説明

静電荷像現像用カラートナーおよびその製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電子写真、静電記録、静電印刷等における静電荷像を現像するためのフルカラー複写機用のカラートナーおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】フルカラー画像は、減法混色法によりシアン、マゼンタおよびイエローの各トナーを用いて形成される。それらのカラートナーの着色剤としては、耐光性、耐移行性、安全性の観点から染料系の着色剤と比較して優れている有機顔料系の着色剤が使用されている。しかしながら、有機顔料系の着色剤の欠点として、市販の乾燥粉末状態のものは、トナーに使用する結着樹脂中に分散しがたく、トナー中での顔料の一次粒子が凝集体のままで存在するため、フルカラートナーの最も重要な特性である光透過性が大きく悪化し、色再現性やOHP(オーバーヘッドプロジクター)フィルムの光透過性が大きく悪化してしまう。この有機顔料系の着色剤の欠点を解決するために有効な手段としては、特開昭62−280755号、特開平2−293867号、特開平3−107869号、特開平3−107870号、特開平3−1155568号、特開平3−185459号、特開平3−269542号および特開平3−269543号公報に記載されているような、加工顔料を使用して有機顔料のトナー中での分散単位を小さくする方法が有効である。これらの公報に記載されている加工顔料は、市販の乾燥有機顔料をトナーに使用する通常の顔料濃度よりも高濃度になるように結着樹脂と加熱溶融混合し、さらにトナーとして適切な顔料濃度となるように結着樹脂を用いて希釈溶融混合して形成している。しかしながら、市販の有機顔料は、顔料製造時の乾燥工程において、有機顔料の一次粒子が集まって凝集粒子を形成しており、そしてこの凝集粒子は、上記の様な手法を用いてもトナーの光透過性に影響を与えなくなるまで微細に分散することはできない。
【0003】トナー中での有機顔料の分散単位を小さくする他の手法としては、特開昭62−127847号公報に記載されている青色トナーの製造方法が有効である。この方法は、顔料化工程で溶液中に析出したフタロシアニン顔料を水洗濃縮した後、樹脂を溶解した有機溶剤と加熱混合し、水および有機溶剤を除去して有機顔料が比較的高濃度に微細分散した樹脂組成物を作成する、いわゆるフラッシング法である(以下、この方法によって作製した樹脂分散顔料をフラッシング顔料と呼ぶ)。このフラッシング顔料を使用して作製したトナーの光透過性および色再現性は、先に述べた加工顔料に比較してかなり良好なものとなる。しかしながら、特開昭62−127847号公報に記載の方法では、アシッドペースト法或いはアシッドスラリー法で作製したフタロシアニン顔料を用いているため、α型フタロシアニン結晶が生成する。このα型フタロシアニン結晶は、結晶型が不安定であるために、結晶成長や転移を起こしやすく、着色力の低下や色相の変化を生じやすく、さらにフルカラートナー用シアントナーの色再現域の観点から好ましくなく、β型フタロシアニン結晶を用いる必要がある。また、この方法は、アシッドペースト或いはアシッドスラリー法を用いずに作製されるアゾレーキ系のマゼンタ顔料やアゾカップリング法で合成されるイエロー顔料には適用できない。さらにこの方法は、含水ペースト中の水を置換するために有機溶剤を用いているために、有機溶剤を回収しなければならず好ましくない。さらにアシッドペースト法やアシッドスラリー法は、濃硫酸を使用するために、水洗しても顔料中に硫酸が残留する可能性があり、特にトナーの結着樹脂としてポリエステルを用いた場合には、ポリエステルのエステル結合が残存する硫酸によって加水分解されて、トナーの特性が変化してしまう可能性がある。
【0004】そこで本発明者等は、特開平4−242752号公報に記載のように、有機顔料の含水ペーストを結着樹脂と共に加熱し、加圧ニーダ中で少なくとも100℃以上の温度で加熱混合し、溶融樹脂で水分を置換除去して有機顔料が高濃度で分散した樹脂(メルトフラッシング顔料と呼ぶ)を作製した後、結着樹脂と溶融混練し、粉砕してトナーを作製することにより、トナー中での顔料の分散単位を制御して、フルカラートナーの光透過性および色再現性を大幅に改良することができることを見出だした。特開平4−242752号公報に記載の顔料ペーストは、特開昭62−127847号公報に記載のものとは全く異なる手法で作製できる。例えば、シアン顔料の含水ペーストは、水、塩類、顔料を高剪断型の微粉砕機で破砕して顔料粒子を微細にするソルトミリング法で作製することができる。またアゾ染料をレーキ化して作製するアゾレーキ系マゼンタ顔料の含水ペーストは、レーキ化時に顔料の凝集を防止するためにロジン誘導体を共存しながら顔料分散液を作製した後、濃縮して作製することができる。ところで、メルトフラッシング顔料技術を採用すれば、トナー中の顔料の分散単位を制御でき、色再現性や光透過性を改善することができるが、フルカラートナーの場合、高光沢、高発色および低温定着性を達成するために比較的低分子量で分子量分布の狭いポリマーを結着樹脂として使用する必要があり、したがって、このような結着樹脂を用いて得られたトナーを用いる場合には、トナーの離型性向上のために定着ロールに依然としてオイルを供給しなければならなかった。また、トナーが過剰に溶融することにより画質の低下をまねくこともあった。上記問題を解決するために、フルカラートナーの高光沢、高発色および低温定着性を悪化させない範囲で結着樹脂の分子量を拡大したものを使用することも提案されているが、その場合、メルトフラッシング工程において、有機顔料を高濃度で樹脂と剪断混合するために結着樹脂の分子量が大きく変化してしまい、製造安定性が悪化してしまうという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のような実情に鑑みてなされたものである。すなわち、本発明の目的は、フルカラー画像に要求される高発色、高光沢の画像が形成可能であり、かつ低温定着性を有し、高温オフセットが発生しがたく、定着可能温度範囲が広く、かつ溶融したトナーの定着ロールからの離型性がよく、定着ロールへのオイル供給が低減でき、トナーが過剰に溶融することによる画質低下が起こり難いカラートナーを提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、トナーにおける結着樹脂として、実質的にテトラヒドロフラン不溶分を有しない特定の分子量を有する非線状ポリエステルを用い、着色剤として、特定の分子量を有する線状ポリエステルでメルトフラッシングした有機顔料を使用することによって達成される。すなわち、本発明の静電荷像現像用カラートナーは、少なくとも結着樹脂と着色剤とからなる静電荷像現像用カラートナーにおいて、結着樹脂が実質的にテトラヒドロフラン不溶分を含有しない重量平均分子量30,000〜100,000非線状ポリエステルを含有し、着色剤が重量平均分子量7,000〜20,000の線状ポリエステルでメルトフラッシング処理された有機顔料であることを特徴とする。また、本発明の上記の静電荷像現像用カラートナーの製造方法は、着色剤を線状ポリエステルでメルトフラッシング処理する工程、該処理された着色剤を結着樹脂と溶融混練し、粉砕する工程を有することを特徴とする。
【0007】以下、本発明を具体的に発明する。本発明において結着樹脂の構成成分として用いる実質的にテトラヒドロフラン不溶分を含有しない非線状ポリエステルは、2価のアルコールモノマーおよびカルボン酸モノマーと3価以上の多価アルコールモノマーまた3価以上の多価カルボン酸モノマーを使用して構成される。3価以上の多価アルコールモノマーとしては、例えばソルビトール、1,2,3,6ーヘキサンテトロール、1,4ーソルビタン、ペンタエリスリトール、1,2,4ーブタントリオール、1,2,5ーペンタントリオール、グリセリン、2ーメチルプロパントリオール、2ーメチルー1,2,4ーブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5ートリヒドロキシメチルベンゼン等をあげることができる。また、3価以上の多価カルボン酸モノマーとしては、例えば1,2,4ーベンゼントリカルボン酸、1,2,5ーベンゼントリカルボン酸、1,2,4ーシクロヘキサントリカルボン酸、2,5,7ーナフタレントリカルボン酸、1,2,4ーナフタレントリカルボン酸、1,2,4ーブタントリカルボン酸等をあげることができる。
【0008】さらに、2価のアルコールモノマーまたは2価のカルボン酸モノマーが用いられる。具体的には、2価のアルコールモノマーとしては、ビスフェノールーAーアルキレンオキサイド付加物、2価のカルボン酸モノマーとしては、テレフタル酸またはフマル酸からなるものが好適に用いられる。その他、2価のアルコールモノマーとしては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2ープロピレングリコール、1,3ープロピレングリコール、1,4ーブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4ーブテンジオール、シクロヘキサンメタノール、水素添加ビスフェノールA等の2価のアルコールをあげることができる。また、2価のカルボン酸モノマーとしては、例えばマレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸類あるいはアルキルコハク酸、これらの酸無水物、アルキルエステル等をあげることできる。特に、アルキル置換またはアルケニルコハク酸誘導体が好ましく用いられ、より具体的にはドデセニルコハク酸またはドデセニルコハク酸無水物を使用することが好ましい。
【0009】本発明における上記非線状ポリエステルは、実質的にテトラヒドロフランに溶解しない成分を含有せず、そしてゲルパーミエイションクロマトグラフィー測定による分子量が、重量平均分子量30,000〜100,000、好ましくは35,000〜80,000であり、数平均分子量は1,000〜6,000にあるのが好ましく、より好ましくは2,000〜5,000の範囲にある。分子量が上記の範囲より大きいと、低温定着性が悪くなり、カラートナーの発色性が低下する。また、分子量が上記の範囲より小さいと、トナーのオフセット性が悪化する。また、テトラヒドロフランに溶解しない成分が存在すると、溶融混練前後での分子量変化を生じるために製造安定性が低下する。またトナー溶融ムラが発生し、フルカラー画像均一性が低下するために好ましくない。また上記非線状ポリエステルは、フローテスターによる軟化点が90〜150℃、好ましくは100〜140℃の範囲にあるのが好ましい。軟化点が上記の範囲より大きいと、低温定着性が悪くなる。軟化点が上記の範囲より小さいと、ポリマーのガラス転移点が低下するため、トナーのブロッキング性が悪化する。また示差熱分析によるガラス転移点が50〜80℃、好ましくは55〜70℃の範囲にあることが好ましい。
【0010】なお、ガラス転移点の測定は、島津熱分析装置DT−40/DSC−41システムを使用して行い、測定条件として、昇温速度=5°C/min、測定温度範囲=40〜100℃を採用し、その条件下で測定して得たDSCカーブから接線法により求めたショルダー値をガラス転移点とした。ポリマーの軟化点は、フローテスター法により決定し、見かけ粘度が104 ポイズとなる温度を軟化点とした。測定装置として島津フローテスタCFT500−Aを使用し、測定条件はダイ=0.5mm×1.0mm、昇温速度=5℃/min、荷重=10kg、予熱時間=300sec、測定温度範囲=80〜190℃とした。ポリマーの分子量測定は、測定装置として全自動高温高速クロマトグラフ(WATERS ALC/GPC 150C)を使用し、溶媒としてテトラヒドロフランを使用し、流速=1.0ml/min、温度=40℃、検出器=示差屈折計(RI)の条件で行った。
【0011】本発明において上記非線状ポリエステルには、線状ポリエステルを併用するのが好ましい。特に、顔料のメルトフラッシング処理に使用する線状ポリエステルが好ましい。顔料のメルトフラッシング処理に使用する線状ポリエステルおよび併用する線状ポリエステルは、2価のアルコールと2価のカルボン酸とより構成されるが、2価のアルコールモノマーとしては、ビスフェノール−A−アルキレンオキサイド付加物、2価のカルボン酸モノマーとしては、テレフタル酸またはフマル酸をからなるものが好適に用いられる。特に、ビスフェノール−A−アルキレンオキサイド付加物としては、ビスフェノール−A−エチレンオキサイド付加物、ビスフェノール−A−プロピレンオキサイド付加物が好ましく用いられる。その他、これらモノマーと共に使用されるモノマーとしては、次のような2価のアルコールモノマーおよびカルボン酸モノマーが挙げられる。すなわち、2価のアルコールモノマーとして、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2ープロピレングリコール、1,3ープロピレングリコール、1,4ーブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4ーブテンジオール、シクロヘキサンジメタノール、水素添加ビスフェノールA等の2価のアルコールをあげることができ、2価のカルボン酸モノマーとして、例えばマレイン酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、マロン酸類あるいはアルキルコハク酸、これらの酸無水物、アルキルエステル等をあげることができる。
【0012】これら線状ポリエステルは、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー測定による分子量が、重量平均分子量7,000〜20,000であり、数平均分子量1,000〜5,000の範囲にあるのが好ましく、より好ましくは2,000〜4,000の範囲にある。分子量が上記の範囲より大きいと、メルトフラッシング顔料作製時にポリマーの分子鎖が剪断力により剪断され、分子量が大きく変化するため、トナー製造安定性が劣化し、また、分子量が上記の範囲より小さいと、ポリマーのガラス転移点が低下するため、トナーのブロッキング性が悪化する。またフローテスターによる軟化点が、90〜130℃、好ましくは100〜120℃の範囲にあることが好ましい。軟化点が上記の範囲より大きいと、低温定着性が悪くなる。軟化点が上記の範囲より小さいと、ポリマーのガラス転移点が低下するため、トナーのブロッキング性が悪化する。さらにまた、示差熱分析によるガラス転移点が50〜80℃、好ましくは55〜70℃の範囲にあることが好ましい。
【0013】本発明におけるトナーの結着樹脂において、非線状ポリエステルと線状ポリエステルとが用いられる場合、両者は、重量比で90:10〜10:90の範囲割合で混合するのが好ましい。非線状ポリエステルの混合割合が10重量%より少ないと、オフセット性の改善効果が発揮されない。また混合割合が90重量%より多いと、低温定着性が悪くなる。
【0014】本発明において着色剤としては、モノアゾイエロー、ジスアゾイエロー、カーミン、キナクリドン、ローダミン、銅フタロシアニン等の有機顔料を用いることができる。特にC.I.ピグメントレッド48:1、C.I.ピグメントレッド122、C.I.ピグメントレッド57:1、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントブルー15:3等を用いることができる。本発明において、上記の有機顔料は、上記した線状ポリエステルでメルトフラッシング処理されていることが必要である。具体的には、上記有機顔料の含水ペーストに線状ポリエステルを添加し、加圧ニーダーで溶融混練しながら含水ペースト中の水をポリエステルで置換しながら水分を除去することによって得られる。有機顔料の含有量は、10〜50wt%の範囲が好ましい。
【0015】本発明のカラートナーは、上記のように線状ポリエステルを用いてメルトフラッシング処理された着色剤を、上記した結着樹脂と溶融混練し、冷却し、粉砕し、分級することによって製造することができる。着色剤の添加量としては、結着樹脂100重量部に対して有機顔料2〜15重量部の範囲にあることが好ましい。有機顔料の添加量が2重量部よりも少なくなると、着色力が弱くなり、15重量部より多くなると、カラートナーの透明性を低下させる。さらに本発明においては、必要に応じてカラートナーの色調に影響を与えない無色または淡色の荷電制御剤を添加してもかまわない。無色または淡色の荷電制御剤としては、ホウ素系錯体、クロム系錯体、亜鉛系錯体等の錯体をあげることできる。荷電制御剤の添加量としては、結着樹脂100重量部に対して0.1〜6重量部の範囲にあることが好ましい。
【0016】
【作用】本発明においては、実質的にテトラヒドロフラン不溶分を有しない重量平均分子量30,000〜100,000の非線状ポリエステルを含む結着樹脂を用いることによって、低温定着性と高温オフセットを維持しつつ、定着ロールからの用紙剥離性を向上させるとともに、メルトフラッシング顔料作製に使用する樹脂として、重量平均分子量7,000〜20,000の線状ポリエステルを使用することにより、メルトフラッシング顔料作製時における樹脂の分子量変化をなくし、製造安定性を確保することができる。さらにメルトフラッシング顔料を使用することにより、トナー中での顔料の分散単位を微細にすることができると共に、トナーの溶融混合時においても、発生するせん断力による高分子量の非線状ポリエステルの分子量変化をなくすことができる。特に本発明においては、高画質を達成するために体積平均径が3.5から8ミクロンの小粒径トナーを採用しているために、製造工程において発生する微粉トナーの再利用、トナーの製造安定性を保証することができる。特に、アルキル置換またはアルケニルコハク酸誘導体をモノマー成分として含有するポリエステルを用いた場合には、低温定着性がより良好であり、かつ高温耐オフセット性を有するので好ましく用いられる。さらに体積平均径が3.5から8ミクロンの小粒径トナーになると、粉体流動性が悪化し、製造時のトナーの取扱いが困難になるが、本発明においては、アルキル置換コハク酸誘導体をモノマー成分とする実質的にテトラヒドロフラン不溶分を有しない重量平均分子量30,000〜100,000の非線状ポリエステルを使用するので、トナーを小径化しても粉体流動性が悪化することがなく、製造時のトナーの取扱性も向上する。
【0017】
【実施例】
メルトフラッシング顔料製造法−1(1)線状ポリエステル−A 100重量部(ビスフェノール−A−プロピレンオキサイド付加物(商品名ニューポールBP−2P、三洋化成社製)/フマル酸)
重量平均分子量(Mw)=13,000数平均分子量(Mn)=2,700重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=4.8ガラス転移温度=58℃、軟化点=105℃(2)シアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3) 62重量部含水ペースト(含水ペースト中の水分量=30wt%)
上記成分を加圧ニーダーで溶融混練し、顔料含水ペースト中の水をポリエステル−Aで置換しながら水分を除去して、顔料含有量30wt%のシアンフラッシング顔料aを作製した。
【0018】メルトフラッシング顔料製造法−2シアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)含水ペーストを顔料(C.I.ピグメントレッド57:1)含水ペーストに代えた以外は、メルトフラッシング顔料製造法−1と同様にして、顔料含有量30wt%のマゼンタフラッシング顔料bを作製した。
【0019】メルトフラッシング顔料製造法−3シアン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3)含水ペーストをイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー17)含水ペーストに代えた以外は、メルトフラッシング顔料製造法ー1と同様にして、顔料含有量30wt%のイエローフラッシング顔料cを作製した。
【0020】メルトフラッシング顔料製造法−4非線状ポリエステル−B(ビスフェノール−A−エチレンオキサイド付加物(商品名ニューポールBPE−20、三洋化成社製)/ビスフェノール−A−プロピレンオキサイド付加物(商品名ニューポールBP−2P、三洋化成社製)/テレフタル酸/ドデセニルコハク酸/無水トリメリット酸)
重量平均分子量(Mw)=83,000数平均分子量(Mn)=3,600重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=23ガラス転移点=62℃、軟化点=130℃この樹脂1gをテトラヒドロフラン100mlに加えて、約24時間、室温で攪拌後、静置して不溶分の有無を目視にて観察したところ、不溶分は認められなかった。
【0021】上記線状ポリエステル−Aを非線状ポリエステル−Bに代えた以外は、メルトフラッシング顔料製造法ー1と同様にして、顔料含有量30wt%のシアンメルトフラッシング顔料dを作製した。これらメルトフラッシング顔料a、b、cおよびdのそれぞれをテトラヒドロフランに溶解して顔料構成分を除いてポリマーの分子量を測定したところ、メルトフラッシング顔料a,b,cの場合は、原料の線状ポリエステル−Aの分子量、分子量分布と比較して殆ど変化していなかったが、メルトフラッシング顔料dの場合は、原料の非線状ポリエステル−Bの分子量、分子量分布と比較して大きく変化していた。
【0022】顔料製造工程でのポリマー分子量変化の状態を表1に示す。
【表1】


【0023】実施例1(1)線状ポリエステル−A 30重量部(2)非線状ポリエステル−B 70重量部(3)シアンメルトフラッシング顔料a 15重量部上記成分を加圧ニーダーにて溶融混練した後、冷却し、ジェットミルで粉砕し、分級して、顔料含有量4wt%で体積平均粒径7μmのシアントナーAを作製した。シアンメルトフラッシング顔料aをマゼンタメルトフラッシング顔料bに代えた以外は、同様にして顔料含有量4wt%で体積平均粒径7μmのマゼンタトナーBを作製した。シアンメルトフラッシング顔料aをイエローメルトフラッシング顔料cに代えた以外は、同様にして顔料含有量4wt%で体積平均粒径7μmのイエロートナーCを作製した。これらの各々のトナー100重量部に疎水性シリカ(R812:日本アエロジル社製)1.0重量部を外添し、スチレン−メチルメタクリレート共重合体をコートしたフェライトキャリヤと混合して現像剤を調製し、富士ゼロックス社製Acolorデジタルフルカラー改造機で未定着のサンプルを作製し、後記の定着装置を用いて定着特性の評価を実施した。
【0024】実施例2(1)線状ポリエステル−A 50重量部(2)非線状ポリエステル−B 50重量部(3)シアンメルトフラッシング顔料a 15重量部上記成分を加圧ニーダーにて溶融混練した後、冷却し、ジェットミルで粉砕し、分級して、顔料含有量4wt%で体積平均粒径7μmのシアントナーDを作製した。シアンメルトフラッシング顔料aをマゼンタメルトフラッシング顔料bに代えた以外は、同様にして顔料含有量4wt%で体積平均径7μmのマゼンタトナーEを作製した。シアンメルトフラッシング顔料aをイエローメルトフラッシング顔料cに代えた以外は、同様にして顔料含有量4wt%で体積平均径7μmのイエロートナーFを作製した。これらのトナーを使用して実施例1と同様にして現像剤を調製し、富士ゼロックス社製Acolorデジタルフルカラー改造機で未定着のサンプルを作製し、後記の定着装置を用いて定着特性の評価を実施した。
【0025】実施例3(1)線状ポリエステル−A 70重量部(2)非線状ポリエステル−B 30重量部(3)シアンメルトフラッシング顔料a 15重量部上記成分を用い、実施例1と同様にして顔料含有量4wt%で体積平均径7μmのシアントナーGを作製した。シアンメルトフラッシング顔料aをマゼンタメルトフラッシング顔料bに代えた以外は、同様にして顔料含有量4wt%で体積平均径7μmのマゼンタトナーHを作製した。シアンメルトフラッシング顔料aをイエローメルトフラッシング顔料cに代えた以外は、同様にして顔料含有量4wt%で体積平均径7μmのイエロートナーIを作製した。これらのカラートナーを使用して実施例1と同様にして現像剤を調製し、富士ゼロックス社製Acolorデジタルフルカラー改造機で未定着のサンプルを作製し、後記の定着装置を用いて定着特性の評価を実施した。
【0026】比較例1(1)線状ポリエステル−A 100重量部(2)シアンメルトフラッシング顔料a 15重量部上記成分を加圧ニーダーにて溶融混練した後、冷却し、ジェットミルで粉砕し、分級して、顔料含有量4wt%で体積平均径7μmのシアントナーJを作製した。シアンメルトフラッシング顔料aをマゼンタメルトフラッシング顔料bに代えた以外は、同様にして顔料含有量4wt%で体積平均径7μmのマゼンタトナーKを作製した。シアンメルトフラッシング顔料aをイエローメルトフラッシング顔料cに代えた以外は、同様にして顔料含有量4wt%で体積平均径7μmのイエロートナーLを作製した。これらのトナーを使用して実施例1と同様にして現像剤を調製し、富士ゼロックス社製Acolorデジタルフルカラー改造機で未定着のサンプルを作製し、後記の定着装置を用いて定着特性の評価を実施した。
【0027】比較例2(1)線状ポリエステル−A 70重量部(2)非線状ポリエステル−C 30重量部(ビスフェノール−A−エチレンオキサイド付加物(商品名ニューポールBPE−20、三洋化成社製)/ビスフェノール−A−プロレンオキサイド付加物(商品名ニューポールBP−2P、三洋化成社製)/テレフタル酸/無水トリメリット酸)
重量平均分子量(Mw)=65,000数平均分子量(Mn)=4,000重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)=8.8ガラス転移点=65℃、軟化点=152℃(この樹脂1gをテトラヒドロフラン100mlに加えて、約24時間、室温で攪拌後、静置して不溶分の有無を目視にて観察したところ、不溶分は認められなかった。)
(3)シアンメルトフラッシング顔料d 15重量部上記成分を加圧ニーダーにて溶融混練した後、冷却し、ジェットミルで粉砕し、分級して、顔料含有量4wt%で体積平均径7μmのシアントナーMを作製した。このシアントナーMを使用して実施例1と同様にして現像剤を調製し、富士ゼロックス社製Acolorデジタルフルカラー改造機で未定着のサンプルを作製し、後記の定着装置を用いて定着特性の評価を実施した。
【0028】比較例3(1)線状ポリエステル−A 30重量部(2)非線状ポリエステル−B 70重量部(3)シアン顔料(C.Iピグメントブルー15.3) 4.2重量部上記成分を加圧ニーダーにて溶融混練した後、冷却し、ジェットミルで粉砕し、分級して、顔料含有量4wt%で体積平均径7μmのシアントナーNを作製した。
【0029】このシアントナーNと実施例1で作製したシアントナーAの分子量をGPCを使用して測定した。結果を表2に示す。
【表2】GPCによる分子量測定結果

【0030】このトナーを使用して実施例1と同様にして現像剤を調製し、富士ゼロックス社製Acolorデジタルフルカラー改造機で未定着のサンプルを作製し、後記の定着装置を用いて定着特性の評価を実施した。
【0031】定着装置としては、図1に示される構成のものを使用した。図1に示される加熱ロール1は、内部に500Wのコルツランプ3を備え、外径44mmスチール型コア材で形成された基質ロール4と、適宜プライマーを介して上記基質ロール4上に設けられ、シリコンコンパウンド(SH841U、東レ社製)100重量部に対して、結晶性シリカ100重量部と加硫剤(RC−4、東レ社製)0.8部を充填混合して形成され、そのゴム硬度がJIS硬度において60°およびその厚みtが3mmの内側弾性体5と、この内側弾性体5上に、フッ素系ゴム(例えば、商品名バイトンゴム、デュポン社B−50)100重量部とカーボン(キャボット社、サーマルブラックMT)2重量部と酸化マグネシウム(MgO;協和化学社製;#30)10重量部とを充填混合して形成された、厚みが40μmの外側弾性層6とより構成されている。一方加圧ロール2は、内部に500Wのコルツランプ3を備え、外径48mmスチール型コア材で形成された基質ロール7と、適宜プライマーを介して上記基質ロール4上に設けられ、シリコンコンパウンド(SH841U、東レ社製)100重量部に対して、結晶性シリカ50重量部と加硫剤(RC−4、東レ社製)0.8部と充填混合して形成され、そのゴム硬度がJIS硬度において60°およびその厚みtが1mmの内側弾性体8と、この内側弾性体8上に、フッ素系ゴム(例えば、商品名バイトンゴム、デュポン社B−50)100重量部とカーボン(キャボット社、サーマルブラックMT)2重量部と酸化マグネシウム(MgO;協和化学社製;#30)10重量部とを充填混合して形成された、厚みが40μmの外側弾性層9とより構成されている。また、上記加熱ロール1と加圧ロール2とは、図示されない加圧機構により圧接されて、中央部で6mmのニップ幅が形成されている。さら、加熱ロール1と加圧ロール2は、互いに矢印方向に表面速度150mm/secで回転するようになっている。
【0032】上記の定着装置にシリコーンオイルを供給しながら、加圧ロールの表面温度を150℃に固定し、加熱ロールの表面温度を110℃〜240℃まで変化させて評価した。用紙剥離テストは、加圧ロールの表面温度を150℃に固定し、加熱ロールの表面温度を120℃〜240℃まで変化させて評価した。OHPの光透過性評価は、加圧ロールの表面温度を150℃に固定し、加熱ロールの表面温度を160℃に固定し、加熱ロール表面速度50mm/secに設定して評価した。最低発色温度は、コピーの光沢を光沢計(グロスメーター−グロスガード−[入射角75°]、米国ガードナー社製)により測定した値が40以上になった時の温度を意味する。高温オフセット温度(ホットオフセット発生温度)は、定着トナーが再び加熱ロールへ移行してしまう温度を意味する。用紙剥離性(用紙送り性)は、目視による加熱ロールへの紙の巻き付き性により判断した。
【0033】これらの評価結果を表3に示す。
【表3】


【0034】比較例1のトナーは、トナーを構成する結着樹脂が線状ポリマーのみからなるものであるためホットオフセットが発生しやすく、用紙剥離性も劣っていた。比較例2のトナーは、メルトフラッシング顔料を処理するポリエステルが非線状のポリエステルであるために、トナーの最低定着温度が高くなり、また最低発色温度が高くなる。また、用紙剥離性も若干劣っていた。比較例3のトナーは、顔料として市販の乾燥粉末顔料を使用したために、トナー中の顔料分散が悪く、OHPシートの光透過性が劣っていた。さらにトナーの分子量がメルトフラッシング顔料を使用したトナーに比べて分子量が大きく低下しており、製造安定性に欠け、分級工程で発生する微粉の再使用ができなかった。
【0035】
【発明の効果】本発明の静電荷像現像剤用カラートナーは、実質的にテトラヒドロフラン不溶分を有しない重量平均分子量30,000〜100,000の非線状ポリエステルを含有する結着樹脂および重量平均分子量7,000〜20,000の線状ポリエステルを使用したメルトフラッシング顔料を使用することにより、低温定着性と高温オフセットを維持しつつ、定着ロールからの用紙剥離性が向上し、良好な画質のフルカラートナー画像を形成することができる。また、色再現性範囲の広い、OHPシートの光透過性の良いカラー画像を提供することができる。さらに、トナー製造時に結着樹脂の分子量変化がなく、トナーの製造安定性を保証することができ、またトナーの製造工程で発生する廃却分級微粉を再利用することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の静電荷像現像剤用カラートナーを用いて得られた未定着画像を定着するための定着装置の概略図である。
【符号の説明】
1…加熱ロール、2…加圧ロール、3…コルツランプ、4…基質ロール、5…内側弾性体、6…外側弾性層、7…基質ロール、8…内側弾性体、9…外側弾性層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも結着樹脂と着色剤とからなる静電荷像現像用カラートナーにおいて、該結着樹脂が実質的にテトラヒドロフラン不溶分を含有しない重量平均分子量30,000〜100,000の非線状ポリエステルを含有し、該着色剤が重量平均分子量7,000〜20,000の線状ポリエステルでメルトフラッシング処理された有機顔料であることを特徴とする静電荷像現像用カラートナー。
【請求項2】 着色剤を線状ポリエステルを用いてメルトフラッシング処理する工程、処理された着色剤を結着樹脂と溶融混練し、粉砕する工程を有することを特徴とする請求項1記載の静電荷像現像用カラートナーの製造方法。

【図1】
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【特許番号】特許第3384100号(P3384100)
【登録日】平成14年12月27日(2002.12.27)
【発行日】平成15年3月10日(2003.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−70233
【出願日】平成6年3月16日(1994.3.16)
【公開番号】特開平7−261460
【公開日】平成7年10月13日(1995.10.13)
【審査請求日】平成11年11月29日(1999.11.29)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【参考文献】
【文献】特開 昭62−280755(JP,A)
【文献】特開 昭59−7960(JP,A)
【文献】特開 平6−19198(JP,A)
【文献】特開 平5−19533(JP,A)
【文献】特開 平2−66561(JP,A)
【文献】特開 平6−161154(JP,A)
【文献】特開 平5−34978(JP,A)
【文献】特開 平4−242752(JP,A)
【文献】特開 平6−56973(JP,A)