形をなすものに限らず、一部に切り欠きのあるもの、つまり、軸方向にスリットが形成された管体を使用することもできる。解体する使用済みのOPGWは、図6の左側、すなわち解体分別装置1の前方側から第1回転体10に供給され、分離された鋼線は、第2回転体20の後方で収束されて解体分別装置から送り出される。
【0008】
第1回転体10は、図7に示すように、外周歯車12が形成された円盤体11とその前方の軸受け部13とを中空軸14によって結合したものである。円盤体11は第1回転体10の最大径部となっていて、外周部には案内管4が取り付けられる。また、外周歯車12の両側には、第1回転体10に作用する巻き取り機構30等の荷重を支持する平坦円形部分15が形成されている。円盤体11の周囲には、図8に示す枠体60に軸支される4個のローラ70、80が配置してあり、円盤体11の平坦円形部分15がこれらのローラと接触することによって、回転体10の支持が行われる。4個のローラの中の1個は、回転体10を回転させるための駆動ローラ70であって、外周歯車12と噛み合う駆動歯車を備えている(図6では枠体60の一部と駆動ローラ70のみを表示)。
【0009】
第1回転体10の中空軸14の前端には軸受け部13が固定され、軸受け部13は、前方の架台51後側に置かれたベアリング53に嵌りこんで支持される。このように、第1回転体10はその後部をローラ70、80により、前部をベアリング53により支持され、回転可能となっている。軸受け部13は、鋼線が通る空間部18を有しており、その前方にはガイド板19が取り付けられている。このガイド板19は、図9に示すとおり、中心部にアルミ管が通過する孔191が形成され、周辺には解体するOPGWの鋼線の数に対応する孔192が形成されたものである。
【0010】
解体分別装置1の後部には、第1回転体10と同一の構造を有する第2回転体20が、前後方向を逆にして配置されている。すなわち、第2回転体20においては、分別装置の前方側には周辺部に案内管4を固着し外周歯車22を備えた円盤体21が、その後方側には中空軸24で連結された軸受け部23が設置される。円盤体11と円盤体21との間には、案内管4が掛け渡されており、両方の回転体は、軸55からチェーン、歯付きベルト等の伝動装置57及び駆動ローラ70を介して、駆動モータ56によりOPGWの外側に巻かれた鋼線の巻き方向とは逆の方向に回転駆動される。
【0011】
第1回転体10と第2回転体20との間には巻き取り機構30が配置され、この巻き取り機構30は、芯線であるアルミ管を巻き取るための巻き取り装置を備えている。巻き取り機構30はフレーム31を有しており、フレーム31の前端及び後端には中空支持軸32が一体に設けられ、これらは第1回転体10及び第2回転体20の円盤体11,21のハブ部に圧入されたベアリングにそれぞれ嵌め込まれる。すなわち、巻き取り機構30は、いわば両円盤体11、21の中心部に吊り下げられた状態となっている。フレーム31上には、駆動モータ34により回転される芯線巻き取りドラム33、巻き取りドラム33に芯線を均一に巻きつけるためのトラバース機構43、固定案内ローラ42等からなる巻き取り装置が載置されている。
【0012】
解体分別装置1を作動させてOPGWを分別するには、解体するOPGWを中空管61に通した後、手作業により所定の長さ解きほぐし、芯線であるアルミ管と外周の複数の鋼線を分離する。分離されたOPGWのアルミ管は、図6の実線Xで示すように、ガイド板19の孔191及び第1回転体10の中空軸14中を通過させ、さらに巻き取り機構30の固定案内ローラ42及びトラバース機構43のローラの間を通過させて、芯線巻き取りドラム33に巻きつけられる。
【0013】
一方、複数の鋼線は、図6の破線Yのように、中空管61の直後で外側に広げられ、ガイド板19の孔192に各々の鋼線が通された後、第1回転体10の軸受け部13に形成した中空部18を通過して、円盤体11の周辺部に取り付けた案内管4に挿入される。さらに、案内管4を通過させて鋼線を第2回転体20の円盤体22に送り、ここにおいては、第1回転体10とは逆の態様で各鋼線を後方に向けて収束させる。集合した鋼線は、分別装置1の後端の中空管62を通過させ、鋼線巻き取りドラム(図10参照)に巻きつける。鋼線にはもともと「撚り」がかかるような加工が施されているので、集合させると自動的にほぼ元のOPGWの形態に復帰し、巻き取り作業を容易に行うことができる。
【0014】
以上のような準備を行った後、OPGWを中空管61から連続的に送り込み、同時に回転体駆動モータ56を駆動して、軸55、歯付きベルト伝動装置57、駆動ローラ70等の伝動機構により、第1回転体10及び第2回転体20を鋼線の巻き方向とは逆方向に同期して回転させる。また、巻き取り機構30のモータ38を駆動し、芯線巻き取りドラム33を回転させ、トラバース機構43を作動させる。両方の回転体10,20の回転によってOPGWの鋼線の巻きが解かれ、アルミ管は、第1回転体10の中心部を通過して芯線巻き取りドラム33に均一に巻き取られる。
【0015】
このように、本出願人が開発した解体分別装置1は、前方及び後方に2個の回転体を設置し、これを同心より線の外周に巻かれた線状体の巻き方向とは逆に回転させて同心より線を解体しながら、芯線及び線状体を分別して回収するものである。したがって、再資源化のための処理作業が容易となり、芯線と線状体とを別々の処理行程により再生し、効率的なリサイクルを図ることが可能である。
ちなみに、電線に巻きつけられたテープ等の線状体を、巻き方向とは逆の方向に公転し、かつ、自転するボビンに巻き取る装置が実開昭58−36510号公報に示されている。しかし、OPGWの鋼線はテープと比べるとはるかに比重が大きいとともに剛性も高く、このような装置を用いてボビンに巻き取るには、非常に大型の、所要動力の大きい装置を必要とする。解体分別装置1はコンパクトで簡易な装置であって、高圧送電線の鉄塔からOPGWを回収する現場等に本発明の装置を持ち込み、工事現場あるいはその近傍において、OPGWを解体しアルミ管等を分別することができる。このときは、図10に示すように、例えば架線ウインチを解体分別装置1の前方に据え付けるとともに後方には鋼線巻き取りドラムを据え付け、架線ウインチによりOPGWを牽引して解体分別装置1に送り込み、芯線を取り出した後の収束した鋼線を、鋼線巻き取りドラムに巻き取るようにすることができる。
【特許文献1】特開2002−100253号公報
【特許文献2】実開昭58−36510号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本出願人が開発した解体分別装置は、前方から送り込まれた同心より線の外周に巻かれた線状体を、2個の回転体を巻き方向とは逆に回転させて巻き戻し、同心より線を解体するものであり、同心より線の効率的な解体分別が可能である。ところが、この解体分別装置を用いて解体するOPGW等は、耐用年数の経過した古いものが多いことから、劣化等に起因して外周部の線状体が切断している場合がある。こうした線状体等の切断をここでは「素線切れ」と称する。
【0017】
素線切れの発生したOPGW等の同心より線が装置に送り込まれると、線状体の切断個所では先行する線状体部分による牽引がなくなるため、切断個所以降の線状体はガイド板や案内管に入り込むことができない。そのため、切断した線状体を分離することは不可能となり、また、線状体が切断したまま同心より線の送りを続行すると、切断した線状体が回転体等の回転部分に絡まり解体分別装置に損傷を与えかねない。素線切れの同心より線が送り込まれたときは、これを検出して解体分別装置を緊急に停止する必要がある。
本発明は、同心より線を解体するため、外周に巻かれた線状体の巻き方向とは逆の方向に回転する回転体を通し、線状体を巻き戻して中心の芯線を取り出す解体分別装置において、素線切れを確実に検出し装置の損傷等を防止することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記の課題に鑑み、本発明は、第1回転体の前部に装着されたガイド板を周囲から絶縁し、これと同心より線との間に低圧の電圧を印加することにより、このガイド板に素線切れの検出手段を組み込んだものである。すなわち、本発明は、
「芯線の周りに複数の線状体が巻回された同心より線を解体し分別する装置であって、
中心部に前記芯線が通過する中心孔を備え、周辺部には前記線状体が通過する複数の案内管を取り付けた回転可能に支持される第1回転体が前方に配置されるとともに、周辺部に前記線状体が通過する複数の前記案内管を取り付け、回転可能に支持される第2回転体が後方に配置され、
前記第1回転体と前記第2回転体とに静止状態で軸支される巻き取り機構が、前記第1回転体と前記第2回転体との中間に配置されており、
前記第1回転体と前記第2回転体とを、前記線状体の巻き方向とは逆方向に同期して回転させながら、前記第1回転体の前方から前記同心より線を送り込むことにより、前記芯線を前記巻き取り機構に巻き取り、前記線状体を前記第2回転体の後方に収束させて送り出すように構成され、さらに、
前記第1回転体の前部には、中心部に前記芯線の通過する中心孔が、かつ、周辺部に前記線状体が通過する複数の孔が形成されたガイド板が取り付けられ、
前記ガイド板は、前記第1回転体と電気的に絶縁されるよう絶縁材を介して前記第1回転体に結合されるとともに、前記複数の孔は絶縁材によって被覆されており、
第1回転体に送り込まれる前記同心より線と前記ガイド板との間に低圧の電圧を印加して、両者の間に流れる電流の有無を検出する検出手段が設けられる」
ことを特徴とする解体分別装置となっている。
【0019】
請求項2に記載のように、前記ガイド板は、中心孔を有するボス部を備えた絶縁材からなる円板体を介して前記第1回転体と結合され、前記複数の孔には、ベルマウス形状の通路が形成された絶縁材からなるインサートが取り付けられるように構成することが好ましい。
【0020】
また、請求項3に記載のように、前記第1回転体と前記第2回転体とを回転させる駆動装置にブレーキ機構を装備し、前記検出手段で電流が検出されたときは、前記ブレーキ機構を作動させることが好ましい。
【0021】
本発明の解体分別装置は、請求項4に記載のとおり、光ファイバを収容したアルミ管を芯線とする同心より線、すなわちOPGW、を解体し分別するために、特に好適なものである。
【発明の効果】
【0022】
本出願人が開発した、本発明の基礎となる解体分別装置は、線状体の巻き方向とは逆に回転する2個の回転体と、それらに軸支される静止した巻き取り機構を設け、線状体を巻き戻しながら芯線をそのままの状態で効率的に取り出す装置となっている。装置の前部には、線状体が通過する複数の孔を有するガイド板が設けてあり、これにより巻き戻された線状体はスムースに案内管にガイドされる。
【0023】
そして、本発明の解体分別装置では、絶縁材を介してガイド板を第1回転体に結合するとともに、線状体が通過する複数の孔を絶縁材によって被覆し、ガイド板を第1回転体及び線状体と電気的に絶縁する。このような状態で、同心より線とガイド板との間には低圧の電圧を印加して、両者の間に流れる電流の有無を検出する。
同心より線に素線切れがなければ、巻き戻された線状体は後方に牽引され、ガイド板の複数の孔を通過して案内管に導入される。同心より線とガイド板との間には低圧の電圧が印加されているものの、両者の間は電気的に絶縁されているから電流は流れない。ところが、素線切れが生じた同心より線が装置に送り込まれてときには、切断した線状体は、先行する線状体部分による牽引がなくなるため、ガイド板の複数の孔に入り込むことができない。切断した線状体の先端部又はその近傍はガイド板の表面に接触することとなり、同心より線とガイド板との間に短絡が生じて電流が流れる。このときに流れる電流を検出して素線切れの検知が可能で、装置の緊急停止等、素線切れへの対処を実施することができる。同心より線とガイド部材の周辺部との間に印加する電圧は低圧であり、作業員等に危険が及ぶことはない。
【0024】
請求項2の発明のように、中心孔を有するボス部を備えた絶縁材からなる円板体を介してガイド板を第1回転体と結合し、さらに、複数の孔にはベルマウス形状の通路が形成された絶縁材からなるインサートが取り付けたときは、ガイド板の絶縁が簡易な構造で達成できるとともに、巻き戻された線状体が複数の孔を円滑に通過するようになる。
【0025】
また、請求項3の発明のように、第1回転体と第2回転体とを回転させる駆動装置にブレーキ機構を装備したときは、検出手段で電流が検出された場合に、ブレーキ機構を作動させて迅速に装置の回転を停止できる。
【0026】
請求項3に記載の発明のように、本発明の分別装置は、OPGWを回収し再資源化を図る際に特に好適なものである。OPGWは、屋外に敷設され劣化が激しい場合があり、素線切れの発生頻度が比較的高い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、図面によって本発明の同心より線の解体分別装置について説明する。ここで説明する実施例は、本発明の解体分別装置をOPGWの解体分別に適用したものである。
図1は本発明の解体分別装置の一実施例を全体的に示す正面図であり、図2は本発明の要部を構成するガイド板近傍の拡大図、図3は各部品の組立て図である。また、ガイド板及び円錐体部品を図4に、絶縁材の部品を図5に示している。これらの図面において、図6等の解体分別装置の部品と対応するものについては、同一の符号が付されている。
【0028】
図1の実施例の解体分別装置における基本的な構成及び作動は、本出願人が開発した、図6等に示される解体分別装置1と変わりはない。すなわち、ローラ70、80で支持される第1回転体10及び第2回転体20を備え、両回転体は、駆動モータ56により歯車伝動機構を介して、OPGWの周囲の鋼線(線状体)の巻き方向とは逆方向に回転駆動され、鋼線を巻き戻す。ただし、この実施例では、駆動モータ56には電磁ブレーキを内蔵するいわゆるブレーキモータが採用されている。
第1回転体10及び第2回転体20の中間には巻き取り機構30が配置され、これは、両回転体に軸支されたフレーム31上に載置されており、OPGWの芯線であるアルミ管を巻き取る。解体するOPGWは、図1の左側、つまり解体分別装置1の前方側から第1回転体10に供給され、巻き戻され分離された鋼線は、複数の案内管4を通過し第2回転体20の後方で収束されて解体分別装置から送り出される。
【0029】
この実施例の解体分別装置は、基本的な構成等においては、図6等に示される解体分別装置1と同一であるものの、幾つかの点で改良が加えられている。例えば、装置の前部には、駆動装置を備えた案内ローラ付送り込み装置91が設置され、解体分別作業の開始時に、アルミ管と外周の複数の鋼線とに分離されたOPGWを、この送り込み装置を駆動して装置の後方に送り込む。装置の中間には、回転体や案内管を覆う金網製の防護カバー92が設置されるとともに、防護カバー92が開いたときは回転体の回転を停止する制御装置が設けてあり、作業員等に危険が及ぶことがないよう安全対策が施されている。
また、この実施例の解体分別装置では、案内管4に複数の鋼線を同時に挿入し、第2回転体20の後方で収束させるように構成されており、そのため、案内管4の本数は、OPGWの外周に卷回された鋼線の数の約半数となっている。これは、図6の装置のように1本ごとに送られた鋼線を収束させた場合、鋼線が元の形状に復帰するときに中心部に押出される鋼線が生じ、その鋼線にいわば「たるみ」が発生じて円滑な解体作業を阻害することがある事実が判明したため、採られた措置である。
【0030】
そして、OPGWの鋼線を適正な状態で解きほぐし方向付けして案内管4に送り込むため、第1回転体10の中空軸14の軸受け部13には、本発明のガイド板19Aが装着されている。図2の拡大図及び図3の組立て図に示すように、中空軸14の前端には、外周に軸受け部13を有するフランジ13Aが一体的に形成され、軸受け部13をベアリング53(この実施例では軸の傾斜等を吸収する自動調心ベアリング)に嵌め込むことにより、中空軸14及び第1回転体10は回転可能に支持される。フランジ13Aには鋼線が通る空間部18が、案内管4の本数に対応して設けられている。
【0031】
フランジ13Aの前方には、絶縁円板19Cを介して、周辺部に鋼線が通過する孔19Dが形成されたガイド板19Aが取り付けられ、さらに、この実施例では、前方に向け先細りとなる円錐体部品19Bとが取り付けられる。ガイド板19Aの孔19Dは、フランジ13Aの空間部18に対応した位置に案内管4の本数に等しい数(この実施例では4個)だけ形成されている。また、ガイド板19Aの中央には、絶縁円板19Cのボス部19Fを嵌め込む孔19Gが形成され、外周部分には、図示しないボルトにより絶縁円板19Cを介してフランジ13Aと締結するためのボルト孔が形成される。なお、ガイド板19Aをフランジ13Aと締結するボルトは、やはり絶縁材を介してガイド板19Aに締め付けられる。
【0032】
図4に示すとおり、円錐体部品19Bの中心にはアルミ管の通過する中心孔19Hが設けられ、後部には、絶縁円板19Cのボス部19Fの貫通孔を通って中空軸14に挿入される軸部が設けられる。円錐体部品19Bには、ボルトを取り付けるボルト孔19I及び凹部が形成されており、ガイド板19Aと円錐体部品19Bとは、図示しないボルトにより、絶縁円板19Cを挟んで一体的に結合され中空軸14のフランジ13Aに締結される。ガイド板19Aと円錐体部品19Bとは、ボルトにより締結されるときに絶縁円板19Cのボス部19Fによって両者は電気的に絶縁される。
【0033】
絶縁円板19Cは、ベークライト等の合成樹脂又はセラミックス等の絶縁材料からなり、図5に示すとおり、中央にボス部19Fが設けられており、これによって、ガイド板19Aは、回転体10の中空軸14から電気的に絶縁され、かつ、円錐体部品19Bから絶縁される。ガイド板19Aの鋼線が通過する複数の孔19Dには、図3の組立て図から分かるように、ベルマウス形状の通路19Jを有する絶縁インサート19Kが嵌め込まれ、ガイド板19Aと鋼線との間も絶縁されている。絶縁インサート19Kは、その通路19J内を鋼線が摺接しながら通過するため、セラミックス等の耐磨耗性絶縁材料で形成されているが、絶縁材の表面に耐磨耗性の鋼等を被覆して形成してもよい。絶縁インサート19Kの後部は絶縁円板19Cの孔19D内に保持され、先端部は円板19Aの前方に突出している。
【0034】
解体分別装置に送り込まれるOPGWの鋼線と円板19Aとの間には、人体に影響しない程度の低圧の電圧が印加されるとともに、解体分別装置の作動をコントロールする制御装置には、両者の間に流れる電流を検出する検出装置が組み込まれている。電圧を印加するため、図示は省略するが、装置の入口部である送り込み装置91の前部には鋼線と常時接触する接触端子が、また、ガイド板19Aの近傍にはこれと常時接触する接触端子がそれぞれ配置される。
ちなみに、この実施例の解体分別装置では、第1回転体10の絶縁されていない部分にも検査用の接触端子を配置し、これと鋼線と接触する接触端子の間に低圧の電圧を印加している。検査用の接触端子は、素線切れの検知装置の作動を診断する目的で配置されるものであり、正常に機能している場合には、検査用の接触端子と鋼線と接触する接触端子との間には常時微弱な電流が流れるから、その電流を検出すれば素線切れの検知装置の正常な作動を確認することができる。検査用の接触端子を、装置の入口部に配置され鋼線と接触する接触端子の後ろ側(例えば送り込み装置91の後部)に置いて、やはり鋼線と接触させ、両者の間の微弱電流を検出するように構成してもよい。
【0035】
次いで、本発明のガイド板を備えた解体分別装置の作動等について説明する。図1に概略的に示すように、解体分別装置1の後方には、定張力機能を備えたリールワインダー90が設置され、第2回転体20の後ろ側で収束された鋼線Yは、リールワインダー90に牽引されこれに巻き取られる。つまり、解体されるOPGWは、リールワインダーの張力によって解体分別装置1に送り込まれ解体分別される。本発明の円錐体部品19B及びガイド板19Aは、OPGWの外周に巻回された鋼線Yが巻き戻され案内管に導入される位置に設置してあり、鋼線Yは、円錐体部品19Bに沿って拡がりながら、周辺部の複数の孔19Dを通過しスムースに案内管4に導かれることとなる。
また、外周に巻回された鋼線Yの単位長さ当りの巻き数には不均一が存在しており、回転体10、20が略一定の回転速度で駆動されていると、巻き数の多い部分を解体するときは、鋼線は、円錐体部品19Bの先端に接触しながら解きほぐされる。そのため、鋼線の送り速度が減少し、巻き数が多くとも適正な解体作業が実施される。このように、本発明の円錐体部品19Bはいわば自動的な送り速度調整装置としても機能する。
【0036】
素線切れの発生したOPGWが解体分別装置に送り込まれると、切断した鋼線は前方から牽引されないので、ガイド板19Aの孔19Dに装着された絶縁インサート19K内に入り込むことができず、図2の1点鎖線に示すように、その先端がガイド板19Aの表面に接触する。ガイド板19Aと鋼線との間には、低圧の電圧が印加されているが、通常は、両者は電気的に絶縁されているから電流は流れない。しかし、切断された鋼線がガイド板19Aと接触したときには電流が流れることとなる。解体分別装置の制御装置には、このときに流れる電流を検出する検出装置が組み込まれており、これによって素線切れを検知することが可能で、回転体の回転を緊急に停止して切断した鋼線に起因する解体分別装置の損傷を未然に防止する等の措置を講じることができる。
【0037】
特に、この実施例では、回転体10、20を駆動する駆動モータ56は、機械的ブレーキを内蔵する周知のブレーキモータであって、例えば、摩擦材からなるブレーキライニングをモータの回転軸とモータハウジングとに装着し、ブレーキを作動させるときは両方のブレーキライニングを密着させるものである。この実施例では、電源喪失に対処するため、ばねによりブレーキライニングを密着させ、電磁力によってブレーキを解除するよう構成されている。さらに、駆動モータ56自体にはインバーターモータが採用され、回転体の駆動を停止するときは、駆動モータ56を発電機として作用させ回生制動を行う回生ブレーキが制御装置に組み込まれている。素線切れを検出したときには、回生ブレーキ及び内臓ブレーキを作動させて回転体に制動力を作用させることにより、直ちに回転体を停止することができる。
【0038】
以上詳述したように、本発明は、同心より線を解体するため、外周に卷回された線状体の巻き方向とは逆に回転する回転体によって線状体を巻き戻しながら芯線を取り出す解体分別装置において、回転体の前部に装着されたガイド板を周囲から絶縁し、これと同心より線との間に低圧の電圧を印加することにより、このガイド板に素線切れの検出手段を組み込んだものである。したがって、本発明の分別装置は、OPGWに限らず、導電性であれば一般的な同心より線を解体し分別する装置として適用可能であることは言うまでもない。また、上述の実施例とは異なるような種々の変形、例えば、ガイド部材の絶縁方法として他の態様を採用すること、芯線の通過しない第2回転体の構造を第1回転体と変えること、が可能であるのは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の解体分別装置を示す全体図である。
【図2】本発明の解体分別装置の要部を示す拡大図である。
【図3】本発明のガイド部材の組立て図である。
【図4】本発明のガイド部材の部品を示す図である。
【図5】本発明のガイド部材における絶縁体を示す図である。
【図6】本発明の基礎となる解体分別装置を示す全体図である。
【図7】図6の装置の一部拡大図である。
【図8】図6の装置のVIII−VIII断面図である。
【図9】図6の装置のガイド板を示す図である。
【図10】図6の装置の使用方法を示す図である。
【図11】OPGWの構造を示す図である。
【符号の説明】
【0040】
1 分別装置
4 案内管
10 第1回転体
20 第2回転体
11、21 円盤体
12 外周歯車
13 軸受け部
13A フランジ
14 中空軸
19、19A ガイド板
19B 円錐体部品
19C 絶縁円板
19F ボス部
19K 絶縁インサート
30 巻き取り機構
31 フレーム
33 芯線巻き取りドラム
56 駆動モータ(第1、第2回転体駆動用)
70 ローラ(駆動・支持用)
80 ローラ(支持用)
90 リールワインダー
91 送り込み装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯線の周りに複数の線状体が巻回された同心より線を解体し分別する装置であって、
中心部に前記芯線が通過する中心孔を備え、周辺部には前記線状体が通過する複数の案内管を取り付けた回転可能に支持される第1回転体が前方に配置されるとともに、周辺部に前記線状体が通過する複数の前記案内管を取り付け、回転可能に支持される第2回転体が後方に配置され、
前記第1回転体と前記第2回転体とに静止状態で軸支される巻き取り機構が、前記第1回転体と前記第2回転体との中間に配置されており、
前記第1回転体と前記第2回転体とを、前記線状体の巻き方向とは逆方向に同期して回転させながら、前記第1回転体の前方から前記同心より線を送り込むことにより、前記芯線を前記巻き取り機構に巻き取り、前記線状体を前記第2回転体の後方に収束させて送り出すように構成され、さらに、
前記第1回転体の前部には、中心部に前記芯線の通過する中心孔が、かつ、周辺部に前記線状体が通過する複数の孔が形成されたガイド板が取り付けられ、
前記ガイド板は、前記第1回転体と電気的に絶縁されるよう絶縁材を介して前記第1回転体に結合されるとともに、前記複数の孔は絶縁材によって被覆されており、
第1回転体に送り込まれる前記同心より線と前記ガイド板との間に低圧の電圧を印加して、両者の間に流れる電流の有無を検出する検出手段が設けられることを特徴とする解体分別装置。
【請求項2】
前記ガイド板は、中心孔を有するボス部を備えた絶縁材からなる円板体を介して前記第1回転体と結合され、前記複数の孔には、ベルマウス形状の通路が形成された絶縁材からなるインサートが取り付けられる請求項1に記載の解体分別装置。
【請求項3】
前記第1回転体と前記第2回転体とを回転させる駆動装置にはブレーキ機構が装備され、前記検出手段で電流が検出されたときは、前記ブレーキ機構を作動させる請求項1又は請求項2に記載の解体分別装置。
【請求項4】
前記同心より線は、光ファイバを収容したアルミ管を芯線とする光ファイバ複合架空地線である請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の解体分別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−242541(P2007−242541A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−66161(P2006−66161)
【出願日】平成18年3月10日(2006.3.10)
【出願人】(000003687)東京電力株式会社 (2,580)
【出願人】(392022721)株式会社和田電業社 (8)