静電潜像現像用キャリア
【目的】 本発明は、小粒径のトナ−と組み合わせて使用した際においても、帯電性および流動性に優れ、かつキャリア付着の生じないキャリアを提供することにある。
【構成】 本発明は、バインダー樹脂中に磁性粉を分散してなる静電潜像現像用キャリアにおいて、平均粒径が30〜80μmであり、かつ下記関係式(x)2/σ2≧9.0x :平均粒径σ2:粒径分布の分散を満足する静電潜像現像用キャリアに関する。
【構成】 本発明は、バインダー樹脂中に磁性粉を分散してなる静電潜像現像用キャリアにおいて、平均粒径が30〜80μmであり、かつ下記関係式(x)2/σ2≧9.0x :平均粒径σ2:粒径分布の分散を満足する静電潜像現像用キャリアに関する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、静電潜像を現像するための現像剤に使用されるキャリア、特にバインダー樹脂中に磁性粉を分散してなるキャリアに関するものである。
【0002】
【従来の技術】電子写真方式の複写機あるいはプリンター等に使用される現像剤として、トナーおよび鉄粉等の磁性キャリアからなる二成分現像剤が知られている。このような二成分現像剤を使用した現像方法においては、キャリア粒子間の磁気強度が大きすぎて磁気ブラシの穂が硬くなり、黒べたの画像中に白スジが発生する等の問題が生じる。また、鉄粉キャリアではキャリア自体の体積固有電気抵抗が低いため、連続使用等により現像剤中のトナー濃度が低下すると、静電潜像担持体上の電荷がキャリアを介して逃げてしまって潜像が乱れ、画像に欠損等が生じたり、現像スリーブからキャリアへの電荷の注入によりキャリアが画像部に付着したりする問題が生じる。また、鉄粉等の硬いキャリアが静電潜像担持体に付着すると、残留トナーを除去する際に静電潜像担持体表面を傷付けることがある。
【0003】このような問題を解決するために磁性微粉末をバインダー樹脂中に分散してなるバインダー型キャリアが提案されている。バインダ−型キャリアは、鉄粉等のキャリアに較べて一般に現像装置における磁場中での磁化が低く、ソフトな穂を形成することができ、キャリアによる白スジのない優れた画像を得られる利点を有している。
【0004】しかしながら、バインダー型キャリアを使用した場合でも、特に平均粒径が3〜9μmの小粒径トナ−と組み合わせて使用した場合に、トナ−帯電性が不十分であったり、現像剤の流動性が不十分であるという問題が生じる。さらに、静電潜像担持体の非画像部にキャリアが付着しそれが現像されて画像ノイズとなるキャリア付着の問題が生じてしまう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上のような事情に鑑みなされたもので、その課題とするところは、小粒径のトナ−と組み合わせて使用した際においても、帯電性および流動性に優れ、かつキャリア付着の生じないキャリアを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、バインダー樹脂中に磁性粉を分散してなる静電潜像現像用キャリアにおいて、平均粒径が30〜80μmであり、かつ下記関係式(x)2/σ2≧9.0x :平均粒径σ2:粒径分布の分散を満足することを特徴とする静電潜像現像用キャリアに関する。
【0007】本発明者らは、上述した小粒径トナ−とバインダ−型キャリアとを組み合わせて使用した場合に、帯電性および流動性が不十分であるという問題並びにキャリア付着の発生の問題が、キャリア中に含まれる小粒径のキャリアおよび大粒径のキャリアの含有量に起因することを見い出し、そして、上記問題がキャリアの粒径分布を所定の範囲に制御することにより解決できることを見い出したものである。
【0008】本発明のキャリアは、(x)2/σ2(x:平均粒径、σ2:粒径分布の分散)が、9.0以上、好ましくは10.0以上である。9.0より小さいと大粒径および小粒径のキャリアの比率が多くなり、帯電性および流動性が不十分となるとともに、キャリア付着が発生する。
【0009】本発明のキャリアの平均粒径は30〜80μm、好ましくは30〜60μmである。キャリアの平均粒径が30μmより小さいと静電潜像担持体へのキャリア付着が生じやすくなり、80μmより大きくなると、通常の鉄粉キャリア等のようにハケムラが生じ、鮮明な画像が得られなくなるとともに、平均粒径が3〜9μm程度の小粒径トナ−と組み合わせて使用する場合に、トナ−の帯電量が不十分になりやすい。
【0010】本発明のキャリアに用いるバインダー樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、スチレンーアクリル共重合系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等が使用可能である。
【0011】本発明のキャリアに用いる磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の金属、これらの金属と亜鉛、アンチモン、アルミニウム、鉛、スズ、ビスマス、ベリリウム、マンガン、セレン、タングステン、ジルコニウム、バナジウム等の金属との合金あるいは混合物、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、等の金属酸化物との混合物、および強磁性フェライト、マグネタイト並びにこれらの混合物が使用可能である。
【0012】これらの磁性粉の粒径は、バインダー中での均一分散の観点から一次粒径が5μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは0.1〜1μmであることが望ましい。
【0013】バインダー樹脂と磁性粉との配合割合は、樹脂100重量部に対して磁性粉100〜900重量部、好ましくは200〜600重量部である。磁性粉の配合量が900重量部より多いと、磁性粉の二次粒子化を生じ均一分散されずキャリアが脆くなる。また、磁性粉の配合量が100重量部より少ないと充分な磁性が得られない。
【0014】また、本発明のキャリアにおいては、カーボンブラック、シリカ、チタニア、アルミナ等の分散剤を含有しても良い。分散剤を含有することによりバインダ樹脂中の磁性粉の均一分散性を向上させることができる。分散剤の含有量はキャリアに対して0.01〜3重量%とすることが好ましい。
【0015】本発明のキャリアは、例えばバインダ樹脂と磁性粉を所定の混合比で加熱混合し、冷却後粉砕・分級する方法、あるいはバインダ樹脂を溶剤に溶解し、この樹脂溶液に磁性粉を分散させた後、スプレードライする方法等により製造することができる。
【0016】上記混練・粉砕法によりキャリアを製造する場合、粒子を微粉砕する工程で使用される粉砕装置として、通常図1に示されるジェット粉砕装置が使用される。
【0017】図1のジェット粉砕装置では、粗粉砕粒子1は、ジェットノズル2から噴出する高速気流により加速されて衝突板3に激しく衝突することによって粉砕される。
【0018】このようなジェット粉砕装置を上述したキャリアの製造に使用する場合、磁性粉末の含有比率が高いため、均一な粒径に粉砕することが困難である。このようなジェット粉砕装置の衝突板は、従来図2に記載されている粒子の粉砕面が平板状の衝突板、あるいは図3に記載されている粉砕面が円錐状の衝突板が使用されている。図2の衝突板を使用して上述したキャリアの粉砕を行うと、粉砕性は非常に良好であるが、過粉砕されて微粉が多量に発生し粒径分布が広くなり易い。また、図3R>3の衝突板を使用した場合には、粒径分布は狭くなるものの、粉砕性が悪いため単位時間当りの処理量が少なくなる。
【0019】そこで、図4および図5に示される形状の衝突板を使用したところ、特に図4に記載された衝突板を用いた場合に、粒径分布を狭くするとともに粉砕性も維持できることが判明した。即ち、本願のキャリアの如く比重の大きい粒子の粉砕に対して、図4の形状の衝突板の使用が、得られる粒子の粒径分布の制御並びに粉砕効率の観点から有効である。衝突板のθおよびdの値は、粉砕する物の硬さや大きさによって適切な値に設定される。なお、本願のキャリアの製造に関しては、図4の衝突板において、100°≦θ≦140°、6mm≦d≦16mmのものを使用することが望ましい。
【0020】また、本願発明のキャリアは、分級工程の後で加熱処理を行っても良い。加熱処理はキャリアを気流中に噴出して瞬間的に加熱処理を施すことが望ましく、このような加熱処理装置としては、例えばサフュージングシステム(日本ニューマチック工業社製)等を使用することができ、加熱温度は約150〜350℃程度で行うことが好ましい。
【0021】このような加熱処理により、キャリアの表面状態を改質することができ、繰り返し使用時にも磁性粉の脱離等のない優れた耐久性を有するキャリアを得ることができる。
【0022】本願発明のキャリアと組み合わせて使用するトナ−としては、公知のトナ−を使用することができ、その平均粒径は2〜20μmのものを使用することができる。特に、平均粒径3〜9μmの小粒径トナ−と本願のキャリアを組み合わせて使用した場合に、顕著な効果が得られ小粒径トナ−における流動性の不足および帯電不良の問題を良好に向上させることができる。
【0023】
【実施例】次に、この発明の具体的な実施例について説明するが、これに限定されるものではない。
【0024】キャリア1の製造例ポリエステル樹脂(タフトンNE−1110:花王社製)100重量部と、フェライト粉(MFP−2:TDK社製)500重量部と、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC:ライオン油脂社製)2重量部と、シリカ(#200:日本アエロジル社製)1.5重量部とをヘンシェルミキサ−で充分混合した後、加圧ニ−ダ−で溶融混練した。この混練物を冷却後フェザ−ミルで粗粉砕した後、衝突板として図4の衝突板(θ:120°、d:8mm)を装着したジェットミル(IDS−II型)を用いて、粉砕エア−圧力2.5Kg・f/cm2で微粉砕し、マルチプレックスで分級して平均粒径が69.5μm、(x)2/σ2が11.33のキャリア1を得た。
【0025】得られたキャリアの粒径分布を表1および図6に示す。図6中横軸は表1のチャンネルを示す。
【0026】キャリア2の製造例キャリア1の製造例において、フェライト粉を600重量部添加し、粉砕エア−圧力を3.5Kg・f/cm2 にする以外は同様にして、平均粒径が43μm、(x)2/σ2が12.43のキャリア2を得た。得られたキャリアの粒径分布を表1および図7に示す。
【0027】キャリア3の製造例キャリア1の製造例において、フェライト粉を700重量部添加し、粉砕エア−圧力を4.5Kg・f/cm2 にする以外は同様にして、平均粒径が33μm、(x)2/σ2が16.60のキャリア3を得た。得られたキャリアの粒径分布を表1および図8に示す。
【0028】キャリア4の製造例キャリア1の製造例において、図2の衝突板を使用する以外は同様にして、平均粒径が71μm、(x)2/σ2が5.93のキャリア4を得た。
【0029】得られたキャリアの粒径分布を表1および図9に示す。
【0030】キャリア5の製造例キャリア4の製造例において、粉砕エア−圧力を3.5Kg・f/cm2 にする以外は同様にして、平均粒径が46μm、(x)2/σ2が6.85のキャリア5を得た。得られたキャリアの粒径分布を表1および図10に示す。
【0031】キャリア6の製造例キャリア4の製造例において、粉砕エア−圧力を4.5Kg・f/cm2 にする以外は同様にして、平均粒径が31μm、(x)2/σ2が4.85のキャリア6を得た。得られたキャリアの粒径分布を表1および図11に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
トナーの調整 成 分 重量部 スチレンーnーブチルメタクリレート樹脂 100 (軟化点:132℃、ガラス転移温度:60℃)
カーボンブラック 8 (MA#8:三菱化成工業社製)
ニグロシン染料 5 (ボントロンN−01:オリエント化学工業社製)
上記材料をボールミルで充分混合した後、140℃に加熱した3本ロール上で混練した。混練物を放置冷却後、ハンマ−ミルで平均粒径2mmに粗粉砕し、これをクリプトロンで平均粒径11μmに粉砕した後、さらにジェットミルで微粉砕した。次に、風力分級し、平均粒径8.5μmのトナーを得た。
【0034】物性評価(1)キャリア粒径キャリアの平均粒径の測定は、コ−ルタ−カウンタTA−II型(コ−ルタ−カウンタ社製)を用い、500μmのアパチャ−チューブで粒径別相対重量分布を測定した。
【0035】(2)撹拌強度によるトナー帯電量変化トナ−の調整で得られたトナ−100重量部に対してコロイダルシリカR974(日本アエロジル社製)0.1重量部を混合して後処理を行った。このトナ−とキャリア1〜6とを、トナー混合比5%でバイアルローテータを用いて10分間混合して現像剤を調整し、25℃、湿度65%の条件でトナー帯電量Q1 (μc/g)を測定した。次に、各現像剤をペイントコンディショナ−により強撹拌を30分間行った後でトナ−帯電量Q2 (μc/g)を測定した。撹拌強度により帯電量変化量として|Q1−Q2|を表2に示す。
【0036】(3)キャリア付着上記(2)で調整した各現像剤を複写機EP−5400(ミノルタカメラ社製)を用いて実写評価した。結果を表2に示す。
【0037】表中、キャリア付着は、画像上に付着したキャリアを目視により評価し、○はキャリア付着がないことを、△はキャリア付着は生じているものの実用上問題とならないレベルであることを、×はキャリア付着が目立ち画像ノイズとして問題があることを示す。
【0038】(4)現像剤の流動性上記(2)で調整した各現像剤を複写機EP−5400(ミノルタカメラ社製)用の現像器にセットし、10分間空回転させたときに、現像器長手方向に現像剤の片寄りが発生しないように現像器内の搬送スクリューを調節した。こうして調節した現像器を上記複写機に取り付け、耐刷テストを行った。10000枚耐刷時の黒ベタ画像において、通紙方向と直角方向に20cm離れた点の画像濃度を測定し、現像剤の片寄りによって生じる現像器長手方向の濃度差を測定した。
【0039】この値が0.05以下を○、0.05超〜0.1未満を△、0.1以上を×とした。得られた結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
【発明の効果】本発明のキャリアは、小粒径トナ−と組み合わせて使用した場合においても、帯電性および流動性に優れ、キャリア付着の発生しない良好な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ジェット粉砕機を示す概略図である。
【図2】 衝突板(平板型)の粉砕面及びその側面を示す概略図である。
【図3】 衝突板(円錐型)の粉砕面及びその側面を示す概略図である。
【図4】 衝突板の第1変形例の粉砕面及びその側面を示す概略図である。
【図5】 衝突板の第1変形例の粉砕面及びその側面を示す概略図である。
【図6】 キャリア1の粒径分布を示すグラフである。
【図7】 キャリア2の粒径分布を示すグラフである。
【図8】 キャリア3の粒径分布を示すグラフである。
【図9】 キャリア4の粒径分布を示すグラフである。
【図10】 キャリア5の粒径分布を示すグラフである。
【図11】 キャリア6の粒径分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1:粗粉砕粒子、2:ジェットノズル、3:衝突板
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、静電潜像を現像するための現像剤に使用されるキャリア、特にバインダー樹脂中に磁性粉を分散してなるキャリアに関するものである。
【0002】
【従来の技術】電子写真方式の複写機あるいはプリンター等に使用される現像剤として、トナーおよび鉄粉等の磁性キャリアからなる二成分現像剤が知られている。このような二成分現像剤を使用した現像方法においては、キャリア粒子間の磁気強度が大きすぎて磁気ブラシの穂が硬くなり、黒べたの画像中に白スジが発生する等の問題が生じる。また、鉄粉キャリアではキャリア自体の体積固有電気抵抗が低いため、連続使用等により現像剤中のトナー濃度が低下すると、静電潜像担持体上の電荷がキャリアを介して逃げてしまって潜像が乱れ、画像に欠損等が生じたり、現像スリーブからキャリアへの電荷の注入によりキャリアが画像部に付着したりする問題が生じる。また、鉄粉等の硬いキャリアが静電潜像担持体に付着すると、残留トナーを除去する際に静電潜像担持体表面を傷付けることがある。
【0003】このような問題を解決するために磁性微粉末をバインダー樹脂中に分散してなるバインダー型キャリアが提案されている。バインダ−型キャリアは、鉄粉等のキャリアに較べて一般に現像装置における磁場中での磁化が低く、ソフトな穂を形成することができ、キャリアによる白スジのない優れた画像を得られる利点を有している。
【0004】しかしながら、バインダー型キャリアを使用した場合でも、特に平均粒径が3〜9μmの小粒径トナ−と組み合わせて使用した場合に、トナ−帯電性が不十分であったり、現像剤の流動性が不十分であるという問題が生じる。さらに、静電潜像担持体の非画像部にキャリアが付着しそれが現像されて画像ノイズとなるキャリア付着の問題が生じてしまう。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は以上のような事情に鑑みなされたもので、その課題とするところは、小粒径のトナ−と組み合わせて使用した際においても、帯電性および流動性に優れ、かつキャリア付着の生じないキャリアを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、バインダー樹脂中に磁性粉を分散してなる静電潜像現像用キャリアにおいて、平均粒径が30〜80μmであり、かつ下記関係式(x)2/σ2≧9.0x :平均粒径σ2:粒径分布の分散を満足することを特徴とする静電潜像現像用キャリアに関する。
【0007】本発明者らは、上述した小粒径トナ−とバインダ−型キャリアとを組み合わせて使用した場合に、帯電性および流動性が不十分であるという問題並びにキャリア付着の発生の問題が、キャリア中に含まれる小粒径のキャリアおよび大粒径のキャリアの含有量に起因することを見い出し、そして、上記問題がキャリアの粒径分布を所定の範囲に制御することにより解決できることを見い出したものである。
【0008】本発明のキャリアは、(x)2/σ2(x:平均粒径、σ2:粒径分布の分散)が、9.0以上、好ましくは10.0以上である。9.0より小さいと大粒径および小粒径のキャリアの比率が多くなり、帯電性および流動性が不十分となるとともに、キャリア付着が発生する。
【0009】本発明のキャリアの平均粒径は30〜80μm、好ましくは30〜60μmである。キャリアの平均粒径が30μmより小さいと静電潜像担持体へのキャリア付着が生じやすくなり、80μmより大きくなると、通常の鉄粉キャリア等のようにハケムラが生じ、鮮明な画像が得られなくなるとともに、平均粒径が3〜9μm程度の小粒径トナ−と組み合わせて使用する場合に、トナ−の帯電量が不十分になりやすい。
【0010】本発明のキャリアに用いるバインダー樹脂としては、例えば、ポリスチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル系樹脂、スチレンーアクリル共重合系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂等が使用可能である。
【0011】本発明のキャリアに用いる磁性粉としては、例えば、鉄、ニッケル、コバルト等の金属、これらの金属と亜鉛、アンチモン、アルミニウム、鉛、スズ、ビスマス、ベリリウム、マンガン、セレン、タングステン、ジルコニウム、バナジウム等の金属との合金あるいは混合物、酸化鉄、酸化チタン、酸化マグネシウム、等の金属酸化物との混合物、および強磁性フェライト、マグネタイト並びにこれらの混合物が使用可能である。
【0012】これらの磁性粉の粒径は、バインダー中での均一分散の観点から一次粒径が5μm以下、好ましくは2μm以下、より好ましくは0.1〜1μmであることが望ましい。
【0013】バインダー樹脂と磁性粉との配合割合は、樹脂100重量部に対して磁性粉100〜900重量部、好ましくは200〜600重量部である。磁性粉の配合量が900重量部より多いと、磁性粉の二次粒子化を生じ均一分散されずキャリアが脆くなる。また、磁性粉の配合量が100重量部より少ないと充分な磁性が得られない。
【0014】また、本発明のキャリアにおいては、カーボンブラック、シリカ、チタニア、アルミナ等の分散剤を含有しても良い。分散剤を含有することによりバインダ樹脂中の磁性粉の均一分散性を向上させることができる。分散剤の含有量はキャリアに対して0.01〜3重量%とすることが好ましい。
【0015】本発明のキャリアは、例えばバインダ樹脂と磁性粉を所定の混合比で加熱混合し、冷却後粉砕・分級する方法、あるいはバインダ樹脂を溶剤に溶解し、この樹脂溶液に磁性粉を分散させた後、スプレードライする方法等により製造することができる。
【0016】上記混練・粉砕法によりキャリアを製造する場合、粒子を微粉砕する工程で使用される粉砕装置として、通常図1に示されるジェット粉砕装置が使用される。
【0017】図1のジェット粉砕装置では、粗粉砕粒子1は、ジェットノズル2から噴出する高速気流により加速されて衝突板3に激しく衝突することによって粉砕される。
【0018】このようなジェット粉砕装置を上述したキャリアの製造に使用する場合、磁性粉末の含有比率が高いため、均一な粒径に粉砕することが困難である。このようなジェット粉砕装置の衝突板は、従来図2に記載されている粒子の粉砕面が平板状の衝突板、あるいは図3に記載されている粉砕面が円錐状の衝突板が使用されている。図2の衝突板を使用して上述したキャリアの粉砕を行うと、粉砕性は非常に良好であるが、過粉砕されて微粉が多量に発生し粒径分布が広くなり易い。また、図3R>3の衝突板を使用した場合には、粒径分布は狭くなるものの、粉砕性が悪いため単位時間当りの処理量が少なくなる。
【0019】そこで、図4および図5に示される形状の衝突板を使用したところ、特に図4に記載された衝突板を用いた場合に、粒径分布を狭くするとともに粉砕性も維持できることが判明した。即ち、本願のキャリアの如く比重の大きい粒子の粉砕に対して、図4の形状の衝突板の使用が、得られる粒子の粒径分布の制御並びに粉砕効率の観点から有効である。衝突板のθおよびdの値は、粉砕する物の硬さや大きさによって適切な値に設定される。なお、本願のキャリアの製造に関しては、図4の衝突板において、100°≦θ≦140°、6mm≦d≦16mmのものを使用することが望ましい。
【0020】また、本願発明のキャリアは、分級工程の後で加熱処理を行っても良い。加熱処理はキャリアを気流中に噴出して瞬間的に加熱処理を施すことが望ましく、このような加熱処理装置としては、例えばサフュージングシステム(日本ニューマチック工業社製)等を使用することができ、加熱温度は約150〜350℃程度で行うことが好ましい。
【0021】このような加熱処理により、キャリアの表面状態を改質することができ、繰り返し使用時にも磁性粉の脱離等のない優れた耐久性を有するキャリアを得ることができる。
【0022】本願発明のキャリアと組み合わせて使用するトナ−としては、公知のトナ−を使用することができ、その平均粒径は2〜20μmのものを使用することができる。特に、平均粒径3〜9μmの小粒径トナ−と本願のキャリアを組み合わせて使用した場合に、顕著な効果が得られ小粒径トナ−における流動性の不足および帯電不良の問題を良好に向上させることができる。
【0023】
【実施例】次に、この発明の具体的な実施例について説明するが、これに限定されるものではない。
【0024】キャリア1の製造例ポリエステル樹脂(タフトンNE−1110:花王社製)100重量部と、フェライト粉(MFP−2:TDK社製)500重量部と、カーボンブラック(ケッチェンブラックEC:ライオン油脂社製)2重量部と、シリカ(#200:日本アエロジル社製)1.5重量部とをヘンシェルミキサ−で充分混合した後、加圧ニ−ダ−で溶融混練した。この混練物を冷却後フェザ−ミルで粗粉砕した後、衝突板として図4の衝突板(θ:120°、d:8mm)を装着したジェットミル(IDS−II型)を用いて、粉砕エア−圧力2.5Kg・f/cm2で微粉砕し、マルチプレックスで分級して平均粒径が69.5μm、(x)2/σ2が11.33のキャリア1を得た。
【0025】得られたキャリアの粒径分布を表1および図6に示す。図6中横軸は表1のチャンネルを示す。
【0026】キャリア2の製造例キャリア1の製造例において、フェライト粉を600重量部添加し、粉砕エア−圧力を3.5Kg・f/cm2 にする以外は同様にして、平均粒径が43μm、(x)2/σ2が12.43のキャリア2を得た。得られたキャリアの粒径分布を表1および図7に示す。
【0027】キャリア3の製造例キャリア1の製造例において、フェライト粉を700重量部添加し、粉砕エア−圧力を4.5Kg・f/cm2 にする以外は同様にして、平均粒径が33μm、(x)2/σ2が16.60のキャリア3を得た。得られたキャリアの粒径分布を表1および図8に示す。
【0028】キャリア4の製造例キャリア1の製造例において、図2の衝突板を使用する以外は同様にして、平均粒径が71μm、(x)2/σ2が5.93のキャリア4を得た。
【0029】得られたキャリアの粒径分布を表1および図9に示す。
【0030】キャリア5の製造例キャリア4の製造例において、粉砕エア−圧力を3.5Kg・f/cm2 にする以外は同様にして、平均粒径が46μm、(x)2/σ2が6.85のキャリア5を得た。得られたキャリアの粒径分布を表1および図10に示す。
【0031】キャリア6の製造例キャリア4の製造例において、粉砕エア−圧力を4.5Kg・f/cm2 にする以外は同様にして、平均粒径が31μm、(x)2/σ2が4.85のキャリア6を得た。得られたキャリアの粒径分布を表1および図11に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
トナーの調整 成 分 重量部 スチレンーnーブチルメタクリレート樹脂 100 (軟化点:132℃、ガラス転移温度:60℃)
カーボンブラック 8 (MA#8:三菱化成工業社製)
ニグロシン染料 5 (ボントロンN−01:オリエント化学工業社製)
上記材料をボールミルで充分混合した後、140℃に加熱した3本ロール上で混練した。混練物を放置冷却後、ハンマ−ミルで平均粒径2mmに粗粉砕し、これをクリプトロンで平均粒径11μmに粉砕した後、さらにジェットミルで微粉砕した。次に、風力分級し、平均粒径8.5μmのトナーを得た。
【0034】物性評価(1)キャリア粒径キャリアの平均粒径の測定は、コ−ルタ−カウンタTA−II型(コ−ルタ−カウンタ社製)を用い、500μmのアパチャ−チューブで粒径別相対重量分布を測定した。
【0035】(2)撹拌強度によるトナー帯電量変化トナ−の調整で得られたトナ−100重量部に対してコロイダルシリカR974(日本アエロジル社製)0.1重量部を混合して後処理を行った。このトナ−とキャリア1〜6とを、トナー混合比5%でバイアルローテータを用いて10分間混合して現像剤を調整し、25℃、湿度65%の条件でトナー帯電量Q1 (μc/g)を測定した。次に、各現像剤をペイントコンディショナ−により強撹拌を30分間行った後でトナ−帯電量Q2 (μc/g)を測定した。撹拌強度により帯電量変化量として|Q1−Q2|を表2に示す。
【0036】(3)キャリア付着上記(2)で調整した各現像剤を複写機EP−5400(ミノルタカメラ社製)を用いて実写評価した。結果を表2に示す。
【0037】表中、キャリア付着は、画像上に付着したキャリアを目視により評価し、○はキャリア付着がないことを、△はキャリア付着は生じているものの実用上問題とならないレベルであることを、×はキャリア付着が目立ち画像ノイズとして問題があることを示す。
【0038】(4)現像剤の流動性上記(2)で調整した各現像剤を複写機EP−5400(ミノルタカメラ社製)用の現像器にセットし、10分間空回転させたときに、現像器長手方向に現像剤の片寄りが発生しないように現像器内の搬送スクリューを調節した。こうして調節した現像器を上記複写機に取り付け、耐刷テストを行った。10000枚耐刷時の黒ベタ画像において、通紙方向と直角方向に20cm離れた点の画像濃度を測定し、現像剤の片寄りによって生じる現像器長手方向の濃度差を測定した。
【0039】この値が0.05以下を○、0.05超〜0.1未満を△、0.1以上を×とした。得られた結果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】
【発明の効果】本発明のキャリアは、小粒径トナ−と組み合わせて使用した場合においても、帯電性および流動性に優れ、キャリア付着の発生しない良好な画像を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 ジェット粉砕機を示す概略図である。
【図2】 衝突板(平板型)の粉砕面及びその側面を示す概略図である。
【図3】 衝突板(円錐型)の粉砕面及びその側面を示す概略図である。
【図4】 衝突板の第1変形例の粉砕面及びその側面を示す概略図である。
【図5】 衝突板の第1変形例の粉砕面及びその側面を示す概略図である。
【図6】 キャリア1の粒径分布を示すグラフである。
【図7】 キャリア2の粒径分布を示すグラフである。
【図8】 キャリア3の粒径分布を示すグラフである。
【図9】 キャリア4の粒径分布を示すグラフである。
【図10】 キャリア5の粒径分布を示すグラフである。
【図11】 キャリア6の粒径分布を示すグラフである。
【符号の説明】
1:粗粉砕粒子、2:ジェットノズル、3:衝突板
【特許請求の範囲】
【請求項1】 バインダー樹脂中に磁性粉を分散してなる静電潜像現像用キャリアにおいて、平均粒径が30〜80μmであり、かつ下記関係式(x)2/σ2≧9.0x :平均粒径σ2:粒径分布の分散を満足することを特徴とする静電潜像現像用キャリア。
【請求項1】 バインダー樹脂中に磁性粉を分散してなる静電潜像現像用キャリアにおいて、平均粒径が30〜80μmであり、かつ下記関係式(x)2/σ2≧9.0x :平均粒径σ2:粒径分布の分散を満足することを特徴とする静電潜像現像用キャリア。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
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【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開平7−43951
【公開日】平成7年(1995)2月14日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−185922
【出願日】平成5年(1993)7月28日
【出願人】(000006079)ミノルタ株式会社 (155)
【公開日】平成7年(1995)2月14日
【国際特許分類】
【出願日】平成5年(1993)7月28日
【出願人】(000006079)ミノルタ株式会社 (155)
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