説明

静電荷像現像用シアントナー

【課題】シアン色として適切な色相角を有し、彩度が高く、低明度領域から高明度領域まで幅広い明度領域において高い彩度を発現することのできる静電荷像現像用シアントナーを提供すること。
【解決手段】少なくとも結着樹脂と亜鉛フタロシアニン化合物よりなる着色剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、該静電荷像現像用トナーのX線回折スペクトルで、CuKαの特性X線に対するブラッグ角2θの回折ピークから式(1)によって算出されるC値が80以上150以下であることを特徴とする静電荷像現像用シアントナー。
式(1)
C=(A×100)/B
(但し式(1)中、Aはブラッグ角2θ=7.0±0.1°におけるピークの絶対強度を表し、Bはブラッグ角2θ=9.3±0.1°におけるピークの絶対強度を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は静電荷像現像用シアントナーに関し、更に詳しくは電子写真方式の画像形成装置に用いられる静電荷像現像用シアントナーに関する。
【背景技術】
【0002】
静電荷像現像用トナー(以下、単に「トナー」ともいう)を用いた電子写真方式による画像形成方法においては、従来からのモノクロ画像に加え、近年、フルカラー画像を形成する機会が増加している。電子写真方式によるフルカラー画像形成方法においては、印刷用の版を必要とせず、必要枚数分の印刷物をオンデマンドに作製(必要時に必要部数作製)できるので、軽印刷分野において広く利用されている。
【0003】
90年代より始まったIT革命は印刷現場を取り巻く環境を著しくデジタル化の方向へ導いており、このデジタル化によって、入稿データの「RGB」化が標準化しつつあり、取り扱われるデータが、より色再現領域の広いものへとシフトしている。
【0004】
しかしながら、電子写真方式によるフルカラー画像形成方法は、反射光による減色法によって色を表すものであるために、加色法によって色を表すテレビやコンピューターディスプレイと比較して色再現範囲がはるかに狭いため、ディスプレイ上に表示されるフルカラー画像を紙などの転写材上に再現することが難しいという問題がある。
【0005】
電子写真方式によるフルカラー画像形成においては、基本的にイエロートナー、マゼンタトナー、シアントナーの3色のトナーによってカラー画像が形成されるが、従来以上に色再現領域の広いカラー画像を形成出来るカラートナーの要求が高まっている。従って、これらのカラートナーに用いられる着色剤としては、色相、彩度、明度など、従来以上に高いレベルの色特性を有する着色剤が求められている。さらに、オフィス用途に多く用いられる電子写真方式の画像形成においては、画像の保存性が高いことが求められ、そのため、光、あるいは熱によって退色しない着色剤が求められている。
【0006】
一般に、シアントナーに用いられる着色剤としては、銅フタロシアニン系の顔料が用いられているが、この銅フタロシアニン系の顔料は低明度のシアン領域の発色には優れているものの、高明度のシアン領域の発色が十分ではなかった。
【0007】
高明度領域のシアンの発色性を改善する目的で様々な技術が開示されている。例えば、中心金属に置換基を有するフタロシアニン化合物を含有するシアン着色剤が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
また、低明度および高明度のシアン領域の色再現性を向上させるために、2種以上の化合物を併用する技術が開示されている。例えば、銅フタロシアニンとニッケルフタロシアニンを無機塩類と有機溶剤の存在下で、湿式粉砕してなるシアン顔料が開示されており、これは銅フタロシアニンを単独で湿式粉砕した時に比べて粒子径が小さく、彩度の高い顔料が得られる(例えば、特許文献2参照)。また、中心金属原子に置換基を有するフタロシアニン化合物と中心金属に置換基を有さないフタロシアニン化合物を特定の割合で含有するシアン着色剤が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【0009】
しかしながら、上記の2種以上の化合物を併用した着色剤においても、低明度のシアン領域と高明度のシアン領域のいずれについても彩度が高く、十分な色再現性が得られるトナーは未だ実現されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2009−122496号公報
【特許文献2】特開2009−151162号公報
【特許文献3】特開2009−128750号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
一般に低明度領域の再現性が高いと高明度領域の再現性が劣り、高明度領域の再現性が高いと低明度領域の再現性が十分でないなど、低明度領域から高明度領域まで明度の色再現領域の広いシアントナーは未だ実現出来ていないのが実状である。
【0012】
本発明は上記課題を解決し、シアン色として適切な色相角を有し、彩度が高く、低明度領域から高明度領域まで幅広い明度領域において高い彩度を発現することのできる静電荷像現像用シアントナーを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の上記課題は以下の構成によって解決される。
1.少なくとも結着樹脂と亜鉛フタロシアニン化合物よりなる着色剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、該静電荷像現像用トナーのX線回折スペクトルで、CuKαの特性X線に対するブラッグ角2θの回折ピークから式(1)によって算出されるC値が80以上150以下であることを特徴とする静電荷像現像用シアントナー。
式(1)
C=(A×100)/B
(但し式(1)中、Aはブラッグ角2θ=7.0±0.1°におけるピークの絶対強度を表し、Bはブラッグ角2θ=9.3±0.1°におけるピークの絶対強度を表す。)
2.前記亜鉛フタロシアニン化合物が下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする前記1に記載の静電荷像現像用シアントナー。
【0014】
【化1】

【0015】
(上記一般式(1)中、4つのAは、各々独立に置換基を有してもよい芳香環を形成する原子団を表す。)
【発明の効果】
【0016】
本発明は上記の構成とすることによって、シアン色として適切な色相角を有し、彩度が高く、低明度領域から高明度領域まで幅広い明度を再現することのできるシアントナーを得ることが出来るとともに帯電量分布がシャープで現像特性に優れた静電荷像現像用シアントナーを得ることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】亜鉛フタロシアニンのX線回折スペクトルの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下本発明を実施するための形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
本発明のシアントナーはX線回折スペクトルで、CuKαの特性X線に対するブラッグ角2θの回折ピークから式(1)によって算出されるC値が80以上150以下であることを特徴としている。
【0020】
式(1):
C=(A×100)/B
(但し式(1)中、Aはブラッグ角2θ=7.0±0.1°におけるピークの絶対強度を表し、Bはブラッグ角2θ=9.3±0.1°におけるピークの絶対強度を表す。)
C値が80未満であると彩度が低く、色材の発色性が不十分となり、150を越えると、明度が高くなりすぎ、やはり色材の発色性が低下してしまう。
【0021】
また、C値が上記範囲内にある本発明の亜鉛フタロシアニン化合物の結晶は、長軸と短軸のアスペクト比が小さいという特徴を有している。このため分散粒径も小さくすることが出来るので、トナーに用いた時にトナー表面から露出することが無く、帯電量分布がシャープになるものと推定される。その結果、個々のトナー粒子の現像特性が均一になり、低明度領域から高明度領域まで優れた色再現特性を発揮することが出来たものと考えられる。
【0022】
以下本発明の構成について、更に詳細に記述するが、本発明の実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0023】
(亜鉛フタロシアニン)
本発明に用いられる亜鉛フタロシアニン化合物は、下記一般式(1)で表されるものである。
【0024】
【化2】

【0025】
上記一般式(1)中、4つのAは、各々独立に置換基を有してもよい芳香環を形成する原子団を表す。4つのAは、各々独立に置換基を有してもよい芳香環を形成する原子団を示し、当該原子団の具体例としては、例えば下記式(A−1)〜下記式(A−29)に示すものを例示することができ、好ましくは下記式(A−1)に示すものである。
【0026】
原子団Aにおける置換基としては、塩素原子や塩ハロゲン化メチル基(−CClX)(ただし、Xはハロゲン原子である。)、フルオロメチル基(−CHF)、トリフルオロメチル基(−CF)、ニトロ基(−NO)などの電子吸引基や、t−ブチル基などの炭素数4〜8のアルキル基、−O(CHCHなどのアルコキシ基などが挙げられる。
【0027】
【化3】

【0028】
前記一般式(1)で表される本発明の亜鉛フタロシアニン化合物の具体例としては、例えば以下の化合物が挙げられるが本発明に有効な亜鉛アフタロシアニン化合物はこれらに限定されるものではない。
【0029】
(例示化合物)
【0030】
【化4】

【0031】
(合成法)
本発明に用いられる亜鉛フタロシアニン化合物は、例えば、白井−小林共著、(株)アイピーシー発行「フタロシアニン−化学と機能−」(P.1〜62)、C.C.Leznoff−A.B.P.Lever共著、VCH発行‘Phthalocyanines−Properties and Applications’(P.1〜54)等に記載、引用もしくはこれらに類似の方法を組み合わせて合成することができる。
【0032】
本発明の亜鉛フタロシアニン化合物のC値は、合成時の結晶析出時の溶媒、添加剤、温度、析出速度などを調整することによって制御することが出来る。また、その他の方法として、アシッドペースト処理やソルベントソルトミリング処理によって制御することが出来る。
【0033】
(X線回折スペクトルの測定)
本発明のシアントナーのX線回折スペクトルは、X線としてCuのKα線であって、波長0.1514nm(1.541Å)の特性X線を用いることによって本発明のシアントナーのX線回折パターンを得、それと共に、この本発明のシアントナーのX線回折パターンを得るための測定条件と同一の測定条件により、本発明のシアントナーに用いられている着色剤自体のX線回折パターンおよび着色剤以外のトナー構成材料(例えば離型剤)のX線回折パターンを得、これらの本発明のシアントナーのX線回折パターンと着色剤自体のX線回折パターンおよび着色剤以外のトナー構成材料(例えば離型剤)のX線回折パターンとに基づいて確認する手法が用いられる。
【0034】
ここにブラッグ角回折ピークは強度が0.5×10counts以上であり、半値幅が0.1°以上であって、好ましくは、0.1〜1.0°であるものとされる。
【0035】
本発明のシアントナーのブラッグ角回折ピークを確認するためのX線回折パターンは、X線としてCuのKα線であって波長0.1514nm(1.541Å)の特性X線を用い、X線回折計によって測定することが出来る。
【0036】
X線回折計としては、例えば、(株)リガク製の「RINT−TTR」シリーズ、「RINT−Uitima」シリーズ、「RINT−2000」シリーズ、「MulitiFlex」およびPanalyticl社製の「X’Pert PRO MPD」等を好適に用いることができる。
【0037】
X線回折パターンは、試料として、厚み0.5mm以下のガラス試料板あるいはアルミニウム試料板を用い、X線回折計が回転対陰極型である場合には、50kV−300mA(15kW)、また封入管型である場合には、40kV−30mAにより、X線回折計を定格出力の80%程度の出力にて作動させ、ブラッグ−ブレンターノよりなる集中光学系によってθ−2θ走査を行うことによって測定する。
【0038】
この測定に係わる各スリット条件は、発散スリットおよび収束スリットは共に2/3°、受光スリットは0.3mm以下である。また走査条件は、走査範囲が5〜45°、走査速度が5°/min以下である。
【0039】
図1のX線回折スペクトルは本発明の亜鉛フタロシアニンを着色剤として用いたシアントナーのX線回折スペクトル図である。
【0040】
本発明の亜鉛フタロシアニン化合物からなるシアン着色剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対して、0.1質量部から15質量部が好ましく、1質量部から10質量部が更に好ましい。この範囲であれば、トナーとした時に所望の画像濃度を得ることができる。
【0041】
また、本発明のシアントナーは、他の着色剤と併用しても良く、その場合の添加量は、合計で上記範囲内にあればよい。
【0042】
(L表色系)
次に本発明で用いている「L表色系」について説明する。
【0043】
「L表色系」とは、CIE(国際照明委員会)が定めた均等色空間で、色を数値化して表すのに有用な手段であり、L表色系による色空間を示すL座標図においては、L軸方向が明度を表し、a軸方向が赤−緑方向の色相を表し、b軸方向が黄−青方向の色相を表している。なお、明度とは色の相対的な明るさをいい、色相とは赤、黄、緑、青、紫などの色合いをいい、彩度とは色の鮮やかさの度合いをいう。
【0044】
が大きくなるほど色が明るく、小さくなるほど暗くなることを示している。a、bとも絶対値が大きくなるに従って色が鮮やかになり、0に近づくに従ってくすんだ色になることを示している。これによって、一つの色をL、a、bを用いて数値化することが可能となる。
【0045】
また、「明度」、「色相」とは別に鮮やかさの度合いを数値化する方法として「彩度C」があり、下記式(2)にて求めることができる。
【0046】
式(2):
彩度C=〔(a+(b1/2
彩度Cの絶対値が大きいほど鮮やかになり、値が小さくなるに従ってくすんだ色になる。
【0047】
、a、bは、具体的には、分光光度計「Gretag Macbeth Spectrolino」(Gretag Macbeth社製)を用い、光源としてD65光源、反射測定アパチャーとしてφ4mmのものを用い、測定波長域380〜730nmを10nm間隔で、視野角(observer)を2°とし、基準合わせには専用白タイルを用いた条件において測定されるものである。
【0048】
本発明において、色相角hとは、例えば、明度がある値をとる時の色相と彩度の関係を表すx軸−y軸平面を形成した時、ある座標点(a、b)と原点0とを結ぶ半直線が、x軸の+方向(赤方向)から反時計回りの方向において、x軸の+方向に伸びる直線となす角度をいい、下記式(3)で求めることができる。
【0049】
式(3):
色相角h=tan−1(b/a
また、L、a、bおよびそこから算出される彩度Cはトナー付着量によっても変化するため、評価する場合はトナー付着量を一定にして測定する必要がある。
【0050】
(結着樹脂)
本発明のシアントナーに含有される結着樹脂としては、特に限定されず、公知の樹脂を用いることができる。
【0051】
トナーが粉砕法などによって製造される場合には、例えばスチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、スチレン−(メタ)アクリル系共重合体樹脂などのビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、ポリスルホン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、尿素樹脂などを用いることができる。これらは1種単独または2種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0052】
また、各色のトナーが懸濁重合法、乳化凝集法、ミニエマルション重合凝集法などによって製造される場合には、トナー粒子を構成する結着樹脂を得るための重合性単量体として、公知の種々の重合性単量体を用いることができ、重合性単量体としては、例えばビニル系単量体などが挙げられる。
【0053】
結着樹脂を得るための重合性単量体として、具体的には例えばスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−クロロスチレン、3,4−ジクロロスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレンなどのスチレンあるいはスチレン誘導体;メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチルなどのメタクリル酸エステル誘導体;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニルなどのアクリル酸エステル誘導体;塩化ビニル、塩化ビニリデン、臭化ビニル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニル類;プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニルなどのビニルエステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテルなどのビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどのビニルケトン類;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドンなどのN−ビニル化合物類;ビニルナフタレン、ビニルピリジンなどのビニル化合物類;アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどのアクリル酸、またはメタクリル酸誘導体などのビニル系単量体を挙げることができる。これらのビニル系単量体は、1種または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0054】
また、結着樹脂を得るための重合性単量体として、上記の重合性単量体にイオン性解離基を有するものを組み合わせて用いることが好ましい。イオン性解離基を有する重合性単量体は、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基などの置換基を構成基として有するものであって、具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸、フマール酸、マレイン酸モノアルキルエステル、イタコン酸モノアルキルエステル、スチレンスルホン酸、アリルスルフォコハク酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、アシッドホスホオキシエチルメタクリレート、3−クロロ−2−アシッドホスホオキシプロピルメタクリレートなどが挙げられる。
【0055】
さらに、重合性単量体として、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレートなどの多官能性ビニル類を用いて架橋構造の結着樹脂を得ることもできる。
【0056】
また、本発明のシアントナーに用いられる各色のトナーにおいては、必要に応じて、荷電制御剤および離型剤などの内添剤、外添剤を含有するものとすることができる。
【0057】
(荷電制御剤)
荷電制御剤としては、摩擦帯電により正または負の帯電を与えることのできる物質であれば特に限定されず、かつ無色のものであれば公知の種々の正帯電制御剤および負帯電制御剤を用いることができる。
【0058】
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.01〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部である。
【0059】
(離型剤)
離型剤としては、公知の種々のワックスを用いることができる。
【0060】
ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスなどのポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの分枝鎖状炭化水素ワックス、パラフィンワックス、サゾールワックスなどの長鎖炭化水素系ワックス、ジステアリルケトンなどのジアルキルケトン系ワックス、カルナバワックス、モンタンワックス、ベヘン酸ベヘネート、トリメチロールプロパントリベヘネート、ペンタエリスリトールテトラベヘネート、ペンタエリスリトールジアセテートジベヘネート、グリセリントリベヘネート、1,18−オクタデカンジオールジステアレート、トリメリット酸トリステアリル、ジステアリルマレエートなどのエステル系ワックス、エチレンジアミンベヘニルアミド、トリメリット酸トリステアリルアミドなどのアミド系ワックスなどが挙げられる。
【0061】
離型剤の含有量は、結着樹脂100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜20質量部である。
【0062】
(外添剤)
本発明のシアントナーとしては、トナー粒子をそのままの状態で用いることもできるが、トナー粒子に対して、流動性、帯電性およびクリーニング性などを改良するために、流動化剤およびクリーニング助剤などの外添剤を添加して用いることもできる。
【0063】
外添剤としては、例えばシリカ微粒子、アルミナ微粒子、酸化チタン微粒子などの無機酸化物微粒子や、ステアリン酸アルミニウム微粒子、ステアリン酸亜鉛微粒子などの無機ステアリン酸化合物微粒子、あるいはチタン酸ストロンチウム、チタン酸亜鉛などの無機チタン酸化合物微粒子などの無機微粒子が挙げられる。
【0064】
これら無機微粒子は、耐熱保管性および環境安定性の観点から、シランカップリング剤やチタンカップリング剤、高級脂肪酸、シリコーンオイルなどによって表面処理が行われたものであることが好ましい。
【0065】
外添剤の添加量は、トナー100質量部に対して0.05〜5質量部、好ましくは0.1〜3質量部とされる。また、外添剤としては種々のものを組み合わせて用いてもよい。
【0066】
(トナーの製造方法)
本発明のシアントナーは、結着樹脂と、着色剤と、必要に応じて内添剤とを用いてトナー粒子を得、このトナー粒子に対して必要に応じて外添剤を添加することによって製造することができる。
【0067】
各色のトナーを製造する方法としては、例えば粉砕法、懸濁重合法、乳化凝集法、その他の公知の方法などを挙げることができるが、乳化凝集法を用いることが好ましい。この乳化凝集法によれば、製造コストおよび製造安定性の観点から、トナー粒子の小粒径化を容易に図ることができる。
【0068】
ここに、乳化凝集法とは、乳化によって製造された結着樹脂の微粒子(以下、「結着樹脂微粒子」ともいう)の分散液を、着色剤の微粒子(以下、「着色剤微粒子」ともいう)の分散液と混合し、所望のトナー粒子径となるまで凝集させ、さらに結着樹脂微粒子間の融着を行うことにより形状制御を行って、トナー粒子を製造する方法である。ここで、結着樹脂の微粒子は、任意に離型剤、荷電制御剤などを含有していてもよい。
【0069】
トナーの製造方法として、乳化凝集法を用いる場合の一例を以下に示す。
(1)水系媒体中に着色剤微粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(2)水系媒体中に、必要に応じて内添剤を含有した結着樹脂微粒子が分散されてなる分散液を調製する工程
(3)着色剤微粒子の分散液と結着樹脂微粒子の分散液とを混合して、着色剤微粒子および結着樹脂微粒子を凝集、融着させてトナー粒子を形成する工程
(4)トナー粒子の分散系(水系媒体)からトナー粒子を濾別し、界面活性剤などを除去する工程
(5)トナー粒子を乾燥する工程
(6)トナー粒子に外添剤を添加する工程
上記(2)の工程において結着樹脂微粒子を分散する手法としては、乳化重合により得られる乳化重合粒子分散液を用いることが好ましい。また、結着樹脂微粒子は、組成の異なる結着樹脂よりなる2層以上の多層構造を有するものであってもよい。このような構成の結着樹脂微粒子は、例えば2層構造を有するものは、常法に従った乳化重合処理(第1段重合)によって樹脂粒子の分散液を調整し、この分散液に重合開始剤と重合性単量体とを添加し、この系を重合処理(第2段重合)する手法によって得ることができる。
【0070】
また、乳化凝集法においては、コア−シェル構造を有するトナー粒子を得ることもでき、具体的にコア−シェル構造を有するトナー粒子は、先ず、コア粒子用の結着樹脂微粒子と着色剤微粒子とを凝集、融着させてコア粒子を作製し、次いで、コア粒子の分散液中にシェル層用の結着樹脂微粒子を添加してコア粒子表面にシェル層用の結着樹脂微粒子を凝集、融着させてコア粒子表面を被覆するシェル層を形成することにより得ることができる。
【0071】
特に、本発明のシアントナーは、水系媒体中に着色剤微粒子が分散されてなる分散液と、水系媒体中に結着樹脂微粒子が分散されてなる分散液とを混合して、着色剤微粒子および結着樹脂微粒子を凝集、融着させる工程を経ることにより得られるものであること、すなわち乳化凝集法などの製造方法により得られるものであることが好ましい。
【0072】
前記(1)の分散液を調整する工程における着色剤微粒子の粒子径としては、体積基準のメディアン径で10〜300nmであることが好ましい。
【0073】
(着色剤分散液中の分散粒径の測定)
着色剤微粒子の水系媒体中における分散粒径は体積平均粒径、すなわち体積分布におけるメディアン径であり、このメディアン径は、「MICROTRAC UPA150」(HONEYWELL社製)を用いて測定した値である。
【0074】
(測定条件)
(1)サンプル屈折率:1.59
(2)サンプル比重 :1.05(球状粒子換算)
(3)溶媒屈折率 :1.33
(4)溶媒粘度 :30℃にて0.797
20℃にて1.002
測定セルにイオン交換水を入れ、ゼロ点調節を行った。
【0075】
また、シアントナーの製造方法として、粉砕法を用いる場合の一例を以下に示す。
(1)結着樹脂、着色剤および必要に応じて内添剤をヘンシェルミキサーなどにより混合する工程
(2)得られた混合物を押出混練機などにより加熱しながら混練する工程
(3)得られた混練物をハンマーミルなどにより粗粉砕処理した後、更にターボミル粉砕機などにより粉砕処理を行う工程
(4)得られた粉砕物を、例えばコアンダ効果を利用した気流分級機を用いて微粉分級処理しトナー粒子を形成する工程
(5)トナー粒子に外添剤を添加する工程
(トナー粒子の粒子径)
本発明のトナー粒子の粒子径は、例えば体積基準のメディアン径で4〜10μmであることが好ましく、さらに好ましくは5〜9μmとされる。
【0076】
体積基準のメディアン径が上記の範囲にあることにより、転写効率が高くなってハーフトーンの画質が向上し、細線やドットなどの画質が向上する。
【0077】
トナー粒子の体積基準のメディアン径は、コールターカウンターマルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)に、データ処理用ソフト「Software V3.51」を搭載したコンピューターシステム(ベックマン・コールター社製)を接続した装置を用いて測定、算出する。
【0078】
測定手順としては、トナー0.02gを、界面活性剤溶液20ml(トナーの分散を目的として、例えば界面活性剤成分を含む中性洗剤を純水で10倍希釈した界面活性剤溶液)で馴染ませた後、超音波分散を1分間行い、トナー分散液を作製する。このトナー分散液を、サンプルスタンド内のISOTONII(ベックマン・コールター社製)の入ったビーカーに、測定器表示濃度が5%〜10%になるまでピペットにて注入する。この濃度範囲にすることにより、再現性のある測定値が得られる。測定機において、測定粒子カウント数を25000個、アパチャー径を100μmにし、測定範囲である2.0〜60μmの範囲を256分割しての頻度値を算出し、体積積算分率が大きい方から50%の粒子径を体積基準メディアン径(体積D50%径)とする。
【0079】
(トナーの軟化点温度)
本発明のトナーの軟化点温度(Tsp)は70℃以上130℃以下となるものが好ましく、70℃以上120℃以下となるものがより好ましい。本発明に用いられる各色のトナーを構成する着色剤は、熱の影響を受けてもスペクトルが変化することのない安定した性質を有するものであるが、軟化点温度(Tsp)が上記範囲であることにより定着時にトナーに加わる熱の影響をより低減させることができる。従って、着色剤に負担をかけずに画像形成が行えるので、より広く安定した色再現性を発現させることが期待される。
【0080】
また、トナーの軟化点温度(Tsp)が上記範囲であることにより、従来技術よりも低い温度でトナー画像定着が行えることができ、電力消費の低減を実現した環境に優しい画像形成を実現することができる。
【0081】
なお、トナーの軟化点温度(Tsp)は、たとえば、以下の方法を単独で、または、組み合わせることにより制御することができる。すなわち、
(1)結着樹脂を形成すべき単量体の種類や組成比を調節する。
(2)連鎖移動剤の種類や添加量により結着樹脂の分子量を調節する。
(3)離型剤等の種類や添加量を調節する。
【0082】
(軟化点温度の測定)
トナーの軟化点温度(Tsp)の測定方法は、例えば「フローテスターCFT−500(島津製作所社製)」を用い、高さ10mmの円柱形状に成形し、昇温速度6℃/分で加熱しながらプランジャーより1.96×10Paの圧力を加え、直径1mm、長さ1mmのノズルから押し出すようにし、これにより当該フローテスターのプランジャー降下量−温度間の曲線(軟化流動曲線)を描き、最初に流出する温度を溶融開始温度、降下量5mmに対する温度を軟化点温度とする。
【0083】
(トナーのガラス転移点)
本発明のトナーは、そのガラス転移点(Tg)が20〜90℃であることが好ましく、より好ましくは30〜65℃である。
【0084】
(ガラス転移点の測定)
本発明のトナーのガラス転移温度は、DSC−7示差走査カロリーメーター(パーキンエルマー製)、TAC7/DX熱分析装置コントローラー(パーキンエルマー製)を用いて行うことができる。
【0085】
測定手順としては、トナー4.5mg〜5.0mgを小数点以下2桁まで精秤しアルミニウム製パン(KITNO.0219−0041)に封入し、DSC−7サンプルホルダーにセットする。リファレンスは空のアルミニウム製パンを使用した。測定条件としては、測定温度0℃〜200℃、昇温速度10℃/分、降温速度10℃/分で、Heat−cool−Heatの温度制御で行い、その2nd Heatにおけるデータをもとに解析を行った。
【0086】
ガラス転移温度は、第1の吸熱ピークの立ち上がり前のベースラインの延長線と、第1のピークの立ち上がり部分からピーク頂点までの間で最大傾斜を示す接線を引き、その交点をガラス転移温度(ガラス転移点)として示す。
【0087】
(現像剤)
本発明のシアントナーは、非磁性の一成分現像剤として使用することもできるが、キャリアと混合して二成分現像剤として使用してもよい。
【0088】
二成分現像剤として使用する場合において、キャリアとしては、鉄などの強磁性金属、強磁性金属とアルミニウムおよび鉛などの合金、フェライトおよびマグネタイトなどの強磁性金属の化合物などの従来公知の材料からなる磁性粒子を用いることができ、特にフェライト粒子が好ましい。また、キャリアとしては、磁性粒子の表面を樹脂などの被覆剤で被覆したコートキャリアや、バインダー樹脂中に磁性体微粉末を分散したバインダー型キャリアなどを用いることもできる。コートキャリアを構成する被覆樹脂としては、特に限定はないが、例えばオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン−アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂、エステル樹脂、フッ素樹脂などが挙げられる。また、樹脂分散型キャリアを構成する樹脂としては、特に限定されず公知のものを使用することができ、例えばスチレン−アクリル系樹脂、ポリエステル樹脂、フッ素樹脂、フェノール樹脂などを使用することができる。
【0089】
キャリアの体積基準のメディアン径は、20〜100μmであることが好ましく、さらに好ましくは20〜60μmである。
【0090】
キャリアの体積基準のメディアン径は、代表的には湿式分散機を備えたレーザ回折式粒度分布測定装置「ヘロス(HELOS)」(シンパテック(SYMPATEC)社製)により測定することができる。
【0091】
(転写材)
本発明のシアントナーを用いる画像形成に用いられる転写材としては、薄紙から厚紙までの普通紙、上質紙、アート紙あるいはコート紙などの塗工された印刷用紙、市販されている和紙やはがき用紙、OHP用のプラスチックフィルム、布などの各種を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【実施例】
【0092】
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0093】
〔亜鉛フタロシアニン〕
実施例には例示化合物(Y−1)の亜鉛フタロシアニンについて、それぞれC値の異なる表1の亜鉛フタロシアニンを用いた。
【0094】
【表1】

【0095】
〔着色剤微粒子分散液の調整工程〕
(1)着色剤微粒子分散液〔1〕の調製
n−ドデシル硫酸ナトリウム11.5質量部をイオン交換水160質量部に投入し、溶解、撹拌して界面活性剤水溶液を調製した。この界面活性剤水溶液中に、化合物(1)15質量部を徐々に添加し、「クリアミックスWモーションCLM−0.8」(エム・テクニック社製)を用いて分散処理を行って、着色剤微粒子分散液〔1〕を調製した。
【0096】
着色剤微粒子分散液〔1〕中の微粒子の体積基準メディアン径は174nmであった。
(2)着色剤微粒子分散液〔2〕、〔3〕の調整
着色剤分散液〔1〕の調整において、着色剤として化合物(1)を化合物(2)、(3)に変更した他は同様にして、着色剤微粒子分散液(2)、(3)を調整した。
【0097】
〔シアントナーの作製例1(乳化凝集法)〕(トナー〔1〕と〔2〕を入れ替えました)
(1)コア部用樹脂粒子〔1〕の製造例
下記に示す第1段重合、第2段重合および第3段重合を経て多層構造を有するコア部用樹脂粒子〔1〕を作製した。
【0098】
(a)第1段重合(樹脂粒子〔A1〕の作製)
撹拌装置、温度センサー、冷却管、窒素導入装置を取り付けた5Lの反応容器に、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム4質量部をイオン交換水3040質量部に溶解させた界面活性剤溶液を仕込み、窒素気流下230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、内温を80℃に昇温させた。この界面活性剤溶液に、重合開始剤(過硫酸カリウム:KPS)10質量部をイオン交換水400質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、温度を75℃とした後、スチレン532質量部、n−ブチルアクリレート200質量部、メタクリル酸68質量部、n−オクチルメルカプタン16.4質量部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下し、この系を75℃にて2時間にわたり加熱、撹拌することによって重合(第1段重合)を行い、樹脂粒子〔A1〕を作製した。なお、第1段重合で作製した樹脂粒子〔A1〕の質量平均分子量(Mw)は16,500であった。
【0099】
(b)第2段重合(中間層の形成:樹脂粒子〔A2〕の作製)
撹拌装置を取り付けたフラスコ内において、スチレン101.1質量部、n−ブチルアクリレート62.2質量部、メタクリル酸12.3質量部、n−オクチルメルカプタン1.75質量部からなる単量体混合液に、離型剤として、パラフィンワックス「HNP−57」(日本精鑞社製)93.8質量部を添加し、90℃に加温して溶解させた。
【0100】
一方、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム3質量部をイオン交換水1560質量部に溶解させた界面活性剤溶液を98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に、樹脂粒子〔A1〕32.8質量部(固形分換算)添加し、循環経路を有する機械式分散機「クレアミックス」(エム・テクニック社製)により、前記パラフィンワックスを含有する単量体溶液を8時間混合分散させ、分散粒子径340nmを有する乳化粒子を含む分散液を調製した。次いで、この乳化粒子分散液に、過硫酸カリウム6質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、この系を98℃にて12時間にわたり加熱撹拌することにより重合(第2段重合)を行い、樹脂粒子〔A2〕を作製した。なお、第2段重合で調製した樹脂粒子〔A2〕のMwは23,000であった。
【0101】
(c)第3段重合(外層の形成:コア部用樹脂粒子〔1〕の作製)
樹脂粒子〔A2〕に、過硫酸カリウム5.45質量部をイオン交換水220質量部に溶解させた重合開始剤溶液を添加し、80℃の温度条件下で、スチレン293.8質量部、n−ブチルアクリレート154.1質量部、n−オクチルメルカプタン7.08質量部からなる単量体混合液を1時間かけて滴下した。滴下終了後、2時間にわたり加熱撹拌することにより重合(第3段重合)を行った後、28℃まで冷却しコア部用樹脂粒子〔1〕を得た。なお、コア部用樹脂粒子〔1〕のMwは26,800であった。また、コア部用樹脂粒子〔1〕の体積平均粒径は125nmであった。さらに、このコア部用樹脂粒子〔1〕のガラス転移温度(Tg)は28.1℃であった。
(2)シェル層用樹脂粒子〔1〕の作製工程
コア部用樹脂粒子〔1〕の第1段重合において、スチレンを548質量部、2−エチヘキシルアクリレートを156質量部、メタクリル酸を96質量部、n−オクチルメルカプタンを16.5質量部に変更した単量体混合液を用いた以外は同様にして、重合反応及び反応後の処理を行い、シェル層用樹脂粒子〔1〕を作製した。なお、シェル層用樹脂粒子〔1〕のTgは53.0℃であった。
(3)トナー粒子〔1〕の作製工程
(a)コア部の形成
コア部用樹脂粒子〔1〕420質量部(固形分換算)と、イオン交換水900質量部と、着色剤微粒子分散液〔3〕200質量部を、温度センサー、冷却管、窒素導入装置、撹拌装置を取り付けた反応容器に入れて撹拌した。反応容器内の温度を30℃に調整した後、この溶液に5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を加えてpHを8〜11に調整した。
【0102】
次いで、塩化マグネシウム・6水和物60質量部をイオン交換水60質量部に溶解した水溶液を、撹拌下、30℃にて10分間かけて添加した。3分間放置した後に昇温を開始し、この系を80分間かけて80℃まで昇温した。その状態で「コールターマルチサイザー3」(コールター社製)にて会合粒子の粒径を測定し、会合粒子の体積基準におけるメディアン径(D50)が6.3μmになった時点で、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解した水溶液を添加して粒径成長を停止させ、さらに、熟成処理として液温度80℃にて1時間にわたり加熱撹拌することにより融着を継続させ、コア部〔1〕を形成した。なお、コア部〔1〕の円形度を「FPIA2100」(システックス社製)にて測定したところ0.930であった。
【0103】
(b)シェル層の形成(トナー粒子〔1〕の作製)
次いで、65℃においてシェル層用樹脂粒子〔1〕46.8質量部(固形分換算)を添加し、さらに塩化マグネシウム・6水和物2質量部をイオン交換水20質量部に溶解した水溶液を、10分間かけて添加した後、80℃(シェル化温度)まで昇温し、1時間にわたり撹拌を継続し、コア部〔1〕の表面に、シェル層用樹脂粒子〔1〕の粒子を融着させた後、80℃で所定の円形度まで熟成処理を行い、シェル層を形成させた。ここで、塩化ナトリウム40.2質量部を加え、8℃/分の条件で30℃まで冷却し、生成した融着粒子を濾過し、45℃のイオン交換水で繰り返し洗浄し、その後、40℃の温風で乾燥することにより、コア部表面にシェル層を有する、体積基準におけるメディアン径(D50)が6.5μm、Tgが31℃のトナー粒子〔1〕を得た。
(4)外添剤添加工程(トナー〔1〕の作製)
トナー粒子〔1〕100質量部に下記外添剤を添加して、「ヘンシェルミキサー」(三井三池鉱業社製)にて撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間15分の条件の下で外添処理を行い、シアントナー〔1〕を作製した。
【0104】
・ヘキサメチルジシラザン処理したシリカ(平均一次粒径12nm) 0.6質量部
・n−オクチルシラン処理した二酸化チタン(平均一次粒径24nm)0.8質量部
シアントナー〔1〕の軟化点は107℃であった。
【0105】
〔シアントナーの作製例2(粉砕法)〕
(1)混合工程
下記材料を「ヘンシェルミキサー」(三井鉱山社製)により、撹拌羽の周速を25m/秒に設定して5分間かけて混合して混合物を得た。
【0106】
・ポリエステル樹脂 100質量部
(ビスフェノールA−エチレンオキサイド付加物、テレフタル酸、トリメリット酸の縮合物、質量平均分子量Mw20,000)
・着色剤(化合物(3)) 3質量部
・カルナバワックス(セラリカNODA社製) 3質量部
(2)混練工程
得られた混合物を二軸押出混練機により120℃に加熱しながら混練し、混練物を得、その後この混練物を冷却した。
(3)粉砕工程
得られた混練物を「ハンマーミル」(ホソカワミクロン社製)により粗粉砕した後、「ターボミルT−400型」(ターボ工業社製)により微粉砕した。
(4)分級工程
得られた微粉末を風力分級機により微粉分級を行うことにより、体積平均粒子径が8.0μmのトナー粒子よりなるトナー粒子〔2〕を得た。
(5)外添剤添加工程
トナー粒子〔2〕100質量部に下記外添剤を添加して、「ヘンシェルミキサー」(三井三池鉱業社製)にて撹拌羽根の周速35m/秒、処理温度35℃、処理時間8分の条件の下で外添処理を行い、シアントナー〔2〕を作製した。
【0107】
・ヘキサメチルジシラザン処理したシリカ(平均一次粒径12nm) 0.4質量部
・n−オクチルシラン処理した二酸化チタン(平均一次粒径24nm)0.8質量部
シアントナー〔2〕の軟化点は110℃であった。
【0108】
〔シアントナーの作製例3(比較用トナーの作製)〕
シアントナー〔2〕の作製において、着色剤を化合物(1)に変更してシアントナー〔3〕を作製した。これを比較用とした。
【0109】
〔シアントナー作製例3、4(比較用トナーの作製)〕
シアントナー〔1〕の作製において、着色剤を化合物(1)、(2)をそれぞれ用いた他は同様にして、シアントナー〔4〕、〔5〕を作製した。これを比較用とした。
【0110】
〔現像剤〔1〕〜〔5〕の作製〕
前記「シアントナー〔1〕〜〔5〕」に対して、シリコーン樹脂を被覆した体積平均粒径50μmのフェライトキャリアを、トナー濃度が6質量%になるように混合し、二成分現像剤である「現像剤〔1〕〜〔5〕」を調製した。
【0111】
【表2】

【0112】
≪評価方法≫
〔シアントナーの彩度〕
(フルカラー画像の色再現範囲の評価)
(1)色再現範囲
温度20℃、湿度50%RHの環境下において、フルカラー高速複合機「bizhub C6500(コニカミノルタビジネステクノロージーズ社製)」を用い、シアン現像剤〔1〕から〔5〕と、「bizhub C6500」のイエロー現像剤、マゼンタ現像剤を用いて、定着線速310mm/min(約65枚/分)に設定された条件下で、ECI2002VCMYKチャートの画像出力を「PODグロスコート紙128g/m」(王子製紙社製)に行った。各々出力画像パッチについて、分光光度計「Gretag Macbeth Spectrolino」(Gretag Macbeth社製)を用い、光源としてD65光源、反射測定アパーチャとしてφ4mmのものを用い、視野角を2°とし、基準あわせには専用白色タイルを用いた条件において測定するものとする。ここで、L表色色空間において、色相角210〜240度の範囲を、Lが50以上のところの色の色域面積を高明度シアン領域の面積とし、Lが50未満のところの色の色域面積を低明度シアン領域の面積とし、比較用のシアントナー〔3〕の現像剤を用いた場合の色域面積をそれぞれ100として色域を評価した。ここでの色域面積が105以上を合格レベルとして評価を行った。結果を表3に示した。
【0113】
なお、「L表色系」は色を数値化して表すのに有用に用いられる手段であり、L:方向が明度を表し、a軸方向が赤−緑方向の色相を表し、b軸方向が黄−青方向の色相を表すものである。
【0114】
【表3】

【0115】
表3の結果から明らかなように本発明のシアントナー〔1〕、〔2〕は比較用のシアントナー〔3〕〜〔5〕に比べて、低明度から高明度領域の彩度が高いことが分かる。
【符号の説明】
【0116】
A ブラッグ角2θ=7.0±0.1°におけるピーク
B ブラッグ角2θ=9.3±0.1°におけるピーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも結着樹脂と亜鉛フタロシアニン化合物よりなる着色剤を含有する静電荷像現像用トナーであって、該静電荷像現像用トナーのX線回折スペクトルで、CuKαの特性X線に対するブラッグ角2θの回折ピークから式(1)によって算出されるC値が80以上150以下であることを特徴とする静電荷像現像用シアントナー。
式(1)
C=(A×100)/B
(但し式(1)中、Aはブラッグ角2θ=7.0±0.1°におけるピークの絶対強度を表し、Bはブラッグ角2θ=9.3±0.1°におけるピークの絶対強度を表す。)
【請求項2】
前記亜鉛フタロシアニン化合物が下記一般式(1)で表されるものであることを特徴とする請求項1に記載の静電荷像現像用シアントナー。
【化1】

(上記一般式(1)中、4つのAは、各々独立に置換基を有してもよい芳香環を形成する原子団を表す。)

【図1】
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【公開番号】特開2012−225968(P2012−225968A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−90691(P2011−90691)
【出願日】平成23年4月15日(2011.4.15)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】