説明

静止体と移動式什器との連結装置

【課題】簡単な構成で移動式のワゴン1を前後方向に移動不能にでき、製造コストも極めて低減させる連結装置を提供する。
【解決手段】ワゴンの背面側と机の被連結部材5とに対して着脱自在な連結部材13であり、被連結部材5の下板から上向きに形成された第1被装着部16が設けられ、連結部材13の前後両端には、第1被装着部16に対して着脱自在な第1係止部20と、ワゴンの本体背面板10aに設けられた第2被装着部18に着脱自在に係止する第2係止部21とが備えられ、連結部材13が取付けられたワゴン1の背面を被連結部材5に近づける時、第1係止部20が第1被装着部16上を乗り越えて係止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静止体と移動式什器との連結装置に係り、より詳しくは、地震などの際に、移動式什器が静止体から離れ、転倒しないようにするための連結装置の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、地震発生時などの際に、移動式什器の一例であるワゴンが、固定式の作業台や間仕切パネルから不用意に離れて飛び出したりもしくは転倒しないようにするための装置として、特許文献1や特許文献2等が知られている。
【0003】
特許文献1の構成では、ワゴン本体の下部に、作業台格納空間内の掛止部に係合すべき掛合凹所と該掛合凹所と掛止部に当接される手前下向きの傾斜縁を奥端部に形成し、手前側部分を操作部となした掛合部材を支持軸による枢支点より奥部を重量大となして枢支してなる構成である。
【0004】
他方、特許文献2では、両側の少なくとも前面に臨む位置に複数の係止孔を上下方向に設けてなる間仕切パネルと、該間仕切パネルの係止孔に着脱自在に嵌合係止するフックを両側に有し、前面には前方へ略直角に突設した上板と下板とで横方向の凹溝を形成するとともに、該下板の前縁に係止板を上方へ折曲形成してなる連繋部材と、移動式収納庫の本体より後縁部を後方へ突出した天板の内部奥行方向に、前方側に操作杆を設け且つ後方側前記連繋部材の係止板に係止する爪片を設けた長尺の係止杆を、該爪片が天板後縁部の下面から出没自在となして枢着するとともに、前記操作杆に摺動当接し該操作杆を下方へ押圧する傾斜縁を形成した可動板を横方向往復可能に設けた鍵装置を天板前面に取付けた構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭58−196629号公報(第1図〜第4図参照)
【特許文献2】実開平02−50238号公報(第2図〜第4図参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記各特許文献の連結装置では、ワゴン本体の下部や、ワゴン本体の上面に設けられた天板の前部に操作部を臨ませ、奥行き方向に長い部材の後端部に、静止部材側の前面に設けられた掛止部もしくは連繋部材の係止板に係止できる係合凹所が備えられ、操作部の操作により前記長い部材の後端(奥端)側が上下揺動するように、当該長い部材の前後方向中途部が枢支されている。従って、ワゴン本体の全部から係止離脱の操作できる便利さがあるものの、構成が複雑で、ワゴン本体への装置の組み込みにも手間が掛かるという問題があった。
【0007】
本願発明は、上記従来技術の問題点を解決し、簡単な構成で、ワゴンなどの移動式什器が静止部材から不用意に離れて飛び出したり、転倒しないようにした静止体と移動式什器との連結装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本願発明の静止体に対して移動式什器を移動不能とする連結装置であって、前記静止体に固定された被連結部材と、前記移動式什器と前記被連結部材とに対して着脱自在な連結部材とからなり、前記被連結部材は少なくとも第1被装着部が設けられ、前記連結部材には、前記第1被装着部に対して着脱自在な第1係止部と、前記移動式什器に設けられた第2被装着部に着脱自在に係止する第2係止部とが備えられているものである。また、本願発明の静止体に対して移動式什器を前方に移動不能とする連結装置は、前記静止体に固定された被連結部材と、前記移動式什器の背面側と前記被連結部材とに対して着脱自在な連結部材とからなり、前記被連結部材には少なくとも前方に突出する下板と該下板から上向きに形成された第1被装着部とが設けられ、前記連結部材には、前記第1被装着部に対して着脱自在な第1係止部と、前記移動式什器の背面側に設けられた第2被装着部に着脱自在に係止する第2係止部とが備えられているものである。
【0009】
その場合、前記連結部材は、平板の前後両端部に前記第1係止部と第2係止部とが形成され、前記連結部材が取付けられた前記移動式什器の背面を前記被連結部材に近づける時、前記第1係止部が前記前記第1被装着部上を乗り越えて係止するように前記連結部材が姿勢変更する構成であっても良い。
【0010】
または、前記連結部材は、平板の前後両端部に前記第1係止部と第2係止部とが形成され、前記静止体における前記被連結部材と前記移動式什器とを所定の間隔で配置し、前記被連結部材における前記第1被装着部に前記第1係止部が上方から嵌まり、前記移動式什器における前記第2被装着部に前記第2係止部が上方から嵌まるように、前記連結部材を装着する構成であっても良い。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によれば、連結部材は、平板の前後両端部に前記第1係止部と第2係止部とが形成されたのもので、構成が至極簡単である。また、静止体に固定された被連結部材の第1被装着部も剛性を高めるために屈曲形成した個所を利用できる。さらに、移動式什器における第2被装着部の構成も至極簡単である。このように、本願発明は簡単な構成で移動式什器を前後方向に移動不能にでき、製造コストも極めて低減させることができながら、装着作業性も向上するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A)は本願発明を適用した机とワゴンの連結状態を前方から見た斜視図、(B)は同じく後方から見た斜視図である。
【図2】第1実施例の側面図である。
【図3】(A)はワゴンの背面の第2被装着部への連結部材の装着状態を示す要部拡大断面図、(B)はワゴンとともに連結部材を机における被連結部材に接近させる状態を示す要部拡大断面図、(C)は連結部材を介して机に対してワゴンを前方飛び出し不能に連結した状態の要部拡大断面図である。
【図4】ワゴンの背面の第2被装着部と連結部材との関係を示す概略平面図である。
【図5】(A)は連結部材などの第2実施例を示す要部側面図、(B)は同じく要部平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本願発明を、図面を参照しながら詳細に説明する。図1〜図2に示すように、移動式什器の一例としてのワゴン1は静止体の一例としての机2の下方に配置するものである。
【0014】
机2は左右の脚体3上に天板4が固定されており、左右の脚体3の後端上部間を横長の梁状の被連結部材5にて連結している。図示実施例では、左右の脚体3は、前後の脚支柱3a,3bの上端間を前後長手の梁材3cにて連結した下向きコ字状の形態であるが(図2等参照)、一方の脚体を側面視で横向きコ字状の形態としても良い。通常、各脚体3の下端にはアジャスタ6が取付けられて天板4の水平度を確保できる構成である。なお、図示実施例では、机は事務用であり、天板4の後端縁にパソコン等の電気製品のためのコードを床側から導くためのダクト開口部7を有し、不要時にはカバー体8に覆われている。
【0015】
実施例のワゴン1は多段の抽斗11が金属板製の本体10に対して前後引き出し自在に設けられている。本体10の下端には、ワゴン1を床面に対して移動自在とするためのキャスタ12にて支持されている。
【0016】
[連結装置]
静止体である机2に対してワゴン1を前方に移動不能とする連結装置は、机2の奥端側に位置する被連結部材5とワゴン1の本体10の背面側とに対して着脱自在な連結部材13を備えている。
【0017】
被連結部材5は、金属板を屈曲形成(板金形成)したもので、側断面がコ字状の外横梁14の内面に同じく内横梁15が溶接等にて固着されている。外横梁14における下板14aには上向きにL字状の第1被装着部16が形成され、内横梁15の下端部と第1被装着部16との間で、連結部材13における第1係止部20が嵌まり得る挿入空間17が形成されている(図3(B),図3(C)参照)。
【0018】
連結部材13の平板13aの前端に、一対(もしくは複数)の第2係止部21が形成される一方、平板13aの後端に第1係止部20が形成されている。第1実施例では、第1係止部20は下向きに屈曲され、且つ第1係止部20の自由端に近づくに従って前方に延びる傾斜面20aを有する。そして、第1係止部20は平板13aの長さLとほぼ同じ長さを有し、平板13aの長さLはワゴン1の本体10の幅寸法と等しいか(図4参照)、もしくは適宜短く設定されている。連結部材13の幅寸法Hは、被連結部材5に連結部材13を介して連結されたワゴン1の前面位置が机2の天板8の前縁より若干奥位置になる程度に設定されている(図2参照)。
【0019】
各第2係止部21は平板13aに対して上向きに屈曲され、第2係止部21の自由端に近づくに従って後方に若干延びる鉤型である(図3(A),図3(B),図3(C)参照)。
【0020】
ワゴン1の本体10の背面側(背面板10a)には、第2被装着部18が第2係止部21の配置位置と対応するように設けられている。第1実施例における第2被装着部18は背面板10aに穿設された横長孔である(図3(A),図3(B),図3(C),図4参照)。
【0021】
[連結装置の取付け方法]
図3(A)で示すように、まず、作業者は連結部材13を手に持ち、第2係止部21を下にして平板13aがワゴン1の本体10の背面板10aに近づくようにし、各第2係止部21をその自由端から第2被装着部18に差し込む。その状態で平板13aから手を離すと、当該平板13aがほぼ水平となるように、連結部材13はワゴン1の本体10の背面側に装着される。
【0022】
次いで、ワゴン1を天板8の下方にて被連結部材5の前面に接近する方向に押し込む。連結部材13の第1係止部20が第1被装着部16の上端に接近するに従い、当該第1係止部20の傾斜面20aが第1被装着部16の上面を乗り越えてから(図3(B)参照)、連結部材13の自重により、第1係止部20が第1被装着部16に係止するように連結部材13は姿勢変更する(図3(C)参照)。
【0023】
図3(C)の状態では、ワゴン1が机1の前方に移動しようとすると、連結部材13の第1係止部20が第1被装着部16に係止し、且つ第2係止部21が第2被装着部18に係止して、それぞれ抜け不能であるので、ワゴン1は机1の前方に飛び出すことがない。
【0024】
他方、ワゴン1が机1の後方に移動しようとすると、第1係止部20が第1被装着部16の挿入空間の後端に当たり、連結部材13における平板13aの前端縁がワゴン1の本体10の背面板10aに当たることになるので、ワゴン1は後方にも移動できない。このようにして、地震発生の際に、ワゴン1は机1の前後方向に移動不能となり、転倒することが防止できる。
【0025】
なお、被連結部材5における第1被装着部16及び連結部材13の第1係止部20は机2の横方向(幅方向)に延び、且つ第1係止部20の長さが第1被装着部16の長さより短いため、連結部材13にて第1被装着部16とワゴン1の本体10とを連結した状態の元で、ワゴン1を机2の下方において左右の脚体3、3のいずれの側に近づくように配置することが任意にできる。
【0026】
[連結装置の第2実施例]
図5(A),図5(B)に示すように、第2実施例の連結部材22は、平板22aの前後両端部に第1係止部20と第2係止部23とが形成されている。第1係止部20は第1実施例と同じである。第2係止部23は平板22aの前端から下向きにほぼ直角に屈曲形成されている。被連結部材5も第1実施例と同じ構成である。ワゴン1における本体10の背面板10aには、平面視でコ字状に屈曲形成された第2被装着部18の左右両端を溶接などにて固定する。従って、 第2被装着部18と背面板10aとの間には第2係止部23が上方から挿入できる隙間が形成されることになる。
【0027】
この実施例では、机2における被連結部材5の前端の第1被装着部16とワゴン1における本体10の背面板10aとを所定の間隔(連結部材22の幅寸法に近い値)で配置し、被連結部材5における第1被装着部16に第1係止部20が上方から嵌まり、ワゴン1における第2被装着部24に第2係止部23が上方から嵌まるように、連結部材22を装着すれば良い(図5(A)参照)。この第2実施例の構成でも、連結部材22はワゴン1及び被連結部材5の第1被装着部16に対して着脱自在となる。
【0028】
上記実施例の他、ワゴン1における本体10の背面板10aに対する連結部材を水平枢支軸を介して上下揺動可能に取付け、且つ連結部材の平板が下向きからほぼ水平となる方向にバネ付勢し、連結部材の奥端の第1係止部を被連結部材の下端に形成された下向きの第1被装着部に対して下方から係止できる構成を採用しても良い。
【0029】
いずれの実施例であっても、連結装置の構成として、静止体における被連結部材を利用でき、且つ連結部材が前後両端を屈曲形成した板材からなるから、構造が極めて簡単となり、製造コストも極めて低減させることができる。また連結部材の装着作業性をも至極簡単である。さらに、第1被装着部16と第2被装着部18、24の床面からの高さ寸法を同一に設定しておけば、ワゴン1の上面の天板の有無、天板の高さ寸法の相違などの仕様の変更に拘らず、本願発明を適用できる。また、本願発明において、静止体とは机の他、間仕切パネル等も含む趣旨であり、移動式什器とは、事務用や家庭用のワゴンを含む。
【符号の説明】
【0030】
1 ワゴン
2 机
5 被連結部材
10 本体
12 キャスタ
13、22 連結部材
16 第1装着部
18 第2被装着部
20 第1係止部
21、23 第2係止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
静止体に対して移動式什器を移動不能とする連結装置であって、
前記静止体に固定された被連結部材と、前記移動式什器と前記被連結部材とに対して着脱自在な連結部材とからなり、
前記被連結部材は少なくとも第1被装着部が設けられ、
前記連結部材には、前記第1被装着部に対して着脱自在な第1係止部と、前記移動式什器に設けられた第2被装着部に着脱自在に係止する第2係止部とが備えられている、静止体と移動式什器との連結装置。
【請求項2】
静止体に対して移動式什器を前方に移動不能とする連結装置であって、
前記静止体に固定された被連結部材と、前記移動式什器の背面側と前記被連結部材とに対して着脱自在な連結部材とからなり、
前記被連結部材には少なくとも前方に突出する下板と該下板から上向きに形成された第1被装着部とが設けられ、
前記連結部材には、前記第1被装着部に対して着脱自在な第1係止部と、前記移動式什器の背面側に設けられた第2被装着部に着脱自在に係止する第2係止部とが備えられている、静止体と移動式什器との連結装置。
【請求項3】
前記連結部材は、平板の前後両端部に前記第1係止部と第2係止部とが形成され、
前記連結部材が取付けられた前記移動式什器の背面を前記被連結部材に近づける時、前記第1係止部が前記前記第1被装着部上を乗り越えて係止するように前記連結部材が姿勢変更する、請求項2に記載の静止体と移動式什器との連結装置。
【請求項4】
前記連結部材は、平板の前後両端部に前記第1係止部と第2係止部とが形成され、
前記静止体における前記被連結部材と前記移動式什器とを所定の間隔で配置し、
前記被連結部材における前記第1被装着部に前記第1係止部が上方から嵌まり、前記移動式什器における前記第2被装着部に前記第2係止部が上方から嵌まるように、前記連結部材を装着する、請求項2に記載の静止体と移動式什器との連結装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−90800(P2013−90800A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−234689(P2011−234689)
【出願日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000139780)株式会社イトーキ (833)
【Fターム(参考)】