電解研磨装置
【課題】 簡易な機構でありつつ、均一な研磨を行える電解研磨装置を提供する。
【解決手段】 電解研磨装置39は、対になったアノード24を複数有し、それら対になったアノード24同士を、可逆的に接近または乖離させる可動部19を含むことで、電解研磨中に、ステント49に対して接触していたアノード24を、例えばアノード24Aおよびアノード24Bからアノード24Cおよびアノード24Dに替える。
【解決手段】 電解研磨装置39は、対になったアノード24を複数有し、それら対になったアノード24同士を、可逆的に接近または乖離させる可動部19を含むことで、電解研磨中に、ステント49に対して接触していたアノード24を、例えばアノード24Aおよびアノード24Bからアノード24Cおよびアノード24Dに替える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電解研磨は、工業用金属チューブまたは医療用ステント等の種々金属品の表面を鏡面に仕上げる加工方法で、一般的に、産業界において広く普及している。詳説すると、放電加工、レーザー切断、または切削加工等を施された金属品に対し、その金属品の表面または切断面を平滑化するために、電解研磨は行われる。そして、電解研磨が行われると、金属表面の凹凸が無くなり、さらには、その表面が鏡面に仕上がるので、微小なクラックもなくなる。その結果、その金属品は、外部環境に起因する腐食に対して耐性を増したり、繰り返して荷重を受けても疲労しにくくなったりする。
【0003】
電解研磨では、電解液中にて、アノードが金属品のような被研磨物に接する一方、カソードが被研磨物から乖離する。このような配置状態において、アノードとカソードとの間に電圧が印加されると、電解液を流れる電流によって被研磨物の元素が溶解して、カソードに付着する。これにより、被研磨物は、電解研磨され、表面に光沢を生じる。
【0004】
しかしながら、電解研磨では、被研磨物とアノードとが接触した状態で、電解液に浸けられるため、その接触箇所に、電解液が周りこまず、研磨されないことがある(すなわち、被研磨物に対して、不均一な研磨がなされる)。そのため、被研磨物全体に対して均一な電解研磨を施そうとする場合、被研磨物に対するアノードの接触位置を変更したほうが好ましい。
【0005】
この変更の仕方の一例として、手作業で、被研磨物とアノードとの相対位置を変位させることがある。しかしながら、作業者が、強酸または強アルカリ等の研磨液に触れることになるため、危険な作業となる。
【0006】
そこで、例えば、特許文献1に記載の電解研磨装置のように、手作業によらず、被研磨物とアノードとの相対位置を変位させる電解研磨装置が開発されている。この電化研磨装置は、ステントを電解研磨の対象にしており、アノードとなるワイヤをステントの内腔に接触させる一方、カソードをステントから乖離させて配置させる。そして、電解液内に浸されるローラがステントの外壁に接触することで、そのステントを回転させる。これにより、ステントとアノードとの接触箇所が変化し、研磨不足が低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2007−533845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の電解研磨装置は、作業者に安全を提供するものの、複雑な機構を有さなくてはならない。その上、電解液の液流が不均一になりやすく、研磨不足(研磨ムラ)が発生することもある。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものである。そして、その目的は、簡易な機構でありつつ、均一な研磨を行える電解研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
電解研磨装置は、被研磨物にアノードを接触させて、電解研磨する。そして、この電解研磨装置では、対になった電極であるアノード対を、少なくとも1つ有するアノード対セットと、アノード対におけるアノード同士を、接近または乖離させる可動部と、を含む。
【0011】
このようになっていると、可動部によって、被研磨物に対するアノード対の距離が調整されることになり、例えば、アノード対が被研磨物に接触したり乖離したりする。その結果、長期に亘って被研磨物に、アノードが接触しなくなり、接触箇所に電解液が行きわたらずに、研磨不足が起きることは無く、均一な研磨が実現する。
【0012】
その上、アノード同士を接近または乖離させるだけの可動部であれば、機構を比較的簡易なものにでき、エアチャック等が可動部として採用できる。そのため、電解研磨装置の機構も簡易になる。
【0013】
なお、このような好ましい一例の電解研磨装置では、アノード対セットが複数のアノード対を含む場合、可動部は、被研磨物に接触するアノード対を離すために、そのアノード対のアノード同士を第1方向に移動させる一方、その移動するアノード対とは別のアノード対を、被研磨物に接触させるために、そのアノード対のアノード同士を第2方向に移動させることで、被研磨物に対するアノード対の接触位置を替える。
【0014】
また、アノード対セットが、複数のアノード対を含む場合、可動部が、少なくとも1つのアノード対のアノード同士を乖離させることで、被研磨物に接触させる一方、残りのアノード対の少なくとも1つを、被研磨物から離すと好ましい。
【0015】
このようになっていると、電解研磨中、全てのアノード対が、同時に被研磨物に接触しないので、アノードの本数が多くても、研磨不足が生じにくい。
【0016】
また、可動部は、アノード対の位置を、2段階または3段階以上の多段階に変化させることで、被研磨物に対し、アノード対を離した状態から接触させる状態へと、可逆的に変化させる機構を含むと好ましい。
【0017】
このような機構があれば、電解研磨装置の設計の自由度が高まる。
【0018】
また、可動部は、アノード同士を接近または乖離させる進退方向を、ずらす機構を含むと好ましい。
【0019】
このような機構があれば、被研磨物に対するアノード対の接触箇所を変化させる手段が増えるため、一層、長期に亘って被研磨物に、アノードが接触しなくなり、研磨不足がさらに起きない。
【0020】
また、被研磨物を把持するとともに変位させる把持部が、含まれていても構わない。
【0021】
なお、被研磨物は筒状であり、アノード対セットは筒内部に収まると好ましい。
【0022】
また、被研磨物は、金属製チューブであると好ましく、さらには、被研磨物は、ステントであると好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電解研磨装置は、簡易な機構でありながら、均一な研磨を行える。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】は、電解研磨装置の説明図である。
【図2】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図と側面図とを併示した説明図である。
【図3】は、可動部、アノード、およびステントを示す斜視図である。
【図4】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図である。
【図5】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図である。
【図6】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図と側面図とを併示した説明図である。
【図7】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図である。
【図8】は、電解研磨装置の説明図である。
【図9】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図と側面図とを併示した説明図である。
【図10】は、可動部、アノード、およびステントを示す斜視図である。
【図11】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図である。
【図12】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図と側面図とを併示した説明図である。
【図13】は、可動部、アノード、およびステントを示す斜視図である。
【図14】は、電解研磨装置の説明図である。
【図15】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図である。
【図16】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図である。
【図17】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図である。
【図18】は、比較例となる電解研磨装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施の形態1]
実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。逆に、便宜上、断面図でなくてもハッチングを使用することもある。また、図面における種々部材の寸法は、便宜上、見やすいように調整されている。
【0026】
図1の説明図は、被研磨物に電極を接触させて、電解研磨する電解研磨装置39を示す。この図面に示すように、電解研磨装置39は、液槽21、電源22、カソード(陰極)23、アノード(陽極)24、可動部19、および制御部31を含む。なお、図1では、電解研磨の対象物(被研磨物)の一例として、医療用の筒状のステント49を例に挙げているが、これに限定されるものではない。また、図1では、便宜上、アノード24がステント49に非接触な状態を示し、後述の可動ユニット11を1つだけ示している。
【0027】
液槽21は、電解液25を貯留する。電解液25は、特に限定されるものではなく、例えば、公知のアルコール系または硫酸系の水溶液が挙げられる。なお、液槽21は、電解液25によって腐食等しない材料で形成される。
【0028】
電源22は、電力供給源であり、所望の電圧によって、プラス(+)端子からマイナス(−)端子へと電流を供給する。
【0029】
カソード(陰極)23は、ワイヤ26等で、電源22のマイナス端子に電気的に接続される(要は、導通する)電極で、電解液25に浸される。カソード23は、例えば、板状のステンレスまたは銅が挙げられる。ただし、これに限定されるものではなく、カソード23の材質は、導電性を有すれば、特に限定されない。また、カソード23の形状も特に限定されず、例えば、ステント49の周囲を囲めるような環状または冠状であっても構わない。
【0030】
アノード(陽極)24は、ワイヤ26等で、電源22のプラス極に電気的に接続される電極で、カソード23同様に、電解液25に浸される。アノード24は、導電性を有すれば、形状および材料は特に限定されるものではない。例えば、アノード24の形状は、芯状、棒状、またはワイヤ状であってもよいし、アノード24の材料は、ステンレス、チタン、またはニッケルチタン合金であってもよい。
【0031】
なお、電解液25に浸されるアノード24は、複数本(24A〜24F)あり、ステント49の内腔に配置される(後述の図2等参照)。詳説すると、アノード24A〜24Fは、長手をステント49の軸方向に沿わせつつ、同じ側の芯状の端で環状を形成するように配置される。
【0032】
可動部19は、フレーム16に、アノード24を把持した状態で移動させる可動ユニット11(11A〜11F)を取り付ける。なお、以降では、フレーム16に6個の可動ユニット11を放射状に取り付ける例を示すが、これに限定されるものではない。
【0033】
可動ユニット11について、図2および図3を用いて詳説する。図2は、ステント49の両端のうち、アノード24の差し込まれる側からみた平面図と、ステント49の側面側からみた側面図とを併示する説明図である。図3は、6本のアノード24A〜24Fのうち、対になった2本と{なお、対になるアノード24(アノード対)を単数または複数を含むセットを、アノード対セット24Sと称する}、それらを把持する可動ユニット11とを重点的に図示し、その他のアノード24は、便宜上、可動ユニット11に把持されたアノード24に比べて、短く図示する。
【0034】
可動ユニット11は、アノード24を把持するチャック12、チャック12に連なるアーム13、およびアーム13を進退させるアクチュエータ14を含む。
【0035】
チャック12(12A〜12F)は、アノード24の直径(外径)よりも小型な内径を有する半環状の弾性部材で形成され、弾性力で、アノード24を把持する。しかし、これに限定されるものではなく、チャック12は、アノード24の把持できるのであればよい。例えば、チャック12は、エアチャック等の機構を用いて形成されていても構わない。
【0036】
アーム13(13A〜13F)は、半環状のチャック12の根元(アノード24の非把持側)に連なる棒状部材である。
【0037】
アクチュエータ14(14A〜14F)は、例えばエアシリンダーまたはソレノイドを用いており、アーム13の根元側(チャック12の無いアーム13の端部)を外部に向かって突き出すまたは内部に収めることで、アーム13を進退させる(白色矢印参照)。なお、アーム13の移動する方向を進退方向と称する。
【0038】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)で、例えば、可動部19におけるアーム13の動作制御、および、電源22の電力制御を行う。
【0039】
ここで、図4A〜図4Dを用いて、制御部31による可動部19の動作制御、すなわち、アノード24の移動について説明する(なお、図4等は、ステント49の両端のうち、アノード24の差し込まれる側からみた平面図である)。
【0040】
図4Aは、ステント49の内腔に、6本のアノード24(24A〜24F)を配置させた状態を示す。すなわち、6本のアノード24のうち、アノード24同士の最大間隔をステント49の内腔の内径よりも短くなるように、制御部31が可動部19(詳説すると、各可動ユニット11)を制御する。なお、便宜上、図4Aのように、6本のアノード24が、ステント49の内腔に収まり、かつ、ステント49に非抵触な状態を、初期状態と称する。
【0041】
次に、制御部31は、6本のうち、対になる2本のアノード24を把持する可動ユニット11を制御する。例えば、図4Bに示すように、対向配置のアノード24Aとアノード24Bとが対(アノード対24A・24B)になっている場合、制御部31は、アノード24Aを把持する可動ユニット11Aと、アノード24Bを把持する可動ユニット11Bとに対して、アーム13をアクチュエータ14の内部に戻すように制御する。すなわち、可動部19は、ステント49に接触させるために、対になったアノード24同士を乖離させる(なお、ステント49に接触するために、アノード24が移動する方向を第2方向D2と称する;白色矢印参照)。
【0042】
すると、図4Bに示すように、アノード24Aの外面とアノード24Bの外面とが、ステント49の内面に接触する。その上、アノード24Aとアノード24Bとは対向配置で、それらアノード同士の最大間隔がステント49の内径と同程度になるので、最も効率よく、アノード対24A・24Bがステント49に係り合う。
【0043】
その結果、可動部19は、水平方向に対して軸方向をほぼ垂直に向けるステント49を、対となるアノード24Aとアノード24Bとで、つり下げる(保持する)。そして、ステント49は、可動部19につり下げられた状態で、電解液25に浸される。
【0044】
電解液25に浸されたステント49はアノード24に接触することから、制御部31が、電源22を制御して、アノード24とカソード23との間に電圧を印加させると、ステント49を形成する元素が溶解し、カソード23に付着する。すなわち、電解研磨が行われる。なお、制御部31は、電源22を介して、電解液25に電流を最適に流せるように、電圧、電流、および動作時間等を制御する。
【0045】
この電解研磨の過程において、制御部31は、アノード対24A・24Bとは別のアノード対24C・24Dを移動させる。例えば、図4Cに示すように、制御部31は、アノード24Cを把持する可動ユニット11Cと、アノード24Dを把持する可動ユニット11Dとに対して、アーム13C・13Dをアクチュエータ14C・14Dの内部に戻すように制御し、対になったアノード24Cとアノード24Dとを乖離させ、アノード対24C・24Dをステント49に係り合わせる(白色矢印参照)。
【0046】
さらに、制御部31は、先にステント49に接触していたアノード対24A・24Bを、ステント49から乖離させるために、図4Dに示すように、可動ユニット11Aと可動ユニット11Bとに対して、アーム13A・13Bをアクチュエータ14A・14Bの外部に進出するように制御する。
【0047】
すなわち、可動部19は、対になったアノード24Cとアノード24Dとを接近させる{なお、ステント49から乖離するために、アノード24が移動する方向を第1方向D1(第2方向D2に対する逆方向)と称する;白色矢印参照}。すると、ステント49に対して、接触していたアノード対24A・24Bが、ステント49から離れる(非接触になる)一方、アノード対24C・24Dが、係り合うことで、ステント49を保持し続ける。
【0048】
つまり、図1に示される電解研磨装置39は、対になったアノード24[アノード対]を3つ有し、それら対になったアノード24同士を、接近または乖離させる可動部19を含むことで、電解研磨中に、ステント49に対して接触していたアノード24を、例えばアノード24Aおよびアノード24Bからアノード24Cおよびアノード24Dに替える。
【0049】
詳説すると、可動部19は、ステント49に接触するアノード対を離すために、そのアノード対のアノード24同士を接近させる。一方で、可動部19は、接近するアノード対とは別のアノード対を、ステント49に接触させるために、そのアノード対のアノード24を乖離させることで、ステント49に対するアノード対の接触位置を替える。
【0050】
このように、電解研磨中に、ステント49に対するアノード24の接触箇所が替わると、長時間に亘ってステント49にアノード24が接触することに起因して、その接触箇所に電解液25が到達せず、研磨不足になるといった事態が起きない。また、研磨中、作業者が直接、ステント49に手を触れることなく、そのステント49に対するアノード24の接触位置が自動的に変化する。そのため、作業者は、酸等の電解液に触れることなく、安全である(要は、電解研磨装置39が自動化されているため、作業者の危険は少ない)。
【0051】
また、図4では、ステント49に接触するアノード24が、アノード対24A・24Bからアノード対24C・24Dに替わった例を挙げているが、この交替後に、ステント49に接触するアノード24が、アノード対24C・24Dからアノード対24E・24Fに替わったり、アノード対24E・24Fからアノード対24A・24Bに替わったりする。
【0052】
すなわち、時間が進むにつれて、ステント49に接触するアノード24の位置は、連続的に替わる。そのため、この電解研磨装置39は、比較的長時間に亘る電解研磨であっても、研磨不足を引き起こすことなく、十分にステント49を均一研磨する。
【0053】
なお、アノード24同士を接近または乖離させるだけの可動部19であれば、例えば、エアチャック等の比較的簡易な機構を採用できるので、電解研磨装置39の機構も簡易になる。
【0054】
また、電解研磨装置39では、3つのアノード対(24A・24B,24C・24D,24E・24F)を有するアノード対セットが含まれ、可動部19は、少なくとも1つのアノード対のアノード24同士を乖離させることで、ステント49に接触させる一方、残りのアノード対の少なくとも1つを、ステント49から離している。すなわち、電解研磨中、全てのアノード対が、同時にステント49に接触しないので、アノード24の本数が多くても、研磨不足が生じにくい。
【0055】
また、電解研磨装置39では、可動部19は、アノード対をステント49から離すために、アノード対をステント49から離れた初期状態に維持させる一方、アノード対をステント49に接触させた状態を維持させる。すなわち、可動部19は、アーム13の位置を、初期状態か、ステント49に接触させるまで移動させる状態か、の2つの状態を可逆的に変えるだけである。そのため、この可動部19におけるアクチュエータ14は、アーム13の位置を2段階に可逆的に変化させるだけの簡易な機構で構わない。
【0056】
ただし、これに限定されることはなく、アクチュエータ14は、アーム13の位置を、3段階以上の多段階に変化させることで、ステント49に対し、アノード対を離した状態から接触させる状態に可逆的に変化させる機構を含んでいても構わない。このような機構を含む可動部19であれば、内径を異ならせたステント49であっても、適切にステント49を電解液中につり下げられる。
【0057】
また、ステント49が弾性を有するものであれば、より強固に、アノード24とステント49とを係り合わせるべく、例えば、可動ユニット11が、アノード24同士の最大間隔を、ステント49の内径と同程度にする段階から、図5に示すように、内径よりも大きくさせるような段階を経てもよい。
【0058】
ところで、可動部19では、可動ユニット11におけるアーム13が移動していた。しかし、移動する部材は、これに限らず、例えば、図6に示すように、可動ユニット11が、フレーム16に取り付けられた環状のレール17上に沿って移動しても構わない。なお、可動ユニット11のレール17上の移動は、制御部31によって制御される。
【0059】
移動する可動ユニット11について、図7A〜図7Dを用いて詳説する。なお、図中では、ステント49は不動である。
【0060】
図7Aは、アノード対24A・24Bがステント49の内腔に接触することで、電解液25にそのステント49をつり下げる状態を示す{なお、図7Aの一点鎖線矢印は、不動の可動ユニット11Cによるアノード24Cおよび可動ユニット11Dによるアノード24Dの移動方向(進退方向)を示す}。
【0061】
この状態から、アノード24Cを把持する可動ユニット11Cとアノード24Dを把持する可動ユニット11Dとが、図7Bに示すように、例えば時計回りに、レール17上を移動する(斜線矢印参照)。なお、図4Bの二点鎖線矢印は、移動後の可動ユニット11Cによるアノード24Cおよび可動ユニット11Cによるアノード24Dの移動方向(進退方向)を示す。
【0062】
続いて、図7Cに示すように、可動ユニット11C・11Dとは、アーム13C・13Dをアクチュエータ14C・14Dの内部に戻すようにして、アノード対24C・24Dをステント49に係り合わせる(白色矢印参照)。
【0063】
さらに、図7Dに示すように、先にステント49にアノード対24A・24Bを接触させていた可動ユニット11A・11Bは、アーム13A・13Bをアクチュエータ14の外部に進出するようにして、アノード対24A・24Bをステント49から離す(白色矢印参照)。
【0064】
すると、レール17上にて移動後の可動ユニット11C・11Dによってアノード対24C・24Dがステント49に接触する箇所と、レール17上にて不動状態の可動ユニット11C・11Dによってアノード対24C・24Dがステント49に接触する箇所とは、ずれる。
【0065】
すなわち、可動部19は、レール17という機構を含み、そのレール17上の可動ユニット11を移動させることで、図7Aおよび図7Bに示すように、アノード24同士を可逆的に接近または乖離させる進退方向を、ずらせる(例えば、回転させられる)。その結果、同一の可動ユニット11であっても、アノード24の接触箇所を変えられ、この電解研磨装置39は、一層、研磨不足を起こさせない。
【0066】
なお、レール17は、環状のものに限定されず、線状であっても構わない。要は、アノード24同士を可逆的に接近または乖離させる進退方向をずらせるのであれば、可動ユニット11を移動させるレール17の形状は、特に限定されない。
【0067】
また、可動ユニット11が不動のタイプであっても、図8に示すように、ステント49を把持する把持アーム32が、ステント49の周囲を囲む把持アーム用レール33に沿って、ステント49をつかみながら軸中心に回転(変位)させて、アノード24の接触位置を変えても構わない。もちろん、変動タイプの可動ユニット11に、把持アーム32と把持アーム用レール33とを含む把持部34が併用されても構わない(なお、把持部34の動作は、制御部31によって制御される)。
【0068】
[実施の形態2]
実施の形態2について説明する。なお、実施の形態1で用いた部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付記し、その部材の種々説明を簡略化することもあり得る。また、実施の形態1にて説明した作用効果と同じ作用効果が奏ずる場合も、その説明を簡略化することもあり得る。
【0069】
実施の形態1では、可動ユニット11は、アクチュエータ14の内部にアーム13を引き込む、または、アーム13を外部に向けて進出させることで、アノード24を進退させていた(進退方向に沿って、アノード24を移動させていた)。
【0070】
しかしながら、可動ユニット11(ひいては、可動部19)は、これに限定されるものではない。例えば、図9および図10に示すような可動部19であっても構わない(なお、図9は図2と、図10は図3と同様の図示の仕方を採用する)。
【0071】
可動部ユニット11では、チャック12が、エアチャックである。エアチャックは、対向する2枚の把持板12J・12Jを有し、それら12J・12Jを接近または乖離させることで、把持板12J・12Jの間に配置されるアノード24を掴んだり離したりする(黒色矢印参照)。また、アクチュエータ14は、2本のアーム13を保持し、それらアーム13同士の間隔を、接近または乖離(スライド)させることで調整する(白色矢印参照)。
【0072】
そして、このような可動ユニット11(ひいては可動部19)であっても、実施の形態1での電解研磨装置39と同じように、ステント49に対するアノード24の接触箇所を変化させられる。
【0073】
例えば、図11Aに示すような、初期状態から、制御部31は、図11Bに示すように、6本のうち、アノード24Aを把持するアーム13Aとアノード24Bを把持するアーム13Bとを保持する可動ユニット11ABに対して、アーム13Aとアーム13Bとを乖離させるように制御する(白色矢印参照)。その結果、アノード24Aの外面とアノード24Bの外面とが、ステント49の内面に接触して係り合い、そのステント49をつり下げる。そして、ステント49は、可動部19につり下げられた状態で、電解液25に浸される。
【0074】
電解研磨がスタートすると、制御部31は、図11Cに示すように、アノード対24A・24Bとは別の対になるアノード24を移動させる。例えば、制御部31は、アノード24Cを把持するアーム13Cとアノード24Dを把持するアーム13Dとを保持する可動ユニット11CDに対して、対になったアノード24Cとアノード24Dとを乖離させるように制御し、アノード対24C・24Dをステント49に係り合わせる(白色矢印参照)。
【0075】
さらに、制御部31は、図11Dに示すように、アーム13Aとアーム13Bとを含む可動ユニット11ABに対して、対になったアノード24Aとアノード24Bとを接近させる(白色矢印参照)。すると、ステント49に対して、接触していたアノード対24A・24Bが、ステント49から離れる(非接触になる)一方、アノード対24C・24Dが、係り合うことで、ステント49を保持し続ける。
【0076】
以上のように、図9〜図11に示すような電解研磨装置39であっても、実施の形態1同様に、対になったアノード24[アノード対]を複数有し、それら対になったアノード24同士を、可逆的に接近または乖離させる可動部19を含むことで、電解研磨中に、ステント49に対して接触していたアノード24を、アノード対24A・24Bからアノード対24C・24Cに替える。そのため、この電解研磨装置39も、実施の形態1同様に、研磨不足を引き起こすことなく、十分にステント49を研磨する。
【0077】
なお、可動ユニット11は、アーム13をスライドさせることで、アノード対の位置を、2段階または3段階以上の多段階に変化させ、ステント49に対し、アノード対を離した状態から接触させる状態へと、可逆的に変化させる機構を含んでいるとよい。
【0078】
また、図12に示すように、可動ユニット11が、環状のレール17上に沿って移動しても構わない。すなわち、可動部19が、レール17という機構を含み、そのレール17上の可動ユニット11を移動させることで、アノード24同士を可逆的に接近または乖離させる進退方向を、ずらせるようになっていてもよい。
【0079】
もちろん、可動ユニット11が不動のタイプであっても、図8に示すような把持部34によって、ステント49を一時的に把持する把持アーム32が、ステント49の周囲を囲む把持用レール33に沿って、ステント49を軸中心に回転させて、アノード24の接触位置を変えても構わない。なお、変動タイプの可動ユニット11に、把持部34が併用されても構わない。
【0080】
[その他の実施の形態]
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0081】
例えば、以上では、可動部19は、液槽21の開口側で、ステント49の上端側に配置されていた(例えば、図1参照)。しかし、これに限定されることなく、図13Aに示すように、可動部19は、液槽21の底側で、ステント49の下端側に配置されてもよい。また、安定的にアノード24を把持するために、図13Bに示すように、可動部19が、液槽21の開口側および底側で、ステント49の上端側および下端側に配置されていてもよい。
【0082】
また、以上では、ステント49の内腔に収まるアノード24の本数は、6本(3対)であったが、これに限定されず、例えば、4本(2対)でも、8本(4対)でも、それら以上の本数であっても構わない。
【0083】
また、ステント49の内腔に収まるアノード24の本数が2本(1対)の場合、それらアノード24が接近してステント49から乖離しまうと、そのステント49を保持できない。しかしながら、例えば、把持部34(図8参照)がステント49を保持していれば、1対のアノード対だけでも構わない。このような1対のアノード24でステント49を電解研磨する装置であっても、例えば、電解研磨通中の全時間に亘って、アノードを変位させることなくステントの同一箇所に接触させる電解研磨装置に比べて、優れた研磨を行えるためである。
【0084】
なお、以上では、アノード対は、例えば、6本のアノード24における長手をステント49の軸方向に沿わせつつ、同じ側の芯状の端で環状を形成させ、その環の中を境に対向するアノード24同士であったが、これに限定されるものではない。
【0085】
例えば、アノード24Aに対してアノード24Eまたはアノード24Fが対になってもよい(要は、環状配置のアノード24において、環の中心を境にすることなく、対向しているアノード24同士が、対になっていてもよい)。このようなアノード対であったとしても、ステント49との係り度合いが比較的高ければ、十分にステント49をつり下げられるためである。
【0086】
また、可動部19は、アノード24の軸方向を、水平方向に対して垂直にさせるように保持していたが、これに限定されるものではない。例えば、図14に示すように、可動部19は、アノード24の軸方向を、水平方向に保持してもよい。
【0087】
このような電解研磨装置39では、図15Aに示すように、重力の関係で、最も上方(別表現すると、液槽21の開口に最も近い)アノード24Aがステント49に接触するが、図15Bに示すように、垂直方向に並ぶアノード24Aとアノード24Bとが乖離することで、ステント49を保持できる。
【0088】
また、図15Cに示すように、垂直方向に対して傾斜して並ぶアノード24Cとアノード24Dとが乖離することで、ステント49に接触した後に、図15Dに示すように、アノード24Aとアノード24Bとが接近してステント49から乖離したとしても、アノード対24C・24Dとステント49との係り度合いが比較的高ければ、十分にステント49を保持でき、ステント49に対するアノード24の接触箇所を替えられる。
【0089】
また、ステント49が弾性を有するものであれば、例えば、可動ユニット11が、アノード24同士の最大間隔を、ステント49の内径と同程度にする段階から、内径よりも大きくさせるような段階を経ることで、図16A(図15Bの状態からアノード24同士の最大間隔をステント49の内径よりも大きくした状態)、および、図16B(図15Dの状態からアノード24同士の最大間隔をステント49の内径よりも大きくした状態)に示すように、ステント49は保持される。したがって、図14に示すように、アノード24を保持する電解研磨装置39であっても、実施の形態1・2同様に、研磨不足を引き起こすことなく、十分にステント49を研磨する。
【0090】
また、以上では、ステント49の内腔にアノード24が接触する例をあげてきたが、これに限らず、アノード24がステント49の外側に接触しても構わない(なお、このような場合、カソード23は、例えば、ステント49の内腔にて、かつ、そのステント49の内面に非接触に配置されると好ましい)。
【0091】
例えば、図17Aに示すように、アノード24がステント49の周囲を囲むように配置されており、この初期状態から、制御部31が、図17Bに示すように、6本のうち、アノード24Aを把持するアーム13Aとアノード24Bを把持するアーム13Bとを保持する可動ユニット11に対して、アーム13Aとアノード13Bとを接近させるように制御する(なお、ステント49に接触するために、アノード24が移動する方向を第2方向D2と称する;白色矢印参照)。その結果、アノード24Aの外面とアノード24Bの外面とが、ステント49の外面に接触して係り合い、そのステント49をつり下げる。そして、ステント49は、可動部19につり下げられた状態で、電解液25に浸される。
【0092】
電解研磨がスタートすると、制御部31は、図17Cに示すように、アノード対24A・24Bとは別の対になるアノード24を移動させる。例えば、制御部31は、図17Dに示すように、アノード24Cを把持するアーム13Cとアノード24Dを把持するアーム13Dとを保持する可動ユニット11に対して、対になったアノード24Cとアノード24Dとを接近させるように制御し、アノード対24C・24Dをステント49に係り合わせる(白色矢印参照)。
【0093】
さらに、制御部31は、図17Dに示すように、アーム13Aとアーム13Bとを含む可動ユニット11に対して、対になったアノード24Aとアノード24Bとを乖離させる{なお、ステント49から乖離するために、アノード24が移動する方向を第1方向D1(第2方向D2に対する逆方向)と称する;白色矢印参照}。すると、ステント49に対して、接触していたアノード対24A・24Bが、ステント49から離れる(非接触)になる一方、アノード対24C・24Dが、係り合うことで、ステント49を保持し続ける。
【0094】
以上のように動作する電解研磨装置39であっても、実施の形態1・2同様に、対になったアノード24[アノード対]を複数有し、それら対になったアノード24同士を、可逆的に接近または乖離させる可動部19を含むことで、電解研磨中に、ステント49に対して接触していたアノード24を、アノード対24A・24Bからアノード対24C・24Dに替える。そのため、この電解研磨装置39も、実施の形態1・2同様に、研磨不足を引き起こすことなく、十分にステント49を研磨する。
【0095】
なお、可動部19は、一方向(線状方向)における正逆方向(D1/D2)に、アノード24同士を移動させて、それらアノード24同士を接近または乖離させていたが、これに限定されることはなく、例えば、この移動方向(D1/D2)は湾曲していても構わない。
【0096】
また、以上では、アノード24の長さは、ステント49の全長よりも長い例を挙げていたが、これに限定されるものではない。すなわち、アノード24の長さは、ステント49の全長よりも短くても構わない。アノード24は、ステント49の全長よりも短かったとしても、ステント29に接触して把持できればよいためである。その上、このようにアノード24が短ければ、そのアノード24とステント49との接触面積が比較的狭くなるので、電解研磨上、好ましい。
【0097】
なお、アノード24は、電解研磨において、ステント49同様に研磨されていくので、交換できるようになっていると好ましい。また、アノード対[電極対]に含まれるアノード24の本数は、2本の例を挙げたが、これに限定されるものではなく、アノード対は、3本以上の複数本を含んでいても構わない。
【0098】
また、カソード23は、ステント49に接触しない周辺(例えば、外側周囲)に配置されていればよい。その上、カソード23の本数も、単数であっても複数であっても構わない。また、カソード23の本数が複数の場合、例えば、ステント49に対し、円周状に配置されていてもよいし、異なる二方向に配置されていてもよい。
【0099】
ところで、以上では被研磨物として、ステント49を例に挙げていたが、これに限らず、例えば、筒状またはチューブ状の導電性金属(ステンレス、チタン、コバルトクロム合金、ニッケルチタン合金等)が被研磨物として挙げられる。
【0100】
なお、ステント49のように体内に留置されるようなインプラントは、体内に留置された後(例えば、血管に留置された後)、腐食をおさえるために、表面に光沢を生じさせるとよいと知られている(ステント表面に光沢があると、血管に狭窄が生じにくいと知られている)。そのため、電解研磨装置39に研磨対象としては、好適といえる。
【0101】
なお、以上で説明した電解研磨装置39における可動部19は、制御プログラムで実現される。そのため、電解研磨装置39は、例えば、種々機能を実現する制御プログラムの命令を実行する制御部31の他、図示しないものの、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)、制御プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)、または、制御プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)を含む(これらは、制御部31に内部に含まれていても外部に含まれていてもよい)。
【0102】
また、制御プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。なぜなら、記録媒体に記録されたプログラムは、持ち運び自在になるためである。
【0103】
なお、この記録媒体としては、例えば分離される磁気テープやカセットテープ等のテープ系、磁気ディスクやCD−ROM等の光ディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)や光カード等のカード系、あるいはフラッシュメモリ等による半導体メモリ系が挙げられる。
【0104】
また、電解研磨装置39は、通信ネットワークからの通信で制御プログラムを取得してもよい。なお、通信ネットワークとしては、有線無線を問わず、インターネット、赤外線通等が挙げられる。
【実施例】
【0105】
以下に、具体的な実施例を示す。ただし、電解研磨装置39は、この実施例に限るものではない。
【0106】
[実施例1]
6本のアノード24は、ステンレス製の直径(φ)1.0mmの芯材で形成される。そして、これらアノード24は、可動部19における6個のチャック12に個別に把持される。なお、チャック12が環状配置されており、対向配置となるアノード24をアノード対とする。そして、3つのアノード対は、ステント49の内腔に挿入され、環状(円状)で、かつ、間隔を均等にして配置される。
【0107】
カソード23は、ステンレス板で形成され、ステント49から離れた外側に配置される。
【0108】
液槽21に貯められる電解液25は、市販されているTi合金用の電解研磨溶液を使用する(なお、この電解液25の推奨電圧15Vである)。
【0109】
そして、制御部31は、電圧15Vで12分間、電解液に対して電力供給し、この電解液にステント49が浸されることで、電解研磨が行われた。なお、可動部19の可動ユニット11がアノード対の位置を適宜替えることで、長時間に亘って、同一箇所にアノード24を接触させないようにする。
【0110】
[比較例]
図18に示すように、アノードが、ステンレス製のクリップ124で、これでステント49を把持する。カソード23、電解液25、ステント49、液槽21は、実施例1と同様のものを使用し、電解条件も実施例1と同条件にして、電解研磨が行われた。
【0111】
[結 果]
実施例1および比較例を用いた電解研磨の結果、いずれの例においても電解研磨は行えた。
【0112】
特に、実施例1では、ステント49に対するアノード24の接触箇所が変化したため、研磨不足を起こすことなく、ステント49の表面が均一に光沢を示すまで研磨できた。
【0113】
一方、比較例では、ステント49に対するアノード(クリップ124)の接触箇所は変わらないので、その接触箇所が、全く研磨できていなかった。しかし、その他の部分に関しては、研磨されていた。
【符号の説明】
【0114】
11 可動ユニット
12 チャック
13 アーム
14 アクチュエータ
16 フレーム
17 レール
19 可動部
21 液槽
22 電源
23 カソード
24 アノード[電極]
24A・24B アノード対[電極対]
24C・24D アノード対[電極対]
24E・24F アノード対[電極対]
24S アノードセット[電極対セット]
25 電解液
26 ワイヤ
31 制御部
34 把持部
39 電解研磨装置
49 ステント[被研磨物]
D1 第1方向
D2 第2方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、電解研磨装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電解研磨は、工業用金属チューブまたは医療用ステント等の種々金属品の表面を鏡面に仕上げる加工方法で、一般的に、産業界において広く普及している。詳説すると、放電加工、レーザー切断、または切削加工等を施された金属品に対し、その金属品の表面または切断面を平滑化するために、電解研磨は行われる。そして、電解研磨が行われると、金属表面の凹凸が無くなり、さらには、その表面が鏡面に仕上がるので、微小なクラックもなくなる。その結果、その金属品は、外部環境に起因する腐食に対して耐性を増したり、繰り返して荷重を受けても疲労しにくくなったりする。
【0003】
電解研磨では、電解液中にて、アノードが金属品のような被研磨物に接する一方、カソードが被研磨物から乖離する。このような配置状態において、アノードとカソードとの間に電圧が印加されると、電解液を流れる電流によって被研磨物の元素が溶解して、カソードに付着する。これにより、被研磨物は、電解研磨され、表面に光沢を生じる。
【0004】
しかしながら、電解研磨では、被研磨物とアノードとが接触した状態で、電解液に浸けられるため、その接触箇所に、電解液が周りこまず、研磨されないことがある(すなわち、被研磨物に対して、不均一な研磨がなされる)。そのため、被研磨物全体に対して均一な電解研磨を施そうとする場合、被研磨物に対するアノードの接触位置を変更したほうが好ましい。
【0005】
この変更の仕方の一例として、手作業で、被研磨物とアノードとの相対位置を変位させることがある。しかしながら、作業者が、強酸または強アルカリ等の研磨液に触れることになるため、危険な作業となる。
【0006】
そこで、例えば、特許文献1に記載の電解研磨装置のように、手作業によらず、被研磨物とアノードとの相対位置を変位させる電解研磨装置が開発されている。この電化研磨装置は、ステントを電解研磨の対象にしており、アノードとなるワイヤをステントの内腔に接触させる一方、カソードをステントから乖離させて配置させる。そして、電解液内に浸されるローラがステントの外壁に接触することで、そのステントを回転させる。これにより、ステントとアノードとの接触箇所が変化し、研磨不足が低減する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2007−533845号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の電解研磨装置は、作業者に安全を提供するものの、複雑な機構を有さなくてはならない。その上、電解液の液流が不均一になりやすく、研磨不足(研磨ムラ)が発生することもある。
【0009】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものである。そして、その目的は、簡易な機構でありつつ、均一な研磨を行える電解研磨装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
電解研磨装置は、被研磨物にアノードを接触させて、電解研磨する。そして、この電解研磨装置では、対になった電極であるアノード対を、少なくとも1つ有するアノード対セットと、アノード対におけるアノード同士を、接近または乖離させる可動部と、を含む。
【0011】
このようになっていると、可動部によって、被研磨物に対するアノード対の距離が調整されることになり、例えば、アノード対が被研磨物に接触したり乖離したりする。その結果、長期に亘って被研磨物に、アノードが接触しなくなり、接触箇所に電解液が行きわたらずに、研磨不足が起きることは無く、均一な研磨が実現する。
【0012】
その上、アノード同士を接近または乖離させるだけの可動部であれば、機構を比較的簡易なものにでき、エアチャック等が可動部として採用できる。そのため、電解研磨装置の機構も簡易になる。
【0013】
なお、このような好ましい一例の電解研磨装置では、アノード対セットが複数のアノード対を含む場合、可動部は、被研磨物に接触するアノード対を離すために、そのアノード対のアノード同士を第1方向に移動させる一方、その移動するアノード対とは別のアノード対を、被研磨物に接触させるために、そのアノード対のアノード同士を第2方向に移動させることで、被研磨物に対するアノード対の接触位置を替える。
【0014】
また、アノード対セットが、複数のアノード対を含む場合、可動部が、少なくとも1つのアノード対のアノード同士を乖離させることで、被研磨物に接触させる一方、残りのアノード対の少なくとも1つを、被研磨物から離すと好ましい。
【0015】
このようになっていると、電解研磨中、全てのアノード対が、同時に被研磨物に接触しないので、アノードの本数が多くても、研磨不足が生じにくい。
【0016】
また、可動部は、アノード対の位置を、2段階または3段階以上の多段階に変化させることで、被研磨物に対し、アノード対を離した状態から接触させる状態へと、可逆的に変化させる機構を含むと好ましい。
【0017】
このような機構があれば、電解研磨装置の設計の自由度が高まる。
【0018】
また、可動部は、アノード同士を接近または乖離させる進退方向を、ずらす機構を含むと好ましい。
【0019】
このような機構があれば、被研磨物に対するアノード対の接触箇所を変化させる手段が増えるため、一層、長期に亘って被研磨物に、アノードが接触しなくなり、研磨不足がさらに起きない。
【0020】
また、被研磨物を把持するとともに変位させる把持部が、含まれていても構わない。
【0021】
なお、被研磨物は筒状であり、アノード対セットは筒内部に収まると好ましい。
【0022】
また、被研磨物は、金属製チューブであると好ましく、さらには、被研磨物は、ステントであると好ましい。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、電解研磨装置は、簡易な機構でありながら、均一な研磨を行える。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】は、電解研磨装置の説明図である。
【図2】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図と側面図とを併示した説明図である。
【図3】は、可動部、アノード、およびステントを示す斜視図である。
【図4】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図である。
【図5】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図である。
【図6】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図と側面図とを併示した説明図である。
【図7】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図である。
【図8】は、電解研磨装置の説明図である。
【図9】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図と側面図とを併示した説明図である。
【図10】は、可動部、アノード、およびステントを示す斜視図である。
【図11】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図である。
【図12】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図と側面図とを併示した説明図である。
【図13】は、可動部、アノード、およびステントを示す斜視図である。
【図14】は、電解研磨装置の説明図である。
【図15】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図である。
【図16】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図である。
【図17】は、可動部、アノード、およびステントを示す平面図である。
【図18】は、比較例となる電解研磨装置の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
[実施の形態1]
実施の一形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。なお、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、他の図面を参照するものとする。逆に、便宜上、断面図でなくてもハッチングを使用することもある。また、図面における種々部材の寸法は、便宜上、見やすいように調整されている。
【0026】
図1の説明図は、被研磨物に電極を接触させて、電解研磨する電解研磨装置39を示す。この図面に示すように、電解研磨装置39は、液槽21、電源22、カソード(陰極)23、アノード(陽極)24、可動部19、および制御部31を含む。なお、図1では、電解研磨の対象物(被研磨物)の一例として、医療用の筒状のステント49を例に挙げているが、これに限定されるものではない。また、図1では、便宜上、アノード24がステント49に非接触な状態を示し、後述の可動ユニット11を1つだけ示している。
【0027】
液槽21は、電解液25を貯留する。電解液25は、特に限定されるものではなく、例えば、公知のアルコール系または硫酸系の水溶液が挙げられる。なお、液槽21は、電解液25によって腐食等しない材料で形成される。
【0028】
電源22は、電力供給源であり、所望の電圧によって、プラス(+)端子からマイナス(−)端子へと電流を供給する。
【0029】
カソード(陰極)23は、ワイヤ26等で、電源22のマイナス端子に電気的に接続される(要は、導通する)電極で、電解液25に浸される。カソード23は、例えば、板状のステンレスまたは銅が挙げられる。ただし、これに限定されるものではなく、カソード23の材質は、導電性を有すれば、特に限定されない。また、カソード23の形状も特に限定されず、例えば、ステント49の周囲を囲めるような環状または冠状であっても構わない。
【0030】
アノード(陽極)24は、ワイヤ26等で、電源22のプラス極に電気的に接続される電極で、カソード23同様に、電解液25に浸される。アノード24は、導電性を有すれば、形状および材料は特に限定されるものではない。例えば、アノード24の形状は、芯状、棒状、またはワイヤ状であってもよいし、アノード24の材料は、ステンレス、チタン、またはニッケルチタン合金であってもよい。
【0031】
なお、電解液25に浸されるアノード24は、複数本(24A〜24F)あり、ステント49の内腔に配置される(後述の図2等参照)。詳説すると、アノード24A〜24Fは、長手をステント49の軸方向に沿わせつつ、同じ側の芯状の端で環状を形成するように配置される。
【0032】
可動部19は、フレーム16に、アノード24を把持した状態で移動させる可動ユニット11(11A〜11F)を取り付ける。なお、以降では、フレーム16に6個の可動ユニット11を放射状に取り付ける例を示すが、これに限定されるものではない。
【0033】
可動ユニット11について、図2および図3を用いて詳説する。図2は、ステント49の両端のうち、アノード24の差し込まれる側からみた平面図と、ステント49の側面側からみた側面図とを併示する説明図である。図3は、6本のアノード24A〜24Fのうち、対になった2本と{なお、対になるアノード24(アノード対)を単数または複数を含むセットを、アノード対セット24Sと称する}、それらを把持する可動ユニット11とを重点的に図示し、その他のアノード24は、便宜上、可動ユニット11に把持されたアノード24に比べて、短く図示する。
【0034】
可動ユニット11は、アノード24を把持するチャック12、チャック12に連なるアーム13、およびアーム13を進退させるアクチュエータ14を含む。
【0035】
チャック12(12A〜12F)は、アノード24の直径(外径)よりも小型な内径を有する半環状の弾性部材で形成され、弾性力で、アノード24を把持する。しかし、これに限定されるものではなく、チャック12は、アノード24の把持できるのであればよい。例えば、チャック12は、エアチャック等の機構を用いて形成されていても構わない。
【0036】
アーム13(13A〜13F)は、半環状のチャック12の根元(アノード24の非把持側)に連なる棒状部材である。
【0037】
アクチュエータ14(14A〜14F)は、例えばエアシリンダーまたはソレノイドを用いており、アーム13の根元側(チャック12の無いアーム13の端部)を外部に向かって突き出すまたは内部に収めることで、アーム13を進退させる(白色矢印参照)。なお、アーム13の移動する方向を進退方向と称する。
【0038】
制御部31は、CPU(Central Processing Unit)で、例えば、可動部19におけるアーム13の動作制御、および、電源22の電力制御を行う。
【0039】
ここで、図4A〜図4Dを用いて、制御部31による可動部19の動作制御、すなわち、アノード24の移動について説明する(なお、図4等は、ステント49の両端のうち、アノード24の差し込まれる側からみた平面図である)。
【0040】
図4Aは、ステント49の内腔に、6本のアノード24(24A〜24F)を配置させた状態を示す。すなわち、6本のアノード24のうち、アノード24同士の最大間隔をステント49の内腔の内径よりも短くなるように、制御部31が可動部19(詳説すると、各可動ユニット11)を制御する。なお、便宜上、図4Aのように、6本のアノード24が、ステント49の内腔に収まり、かつ、ステント49に非抵触な状態を、初期状態と称する。
【0041】
次に、制御部31は、6本のうち、対になる2本のアノード24を把持する可動ユニット11を制御する。例えば、図4Bに示すように、対向配置のアノード24Aとアノード24Bとが対(アノード対24A・24B)になっている場合、制御部31は、アノード24Aを把持する可動ユニット11Aと、アノード24Bを把持する可動ユニット11Bとに対して、アーム13をアクチュエータ14の内部に戻すように制御する。すなわち、可動部19は、ステント49に接触させるために、対になったアノード24同士を乖離させる(なお、ステント49に接触するために、アノード24が移動する方向を第2方向D2と称する;白色矢印参照)。
【0042】
すると、図4Bに示すように、アノード24Aの外面とアノード24Bの外面とが、ステント49の内面に接触する。その上、アノード24Aとアノード24Bとは対向配置で、それらアノード同士の最大間隔がステント49の内径と同程度になるので、最も効率よく、アノード対24A・24Bがステント49に係り合う。
【0043】
その結果、可動部19は、水平方向に対して軸方向をほぼ垂直に向けるステント49を、対となるアノード24Aとアノード24Bとで、つり下げる(保持する)。そして、ステント49は、可動部19につり下げられた状態で、電解液25に浸される。
【0044】
電解液25に浸されたステント49はアノード24に接触することから、制御部31が、電源22を制御して、アノード24とカソード23との間に電圧を印加させると、ステント49を形成する元素が溶解し、カソード23に付着する。すなわち、電解研磨が行われる。なお、制御部31は、電源22を介して、電解液25に電流を最適に流せるように、電圧、電流、および動作時間等を制御する。
【0045】
この電解研磨の過程において、制御部31は、アノード対24A・24Bとは別のアノード対24C・24Dを移動させる。例えば、図4Cに示すように、制御部31は、アノード24Cを把持する可動ユニット11Cと、アノード24Dを把持する可動ユニット11Dとに対して、アーム13C・13Dをアクチュエータ14C・14Dの内部に戻すように制御し、対になったアノード24Cとアノード24Dとを乖離させ、アノード対24C・24Dをステント49に係り合わせる(白色矢印参照)。
【0046】
さらに、制御部31は、先にステント49に接触していたアノード対24A・24Bを、ステント49から乖離させるために、図4Dに示すように、可動ユニット11Aと可動ユニット11Bとに対して、アーム13A・13Bをアクチュエータ14A・14Bの外部に進出するように制御する。
【0047】
すなわち、可動部19は、対になったアノード24Cとアノード24Dとを接近させる{なお、ステント49から乖離するために、アノード24が移動する方向を第1方向D1(第2方向D2に対する逆方向)と称する;白色矢印参照}。すると、ステント49に対して、接触していたアノード対24A・24Bが、ステント49から離れる(非接触になる)一方、アノード対24C・24Dが、係り合うことで、ステント49を保持し続ける。
【0048】
つまり、図1に示される電解研磨装置39は、対になったアノード24[アノード対]を3つ有し、それら対になったアノード24同士を、接近または乖離させる可動部19を含むことで、電解研磨中に、ステント49に対して接触していたアノード24を、例えばアノード24Aおよびアノード24Bからアノード24Cおよびアノード24Dに替える。
【0049】
詳説すると、可動部19は、ステント49に接触するアノード対を離すために、そのアノード対のアノード24同士を接近させる。一方で、可動部19は、接近するアノード対とは別のアノード対を、ステント49に接触させるために、そのアノード対のアノード24を乖離させることで、ステント49に対するアノード対の接触位置を替える。
【0050】
このように、電解研磨中に、ステント49に対するアノード24の接触箇所が替わると、長時間に亘ってステント49にアノード24が接触することに起因して、その接触箇所に電解液25が到達せず、研磨不足になるといった事態が起きない。また、研磨中、作業者が直接、ステント49に手を触れることなく、そのステント49に対するアノード24の接触位置が自動的に変化する。そのため、作業者は、酸等の電解液に触れることなく、安全である(要は、電解研磨装置39が自動化されているため、作業者の危険は少ない)。
【0051】
また、図4では、ステント49に接触するアノード24が、アノード対24A・24Bからアノード対24C・24Dに替わった例を挙げているが、この交替後に、ステント49に接触するアノード24が、アノード対24C・24Dからアノード対24E・24Fに替わったり、アノード対24E・24Fからアノード対24A・24Bに替わったりする。
【0052】
すなわち、時間が進むにつれて、ステント49に接触するアノード24の位置は、連続的に替わる。そのため、この電解研磨装置39は、比較的長時間に亘る電解研磨であっても、研磨不足を引き起こすことなく、十分にステント49を均一研磨する。
【0053】
なお、アノード24同士を接近または乖離させるだけの可動部19であれば、例えば、エアチャック等の比較的簡易な機構を採用できるので、電解研磨装置39の機構も簡易になる。
【0054】
また、電解研磨装置39では、3つのアノード対(24A・24B,24C・24D,24E・24F)を有するアノード対セットが含まれ、可動部19は、少なくとも1つのアノード対のアノード24同士を乖離させることで、ステント49に接触させる一方、残りのアノード対の少なくとも1つを、ステント49から離している。すなわち、電解研磨中、全てのアノード対が、同時にステント49に接触しないので、アノード24の本数が多くても、研磨不足が生じにくい。
【0055】
また、電解研磨装置39では、可動部19は、アノード対をステント49から離すために、アノード対をステント49から離れた初期状態に維持させる一方、アノード対をステント49に接触させた状態を維持させる。すなわち、可動部19は、アーム13の位置を、初期状態か、ステント49に接触させるまで移動させる状態か、の2つの状態を可逆的に変えるだけである。そのため、この可動部19におけるアクチュエータ14は、アーム13の位置を2段階に可逆的に変化させるだけの簡易な機構で構わない。
【0056】
ただし、これに限定されることはなく、アクチュエータ14は、アーム13の位置を、3段階以上の多段階に変化させることで、ステント49に対し、アノード対を離した状態から接触させる状態に可逆的に変化させる機構を含んでいても構わない。このような機構を含む可動部19であれば、内径を異ならせたステント49であっても、適切にステント49を電解液中につり下げられる。
【0057】
また、ステント49が弾性を有するものであれば、より強固に、アノード24とステント49とを係り合わせるべく、例えば、可動ユニット11が、アノード24同士の最大間隔を、ステント49の内径と同程度にする段階から、図5に示すように、内径よりも大きくさせるような段階を経てもよい。
【0058】
ところで、可動部19では、可動ユニット11におけるアーム13が移動していた。しかし、移動する部材は、これに限らず、例えば、図6に示すように、可動ユニット11が、フレーム16に取り付けられた環状のレール17上に沿って移動しても構わない。なお、可動ユニット11のレール17上の移動は、制御部31によって制御される。
【0059】
移動する可動ユニット11について、図7A〜図7Dを用いて詳説する。なお、図中では、ステント49は不動である。
【0060】
図7Aは、アノード対24A・24Bがステント49の内腔に接触することで、電解液25にそのステント49をつり下げる状態を示す{なお、図7Aの一点鎖線矢印は、不動の可動ユニット11Cによるアノード24Cおよび可動ユニット11Dによるアノード24Dの移動方向(進退方向)を示す}。
【0061】
この状態から、アノード24Cを把持する可動ユニット11Cとアノード24Dを把持する可動ユニット11Dとが、図7Bに示すように、例えば時計回りに、レール17上を移動する(斜線矢印参照)。なお、図4Bの二点鎖線矢印は、移動後の可動ユニット11Cによるアノード24Cおよび可動ユニット11Cによるアノード24Dの移動方向(進退方向)を示す。
【0062】
続いて、図7Cに示すように、可動ユニット11C・11Dとは、アーム13C・13Dをアクチュエータ14C・14Dの内部に戻すようにして、アノード対24C・24Dをステント49に係り合わせる(白色矢印参照)。
【0063】
さらに、図7Dに示すように、先にステント49にアノード対24A・24Bを接触させていた可動ユニット11A・11Bは、アーム13A・13Bをアクチュエータ14の外部に進出するようにして、アノード対24A・24Bをステント49から離す(白色矢印参照)。
【0064】
すると、レール17上にて移動後の可動ユニット11C・11Dによってアノード対24C・24Dがステント49に接触する箇所と、レール17上にて不動状態の可動ユニット11C・11Dによってアノード対24C・24Dがステント49に接触する箇所とは、ずれる。
【0065】
すなわち、可動部19は、レール17という機構を含み、そのレール17上の可動ユニット11を移動させることで、図7Aおよび図7Bに示すように、アノード24同士を可逆的に接近または乖離させる進退方向を、ずらせる(例えば、回転させられる)。その結果、同一の可動ユニット11であっても、アノード24の接触箇所を変えられ、この電解研磨装置39は、一層、研磨不足を起こさせない。
【0066】
なお、レール17は、環状のものに限定されず、線状であっても構わない。要は、アノード24同士を可逆的に接近または乖離させる進退方向をずらせるのであれば、可動ユニット11を移動させるレール17の形状は、特に限定されない。
【0067】
また、可動ユニット11が不動のタイプであっても、図8に示すように、ステント49を把持する把持アーム32が、ステント49の周囲を囲む把持アーム用レール33に沿って、ステント49をつかみながら軸中心に回転(変位)させて、アノード24の接触位置を変えても構わない。もちろん、変動タイプの可動ユニット11に、把持アーム32と把持アーム用レール33とを含む把持部34が併用されても構わない(なお、把持部34の動作は、制御部31によって制御される)。
【0068】
[実施の形態2]
実施の形態2について説明する。なお、実施の形態1で用いた部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付記し、その部材の種々説明を簡略化することもあり得る。また、実施の形態1にて説明した作用効果と同じ作用効果が奏ずる場合も、その説明を簡略化することもあり得る。
【0069】
実施の形態1では、可動ユニット11は、アクチュエータ14の内部にアーム13を引き込む、または、アーム13を外部に向けて進出させることで、アノード24を進退させていた(進退方向に沿って、アノード24を移動させていた)。
【0070】
しかしながら、可動ユニット11(ひいては、可動部19)は、これに限定されるものではない。例えば、図9および図10に示すような可動部19であっても構わない(なお、図9は図2と、図10は図3と同様の図示の仕方を採用する)。
【0071】
可動部ユニット11では、チャック12が、エアチャックである。エアチャックは、対向する2枚の把持板12J・12Jを有し、それら12J・12Jを接近または乖離させることで、把持板12J・12Jの間に配置されるアノード24を掴んだり離したりする(黒色矢印参照)。また、アクチュエータ14は、2本のアーム13を保持し、それらアーム13同士の間隔を、接近または乖離(スライド)させることで調整する(白色矢印参照)。
【0072】
そして、このような可動ユニット11(ひいては可動部19)であっても、実施の形態1での電解研磨装置39と同じように、ステント49に対するアノード24の接触箇所を変化させられる。
【0073】
例えば、図11Aに示すような、初期状態から、制御部31は、図11Bに示すように、6本のうち、アノード24Aを把持するアーム13Aとアノード24Bを把持するアーム13Bとを保持する可動ユニット11ABに対して、アーム13Aとアーム13Bとを乖離させるように制御する(白色矢印参照)。その結果、アノード24Aの外面とアノード24Bの外面とが、ステント49の内面に接触して係り合い、そのステント49をつり下げる。そして、ステント49は、可動部19につり下げられた状態で、電解液25に浸される。
【0074】
電解研磨がスタートすると、制御部31は、図11Cに示すように、アノード対24A・24Bとは別の対になるアノード24を移動させる。例えば、制御部31は、アノード24Cを把持するアーム13Cとアノード24Dを把持するアーム13Dとを保持する可動ユニット11CDに対して、対になったアノード24Cとアノード24Dとを乖離させるように制御し、アノード対24C・24Dをステント49に係り合わせる(白色矢印参照)。
【0075】
さらに、制御部31は、図11Dに示すように、アーム13Aとアーム13Bとを含む可動ユニット11ABに対して、対になったアノード24Aとアノード24Bとを接近させる(白色矢印参照)。すると、ステント49に対して、接触していたアノード対24A・24Bが、ステント49から離れる(非接触になる)一方、アノード対24C・24Dが、係り合うことで、ステント49を保持し続ける。
【0076】
以上のように、図9〜図11に示すような電解研磨装置39であっても、実施の形態1同様に、対になったアノード24[アノード対]を複数有し、それら対になったアノード24同士を、可逆的に接近または乖離させる可動部19を含むことで、電解研磨中に、ステント49に対して接触していたアノード24を、アノード対24A・24Bからアノード対24C・24Cに替える。そのため、この電解研磨装置39も、実施の形態1同様に、研磨不足を引き起こすことなく、十分にステント49を研磨する。
【0077】
なお、可動ユニット11は、アーム13をスライドさせることで、アノード対の位置を、2段階または3段階以上の多段階に変化させ、ステント49に対し、アノード対を離した状態から接触させる状態へと、可逆的に変化させる機構を含んでいるとよい。
【0078】
また、図12に示すように、可動ユニット11が、環状のレール17上に沿って移動しても構わない。すなわち、可動部19が、レール17という機構を含み、そのレール17上の可動ユニット11を移動させることで、アノード24同士を可逆的に接近または乖離させる進退方向を、ずらせるようになっていてもよい。
【0079】
もちろん、可動ユニット11が不動のタイプであっても、図8に示すような把持部34によって、ステント49を一時的に把持する把持アーム32が、ステント49の周囲を囲む把持用レール33に沿って、ステント49を軸中心に回転させて、アノード24の接触位置を変えても構わない。なお、変動タイプの可動ユニット11に、把持部34が併用されても構わない。
【0080】
[その他の実施の形態]
なお、本発明は上記の実施の形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0081】
例えば、以上では、可動部19は、液槽21の開口側で、ステント49の上端側に配置されていた(例えば、図1参照)。しかし、これに限定されることなく、図13Aに示すように、可動部19は、液槽21の底側で、ステント49の下端側に配置されてもよい。また、安定的にアノード24を把持するために、図13Bに示すように、可動部19が、液槽21の開口側および底側で、ステント49の上端側および下端側に配置されていてもよい。
【0082】
また、以上では、ステント49の内腔に収まるアノード24の本数は、6本(3対)であったが、これに限定されず、例えば、4本(2対)でも、8本(4対)でも、それら以上の本数であっても構わない。
【0083】
また、ステント49の内腔に収まるアノード24の本数が2本(1対)の場合、それらアノード24が接近してステント49から乖離しまうと、そのステント49を保持できない。しかしながら、例えば、把持部34(図8参照)がステント49を保持していれば、1対のアノード対だけでも構わない。このような1対のアノード24でステント49を電解研磨する装置であっても、例えば、電解研磨通中の全時間に亘って、アノードを変位させることなくステントの同一箇所に接触させる電解研磨装置に比べて、優れた研磨を行えるためである。
【0084】
なお、以上では、アノード対は、例えば、6本のアノード24における長手をステント49の軸方向に沿わせつつ、同じ側の芯状の端で環状を形成させ、その環の中を境に対向するアノード24同士であったが、これに限定されるものではない。
【0085】
例えば、アノード24Aに対してアノード24Eまたはアノード24Fが対になってもよい(要は、環状配置のアノード24において、環の中心を境にすることなく、対向しているアノード24同士が、対になっていてもよい)。このようなアノード対であったとしても、ステント49との係り度合いが比較的高ければ、十分にステント49をつり下げられるためである。
【0086】
また、可動部19は、アノード24の軸方向を、水平方向に対して垂直にさせるように保持していたが、これに限定されるものではない。例えば、図14に示すように、可動部19は、アノード24の軸方向を、水平方向に保持してもよい。
【0087】
このような電解研磨装置39では、図15Aに示すように、重力の関係で、最も上方(別表現すると、液槽21の開口に最も近い)アノード24Aがステント49に接触するが、図15Bに示すように、垂直方向に並ぶアノード24Aとアノード24Bとが乖離することで、ステント49を保持できる。
【0088】
また、図15Cに示すように、垂直方向に対して傾斜して並ぶアノード24Cとアノード24Dとが乖離することで、ステント49に接触した後に、図15Dに示すように、アノード24Aとアノード24Bとが接近してステント49から乖離したとしても、アノード対24C・24Dとステント49との係り度合いが比較的高ければ、十分にステント49を保持でき、ステント49に対するアノード24の接触箇所を替えられる。
【0089】
また、ステント49が弾性を有するものであれば、例えば、可動ユニット11が、アノード24同士の最大間隔を、ステント49の内径と同程度にする段階から、内径よりも大きくさせるような段階を経ることで、図16A(図15Bの状態からアノード24同士の最大間隔をステント49の内径よりも大きくした状態)、および、図16B(図15Dの状態からアノード24同士の最大間隔をステント49の内径よりも大きくした状態)に示すように、ステント49は保持される。したがって、図14に示すように、アノード24を保持する電解研磨装置39であっても、実施の形態1・2同様に、研磨不足を引き起こすことなく、十分にステント49を研磨する。
【0090】
また、以上では、ステント49の内腔にアノード24が接触する例をあげてきたが、これに限らず、アノード24がステント49の外側に接触しても構わない(なお、このような場合、カソード23は、例えば、ステント49の内腔にて、かつ、そのステント49の内面に非接触に配置されると好ましい)。
【0091】
例えば、図17Aに示すように、アノード24がステント49の周囲を囲むように配置されており、この初期状態から、制御部31が、図17Bに示すように、6本のうち、アノード24Aを把持するアーム13Aとアノード24Bを把持するアーム13Bとを保持する可動ユニット11に対して、アーム13Aとアノード13Bとを接近させるように制御する(なお、ステント49に接触するために、アノード24が移動する方向を第2方向D2と称する;白色矢印参照)。その結果、アノード24Aの外面とアノード24Bの外面とが、ステント49の外面に接触して係り合い、そのステント49をつり下げる。そして、ステント49は、可動部19につり下げられた状態で、電解液25に浸される。
【0092】
電解研磨がスタートすると、制御部31は、図17Cに示すように、アノード対24A・24Bとは別の対になるアノード24を移動させる。例えば、制御部31は、図17Dに示すように、アノード24Cを把持するアーム13Cとアノード24Dを把持するアーム13Dとを保持する可動ユニット11に対して、対になったアノード24Cとアノード24Dとを接近させるように制御し、アノード対24C・24Dをステント49に係り合わせる(白色矢印参照)。
【0093】
さらに、制御部31は、図17Dに示すように、アーム13Aとアーム13Bとを含む可動ユニット11に対して、対になったアノード24Aとアノード24Bとを乖離させる{なお、ステント49から乖離するために、アノード24が移動する方向を第1方向D1(第2方向D2に対する逆方向)と称する;白色矢印参照}。すると、ステント49に対して、接触していたアノード対24A・24Bが、ステント49から離れる(非接触)になる一方、アノード対24C・24Dが、係り合うことで、ステント49を保持し続ける。
【0094】
以上のように動作する電解研磨装置39であっても、実施の形態1・2同様に、対になったアノード24[アノード対]を複数有し、それら対になったアノード24同士を、可逆的に接近または乖離させる可動部19を含むことで、電解研磨中に、ステント49に対して接触していたアノード24を、アノード対24A・24Bからアノード対24C・24Dに替える。そのため、この電解研磨装置39も、実施の形態1・2同様に、研磨不足を引き起こすことなく、十分にステント49を研磨する。
【0095】
なお、可動部19は、一方向(線状方向)における正逆方向(D1/D2)に、アノード24同士を移動させて、それらアノード24同士を接近または乖離させていたが、これに限定されることはなく、例えば、この移動方向(D1/D2)は湾曲していても構わない。
【0096】
また、以上では、アノード24の長さは、ステント49の全長よりも長い例を挙げていたが、これに限定されるものではない。すなわち、アノード24の長さは、ステント49の全長よりも短くても構わない。アノード24は、ステント49の全長よりも短かったとしても、ステント29に接触して把持できればよいためである。その上、このようにアノード24が短ければ、そのアノード24とステント49との接触面積が比較的狭くなるので、電解研磨上、好ましい。
【0097】
なお、アノード24は、電解研磨において、ステント49同様に研磨されていくので、交換できるようになっていると好ましい。また、アノード対[電極対]に含まれるアノード24の本数は、2本の例を挙げたが、これに限定されるものではなく、アノード対は、3本以上の複数本を含んでいても構わない。
【0098】
また、カソード23は、ステント49に接触しない周辺(例えば、外側周囲)に配置されていればよい。その上、カソード23の本数も、単数であっても複数であっても構わない。また、カソード23の本数が複数の場合、例えば、ステント49に対し、円周状に配置されていてもよいし、異なる二方向に配置されていてもよい。
【0099】
ところで、以上では被研磨物として、ステント49を例に挙げていたが、これに限らず、例えば、筒状またはチューブ状の導電性金属(ステンレス、チタン、コバルトクロム合金、ニッケルチタン合金等)が被研磨物として挙げられる。
【0100】
なお、ステント49のように体内に留置されるようなインプラントは、体内に留置された後(例えば、血管に留置された後)、腐食をおさえるために、表面に光沢を生じさせるとよいと知られている(ステント表面に光沢があると、血管に狭窄が生じにくいと知られている)。そのため、電解研磨装置39に研磨対象としては、好適といえる。
【0101】
なお、以上で説明した電解研磨装置39における可動部19は、制御プログラムで実現される。そのため、電解研磨装置39は、例えば、種々機能を実現する制御プログラムの命令を実行する制御部31の他、図示しないものの、制御プログラムを格納したROM(Read Only Memory)、制御プログラムを展開するRAM(Random Access Memory)、または、制御プログラムおよび各種データを格納するメモリ等の記憶装置(記録媒体)を含む(これらは、制御部31に内部に含まれていても外部に含まれていてもよい)。
【0102】
また、制御プログラムは、コンピュータに読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。なぜなら、記録媒体に記録されたプログラムは、持ち運び自在になるためである。
【0103】
なお、この記録媒体としては、例えば分離される磁気テープやカセットテープ等のテープ系、磁気ディスクやCD−ROM等の光ディスクのディスク系、ICカード(メモリカードを含む)や光カード等のカード系、あるいはフラッシュメモリ等による半導体メモリ系が挙げられる。
【0104】
また、電解研磨装置39は、通信ネットワークからの通信で制御プログラムを取得してもよい。なお、通信ネットワークとしては、有線無線を問わず、インターネット、赤外線通等が挙げられる。
【実施例】
【0105】
以下に、具体的な実施例を示す。ただし、電解研磨装置39は、この実施例に限るものではない。
【0106】
[実施例1]
6本のアノード24は、ステンレス製の直径(φ)1.0mmの芯材で形成される。そして、これらアノード24は、可動部19における6個のチャック12に個別に把持される。なお、チャック12が環状配置されており、対向配置となるアノード24をアノード対とする。そして、3つのアノード対は、ステント49の内腔に挿入され、環状(円状)で、かつ、間隔を均等にして配置される。
【0107】
カソード23は、ステンレス板で形成され、ステント49から離れた外側に配置される。
【0108】
液槽21に貯められる電解液25は、市販されているTi合金用の電解研磨溶液を使用する(なお、この電解液25の推奨電圧15Vである)。
【0109】
そして、制御部31は、電圧15Vで12分間、電解液に対して電力供給し、この電解液にステント49が浸されることで、電解研磨が行われた。なお、可動部19の可動ユニット11がアノード対の位置を適宜替えることで、長時間に亘って、同一箇所にアノード24を接触させないようにする。
【0110】
[比較例]
図18に示すように、アノードが、ステンレス製のクリップ124で、これでステント49を把持する。カソード23、電解液25、ステント49、液槽21は、実施例1と同様のものを使用し、電解条件も実施例1と同条件にして、電解研磨が行われた。
【0111】
[結 果]
実施例1および比較例を用いた電解研磨の結果、いずれの例においても電解研磨は行えた。
【0112】
特に、実施例1では、ステント49に対するアノード24の接触箇所が変化したため、研磨不足を起こすことなく、ステント49の表面が均一に光沢を示すまで研磨できた。
【0113】
一方、比較例では、ステント49に対するアノード(クリップ124)の接触箇所は変わらないので、その接触箇所が、全く研磨できていなかった。しかし、その他の部分に関しては、研磨されていた。
【符号の説明】
【0114】
11 可動ユニット
12 チャック
13 アーム
14 アクチュエータ
16 フレーム
17 レール
19 可動部
21 液槽
22 電源
23 カソード
24 アノード[電極]
24A・24B アノード対[電極対]
24C・24D アノード対[電極対]
24E・24F アノード対[電極対]
24S アノードセット[電極対セット]
25 電解液
26 ワイヤ
31 制御部
34 把持部
39 電解研磨装置
49 ステント[被研磨物]
D1 第1方向
D2 第2方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被研磨物にアノードを接触させて、電解研磨する電解研磨装置にあって、
対になった上記アノードであるアノード対を、少なくとも1つ有するアノード対セットと、
上記アノード対における上記アノード同士を、接近または乖離させる可動部と、
を含む電解研磨装置。
【請求項2】
上記アノード対セットが、複数の上記アノード対を含む場合、
上記可動部は、
上記被研磨物に接触する上記アノード対を離すために、そのアノード対の上記アノード同士を第1方向に移動させる一方、
その移動する上記アノード対とは別の上記アノード対を、上記被研磨物に接触させるために、そのアノード対の上記アノード同士を第2方向に移動させることで、
上記被研磨物に対する上記アノード対の接触位置を替える、請求項1に記載の電解研磨装置。
【請求項3】
上記アノード対セットが、複数の上記アノード対を含む場合、
上記可動部は、少なくとも1つの上記アノード対の上記アノード同士を乖離させることで、上記被研磨物に接触させる一方、残りの上記アノード対の少なくとも1つを、上記被研磨物から離す、請求項1または2に記載の電解研磨装置。
【請求項4】
上記可動部は、
上記アノード対の位置を、2段階または3段階以上の多段階に変化させることで、上記被研磨物に対し、上記アノード対を離した状態から接触させる状態へと、可逆的に変化させる機構を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解研磨装置。
【請求項5】
上記可動部は、上記アノード同士を接近または乖離させる進退方向を、ずらす機構を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解研磨装置。
【請求項6】
上記被研磨物を把持するとともに変位させる把持部が、含まれる請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解研磨装置。
【請求項7】
上記被研磨物が筒状であり、
上記アノード対セットは筒内部に収まる請求項1〜6に記載の電解研磨装置。
【請求項8】
上記被研磨物は、金属製チューブである請求項7に記載の電解研磨装置。
【請求項9】
上記被研磨物は、ステントである請求項8に記載の電解研磨装置。
【請求項1】
被研磨物にアノードを接触させて、電解研磨する電解研磨装置にあって、
対になった上記アノードであるアノード対を、少なくとも1つ有するアノード対セットと、
上記アノード対における上記アノード同士を、接近または乖離させる可動部と、
を含む電解研磨装置。
【請求項2】
上記アノード対セットが、複数の上記アノード対を含む場合、
上記可動部は、
上記被研磨物に接触する上記アノード対を離すために、そのアノード対の上記アノード同士を第1方向に移動させる一方、
その移動する上記アノード対とは別の上記アノード対を、上記被研磨物に接触させるために、そのアノード対の上記アノード同士を第2方向に移動させることで、
上記被研磨物に対する上記アノード対の接触位置を替える、請求項1に記載の電解研磨装置。
【請求項3】
上記アノード対セットが、複数の上記アノード対を含む場合、
上記可動部は、少なくとも1つの上記アノード対の上記アノード同士を乖離させることで、上記被研磨物に接触させる一方、残りの上記アノード対の少なくとも1つを、上記被研磨物から離す、請求項1または2に記載の電解研磨装置。
【請求項4】
上記可動部は、
上記アノード対の位置を、2段階または3段階以上の多段階に変化させることで、上記被研磨物に対し、上記アノード対を離した状態から接触させる状態へと、可逆的に変化させる機構を含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の電解研磨装置。
【請求項5】
上記可動部は、上記アノード同士を接近または乖離させる進退方向を、ずらす機構を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の電解研磨装置。
【請求項6】
上記被研磨物を把持するとともに変位させる把持部が、含まれる請求項1〜5のいずれか1項に記載の電解研磨装置。
【請求項7】
上記被研磨物が筒状であり、
上記アノード対セットは筒内部に収まる請求項1〜6に記載の電解研磨装置。
【請求項8】
上記被研磨物は、金属製チューブである請求項7に記載の電解研磨装置。
【請求項9】
上記被研磨物は、ステントである請求項8に記載の電解研磨装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2013−44019(P2013−44019A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−182647(P2011−182647)
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年8月24日(2011.8.24)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
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