静止誘導電器
【課題】振動低減及び騒音低減を実現する静止誘導電器を提供することである。
【解決手段】実施形態の静止誘導電器は、機器本体が絶縁媒体とともに、上部タンクと下部タンクとを有するタンクに収納される。前記上部タンクには、下部タンク側の縁に沿い、前記上部タンク外側の水平方向に向かって上部タンク接合部材が設けられる。前記下部タンクには、上部タンク側の縁に沿い、前記下部タンク外側の水平方向に向かって下部タンク接合部材が設けられ、前記上部タンク接合部材と連結される。
前記上部タンク接合部材と前記下部タンク接合部材の間には、第1異種材料が挟み込まれ、この第1異種材料は前記上部タンク接合部材及び前記下部タンク接合部材とは異なるヤング率を有する。
【解決手段】実施形態の静止誘導電器は、機器本体が絶縁媒体とともに、上部タンクと下部タンクとを有するタンクに収納される。前記上部タンクには、下部タンク側の縁に沿い、前記上部タンク外側の水平方向に向かって上部タンク接合部材が設けられる。前記下部タンクには、上部タンク側の縁に沿い、前記下部タンク外側の水平方向に向かって下部タンク接合部材が設けられ、前記上部タンク接合部材と連結される。
前記上部タンク接合部材と前記下部タンク接合部材の間には、第1異種材料が挟み込まれ、この第1異種材料は前記上部タンク接合部材及び前記下部タンク接合部材とは異なるヤング率を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、静止誘導電器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から騒音規制が厳しくなっており、変圧器などの静止誘導電器の低騒音化が強く望まれている。静止誘導電器の騒音は、タンクに収納されている鉄心、コイル等の振動がタンクに伝播し、タンクの側面が振動して周囲に音を放射するために発生する。この放射音の拡散を防止するための手段として、静止誘導電器を鉄板などでできた防音建屋に収納する方法が考えられるが、据付面積が増大するという問題がある。
【0003】
また、タンクの周囲に遮音板を設ける対策が広く実施されているが、タンク側面の振動を受けて遮音板自体が振動するため、騒音が発生しないような構成上の配慮が必要となる。音の放射はタンクの振動によって引き起こされることから、静止誘導電器に構造を追加せずに騒音低減を図る方法として、タンク側面の振動量を低減するなどの対策も行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−49011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、振動低減及び騒音低減を実現することができる静止誘導電器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の静止誘導電器は、機器本体が絶縁媒体とともに、上部タンクと下部タンクとを有するタンクに収納される。前記上部タンクには、下部タンク側の縁に沿い、前記上部タンク外側の水平方向に向かって上部タンク接合部材が設けられる。前記下部タンクには、上部タンク側の縁に沿い、前記下部タンク外側の水平方向に向かって下部タンク接合部材が設けられ、前記上部タンク接合部材と連結される。
【0007】
前記上部タンク接合部材と前記下部タンク接合部材の間には、第1異種材料が挟み込まれ、この第1異種材料は前記上部タンク接合部材及び前記下部タンク接合部材とは異なるヤング率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態の静止誘導電器を側面から見た断面図。
【図2】第1の実施形態の静止誘導電器の正面図。
【図3】第1の実施形態の静止誘導電器における接合部を側面から見た断面図。
【図4】図1のX−X矢視図。
【図5】第2の実施形態の静止誘導電器を側面から見た断面図。
【図6】第2の実施形態の静止誘導電器における接合部を側面から見た断面図。
【図7】図5のY−Y矢視図。
【図8】第3の実施形態の静止誘導電器の正面図。
【図9】第3の実施形態における振動減衰の説明図。
【図10】第4の実施形態の静止誘導電器を側面から見た断面図。
【図11】第5の実施形態の静止誘導電器を平面から見た断面図。
【図12】第6の実施形態の静止誘導電器を正面から見た断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を図面に基づき説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態の静止誘導電器を側面から見た断面図、図2は第1の実施形態の静止誘導電器の正面図である。図1に示すように、タンクの内部に機器本体1が収容され、絶縁油または絶縁ガスが充填されている。このタンクはタンク高さの中心付近で水平面に沿って分割されており、分割面より上側を上部タンク2、下側を下部タンク3とする。上部タンク2と下部タンク3にはそれぞれ、分割面の縁に沿って全周にわたり、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5がタンク外側の水平方向に向かって設けられている。上部タンク2と下部タンク3は上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5を連結することによって密封される。上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5には上部タンク2や下部タンク3と同じ材料を用い、例えば鉄鋼などが挙げられる。
【0011】
また、図2に示すように上部タンクの側面6と下部タンクの側面7には、主補強材9が取り付けられており、主補強材9、上部タンク接合部材4または下部タンク接合部材5、上部タンクの側面上端部6aまたは下部タンクの側面下端部7aのいずれかで囲まれた板場10が存在する。ここで、主補強材9には上部タンク2や下部タンク3と同じ材料を用い、例えば鉄鋼などが挙げられる。
【0012】
図3は第1の実施形態の静止誘導電器における接合部を側面から見た断面図、図4は図1のX−X矢視図である。図3、図4に示すように上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5は非対称な構造を持ち、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5の間にはこれらの接合部材4,5に使用している材料とはヤング率が異なる、ゴムやエポキシ樹脂などの第1異種材料8が接合部に沿って挟み込まれている。このようにタンク高さの中心付近を境として、上部タンク2と下部タンク3を分離可能な構造にすることにより、上部タンクの側面6と下部タンクの側面7は接合部材4,5により分断される。騒音の大きさは振動面積に依存するため、振動面積が減ることで騒音低減効果が期待できる。また、タンクの分割位置を変更することにより、上部タンク2と下部タンク3の高さを調整することができる。つまり、上部タンク2と下部タンク3の高さを調整し、上部タンクの側面6と下部タンクの側面7が静止誘導電器の振動の主要周波数成分で固有振動数を持たないように設計することで共振を避けることができる。
【0013】
さらに、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5を非対称な構造とすることで、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5の固有振動数が異なるため、振動の連続性を断つ効果が期待できる。また、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5の間に第1異種材料8を挟み込みことにより、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5の間のヤング率が変化し、振動の伝わりやすさも異なるため、このことによっても振動の連続性を断つ効果が得られる。これにより、上部タンクの側面6と下部タンクの側面7が一体となって運動する振動モードの発生を避けることができるため、タンク側面6,7の振動振幅を抑制でき、騒音低減に繋がる。
【0014】
これに加えて、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5の断面二次モーメントを大きくし、主補強材9と同等の剛性を持たせることにより、接合部材4,5が振動の節として働く。この方法によっても振動の連続性を断つことができる。断面二次モーメントを大きくする方法としては、接合部材4,5の板厚を大きくすることや接合部材4,5の断面形状を変えることなどが挙げられる。これらの方法は一体成形によってなされても良いし、接合部材4,5に対して、接合部材4,5と同一材料による追加部材を取り付けることによってなされても良い。
【0015】
上記した、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5との間に第1異種材料8を挟み込むこと、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5の形状を非対称にすること、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5の断面二次モーメントを大きくし、主補強材9と同等の剛性を持たせることはそれぞれ個別に適用した場合や任意に組み合せて適用した場合でも上述したような効果を得ることができる。
【0016】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について、図5乃至図7を用いて説明する。なお、図1乃至図4の第1の実施形態の静止誘導電器の各部と同一部分は同一符号で示す。
【0017】
図5は第2の実施形態の静止誘導電器を側面から見た断面図、図6は第2の実施形態の静止誘導電器における接合部を側面から見た断面図、図7は図5のY−Y矢視図である。この第2の実施形態では、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5の間に第1異種材料8に加えて、接合部材4,5に使用している材料及び第1異種材料8とは異なるヤング率を持つ第2異種材料11を第1異種材料8の周囲に断続的に配置している。第2異種材料11としては例えばエポキシ樹脂やフッ素樹脂などが挙げられる。
【0018】
このように第2異種材料11を配置することで、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5の間のヤング率の変化を周方向にも持たせることができる。つまり、第2異種材料11が存在する部分と存在しない部分とでは振動の伝わりやすさが異なるため、接合部の周方向に関しても振動の連続性を断つ効果が表れ、接合部での振動の伝播を断つことができる。これにより、タンク側面6,7の振動振幅も減少するため、騒音低減に繋がる。
【0019】
(第3の実施形態)
図8は第3の実施形態の静止誘導電器の正面図である。この第3の実施形態の各部について、第1の実施形態、第2の実施形態の静止誘導電器の各部と同一部分は同一符号で示す。図8に示すように第3の実施形態では、板場12の水平方向及び鉛直方向の長さを連続的に変化させるように補強材13を板場12に配置する。例えば、この補強材13の両端が、主補強材9、上部タンク接合部材4または下部タンク接合部材5、上部タンクの側面上端部6aまたは下部タンクの側面下端部7aのいずれかと連結するように取り付ける。
【0020】
このように補強材13を取り付ける利点について、図9を用いて説明する。なお、図2で示した第1の実施形態の静止誘導電器の正面図及び、図8で示した第3の実施形態の静止誘導電器の正面図における各部と同一部分には同一符号を付す。図9(a)に示すように、板場10の水平方向及び鉛直方向の長さのいずれかが一定となるように主補強材9のみを配置した場合、板場10の各部で固有振動数が等しくなるため、振動の主要な周波数がf0に近い場合には共振の影響で振幅が増幅されてしまう。一方、図9(b)に示すように、板場12の水平方向及び鉛直方向の長さが一定とならないように補強材13を配置することで、板場12の各部で固有振動数が異なるため、振動の主要な周波数成分がf0に近い場合でも振動の増幅が抑制され、共振の影響を低減することができる。ここで、補強材13には上部タンク2や下部タンク3と同じ材料を用い、例えば鉄鋼などが挙げられる。
【0021】
(第4の実施形態)
図10は第4の実施形態の静止誘導電器を側面から見た断面図である。この第4の実施形態の各部について、第1の実施形態乃至第3の実施形態の静止誘導電器の各部と同一部分は同一符号で示す。第4の実施形態では図10に示すように、上部タンク2と下部タンク3を連結する際に、同一側に位置する上部タンクの側面6と下部タンクの側面7が上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5を境に互いに非平行となるように配置する。
【0022】
このように上部タンクの側面6及び下部タンクの側面7を非平行に配置することにより、平行に配置した場合と比べて、水平方向の変形(接合部材4,5の長手方向曲げ)に対する断面二次モーメントが大きくなる。そのため、水平方向の振動に対する剛性が上がり、振動の伝播を断つ効果が高まるため、タンク側面6,7の振動振幅を低減することができる。
【0023】
(第5の実施形態)
図11は第5の実施形態の静止誘導電器を平面から見た断面図である。図11に示すように、機器本体14が絶縁油または絶縁ガスとともにタンク本体15に収容され、密閉されている。この第5の実施形態ではすべての対向するタンク側面16が非平行となるように配置する。このようにタンク側面16を配置することで、対向するタンク側面16の間の距離が一定ではなくなり、特定の波長で共鳴を起こさない構造となる。これにより、振動の主要周波数成分での共鳴の発生を避けることができ、タンク側面16での振動増幅を抑制することができる。
【0024】
(第6の実施形態)
図12は第6の実施形態の静止誘導電器を正面から見た断面図である。この第6の実施形態の各部について、第5の実施形態の静止誘導電器の各部と同一部分は同一符号で示す。この第6の実施形態が第5の実施形態と異なる点は、対向するタンク側面16に加えて、タンク上面17とタンク下面18も非平行となるように配置していることにある。このように配置することで、対向するタンク上面17とタンク下面18との間の距離が一定ではなくなり、特定の波長で共鳴を起こさない構造となる。これにより、振動の主要周波数成分での共鳴の発生を避けることができ、タンク上面17とタンク下面18の振動増幅を抑制することができる。
【0025】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、タンクの構造により振動低減及び騒音低減を図ることができ、防音建屋や遮音板を設ける必要がないため、コスト削減にも繋がる。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1,14…機器本体
2…上部タンク
3…下部タンク
4…上部タンク接合部材
5…下部タンク接合部材
6…上部タンクの側面
6a…上部タンクの側面上端部
7…下部タンクの側面
7a…下部タンクの側面下端部
8…第1異種材料
9…主補強材
10,12…板場
11…第2異種材料
13…補強材
15…タンク本体
16…タンク側面
17…タンク上面
18…タンク下面
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、静止誘導電器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から騒音規制が厳しくなっており、変圧器などの静止誘導電器の低騒音化が強く望まれている。静止誘導電器の騒音は、タンクに収納されている鉄心、コイル等の振動がタンクに伝播し、タンクの側面が振動して周囲に音を放射するために発生する。この放射音の拡散を防止するための手段として、静止誘導電器を鉄板などでできた防音建屋に収納する方法が考えられるが、据付面積が増大するという問題がある。
【0003】
また、タンクの周囲に遮音板を設ける対策が広く実施されているが、タンク側面の振動を受けて遮音板自体が振動するため、騒音が発生しないような構成上の配慮が必要となる。音の放射はタンクの振動によって引き起こされることから、静止誘導電器に構造を追加せずに騒音低減を図る方法として、タンク側面の振動量を低減するなどの対策も行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−49011号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、振動低減及び騒音低減を実現することができる静止誘導電器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の静止誘導電器は、機器本体が絶縁媒体とともに、上部タンクと下部タンクとを有するタンクに収納される。前記上部タンクには、下部タンク側の縁に沿い、前記上部タンク外側の水平方向に向かって上部タンク接合部材が設けられる。前記下部タンクには、上部タンク側の縁に沿い、前記下部タンク外側の水平方向に向かって下部タンク接合部材が設けられ、前記上部タンク接合部材と連結される。
【0007】
前記上部タンク接合部材と前記下部タンク接合部材の間には、第1異種材料が挟み込まれ、この第1異種材料は前記上部タンク接合部材及び前記下部タンク接合部材とは異なるヤング率を有する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】第1の実施形態の静止誘導電器を側面から見た断面図。
【図2】第1の実施形態の静止誘導電器の正面図。
【図3】第1の実施形態の静止誘導電器における接合部を側面から見た断面図。
【図4】図1のX−X矢視図。
【図5】第2の実施形態の静止誘導電器を側面から見た断面図。
【図6】第2の実施形態の静止誘導電器における接合部を側面から見た断面図。
【図7】図5のY−Y矢視図。
【図8】第3の実施形態の静止誘導電器の正面図。
【図9】第3の実施形態における振動減衰の説明図。
【図10】第4の実施形態の静止誘導電器を側面から見た断面図。
【図11】第5の実施形態の静止誘導電器を平面から見た断面図。
【図12】第6の実施形態の静止誘導電器を正面から見た断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態を図面に基づき説明する。
【0010】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態の静止誘導電器を側面から見た断面図、図2は第1の実施形態の静止誘導電器の正面図である。図1に示すように、タンクの内部に機器本体1が収容され、絶縁油または絶縁ガスが充填されている。このタンクはタンク高さの中心付近で水平面に沿って分割されており、分割面より上側を上部タンク2、下側を下部タンク3とする。上部タンク2と下部タンク3にはそれぞれ、分割面の縁に沿って全周にわたり、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5がタンク外側の水平方向に向かって設けられている。上部タンク2と下部タンク3は上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5を連結することによって密封される。上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5には上部タンク2や下部タンク3と同じ材料を用い、例えば鉄鋼などが挙げられる。
【0011】
また、図2に示すように上部タンクの側面6と下部タンクの側面7には、主補強材9が取り付けられており、主補強材9、上部タンク接合部材4または下部タンク接合部材5、上部タンクの側面上端部6aまたは下部タンクの側面下端部7aのいずれかで囲まれた板場10が存在する。ここで、主補強材9には上部タンク2や下部タンク3と同じ材料を用い、例えば鉄鋼などが挙げられる。
【0012】
図3は第1の実施形態の静止誘導電器における接合部を側面から見た断面図、図4は図1のX−X矢視図である。図3、図4に示すように上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5は非対称な構造を持ち、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5の間にはこれらの接合部材4,5に使用している材料とはヤング率が異なる、ゴムやエポキシ樹脂などの第1異種材料8が接合部に沿って挟み込まれている。このようにタンク高さの中心付近を境として、上部タンク2と下部タンク3を分離可能な構造にすることにより、上部タンクの側面6と下部タンクの側面7は接合部材4,5により分断される。騒音の大きさは振動面積に依存するため、振動面積が減ることで騒音低減効果が期待できる。また、タンクの分割位置を変更することにより、上部タンク2と下部タンク3の高さを調整することができる。つまり、上部タンク2と下部タンク3の高さを調整し、上部タンクの側面6と下部タンクの側面7が静止誘導電器の振動の主要周波数成分で固有振動数を持たないように設計することで共振を避けることができる。
【0013】
さらに、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5を非対称な構造とすることで、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5の固有振動数が異なるため、振動の連続性を断つ効果が期待できる。また、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5の間に第1異種材料8を挟み込みことにより、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5の間のヤング率が変化し、振動の伝わりやすさも異なるため、このことによっても振動の連続性を断つ効果が得られる。これにより、上部タンクの側面6と下部タンクの側面7が一体となって運動する振動モードの発生を避けることができるため、タンク側面6,7の振動振幅を抑制でき、騒音低減に繋がる。
【0014】
これに加えて、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5の断面二次モーメントを大きくし、主補強材9と同等の剛性を持たせることにより、接合部材4,5が振動の節として働く。この方法によっても振動の連続性を断つことができる。断面二次モーメントを大きくする方法としては、接合部材4,5の板厚を大きくすることや接合部材4,5の断面形状を変えることなどが挙げられる。これらの方法は一体成形によってなされても良いし、接合部材4,5に対して、接合部材4,5と同一材料による追加部材を取り付けることによってなされても良い。
【0015】
上記した、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5との間に第1異種材料8を挟み込むこと、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5の形状を非対称にすること、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5の断面二次モーメントを大きくし、主補強材9と同等の剛性を持たせることはそれぞれ個別に適用した場合や任意に組み合せて適用した場合でも上述したような効果を得ることができる。
【0016】
(第2の実施形態)
第2の実施形態について、図5乃至図7を用いて説明する。なお、図1乃至図4の第1の実施形態の静止誘導電器の各部と同一部分は同一符号で示す。
【0017】
図5は第2の実施形態の静止誘導電器を側面から見た断面図、図6は第2の実施形態の静止誘導電器における接合部を側面から見た断面図、図7は図5のY−Y矢視図である。この第2の実施形態では、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5の間に第1異種材料8に加えて、接合部材4,5に使用している材料及び第1異種材料8とは異なるヤング率を持つ第2異種材料11を第1異種材料8の周囲に断続的に配置している。第2異種材料11としては例えばエポキシ樹脂やフッ素樹脂などが挙げられる。
【0018】
このように第2異種材料11を配置することで、上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5の間のヤング率の変化を周方向にも持たせることができる。つまり、第2異種材料11が存在する部分と存在しない部分とでは振動の伝わりやすさが異なるため、接合部の周方向に関しても振動の連続性を断つ効果が表れ、接合部での振動の伝播を断つことができる。これにより、タンク側面6,7の振動振幅も減少するため、騒音低減に繋がる。
【0019】
(第3の実施形態)
図8は第3の実施形態の静止誘導電器の正面図である。この第3の実施形態の各部について、第1の実施形態、第2の実施形態の静止誘導電器の各部と同一部分は同一符号で示す。図8に示すように第3の実施形態では、板場12の水平方向及び鉛直方向の長さを連続的に変化させるように補強材13を板場12に配置する。例えば、この補強材13の両端が、主補強材9、上部タンク接合部材4または下部タンク接合部材5、上部タンクの側面上端部6aまたは下部タンクの側面下端部7aのいずれかと連結するように取り付ける。
【0020】
このように補強材13を取り付ける利点について、図9を用いて説明する。なお、図2で示した第1の実施形態の静止誘導電器の正面図及び、図8で示した第3の実施形態の静止誘導電器の正面図における各部と同一部分には同一符号を付す。図9(a)に示すように、板場10の水平方向及び鉛直方向の長さのいずれかが一定となるように主補強材9のみを配置した場合、板場10の各部で固有振動数が等しくなるため、振動の主要な周波数がf0に近い場合には共振の影響で振幅が増幅されてしまう。一方、図9(b)に示すように、板場12の水平方向及び鉛直方向の長さが一定とならないように補強材13を配置することで、板場12の各部で固有振動数が異なるため、振動の主要な周波数成分がf0に近い場合でも振動の増幅が抑制され、共振の影響を低減することができる。ここで、補強材13には上部タンク2や下部タンク3と同じ材料を用い、例えば鉄鋼などが挙げられる。
【0021】
(第4の実施形態)
図10は第4の実施形態の静止誘導電器を側面から見た断面図である。この第4の実施形態の各部について、第1の実施形態乃至第3の実施形態の静止誘導電器の各部と同一部分は同一符号で示す。第4の実施形態では図10に示すように、上部タンク2と下部タンク3を連結する際に、同一側に位置する上部タンクの側面6と下部タンクの側面7が上部タンク接合部材4と下部タンク接合部材5を境に互いに非平行となるように配置する。
【0022】
このように上部タンクの側面6及び下部タンクの側面7を非平行に配置することにより、平行に配置した場合と比べて、水平方向の変形(接合部材4,5の長手方向曲げ)に対する断面二次モーメントが大きくなる。そのため、水平方向の振動に対する剛性が上がり、振動の伝播を断つ効果が高まるため、タンク側面6,7の振動振幅を低減することができる。
【0023】
(第5の実施形態)
図11は第5の実施形態の静止誘導電器を平面から見た断面図である。図11に示すように、機器本体14が絶縁油または絶縁ガスとともにタンク本体15に収容され、密閉されている。この第5の実施形態ではすべての対向するタンク側面16が非平行となるように配置する。このようにタンク側面16を配置することで、対向するタンク側面16の間の距離が一定ではなくなり、特定の波長で共鳴を起こさない構造となる。これにより、振動の主要周波数成分での共鳴の発生を避けることができ、タンク側面16での振動増幅を抑制することができる。
【0024】
(第6の実施形態)
図12は第6の実施形態の静止誘導電器を正面から見た断面図である。この第6の実施形態の各部について、第5の実施形態の静止誘導電器の各部と同一部分は同一符号で示す。この第6の実施形態が第5の実施形態と異なる点は、対向するタンク側面16に加えて、タンク上面17とタンク下面18も非平行となるように配置していることにある。このように配置することで、対向するタンク上面17とタンク下面18との間の距離が一定ではなくなり、特定の波長で共鳴を起こさない構造となる。これにより、振動の主要周波数成分での共鳴の発生を避けることができ、タンク上面17とタンク下面18の振動増幅を抑制することができる。
【0025】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、タンクの構造により振動低減及び騒音低減を図ることができ、防音建屋や遮音板を設ける必要がないため、コスト削減にも繋がる。
【0026】
本発明のいくつかの実施形態について説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0027】
1,14…機器本体
2…上部タンク
3…下部タンク
4…上部タンク接合部材
5…下部タンク接合部材
6…上部タンクの側面
6a…上部タンクの側面上端部
7…下部タンクの側面
7a…下部タンクの側面下端部
8…第1異種材料
9…主補強材
10,12…板場
11…第2異種材料
13…補強材
15…タンク本体
16…タンク側面
17…タンク上面
18…タンク下面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体を絶縁媒体とともに収納する、上部タンクと下部タンクとを有するタンクと、
前記上部タンクの下部タンク側の縁に沿い、前記上部タンク外側の水平方向に向かって前記上部タンクに設けられる上部タンク接合部材と、
前記下部タンクの上部タンク側の縁に沿い、前記下部タンク外側の水平方向に向かって前記下部タンクに設けられ、前記上部タンク接合部材と連結される下部タンク接合部材と、
前記上部タンク接合部材と前記下部タンク接合部材の間に挟み込まれた第1異種材料と、
を備え、前記上部タンク接合部材と前記下部タンク接合部材は非対称な構造であり、前記第1異種材料は前記上部タンク接合部材及び前記下部タンク接合部材とは異なるヤング率を有する静止誘導電器。
【請求項2】
前記上部タンク接合部材と前記下部タンク接合部材の間に挟み込まれ、前記第1異種材料の周囲に断続的に配置された第2異種材料をさらに備え、この第2異種材料は前記上部タンク接合部材、前記下部タンク接合部材及び前記第1異種材料と異なるヤング率を有する請求項1に記載の静止誘導電器。
【請求項3】
前記上部タンクの側面及び前記下部タンクの側面に取り付けられた主補強材と、
前記主補強材、前記上部タンク接合部材または前記下部タンク接合部材、前記上部タンクの側面上端部または前記下部タンクの側面下端部のいずれかに囲まれた板場に、この板場の対角線方向に設けられ、前記主補強材、前記上部タンク接合部材または前記下部タンク接合部材、前記上部タンクの側面上端部または前記下部タンクの側面下端部のいずれかと両端が連結するように取り付けられた補強材と
をさらに備える請求項1に記載の静止誘導電器。
【請求項4】
同一側に位置する前記上部タンクの側面及び前記下部タンクの側面が前記上部タンク接合部材と前記下部タンク接合部材を境に互いに非平行となるように配置する請求項1に記載の静止誘導電器。
【請求項1】
機器本体を絶縁媒体とともに収納する、上部タンクと下部タンクとを有するタンクと、
前記上部タンクの下部タンク側の縁に沿い、前記上部タンク外側の水平方向に向かって前記上部タンクに設けられる上部タンク接合部材と、
前記下部タンクの上部タンク側の縁に沿い、前記下部タンク外側の水平方向に向かって前記下部タンクに設けられ、前記上部タンク接合部材と連結される下部タンク接合部材と、
前記上部タンク接合部材と前記下部タンク接合部材の間に挟み込まれた第1異種材料と、
を備え、前記上部タンク接合部材と前記下部タンク接合部材は非対称な構造であり、前記第1異種材料は前記上部タンク接合部材及び前記下部タンク接合部材とは異なるヤング率を有する静止誘導電器。
【請求項2】
前記上部タンク接合部材と前記下部タンク接合部材の間に挟み込まれ、前記第1異種材料の周囲に断続的に配置された第2異種材料をさらに備え、この第2異種材料は前記上部タンク接合部材、前記下部タンク接合部材及び前記第1異種材料と異なるヤング率を有する請求項1に記載の静止誘導電器。
【請求項3】
前記上部タンクの側面及び前記下部タンクの側面に取り付けられた主補強材と、
前記主補強材、前記上部タンク接合部材または前記下部タンク接合部材、前記上部タンクの側面上端部または前記下部タンクの側面下端部のいずれかに囲まれた板場に、この板場の対角線方向に設けられ、前記主補強材、前記上部タンク接合部材または前記下部タンク接合部材、前記上部タンクの側面上端部または前記下部タンクの側面下端部のいずれかと両端が連結するように取り付けられた補強材と
をさらに備える請求項1に記載の静止誘導電器。
【請求項4】
同一側に位置する前記上部タンクの側面及び前記下部タンクの側面が前記上部タンク接合部材と前記下部タンク接合部材を境に互いに非平行となるように配置する請求項1に記載の静止誘導電器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−77654(P2013−77654A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−215712(P2011−215712)
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
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