説明

電解コンデンサ駆動用電解液およびそれを用いた電解コンデンサ

【課題】低インピーダンス特性を有し、はんだリフロー時における製品膨張が少ない電解コンデンサを提供し得る電解コンデンサ駆動用電解液、およびそれを用いた電解コンデンサを提供する。
【解決手段】 本発明の電解コンデンサ駆動用電解液は、トリシアノメチドアニオンとRs−LH(Lは、C、Si、N、P、S及びOからなる群より選ばれる1種類の元素を表す。Rは、同一又は異なる、1価の元素、官能基又は有機基であり、互いに結合した元素となっていてもよい。sは、2、3又は4の整数であり、Lの元素の価数によって決まる値である。)で表されるカチオンとを有するイオン性化合物と、特定の窒素原子含有有機化合物とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解コンデンサ駆動用電解液および電解コンデンサに関する。より詳細には、電子機器類に使用される高周波領域で低インピーダンスであり、はんだリフロー時における製品膨張値が少ない電解コンデンサを提供し得る電解コンデンサ駆動用電解液、およびそれを用いた電解コンデンサに関する。
【背景技術】
【0002】
電解コンデンサは、アルミニウム、タンタル、ニオブ等の弁金属と呼ばれる金属を電極に使用して、陽極酸化することで得られる酸化皮膜層を誘電体として利用するコンデンサである。
【0003】
アルミニウム電解コンデンサは、一般に、図1、図2、図3に示す構造からなる。エッチング処理および酸化皮膜形成処理をした陽極箔1と陰極箔2とをセパレータ3を介して巻回したコンデンサ素子6を形成し、このコンデンサ素子を電解コンデンサ駆動用電解液に含浸させた後、有底筒状の外装ケース8に収納する。陽極引出リード4および陰極引出リード5を弾性封口体7に形成した貫通孔に挿入して引き出し、外装ケースの開口部に弾性封口体7を装着し、絞り加工により密閉した構造を有している。
【0004】
電子部品の小型化、薄型化、高密度面実装技術の進歩に伴い、アルミニウム電解コンデンサにおいてもチップ型であることが求められている。チップ型アルミニウム電解コンデンサは、図4に示すような構造からなる。エッチング処理および酸化皮膜形成処理をした陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子6を形成し、このコンデンサ素子を電解コンデンサ駆動用電解液に含浸させた後、有底筒状の外装ケース8に収納する。開口部を、弾性封口体7を用いて封口し、アルミニウム電解コンデンサを構成する。このアルミニウム電解コンデンサのリード端子18を引き出した端面に当接するように配設し、かつ、該リード端子18が貫通する貫通孔を備えた絶縁板19を装着して、基板装着上の安定性を持たせるように構成されている。
【0005】
アルミニウム電解コンデンサは、いずれも陽極箔と陰極箔との間には、電解コンデンサ駆動用電解液を含浸させたセパレータを介している。電解コンデンサ駆動用電解液は、真の陰極として機能しており、また、酸化皮膜が電気的なストレスなどにより絶縁破壊を開始したときに、電解コンデンサ駆動用電解液の化成能力により、酸化皮膜を成長させ、直ちに補修する特徴を有している。このため、電解コンデンサ駆動用電解液は、アルミニウム電解コンデンサの特性に大きな影響を与える重要な構成要素である。
【0006】
高周波領域で低インピーダンスのアルミニウム電解コンデンサには、γ−ブチロラクトンを主体とする溶媒に、フタル酸やマレイン酸などのカルボン酸のテトラアルキル4級アンモニウム塩を電解質とする電解コンデンサ駆動用電解液や、アルキル置換アミジン基を有する4級化合物のカルボン酸塩を電解質とする電解コンデンサ駆動用電解液が知られている(特許文献1、2参照)。
【0007】
近年の電子機器の小型化、高性能化、使用温度の高温度化、自動車性能の高機能化に伴い、アルミニウム電解コンデンサには、より低いインピーダンス特性や表面実装時の外観膨張抑制が求められている。
【0008】
そこで、全体の電子的中性を保証するために十分な数で、少なくとも1つのカチオン部分(以下、Mと称する)に結合した少なくとも1つのアニオン部分を含むイオン性化合物であって、Mがヒドロキソニウム、ニトロソニウム(NO)、アンモニウム(NH4)、原子価mを有する金属カチオン、原子価mを有する有機カチオン、または原子価mを有する有機金属カチオンであり、アニオン部分は、Rp−Y−C(CN)またはZ−C(CN)のいずれかに相当し、このイオン性化合物はイオン伝導性材料等に用いることができることが開示されている(特許文献3参照)。アニオン部分は、5員環状であるか、または、テトラアザペンタレンから誘導されたものであり、実施例においては、アニオン部分として、トリアゾール、イミダゾール、シクロペンタジエンの誘導体が記載されている。具体的には、トリシアノメチドが開示されている。しかしながら、優れた基本性能を発揮する電解コンデンサ駆動用電解液を構成する好適な材料とするためには、工夫の余地がある。
【0009】
有機極性溶媒としてのγ−ブチロラクトンに、溶質としてペンタアルキルグアニジン類のカルボン酸塩を溶解してなる電解コンデンサ駆動用電解液が開示されている(特許文献4参照)。しかしながら、3級アンモニウム塩系電解液は、4級アンモニウム系電解液に比較して、電気伝導率が十分ではなく、はんだリフロー時の加熱による電解コンデンサの内圧上昇に起因する外観膨張の点でも劣る。このことから、電解質としての信頼性が高く、さらに電気伝導率の高い電解コンデンサ駆動用電解液を開発する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開昭62−145713号公報
【特許文献2】国際公開WO95/15572号パンフレット
【特許文献3】特表2000−508676号公報(第2−13、39−67頁)
【特許文献4】特開平9−97749号公報(第1−2頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、低インピーダンス特性を有し、はんだリフロー時における製品膨張が少ない電解コンデンサを提供し得る電解コンデンサ駆動用電解液、およびそれを用いた電解コンデンサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の電解コンデンサ駆動用電解液は、
トリシアノメチドアニオンと、一般式(1)で表されるカチオンとを有する、イオン性化合物と、
【化1】

(一般式(1)中、Lは、C、Si、N、P、S及びOからなる群より選ばれる1種類の元素を表す。Rは、同一又は異なる、1価の元素、官能基又は有機基であり、互いに結合した元素となっていてもよい。sは、2、3又は4の整数であり、Lの元素の価数によって決まる値である。)
一般式(2)で表される窒素原子含有有機化合物を含む
【化2】

(一般式(2)中、R、R、R及びRは、同一又は異なる、水素元素、炭素数が1〜8の炭化水素基、アセチル基、アルコキシ基、又はカルボニトリル基を表す。R、R、R及びRのうちの少なくとも2つが炭化水素基である場合は、それらの炭化水素基は、直接結合した構造となっていてもよい。)
【0013】
好ましい実施形態においては、上記一般式(2)で表される窒素原子含有有機化合物の含有割合が、上記イオン性化合物に対して、0.1〜200質量%である。
【0014】
好ましい実施形態においては、一般式(3)で表される窒素原子含有有機化合物をさらに含む。
【化3】

(一般式(3)中、R、R及びRは、同一又は異なる、水素元素又は炭素数が1〜8の炭化水素基を表す。R、R及びRのうちの少なくとも2つが炭化水素基である場合は、それらの炭化水素基は、直接結合していてもよい。)
【0015】
好ましい実施形態においては、上記一般式(2)で表される窒素原子含有有機化合物および上記一般式(3)で表される窒素原子含有有機化合物の合計の含有割合が、前記イオン性化合物に対して、0.1〜200質量%である。
【0016】
好ましい実施形態においては、上記一般式(1)におけるLがNである。
【0017】
好ましい実施形態においては、上記カチオンが、一般式(4);
【化4】

(一般式(4)中、R、R及びR10は、同一又は異なる、水素元素又は炭素数が1〜8の炭化水素基を表す。R、R及びR10のうちの少なくとも2つが炭化水素基である場合は、それらの炭化水素基は、直接結合するか、又は、O、S及びNの中から選ばれる少なくとも1種類の元素を介して結合していてもよい。)で表される。
【0018】
本発明の別の局面によれば、電解コンデンサが提供される。本発明の電解コンデンサは、電極引出リードが接続された陽極箔と陰極箔とがセパレータを介して巻回されたコンデンサ素子が、本発明の電解コンデンサ駆動用電解液に含浸された状態で有底筒状の外装ケース内に収容され、該外装ケースの開口部側が弾性封口体によって封止されてなる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、低インピーダンス特性を有し、はんだリフロー時における製品膨張が少ない電解コンデンサを提供し得る電解コンデンサ駆動用電解液、およびそれを用いた電解コンデンサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1−a】電解コンデンサの一形態を示す斜視図である。
【図1−b】アルミニウム電解コンデンサの一形態を示す断面模式図である。
【図1−c】アルミニウム電解コンデンサの要部切断正面図である。
【図2】その他の形態のアルミニウム電解コンデンサ素子の分解斜視図である。
【図3】その他の形態のアルミニウム電解コンデンサの要部切断正面図である。
【図4】チップ形アルミニウム電解コンデンサの要部切断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
≪A.イオン性化合物≫
本明細書において、イオン性化合物は、アニオンとカチオンとを有するものである。本明細書において、イオン性化合物は、アニオンとカチオン以外のものを含むイオン性化合物含有組成物(イオン性組成物)の形態としてもよい。本明細書中において、「イオン性化合物」は、「イオン性化合物含有組成物(イオン性組成物)」を意味することもある。
【0022】
本明細書において「有機基」とは、炭素原子を少なくとも1個有する基を意味する。すなわち、本明細書における「有機基」は、炭素原子を少なくとも1個有する基であって、アミノ基、イミノ基、アミド基、エーテル結合を有する基、チオエーテル結合を有する基、エステル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルフィド基等の官能基や、ハロゲン原子等の、他の基や原子を有していても良い。
【0023】
本発明のイオン性化合物は、アニオンとしてトリシアノメチドアニオンを必須とすることにより、イオン伝導度により優れるとともに、電極等への腐食性が充分に抑制され、経時的に安定な材料とすることが可能となる。
【0024】
上記イオン性化合物において、アニオンの存在量は、イオン性化合物100質量%に対して、アニオンの由来となる化合物の含有量の下限値が1質量%であることが好ましく、5質量%であることがより好ましく、10質量%であることがさらに好ましい。アニオンの由来となる化合物の含有量の上限値は99.5質量%であることが好ましく、95質量%であることがより好ましく、90質量%であることがさらに好ましい。
【0025】
上記一般式(1)において、Lは、C、Si、N、P、S及びOからなる群より選ばれる1種類の元素を表す。好ましくは、N、P、Sであり、より好ましくは、Nである。LがNである場合、化学的、電気化学的に安定である。
【0026】
上記一般式(1)において、Rは、同一又は異なる、1価の元素、官能基又は有機基であり、互いに結合していてもよい。上記1価の元素、官能基又は有機基としては、水素元素、フッ素元素、アミノ基、イミノ基、アミド基、エーテル基、エステル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルホン基、スルフィド基、ビニル基、炭素数1〜18の炭化水素基、炭素数1〜18の炭化フッ素基等が好ましい。上記炭素数1〜18の炭化水素基、炭素数1〜18の炭化フッ素基は、直鎖、分岐鎖又は環状であってもよい。なお、上記炭素数としては、1〜8であることがより好ましい。また、Rは、複数の炭化水素基および/または炭化フッ素基が窒素元素、酸素元素、硫黄元素のいずれかを介して結合した、炭素数の合計が2〜18の有機基であっても良い。
【0027】
上記1価の元素、官能基又は有機基としてより好ましくは、水素元素、フッ素元素、シアノ基、スルホン基、炭素数1〜8の炭化水素基、複数の炭化水素基が酸素元素または窒素元素を介して結合した炭素数の合計が2〜8の有機基、炭素数1〜8の炭化フッ素基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜8の炭化水素基、複数の飽和炭化水素基が酸素元素または窒素元素を介して結合した炭素数の合計が2〜8の有機基である。また、窒素元素を含有する場合、その窒素元素は水素元素を有しない(窒素元素に水素元素が結合又は配位していない)ものが好ましい。
【0028】
上記一般式(1)において、sは、2、3又は4の整数であり、Lの元素の価数によって決まる値である。Lが、C又はSiの場合、sは4であり、N又はPの場合、sは3であり、S又はOの場合、sは2である。すなわち、上記一般式(1)で表されるカチオンとしては、下記一般式;
【化5】

(式中、Rは、上記一般式(1)におけるRと同様である。)で表されるものが好ましい。Rは、上述のものであればいずれも好適に用いることができるが、水素元素以外であることが好ましい。
【0029】
カチオンとしては、上記一般式(1)を満たすものであれば任意の適切なカチオンを採用し得る。中でも、オニウムカチオンである形態が好ましい。なお、オニウムカチオンとは、O、N、S、P等の非金属原子又は半金属原子のカチオンを有する有機基を意味する。
【0030】
上記オニウムカチオンとしては、下記(I)〜(IV)のものが好適である。
【0031】
(I)下記一般式;
【化6】

で表される8種類の複素環オニウムカチオン。
【0032】
上記一般式中、R4a〜R9aは、同一又は異なる、1価の元素、官能基又は有機基であり、互いに結合していてもよく、Nカチオン上のRは、1価の元素、官能基又は有機基であればいずれも好適に用いることができるが、水素元素以外であることが好ましい。
【0033】
(II)下記一般式;
【化7】

で表される5種類の不飽和オニウムカチオン。
【0034】
上記一般式中、R4a〜R10aは、同一又は異なる、1価の元素、官能基又は有機基であり、互いに結合していてもよく、N、Pカチオン上のRは、1価の元素、官能基又は有機基であればいずれも好適に用いることができるが、水素元素以外であることが好ましい。
【0035】
(III)下記一般式;
【化8】

で表される9種類の飽和環オニウムカチオン。
【0036】
上記一般式中、R4a〜R14aは、同一又は異なる、1価の元素、官能基又は有機基であり、互いに結合していてもよく、N、Pカチオン上のRは、1価の元素、官能基又は有機基であればいずれも好適に用いることができるが、水素元素以外であることが好ましい。
【0037】
(IV)上記一般式(1)において、Rの1つ以上が水素元素で、Rの1つ以上がC〜Cのアルキル基である、鎖状オニウムカチオン。
【0038】
このようなオニウムカチオンの中でも、より好ましくは、上記一般式(1)におけるLが窒素原子である形態のオニウムカチオンが好ましい。
【0039】
すなわち、トリシアノメチドアニオンと、下記一般式(4);
【化9】

(一般式(4)中、R、R及びR10は、同一又は異なる、水素元素又は炭素数が1〜8の炭化水素基を表す。R、R及びR10のうちの少なくとも2つが炭化水素基である場合は、それらの炭化水素基は、直接結合するか、又は、O、S及びNの中から選ばれる少なくとも1種類の元素を介して結合していてもよい。)で表されるカチオンとを有するイオン性化合物が好ましい。
【0040】
上記Lが窒素原子であるオニウムカチオンとしては、下記一般式;
【化10】

【0041】
(式中、R4b〜R14bは、同一又は異なる、1価の元素、官能基又は有機基であり、互いに結合していてもよく、Nカチオン上のRは、1価の元素、官能基又は有機基であればいずれも好適に用いることができるが、水素元素以外であることが好ましい。)で表される6種類のオニウムカチオンや、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリプロピルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、ジメチルエチルアンモニウム、ジエチルメチルアンモニウム等のアルキルアンモニウム類;テトラメチルエチレンジアミン、ジアザビシクロオクタン、ジエチレントリアミン、ヘキサエチレンテトラミン等の分子内に2個以上の第三アミンを有する化合物のアンモニウム類;グアニジウム及びそのアルキル置換体;などが好ましい。
【0042】
上記R4b〜R14bの1価の元素、官能基又は有機基としては、水素元素、フッ素元素、アミノ基、イミノ基、アミド基、エーテル基、エステル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カルバモイル基、シアノ基、スルホン基、スルフィド基、ビニル基、炭素数1〜18の炭化水素基、炭素数1〜18の炭化フッ素基等が好ましい。上記炭素数1〜18の炭化水素基、炭素数の1〜18の炭化フッ素基は、直鎖、分岐鎖又は環状であってもよい。なお、上記炭素数としては、1〜8であることがより好ましい。また、Rは、複数の炭化水素基および/または炭化フッ素基が窒素元素、酸素元素、硫黄元素のいずれかを介して結合した、炭素数の合計が2〜18の有機基であっても良い。
【0043】
上記1価の元素、官能基又は有機基としてより好ましくは、水素元素、フッ素元素、シアノ基、スルホン基、炭素数1〜8の炭化水素基、複数の炭化水素基が酸素元素または窒素元素を介して結合した炭素数の合計が2〜8の有機基、炭素数1〜8の炭化フッ素基であり、さらに好ましくは、炭素数1〜8の炭化水素基、複数の飽和炭化水素基が酸素元素または窒素元素を介して結合した炭素数の合計が2〜8の有機基である。また、窒素元素を含有する場合、その窒素元素は水素元素を有しない(窒素元素に水素元素が結合又は配位していない)ものが好ましい。
【0044】
上記イオン性化合物においては耐熱性が優れるという理由で、(1)共役二重結合を有しない窒素カチオンを必須としてなる形態や、(2)上記一般式(1)において、LがNの元素でありRの1つが水素元素であり、他が同一又は異なる窒素を含んでもよい炭素数1〜8の炭化水素であり、その窒素元素は第三アミンであることが好ましい。
【0045】
上記イオン性化合物は、本発明の作用効果が発揮される限り、上述したオニウムカチオンを必須とするアニオンの有機塩以外の、その他のアニオンを含有していてもよい。
【0046】
上記オニウムカチオンを必須とする有機塩(有機化合物)としては、例えば、ハロゲンアニオン(フルオロアニオン、クロロアニオン、ブロモアニオン、ヨードアニオン)、4フッ化ホウ酸アニオン、6フッ化リン酸アニオン、4フッ化アルミン酸アニオン、6フッ化ヒ酸アニオン、下記一般式(5)で表されるスルホニルイミドアニオン、下記一般式(6)で表されるスルホニルメチドアニオン、有機カルボン酸(酢酸、トリフルオロ酢酸、フタル酸、マレイン酸、安息香酸等のアニオン)の他、ヘキサフルオロリン酸イオン、ヘキサフルオロヒ酸イオン、ヘキサフルオロアンチモン酸イオン、ヘキサフルオロニオブ酸イオン、ヘキサフルオロタンタル酸イオン等の含フッ素無機イオン;フタル酸水素イオン、マレイン酸水素イオン、サリチル酸イオン、安息香酸イオン、アジピン酸イオン等のカルボン酸イオン;ベンゼンスルホン酸イオン、トルエンスルホン酸イオン、ドデシルベンゼンスルホン酸イオン、トリフルオロメタンスルホン酸イオン、パーフルオロブタンスルホン酸等のスルホン酸イオン;ホウ酸イオン、リン酸イオン等の無機オキソ酸イオン;ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドイオン、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドイオン、トリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチドイオン、パーフルオロアルキルフルオロボレートイオン、パーフルオロアルキルフルオロホスフェートイオン、ボロジカテコレート、ボロジグリコレート、ボロジサリチレート、ボロテトラキス(トリフルオロアセテート)、ビス(オキサラト)ボレート等の四配位ホウ酸イオン等のアニオンと、オニウムカチオンとを有する有機塩が好適である。
【0047】
【化11】

【0048】
上記一般式(5)、(6)中、R15、R16及びR17は、同一又は異なる、エーテル基を1個又は2個有してもよい炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基を表す。
【0049】
上記イオン性化合物において、上記オニウムカチオンの存在量は、上記アニオン1モルに対して、下限値が0.5モルであることが好ましく、0.8モルであることがより好ましい。また、上限値は2.0モルであることが好ましく、1.2モルであることがより好ましい。
【0050】
上記イオン性化合物において、不純物含有量は、イオン性化合物100質量%中、0.1質量%(1000ppm)以下であることが好ましい。
【0051】
0.1質量%を超えると、充分な電気化学安定性を得ることができないおそれがある。より好ましくは、0.05質量%以下であり、さらに好ましくは、0.01質量%以下である。
【0052】
上記不純物とは、水を含まないものであり、例えば、イオン性化合物を製造する際や輸送する際に混入するものが挙げられる。具体的には、上記イオン性化合物を製造する場合、例えば、ハロゲン化合物を用いて該イオン性化合物を誘導して得たときには、ハロゲン化合物が不純物として混入する可能性があり、また、銀塩を用いて該イオン性化合物を誘導して得たときには、銀塩が不純物として混入する可能性がある。また、製造原料や副生成物等が不純物として混入する可能性もある。
【0053】
本発明においては、イオン性化合物における不純物含量を上記のように設定することにより、例えば、ハロゲン化合物が電気化学デバイスの電極を被毒して性能を低下させることを充分に抑制したり、銀イオンや鉄イオン等がイオン伝導性に影響して性能を低下させることを充分に抑制したりすることが可能となる。なお、不純物含有量の測定は、下記の測定方法により行うことが好ましい。
【0054】
(不純物の測定方法)
(1)ICP(銀イオン、鉄イオン等陽イオン類測定)
機器:ICP発光分光分析装置ICPE−9000(島津製作所製)
方法:サンプル2gを超純水で10倍に希釈し、その溶液を測定
(2)イオンクロマト(硝酸イオン、臭素イオン、塩素イオン、硫酸イオン等陰イオン類測定)
機器:ICS−3000
分離モード:イオン交換
検出器:電気伝導度検出器CD−20
カラム:アニオン分析用カラムAS17−C(日本ダイオネクス社製)
方法:サンプル0.3gをイオン交換水で100倍に希釈し、その溶液を測定
【0055】
上記イオン性化合物において、水分含有量は、イオン性化合物100質量%中、0.05〜10質量%であることが好ましい。0.05質量%未満であると、水分管理が困難となり、コストアップに繋がるおそれがある。また、10質量%を超えると、電気安定性を充分に発揮できないおそれがある。好ましい下限は、0.1質量%、上限は5質量%であり、より好ましい下限は0.5質量%、上限は3質量%である。電解液としては、電解液中の水分含有量は、3質量%以下とすることが好ましい。
【0056】
なお、水分含有量の測定は、下記の測定方法により行うことが好ましい。
【0057】
(水分測定方法)
サンプル調製においては、露点−80℃以下のグローボックス中で測定サンプル0.25g、脱水アセトニトリル0.75gを混合し、グローボックス中で充分乾燥したテルモシリンジ(商品名、2.5ml)で混合溶液0.5gを採取することにより行う。その後、カールフィッシャー水分計AQ−7(商品名、平沼産業社製)にて水分測定を行う。
【0058】
上記イオン性化合物の製造方法としては特に限定されないが、トリシアノメチドアニオンを有する化合物からイオン性物質を誘導する工程を含んでなる製造方法が好適である。これにより、イオン性物質を溶融塩や固体電解質を構成する塩として好適な形態とすることが可能となる。このような製造方法としては、ハロゲン化物、炭酸化物を用いてトリシアノメチドアニオンの構造を有する化合物からイオン性物質を誘導する工程を含んでなることが好ましく、例えば、トリシアノメチドアニオンを有する化合物と、ハロゲン化物又は炭酸化合物とを反応させる工程を含んでなり、該ハロゲン化物又は炭酸化合物は、オニウムカチオン、又は、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、遷移金属原子及び希土類金属原子から選ばれる少なくとも1種の金属原子を必須とするカチオンを有するものであることが好適である。これらの製造原料は、それぞれ1種又は2種以上を用いることができる。なお、本発明において、上記製造方法としては、アニオン交換樹脂を用いても良い。
【0059】
上記工程において、トリシアノメチドアニオンを有する化合物からイオン性物質を誘導する工程における化学反応式の1形態を下記式に示す。
【化12】

【0060】
上記工程において、トリシアノメチドアニオンを有する化合物のモル数をxとし、ハロゲン化物のモル数をyとすると、反応におけるモル比(x/y)としては、100/1〜0.1/1であることが好ましい。トリシアノメチドアニオンを有する化合物が0.1未満であると、ハロゲン化物が過剰となりすぎて効率的に生成物を得られないおそれがあり、また、イオン性化合物中にハロゲンが混入し、電極等を被毒させるおそれがある。100を超えると、トリシアノメチドアニオンを有する化合物が過剰となりすぎて更に収率の向上は期待できないおそれがあり、また、金属イオンがイオン性化合物中に混入して電気化学デバイスの性能を低下させるおそれがある。より好ましくは、10/1〜0.5/1である。
【0061】
上記工程の反応条件としては、製造原料や他の反応条件等により適宜設定することができるが、反応温度としては、−20〜200℃が好ましく、0〜100℃がより好ましく、10〜60℃が更に好ましい。反応圧力としては、1×10〜1×10Paが好ましく、1×10〜1×10Paがより好ましく、1×10〜1×10Paが更に好ましい。反応時間としては、48時間以下が好ましく、24時間以下がより好ましく、12時間以下が更に好ましい。
【0062】
上記工程においては、通常では反応溶媒を用いることとなるが、反応溶媒としては、(1)ヘキサン、オクタンなど脂肪族炭化水素系;(2)シクロヘキサンなど脂環式飽和炭化水素系;(3)シクロヘキセンなど脂環式不飽和炭化水素系;(4)ベンゼン、トルエン、キシレンなど芳香族炭化水素系;(5)アセトン、メチルエチルケトンなどケトン類;(6)酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトンなどエステル類;(7)ジクロロエタン、クロロホルム、四塩化炭素などハロゲン化炭化水素類;(8)ジエチルエーテル、ジオキサン、ジオキソランなどエーテル類、(9)プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどアルキレングリコールのエーテル類;(10)メチルアルコール、エチルアルコール、ブチルアルコール、イソプロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどアルコール類;(11)ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドンなどアミド類;(12)ジメチルスルホキシドなどスルホン酸エステル類;(13)ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネートなど炭酸エステル類;(14)エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなど脂環式炭酸エステル類;(15)アセトニトリル等のニトリル類;(16)水等が好適である。これらは1種又は2種以上を用いることができる。この中でも、(5)、(6)、(10)、(11)、(12)、(13)、(14)、(15)、(16)が好適である。より好ましくは、(5)、(6)、(10)、(14)、(15)、(16)である。
【0063】
上記イオン性化合物の製造方法においては、上記工程の後に、沈殿物等のろ過、溶媒の除去、脱水、減圧乾燥等の処理を行ってもよく、例えば、生成した沈殿物をろ過し、イオン性物質を含んだ溶媒から真空等の条件下で溶媒を除去した後、ジクロロメタン等の溶剤に溶解することで洗浄し、MgSO等の脱水効果を有する物質を添加して脱水し、溶媒除去後に減圧乾燥することでイオン性化合物を得てもよい。溶剤による洗浄処理の回数としては、適宜設定すればよく、溶剤としては、ジクロロメタン以外に、クロロホルム、テトラヒドロフラン、アセトン等のケトン類;エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;アセトニトリル;水;等が好適である。また、脱水効果を有する物質としては、MgSO以外に、モレキュラーシーブ、CaCl、CaO、CaSO、KCO、活性アルミナ、シリカゲル等が好適であり、添加量は、生成物や溶剤の種類等により適宜設定すればよい。
【0064】
≪B.電解コンデンサ駆動用電解液≫
本発明の電解コンデンサ駆動用電解液は、上記イオン性化合物と、一般式(2)で表される窒素原子含有有機化合物および/または一般式(3)で表される窒素原子含有有機化合物とを含む。
【化13】

(一般式(2)中、R、R、R及びRは、同一又は異なる、水素元素、炭素数が1〜8の炭化水素基、アセチル基、アルコキシ基、又はカルボニトリル基を表す。R、R、R及びRのうちの少なくとも2つが炭化水素基である場合は、それらの炭化水素基は、直接結合した構造となっていてもよい。)
【化14】

(一般式(3)中、R、R及びRは、同一又は異なる、水素元素又は炭素数が1〜8の炭化水素基を表す。R、R及びRのうちの少なくとも2つが炭化水素基である場合は、それらの炭化水素基は、直接結合していてもよい。)
【0065】
本発明の電解コンデンサ駆動用電解液中、上記イオン性化合物の濃度としては、0.01mol/dm以上が好ましく、また、飽和濃度以下が好ましい。0.01mol/dm未満であると、イオン伝導度が低いため好ましくない。より好ましくは、0.1mol/dm以上、また、1.5mol/dm以下である。
【0066】
本発明の電解コンデンサ駆動用電解液は、上記窒素原子含有有機化合物として、一般式(2)で表される窒素原子含有有機化合物のみを含んでいても良いし、一般式(3)で表される窒素原子含有有機化合物のみを含んでいても良いし、一般式(2)で表される窒素原子含有有機化合物と一般式(3)で表される窒素原子含有有機化合物の両方を含んでいても良い。
【0067】
一般式(2)で表される窒素原子含有有機化合物としては、例えば、ピラジン、2−メチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、テトラメチルピラジン、2−アセチルピラジン、2−メトキシ−3−メチルピラジン、2,3−ピラジンジカルボニトリル、キノキサリン、2−メチルキノキサリン、2,3−ジメチルキノキサリンが挙げられる。
【0068】
一般式(3)で表される窒素原子含有有機化合物としては、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミンが挙げられる。
【0069】
本発明の電解コンデンサ駆動用電解液は、上記窒素原子含有有機化合物を含むことにより、低インピーダンス特性を有し、はんだリフロー時における製品膨張が少ない電解コンデンサを提供し得る。
【0070】
上記窒素原子含有有機化合物の含有割合は、上記イオン性化合物に対して、好ましくは0.1〜200質量%である。下限値は、より好ましくは0.5質量%以上、さらに好ましくは1質量%以上、特に好ましくは2質量%以上である。上限値は、より好ましくは100質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下、特に好ましくは40質量%以下である。上記範囲にあることにより、本発明の電解コンデンサ駆動用電解液は、低インピーダンス特性を有し、はんだリフロー時における製品膨張が少ない電解コンデンサを提供し得る。
【0071】
上記窒素原子含有有機化合物の含有割合は、上記イオン性化合物と後述する溶媒との総和に対して、好ましくは0.1〜60質量%、より好ましくは0.5〜40質量%である。上記範囲にあることにより、本発明の電解コンデンサ駆動用電解液は、低インピーダンス特性を有し、はんだリフロー時における製品膨張が少ない電解コンデンサを提供し得る。
【0072】
上記電解コンデンサ駆動用電解液は、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含んでいてもよい。
【0073】
このようなアルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を含むイオン性化合物は、アルカリ金属塩及び/又はアルカリ土類金属塩を電解質として含有するものとなり、電気化学デバイスのイオン伝導体の材料としてより好適なものとなる。
【0074】
アルカリ金属塩としては、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩が好適であり、アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩、マグネシウム塩が好適である。より好ましくは、リチウム塩である。
【0075】
上記電解コンデンサ駆動用電解液は、重合体を含むことにより、固体化して高分子固体電解質として好適に用いることができる。
【0076】
上記重合体としては、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸エステル類、ポリ塩化ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のポリビニル系重合体;ポリオキシメチレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド等のポリエーテル系重合体;ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系重合体;ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系重合体;ポリスチレン;ポリフォスファゼン類;ポリシロキサン;ポリシラン;ポリフッ化ビニリデン;ポリテトラフルオロエチレン;ポリカーボネート系重合体;アイオネン系重合体;などの1種又は2種以上が好適である。
【0077】
上記イオン性化合物を高分子固体電解質とする場合、重合体の存在量としては、イオン性化合物100質量%に対して、下限値が0.1質量%、上限値が5000質量%であることが好ましい。0.1質量%未満であると、固体化の効果を充分に得られないおそれがあり、5000質量%を超えると、イオン伝導度が低下するおそれがある。より好ましい下限値は1質量%、より好ましい上限値は1000質量%である。
【0078】
上記電解質材料は、溶媒を含むことにより、イオン伝導度がより向上することになる。
【0079】
上記溶媒としては、イオン伝導度を向上することが可能なものであれば任意の適切な溶媒を採用し得る。例えば、有機溶媒等が好適である。上記有機溶媒としては、上述したイオン性化合物における構成要素との相溶性が良好であって、誘電率が大きく、電解質塩の溶解性が高く、沸点が60℃以上であり、電気化学的安定範囲が広い化合物が好適である。より好ましくは、含有水分量が低い有機溶媒(非水系溶媒)である。このような有機溶媒としては、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、クラウンエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエ−テル、ジオキサン等のエーテル類;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート類;炭酸ジメチル、炭酸エチルメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル、炭酸メチルフェニル等の鎖状炭酸エステル類;炭酸エチレン、炭酸プロプレン、2,3−ジメチル炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸ビニレン、2−ビニル炭酸エチレン等の環状炭酸エステル類;蟻酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸、プロピオン酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸アミル等の脂肪族カルボン酸エステル類;安息香酸メチル、安息香酸エチル等の芳香族カルボン酸エステル類;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン等のカルボン酸エステル類;リン酸トリメチル、リン酸エチルジメチル、リン酸ジエチルメチル、リン酸トリエチル等のリン酸エステル類;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、2−メチルグルタロニトリル等のニトリル類;N−メチルホルムアミド、N−エチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルピロリドン、N−ビニルピロリドン等のアミド類;ジメチルスルホン、エチルメチルスルホン、ジエチルスルホン、スルホラン、3−メチルスルホラン、2,4−ジメチルスルホラン等の硫黄化合物類:エチレングリコール、プロピレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のアルコール類;エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、2,6−ジメチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン等のエーテル類;ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド等のスルホキシド類;ベンゾニトリル、トルニトリル等の芳香族ニトリル類;ニトロメタン;1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノン;3−メチル−2−オキサゾリジノン;等を挙げることができ、これらの1種又は2種以上が好適である。これらの中でも、炭酸エステル類、脂肪族エステル類、エーテル類がより好ましく、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類が更に好ましく、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等の環状エステル類が最も好ましい。
【0080】
上記イオン性化合物は、好ましくは、揮発分が低減されたものであり、かつ、例えば−55℃の低温においても凍ることがなく、イオン伝導度に優れるものである。このようなイオン性化合物を電解コンデンサ駆動用電解液として用いた場合、優れた電気特性を発揮することができる。
【0081】
上記溶媒の含有量としては、上記電解質材料中、1〜99質量%であることが好ましい。上記溶媒の含有量が1質量%未満であると、溶媒の揮発等で安定性が充分には向上しないこととなるおそれがあり、99質量%を超えると、イオン伝導度が充分には向上しないこととなるおそれがある。下限値としては、好ましくは、1.5質量%であり、より好ましくは、20質量%であり、さらに好ましくは、50質量%である。上限値としては、好ましくは、95質量%であり、より好ましくは、85質量%であり、さらに好ましくは、75質量%である。範囲としては、溶媒量50〜85質量%が好ましい。
【0082】
本発明の電解コンデンサ駆動用電解液は、イオン性化合物、溶媒、窒素原子含有有機化合物以外に、種々の添加剤が含有されていても良い。
【0083】
添加剤を加える目的は多岐にわたり、電気伝導率の向上、熱安定性の向上、水和や溶解による電極劣化の抑制、ガス発生の抑制、耐電圧の向上、濡れ性の改善等を挙げることができる。このような添加剤としては、例えば、p−ニトロフェノール、m−ニトロアセトフェノン、p−ニトロ安息香酸等のニトロ化合物;リン酸ジブチル、リン酸モノブチル、リン酸ジオクチル、オクチルホスホン酸モノオクチル、リン酸、亜リン酸、次亜リン酸等のリン化合物;ホウ酸又はホウ酸と多価アルコール(エチレングリコール、グリセリン、マンニトール、ポリビニルアルコール等)や多糖類との錯化合物等のホウ素化合物;ニトロソ化合物;尿素化合物;ヒ素化合物;チタン化合物;ケイ酸化合物;アルミン酸化合物;硝酸及び亜硝酸化合物;2−ヒドロキシ−N−メチル安息香酸、ジ(トリ)ヒドロキシ安息香酸等の安息香酸類;グルコン酸、重クロム酸、ソルビン酸、ジカルボン酸、EDTA、フルオロカルボン酸、ピクリン酸、スベリン酸、アジピン酸、セバシン酸、ヘテロポリ酸(タングステン酸、モリブデン酸)、ゲンチシン酸、ボロジゲンチシン酸、サリチル酸、N−アミノサリチル酸、ボロジプロトカテク酸、ボロジピロカテコール、バモン酸、ボン酸、ボロジレゾルシル酸、レゾルシル酸、ボロジプロトカクエル酸、グルタル酸、ジチオカルバミン酸等の酸類、そのエステル、そのアミド及びその塩;シランカップリング剤;シリカ、アミノシリケート等のケイ素化合物;トリエチルアミン、ヘキサメチレンテトラミン等のアミン化合物;L−アミノ酸類;ベンゾール;多価フェノール;8−オキシキノリン;ハイドロキノン、N−メチルピロカテコール、キノリンおよびチオアニソール、チオクレゾール、チオ安息香酸等の硫黄化合物;ソルビトール;L−ヒスチジン;等の1種又は2種以上を使用することができる。
【0084】
上記添加剤の含有量は任意の適切な量を採用し得る。例えば、イオン性化合物100質量%に対して、0.1〜20質量%の範囲が好ましく、0.5〜10質量%の範囲がより好ましい。
【0085】
本発明の電解コンデンサ駆動用電解液を調製する際、配合量は、目的に応じて、任意の適切な値に設定し得る。好ましくは、上記イオン性化合物を、上記溶媒に対し1〜900質量%、さらに好ましくは10〜400質量%、特に好ましくは30〜100質量%である。配合量をこのような範囲とすることにより、優れたイオン伝導度を達成し得る。
【0086】
本発明の電解コンデンサ駆動用電解液は、無機酸化物微粒子を含んでいても良い。
【0087】
上記無機酸化物微粒子としては、非電子伝導性、電気化学的に安定なものが好ましく、イオン伝導性を有するものがより好ましい。このような無機酸化物微粒子としては、例えば、α,β,γ―アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、チタン酸バリウム、ハイドロタルサイト等のセラミックス微粒子が挙げられる。
【0088】
本発明の電解コンデンサ駆動用電解液のイオン伝導度は、代表的には10mS/cm以上、好ましくは15mS/cm以上、さらに好ましくは20mS/cm以上である。なお、本明細書において「イオン伝導度」とは、25℃にて測定した値をいう。
【0089】
≪C.電気化学デバイス≫
【0090】
本発明におけるイオン性化合物および本発明の電解コンデンサ駆動用電解液は、電気化学デバイスの構成要素として用いることができる。
【0091】
電気化学デバイスの好ましい形態としては、基本構成要素として、イオン伝導体、負極、正極、集電体、セパレータ及び容器を有するものである。
【0092】
以下に、電気化学デバイスとして、電解コンデンサについて、より詳しく説明する。
【0093】
本発明の電解コンデンサは、本発明の電解コンデンサ駆動用電解液を用いる。より詳細には、本発明の電解コンデンサは、電極引出リードが接続された陽極箔と陰極箔とがセパレータを介して巻回されたコンデンサ素子が、本発明の電解コンデンサ駆動用電解液に含浸された状態で有底筒状の外装ケース内に収容され、該外装ケースの開口部側が弾性封口体によって封止されてなる。
【0094】
電解コンデンサは、陽極箔、陰極箔、陽極箔と陰極箔との間に挟まれたセパレータである電解紙及びリード線より構成されるコンデンサ素子と、上記電解質を用いてなるイオン伝導体と、有底筒状の外装ケースと、外装ケースを密封する封口体とを基本構成要素として構成されているものである。コンデンサ素子の一形態の斜視図を図1−aに示す。本発明における電解コンデンサは、コンデンサ素子に本発明の電解コンデンサ駆動用電解液を含浸し、該コンデンサ素子を有底筒状の外装ケースに収納し、外装ケースの開口部に封口体を装着するとともに、外装ケースの端部に絞り加工を施して外装ケースを密封することにより得ることができるものである。このような電解コンデンサとしては、アルミニウム電解コンデンサ、タンタル電解コンデンサ、ニオブ電解コンデンサが好適である。アルミニウム電解コンデンサの一形態の断面模式図を図1−bに示す。このようなアルミニウム電解コンデンサとしては、電解エッチング又は蒸着により細かな凹凸を作って粗面化したアルミニウム箔の表面に陽極酸化によって形成した薄い酸化皮膜(酸化アルミニウム)を誘電体とするものが好適である。
【0095】
またアルミニウム電解コンデンサの要部切断断面を図1−cに示す。図1−cは、粗面化処理及び酸化皮膜形成処理をした陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子6を形成し、このコンデンサ素子6を電解コンデンサ駆動用電解液に含浸させた後、有底筒状の外装ケース8に収納する。陽極及び陰極引き出しリード4、5を弾性封口体7に形成した貫通孔に挿入して引き出し、外装ケースの開口部には、弾性封口体7を装着し、絞り加工により密閉した構造としている。
【0096】
アルミニウム電解コンデンサは、一般には図2、図3に示すような構造からなる。エッチング処理及び酸化皮膜形成処理をした陽極箔1と陰極箔2とをセパレータ3を介して巻回したコンデンサ素子6を形成し、このコンデンサ素子6を電解コンデンサ駆動用電解液に含浸させた後、有底筒状の外装ケース8に収納する。外装ケース8の開口部には、封口体9を装着し、絞り加工により密閉した構造としている。外装ケース8にコンデンサ素子6を固定する素子固定剤17を有していてもよい。封口体9の外端面には陽極端子13及び陰極端子14が構成され、これらの端子13、14の下端部は、陽極内部端子15及び陰極内部端子16として、コンデンサ素子6から引き出された陽極タブ端子11及び陰極タブ端子12が電気的に接続されている。ここで、陽極タブ端子11については、化成処理が施されたものが使用されるが、陰極タブ端子12については、化成処理が施されていないものが使用される。いずれのタブ端子11、12についても、表面加工の施されていないアルミニウム箔が用いられている。
【0097】
電子部品の小型化、薄型化、高密度面実装技術の進歩に伴い、アルミニウム電解コンデンサにおいてもチップ形であることが求められており、チップ形アルミニウム電解コンデンサは、図4に示すような構造からなる。粗面化処理及び酸化皮膜形成処理をした陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して巻回したコンデンサ素子6を形成し、このコンデンサ素子6を電解コンデンサ駆動用電解液に含浸させた後、有底筒状の外装ケース8に収納するとともに、開口部を、弾性封口体7を用いて封口し、アルミニウム電解コンデンサを構成する。このアルミニウム電解コンデンサのリード端子18を引き出した端面に当接するように配設し、かつ該リード端子18が貫通する貫通孔を備えた絶縁板19を装着した後リード端子を折り曲げて、基板装着上の安定性を持たせるよう構成されている。
【0098】
上記イオン性化合物を含む本発明の電解コンデンサ駆動用電解液を用いたアルミニウム電解コンデンサの構造としては、例えば、エッチング処理及び酸化皮膜形成処理をした陽極箔と陰極箔とをセパレータを介して積層した構造よりなるアルミニウム電解コンデンサが挙げられる。
【0099】
上記陽極箔としては、純度99%以上のアルミニウム箔を酸性溶液中で化学的又は電気化学的にエッチングして拡面処理した後、ホウ酸アンモニウム、リン酸アンモニウム又はアジピン酸アンモニウム等の水溶液中で化成処理を行い、その表面に陽極酸化皮膜層を形成したものを用いることができる。
【0100】
上記陰極箔としては、化学的又は電気化学的にエッチングして拡面処理したアルミニウム箔、又は該アルミニウム箔の一部又は全部に、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化タンタル及び窒化ニオブから選ばれる1種以上の金属窒化物、及び/又は、チタン、ジルコニウム、タンタル及びニオブから選ばれる1種以上の金属より構成される皮膜を形成したアルミニウム箔を用いることができる。
【0101】
上記皮膜の形成方法としては、蒸着法、メッキ法、塗布法等を挙げることができ、皮膜を形成する部分としては、陰極箔の全面に被覆してもよいし、必要に応じて陰極箔の一部、例えば陰極箔の一面のみに金属窒化物又は金属を被覆してもよい。
【0102】
上記リード線は、陽極箔及び陰極箔に接する接続部、丸棒部及び外部接続部より構成されるものであることが好適である。このリード線は、接続部においてそれぞれステッチや超音波溶接等の手段により陽極箔及び陰極箔に電気的に接続されている。また、リード線における接続部及び丸棒部は、高純度のアルミニウムよりなるものが好適であり、外部接続部は、はんだメッキを施した銅メッキ鉄鋼線よりなるものが好適である。また、陰極箔との接続部及び丸棒部の表面の一部又は全部に、ホウ酸アンモニウム水溶液、リン酸アンモニウム水溶液又はアジピン酸アンモニウム水溶液等による陽極酸化処理によって形成した酸化アルミニウム層を形成したり、Al、SiO、ZrO等より構成されるセラミックスコーティング層等の絶縁層を形成したりすることができる。
【0103】
上記外装ケースは、アルミニウム又はアルミニウム合金より構成されるものであることが好適である。
【0104】
上記封口体は、リード線をそれぞれ導出する貫通孔を備え、例えば、ブチルゴム等の弾性ゴムより構成されるものであることが好適であり、ブチルゴムとしては、例えば、イソブチレンとイソプレンとの共重合体からなる生ゴムに補強剤(カーボンブラック等)、増量剤(クレイ、タルク、炭酸カルシウム等)、加工助剤(ステアリン酸、酸化亜鉛等)、加硫剤等を添加して混練した後、圧延、成型したゴム弾性体を用いることができる。加硫剤としては、アルキルフェノールホルマリン樹脂;過酸化物(ジクミルペルオキシド、1,1−ジ−(t−ブチルペルオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン等);キノイド(p−キノンジオキシム、p,p′−ジベンゾイルキノンジオキシム等);イオウ等を用いることができる。なお、封口体の表面をテフロン(登録商標)等の樹脂でコーティングしたり、ベークライト等の板を貼り付けたりすると、溶媒蒸気の透過性が低減するので更に好ましい。
【0105】
上記セパレータとしては、通常マニラ紙やクラフト紙等の紙が用いられるが、ガラス繊維、ポリプロピレン、ポリエチレン等の不織布を用いることもできる。
【0106】
上記電解コンデンサとしてはまた、ハーメチックシール構造や樹脂ケースに密閉した構造(例えば、特開平8−148384号公報に記載)のものであってもよい。ゴム封止構造のアルミニウム電解コンデンサの場合、ある程度ゴムを通して気体が透過するため、高温環境下においてはコンデンサ内部から大気中へ溶媒が揮発し、また、高温高湿環境下においては大気中からコンデンサ内部へ水分が混入するおそれがあり、これらの過酷な環境の下では、コンデンサは静電容量の減少等の好ましくない特性変化を起こすおそれがある。一方、ハーメチックシール構造や樹脂ケースに密閉した構造のコンデンサにおいては、気体の透過量が極めて小さいため、このような過酷な環境下においても安定した特性を示すこととなる。
【実施例】
【0107】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「質量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0108】
[製造例1]:トリエチルアンモニウムトリシアノメチドの製造
温度計、窒素ガス導入管、還流冷却管、攪拌装置、及び、滴下漏斗を備えたフラスコに硝酸銀41.2g(0.24mol)、イオン交換水250mlを加え攪拌し、硝酸銀を完全に溶解させた。次いで滴下漏斗にカリウムトリシアノメチド(以下、KTCMと記す)26.1g(0.20mol)の30%水溶液を入れ、硝酸銀溶液に対し室温、1時間で滴下した。得られた白色固体を濾別し、イオン交換水300mlで洗浄した。この洗浄工程を5回繰り返した。
次いで白色固体にイオン交換水300mlを加え、セパラブルフラスコに入れ攪拌することでスラリー状にし、ここに滴下漏斗に入れたトリエチルアンモニウムブロミド27.3g(0.15mol)50%水溶液を室温で1時間かけて滴下した。更に室温で1時間攪拌した後、得られた反応液をメンブレンフィルター(親水タイプ、孔径0.2μm)でろ過を行った。得られた水溶液をエバポレーターで濃縮することで、トリエチルアンモニウムトリシアノメチド(以下、TEATCMと記すことがある)27.0g(0.14mol)を得た。収率は94%であった。
【0109】
[実施例1〜25、従来例1、2、比較例1]:電解コンデンサ駆動用電解液
表1〜3に示す配合で電解コンデンサ駆動用電解液を調製し、30℃における比抵抗を測定した。比抵抗の測定条件は、以下のとおりである。結果を表1〜3に示す。
【0110】
(比抵抗)
装置:HIOKI 3522 LCR HiTESTER
測定周波数:1kHz
測定温度:30℃
【0111】
【表1】

【0112】
【表2】

【0113】
【表3】

【0114】
表1〜3によって明らかなように、本発明の電解コンデンサ駆動用電解液は、従来例と比べて、低比抵抗化がなされていることがわかる。
【0115】
表1〜3において、ニトロ化合物を添加剤として含有した場合である実施例16〜20は、急激な比抵抗上昇はみられず、従来例と較べて低比抵抗化がなされていることがわかる。
【0116】
表1〜3において、リン化合物を添加剤として含有した場合である実施例21〜23は、急激な比抵抗上昇はみられず、従来例と較べて低比抵抗化がなされていることがわかる。
【0117】
表1〜3において、溶媒にエチレングリコールを添加した実施例24は、従来例と較べて低比抵抗化がなされていることがわかる。
【0118】
表1〜3において、溶媒にスルホランを添加した実施例25は、従来例と較べて低比抵抗化がなされていることがわかる
【0119】
[実施例26〜40、従来例3、比較例2]:アルミニウム電解コンデンサ
次に、実施例26〜40、従来例3、比較例2に示すアルミニウム電解コンデンサを、それぞれ、実施例1〜15、従来例1、比較例1で示す電解コンデンサ駆動用電解液を用いて、下記に示すような手順で製造した。
【0120】
エッチング処理及び酸化皮膜形成処理をした陽極箔と陰極箔とをマニラ麻系のセパレータを介して巻回したコンデンサ素子を形成し、このコンデンサ素子を実施例1〜15および従来例1、比較例1で得られた電解コンデンサ駆動用電解液に含浸した後、アルミニウムよりなる有底筒状の外装ケースに収納した。化成皮膜を形成した陽極引き出しリードと陰極引き出しリードとをブチルゴムからなる弾性封口体に形成した貫通孔に押入して引き出し、外装ケースの開口部には、ブチルゴムからなる弾性封口体を装着し、絞り加工により密閉して、アルミニウム電解コンデンサを作製した。このアルミニウム電解コンデンサのリード端子を引き出した端面に当接するように配設し、かつ該リード端子が貫通する貫通孔を備えた絶縁板を装着して、チップ型アルミニウム電解コンデンサを各10個作製した。なお、コンデンサ素子の仕様は、6.3V−100μF(φ6.3×5.4mmL)であった。
【0121】
得られたチップ型アルミニウム電解コンデンサについて、260℃ピーク、230℃以上60秒条件にて、はんだリフロー炉に2回通した後の、製品膨張値を測定した。結果を表4に示す。
【0122】
【表4】

【0123】
表4の結果から明らかなように、本発明の電解コンデンサ(実施例26〜40)は、従来例3、比較例2に比べて、はんだリフロー後における製品膨張が十分に抑制できていることが判る。はんだリフロー後における製品膨張値は、0.3mmあたりが実用上の限界である。製品の膨張は、製品の内圧上昇による外装ケースと弾性封口体の膨らみであり、弾性封口体が膨らむと絶縁板の反りが生じる。製品膨張値が0.3mmを超えると、絶縁板19に生じた反りによって、リード端子が基板から浮き上がり、コンデンサが剥離する問題がある。
【0124】
本発明の電解コンデンサは、特に、低インピーダンス向けアルミニウム電解コンデンサとして、はんだリフロー炉などでの高温雰囲気中において外観膨張が極めて発生し難いため、工業的ならびに実用的な価値が高い。また、本発明を実施した図2、図3の形状の電解コンデンサは、フローはんだにおける耐熱性が向上することはいうまでもない。
【0125】
なお、本発明は、実施例に限定されるものではなく、本発明の電解コンデンサ駆動用電解液を用いて、いずれの材料、構造からなる電解コンデンサにも適用することができ、また、いずれの構造の電解コンデンサにおいても実施例と同等の効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明の電解コンデンサ駆動用電解液は、一次電池、二次電池や燃料電池等の充電/放電機構を有する電池、電解コンデンサ、電気二重層キャパシタ、太陽電池、エレクトロクロミック表示素子等の電気化学デバイスに好適に用いられ得る。これらの中でも、電解コンデンサに特に好適に用いられ得る。
【符号の説明】
【0127】
1 陽極箔
2 陰極箔
3 セパレータ
4 陽極引き出しリード
5 陰極引き出しリード
6 コンデンサ素子
7 弾性封口体
8 外装ケース
9 封口体
10 加締め(又は溶接)
11 陽極タブ端子
12 陰極タブ端子
13 陽極端子
14 陰極端子
15 陽極内部端子
16 陰極内部端子
17 素子固定剤
18 リード端子
19 絶縁板


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリシアノメチドアニオンと、一般式(1)で表されるカチオンとを有する、イオン性化合物と、
【化1】

(一般式(1)中、Lは、C、Si、N、P、S及びOからなる群より選ばれる1種類の元素を表す。Rは、同一又は異なる、1価の元素、官能基又は有機基であり、互いに結合した元素となっていてもよい。sは、2、3又は4の整数であり、Lの元素の価数によって決まる値である。)
一般式(2)で表される窒素原子含有有機化合物を含む、
電解コンデンサ駆動用電解液。
【化2】

(一般式(2)中、R、R、R及びRは、同一又は異なる、水素元素、炭素数が1〜8の炭化水素基、アセチル基、アルコキシ基、又はカルボニトリル基を表す。R、R、R及びRのうちの少なくとも2つが炭化水素基である場合は、それらの炭化水素基は、直接結合した構造となっていてもよい。)
【請求項2】
前記一般式(2)で表される窒素原子含有有機化合物の含有割合が、前記イオン性化合物に対して、0.1〜200質量%である、請求項1に記載の電解コンデンサ駆動用電解液。
【請求項3】
一般式(3)で表される窒素原子含有有機化合物をさらに含む、請求項1または2に記載の電解コンデンサ駆動用電解液。
【化3】

(一般式(3)中、R、R及びRは、同一又は異なる、水素元素又は炭素数が1〜8の炭化水素基を表す。R、R及びRのうちの少なくとも2つが炭化水素基である場合は、それらの炭化水素基は、直接結合していてもよい。)
【請求項4】
前記一般式(2)で表される窒素原子含有有機化合物および前記一般式(3)で表される窒素原子含有有機化合物の合計の含有割合が、前記イオン性化合物に対して、0.1〜200質量%である、請求項3に記載の電解コンデンサ駆動用電解液。
【請求項5】
前記一般式(1)におけるLがNである、請求項1から4までのいずれかに記載の電解コンデンサ駆動用電解液。
【請求項6】
前記カチオンが、一般式(4);
【化4】

(一般式(4)中、R、R及びR10は、同一又は異なる、水素元素又は炭素数が1〜8の炭化水素基を表す。R、R及びR10のうちの少なくとも2つが炭化水素基である場合は、それらの炭化水素基は、直接結合するか、又は、O、S及びNの中から選ばれる少なくとも1種類の元素を介して結合していてもよい。)で表される、請求項1から5までのいずれかに記載の電解コンデンサ駆動用電解液。
【請求項7】
電極引出リードが接続された陽極箔と陰極箔とがセパレータを介して巻回されたコンデンサ素子が、請求項1からまでのいずれかに記載の電解コンデンサ駆動用電解液に含浸された状態で有底筒状の外装ケース内に収容され、該外装ケースの開口部側が弾性封口体によって封止されてなる、電解コンデンサ。

【図1−a】
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【図1−b】
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【図1−c】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−253397(P2012−253397A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−216503(P2012−216503)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【分割の表示】特願2008−191725(P2008−191725)の分割
【原出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【出願人】(000004606)ニチコン株式会社 (656)