説明

電解法のための陰極

特にクロロアルカリの電気分解において水素を発生させるのに適した、電解法のための陰極であって、この陰極は、金属基板と、この基板に設けられた二つの層で構成された触媒被覆からなり、それら二つの層はパラジウム、希土類元素(例えばプラセオジム)、および白金とルテニウムのいずれかから選択される貴金属成分を含む。希土類元素の重量によるパーセント量は、内側の層におけるよりも外側の層における方が低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解法において用いるための電極およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は電解法のための陰極(カソード)、特に工業的な電解法において水素を発生させるのに適した陰極に関する。以下において、陰極での水素の発生を伴う工業的な電気分解の典型的なプロセスとしてクロロ-アルカリ電気分解について言及がなされるが、しかし本発明は特定の適用に限定されるものではない。電気分解処理の工業分野において、競争力は幾つかの要因と関連していて、その主なものはエネルギー消費の低減であり、これは動作電圧と直接関連している。このことは、動作電圧の様々な構成要素、例えば、陽極と陰極の過電圧のほかに温度、電解液の濃度および電極間の間隔のようなプロセスパラメーターに依存する抵抗降下の低減を対象とする多くの努力を正当化する。このような理由から、触媒活性が低くて化学的に耐性の高い幾つかの金属材料(例えば炭素鋼)を様々な電解法における水素発生用陰極として用いることができるが、水素陰極の過電圧を低下させる目的で、触媒被覆によって活性化された電極の使用がむしろ普及している。従って、例えば酸化ルテニウムまたは白金系の触媒被覆を設けたニッケル、銅または鋼からなる金属基板を用いることによって、良好な結果を得ることができる。実際には、活性化された陰極の使用によって得られるエネルギーの節約が、貴金属系の触媒を使用することから生じるコストをしばしば相殺するだろう。いずれにせよ、活性化された陰極の使用による経済的利益は基本的にそれらの動作寿命に依存し、クロロ-アルカリ電解槽における活性化陰極構造物を設置するコストを埋め合わせるためには、例えば、2〜3年以上の期間にわたってそれらが機能することが保証される必要がある。それにもかかわらず、大多数の貴金属系の触媒被覆は、工業プラントの故障の場合に典型的に時折起こりうる電流の逆転の後で大きな損傷を受け、それが短い時間であっても、陽極電流の通過により電位の変化が非常に高い値になり、なぜか白金またはルテニウムの酸化物の溶解をひき起こす。この問題の部分的な解決策が国際特許出願公開WO2008/043766号(その全体をここに参考文献として取り込む)において提案され、これはニッケルの基板上に二つの別個の領域からなる被覆を設けることによって得られた陰極を開示していて、そのうちの一つの領域はパラジウム(場合により銀)を含んでいて、特に電流の逆転現象に対する保護機能を有し、そしてもう一つは白金および/またはルテニウムを含む活性化領域であり、好ましくは少量のロジウムと混合されていて、陰極での水素の発生のための触媒の機能を有する。電流の逆転現象に対する許容度の増大はおそらくパラジウムの役割によるものであり、パラジウムは通常の陰極操作を行う間に水素化物を形成することができて、逆転が起こる間に水素化物はイオン化され、それにより電極電位が危険なレベルへと変化するのが防がれるのであろう。WO2008/043766号に開示された発明は、電解法において活性化された陰極の耐用年数を延ばすのに有用であることを示しているが、適当な性能はかなりの量のロジウムを含む配合によってのみ得られ、ロジウムの非常に高い価格とこの金属の限られた入手可能性を考慮すると、このことは、この種の被覆の使用に対する厳しい制限になると思われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際特許出願公開WO 2008/043766号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、工業的な電解法のための新規な陰極組成物、特に陰極での水素の発生を伴う電解法のための陰極組成物であって、先行技術の配合物と比較して、より高い触媒活性と、通常の操作条件における偶発的な電流の逆転に対して同等であるかまたはより高い持続性と耐久性によって特徴づけられる組成物が求められていることが明らかである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の様々な態様が、添付する特許請求の範囲に示されている。
【発明を実施するための形態】
【0006】
一つの実施態様において、電解法のための陰極は、例えばニッケル、銅または炭素鋼からなる金属基板と、この基板に設けられた少なくとも二つの層を含む触媒被覆からなり、それら両者の層はパラジウム、希土類元素、および白金とルテニウムのいずれかから選択される少なくとも一つの成分を含み、このとき希土類元素のパーセント量は内側の層における方が高く(指標として、45重量%を超える)、そして外側の層における方が低い(指標として、10〜45重量%)。
【0007】
一つの実施態様において、希土類元素のパーセント量は内側の触媒層において45〜55重量%であり、そして外側の触媒層において30〜40重量%である。本明細書と本願の特許請求の範囲において、様々な元素の重量によるパーセント量は、特に明示しない限り、金属のことを指している。示された元素は、それ自体として、あるいは酸化物または他の化合物の形で存在し、例えば、電極が製造された時点では白金とルテニウムは金属または酸化物の形で存在し、希土類元素は主として酸化物として、パラジウムは主として酸化物として存在し、そして水素を発生する動作条件においては主として金属として存在するだろう。発明者らは、驚くべきことに、特定の組成勾配が存在するとき、特に希土類元素の含有量が最外層において低いとき、内側の触媒層での希土類元素の量が、貴金属成分と比較して、その保護作用をより有効に発揮することを認めた。本発明が特定の理論に拘束されることを望むものではないが、外側の層において希土類元素の量が少ないことにより、白金またはルテニウム触媒のための位置が、被覆の全体的な構造を著しく変化させることなく、電解液に接近しやすくなるものと考えられる。一つの実施態様において、希土類元素にはプラセオジムが含まれる。しかし、発明者らは、同じ族の他の元素(例えばセリウムとランタン)が、同様の結果を伴って類似の作用を示すことができることを見いだした。一つの実施態様において、触媒被覆にはロジウムが含まれない。この場合、最外層において希土類元素の量が少ない触媒被覆の配合は、水素を発生する陰極の過電圧が極めて低いことによって特徴づけられ、従って、触媒としてのロジウムの使用は不必要となる。このことは、ロジウムの価格が一貫して白金およびルテニウムの価格よりも高いままである傾向にあることを考慮すると、電極の製造コストをかなりの程度まで低減させる利点があるだろう。一つの実施態様において、パラジウム対貴金属成分の重量比は、金属について0.5〜2であり、このことは、十分な触媒活性を与えるとともに、触媒を偶発的な電流の逆転現象から適切に保護するという利点があるだろう。一つの実施態様において、このような配合物におけるパラジウムの含有量は銀によって部分的に置き換えることができて、例えばAg/Pdモル比を0.15〜0.25とする。このことは、操作を行う間にパラジウムが水素を吸収する能力が改善され、また偶発的な電流の逆転が生じている間にその吸収された水素が酸化されるという利点があるだろう。
【0008】
一つの実施態様において、上記の電極は先駆物質の溶液の酸化熱分解、すなわち連続して供給される少なくとも二つの溶液の熱分解によって得られる。その両者の溶液は、パラジウムの、プラセオジムのような希土類元素の、および白金またはルテニウムのような少なくとも一つの貴金属の塩またはその他の可溶性の化合物を含み、この場合、これらの溶液は、最も外側の触媒層を形成するために最後に供給される溶液における希土類元素のパーセント量が最初に供給される溶液における希土類元素のパーセント量よりも低い、という条件の下にある。一つの実施態様において、先駆物質の溶液に含まれる塩は硝酸塩であり、そしてそれらの溶液の熱分解は、空気の存在下で430〜500℃の温度において行われる。
【0009】
発明者らによって得られた最も重要な結果のうちの幾つかのものが以下の実施例において提示されるが、これらは本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【実施例】
【0010】
実施例1
100mm×100mm×0.89mmの寸法のニッケル200のメッシュがコランダム(鋼玉石)を用いてブラスト処理(吹付け処理)に供され、次いで20%の沸騰したHCl中で5分間エッチングされた。次いで、このメッシュに、硝酸で酸性化されたPt(II)ジアミノジニトレート(30g/l)、Pr(III) ニトレート(50g/l)およびPd(II) ニトレート(20g/l)の水溶液を5回の塗りで塗布し、1回の塗布ごとに450℃における15分間の熱処理を行い、それにより1.90g/m のPt、1.24g/m のPdおよび3.17g/m のPrからなる堆積を得た(内側の触媒層の形成)。このようにして得られた触媒層の上に、硝酸で酸性化されたPt(II)ジアミノジニトレート(30g/l)、Pr(III) ニトレート(27g/l)およびPd(II) ニトレート(20g/l)を含む第二の溶液を4回の塗りで塗布し、1回の塗布ごとに450℃における15分間の熱処理を行い、それにより1.77g/m のPt、1.18g/m のPdおよび1.59g/m のPrからなる堆積を得た(外側の触媒層の形成)。
【0011】
試料は動作試験に供され、33%NaOH中で90℃の温度において水素を発生する中で、3kA/m において−924mV/NHEの抵抗補正初期平均陰極電位を示し、優れた触媒活性を示した。
【0012】
続いて、同じ試料が−1から+0.5V/NHEまでの範囲で10mV/sの走査速度においてサイクリックボルタンメトリーに供された。25サイクル後の平均の陰極電位の変動は15mVで、電流の逆転に対して優れた耐久性を示した。
【0013】
実施例2
100mm×100mm×0.89mmの寸法のニッケル200のメッシュがコランダム(鋼玉石)を用いてブラスト処理(吹付け処理)に供され、次いで20%の沸騰したHCl中で5分間エッチングされた。次いで、このメッシュに、硝酸で酸性化されたPt(II)ジアミノジニトレート(30g/l)、Pr(III) ニトレート(50g/l)およびPd(II) ニトレート(20g/l)の水溶液を3回の塗りで塗布し、1回の塗布ごとに460℃における15分間の熱処理を行い、それにより1.14g/m のPt、0.76g/m のPdおよび1.90g/m のPrからなる堆積を得た(内側の触媒層の形成)。このようにして得られた触媒層の上に、硝酸で酸性化されたPt(II)ジアミノジニトレート(23.4g/l)、Pr(III) ニトレート(27g/l)およびPd(II) ニトレート(20g/l)を含む第二の溶液を6回の塗りで塗布し、1回の塗布ごとに460℃における15分間の熱処理を行い、それにより1.74g/m のPt、1.49g/m のPdおよび2.01g/m のPrからなる堆積を得た(外側の触媒層の形成)。
【0014】
試料は動作試験に供され、33%NaOH中で90℃の温度において水素を発生する中で、3kA/m において−926mV/NHEの抵抗補正初期平均陰極電位を示し、優れた触媒活性を示した。
【0015】
続いて、同じ試料が−1から+0.5V/NHEまでの範囲で10mV/sの走査速度においてサイクリックボルタンメトリーに供された。25サイクル後の平均の陰極電位の変動は28mVで、電流の逆転に対して依然として許容できる耐久性を示した。しかしながら、実施例1の電極よりもわずかに低く、このことは、内側の触媒層における希土類元素のパーセント量(65%)が、後に最適であると確認される値(45〜55%)よりもわずかに高いという事実によるものである。
【0016】
実施例3
100mm×100mm×0.89mmの寸法のニッケル200のメッシュがコランダム(鋼玉石)を用いてブラスト処理(吹付け処理)に供され、次いで20%の沸騰したHCl中で5分間エッチングされた。次いで、このメッシュに、硝酸で酸性化されたRu(III)ニトロシルニトレート(30g/l)、Pr(III) ニトレート(50g/l)、Pd(II) ニトレート(16g/l)およびAgNo(4g/l)の水溶液を5回の塗りで塗布し、1回の塗布ごとに430℃における15分間の熱処理を行い、それにより1.90g/m のRu、1.01g/m のPd、0.25g/m のAgおよび3.17g/m のPrからなる堆積を得た(内側の触媒層の形成)。このようにして得られた触媒層の上に、硝酸で酸性化されたRu(III)ニトロシルニトレート(30g/l)、Pr(III) ニトレート(27g/l)、Pd(II) ニトレート(16g/l)およびAgNo(4g/l)を含む第二の溶液を6回の塗りで塗布し、1回の塗布ごとに430℃における15分間の熱処理を行い、それにより2.28g/m のRu、1.22g/m のPd、0.30g/m のAgおよび2.05g/m のPrからなる堆積を得た(外側の触媒層の形成)。
【0017】
試料は動作試験に供され、33%NaOH中で90℃の温度において水素を発生する中で、3kA/m において−925mV/NHEの抵抗補正初期平均陰極電位を示し、優れた触媒活性を示した。
【0018】
続いて、同じ試料が−1から+0.5V/NHEまでの範囲で10mV/sの走査速度においてサイクリックボルタンメトリーに供された。25サイクル後の平均の陰極電位の変動は12mVで、電流の逆転に対して優れた耐久性を示した。
【0019】
実施例4
100mm×100mm×0.89mmの寸法のニッケル200のメッシュがコランダム(鋼玉石)を用いてブラスト処理(吹付け処理)に供され、次いで20%の沸騰したHCl中で5分間エッチングされた。次いで、このメッシュに、硝酸で酸性化されたPt(II)ジアミノジニトレート(30g/l)、La(III) ニトレート(50g/l)およびPd(II) ニトレート(20g/l)の水溶液を5回の塗りで塗布し、1回の塗布ごとに450℃における15分間の熱処理を行い、それにより1.90g/m のPt、1.24g/m のPdおよび3.17g/m のLaからなる堆積を得た(内側の触媒層の形成)。このようにして得られた触媒層の上に、硝酸で酸性化されたPt(II)ジアミノジニトレート(30g/l)、La(III) ニトレート(32g/l)およびPd(II) ニトレート(20g/l)を含む第二の溶液を3回の塗りで塗布し、1回の塗布ごとに450℃における15分間の熱処理を行い、それにより1.14g/m のPt、0.76g/m のPdおよび1.22g/m のLaからなる堆積を得た(外側の触媒層の形成)。
【0020】
試料は動作試験に供され、33%NaOH中で90℃の温度において水素を発生する中で、3kA/m において−928mV/NHEの抵抗補正初期平均陰極電位を示し、優れた触媒活性を示した。
【0021】
続いて、同じ試料が−1から+0.5V/NHEまでの範囲で10mV/sの走査速度においてサイクリックボルタンメトリーに供された。25サイクル後の平均の陰極電位の変動は22mVで、電流の逆転に対して優れた耐久性を示した。
【0022】
比較例1
100mm×100mm×0.89mmの寸法のニッケル200のメッシュがコランダム(鋼玉石)を用いてブラスト処理(吹付け処理)に供され、次いで20%の沸騰したHCl中で5分間エッチングされた。次いで、このメッシュに、硝酸で酸性化されたPt(II)ジアミノジニトレート(30g/l)、Pr(III) ニトレート(50g/l)、Rh(III)クロリド(4g/l)およびPd(II) ニトレート(20g/l)の水溶液を7回の塗りで塗布し、1回の塗布ごとに450℃における15分間の熱処理を行い、それにより2.66g/m のPt、1.77g/m のPd、0.44g/m のRhおよび4.43g/m のPrからなる堆積を得た(WO2008/043766号に従う触媒層の形成)。
【0023】
試料は動作試験に供され、33%NaOH中で90℃の温度において水素を発生する中で、3kA/m において−930mV/NHEの抵抗補正初期平均陰極電位を示し、良好な触媒活性を示した。しかしながら、この値は、ロジウムが存在するにもかかわらず、前の実施例の値よりも低い。
【0024】
続いて、同じ試料が−1から+0.5V/NHEまでの範囲で10mV/sの走査速度においてサイクリックボルタンメトリーに供された。25サイクル後の平均の陰極電位の変動は13mVで、電流の逆転に対して優れた耐久性を示した。
【0025】
比較例2
100mm×100mm×0.89mmの寸法のニッケル200のメッシュがコランダム(鋼玉石)を用いてブラスト処理(吹付け処理)に供され、次いで20%の沸騰したHCl中で5分間エッチングされた。次いで、このメッシュに、硝酸で酸性化されたPt(II)ジアミノジニトレート(30g/l)、Pr(III) ニトレート(50g/l)およびPd(II) ニトレート(20g/l)の水溶液を7回の塗りで塗布し、1回の塗布ごとに460℃における15分間の熱処理を行い、それにより2.80g/m のPt、1.84g/m のPdおよび4.70g/m のPrからなる堆積を得た(触媒層の形成)。
【0026】
試料は動作試験に供され、33%NaOH中で90℃の温度において水素を発生する中で、3kA/m において−936mV/NHEの抵抗補正初期平均陰極電位を示し、ある程度良好な触媒活性を示したが、比較例1の値よりも低く、これはおそらく触媒配合物の中にロジウムが存在しないためである。
【0027】
続いて、同じ試料が−1から+0.5V/NHEまでの範囲で10mV/sの走査速度においてサイクリックボルタンメトリーに供された。25サイクル後の平均の陰極電位の変動は80mVで、電流の逆転に対する耐久性は水準以下であった。
【0028】
比較例3
100mm×100mm×0.89mmの寸法のニッケル200のメッシュがコランダム(鋼玉石)を用いてブラスト処理(吹付け処理)に供され、次いで20%の沸騰したHCl中で5分間エッチングされた。次いで、このメッシュに、硝酸で酸性化されたPt(II)ジアミノジニトレート(30g/l)、Pr(III) ニトレート(28g/l)およびPd(II) ニトレート(20g/l)の水溶液を6回の塗りで塗布し、1回の塗布ごとに480℃における15分間の熱処理を行い、それにより2.36g/m のPt、1.57g/m のPdおよび2.20g/m のPrからなる堆積を得た(触媒層の形成)。
【0029】
試料は動作試験に供され、33%NaOH中で90℃の温度において水素を発生する中で、3kA/m において−937mV/NHEの抵抗補正初期平均陰極電位を示し、比較例2におけると同様に、ある程度良好な触媒活性を示した。
【0030】
続いて、同じ試料が−1から+0.5V/NHEまでの範囲で10mV/sの走査速度においてサイクリックボルタンメトリーに供された。25サイクル後の平均の陰極電位の変動は34mVで、電流の逆転に対する耐久性はなお不十分であるが、比較例2における値よりも良好であった。これはおそらく活性化処理における貴金属対希土類元素の比率が異なるためである。
【0031】
以上の説明は本発明を限定することを意図するものではなく、本発明の範囲から逸脱しない様々な実施態様について提示されたものである。本発明の範囲は、添付する特許請求の範囲によって一義的に定められる。
【0032】
本願の明細書と特許請求の範囲の全体を通して用いられている「含む(comprise, comprising, comprises)」という用語は、他の元素または添加剤の存在を排除することを意図するものではない。
【0033】
文献についての説明、作用、材料、装置、物品、その他同種類のものは、本発明の背景を示す目的だけのために本明細書に記載されている。これらの事柄のいずれか、あるいは全てが、本願のそれぞれの請求の範囲の優先日よりも前に先行技術の基礎の一部を成していたということ、あるいは本発明に関連する分野における周知の一般的知識であったということは、示唆あるいは表示されてはいない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電解法のための陰極であって、金属基板と、この基板に設けられた少なくとも一つの内側の触媒層と一つの外側の触媒層とを含む多層の触媒被覆からなり、内側の触媒層と外側の触媒層の両者はパラジウム、少なくとも一つの希土類元素、および白金とルテニウムのいずれかから選択される少なくとも一つの貴金属成分を含み、このとき前記外側の触媒層は10〜45重量%の希土類元素の含有量を有し、そして前記内側の触媒層は前記外側の触媒層の前記含有量よりも高い希土類元素の含有量を有する、前記陰極。
【請求項2】
前記外側の触媒層は30〜40重量%の希土類元素の含有量を有し、そして前記内側の触媒層は45〜55重量%の希土類元素の含有量を有する、請求項1に記載の陰極。
【請求項3】
前記少なくとも一つの希土類元素はプラセオジムである、請求項1または2に記載の陰極。
【請求項4】
前記触媒被覆はロジウムを含んでいない、請求項1から3のいずれかに記載の陰極。
【請求項5】
前記触媒被覆は銀を含んでいる、請求項1から4のいずれかに記載の陰極。
【請求項6】
前記貴金属成分に対するパラジウムと銀の合計の重量比は、これらの元素について0.5〜2である、請求項1から5のいずれかに記載の陰極。
【請求項7】
Pdの少なくとも一つの塩、Prの少なくとも一つの塩、およびPtとRuのいずれかから選択される貴金属の少なくとも一つの塩を含む第一の先駆物質の溶液の多重被覆熱分解と、それに続く、Pdの少なくとも一つの塩、Prの少なくとも一つの塩、およびPtとRuのいずれかから選択される貴金属の少なくとも一つの塩を含む第二の先駆物質の溶液の多重被覆熱分解を含み、このとき前記第二の先駆物質の溶液は、金属全体の合計について、前記第一の先駆物質の溶液におけるPrのパーセント含有量よりも低いPrのパーセント含有量を有する、請求項1から4のいずれかに記載の陰極の製造方法。
【請求項8】
前記のPd、Pr、PtおよびRuの塩は硝酸塩であり、そして前記熱分解は430〜500℃の温度において行われる、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
請求項1から6のいずれかに記載の少なくとも一つの陰極を含む、アルカリ塩化物のブラインの電気分解のための電解槽。

【公表番号】特表2013−507520(P2013−507520A)
【公表日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−532586(P2012−532586)
【出願日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際出願番号】PCT/EP2010/064964
【国際公開番号】WO2011/042484
【国際公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(507128654)インドゥストリエ・デ・ノラ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ (29)
【Fターム(参考)】