説明

電解質活性可能なリチウムイオン再充電可能電池セルおよびその製造方法

可塑化されたポリマーマトリックス組成物の層として形成されたリチウムイオン再充電可能な電池セル電極(13、17)および電解液/セパレータ(15)要素を、積層して、一体の電池セル構造体を形成する。この構造体を、無期限に保存することができる。その理由は、湿気に敏感なリチウム塩を典型的に備える電解液が本質的に、全く存在しないからである。電池が使用される前に、ポリマー組成物の可塑剤を、選択的溶液で抽出することによって取り除き、簡単な液浸によってリチウム塩電解液で置き換える。次いで、このようにして活性化した電池を、通常の方法で充電してもよいし、再充電してもよい。

【発明の詳細な説明】
電解質活性可能なリチウムイオン再充電可能電池セルおよびその製造方法 発明の背景 本発明は、ポリマーフィルム組成物の電極およびセパレータ膜を備えた電解セル、ならびにそのような電解セルの経済的な製造方法に関する。特に、本発明は、再充電可能なリチウム電池セルであって、電解液を含む中間セパレータ要素を備え、この電解液を通してソース電極材料からのリチウムイオンがその電解セルの充電/放電サイクルの間にセルの電極間を移動するようにしたものに関する。
本発明は、イオンソース電極がリチウム化合物またはリチウムイオンを挿入することの可能な他の材料であり、および電極セパレータ膜がイオン移動を与えるような解離可能なリチウム塩の有機溶液の取り込みによってイオン的に導電性をもつようになされたポリマーマトリックスを有するこの種の電解セルを製造するのに特に有用である。
我々の以前の調査研究(米国特許第5,296,318号)で、容易にリチウム塩の電解液を確保でき、室温より十分に低い範囲の温度にわたって機能を維持する、強く、柔軟なポリマー電解セルのセパレータ膜材料を発見した。これらの電解質膜は、機械的に組立てられた電池セル部品を有するセパレータ要素として通常のように用いられるか、または電極および電解質組成物の順次に塗布された層から構成された複合電池セルに用いられた。しかし、これらの実施の各々において、ポリマー電解質/セパレータ要素は、しばしばセルを組み立てるときに、リチウム電解質塩を含み、これらの塩の吸湿性に起因して、セル組立ての間、特別な環境条件を必要とした。
本発明は、セル製造の間に特別な環境制御を実質的に必要としない、これらの改良されたポリマー電解質膜および電極組成物の利用形態を提供する。さらに、結合した層を有する本発明の電池構造体は、電解質がより少なくていいが、電解質は従来の電池構造では大きい空隙において部分的に無駄になっていたものであるから、本発明のようにしたことにより、より経済的でかつ用途の広い電池セル製品を製造することができる。
発明の開示 本発明によるポリマー材料を利用した電解セル電極およびセパレータ要素は、ポリ(ビニリデンフルオライド)コポリマーマトリックスと相溶性有機溶媒可塑剤との組み合わせを含んでおり、柔軟で、自立性フィルムの形態の均質な組成を維持するものである。コポリマーは、約75から92重量%のフッ化ビニリデン(VdF)および8から25重量%のヘキサフルオロプロビレン(HFP)を含み、後者のコモノマーが、リチウム電解塩のための好ましい約40から60%の溶媒の保持を可能としながら、良好なフィルム強度を保証する程度までに、最終コポリマーの結晶化度を制限する範囲とする。溶媒含有量のこの範囲内で、最終的に5から7.5%の塩を含む混成体の電解質膜は、約10-4から10-3S/cmという有効室温イオン導電度を生じるが、その膜は、セル漏れまたは導電度の損失を生じるかもしれない溶液のシミだしの証拠を示していない。
再充電可能な電池セルのような電解セルは、本発明によれば上述したPVdFコポリマー材料を含む組成物から塗布、押し出し等によって個別に作成された電極および電解セル要素の積層によって構成される。例えば、リチウムイオン電池の構成においては、アルミニウム箔またはグリッドの電流コレクタ層の上に、正電極フィルムまたは膜を被着するが、この膜は内位添加電極組成物の分散液、例えばLiMn2O4の粉末をコポリマーマトリックス溶液中に分散したものの塗布層として個別に調製し、これを乾燥させて膜としたものである。VdF:HFPコポリマーおよび可塑剤溶媒の溶液を含む組成物の乾燥コーティングとして形成された電解質/セパレータ膜を、次に正電極フィルムの上に被着する。コポリマーマトリックス溶液に粉末炭素を分散した分散液の乾燥コーティングとして形成された負電極膜を、同様に、セパレータ膜層の上に被着し、そして銅コレクタ箔またはグリッドを、負電極層上に配置してセルの組立を完了する。
この組立体を加圧下で加熱して、可塑化したコポリマーマトリックス成分同志、そしてコレクタグリッドに対して熱融合により接着し、それによりセルの要素の積層を行って、一体の柔軟な電池セル構造体を構成する。
この段階で、積層された構造体は、特にセパレータ膜層において、かなりの量の均質に分布した有機可塑剤溶媒を備えているが、吸湿性電解質塩は全く存在しない。その結果として、「不活性な」電池セルを、成形またはさらなる処理の前後のいずれにおいても、雰囲気の水分との反応に起因する電解質の劣化を懸念することなく、周囲条件で保存することができる。電解質塩溶液を導入して電池セルを活性化する、最終の封止操作の間だけは、無水状態を維持するよう気を付ける必要があるが、これは乾燥した不活性ガス雰囲気中で効果的に達成することができる。
製造の最終段階で、電池をこのように活性化することが所望されるときは、積層セル構造体を、電解質塩溶液に浸すか、あるいは、その他の仕方で接触させて、電解質塩溶液がVdF:HFPコポリマー膜マトリックスの中に吸収されるようにしてそのような電解塩溶液を含む、予備成形されたハイブリッド電解質/セパレータフィルムによってなされたのと実質的に同じイオン導電率の増加を得る。電解質溶液の吸収を促進するために、可塑剤溶媒の大部分をコポリマーマトリックスからあらかじめ取り除いておくのが好ましい。これは、ジエチルエーテルまたはヘキサンのようなコポリマーに不活性で低沸点の溶媒であって要素の層のコポリマーマトリックスに大きく影響することなしに、可塑剤を選択的に抽出する溶媒にセルの積層体を液浸させることによって、積層操作の後であればいつでも容易に達成できる。ついで、抽出液媒を単に蒸発させるのみで、乾燥した、不活性な電池セルを得ることができる。
本発明の電池構造体は、液体電解液として使用されるいくつもの組成物のいずれを用いても、良好に活性化することができる。特に、電解液には炭酸ジメチル、ジエトキシエタン、炭酸ジエチル、ジメトキシエタン、および炭酸ジプロピルのような有機溶媒を使用することができる。また、活性化電解液の処分にあたり、LiClO4、LiN(CF3SO2)2、LiBF4、LiCF3SO3、およびLiSbF6を含む他の有用なリチウム塩を約0.5と2Mとの間の溶液濃度で用いてもよい。その中でも特に有用性のあるものは、米国特許第5,192,629号公報に記載されている、LiPF6の例外的な炭酸エチレン/炭酸ジメチル組成物およびLiBF4との混合物である。
本発明の電池形成方法は、バッチまたは連続操作に容易に適応可能である。その理由は、電極および電解質/セパレータ膜要素およびコレクターグリッド箔を、積層組立体の前に形成したり、または糊付けしてもよく、またはそれらを、合流する膜材料ウェブから積層して後に所望に応じて成形したり、マニホルドするようにしてもよいからである。本発明の特に大きな利点は、そのような操作のすべてを、任意の分解し易い電解質塩を導入する前に、周囲条件で実施できるという事実に存する。
図の簡単な説明本発明を添付図面を参照して説明する: 図1は、本発明の典型的な積層リチウムイオン電池セル構造体の説明図である;
図2は、図1の積層リチウムイオン電池セルの容量を、充電/放電サイクルの回数の関数として表したグラフである;
図3は、本発明の電池セル構造体を作製するための積層方法の説明図である;
図4は、本発明の多セル電池セル構造体の説明図である。
発明の詳細な説明 図1に示すような、本発明の積層した再充電可能電池セル構造体は、目の粗いメッシュグリッドの形態であるのが好適な銅コレクタ箔11を有し、その上に、炭素または黒鉛のような内位添加可能な材料、あるいはポリマーバインダーマトリックス中に分散されたWO2、MoO2またはAlのような低電圧リチウム挿入化合物を備えた負電極膜13を配置する。可塑化したVdF:HFPコポリマーの電解質/セパレータフィルム膜15を電極要素13の上に配置し、そしてポリマーバインダーマトリックス中にLiMn2O4、LiCoO2またはLiNiO2のような微細に分割したリチウム挿入化合物を分散した組成物からなる正電極膜17で覆う。アルミニウム製コレクター箔すなわちグリッド19で組立体を完成する。その組立体を、加熱・加圧下でプラテン(図示されていない)間でプレスして、そしてポリマーコンポーネントを柔らかくして接着し、そして膜とグリッド層を積層する。
セパレータ膜要素15は、一般に、前記ように75%から92%のビニリデンフルオライド:8%から25%のヘキサフルオロプロピレン・コポリマー(Kynar FLEXとしてAtochem North Americaから市販されている)および有機溶媒可塑剤を備える組成物から作製される。このようなコポリマー成分は電極膜要素の作製にも好適である。その理由は、次の積層体の界面融和性が確実になるからである。可塑化溶媒は、電解質塩の溶媒として慣用される種々の有機化合物、例えば炭酸プロピレンまたは炭酸エチレンならびにこれらの化合物の混合物の一つであってもよい。ジブチルフタレート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレートおよびトリスブトキシエチルホスフェートのようなより高い沸点の可塑剤化合物は、特に好適である。ヒュームドアルミナまたはシラン化したヒュームドシリカのような無機充填剤を用いてセパレータ膜の物理的強さおよび融解係数を増加させ、および組成物によっては、次の電解液の吸収のレベルを増加させることもできる。
ポリマー組成物のフィルムまたは膜を注入成形しまたは形成するためのいかなる慣用の方法も、本発明の膜材料の作製に用いることができる。流体組成物の注入成形または塗布に、例えばメーター・バー(meter bar)またはドクターブレード装置(doctor blade apparatus)を用いる場合には、組成物の粘性率は、通常、テトラヒドロフラン(THF)、アセトンなどのような速やかに蒸発する注入成型用溶媒を添加して、低下させる。このような塗膜は、通常、適度な温度で、風乾し、均質で可塑化したコポリマー組成物の自立性フィルムを作る。特にセパレータ要素として用いられる膜材料は、市販の形態の、すなわちビーズまたは粉末の形態のコポリマーを適量の可塑剤溶媒中で膨潤させ、そして加熱した(例えば、約130℃)プレートまたはローラー間で膨潤した塊をプレスするか、あるいは混合物を押し出して、形成してもよい。
組立てたセルの構造の積層体は、慣用の装置を用いて、同様に作成してもよい。予備成形されたり、糊付けされた組立体を、約120℃から160℃の温度で、オーブンの中で、約3x104から5x104Paの荷重をかけた金属板間で短時間にわたって単にプレスするだけでもよい。コンポーネント膜の連続ウェブが入手できる場合には、加熱したカレンダーローラーを用い操作を行ってもよい。
積層化に引き続いて、電池セル材料を、通常の条件下で、保存してもよい。これは、最終電池処理および活性化の前にいかなる長さの時間にわたっても、可塑体と共に、または選択した低沸点溶媒を用いて可塑剤を抽出した後の「乾燥した」シートとして、積層体を、よく知られている「ボタン」電池用のコインに打抜きしてもよいし、または柔軟な積層されたセル材料の長いシートを、絶縁体を間に介在させて巻回し、またはマニホルドして、保護用の閉鎖容器中に、活性化電解質溶液で封止された、小型で高密度の構造体を作ることもできる。
可塑化したコポリマーマトリックス、特にセパレータ層のそれは、電解質塩溶液を容易に吸収し、可塑剤溶媒を実際上除去するが、流体電解質の吸収を促進する可塑剤を抽出して流体電解質の吸収を促進することが好ましい。抽出した「乾燥した」電池セル積層体は認識できるボイドを有さない一方で、初期の可塑剤溶媒とほぼ等量の電解液の急速な吸収を促す溶媒回収「メモリー」を示すようである。このようにして、約10-3S/cm以下の所望のイオン導電率範囲を容易に達成することができる。
上述したモノマーの割合範囲内でVdF:HFPコポリマーを含む組成物を有する多数の電解質セル積層体を作製し、再充電可能な電池セルにおける使用に対する、電解質としての適性および物理的な適性をテストした。以下の実施例は、このような作製と用い方の例示である。
実施例1 コーティング組成物を、10gのアセトンおよび1.5gの炭酸プロピレン(PC)中に分子量約260x103(Atochem Kynar FLEX2750)の85:15のVdF:HFPのコポリマー1.
5gを懸濁させて調製した。混合物を約50℃に温めて溶解を促進させ、時折撹拌して、幾時間かにわたって室温でその流動性をそのままに保った溶液を得た。
この溶液を、約1.5mm離したドクターブレード装置を用いてガラス板上に流延して、約10分間にわたって室温において空気中で乾燥させた。得られた乾燥して、透明で、強く、柔軟なフィルムをガラス基板から速やかに取り除き、分割してテストサンプルとした。いくつかのサンプルをジエチルエーテルを用いて完全に抽出して均質に分散したPC可塑剤溶媒を取り除いた。この溶媒は、約47.
7重量%のレベルで、元のサンプル中に存在していたと計算された。保持されたままの可塑剤溶媒(PC)を有するそのようなフィルムは、ポリマー電解質/セパレータ膜材料の「湿った」形態を示し、セル電極要素と共に保存することができ、後で組み立てるのに便利である。PCをすでに抽出したテストサンプルは、膜材料の「乾燥した」形態を表す。
実施例2 対照標準フィルム材料をPC可塑剤溶媒を加えなかった以外は、実施例1と同様に調製した。得られたフィルムは、透明で、強く、柔軟であるが、明らかに、可塑化したサンプルほど伸張性はない。「湿性」、「乾性」および対照標準フィルムのサンプルを数分間にわたって典型的な再充電可能なリチウム電池の電解液、すなわち炭酸エチレンおよび炭酸プロピレン(EC/PC)の1:1の混合材料中のLiPF6の1M溶液に浸した。次いで、サンプルを、拭いて表面に蓄積物した電解液を取り除き、検量し、PCおよびジエチルエーテルを用いて抽出して、吸収された電解液を取り除いた計算によると参照標準サンプルは約27%の電解液を吸収したのに対し、事前に膨張させておいた「湿性」サンプルは、約47%吸収した。これは、電解質に浸漬する前の膜中にPC可塑剤の元の量をほぼ完全に置換したものである。残りの「乾性」サンプルは、元のPC可塑剤を抽出して得られたものであるが、約37%の電解質溶液、つまり、対照標準サンプルよりほぼ40%多く吸収した。吸収容量のこの増加は、初期の可塑剤溶媒含有量によってフィルムに付与された膨潤「メモリー」を表示する。電解液に浸すことによって膨張された膜サンプルのイオン導電率を、例えば、Hewlett Packardのコンピューター−制御HP4192A静電容量ブリッジのような慣用のテスト装置において5Hzから10MHzまでの振動数で操作して、通常の交流インピーダンス法によって導電率のテストをした。「湿性」、「乾性」および対照標準サンプルは、それぞれ約3x10-4、9x10-5および5x10-5S/cmを示した。
実施例3 テストサンプルをPC可塑剤溶媒の代わりにジブチルフタレート(DBP)を用いて、実施例2と同様に調製した。浸漬の間、「湿性」および「乾性」サンプルによる電解質の吸収は、PCサンプルに対して顕著に増加し、それぞれ、約65%と45%であった。サンプルのイオン導電率は、それに応じて増加し、それぞれ2x10-3と3x10-4S/cmと測定された。
実施例4 実施例1−3に従ったテストサンプルをアセトンにかわってテトラヒドロフラン(THF)を用いて調製した。電解質吸収およびイオン導電率の結果は、ほぼ同じであった。
実施例5 用いてもよい他のフィルム形成技術を示すものとして、約50重量パーセントの実施例1の85:15のコポリマーを、等量のジブチルフタレート中でアセトンビヒクル溶媒なしで懸濁させ、ほぼ均等になるまで膨潤させた。このようにして得られた膨潤した塊を0.15mmくさびで分けられた磨かれたアルミニウム板間で1分間にわたって約130℃でプレスした。室温に冷却した後、得られた透明で柔軟なフィルムシートは容易に板から取り除かれた。こうしてシートのサンプル部分をジエチルエーテルで抽出し、実施例2の電解質溶液中で再膨潤させると、約40%の電解質溶液を確保でき、約1x10-4S/cmのイオン導電率を示す電解質/セパレータ膜を生じた。
実施例6 電解質/セパレータ膜コーティング溶液を、分子量約380x103(Atochem Kynar FLEX 2801)の88:12のVdF:HFPコポリマー2.0gを約10gのアセトンに懸濁させ、この混合物にジブチルフタレート(DBP)約2.0gを加えることによって調製した。完成した混合物を約50℃に温め、溶解を促進させ、時折撹拌をして溶液を、数時間にわたって室温に放置した後、その流動性を保った材料を得た。この溶液の一部を約0.5mmに離したドクターブレード装置を用いてガラス板土に塗布した。塗布したフィルムを約10分間にわたって室温で適度に乾燥空気を流しながら、コーティング密閉容器内で乾燥させると、容易にガラス板からはがれる透明で強くて壊れにくい弾性膜を生じる。フィルムは、乾燥重量が約0.1kg/m2で、厚さが約85μmであり、簡単に、約175x45mmの方形のセパレータ要素に切断された。これらのフィルムをほとんど重量を失うことなく室内の周囲条件で数日間にわたって保存できた。
実施例7 正極コーティング組成物の調製は、53μmのふるいにかけたLi1+xMn2O4(ここで、0<x≦1である)(例えば、米国特許5,196,279号公報に記載された方法で調製されたLi1.05Mn2O4)10.5g、実施例6のVdF:HFPコポリマー(FLEX2801)2.8g、ジブチルフタレート4.3g、Super−P導電性カーボン1.125gおよびアセトン約20gの混合物を4000rpmで約10分間にわたって蓋で覆われたステンレス鋼ブレンダー中で均質化することによって行った。得られたペーストを、短時間混合容器を減圧してガス抜きをし、約1.1mm離したドクターブレード装置を用いてガラス板上に塗布した。塗布された層を、約10分間にわたって室温で適度の流速の乾燥空気を流しながらコーティング密閉容器内で乾燥させると、ガラス板から容易にはがれる強くて壊れにくい弾性フィルムを生じた。そのフィルムは、乾燥重量が約0.6kg/m2で厚さが約0.3mmであり、簡単に、約165x40mmの方形の電極要素に切断された。これらのフィルム要素を、ほとんど重量を失うことなく、室内の周囲条件で数日間にわたって保存できた。
実施例8 負極コーティング組成物の調製は、(ボールミルにかけ、53μmのふるいにかけた)商用石油コークス7.0g、実施例6のVdF:HFPコポリマー(FLEX2801)2.0g、ジブチルフタレート3.12g、Super−P導電性カーボン0.
37gおよびアセトン約12gの混合物を4000rpmで約10分間にわたって、蓋で覆われたステンレス鋼ブレンダー中で均質化して調製した。得られたペーストを、短時間混合容器を減圧してガス抜きをし、約0.6mm離したドクターブレード装置を用いてガラス板上に塗布した。塗布された層を、約10分間にわたって室温で適度の流速の乾燥空気を流しながらコーティング密閉容器内で乾燥させると、ガラス板から容易にはがれる強い弾性フィルムを生じた。そのフィルムは、乾燥重量が約0.3kg/m2で、厚さが約0.2mmであり、簡単に、約165x40mmの方形の電極要素に切断された。これらのフィルム要素を、ほとんど重量を失うことなく、室内の周囲条件で数日間にわたって保存できた。
実施例9 再充電可能な電池構造を、前の実施例の方法で調製した部品の電極および電解質要素から容易に組み立てることができる。電極調製の条件を、コーティング組成物のコンシステンシーや塗布された層の厚さについて変えて、正極:負極結合体の活性内位添加化合物の重量比を、約1.5と2.5の間、好ましくは約2.
2とすることができる。基本的な電池セル構造は図1に描いてあり、次の方法で堆積させた: 180x40mmの集電体銅箔11を、好ましくは、約50μmの厚さの目の粗いメッシュグリッドの形(例えば、Delker Corporationにより市販されているMicroGrid精密エキスパンデッド・ホイル)で、一端で耳きりしてタブ12を形成した。このタブ12は引き続き便宜なバッテリー端末となる。次に、その結合した電極要素に対して付着させた際の密着性を増加させるために、グリッド11を、慣用の「銅色透明(copper bright)」溶液(稀硝酸と硫酸を混合した物)中に数秒間にわたって浸し、水ですすぎ、風乾し、実施例6のVdF:HFPの0.
5%のアセトン溶液中に浸漬塗布し、風乾し、5〜10秒間にわたって約350℃でオーブン加熱をすることによって表面浄化した。加熱工程を、VdF:HFPコポリマーおよびジブチルフタレートのそれぞれ約3%の浸漬塗布溶液を用いることにより、省いてもよい。グリッド11をアルミニウムのような熱伝導性のよい材料の平らな剛性底板(図示されていない)上に滑らかに置いた。
実施例8で調製されたような炭素負極要素13をグリッド11の上に載せ、実施例6で調製したような電解質/セパレータ要素15をその上に載せた。要素15がわずかに大きいため、組み立てられた電池構造の電極要素間に起こりうる心狂いおよび不所望の接触に対して保護される。実施例7で調製された正極17を、セパレータ要素16の上に載せ、アセトン中でサンプルを簡単初期洗浄液浸した以外はグリッド11と同様の方法で処理した集電体アルミニウム箔すなわちグリッド19を、電極17の上に載せ、横に配置した末端タブ18を与える。集電性要素の少なくも1つが、好ましくは、目の粗いグリッド構造を有し、引き続いて起こる電池調製操作の間に抽出および活性化流体の通過を容易することに注目すべきである。
こうして得られた構造を、第2の類似した剛性板(示されていない)で覆い、組立体を、135℃のオーブン内に置き、約24kgの荷重を加えて要素の異面間に約3.7x104Paの圧力を与えた。組立体を、約30分間にわたってオーブン内に置いておくと、板ひけ(plate sinks)での温度平衡を確定し、電池要素の適切な融解を達成する。このようにして、積層体の構造を、オーブンから取りだし、重りをとり、一対の室温の金属板間に冷却した。最終の単一セル構造体に集電体グリッドの最適結合または埋設を確実にするために、約50μmの電解質/セパレータ組成物の膜(図示されていない)を、積層する前のグリッド要素に積層してもよいし、あるいは、好ましくは、約20μmの組成物のコーティングを、積層された構造体の表面に被着してもよい。
実施例10 実施例9の電池構造体を、実施例2に記載したように、約25分間にわたって室温においてジエチルエーテル中で積層構造体を液浸し、層化した要素、特に電解質/セパレータ15から実質的に全てのDBP可塑剤を取り除くことにより、「乾性」フィルム活性化のために準備した。この抽出を、液浸溶液の撹拌を最小限にして行った。
同様な構造のサンプルに対する抽出時間を緩い撹拌、例えば撹拌または気泡吹き込みから、約10分に減らし、新鮮な抽出溶媒を用いた連続した向流処理で、最適に約3分間に減らした。他の有効な溶媒は、ペンタン、石油エーテル、ヘキサンおよびシクロヘキサンを含む。
実施例11 実施例10からの抽出された電池構造体を、充電/放電サイクリングのための準備において活性化した。これはほとんど湿気のない雰囲気下50:50の炭化エチレン(EC):炭化ジメチル(DMC)中のLiPF6の1M電解質溶液中で20分間にわたって液浸することによって行われ、この間に積層した電池はその抽出された重さの約31%を吸収している。吸収剤材料を用いて緩やかに拭いて表面の電解質を取り除いた後に、この活性化された電池構造を、延在している末端タブ12と18を除いて、ポリエチレン・エンベロープ(図示されていない)内に気密封止し、湿気のない環境を維持した。
実施例12 実施例10からの抽出された電池構造を充電/放電サイクリングのための準備において活性化した。これは、約30分間にわたって50:50の炭化エチレン(EC):炭化プロピレン(PC)中のLiPF6の1M溶液中で液浸することによって行われ、この間に積層した電池はその抽出された重さの約28%を吸収している。
実施例13 実施例11の活性化された電池を、フランスのClaixのBio−Logicからの「マックパイル(Mac Pile)」のサイクリングシステム内で1%以内で一定に保った10mAの割合で2Vと4.5Vの間のサイクリングによって検査した。直流電流の安定状態のモードにおいて操作すると、このシステムより、経過時間および電流からLixMn2O4正極中のリチウム含有量、x、が計算される。延長された充電サイクルのセル容量の軌跡を図2に示す。実施例12の電池を同様のテストしてほぼ同様の結果を得た。
実施例14 本発明の積層電池組立法のより好ましい変形方法では、図3に示したように、実施例9および8で調製した銅集電体グリッド41および負極要素43を、密着したポリエチレンテレフタレートの緩衝シート(図示されていない)の間に堆積し、約150℃の温度で商用のカード封止ラミネータのロール46の間を通過させた。電解質/セパレータ組成物の50μm厚フィルムを積層の前にグリッドの頂部に挿入してもよい。実施例9および7で調製された処理済みのアルミニウム集電体グリッド49および正極要素47を同様に積層し、電極/コレクター電池要素の一対を与える。次いで、実施例6から得られた電解質/セパレータ要素45を電極/集電体対の間に挿入し、得られた組立体を、いくらか弱い圧力で約120℃のロール温度でラミネータ装置を通して、積層電池構造体を得た。次いで、この積層体を、湿気のない条件下で約40分間にわたって緩やかに撹拌された実施例11からの電解液に液浸して、電解液とDBP可塑剤を大部分置き換えた。
そうして、約0.5mmの厚さを有する活性化された電池を保護ポリオレフィン・エンベロープ(図示されていない)中に封止し、実施例13に従って試験した。その結果得られた性能の軌跡は、だいたい図2のものと一致した。
実施例15 実施例14の積層化した電池構造体を、撹拌されたジエチルエーテルに約10分間にわたって液浸することによって可塑剤の抽出をし、実施例12に記載したように電解液に液浸することによって活性化した。次いで、この電池を、食品の密閉容器用に商業的に使用されているポリオレフィン/アルミニウム箔/ポリエステル積層シートのような防湿性の保護材料の絞り嵌めしたエンベロープ内で後にテストするために、熱封止した。
実施例16 抽出した電池構造体を、実施例15と同様に調製した。ただし、液浸によって活性化する代わりに、実施例15の液浸したサンプルによって吸収したものと等量の電解質溶液とともに同様のエンベロープに直接挿入した。このエンベロープを、後のテストのために気密封止した。3日後、サンプル電池を通常のサイクル系によりテストしたところ、図2にみられるのと同じ結果を得た。代わりの手順として、電解質溶液を、ほぼ封止を維持した状態で、封止された電池密閉容器に注入した。
実施例17 図4に示す多セル電池配置を実施例9に記載した一般的な方法で調製した。ただし、銅コレクター51、負極53、電解質/セパレータ55、正極57およびアルミニウム集電体59を順に重ねた電池要素を、この図に示したように延長した。集電体要素のタブ52、58は電池構造体のそれぞれの共通の端子を形成している。実施例10および11による抽出および活性化の後、初期のサンプルの容量の約2倍の容量の電池が、図2に示す挙動を継続した。比例的により大きな容量の電池を、所望の電池要素のシーケンスを所望のように繰り返すことによって、速やかに、組み立てることができる。もちろん、抽出および活性化流体が通過する材料の質量が増加した場合に処理時間の増加が予測されることを考慮すべきである。

【特許請求の範囲】
1. 正極要素、負極要素、およびそれらの間に配列されたセパレータ要素を備え、それぞれの前記要素は、柔軟で自立性ポリマーマトリックスフィルム組成物を備え、そしてそれぞれの前記要素は、それぞれの界面間で隣接する要素に結合して一体の柔軟な積層構造体を形成していることを特徴とする再充電可能な電池構造体。
2. 前記セパレータ要素フィルムが、最初はポリマー材料とその可塑剤20から70重量%とを含む組成物を含み、すくなくとも前記可塑剤の部分を取り除き、電池電解液で置き換えられていることを特徴とする請求項1に記載の再充電可能な電池構造体。
3. 前記セパレータ要素組成物が、8〜25重量%のヘキサフルオロプロピレンとビニリデンフルオライドのコポリマーを備えることを特徴とする請求項2に記載の再充電可能な電池構造体。
4. 前記セパレータ要素組成物が、ヒュームドアルミナおよびシラン化したヒュームドシリカから選択した無機充填剤を前記コポリマーに基づいて10〜30重量%備えたことを特徴とする請求項3に記載の再充電可能な電池構造体。
5. 前記正極要素組成物が、前記セパレータ要素ポリマー材料のマトリックスに均質に分布されたリチウム挿入化合物を備えたことを特徴とする請求項3に記載の再充電可能な電池構造体。
6. 前記負極要素組成物が、炭素挿入化合物または前記セパレータ要素ポリマー材料のマトリックスに均質に分布された低圧リチウム挿入化合物からなるグループから選択された化合物を備えることを特徴とする請求項5に記載の再充電可能な電池構造体。
7. 負極および正極との間にセパレータ要素を配置することを備える再充電可能な電池構造の製造方法であって、前記セパレータ要素は、最初はポリマー材料およびその20〜70%の可塑剤を備え、前記方法はさらに下記工程を備えることを特徴とする: a)前記セパレータ要素から前記可塑剤の少なくとも一部分を抽出し、 b)前記抽出された可塑剤を電解液で置き換える。
8. 順番に、正極集電体要素、正極要素、セパレータ要素、負極要素、および負極電流コレクター要素を配列する工程を備える再充電可能な電池構造の製造方法であって、 a)それぞれの前記集電体要素が、柔軟な導電性箔を備え、 b)それぞれの前記電極およびセパレータ要素が、柔軟で、自立性のポリマーマトリックスフィルム組成物を備え、そして c)前記方法が、さらに、熱および圧力を用いて、それぞれの界面間で隣接する要素に前記要素を結合させ、一体の積層構造を形成させる工程を備えたことを特徴とする方法。
9. a)前記集電体要素箔の少なくとも一つが、目の粗いメッシュグリッドを備え;
b)前記セパレータ要素組成物が、8〜25重量%のヘキサフルオロプロピレンとビニリデンフルオライドのコポリマーを備え、そしてそれに均質に分布された前記コポリマーの20〜70重量%の有機溶媒を有し;
c)前記正極要素組成物が、前記セパレータ要素ポリマー材料のマトリックスに均質に分布されたリチウム内位添加化合物を備え、 d)前記負極要素組成物を前記セパレータ要素ポリマー材料のマトリックスに均質に分布した炭素内位添加化合物を備え、かつ e)前記方法がさらに、少なくとも前記可塑剤の部分をリチウム電池電解液に置き換える工程を備えたことを特徴とする請求項8に記載の方法。
10.a)前記可塑剤の部分を、前記積層構造から抽出し;かつ b)前記抽出した積層構造を、前記抽出した構造に前記溶液の液浸をするのに十分な時間、前記電解液と接触させることを特徴とする請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表平9−500485
【公表日】平成9年(1997)1月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−515605
【出願日】平成6年(1994)11月2日
【国際出願番号】PCT/US94/12641
【国際公開番号】WO95/15589
【国際公開日】平成7年(1995)6月8日
【出願人】
【氏名又は名称】ベル コミュニケーションズ リサーチ,インコーポレイテッド