説明

需要予測装置、需要予測方法、及び需要予測プログラム

【課題】保守部品の需要値を高い精度で予測することができる、需要予測装置、需要予測方法、及び需要予測プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】需要予測装置1は、製品保有台数モデルを特徴づける減少率パラメータ、修理依頼率モデルを特徴づける修理依頼率パラメータ、および部品故障率を特徴づける部品故障率パラメータの最適値を決定するパラメータ推定部107と、決定した各パラメータの最適値によって規定された保守部品需要予測モデルを用いて保守部品の需要予測値を計算する保守部品需要予測値計算部109と、を備え、製品保有台数モデルおよび前記修理依頼率モデルは、指数関数として表され、部品故障率モデルは、ワイブル分布とガンマ分布との混合分布から求められる故障率関数として表されることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保守部品の需要予測装置、需要予測方法、及び需要予測プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
メーカは、製品の故障によるユーザからの修理要求に対応するために、製品の正常な動作を保証する保守を行う期間である保守期間を長期にわたり定める場合があり、保守期間内においては、製品の保守に用いられる部品(以下「保守部品」と呼ぶ)を自社又は部品メーカが製造し続ける必要がある。
【0003】
しかしながら、メーカは、年間の保守部品の出荷量が少ない等の理由で、保守期間の途中であっても保守部品の製造を打ち切り、又は部品メーカから保守部品の製造中止を打診される場合がある。その場合に、メーカは、保守部品の製造を打ち切り、又は部品メーカから保守部品の製造中止を打診されたタイミングで、残りの保守期間で必要になるであろう保守部品の需要数を予測し、予測した保守部品の需要数をまとめて製造又は発注する。
【0004】
保守期間内での保守部品の欠品の発生は、代替コストを発生させ、一方、保守期間終了時に抱える保守部品の過剰在庫は、破棄コストを発生させ、どちらの場合も企業の利益を減少させる。そのため、保守部品の製造打ち切り時又は製造中止の打診時に、保守部品の需要数を高い精度で予測し、適正数量をまとめて製造、発注するための技術が求められている。
【0005】
ここで、保守部品の需要数を予測する方法として、製品出荷開始時からの経過時間ごとに、市場での製品保有台数と、部品故障率とを求め、
部品需要数(t)=市場での製品保有台数(t)×部品故障率(t)
として部品需要数を計算する予測モデル(部品需要予測モデル)が知られている。ここで、tは経過時間である。
【0006】
保守部品製造打ち切り後の部品需要数の計算には、保守部品製造打ち切り前の実績データから推定した、市場での製品保有台数と部品故障率とを用いる。部品故障率の推定は、部品寿命がワイブル分布に従うものとして計算する(例えば、特許文献1参照)。
また、特許文献1の他に、部品の寿命がワイブル分布に従うものとして部品の故障率を推定し、部品需要数を計算している技術として、例えば特許文献2、特許文献3等がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2003−331087号公報(段落0002、段落0011)
【特許文献2】特開2007−323148号公報(段落0061〜段落0128)
【特許文献3】特開2006−323698号公報(段落0020)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、市場での製品保有台数と、部品故障率とから部品需要数を計算する特許文献1に記載される方法では、保守部品製造打ち切り後の部品需要数の予測精度が低い。そのため、保守期間内での欠品を生じ、または、保守期間経過後に在庫を残す原因となる。
【0009】
部品需要数の予測精度が低い原因として、以下の2点を考慮していないことが挙げられる。一つ目は、製品の故障で修理が必要になった場合に、ユーザが必ずメーカに修理依頼するとは限らないこと、言い換えれば、ユーザがメーカに修理を依頼する修理依頼率が考慮されていない点である。例えば、ユーザは、修理しないで新品に買い替える可能性があり、そのときには保守部品の需要は発生しないので、保守部品の需要予測に対し実際の需要実績は低くなる。そのため、保守部品の需要予測と実際の需要実績との間で誤差が生じ、結果として部品需要数の予測精度を低下させている。
【0010】
二つ目は、製品の利用環境の偏りが部品寿命に影響することが考慮されていない点である。例えば、同じ製品であっても、利用環境が厳しい製品(例.毎日10時間連続利用されるエアコン、砂利道を走行する自動車)と、利用環境が厳しくない製品(例.毎日3時間連続利用されるエアコン、舗装された道路を走行する自動車)とでは、製品を構成する部品の部品寿命に差が生じる。製品の利用環境の偏りを考慮していない従来手法では、部品の故障件数や出荷実績から推定した故障率が、実際の故障率を正しく反映していないものとなっており、結果として部品需要数の予測精度を低下させている。
【0011】
本発明は前記問題に鑑みてなされたものであり、保守部品の需要値を高い精度で予測することができる、需要予測装置、需要予測方法、及び需要予測プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明は、ユーザによる修理依頼率が、指数関数(例えば、後継製品の投入、製品保証期間の終了等の影響により、ある時点(変曲点)の前後で加速度をつけて減少するもの)で表されるとし、また、部品故障率が、製品の利用環境の違い(製品の利用環境の偏り)により、部品の平均寿命の決定に関わっているワイブル分布のパラメータθの値が部品ごとにばらついているものとして解釈し、そのパラメータθのばらつきがガンマ分布に従うものとして保守部品の需要予測値を算出する。
【0013】
例えば、本発明に係る需要予測装置は、出荷済みの製品の保守に用いられる保守部品の将来における出荷数の需要予測値を保守部品需要予測モデルを用いて計算する需要予測装置であって、過去の製品の出荷実績である製品出荷実績数を取得する製品出荷実績取得部と、過去の保守部品の出荷実績である保守部品出荷実績数を取得する保守部品出荷実績取得部と、前記製品の市場における製品保有台数を時間推移と共に示し、減少率パラメータにより特徴づけられる製品保有台数モデル、前記製品のユーザによる修理依頼率を時間推移と共に示し、修理依頼率パラメータにより特徴づけられる修理依頼率モデル、および前記製品を構成する部品の部品故障率を時間推移と共に示し、部品故障率パラメータにより特徴づけられる部品故障率モデルの合成関数であり、前記保守部品の出荷数を時間推移と共に示す前記保守部品需要予測モデルを利用して、所定期間の前記製品出荷実績数および前記保守部品出荷実績数に基づいて前記減少率パラメータ、前記修理依頼率パラメータ、および前記部品故障率パラメータを変更して複数パターンの保守部品の出荷数の需要予測値を算出し、前記算出した複数パターンの前記需要予測値と前記保守部品出荷実績数との誤差の二乗和が最小となるような前記減少率パラメータ、前記修理依頼率パラメータおよび前記部品故障率パラメータのそれぞれの最適値を決定するパラメータ推定部と、前記パラメータ推定部が決定した前記減少率パラメータ、前記修理依頼率パラメータおよび前記部品故障率パラメータのそれぞれの最適値によって規定された前記保守部品需要予測モデルを用いて、将来における保守部品の出荷数の需要予測値を計算する保守部品需要予測値計算部と、を備え、前記製品保有台数モデルおよび前記修理依頼率モデルは、指数関数として表され、前記部品故障率モデルは、ワイブル分布の平均寿命に関わる尺度パラメータにガンマ分布をさらに適用した、ワイブル分布とガンマ分布との混合分布から求められる故障率関数として表される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、保守部品の需要量(需要数)を高い精度で予測することができる。そのため、本発明で保守部品の生産打ち切り以降の需要量を予測することで、保守部品の生産打ち切り時に、予測に基づいた必要最低限の保守部品を生産することが可能になり、保守終了時の過剰在庫や保守期間途中での欠品を解消できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る需要予測装置の構成図である。
【図2】実施形態に係る需要予測装置の機能構成図である。
【図3】実施形態に係る需要予測装置が備える記憶部に記憶される製品出荷実績データのデータ構成図である。
【図4】実施形態に係る需要予測装置が備えるメモリに記憶されるメモリ上製品出荷実績データのデータ構成図である。
【図5】実施形態に係る需要予測装置が備える記憶部に記憶される保守部品出荷実績データのデータ構成図である。
【図6】実施形態に係る需要予測装置が備えるメモリに記憶されるメモリ上保守部品出荷実績データのデータ構成図である。
【図7】実施形態に係る需要予測装置が備える記憶部に記憶される予測期間データのデータ構成図である。
【図8】実施形態に係る需要予測装置が備えるメモリに記憶されるメモリ上予測期間データのデータ構成図である。
【図9】パラメータθがガンマ分布に従う場合の部品Pのヒストグラムの一例を示す図である。
【図10】遺伝的アルゴリズムを用いて各パラメータの最適値を探索する場合のフローチャート例である。
【図11】実施形態に係る需要予測装置が備えるメモリに記憶されるメモリ上予測モデルパラメータデータのデータ構成図である。
【図12】実施形態に係る需要予測装置が備えるメモリに記憶されるメモリ上需要予測値データのデータ構成図である。
【図13】実施形態に係る需要予測装置が備える記憶部に記憶される需要予測値データのデータ構成図である。
【図14】実施形態に係る需要予測装置が備える表示部に表示される需要予測値計算前の表示画面の一例である。
【図15】実施形態に係る需要予測装置が備える表示部に表示される需要予測値計算後の表示画面の一例である。
【図16】実施形態に係る需要予測装置による需要予測値の計算動作を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
≪実施形態に係る需要予測装置の構成≫
<概要>
図1は、実施形態に係る需要予測装置1の構成図である。
図1に示す、実施形態に係る需要予測装置1は、製品の過去の出荷実績が記憶される製品出荷実績データ21及び保守部品の過去の出荷実績が記憶される保守部品出荷実績データ22に基づいて、現在以降の保守部品の需要予測値を計算し、計算した需要予測値を表示部5に表示すると共に、需要予測値データ24として出力する。
【0017】
<需要予測装置>
需要予測装置1は、記憶部2、制御部3、入力部4、及び表示部5を備えて構成される。本実施形態では、需要予測装置1の一例として、PC(Personal Computer)を用いる例を説明するが、これに限定されるものではない。需要予測装置1には、PC以外にも、例えばサーバ、ホストコンピュータ、PDA(Personal Digital Assistant)等を用いることができる。以下、需要予測装置1を構成する装置について説明する。
【0018】
<記憶部>
記憶部2は、HDD(Hard Disk Drive)で構成される。記憶部2には、保守部品の需要予測を計算するプログラムである需要予測プログラム10、需要予測装置1のコンピュータシステムを管理し、基本的なユーザ操作環境を提供するソフトウェアであるOS(Operating System)20が記憶される。また、製品の過去の出荷実績である製品出荷実績データ21、保守部品の過去の出荷実績である保守部品出荷実績データ22、需要予測値を計算する期間である予測期間データ23、及び計算した需要予測値である需要予測値データ24が記憶される。
【0019】
なお、各データ21〜24は、記憶部2に常に記憶されている必要はなく、例えばCD(Compact Disc)、FD(Flexible Disc)、磁気テープ、USBメモリ等の記憶媒体、又は需要予測装置1と図示しないネットワークで接続されている他の装置に記憶され、必要に応じて記憶部2に読み込むようにしてもよい。
【0020】
<制御部>
制御部3は、CPU(Central Processing Unit)100、メモリ30、及びこれらの周辺回路等(図示せず)から構成される。制御部3は、記憶部2に記憶される需要予測プログラム10を実行することで様々な機能を実現する。詳細は後記する。
【0021】
<入力部、表示部>
入力部4は、需要予測装置1のユーザ(操作者)が情報を入力する際に使われる装置であり、例えば、キーボード、マウス等で構成される。入力された情報は、OS20を介して制御部3に渡される。
表示部5は、需要予測装置1のユーザ(操作者)に情報を表示する際に使われる装置であり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイ等で構成される。表示される情報は、制御部3からOS20を介して表示部5に渡される。
【0022】
≪実施形態に係る需要予測装置1の機能、及びデータ構成≫
図2は、実施形態に係る需要予測装置1の機能構成図である。図2は、需要予測プログラム10(図1参照)が、CPU100に読み込まれ、実行可能に展開されたときの様子を表している。図1で説明したものについては、同一符号を付して説明を省略する。
CPU100は、製品出荷実績入力部101、製品出荷実績格納部102、保守部品出荷実績入力部103、保守部品出荷実績格納部104、予測期間入力部105、予測期間格納部106、予測モデルパラメータ推定部107、予測モデルパラメータ格納部108、保守部品需要予測値計算部109、保守部品需要予測値格納部110、保守部品需要予測値出力部111、及び表示画面制御部112を備える。
【0023】
また、メモリ30には、需要予測値の計算で用いる、メモリ上製品出荷実績データ31、メモリ上保守部品出荷実績データ32、メモリ上予測期間データ33、メモリ上需要予測値データ34、及びメモリ上予測モデルパラメータデータ35が領域として確保される。
以下、CPU100が備える機能を、製品A及び製品Bに使用されている部品Pの保守部品としての部品出荷量を予測する場合を例にとり説明する。なお、製品Aの出荷開始年は2000年、製品Bの出荷開始年は2001年、製品A及び製品Bの保守期間終了年は2014年とする。また、保証部品としての部品Pの生産終了年を2004年とする。
【0024】
(製品出荷実績入力部)
製品出荷実績入力部101は、記憶部2に記憶される製品出荷実績データ21を読み込み、読み込んだ製品出荷実績データ21を製品出荷実績格納部102及び表示画面制御部112に渡す。図3は、製品出荷実績データ21のデータ構成図である。図3に示す、製品出荷実績データ21は、例えば図示しない他のシステムを用いて事前に作成される。図3の例では、製品Aは2000年に出荷が開始され、2年分の出荷実績が記録されている。製品Bは、2001年に出荷が開始され、1年分の出荷実績が記憶されている。
なお、図3に図示してないが、製品出荷実績データ21に製品名等の製品に関する情報を項目として備える構成としてもよい。
【0025】
製品出荷年211には、製品が出荷された年が西暦で設定される。製品コード212には、製品を一意に識別するコードが設定される。製品出荷量213には、製品出荷年211に対応する製品の出荷実績数が設定される。
【0026】
(製品出荷実績格納部)
製品出荷実績格納部102は、製品出荷実績入力部101から渡された製品出荷実績データ21を、時間情報の形式が異なるメモリ上製品出荷実績データ31に変更して、メモリ30に格納する。図4は、メモリ上製品出荷実績データ31のデータ構成図である。
【0027】
アドレス310には、メモリ30における各レコードの開始アドレスが設定される。経過年311には、保守部品が使用される製品のうち、最も早く出荷が開始された製品の出荷開始年からの経過年数が設定される。本例では、製品Bの出荷開始時(2001年)に対して製品Aの出荷開始時(2000年)の方が早いので、2000年からの経過年数が設定される。製品コード312及び製品出荷量313には、製品出荷実績データ21の製品コード212及び製品出荷量213と同様のデータが設定される。
【0028】
(保守部品出荷実績入力部)
保守部品出荷実績入力部103は、記憶部2に記憶される保守部品出荷実績データ22を読み込み、読み込んだ保守部品出荷実績データ22を保守部品出荷実績格納部104及び表示画面制御部112に渡す。図5は、保守部品出荷実績データ22のデータ構成図である。図5に示す、保守部品出荷実績データ22は、例えば図示しない他のシステムを用いて事前に作成される。図5の例では、製品A又は製品Bの故障により、保守部品として出荷した部品Pの出荷実績であり、部品Pは、2000年から出荷が開始され、2004年までの5年分の出荷実績が記憶されている。
【0029】
なお、図5に図示してないが、部品Pが製品A及び製品Bに使用されていることを表す項目(例えば部品コードと製品コードを対応付ける項目)を参照して、製品出荷実績データ21と保守部品出荷実績データ22との対応付けを行うものとする。前記対応付けは、図3に示す製品出荷実績データ21が項目として備えていてもよいし、別途新たにデータを作成してもよい。
また、図5に図示してないが、保守部品出荷実績データ22に部品名等の部品に関する情報を項目として備える構成としてもよい。
【0030】
保守部品出荷年221には、保守部品が出荷された年が西暦で設定される。部品コード222には、部品を一意に識別するコードが設定される。部品出荷量223には、保守部品出荷年221に対応する保守部品の出荷実績数が設定される。本例では、部品Pは製品A及び製品Bに使用されているので、製品Aの保守部品として出荷された部品Pの出荷数と、製品Bの保守部品として出荷された部品Pの出荷数との合計値が設定される。
【0031】
(保守部品出荷実績格納部)
保守部品出荷実績格納部104は、保守部品出荷実績入力部103から渡された保守部品出荷実績データ22を、時間情報の形式が異なるメモリ上保守部品出荷実績データ32に変更して、メモリ30に格納する。図6は、メモリ上保守部品出荷実績データ32のデータ構成図である。
【0032】
アドレス320には、メモリ30における各レコードの開始アドレスが設定される。経過年321には、保守部品が使用される製品のうち、最も早く出荷が開始された製品の出荷開始年からの経過年数が設定される。本例では、製品Bの出荷開始時(2001年)に対して製品Aの出荷開始時(2000年)の方が早いので、2000年からの経過年数が設定される。部品コード322及び部品出荷量323には、保守部品出荷実績データ22の部品コード222及び部品出荷量223と同様のデータが設定される。
【0033】
(予測期間入力部)
予測期間入力部105は、記憶部2に記憶される予測期間データ23を読み込み、読み込んだ予測期間データ23を予測期間格納部106に渡す。図7は、予測期間データ23のデータ構成図である。図7に示す、予測期間データ23は、例えば図示しない他のシステムを用いて事前に作成されるか、事前にユーザにより作成される。図7の例では、2004年終了時点で保守部品としての部品Pの生産が終了することになり、予測を開始する予測開始年(2005年)及び保守終了年(2014年)の情報が記憶されている。
【0034】
予測開始年231には、需要予測する期間の開始年が設定される。予測終了年232には、需要予測する期間の終了年が設定される。
なお、予測期間に関する情報は、記憶部2に予測期間データ23として記憶しておく構成の他に、表示画面51を介してユーザに直接入力される構成にしてもよい。
【0035】
(予測期間格納部)
予測期間格納部106は、予測期間入力部105から渡された予測期間データ23を、時間情報の形式が異なるメモリ上予測期間データ33に変更して、メモリ30に格納する。図8は、メモリ上予測期間データ33のデータ構成図である。
【0036】
アドレス331には、メモリ30における各レコードの開始アドレスが設定される。経過年332には、保守部品が使用される製品のうち、最も早く出荷が開始された製品の出荷開始年から予測開始年231、又は予測終了年232までの経過年数が設定される。本例では、製品Bの出荷開始時(2001年)に対して製品Aの出荷開始時(2000年)の方が早いので、2000年からの経過年数が設定される。本例では、アドレス331が「S6」のレコードの経過年332には、製品Aの出荷年「2000年」から予測開始年「2005年」までの経過年数である「5」が設定され、アドレス331が「S15」のレコードの経過年332には、製品Aの出荷年「2000年」から予測終了年「2014年」までの経過年数である「14」が設定される。
【0037】
(予測モデルパラメータ推定部)
予測モデルパラメータ推定部107は、製品保有台数モデル、修理依頼率モデル、及び部品故障率モデルの合成関数で表される保守部品需要予測モデルを用いて、パラメータの最適値を決定する。
具体的には、予測モデルパラメータ推定部107は、製品出荷実績格納部102、及び保守部品出荷実績格納部104を介して、メモリ30に記憶されるメモリ上製品出荷実績データ31、及びメモリ上保守部品出荷実績データ32を取得し、保守部品需要予測モデルを用いて取得したデータに基づいて、パラメータの最適値を決定する。
以下では、各モデルの説明を行った後に、パラメータの最適値の決定方法について説明する。
【0038】
[製品保有台数モデル]
製品出荷年t0からの経過年t=0,1,2,…に対応する市場での製品保有台数H(t)を、次の式1とする。ただし、H(t0)は製品出荷年t0の製品出荷数(複数製品が出荷していればその総数)、dは減少率パラメータである。
【0039】
【数1】

【0040】
製品保有台数H(t)を式1のように表したのは、時間経過に伴う製品保有台数H(t)が、製品寿命に従い、製品寿命が、故障率が一定値を保つような形の分布に従うという仮定に基づく。本実施形態では、このような時間変化に伴う製品保有台数の変化を表現する1つの製品保有台数モデルとして式1を示したに過ぎず、仮定した製品保有台数を表す関数であれば、これに限定されない。
【0041】
[修理依頼率モデル]
製品出荷年t0からの経過年t=0,1,2,…に対応するユーザの修理依頼率U(t)を、次の式2とする。ただし、U(t0)=1(製品出荷年t0の修理依頼率は100%)、uは修理依頼率パラメータである。
【0042】
【数2】

【0043】
修理依頼率U(t)を式2のように表したのは、修理依頼率U(t)が時間経過とともに最初緩やかに減少し、ある時点(変曲点)の前後で加速度をつけて減少し、その後は再び緩やかに減少するという仮定に基づく。ある時点(変曲点)には、後継製品の投入や製品保証期間の終了などで、メーカへの修理依頼が大きく減るタイミングが当てはまると考えられる。本実施形態では、このような時間変化に伴う修理依頼率の変化を表現する1つの修理依頼率モデルとして式2を示したに過ぎず、仮定した修理依頼率を表す関数であれば、これに限定されない。
【0044】
[部品故障率モデル]
製品出荷年t0からの経過年t=0,1,2,…に対応する製品の利用環境の偏りを考慮した部品故障率関数λ(t)を、次の式3とする。部品故障率関数λ(t)は、部品(部品が使用されている製品)の使用を開始してから時間tが経過した時に、その時点で故障していない部品が、単位時間当たりに故障する確率である。a,r,mは部品故障率パラメータである。
【0045】
【数3】

【0046】
式3の部品故障率関数λ(t)は、製品利用環境の偏りを反映するために部品寿命が従うワイブル分布にガンマ分布を混合した混合分布F(t)である次の式7を用いて、式8として計算される。
【0047】
【数4】

【0048】
【数5】

【0049】
以下では、部品故障率関数λ(t)を、式7を用いて式3のように表した理由を説明する。
一般的なワイブル分布の分布関数の式は、次の式9のように記述される。パラメータηを特性寿命と呼び、ワイブル分布に従う部品の平均寿命(故障するまでの平均時間)にはパラメータηが関わってくる。パラメータmは形状変数と呼ばれ、ワイブル分布の形状を決めている。
【0050】
【数6】

【0051】
ここで、(1/η)m=θとおくと式9は、式10と変形できる。パラメータθも部品の平均寿命に関わるパラメータとなる。
【0052】
【数7】

【0053】
ここで、製品Aには部品Pが1つ組み込まれているとし、部品Pの故障確率は式10に示すワイブル分布に従うものとする。ある年に製品Aを100個出荷したとすると、100個の製品Aはそれぞれ利用環境(使用時間や使用頻度、使用時の周辺環境(温度、湿度、ほこりの量等))が異なる。そのため、100個の部品Pの平均寿命も製品の利用環境に応じてそれぞれ異なると考えられる。一般的には、製品利用環境が厳しい場合の部品Pの平均寿命は、そうでない部品Pの平均寿命よりも短くなる。
【0054】
このように製品の利用環境により部品の寿命には「個体差」が生じるが、このような部品ごとの寿命の個体差は、部品の平均寿命の決定に関わっているパラメータθの値が部品ごとにばらついているものとして解釈できる。パラメータθのばらつきは、パラメータθがある確率分布に従うものと仮定して、数学的に扱うことができる。本実施形態では、多くの部品がパラメータθの平均値周辺で似たような製品利用環境下にあり、少数の部品が利用環境のより厳しい方(パラメータθの大きい方)に分布するロングテール形を想定した予測ができるように、パラメータθがガンマ分布に従うと仮定する。例えば、100個の部品Pに関して、製品Aの利用環境の違いによるパラメータθのバラツキは、図9のようなヒストグラムで表される。
【0055】
パラメータθがγ分布に従うと仮定すると、部品の個体差(製品の利用環境の偏り)を考慮した故障確率分布の分布関数F(t)は、次の式11のようなワイブル分布とガンマ分布との混合分布として記述される。式12は、一般的なガンマ分布の分布関数の式である。
【0056】
【数8】

【0057】
【数9】

【0058】
このようなパラメータθのばらつきの様子は、ガンマ分布であるg(θ)のパラメータaとrの値によって決めることができる。適切なパラメータaとrの値を設定したg(θ)を用いて式11の中で0から∞まで積分することで、パラメータθにばらつきのある部品(利用条件の緩い環境から厳しい環境まですべての条件下にある部品)について、ワイブル分布の故障確率を計算できる。
【0059】
実際に保守部品の需要予測値を計算する際には、製品利用環境のデータは無いため、パラメータθがどのように分布しているかは分からない。そこで、ガンマ分布に従うばらつきをたくさん検証し、予測時点までの部品出荷実績と式11をもとに計算した需要予測値とが最も適合するという意味で「適切なばらつき」を1つ決定して需要予測値の計算に用いる。
【0060】
[保守部品需要予測モデル]

計算する。つまり、保守部品需要量=製品保有台数×修理依頼率×部品故障率である。
【0061】
【数10】

【0062】
ただし、部品故障率A(t)は、次の式5として求め、経過年tまでに1回故障からt回故障まで複数回故障する確率を足し合わせたものとする。部品が各経過年で故障する回数は多くても1回とみなしているため、経過年tまでに最大でt回故障すると仮定している。また、部品は故障発生後すぐに修正され、故障した経過年と同じ経過年から再び使用される。
【0063】
【数11】

【0064】
次に、複数の時点t0〜tnにわたって製品出荷実績がある場合に、最早の製品出荷時点t0からの経過年tに対応する保守部品の需要予測値D(t)を次の式6で計算する。式6が、保守部品の保守部品需要予測モデルである。
【0065】
【数12】

【0066】
式6を、本実施形態の図3に示す製品A及び製品Bを使って表すと、製品出荷年t0は製品Aが2000年と2001年の2年間、製品Bが2001年の1年間であるため、最終的に部品Pを使用する最早の製品出荷開始年(2000年)からの経過年tにおける保守部品需要量D(t)は、次の式13となる。
【0067】
【数13】

【0068】
[パラメータの最適値の決定方法]
予測モデルパラメータ推定部107は、メモリ30上に格納されたメモリ上製品出荷実績データ31、及びメモリ上保守部品出荷実績データ32から、製品出荷年からの経過年に対応する市場での製品保有台数の減少率パラメータd、ユーザの修理依頼率パラメータu、製品の利用環境の偏りを考慮した部品故障率パラメータa,r,mの各パラメータ値を変更して複数パターンの保守部品の出荷数の需要予測値を算出し、算出した複数パターンの需要予測値とメモリ30上に格納されたメモリ上保守部品出荷実績データ32の部品出荷量323との誤差の二乗和が最小となる最適な各パラメータ値を探索する。探索には、例えば遺伝的アルゴリズム、準Newton法等を用いる。
【0069】
図10は、予測モデルパラメータ推定部107が遺伝的アルゴリズムを用いて各パラメータの最適値を探索する場合のフローチャート例である。
最初に、予測モデルパラメータ推定部107は、パラメータ初期値の組の集団を生成する(ステップS110)。次に、予測モデルパラメータ推定部107は、個々の組のパラメータ値で保守部品の出荷数の需要予測値を計算し、保守部品の実際の出荷量(実績値)との誤差の二乗和を評価する(ステップS120)。次に、予測モデルパラメータ推定部107は、パラメータ値の組の生成が、世代数の上限に到達したか否かを判定する(ステップS130)。世代数の上限に到達していない場合に(ステップS130“No”)処理はステップS140に進み、世代数の上限に到達している場合に(ステップS130“Yes”)処理はステップS150に進む。
【0070】
ステップS130“No”と判定された場合に、予測モデルパラメータ推定部107は、評価が優秀な組の選択、及び交差若しくは突然変異の操作により新たなパラメータ値の組を生成する(ステップS140)。その後、処理はステップS120に戻る。
一方、ステップS130“Yes”と判定された場合に、予測モデルパラメータ推定部107は、評価値が最良のパラメータ値の組を取得する(ステップS150)。これで、最適な各パラメータ値の探索は終了する。
【0071】
図2に戻り、予測モデルパラメータ推定部107は、推定した保守部品需要予測モデルの最適な各パラメータ値を、予測モデルパラメータ格納部108に渡す。
【0072】
(予測モデルパラメータ格納部)
予測モデルパラメータ格納部108は、予測モデルパラメータ推定部107から渡された各パラメータ値を、メモリ上予測モデルパラメータデータ35としてメモリ30に格納する。図11は、メモリ上予測モデルパラメータデータ35のデータ構成図である。
パラメータ種類351には、保守部品需要予測モデルで用いられる各パラメータの種類が記憶される。パラメータ種類が「d」は減少率パラメータ、「u」は修理依頼率パラメータ、「a,r,m」は部品故障率パラメータを表す。
パラメータ値352には、保守部品需要予測モデルで用いられる各パラメータの最適なパラメータ値が記憶される。
【0073】
(保守部品需要予測値計算部)
保守部品需要予測値計算部109は、予測モデルパラメータ格納部108、及び予測期間格納部106を介して、メモリ30に記憶されるメモリ上予測モデルパラメータデータ35、及びメモリ上予測期間データ33を取得する。そして、保守部品需要予測値計算部109は、取得したメモリ上予測モデルパラメータデータ35のパラメータ値352に設定されるパラメータの最適値を用いて、取得したメモリ上予測期間データ33の経過年332に設定される予測開始年(アドレス331が「S6」)から予測終了年(アドレス331が「S15」)までの間の、製品保有台数H(t)、修理依頼率U(t)、及び部品故障率A(t)を式1、式2、及び式5を用いてそれぞれ求め、さらに式4及び式6を用いて需要予測値D(t)を計算する。
そして、保守部品需要予測値計算部109は、計算した経過年に対する保守部品の需要予測値を保守部品需要予測値格納部110に渡す。
【0074】
(保守部品需要予測値格納部110)
保守部品需要予測値格納部110は、保守部品需要予測値計算部109から渡された経過年に対する保守部品の需要予測値を、メモリ上需要予測値データ34としてメモリ30に格納する。図12は、メモリ上需要予測値データ34のデータ構成図である。
【0075】
アドレス340には、メモリ30における各レコードの開始アドレスが設定される。経過年341には、保守部品が使用される製品のうち、最も早く出荷が開始された製品の出荷開始年からの経過年が設定される。部品コード342には、部品を一意に識別するコードが設定される。保守部品需要予測値343には、経過年341に対応する保守部品の出荷数の需要予測値が設定される。本例では、部品Pは製品A及び製品Bに使用されているので、製品Aの保守部品として出荷される部品Pの出荷数の需要予測値と、製品Bの保守部品として出荷される部品Pの出荷数の需要予測値との合計値が設定される。
【0076】
(保守部品需要予測値出力部)
保守部品需要予測値出力部111は、保守部品需要予測値格納部110から渡されたメモリ上需要予測値データ34を、時間情報の形式が異なる需要予測値データ24に変更して、記憶部2に格納する。図13は、需要予測値データ24のデータ構成図である。
保守部品出荷予測年241には、保守部品の需要予測を行った年が西暦で設定される。部品コード242及び保守部品需要予測値243には、メモリ上需要予測値データ34の部品コード342及び保守部品需要予測値343と同様のデータが設定される。
【0077】
(表示画面制御部)
表示画面制御部112は、製品出荷実績入力部101及び保守部品出荷実績入力部103から渡される製品出荷実績データ21及び保守部品出荷実績データ22を用いて、需要予測値計算前の表示画面51Aを表示部5に表示する。図14は、需要予測値計算前の表示画面の一例である。
さらに、表示画面制御部112は、保守部品需要予測値出力部111から渡される需要予測値データ24を用いて、需要予測値計算後の表示画面51Bを表示部5に表示する。図15は、需要予測値計算後の表示画面の一例である。以下では、需要予測値計算前の表示画面51Aと需要予測値計算後の表示画面51Bをまとめて単に表示画面51と呼ぶときがある。
【0078】
図14及び図15を参照して、表示画面51は、需要予測対象部品表示欄511、需要予測対象製品表示欄512、需要予測実行ボタン513、グラフ表示欄514を備えて構成される。
需要予測対象部品表示欄511には、需要予測対象の部品に関する情報が表示される。また、表示された需要予測対象の部品の中からユーザが需要予測の計算を行う部品を選択するためのチェックボックスもあわせて表示される。需要予測対象製品表示欄512には、需要予測対象の部品が使用されている製品に関する情報が表示される。需要予測実行ボタン513は、押下されることで需要予測の計算が開始される。グラフ表示欄514には、製品出荷量を表す棒グラフ515、保守部品出荷量を表すポイントが三角で表示された折れ線グラフ516、保守部品の需要予測値を表すポイントが丸で表示された折れ線グラフ517が表示される。
以上で、実施形態に係る需要予測装置1の機能、及びデータ構成の説明を終了する。
【0079】
≪実施形態に係る需要予測装置1による需要予測値の計算動作≫
図16は、実施形態に係る需要予測装置による需要予測値の計算動作を表すフローチャートである。以下、図2、図14、図15及び図16を参照して、需要予測装置1による需要予測値の計算動作を説明する。
【0080】
最初に、需要予測装置1のユーザが、需要予測プログラム10(図1参照)を起動する(ステップS010)。需要予測プログラム10が起動されると、製品出荷実績入力部101は、記憶部2に記憶される製品出荷実績データ21を読み込み、保守部品出荷実績入力部103は、記憶部2に記憶される保守部品出荷実績データ22を読み込み、予測期間入力部105は、記憶部2に記憶される予測期間データ23を読み込む(ステップS020)。
読み込まれた各データは、製品出荷実績格納部102、保守部品出荷実績格納部104、又は予測期間格納部106を介して、メモリ30に格納される。また、表示画面制御部112は、読み込まれた保守部品出荷実績データ22内の部品コード312等の部品に関する情報を、図14に示す表示画面51Aの需要予測対象部品表示欄511に表示する。
【0081】
次に、需要予測対象部品表示欄511に表示される需要予測対象部品の中から、ユーザにより需要予測を計算する部品が選択される(ステップS030)。部品が選択されると、表示画面制御部112は、読み込まれた製品出荷実績データ21内の製品コード212等の選択された部品が使用される製品についての情報を、需要予測対象製品表示欄512に表示する。また、表示画面制御部112は、製品出荷実績データ21を用いて製品出荷量をグラフ表示欄514に棒グラフ515として表示する。また、表示画面制御部112は、保守部品出荷実績データ22を用いて保守部品出荷量をグラフ表示欄514に折れ線グラフ516として表示する。
【0082】
次に、需要予測を行う部品が選択された状態で、予測実行ボタン513がユーザにより押下される(ステップS040)。予測実行ボタン513が押下されると、予測モデルパラメータ推定部107は、メモリ30に格納されたメモリ上製品出荷実績データ31及びメモリ上保守部品出荷実績データ32を用いて、選択された予測対象部品における保守部品需要予測モデルのパラメータの最適値を決定する。パラメータの最適値の決定には、例えば、図10に示す遺伝的アルゴリズムが用いられる。
【0083】
また、保守部品需要予測値計算部109は、予測モデルパラメータ推定部107により決定された保守部品需要予測モデルのパラメータの最適値、及びステップS020で読み込まれメモリ30に格納されるメモリ上予測期間データ33を用いて、選択された予測対象部品における予測期間内の需要予測値を計算する。計算された需要予測値は、保守部品需要予測値格納部110を介して、メモリ30に格納される。
【0084】
次に、表示画面制御部112は、保守部品需要予測値出力部111から選択された予測対象部品における需要予測値データ24を受け取り、計算された需要予測値を、図15に示す表示画面51Bのグラフ表示欄514に折れ線グラフ517として表示する。そして、ユーザがさらに需要予測値を計算したい部品があれば、需要予測対象部品表示欄511に表示される予測対象部品の中から、ユーザにより新たな部品が選択され(ステップS030)、新たに選択された部品の需要予測値が計算され(ステップS040)、結果が表示画面51Bに表示される(ステップS050)。以後、需要予測値を計算したい部品が無くなるまで、ステップS030〜ステップS050が繰り返される。なお、複数部品を一度に選択して、同時に需要予測値を計算するようにしてもよい。
【0085】
次に、保守部品需要予測値出力部111は、メモリ30に格納されているメモリ上需要予測値データ34(予測結果)を、記憶部2に需要予測値データ24として格納する(ステップS060)。最後に、需要予測装置1のユーザが、需要予測プログラム10を終了する(ステップS070)。
以上で、実施形態に係る需要予測装置1による需要予測値の計算動作の説明を終了する。
【0086】
このように、実施形態に係る需要予測装置1、及び需要予測プログラム10は、保守部品の需要を高い精度で予測することができる。よって、実施形態に係る需要予測装置1、及び需要予測プログラム10によれば、保守部品の生産打ち切り以降の需要を予測することで、予測値に基づいて必要量の保守部品を生産することが可能になり、保守終了時の過剰在庫や保守期間途中での欠品を解消できる。
【符号の説明】
【0087】
1 需要予測装置
2 記憶部
3 制御部
4 入力部
5 表示部
10 需要予測プログラム
20 OS
21 製品出荷実績データ
22 保守部品出荷実績データ
23 予測期間データ
24 需要予測値データ
30 メモリ
51 表示画面
100 CPU
101 製品出荷実績入力部(製品出荷実績取得部)
103 保守部品出荷実績入力部(保守部品出荷実績取得部)
105 予測期間入力部
107 予測モデルパラメータ推定部(パラメータ推定部)
109 保守部品需要予測値計算部
111 保守部品需要予測値出力部
112 表示画面制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
出荷済みの製品の保守に用いられる保守部品の将来における出荷数の需要予測値を保守部品需要予測モデルを用いて計算する需要予測装置であって、
過去の製品の出荷実績である製品出荷実績数を取得する製品出荷実績取得部と、
過去の保守部品の出荷実績である保守部品出荷実績数を取得する保守部品出荷実績取得部と、
前記製品の市場における製品保有台数を時間推移と共に示し、減少率パラメータにより特徴づけられる製品保有台数モデル、前記製品のユーザによる修理依頼率を時間推移と共に示し、修理依頼率パラメータにより特徴づけられる修理依頼率モデル、および前記製品を構成する部品の部品故障率を時間推移と共に示し、部品故障率パラメータにより特徴づけられる部品故障率モデルの合成関数であり、前記保守部品の出荷数を時間推移と共に示す前記保守部品需要予測モデルを利用して、所定期間の前記製品出荷実績数および前記保守部品出荷実績数に基づいて前記減少率パラメータ、前記修理依頼率パラメータ、および前記部品故障率パラメータを変更して複数パターンの保守部品の出荷数の需要予測値を算出し、前記算出した複数パターンの前記需要予測値と前記保守部品出荷実績数との誤差の二乗和が最小となるような前記減少率パラメータ、前記修理依頼率パラメータおよび前記部品故障率パラメータのそれぞれの最適値を決定するパラメータ推定部と、
前記パラメータ推定部が決定した前記減少率パラメータ、前記修理依頼率パラメータおよび前記部品故障率パラメータのそれぞれの最適値によって規定された前記保守部品需要予測モデルを用いて、将来における保守部品の出荷数の需要予測値を計算する保守部品需要予測値計算部と、を備え、
前記製品保有台数モデルおよび前記修理依頼率モデルは、指数関数として表され、
前記部品故障率モデルは、ワイブル分布の平均寿命に関わる尺度パラメータにガンマ分布をさらに適用した、ワイブル分布とガンマ分布との混合分布から求められる故障率関数として表される、
ことを特徴とする需要予測装置。
【請求項2】
前記製品保有台数モデルは、
H(t0)を製品出荷時点t0の出荷量とし、dを減少率パラメータとし、製品出荷時点t0からの経過時間tに対応する市場での製品保有台数H(t)を式1で表し、
【数1】

前記修理依頼率モデルは、
U(t0)を1とし、uを修理依頼率パラメータとし、製品出荷時点t0からの経過時間tに対応する修理依頼率U(t)を式2で表し、
【数2】

前記部品故障率モデルは、
a,r,mを部品故障率パラメータとし、製品出荷時点t0からの経過時間tに対応する故障率関数λ(t)を式3で表す、
【数3】

ことを特徴とする請求項1に記載の需要予測装置。
【請求項3】
前記保守部品需要予測モデルは、

保有台数H(t)、修理依頼率U(t)、部品故障率A(t)を用いて式4で表し、
【数4】

式4の部品故障率A(t)を、式5で表し、
【数5】

複数の時点t0〜tnにわたって製品出荷実績がある場合に、最早の製品出荷時点t0からの経過時間tに対応する保守部品の需要予測値D(t)を式6で表す、
【数6】

ことを特徴とする請求項2に記載の需要予測装置。
【請求項4】
前記パラメータ推定部は、遺伝的アルゴリズムを用いて前記減少率パラメータ、前記修理依頼率パラメータおよび前記部品故障率パラメータのそれぞれの最適値を決定する、
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れか1項に記載の需要予測装置。
【請求項5】
出荷済みの製品の保守に用いられる保守部品の将来における出荷数の需要予測値を保守部品需要予測モデルを用いて計算する需要予測装置に用いられる需要予測方法であって、
前記需要予測装置は、
過去の製品の出荷実績である製品出荷実績数を取得し、
過去の保守部品の出荷実績である保守部品出荷実績数を取得し、
前記製品の市場における製品保有台数を時間推移と共に示し、減少率パラメータにより特徴づけられる製品保有台数モデル、前記製品のユーザによる修理依頼率を時間推移と共に示し、修理依頼率パラメータにより特徴づけられる修理依頼率モデル、および前記製品を構成する部品の部品故障率を時間推移と共に示し、部品故障率パラメータにより特徴づけられる部品故障率モデルの合成関数であり、前記保守部品の出荷数を時間推移と共に示す前記保守部品需要予測モデルを利用して、所定期間の前記製品出荷実績数および前記保守部品出荷実績数に基づいて前記減少率パラメータ、前記修理依頼率パラメータ、および前記部品故障率パラメータを変更して複数パターンの保守部品の出荷数の需要予測値を算出し、前記算出した複数パターンの前記需要予測値と前記保守部品出荷実績数との誤差の二乗和が最小となるような前記減少率パラメータ、前記修理依頼率パラメータおよび前記部品故障率パラメータのそれぞれの最適値を決定し、
決定した前記減少率パラメータ、前記修理依頼率パラメータおよび前記部品故障率パラメータのそれぞれの最適値によって規定された前記保守部品需要予測モデルを用いて、将来における保守部品の出荷数の需要予測値を計算し、
前記製品保有台数モデルおよび前記修理依頼率モデルは、指数関数として表され、
前記部品故障率モデルは、ワイブル分布の平均寿命に関わる尺度パラメータにガンマ分布をさらに適用した、ワイブル分布とガンマ分布との混合分布から求められる故障率関数として表される、
ことを特徴とする需要予測方法。
【請求項6】
請求項5に記載の需要予測方法を、前記需要予測装置に実行させるための需要予測プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2011−232950(P2011−232950A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102529(P2010−102529)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【出願人】(000233538)株式会社 日立東日本ソリューションズ (53)