説明

静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

【課題】キャリア抵抗の低下が抑制される静電荷像現像用キャリアを提供すること。
【解決手段】芯材と、前記芯材を被覆し、樹脂及び導電性を示す無機酸化物の粒子を含有する被覆層と、を有し、前記無機酸化物の粒子が凝集している場合には凝集径が、凝集していない場合には一次粒径が、230nm以上970nm以下である静電荷像現像用キャリア。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電荷像現像用キャリア、静電荷像現像剤、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子写真用キャリアに関して画像のくすみを改善すべく、カーボンブラック以外の導電剤を添加する方法が検討されている。
例えば、被覆層中にシランカップリング処理されたインジウムドープ酸化スズを導電性粒子として含有したキャリアが開示されている(例えば、特許文献1参照)。
また、扁平形状の無機粒子を被覆樹脂層に含有したキャリアが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
更に、アスペクト比が3〜200の針状又は棒状のインジウムドープ酸化スズを導電性粒子として用いたキャリアが開示されている(例えば、特許文献3参照)。
更に、球状から塊状のTiO、ZnO又はSnOからなる平均粒子径の異なる2種以上を併用した被覆層を有するキャリアが開示されている(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−079022号公報
【特許文献2】特開2009−009000号公報
【特許文献3】特開2009−186769号公報
【特許文献4】特開2000−242044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、被覆層が230nm以上970nm以下の一次粒径又は凝集径を有する導電性を示す無機酸化物の粒子を含有しない場合に比較して、キャリア抵抗の低下が抑制される静電荷像現像用キャリアを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題は、以下の本発明により達成される。
すなわち請求項1に係る発明は、
芯材と、
前記芯材を被覆し、樹脂及び導電性を示す無機酸化物の粒子を含有する被覆層と、
を有し、
前記無機酸化物の粒子が凝集している場合には凝集径が、凝集していない場合には一次粒径が、230nm以上970nm以下である静電荷像現像用キャリアである。
【0006】
請求項2に係る発明は、
前記無機酸化物の粒子の凝集径が230nm以上970nm以下であり、且つ前記無機酸化物の一次粒径に対する凝集径の比が2.8以上7.5以下である請求項1に記載の静電荷像現像用キャリアである。
【0007】
請求項3に係る発明は、
前記被覆層中で、前記無機酸化物の粒子が凝集している場合には凝集径、凝集していない場合には一次粒径の粒度分布(GSD)が2.0以上である請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用キャリアである。
【0008】
請求項4に係る発明は、
前記被覆層に含有される前記樹脂が、シクロヘキシルメタクリレートである請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアである。
【0009】
請求項5に係る発明は、
トナーと、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアとを含む静電荷像現像剤である。
【0010】
請求項6に係る発明は、
現像手段を備え、前記現像手段に請求項5に記載の静電荷像現像剤が収容された、プロセスカートリッジである。
【0011】
請求項7に係る発明は、
潜像保持体と、
前記潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、
前記潜像保持体の表面に静電潜像を形成させる静電潜像形成手段と、
請求項5に記載の静電荷像現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着手段と、
を有する画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の請求項1に係る発明によれば、被覆層が230nm以上970nm以下の一次粒径又は凝集径を有する導電性を示す無機酸化物の粒子を含有しない場合に比較して、キャリア抵抗の低下が抑制される。
請求項2に係る発明によれば、無機酸化物の粒子の凝集径が230nm以上970nm以下で前記無機酸化物の一次粒径に対する凝集径の比が2.8以上7.5以下でない場合に比較して、キャリア抵抗の低下がより抑制される。
【0013】
請求項3に係る発明によれば、被覆層中で、一次粒径又は凝集径の粒度分布(GSD)が2.0未満の場合に比較して、キャリア抵抗の低下がより抑制される。
請求項4に係る発明によれば、被覆層の樹脂がシクロヘキシルメタクリレートでない場合に比較して、キャリア抵抗の低下がより抑制される。
【0014】
請求項5に係る発明によれば、230nm以上970nm以下の一次粒径又は凝集径で導電性を示す無機酸化物の粒子を被覆層に含有するキャリアを含まない場合に比較して、画像のくすみを抑え細線の再現性に優れる。
請求項6に係る発明によれば、230nm以上970nm以下の一次粒径又は凝集径で導電性を示す無機酸化物の粒子を被覆層に含有するキャリアを用いない場合に比較して、画像のくすみを抑え細線の再現性に優れる。
請求項7に係る発明によれば、230nm以上970nm以下の一次粒径又は凝集径で導電性を示す無機酸化物の粒子を被覆層に含有するキャリアを用いない場合に比較して、画像のくすみを抑え細線の再現性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本実施形態の第一の形態のキャリアの一部を示す概略構成図である。
【図2】本実施形態の第二の形態のキャリアの一部を示す概略構成図である。
【図3】本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図4】本実施形態のプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施形態により詳細に説明する。
<静電荷像現像用キャリア>
本実施形態の静電荷像現像用キャリア(以下、「キャリア」という場合がある)は、芯材と前記芯材を被覆する被覆層とを有し、該被覆層は、樹脂と導電性を示す無機酸化物の粒子(以下、「無機酸化物粒子」という場合がある)と、を含有する。無機酸化物粒子は、凝集している場合には凝集径が、凝集していない場合には一次粒径が、230nm以上970nm以下である
【0017】
本実施形態のキャリアでは、導電性粒子として無機酸化物粒子を用いる。無機酸化物とすることで、カーボンブラックを用いた場合に比べて画像のくすみが改善される。
更に、無機酸化物粒子を用いたときのキャリア抵抗の低下、ひいてはトナーへの帯電特性の低下を抑える方策として、無機酸化物粒子による被覆層中での導通路の形成に着目し、本実施形態のキャリアに到達した。具体的には、無機酸化物粒子の被覆層中での空間としての広がりを持たせるべく、上述するように無機酸化物粒子の一次粒径又は凝集径を230nm以上970nm以下とする。一次粒径又は凝集径が230nm未満であると導電性が低下するため、導電材料である無機酸化物粒子の添加量を増加させる必要があり、その結果、電荷交換性が低下したり、環境依存性が大きくなったり、現像ストレスが増大したりという二次的な弊害が発生する。一方、970nmを超えると被覆層の表面から無機酸化物粒子が露出しやすくなり、現像ストレスを受けて比重が重い無機酸化物の粒子が離脱し易くキャリア抵抗が上昇するなどの変動を生じ、ひいては画像のくすみが発生したりや細線再現性が低下する。これに対し、無機酸化物粒子の一次粒径又は凝集径を230nm以上970nm以下とすると、環境依存性が小さくなり、現像ストレスを受けてもキャリア抵抗は所望の一定の範囲内に収まる。
以下、まず本実施形態のキャリアの主な構成及び材料について説明する。
【0018】
(芯材)
本実施形態で用いられる芯材としては、特に制限はなく、鉄、鋼、ニッケル、コバルト等の磁性金属、又は、フェライト、マグネタイト等の磁性酸化物、磁性粒子とバインダー樹脂とを含む磁性粒子分散型の芯材等が挙げられる。
【0019】
また、前記フェライトの例としては、下記式(1)で示される構造のものが好ましく挙げられる。
【0020】
(MO)(Fe・・・(1)
【0021】
式(1)中、MはCu、Zn、Fe、Mg、Mn、Ca、Li、Ti、Ni、Sn、Sr、Al、Ba、Co及びMoからなる群より選択される少なくとも1種を示す。また、X、Yはmol比を示し、かつX+Y=100の条件を満たす。
【0022】
本実施形態において、磁性粒子分散型芯材は、磁性粒子がバインダー樹脂中に分散されてなる。
上記磁性粒子としては、従来公知のいずれのものを使用してもよいが、特に望ましくはフェライトやマグネタイト、マグヘマタイトが選ばれる。特に、強磁性の磁性粒子としては、マグネタイト、マグヘマタイトが選択され、他の磁性粒子としては、例えば鉄粉が知られている。鉄粉の場合は比重が大きいためトナーを劣化させやすいので、フェライトやマグネタイト、マグヘマタイトの方が安定性に優れている。
【0023】
磁性粒子として、具体的には、例えばマグネタイト、γ−酸化鉄、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Li系フェライト、Cu−Zn系フェライトなどの鉄系酸化物が挙げられる。中でも安価なマグネタイトが、より望ましく用いられる。
【0024】
磁性粒子の粒径は、0.01μm以上1μm以下であることが望ましく、0.05μm以上0.7μm以下であることがより望ましく、0.1μm以上0.6μm以下であることが更に望ましい。磁性粒子の粒径が0.01μm以上1μm以下の範囲内にあると、磁力の低下が抑えられ、また均質な芯材が得やすくなる。
【0025】
また、磁性粒子の芯材中における含有量としては、30質量%以上95質量%以下であることが好ましく、45質量%以上90質量%以下であることがより好ましく、60質量%以上90質量%以下であることが更に好ましい。磁性粒子の含有量が上記範囲内にあると、キャリア1個当たりの磁力の低下が抑えられて拘束力が充分得られ、飛散等が抑制される。また、磁気ブラシが固くなり過ぎることを抑えて割れを抑制し、トナーへの負荷が抑えられ、画像の粗さが抑制される。
【0026】
本実施形態において磁性粒子分散型芯材を構成するバインダー樹脂としては、架橋されたスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル系共重合樹脂、フェノール系樹脂等が挙げられ、フェノール系樹脂が特に好ましい。
【0027】
また、本実施形態において磁性粒子分散型芯材は、目的に応じて、更にその他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、帯電制御剤、フッ素含有粒子などが挙げられる。
【0028】
(被覆層)
本実施形態におけるキャリアは、前記の芯材を被覆する被覆層を有する。
この被覆層には、樹脂と共に導電性を示す無機酸化物の粒子が含有される。この無機酸化物の粒子は、凝集している場合には凝集径が、凝集していない場合には一次粒径が、230nm以上970nm以下となって被覆層に含有される。
【0029】
−樹脂−
被覆層に用いる樹脂としては、キャリア用の被覆層の材料として用いられているものであれば公知のマトリックス樹脂が利用でき、二種類以上の樹脂を併用してもよい。被覆層を構成するマトリックス樹脂としては、大別すると、トナーに帯電性を付与するための帯電付与樹脂と、トナー成分のキャリアへの移行を防止するために用いられる表面エネルギーの低い樹脂とが挙げられる。
【0030】
ここで、トナーに負帯電性を付与するための帯電付与樹脂としては、アミノ系樹脂、例えば、尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、及びエポキシ樹脂等が挙げられ、更にポリビニル及びポリビニリデン系樹脂、アクリル樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリシクロヘキシルメタクリレート樹脂、スチレンアクリル共重合樹脂等のポリスチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル樹脂、ポリビニルアセテート樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、エチルセルロース樹脂等のセルロース系樹脂等が挙げられる。
また、トナーに正帯電性を付与するための帯電付与樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル等のハロゲン化オレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられる。
【0031】
トナー成分のキャリアへの移行を防止するために用いられる表面エネルギーの低い樹脂としては、ポリエチレン樹脂、ポリ弗化ビニル樹脂、ポリ弗化ビニリデン樹脂、ポリトリフルオロエチレン樹脂、ポリヘキサフルオロプロピレン樹脂、弗化ビニリデンとアクリル単量体との共重合体、弗化ビニリデンと弗化ビニルとの共重合体、テトラフルオロエチレンと弗化ビニリデンと非弗化単量体とのターポリマー等のフルオロターポリマー、及びシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0032】
特に、被覆層の樹脂としては、脂環基を有するメタクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含む重合体が好適である。この重合体は疎水性が高いため、この重合体を含む樹脂層を有するキャリアは安定した抵抗、帯電性を示す。
脂環基を有するメタクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含む重合体は、脂環基を有するメタクリル酸エステルを単量体として用いて得られた重合体である。脂環基を有するメタクリル酸エステルの具体例としては、例えば、シクロヘキシルメタクリレート、シクロデシルメタクリレート、アダマンチルメタクリレート、シクロプロピルメタクリレート、シクロブチルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレート、シクロノニルメタクリレート、イソボニルメタクリレート、シクロノルボニルメタクリレート、シクロボロニルメタクリレート等が挙げられる。これらの中でもシクロヘキシルメタクリレート、シクロデシルメタクリレート等が望ましく、シクロヘキシルメタクリレートがさらに望ましい。脂環基がシクロヘキシル基であると、重合体の疎水性、樹脂層の強度の点で望ましい。
【0033】
脂環基を有するメタクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含む重合体は、鎖状基を有するメタクリル酸エステル由来の繰り返し単位をさらに含む共重合体であってもよい。本実施形態において、「鎖状基」とは、主鎖に脂環構造を含まず、主鎖を構成する原子が線状に配列した鎖状構造を有する基を意味する。この「鎖状基」は枝分かれ構造を有していてもよい。鎖状基を有するメタクリル酸エステルの具体例としては、例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、ターシャリーブチルメタクリレート等が挙げられるが、これらの中でもメチルメタクリレートが望ましい。
一般に、疎水性を高くした樹脂(重合体)を含む樹脂層は、芯材との密着性に劣ったり、樹脂層がもろくなったりすることがある。被覆樹脂として鎖状基を有するメタクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含む共重合体を用いることにより、上記欠点が克服される。
【0034】
脂環基を有するメタクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含む重合体が共重合体である場合、脂環基を有するメタクリル酸エステル由来の繰り返し単位と鎖状基を有するメタクリル酸エステル由来の繰り返し単位との質量比は99:1乃至80:20であってもよく、95:5乃至85:15であってもよい。脂環基を有するメタクリル酸エステル由来の繰り返し単位と鎖状基を有するメタクリル酸エステル由来の繰り返し単位との質量比が99:1乃至80:20の範囲であると、樹脂層の芯材に対する密着性が向上する。
【0035】
脂環基を有するメタクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含む重合体の重量平均分子量は、4.0×10以上3.0×10以下であることが望ましく、5.0×10以上2.0×10以下であることがさらに望ましい。脂環基を有するメタクリル酸エステル由来の繰り返し単位を含む重合体の重量平均分子量が4.0×10以上3.0×10以下の範囲であると、樹脂層中に含まれる抵抗制御剤等の分散材料の分散性が向上する。その結果として、高温高湿下における画像濃度の再現性がさらに向上する。
【0036】
上記重量平均分子量は、ゲルパーミュエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定される。GPCによる分子量測定は、測定装置として東ソー製GPC・HLC−8120を用い、東ソー製カラム・TSKgel SuperHM−M(15cm)を使用し、THF溶媒で行った。重量平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作成した分子量校正曲線を使用して算出したものである。
【0037】
なお、ポリシクロヘキシルメタクリレート樹脂を用いると、上述のように帯電特性に優れ、また環境に対する変動が抑えられるが、一般的には機械的強度は充分でなく、芯材に対する密着性が低下しやすい。その結果、現像ストレスによって被覆層が剥離したカス状のものが画像部に混入し、画像の色クスミを生じさせて彩度・明度を損ないやすい。また、被覆層の剥離によるキャリア抵抗の低下が生じやすい。
しかしながら、本実施形態のキャリアによれば、画像のくすみの原因となるカーボンブラックを用いておらず、また後述のように無機酸化物の粒子の一次粒径又は凝集径を調節することでキャリア抵抗の低下も抑えられる。
【0038】
−無機酸化物粒子−
本実施形態の被覆層には、抵抗調整を目的として無機酸化物粒子が添加される。この無機酸化物の微粒子は、凝集している場合には凝集径が、凝集していない場合には一次粒径が、230nm以上970nm以下である。なお、本実施形態では2層以上の被覆層を有していてもよく、その場合には最表層に無機酸化物粒子が含まれることが望ましい。
【0039】
無機酸化物粒子としては、白色又は無色のものが望ましく、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、マグネシウムとカルシウムとアルミニウムと珪素などの金属との複合酸化物などが挙げられ、これらの中でもトナーに対する帯電付与能力の高い、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化スズが望ましく、帯電付与能力の安定性の観点から酸化スズがより望ましい。
これらの無機酸化物粒子は白色であり、カーボンブラックに比べて画像のくすみが抑えられる。なお、無機酸化物粒子は1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0040】
無機酸化物粒子は、ドーピングを施したものであってもよい。ドーピングを施した無機酸化物粒子としては、例えば、アンチモンをドープした酸化スズ、スズをドープした酸化インジウム、アルミニウムをドープした酸化亜鉛などが挙げられる。
【0041】
ドーピングを施した無機酸化物粒子は公知の方法を適用して製造される。例えば、粉砕などの固相法、火炎法、プラズマ法、真空蒸着法、スパッタリング法などの気相法や共沈法、均一沈殿法、金属アルコキシ法、噴霧乾燥法などの液相法などが挙げられる。これらの中でも、粒径の制御性や不純物の混入が少ないなどの理由より乾式気相法が望ましい。
【0042】
前記無機酸化物の微粒子が凝集している場合には凝集径が、凝集していない場合には一次粒径が、230nm以上970nm以下であり、300nm以上800nm以下が望ましく、350nm以上600nm以下がより望ましい。上記範囲内にあると、帯電量の環境依存性が大きくなったり、現像ストレスが増大したりという二次的な弊害の発生が抑えられ、現像ストレスによるキャリア抵抗の低下が抑えられる。
【0043】
上記無機酸化物粒子の一次粒径又は凝集径は、無機酸化物粒子を付与したキャリアの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、50個の無機酸化物粒子を測定し平均値を求めた値である。
【0044】
また、被覆層中において、前記無機酸化物の粒子が凝集している場合には凝集径、凝集していない場合には一次粒径の粒度分布(GSD)が2.0以上であることが好ましく、2.1以上であることがより好ましく、2.3以上5.0以下であることが更に好ましく、2.5以上4.0以下であることが更に好ましい。粒度分布(GSD)が上記範囲内にあると、被覆層中における導通路の形成のために、無機酸化物粒子が空間としての広がりを有し、より少ない添加量でも抵抗の低下が抑制され、抵抗制御性に優れる。更に、無機酸化物粒子の添加量が少なくなると、被覆層からの剥離が抑えられ、この剥離物による画像のくすみ等が抑制される。
【0045】
前記粒度分布(GSD)は、無機酸化物粒子を付与したキャリアの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、100個の無機酸化物粒子の一次粒径又は凝集径について測定し、下記式により求める。
粒度分布(GSD)=GSD=(D84p/D16p0.5
【0046】
式中、D16pは、粒子の粒子径について小径側から個数累積分布を描いたときに、累積16%となる粒子径を表し、D84pは、累積84%となる粒子径を表す。
【0047】
次に、無機酸化物粒子を含んで構成される被覆層の好適な態様について説明する。
第一の態様は、無機酸化物粒子が凝集粒子でなく、230nm以上970nm以下の一次粒径を有する場合である。図1は、第一の態様の無機酸化物粒子を含有するキャリアの一部を示す模式図である。
図1に示すキャリアでは、芯材40の表面を被覆する被覆層42を有し、被覆層42は樹脂44と第一の態様の無機酸化物粒子46とを含有する。第一の態様の無機酸化物粒子46は凝集しておらず、その一次粒径は230nm以上970nm以下である。
【0048】
図1に示すように、第一の態様の無機酸化物粒子46の一次粒径が230nm以上970nm以下の場合には、被覆層から無機酸化物粒子46が露出せず、よって現像ストレスを受けても無機酸化物粒子46の離脱が抑えられ帯電特性の低下が抑制される。また、無機酸化物粒子46による導通路が形成されて帯電特性の低下が抑えられる。
【0049】
第二の態様は、無機酸化物粒子が凝集粒子の場合であって、凝集径が230nm以上970nm以下の場合である。図2は、第二の態様の無機酸化物粒子を含有するキャリアの一部を示す模式図である。
図2に示すキャリアでは、芯材40の表面を被覆する被覆層42を有し、被覆層42の中には樹脂44と無機酸化物粒子47とを含有する。第二の態様の無機酸化物粒子47は凝集しており、その凝集径は230nm以上970nm以下である。
【0050】
第二の態様の無機酸化物粒子47では、無機酸化物粒子47の一次粒径に対する凝集径の比が2.8以上7.5以下であることが望ましい。この範囲にあると、導電性の低下が抑制されるため、添加量を増加させなくともよく、上記二次的な弊害の発生が抑制される。また、帯電性が均一化されやすく、トナーの帯電の挙動の安定化が図れる。更に上記範囲内にあると、比表面積の著しい増大が抑えられ、また被覆層の表面からの無機酸化物粒子47の露出が抑えられ、環境依存性も抑制される。
【0051】
また、第二の態様において、一次粒径に対する凝集径の比が2.8以上3.9以下、更に2.8以上3.5以下の場合には、導電粉径による導電路が形成されて、電気抵抗の制御性の点において好適である。
【0052】
更に、第二の態様においては、一次粒径に対する凝集径の比が4.0以上7.0以下、更に5.0以上6.2以下の場合には、導電粉の分散が良好になり、またコート膜中に充分に被覆状態となって露出がなくなり、キャリアの電気抵抗の環境への影響を抑制する点において好適である。
【0053】
第二の無機酸化物粒子47の一次粒径に対する凝集径の比は、無機酸化物粒子を付与したキャリアの断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察し、50個の凝集した無機酸化物粒子47について、一次粒径及び凝集径を測定し、その比を求め平均値を算出する。
【0054】
被覆層における無機酸化物粒子の含有量は、被覆層の強度を保ち、またキャリアの抵抗を調整する観点から、キャリアに対して0.2質量%以上10質量%以下であることが望ましく、0.4質量%以上5.0質量%以下であることがより望ましい。
【0055】
−その他の添加物−
本実施形態において導電材料としては、上記特定の無機酸化物粒子を使用することが必須であるが、一般的な導電材料を併用してもかまわない。例えば、金、銀、銅といった金属や、硫酸バリウム、ホウ酸アルミニウム、チタン酸カリウム、金属で被覆した樹脂粒子、カーボンブラック等が例示される。但し、本実施形態においては、色汚れや色再現性の劣化を極力抑制する観点から、白色又は透明な導電材料や着色度の低い導電材料を選択することが望ましい。カーボンブラックなど着色力の高い導電材料を用いる場合には、色汚れや色再現性に重大な影響を与えない範囲で添加することが望ましい。カーボンブラックを併用する場合には、キャリアに対して0.6質量%以下で用いることが望ましい。
【0056】
また、被覆層には、帯電制御を目的として樹脂粒子を含有してもよい。樹脂粒子を構成する樹脂としては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が利用される。
熱可塑性樹脂の場合、ポリオレフィン系樹脂、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン;ポリビニル及びポリビニリデン系樹脂、例えば、ポリスチレン、アクリル樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリ塩化ビニル、ポリビニルカルバゾール、ポリビニルエーテル及びポリビニルケトン;塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体;スチレン−アクリル酸共重合体;オルガノシロキサン結合からなるストレートシリコン樹脂又はその変性品;フッ素樹脂、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリクロロトリフルオロエチレン;ポリエステル;ポリカーボネート等が挙げられる。
【0057】
熱硬化性樹脂の例としては、フェノール樹脂;アミノ樹脂、例えば尿素−ホルムアルデヒド樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ユリア樹脂、ポリアミド樹脂;エポキシ樹脂などが挙げられる。
【0058】
樹脂粒子の体積平均粒径は0.1μm以上1.5μm以下が好ましい。粒径が上記範囲内にあると、被覆層内での凝集が抑えられ帯電特性が安定的に保たれる。また、被覆層の割れが抑えられる。更に、被覆層からの樹脂粒子の脱離が抑えられ、帯電付与の機能が発揮される。
【0059】
−キャリアの物性−
本実施形態のキャリアにおける被覆層の厚みは、0.3μm以上10μm以下であることが望ましく、0.5μm以上5μm以下であることがより望ましい。
また、無機酸化物微粒子の被覆層の厚みは、凝集していないときの無機酸化物微粒子の一次粒径又は凝集しているときの凝集径に対して、0.8倍以上10倍であることが望ましく、1.0倍以上3.0倍であることがより望ましい。上記範囲内にあると、帯電特性の低下が抑えられ且つ無機酸化物微粒子が被覆層表面から脱離するのが抑えられる。
【0060】
なお、上記被覆層の厚みは、走査型電子顕微鏡にて、キャリア1個につきその断面を倍率10万倍で4視野について4箇所の樹脂層厚を測定し、その平均をそのキャリアの膜厚として40個のキャリア粒子の膜厚を測定しその平均値とする。
【0061】
本実施形態におけるキャリアは、1kOe時の磁力が170emu/cm以上250emu/cm以下の範囲であることが望ましく、185emu/cm以上235emu/cm以下の範囲であることがより好ましい。
キャリアの磁力が上記範囲内にあると、現像剤保持体との磁気的拘束力が適切な範囲となり、現像剤保持体からのトナーやキャリアの飛散が抑制され、また画像白抜けのような画質欠陥の発生が抑えられる。
ここで、キャリアの磁力は、振動試料型磁力計BHV−525(理研電子(株)製)を用い、VSM用常温サンプルケース粉末用(H−2902−151)に一定量サンプルを採り、正秤した後に1kOeの磁場中にて、測定した値である。
【0062】
また、本実施形態におけるキャリアは、球形度が0.980以上1.000以下の範囲であることが望ましく、0.985以上1.000以下の範囲であることがより好ましい。
キャリアの球形度が上記範囲内にあると、キャリアとしての流動性が良好となり、磁気ブラシの均一化が図られる。
【0063】
ここで、前記キャリアの球形度は、下記の方法で測定した平均円形度を意味する。
測定サンプルとして、キャリア200mgをエチレングリコール水溶液30mlに添加・攪拌し、上澄み水溶液を除去した残渣中のキャリアを用いて、以下の方法で測定する。測定は、FPIA−3000(シスメックス社製)を使用し、撮影された少なくとも5000個以上各々のキャリア粒子に対して画像解析を行い、統計処理することによって、平均円形度を求めた。ここで、個々の円形度は下記式(2)に基づいて求める。
式(2): 円形度=円相当径周囲長/周囲長=[2×(A×π)1/2]/PM
(上記式(2)において、Aはキャリア粒子の投影面積、PMはキャリア粒子の周囲長を表す。)
なお、測定はHPFモード(高分解能モード)、希釈倍率10倍で行った。また、データの解析に当たっては、測定ノイズ除去の目的で、個数粒径解析範囲を3〜80μmの範囲、円形度解析範囲を0.850乃至1.000の範囲で実施した。
【0064】
また、本実施形態におけるキャリアの体積平均粒径は、25μm以上100μm以下の範囲であることが望ましく、25μm以上80μm以下の範囲であることがより望ましく、25μm以上60μm以下の範囲であることが更に望ましい。
キャリアの体積平均粒径が上記範囲内にあると、現像剤保持体への磁気的拘束力が充分となり、感光体へのキャリアの付着が抑制される。また、粒子形状の歪みが抑えられ、細線再現性に優れる。
ここで、キャリアの体積平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(LS Particle Size Analyzer:LS13 320、BECKMAN COULTER社製)を用いて測定された値をいう。得られた粒度分布を分割された粒度範囲(チャンネル)に対し、小粒径側から体積累積分布を引いて、全核体に対して累積50%となる粒径を体積平均粒径D50vとする。
【0065】
さらに、本実施形態におけるキャリアの体積抵抗率は、1×10Ωcm以上1×1014Ωcm以下の範囲に制御されることが望ましく、1×10Ωcm以上1×1013Ωcmの範囲であることがより望ましく、1×10Ωcm以上1×1012Ωcmの範囲であることが更に望ましい。
キャリアの体積抵抗率が上記範囲内にあると、ソリッド再現性の低下が抑制され、また現像剤中のトナー濃度が低下したときでも現像ロールからキャリアへの電荷の注入が抑えられ、キャリア自体が現像されてしまうという不具合が抑制される。
【0066】
上記キャリアの体積抵抗率(Ωcm)は以下のように測定する。なお、測定環境は、温度20℃、湿度50%RHとする。
20cmの電極板を配した円形の治具の表面に、測定対象となるキャリアを1乃至3mm程度の厚さになるように平坦に載せ、キャリア層を形成する。この上に前記同様の20cmの電極板を載せキャリア層を挟み込む。キャリア間の空隙をなくすため、キャリア層上に載せた電極板の上に4kgの荷重をかけてからキャリア層の厚み(cm)を測定する。キャリア層上下の両電極には、エレクトロメーター及び高圧電源発生装置に接続されている。両電極に電界が6000V/cmとなるように高電圧を印加し、このとき流れた電流値(A)を読み取ることにより、キャリアの体積電気抵抗(Ω・cm)を計算する。キャリアの体積抵抗率(Ω・cm)の計算式は、下記式(3)に示す通りである。
式(3): R=E×20/(I−I)/L
【0067】
上記式(3)中、Rはキャリアの体積抵抗率(Ω・cm)、Eは印加電圧(V)、Iは電流値(A)、Iは印加電圧0Vにおける電流値(A)、Lはキャリア層の厚み(cm)をそれぞれ表す。また、20の係数は、電極板の面積(cm)を表す。
【0068】
−キャリアの製造方法−
前記キャリアにおける被覆層の形成について説明する。
湿式の被覆法では、溶剤中に、被覆層を形成する樹脂と共に、無機酸化物粒子、必要に応じて帯電制御の樹脂粒子等を含む被覆層形成用溶液を用いる。この被覆層形成用溶液中に芯材を浸漬する浸漬法、被覆層形成用溶液を芯材の表面に噴霧するスプレー法、芯材を流動エアーにより浮遊させた状態で被覆層形成用溶液を噴霧する流動床法、ニーダーコーター中で芯材と被覆層形成用溶液とを混合し、次いで、溶剤を除去するニーダーコーター法等が挙げられる。
【0069】
被覆層形成用溶液に使用する溶剤としては、樹脂を溶解するものであれば特に限定されるものではないが、例えば、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化物などが使用される。
【0070】
乾式の被覆法としては、被覆樹脂粒子とコア粒子とを加熱または高速混合して被覆するパウダーコート法が挙げられる。
【0071】
ここで、無機酸化物粒子が凝集粒子でない場合において、一次粒径が230nm以上970nm以下の無機酸化物粒子を含む被覆層は、原料として用いる無機酸化物粒子の粒径を選択することで作製される。また、無機酸化物粒子の粒度分布が2.0以上のものを原料として用いることで、被覆層中での無機酸化物粒子の粒度分布が2.0以上のキャリアが作製される。更に、粒径が異なる2種以上の無機酸化物粒子を併用して粒度分布を2.0以上としてもよい。
【0072】
他方、無機酸化物粒子が凝集粒子であり、凝集径が230nm以上970nm以下の無機酸化物粒子を含む被覆層は、上記湿式及び乾式のいずれの被覆層の形成方法であっても、せん断力を弱めて混合、被覆することで形成される。また、被覆層中で無機酸化物粒子の粒度分布を2.0以上にする場合についても、せん断力を弱めて混合、被覆する方法が望ましい。更に、無機酸化物粒子が凝集粒子となって被覆層中で存在する場合にも、粒径が異なる2種以上の無機酸化物粒子を併用して粒度分布を2.0以上としてもよい。
【0073】
低いせん断力により被覆層を形成する方法としては、例えば乾式法では、プラネタリーミキサーで被覆層に含有する樹脂粒子と無機酸化物粒子とを予備混合し、その後、乾式処理装置(ノビルタNOB130、ホソカワミクロン社製など)によって被覆層を形成する方法が挙げられる。
乾式法において用いる被覆樹脂粒子の体積平均粒径は、例えば、1μm以下が望ましい。被覆樹脂粒子の体積平均粒径が上記範囲内にあると、樹脂粒子が芯材を被覆しやすい。
この乾式法では、予備混合を行うことや、予備混合の混合条件、乾式処理装置における回転速度や温度条件を下げることで、無機酸化物粒子に与えるせん断力が弱められる。
【0074】
特に乾式法では、材料の予備混合、或いは被覆層形成の際のせん断力を強くすることで、凝集径が小さくなり、また材料の予備混合、或いは膜化の際のせん断力を回転速度、処理時間を低下させるなどによって弱めることで、一次粒径に対する凝集径の比率が小さくなる。
【0075】
また、湿式法では、ニーダー(井上製作所製ニーディング装置など)によってローター回転速度をなるべく低く設定して(例えば、下限値の0.2から0.3程度のローター回転数設定値)、被覆層を形成する方法が挙げられる。
湿式法では、ニーダーによる混合条件を弱めたり、ロータ回転速度を低く設定したりすることで、無機酸化物粒子に与えるせん断力が弱められる。
【0076】
特に湿式法では、材料の予備混合、或いは膜化の際のせん断力を強くすることで、凝集径が小さくなり、また材料の予備混合、或いは膜化の際のせん断力を回転速度、処理時間を低下させるなどによって弱めることで、一次粒径に対する凝集径の比率が小さくなる。
【0077】
<静電荷像現像剤>
本実施形態に係る静電荷像現像剤(以下、単に「現像剤」と称することがある)は、本実施形態に係るキャリアとトナーとを含有する。本実施形態に係る現像剤は、本実施形態に係るキャリアおよびトナーを適当な配合割合で混合することにより調製される。キャリアの含有量((キャリア)/(キャリア+トナー)×100)としては、85質量%以上99質量%以下の範囲が望ましく、より望ましくは87質量%以上98質量%の範囲、さらに望ましくは89質量%以上97質量%以下の範囲である。
【0078】
以下、本実施形態に係る静電荷像現像剤に用いられるトナーについて説明する。
本実施形態に用いられるトナーは、少なくとも結着樹脂および着色剤を含有し、必要に応じて離型剤およびその他の成分を含有する。また、本実施形態に用いられるトナーには、上記構成からなるいわゆるトナー粒子の他、種々の目的で外添剤が添加されていることが望ましい。
【0079】
本実施形態に用いられるトナーには、公知の結着樹脂や各種の着色剤等を使用してもよい。本実施形態に用いられるトナーにおける結着樹脂としては、ポリエステル樹脂のほかに、ポリオレフィン樹脂、スチレンとアクリル酸またはメタクリル酸との共重合体、ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、変性ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂、ポリエーテルポリオール樹脂等などを単独で用いてもよいしまたは併用してもよい。
【0080】
本実施形態に用いられるトナーにおける着色剤としては、シアンの着色剤として、例えば、C.I.ピグメントブルー1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同15:6、同16、同17、同23、同60、同65、同73、同83、同180、C.I.バットシアン1、同3、同20等や、紺青、コバルトブルー、アルカリブルーレーキ、フタロシアニンブルー、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルーの部分塩素化物、ファーストスカイブルー、インダスレンブルーBCのシアン顔料、C.I.ソルベントシアン79、162等のシアン染料などを用いてもよい。
【0081】
また、マゼンタの着色剤として、例えば、C.I.ピグメントレッド1、同2、同3、同4、同5、同6、同7、同8、同9、同10、同11、同12、同13、同14、同15、同16、同17、同18、同19、同21、同22、同23、同30、同31、同32、同37、同38、同39、同40、同41、同48、同49、同50、同51、同52、同53、同54、同55、同57、同58、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同163、同184、同202、同206、同207、同209等、ピグメントバイオレット19のマゼンタ顔料や、C.I.ソルベントレッド1、同3、同8、同23、同24、同25、同27、同30、同49、同81、同82、同83、同84、同100、同109、同121、C.I.ディスパースレッド9、C.I.ベーシックレッド1、同2、同9、同12、同13、同14、同15、同17、同18、同22、同23、同24、同27、同29、同32、同34、同35、同36、同37、同38、同39、同40等のマゼンタ染料等、ベンガラ、カドミウムレッド、鉛丹、硫化水銀、カドミウム、パーマネントレッド4R、リソールレッド、ピラゾロンレッド、ウオッチングレッド、カルシウム塩、レーキレッドD、ブリリアントカーミン6B、エオシンレーキ、ロータミンレーキB、アリザリンレーキ、ブリリアントカーミン3Bなどを用いてもよい。
【0082】
また、イエローの着色剤として、例えば、C.I.ピグメントイエロー2、同3、同15、同16、同17、同97、同180、同185、同139等のイエロー顔料などを用いてもよい。
【0083】
さらに、ブラックトナーの場合には、その着色剤として、例えば、カーボンブラック、活性炭、チタンブラック、磁性粉、Mn含有の非磁性粉などを用いてもよい。
【0084】
更に、本実施形態に用いられるトナーは、帯電制御剤を含有することが望ましく、ニグロシン、4級アンモニウム塩、有機金属錯体、キレート錯体等を用いてもよい。
また、外添剤として、シリカ、酸化チタン、チタン酸バリウム、フッ素粒子、アクリル粒子等を併用して用いてもよい。該シリカとしては、TG820(キャボット社製)、HVK2150(クラリアント社製)等の市販品を使用してもよい。
【0085】
更に又、本実施形態に用いられるトナーは、離型剤を含有することが望ましく、該離型剤としては、エステルワックス、ポリエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンとポリプロピレンの共重合物、ポリグリセリンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックス、脱酸カルナバワックス、パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸、ブランジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸などの不飽和脂肪酸類、ステアリンアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコール、あるいは更に長鎖のアルキル基を有する長鎖アルキルアルコール類などの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類、エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’−ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’−ジオレイルセバシン酸アミドなどの、不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N′ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪酸金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物などが挙げられる。
【0086】
本実施形態において、トナー(トナー粒子)の製造方法は特に限定されないが、高画質を得るために、湿式製法で作製されることが望ましい。湿式製法としては、結着樹脂の重合性単量体を乳化重合させ、形成された結着樹脂分散液と、着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の分散液とを混合し、凝集、加熱融着させ、トナー粒子を得る乳化凝集法;結着樹脂を得るための重合性単量体と着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて重合する懸濁重合法;結着樹脂、着色剤、離型剤、必要に応じて帯電制御剤等の溶液を水系溶媒に懸濁させて造粒する溶解懸濁法;等が挙げられる。また、上記方法で得られたトナー粒子をコアにして、更に樹脂粒子を付着、加熱融合してコアシェル構造をもたせる製造方法を行ってもよい。また、一般の粉砕分級法により得られたトナー粒子でもよい。
【0087】
<プロセスカートリッジ、画像形成装置、及び画像形成方法>
本実施形態に係る画像形成装置は、潜像保持体と、前記潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、前記潜像保持体表面に静電荷像を形成する静電荷像形成手段と、前記静電荷像を本実施形態に係る静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着手段と、を備えるものである。本実施形態に係る画像形成装置は、必要に応じて潜像保持体表面を清掃する潜像保持体清掃手段等を含むものであってもよい。
【0088】
なお、この画像形成装置において、例えば前記現像手段を含む部分が、画像形成装置本体に対して脱着可能なカートリッジ構造(プロセスカートリッジ)であってもよい。該プロセスカートリッジとしては、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収納し、潜像保持体表面に形成された静電荷像を前記静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像手段を備え、画像形成装置に着脱されるものが好適に用いられる。
【0089】
また、本実施形態に係る画像形成装置により、潜像保持体表面を帯電する帯電工程と、前記潜像保持体表面に静電荷像を形成する静電荷像形成工程と、前記静電荷像を本実施形態に係る静電荷像現像剤により現像してトナー像を形成する現像工程と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写工程と、前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着工程と、を含む本実施形態に係る画像形成方法が実施される。また、本実施形態の画像形成方法は、必要に応じて、帯電工程、定着工程、クリーニング工程、除電工程等を含んでもよい。
前記各工程としては公知の工程が採用され、例えば、特開昭56−40868号公報、特開昭49−91231号公報等に記載されている工程が挙げられる。なお、本実施形態の画像形成方法は、例えば、公知のコピー機、ファクシミリ機等の画像形成装置を用いて実施される。
【0090】
以下、本実施形態に係る画像形成装置の一例を示すが、これに限定されるわけではない。
図3は、第二実施形態に係る画像形成装置である4連タンデム方式のカラー画像形成装置を示す概略構成図である。図3に示す画像形成装置は、色分解された画像データに基づくイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色の画像を出力する電子写真方式の第1乃至第4の画像形成ユニット10Y、10M、10C、10K(画像形成手段)を備えている。これらの画像形成ユニット(以下、単に「ユニット」と称する場合がある)10Y、10M、10C、10Kは、水平方向に互いに予め定められた距離離間して並設されている。なお、これらユニット10Y、10M、10C、10Kは、画像形成装置本体に対して脱着可能なプロセスカートリッジであってもよい。
【0091】
各ユニット10Y、10M、10C、10Kの図面における上方には、各ユニットを通して中間転写体としての中間転写ベルト20が延設されている。中間転写ベルト20は、図における左から右方向に互いに離間して配置された駆動ローラ22および中間転写ベルト20内面に接する支持ローラ24に巻きつけて設けられ、第1のユニット10Yから第4のユニット10Kに向う方向に走行されるようになっている。尚、支持ローラ24は、図示しないバネ等により駆動ローラ22から離れる方向に力が加えられており、両者に巻きつけられた中間転写ベルト20に張力が与えられている。また、中間転写ベルト20の像保持体側面には、駆動ローラ22と対向して中間転写体クリーニング装置30が備えられている。
また、各ユニット10Y、10M、10C、10Kの現像装置(現像手段)4Y、4M、4C、4Kのそれぞれには、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kに収められたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のトナーが供給される。
【0092】
上述した第1乃至第4のユニット10Y、10M、10C、10Kは、同等の構成を有しているため、ここでは中間転写ベルト走行方向の上流側に配設されたイエロー画像を形成する第1のユニット10Yについて代表して説明する。尚、第1のユニット10Yと同等の部分に、イエロー(Y)の代わりに、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)を付した参照符号を付すことにより、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kの説明を省略する。
【0093】
第1のユニット10Yは、像保持体として作用する感光体1Yを有している。感光体1Yの周囲には、感光体1Yの表面を予め定められた電位に帯電させる帯電ローラ2Y、帯電された表面を色分解された画像信号に基づくレーザ光線3Yよって露光して静電荷像を形成する露光装置(静電荷像形成手段)3、静電荷像に帯電したトナーを供給して静電荷像を現像する現像装置(現像手段)4Y、現像したトナー像を中間転写ベルト20上に転写する1次転写ローラ5Y(1次転写手段)、および1次転写後に感光体1Yの表面に残存するトナーを除去する感光体クリーニング装置(クリーニング手段)6Yが順に配置されている。
尚、1次転写ローラ5Yは、中間転写ベルト20の内側に配置され、感光体1Yに対向した位置に設けられている。更に、各1次転写ローラ5Y、5M、5C、5Kには、1次転写バイアスを印加するバイアス電源(図示せず)がそれぞれ接続されている。各バイアス電源は、図示しない制御部による制御によって、各1次転写ローラに印加する転写バイアスを可変する。
【0094】
以下、第1ユニット10Yにおいてイエロー画像を形成する動作について説明する。まず、動作に先立って、帯電ローラ2Yによって感光体1Yの表面が−600V乃至−800V程度の電位に帯電される。
感光体1Yは、導電性(20℃における体積抵抗率:1×10−6Ωcm以下)の基体上に感光層を積層して形成されている。この感光層は、通常は高抵抗(一般の樹脂程度の抵抗)であるが、レーザ光線3Yが照射されると、レーザ光線が照射された部分の比抵抗が変化する性質を持っている。そこで、帯電した感光体1Yの表面に、図示しない制御部から送られてくるイエロー用の画像データに従って、露光装置3を介してレーザ光線3Yを出力する。レーザ光線3Yは、感光体1Yの表面の感光層に照射され、それにより、イエロー印字パターンの静電荷像が感光体1Yの表面に形成される。
【0095】
静電荷像とは、帯電によって感光体1Yの表面に形成される像であり、レーザ光線3Yによって、感光層の被照射部分の比抵抗が低下し、感光体1Yの表面の帯電した電荷が流れ、一方、レーザ光線3Yが照射されなかった部分の電荷が残留することによって形成される、いわゆるネガ潜像である。
このようにして感光体1Y上に形成された静電荷像は、感光体1Yの走行に従って予め定められた現像位置まで回転される。そして、この現像位置で、感光体1Y上の静電荷像が、現像装置4Yによって可視像(現像像)化される。
【0096】
現像装置4Y内には、例えば、少なくともイエロートナーとキャリアとを含む静電荷像現像剤が収容されている。イエロートナーは、現像装置4Yの内部で攪拌されることで摩擦帯電し、感光体1Y上に帯電した帯電荷と同極性(負極性)の電荷を有して現像剤ロール(現像剤保持体)上に保持されている。そして感光体1Yの表面が現像装置4Yを通過していくことにより、感光体1Y表面上の除電された潜像部にイエロートナーが静電的に付着し、潜像がイエロートナーによって現像される。
現像効率、画像粒状性、階調再現性等の観点から、直流成分に交流成分を重畳させたバイアス電位(現像バイアス)を現像剤保持体に付与してもよい。具体的には、現像剤保持体直流印加電圧Vdcを−300乃至−700Vとしたとき、現像剤保持体交流電圧ピーク幅Vp−pを0.5乃至2.0kVの範囲としてもよい。
イエローのトナー像が形成された感光体1Yは、引続き予め定められた速度で走行され、感光体1Y上に現像されたトナー像が予め定められた1次転写位置へ搬送される。
【0097】
感光体1Y上のイエロートナー像が1次転写位置へ搬送されると、1次転写ローラ5Yに1次転写バイアスが印加され、感光体1Yから1次転写ローラ5Yに向う静電気力がトナー像に作用され、感光体1Y上のトナー像が中間転写ベルト20上に転写される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と逆極性の(+)極性であり、例えば第1ユニット10Yでは制御部に(図示せず)よって+10μA程度に制御されている。
一方、感光体1Y上に残留したトナーはクリーニング装置6Yで除去されて回収される。
【0098】
また、第2のユニット10M以降の1次転写ローラ5M、5C、5Kに印加される1次転写バイアスも、第1のユニットに準じて制御されている。
こうして、第1のユニット10Yにてイエロートナー像の転写された中間転写ベルト20は、第2乃至第4のユニット10M、10C、10Kを通して順次搬送され、各色のトナー像が重ねられて多重転写される。
【0099】
第1乃至第4のユニットを通して4色のトナー像が多重転写された中間転写ベルト20は、中間転写ベルト20と中間転写ベルト内面に接する支持ローラ24と中間転写ベルト20の像保持面側に配置された2次転写ローラ(2次転写手段)26とから構成された2次転写部へと至る。一方、記録紙(記録媒体)Pが供給機構を介して2次転写ローラ26と中間転写ベルト20とが圧接されている隙間に予め定められたタイミングで給紙され、2次転写バイアスが支持ローラ24に印加される。このとき印加される転写バイアスは、トナーの極性(−)と同極性の(−)極性であり、中間転写ベルト20から記録紙Pに向う静電気力がトナー像に作用され、中間転写ベルト20上のトナー像が記録紙P上に転写される。尚、この際の2次転写バイアスは2次転写部の抵抗を検出する抵抗検出手段(図示せず)により検出された抵抗に応じて決定されるものであり、電圧制御されている。
【0100】
この後、記録紙Pは定着装置(ロール状定着手段)28における一対の定着ロールの圧接部(ニップ部)へと送り込まれトナー像が加熱され、色重ねしたトナー像が溶融されて、記録紙P上へ定着される。
【0101】
トナー像を転写する記録媒体としては、例えば、電子写真方式の複写機、プリンター等に使用される普通紙、OHPシート等が挙げられる。
【0102】
カラー画像の定着が完了した記録紙Pは、排出部へ向けて搬出され、一連のカラー画像形成動作が終了される。
なお、上記例示した画像形成装置は、中間転写ベルト20を介してトナー像を記録紙Pに転写する構成となっているが、この構成に限定されるものではなく、感光体から直接トナー像が記録紙に転写される構造であってもよい。
【0103】
図4は、本実施形態に係る静電荷像現像剤を収容するプロセスカートリッジの一例を示す概略構成図である。プロセスカートリッジ200は、現像装置111とともに、感光体107、帯電ローラ108、感光体クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を取り付けレール116を用いて組み合わせ、そして一体化したものである。なお、図4において符号300は記録媒体を示す。
そして、このプロセスカートリッジ200は、転写装置112と、定着装置115と、図示しない他の構成部分とから構成される画像形成装置本体に対して着脱自在としたものであり、画像形成装置本体とともに画像形成装置を構成するものである。
【0104】
図4で示すプロセスカートリッジ200では、感光体107、帯電装置108、現像装置111、クリーニング装置113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117を備えているが、これら装置は選択的に組み合わせてもよい。本実施形態に係るプロセスカートリッジでは、現像装置111のほかには、感光体107、帯電装置108、クリーニング装置(クリーニング手段)113、露光のための開口部118、及び、除電露光のための開口部117から構成される群から選択される少なくとも1種を備えてもよい。
【0105】
次に、トナーカートリッジについて説明する。トナーカートリッジは、画像形成装置に着脱可能に装着され、少なくとも、前記画像形成装置内に設けられた現像手段に供給するためのトナーを収容するものである。なお、トナーカートリッジには少なくともトナーが収容されればよく、画像形成装置の機構によっては、例えば現像剤が収められてもよい。
【0106】
なお、図3に示す画像形成装置は、トナーカートリッジ8Y、8M、8C、8Kの着脱が可能な構成を有する画像形成装置であり、現像装置4Y、4M、4C、4Kは、各々の現像装置(色)に対応したトナーカートリッジと、図示しないトナー供給管で接続されている。また、トナーカートリッジ内に収納されているトナーが少なくなった場合には、このトナーカートリッジが交換される。
【実施例】
【0107】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例にのみ限定されるものではない。
なお、実施例中において「部」及び「%」は、特に断りのない限り「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0108】
<各種特性の測定方法>
まず、実施例、比較例で用いたキャリアの物性測定方法について説明する。
【0109】
(粒子の平均粒径の測定)
キャリアの被覆層中の無機酸化物粒子の凝集径及び一次粒径を観察するため、ミクロートームによってキャリアを切削し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察した。観察した電子顕微鏡の画像において、無機酸化物粒子の凝集径及び一次粒径を測定した。このとき、無機酸化物粒子を50個観察し、その平均値を求めた。
【0110】
(粒子の粒度分布の測定)
上記平均粒径の測定と同様の方法でキャリアを切削し、その断面を走査型電子顕微鏡(SEM)によって観察し、無機酸化物粒子の凝集径及び一次粒径を測定した。このとき、無機酸化物粒子を100個観察し、粒子の粒子径について小径側から個数累積分布を描いたときに、累積16%となる粒子径D16pと、累積84%となる粒子径D84pを測定し、下記式により粒度分布(GSD)を求めた。
粒度分布(GSD)=GSD=(D84p/D16p)0.5
【0111】
(被覆層の厚みの測定)
走査型電子顕微鏡(SEM)にて、キャリア1個につきその断面を倍率10万倍で4視野について4箇所の被覆層の厚みを測定した。40個のキャリア粒子の被覆層の厚みを測定しその平均値を求めた。
【0112】
(キャリア抵抗の測定)
キャリア抵抗(Ωcm)は以下のように測定した。なお、測定環境は、温度20℃、湿度50%RHとした。
20cmの電極板を配した円形の治具の表面に、測定対象となるキャリアを1乃至3mm程度の厚さになるように平坦に載せ、キャリア層を形成する。この上に前記同様の20cmの電極板を載せキャリア層を挟み込んだ。キャリア間の空隙をなくすため、キャリア層上に載置した電極板の上に4kgの荷重をかけてからキャリア層の厚み(mm)を測定した。キャリア層上下の両電極には、エレクトロメーターおよび高圧電源発生装置を接続した。両電極に電界が103.8V/cmとなるように高電圧を印加し、このとき流れた電流値(A)を読み取ることにより、キャリア抵抗(Ωcm)を計算した。キャリア抵抗(Ωcm)の計算式は、下式(3)に示す通りである。
R=E×20/(I−I )/L ・・・式(3)
上記式中、Rはキャリア抵抗(Ωcm)、Eは印加電圧(V)、Iは電流値(A)、Iは印加電圧0Vにおける電流値(A)、Lはキャリア層の厚み(mm)をそれぞれ表す。また、20の係数は、電極板の面積(cm)を表す。なお有効数字は3桁で3桁目を四捨五入して示す。下記に電気抵抗値を示すが、例えば3.25×10Ω・cmであった場合、×10を基準とすると330と記載して示す。
【0113】
(キャリア抵抗の経時変化の測定)
作製したキャリアを温度27℃、湿度80%RHの高温高湿下で1日間保管した後、上記測定方法によりキャリア抵抗を測定した。
また、作製したキャリアを温度15℃、湿度20%RHの低温低湿下で1日間保管した後、上記測定方法によりキャリア抵抗を測定した。
【0114】
[実施例1A]
<乾式法によるキャリアの作製>
・フェライト粒子(Mn−Mgフェライト、真比重4.7g/cm、体積平均粒径35μm、飽和磁化60emu/g)
・シクロヘキシルメタクリレート粒子(積水化成品工業製、商品名:XX−406W、粒径:200nm、重量平均分子量:約15万)
・酸化スズ粒子(三井金属社製、商品名:パストラン4300、体積抵抗:8.9E+00Ω・cm、一次粒径:100nm)
【0115】
形成した被覆層中において酸化スズ粒子が8容積%で含有されるように、また上記フェライト粒子に対して被覆層が3質量%で形成されるように、上記材料を配合し、プラネタリーミキサーにより60rpmで1時間の条件で予備混合を施した。その後、乾式処理装置(ノビルタNOB130、ホソカワミクロン社製)により2,000rpm、約50℃でフェライト粒子の表面に被覆層を形成し、キャリア1Aを得た。
【0116】
キャリア1Aの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、酸化スズは凝集粒子となって被覆層に含有されていた。キャリア1Aにおける被覆層の厚さは、1.1μmであった。また、凝集径は560nmであり、一次粒径は100nmであった。
【0117】
キャリア1Aのキャリア抵抗は3.2×10Ωcmであり、高温高湿下で保管した後のキャリア抵抗は5.0×10Ωcmであり、低温低湿下で保管した後のキャリア抵抗は7.9×10Ωcmであった。
【0118】
[実施例2A]
<湿式法によるキャリアの作製>
(芯材の準備)
フェライト粒子(Mn−Mgフェライト、真比重4.7g/cm、体積平均粒径35μm、飽和磁化60emu/g)をキャリアの芯材として準備した。
【0119】
(被覆層形成用溶液1の調製)
・シクロヘキシルメタクリレート共重合ラッカー(綜研化学社製、重量平均分子量:約10万)
・酸化スズ粒子(三井金属社製、商品名:パストラン4300、体積抵抗:8.9E+00Ω・cm、粒径:100nm)
形成した被覆層中において酸化スズ粒子が8容積%で含有されるように上記材料を配合し、60分間分散メディアとしてガラスビーズを入れて撹拌/分散し、被覆層形成用溶液1を調製した。
【0120】
(被覆層の形成)
次に、芯材としての前記フェライト粒子に対して、被覆層が3質量%で形成されるように、被覆層形成用溶液1と芯材のフェライト粒子とを真空脱気型ニーダ(井上製作所社製、商品名:KHO−5)に入れ、20分撹拌した後、ローター回転数を下限値の0.2(20rpm)に設定して、減圧して溶剤を留去し、目開き75μmのメッシュを通すことによりキャリア2Aを作製した。
【0121】
キャリア2Aの断面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、酸化スズは凝集粒子となって被覆層に含有されていた。キャリア2Aにおける被覆層の厚さは、1.0μmであった。また、凝集径は470nmであり、一次粒径は100nmであった。
【0122】
キャリア2Aのキャリア抵抗は5.0×10Ωcmであり、高温高湿下で保管した後のキャリア抵抗は1.6×10Ωcmであり、低温低湿下で保管した後のキャリア抵抗は1.0×10Ωcmであった。
【0123】
[実施例1Bから1E]
実施例1Aにおいて、プラネタリーミキサーでの予備混合の条件を下記表1に変更した以外は同様にして、キャリア1Bから1Eを作製した。
【0124】
[実施例1F]
実施例1Aにおいて用いた酸化スズ粒子を、三井金属社製の商品名:パストラン6010(粒径:50nm)に代えたこと以外は実施例1Aと同様にしてキャリアFを作製した。
【0125】
得られたキャリア1Aから1Fの凝集径、一次粒径、その比率、及び粒度分布を表1に示す。
【0126】
【表1】

【0127】
[実施例2Bから2E]
実施例2Aにおいて、ローター回転数を下記表2に変更した以外は同様にして、キャリア2Bから2Eを作製した。
【0128】
[実施例2F]
実施例2Aにおいて用いた酸化スズ粒子を、三井金属社製の商品名:パストラン6010(粒径:50nm)に代えたこと以外は実施例2Aと同様にしてキャリアFを作製した。
【0129】
得られたキャリア2Aから2Fの凝集径、一次粒径、その比率、及び粒度分布を表2に示す。
【0130】
【表2】

【0131】
[比較例1]
実施例1Aにおいて、プラネタリーの予備混合を行わない以外は同様にして、キャリア3を作製した。
【0132】
[比較例2]
実施例2Aにおいて、ローター回転数を0.8にして行った以外は同様にして、キャリア4を作製した。
【0133】
[比較例3]
実施例1Aでは、被覆層中において酸化スズ粒子を8容積%含有するように調製したところを、カーボンブラック(キャボット株式会社社製、商品名:バルカン72、一次粒径:20nm)を5容量%含有するように調製したこと以外は実施例1Aと同様にして、キャリア5を作製した。
【0134】
<現像剤の作製>
乳化凝集法にて作製した外添トナー(体積平均粒子径5.5μm)12部と上記作製のキャリアの100部をVブレンダーを用いて40rpmで20分間攪拌し、125μm網目のシーブを用いて篩分を行い、現像剤を得た。
【0135】
<画質の評価>
−画像のくすみ−
上記現像剤を用いてFuji Xerox社製複写機Docu Centre Color 500改造機により、28℃85%HR環境下で1%印字チャートを富士ゼロックス社製カラーコピー用ペーパー(J紙)に100,000枚印字し、100,000枚目の画像における画像のくすみの評価を下記規準により行った。
【0136】
G1:色汚れが目視で明確に解る。
G2:目視で若干気になる。
G3:まったく解らない。
【0137】
−細線再現性−
[画像形成条件]
・トナー画像:線幅10μm
・トナー量:0.45mg/cm
・記録紙:富士ゼロックス社製カラーコピー用ペーパー(J紙)
・現像剤保持体の回転速度:400mm/sec
【0138】
上記改造機で2400dpiの解像度で1on1off画像を現像方向に対し垂直方向の5cm×5cmチャートをA4用紙の左上および中央および右下に出力した。出力されたサンプルの1枚目と500枚目と1000枚目を×100倍の目盛付きルーペにて線間隔がトナーの飛び散り等によって最も間隔が狭くなっている距離L(μm)から(10−L)×10としてグレード評価を行った。なお、細線再現性の評価において、実用上問題の無いレベルはG70以上である。
評価結果を表3に示す。
【0139】
【表3】

【0140】
表3より、実施例は比較例に比べて、キャリア抵抗の低下が抑えられ、保存後においてもキャリア抵抗値が一定の数値以上を保ち保管環境による抵抗値の差異が抑制され、得られる画像のくすみが低減され、細線再現性に優れていることがわかる。特に、実施例2Aから2Fと比較例2とを比べると、無機酸化物粒子の粒度分布(GSD)が2.0以上の場合には、キャリア抵抗の制御性に著しく優れていることがわかる。比較例2では、キャリア抵抗値が高すぎ、画像のくすみの点で劣る。比較例3は、画像のくすみの点で劣る。
【0141】
[実施例3A]
<凝集していない無機酸化物粒子を含むキャリアの作製>
実施例2Aにおいて、白色導電粉として酸化スズ粒子に代えて酸化チタン(テイカ社製、商品名:JR、体積抵抗:5.2LogΩ・cm、粒径270nm)を用いた以外は同様にして、キャリア3Aを作製した。
【0142】
キャリア3Aのキャリア抵抗は5.0×10Ωcmであり、高温高湿下で保管した後のキャリア抵抗は3.2×10Ωcmであり、低温低湿下で保管した後のキャリア抵抗は7.9×10Ωcmであった。
【0143】
[実施例3Bから3E、比較例4、5]
実施例3Aにおいて、粒径の異なる酸化チタン粒子を用いた以外は同様にして、キャリア3Bから3E、及び比較例4及び5を作製した。得られたキャリアについて、実施例1Aと同様の方法で、画質の評価を行った。結果を表4に示す。
【0144】
【表4】

【0145】
表4より、無機酸化物粒子が被覆層中で凝集していない場合であっても、一次粒子が230nm以上970nm以下の範囲内にある実施例は、比較例5に比べて、キャリア抵抗の低下が抑えられ、得られる画像のくすみが低減され、細線再現性に優れていることがわかる。また比較例4はキャリア抵抗値が高すぎ、画像のくすみの点で劣る。特に、無機酸化物粒子の粒度分布(GSD)が2.0以上の実施例3Aから3Eは、2.0未満の比較例4及び5に比べてキャリア抵抗の制御性に優れていることがわかる。
【0146】
[実施例4Aから4C]
<樹脂の種類を変更したキャリアの作製>
実施例1Aにおいて、樹脂としてシクロヘキシルメタクリレート共重合ラッカー(綜研化学社製、重量平均分子量:約10万)に代えて、下記樹脂に代えたこと以外は同様にして、キャリア4Aから4Cを作製した。
【0147】
(キャリア4A)
・スチレン、メタクリル酸メチル共重合ラッカー(重量平均分子量:約13万)
(キャリア4B)
・スチレン、アクリル酸メチル共重合ラッカー(重量平均分子量:約10万)
(キャリア4C)
・スチレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸共重合ラッカー(重量平均分子量:約16万)
【0148】
得られたキャリアについて、実施例1Aと同様の方法で、画質の評価を行った。結果を表5に示す。

【0149】
【表5】

【0150】
表5より、樹脂としてシクロヘキシルメタクリレートを用いた実施例1Aは、他の樹脂を用いた実施例4Aから4Cに比べて、キャリア抵抗の低下がより効果的に抑えられていることがわかる。
【符号の説明】
【0151】
1Y、1M、1C、1K、107 感光体(潜像保持体)
2Y、2M、2C、2K、108 帯電ローラ
3Y、3M、3C、3K レーザ光線(静電潜像形成手段)
3 露光装置(静電潜像形成手段)
4Y、4M、4C、4K、111 現像装置(現像手段)
5Y、5M、5C、5K 1次転写ローラ
6Y、6M、6C、6K、113 感光体クリーニング装置(トナー除去手段)
8Y、8M、8C、8K 現像剤カートリッジ
10Y、10M、10C、10K ユニット
26 2次転写ローラ(転写手段)
28、115 定着装置(定着手段)
40 芯材
42 被覆層
44 樹脂
46 第一の形態の無機酸化物粒子
47 第二の形態の無機酸化物粒子
112 転写装置
200 プロセスカートリッジ、
300、P 記録媒体(被転写体)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯材と、
前記芯材を被覆し、樹脂及び導電性を示す無機酸化物の粒子を含有する被覆層と、
を有し、
前記無機酸化物の粒子が凝集している場合には凝集径が、凝集していない場合には一次粒径が、230nm以上970nm以下である静電荷像現像用キャリア。
【請求項2】
前記無機酸化物の粒子の凝集径が230nm以上970nm以下であり、且つ前記無機酸化物の一次粒径に対する凝集径の比が2.8以上7.5以下である請求項1に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項3】
前記被覆層中で、前記無機酸化物の粒子が凝集している場合には凝集径、凝集していない場合には一次粒径の粒度分布(GSD)が2.0以上である請求項1又は請求項2に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項4】
前記被覆層に含有される前記樹脂が、シクロヘキシルメタクリレートである請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリア。
【請求項5】
トナーと、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の静電荷像現像用キャリアとを含む静電荷像現像剤。
【請求項6】
現像手段を備え、前記現像手段に請求項5に記載の静電荷像現像剤が収容された、プロセスカートリッジ。
【請求項7】
潜像保持体と、
前記潜像保持体表面を帯電する帯電手段と、
前記潜像保持体の表面に静電潜像を形成させる静電潜像形成手段と、
請求項5に記載の静電荷像現像剤により前記静電潜像を現像してトナー像を形成する現像手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記記録媒体に前記トナー像を定着する定着手段と、
を有する画像形成装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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