説明

静電誘導ノイズ抑制装置、生体電極用カバー、生体電極、及び静電誘導ノイズ抑制方法

【課題】生体電極の電極部に接続するケーブルにおけるシールドの有無にかかわらず、生体信号の静電誘導ノイズを生体電極側で抑制すること。
【解決手段】電極カバー100において、基材102は、生体の体表面に装着される生体電極150の電極部152Cを被覆する。導電膜104は、電極部152Cから絶縁されて基材102に設けられ、電極部152Cに近接する帯電体との静電誘導により電荷を帯電する。導電粘着ゲル108は、導電膜104と体表面とを電気的に接続させ、導電膜108の帯電電荷を生体に放電させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電誘導ノイズ抑制装置、生体電極用カバー、生体電極、及び静電誘導ノイズ抑制方法に関し、特に、生体の体表面に装着される生体電極により検知される生体信号内の静電誘導ノイズを抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
心電図等の生体信号を計測するための生体電極として、計測時に被検者の体表面に装着され、体表面上の電極部により生体信号を取得し、ケーブル等の信号伝送部を介してこの生体信号を各種医療用器械に伝送するものが、広く用いられている。生体電極の構成は多種多様であり、通常は使用状況等に応じて使い分けられている。例えば、電極部とケーブルとが連結されている一体型の生体電極や、計測時にケーブルを電極部に接続する生体電極等がある。
【0003】
生体電極を用いて生体信号を計測する際に、静電気を帯びた物体(例えば衣類。以下「帯電体」という)が電極部に近接すると、帯電体と電極部表面との間に静電誘導が起こり、電界が発生してノイズ源となる電圧が発生することがある。このとき、電極部からケーブルを介して器械に伝送される生体信号に静電誘導ノイズが混入する。
【0004】
ここで、一般的な静電気除去技術としては、例えば特許文献1〜5に記載されたものが知られている。
【0005】
特許文献1記載の方法では、帯電体の表面に対して揮発性の液体を霧状にして噴き付け、揮発性の液体を揮発させることによって、帯電体の表面から静電気を除去する。
【0006】
特許文献2記載の方法では、コロナ放電によりイオン化エアを発生させ、そのイオン化エアを帯電体に当てることによって、静電気を除去する。
【0007】
特許文献3記載の方法では、導電性の静電気除去ブラシを帯電体に接触させることによって、静電気を除去する。
【0008】
特許文献4記載の方法では、帯電体に静電気中和剤を噴射することによって、静電気を除去する。
【0009】
特許文献5記載の方法では、リストストラップにより静電気を作業机を通じてグランドへ逃がす。
【0010】
上記方法はいずれも、帯電体自体から静電気を除去するものである。
【0011】
一方、帯電体との静電誘導によるノイズを生体電極側で抑制する静電誘導ノイズ抑制方法としては、ケーブルの電極接続部をシールドで覆い、シールド表面の電荷をケーブルで器械側グランドへ放電して、ノイズ源となる電圧を抑制することが、従来周知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−47336号公報
【特許文献2】特開昭55−62503号公報
【特許文献3】実開昭55−99100号公報
【特許文献4】実開昭57−140099号公報
【特許文献5】特開2004−31071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記従来の静電誘導ノイズ除去方法においては、シールド付きのケーブルが用いられるが、生体電極の使用状況によっては、シールド付きのケーブルを使用しないことが望ましい場合もある。例えば、生体電極を体表面に装着してその電極部にシールド付きケーブルを接続した状態で、X線画像を撮影しながら手術を行うと、X線がシールドに遮断されて、シールドの像がX線画像に映る可能性がある。また、手術中に生体電極を体表面に装着してその電極部にシールド付きケーブルを接続した状態で除細動を行うと、シールドと除細動電極との位置関係によってはこれらが短絡する可能性がある。
【0014】
上記の理由により、生体電極の電極部に接続するケーブルがシールド付きか否かにかかわらず生体信号の静電誘導ノイズを生体電極側で抑制することが、求められている。
【0015】
本発明の目的は、生体電極の電極部に接続するケーブルにおけるシールドの有無にかかわらず、生体信号の静電誘導ノイズを生体電極側で抑制することができる、静電誘導ノイズ抑制装置、生体電極用カバー、生体電極、及び静電誘導ノイズ抑制方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の静電誘導ノイズ抑制装置は、生体信号内の静電誘導ノイズを抑制する静電誘導ノイズ抑制装置であって、
生体の体表面に装着される生体電極の電極部から絶縁されて配置され、前記電極部に近接する帯電体との静電誘導により電荷を帯電する帯電部と、
前記帯電部と前記体表面とを電気的に接続させる接続部を介して前記帯電部の帯電電荷を前記生体に放電させる放電部と、
を有する。
【0017】
本発明の生体電極用カバーは、
生体の体表面に装着される生体電極の電極部を被覆する被覆材と、
前記電極部から絶縁されて前記被覆材に設けられ、前記電極部に近接する帯電体との静電誘導により電荷を帯電する帯電部と、
前記帯電部と前記体表面とを電気的に接続させる接続部を介して前記帯電部の帯電電荷を前記生体に放電させる放電部と、
を有する。
【0018】
本発明の生体電極は、生体の体表面に装着される生体電極であって、
中央部には、電極部が固定されており、外周部には、前記体表面に粘着可能な粘着面が形成されている、シート材と、
前記シート材において前記粘着面の反対面上に前記電極部から絶縁されて配置され、前記電極部に近接する帯電体との静電誘導により電荷を帯電する帯電部と、を有し、
前記シート材は、前記帯電部と前記体表面とを電気的に接続させる接続部を前記外周部に備えており、前記接続部を介して前記帯電部の帯電電荷を前記生体に放電させる。
【0019】
本発明の静電誘導ノイズ抑制方法は、生体信号内の静電誘導ノイズを抑制する静電誘導ノイズ抑制方法であって、
生体の体表面に装着される生体電極の電極部に帯電体が近接するときに、前記電極部から絶縁されて配置された帯電部に電荷を帯電させるステップと、
前記帯電部と前記体表面とを電気的に接続させる接続部を介して前記帯電部の帯電電荷を前記生体に放電させるステップと、
を有する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、生体電極の電極部に接続するケーブルにおけるシールドの有無にかかわらず、生体信号の静電誘導ノイズを生体電極側で抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)本発明の実施の形態1に係る電極カバーの上面図、(b)同電極カバーの底面図、(c)同電極カバーの積層構成を示す概略図
【図2】(a)従来の生体電極の構成例を示す図、(b)同生体電極の要部である電極本体を示す図
【図3】(a)本発明の実施の形態1に係る電極カバーの使用法を説明するための図、(b)使用時の同電極カバーと図2(b)の電極本体との位置関係を示す図
【図4】(a)本発明の実施の形態1に係る電極カバー使用時に計測される四肢誘導波形の例を示す図、(b)同電極カバー不使用時に計測される四肢誘導波形の例を示す図
【図5】(a)本発明の実施の形態1に係る電極カバーの変形例の上面図、(b)同変形例の底面図、(c)同変形例の積層構成を示す概略図
【図6】(a)本発明の実施の形態2に係る生体電極の上面図、(b)同生体電極の底面図、(c)同生体電極の積層構成を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0023】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係る生体電極用カバー(以下、単に「電極カバー」という)の構成を示す図であり、(a)は上面図、(b)は底面図、(c)は(a)のI−I線矢視図であって、電極カバーの積層構成を概略的に示す図である。
【0024】
図1に示す電極カバー100は、その底面部(装着面)100Aを生体電極の電極部(例えば図2)に向けてその電極部に被せると共に被検者の体表面に装着させて使用するものである。すなわち、本実施の形態の電極カバー100は、本発明の静電誘導ノイズ抑制装置を、生体電極に被せて使用可能な別ピースの部材(カバー)に適用したものである。
【0025】
図1に示すように、電極カバー100は、基材102、導電膜104、発泡絶縁体106及び導電粘着ゲル108を有する。
【0026】
被覆材としての基材102は、例えばPET(Polyethylene terephthalate)等の可撓性を有するフィルム材(例えば、厚さ75μm)であり、電極カバー100の上面部100Bを成している。基材102は、生体電極の電極部1個を被覆するに適したサイズ(例えば、長さ75mm、幅30mm)を有する。
【0027】
帯電部としての導電膜104は、基材102の全域にわたって形成された導電材から成る薄膜(例えば、厚さ10〜15μm)である。導電膜104は、外部の帯電体(図示せず)が電極本体152に近接したときにその帯電体との静電誘導により電荷を帯電する。
【0028】
導電膜104は、例えばカーボンインキ等の導電インキ印刷を基材102の底面部100A側に対して施すことにより、低コストで形成可能である。また、導電インキを基材102の底面部100A側に印刷することにより、導電インキを露出させないようにすることができる。また、フィルム状の被覆材(基材102)上に積層する帯電部又は導電材を導電膜104のように薄膜とすることで、電極カバー100を薄く形成することができる。
【0029】
放電部としての導電粘着ゲル108は、基材102の長さ方向端部領域(長さ方向両端部から中央部側へ10mm程度)において導電膜104の底面部100A側に配置されており、自己の粘着性により導電膜104に付着している。導電膜104に接着する面と反対の面は、自己の粘着性により体表面に付着可能である。よって、導電粘着ゲル108は、導電膜104と体表面との双方への接触状態を保持可能であり、これにより導電膜104と体表面とを電気的に接続する接続部を形成し、この接続部を介して導電膜104の帯電電荷を体内に放電する。体表面に接触する接続部が、水分を含む導電粘着ゲル108で形成されているため、電極カバー100を長時間継続使用した場合でも被検者の皮膚障害を軽減することができる。
【0030】
発泡絶縁体106は、発泡性材料から成る絶縁体であり、導電膜104の底面部100A側において導電粘着ゲル108が配置されていない残余の領域に配置されており、接着剤(図示せず)により導電膜104に付着している。
【0031】
上記構成を有する電極カバー100は、不使用時には装着面全体が保護フィルム(図示せず)で被覆された状態で保管されており、使用時に保護フィルムを剥離することで使用可能となる。保護フィルムは例えばPETフィルムであるが、紙製であっても良い。
【0032】
電極カバー100は、例えば図2に示す従来の生体電極に対して使用可能である。図2は、従来の生体電極の構成例を示す図であり、(a)は全体構成を示す図であり、(b)は要部構成を概略的に示すII−II線矢視図である。
【0033】
図2(a)に示すように、生体電極150は、6個の電極本体152がそれぞれケーブル154と連結されている一体型タイプの構成を有する。ケーブル154の端部には、生体情報記録装置等の器械へ接続可能なコネクタ156が設けられている。電極本体152は、不使用時には電極本体152の底面部(装着面)152A全体が保護フィルム158で被覆された状態で保管されており、使用時には保護フィルム158を剥離することで使用可能となる。
【0034】
図2(b)に示すように、生体電極150の要部である電極本体152は、上面部152Bを成す発泡絶縁体である基材160を有しており、基材160の底面部152A側には、例えば銀/塩化銀から成る電極素子162が貼付されている。さらに、電極本体152は、電極素子162にケーブル154の導線を成すカーボン糸154aを接触させた状態で基材160の底面部152A側全体に導電粘着ゲル164を付着させた構成を有する。電極本体152において、電極素子162と導電粘着ゲル164との組合せは、生体電極150の電極部152Cを構成する。
【0035】
なお、図2(b)では、電極本体152の積層構成を分かりやすくするために各部材間を離して表示している。
【0036】
図3(a)は、電極カバー100の使用法を説明するための図であり、(b)は使用時の電極カバー100と電極本体152との位置関係を示すIII−III線矢視図である。
【0037】
図3(a)に示すように、電極カバー100を使用する際には、電極カバー100の底面部100Aを、底面部152Aを体表面(図示せず)に向けた電極本体152の上面部152Bに向けた状態で、電極カバー100を電極本体152に被せる。このように電極カバー100を電極本体152に被せることによって、電極カバー100の導電膜104と電極本体152の電極部152Cとの間に発泡絶縁体106を介在させることができる。そのため、電極カバー100の導電膜104を、電極本体152の電極部152Cから確実に絶縁させることができる。
【0038】
電極カバー100を電極本体152に被せる際には、両端部に位置する導電粘着ゲル108が両方とも体表面に接触して確実に帯電電荷の体内放電を行えるように、両方の導電粘着ゲル108が電極本体152に重ならないようにすることが好ましい。
【0039】
また、電極カバー100を電極本体152に被せたときに導電粘着ゲル108と電極部152C(特に電極部152Cの端面)とが確実に離間するよう、その離間部分Gまで発泡絶縁体106が延在することが好ましい。このようにして、電極カバー100を電極本体152に被せたときには、電極カバー100の導電粘着ゲル108と電極本体152の電極部152Cとの間に発泡絶縁体106を介在させることができる。これにより、電極部152C内への帯電電荷の放電を確実に回避することができる。
【0040】
上記のように電極カバー100を使用すると、外部の帯電体が電極部152Cに近接したときに、その帯電体と導電膜104との間に静電誘導を生じさせて導電膜104に電荷を帯電させることができる。そして、その帯電電荷を、導電粘着ゲル108を介して被検者の体内に放電させることができる。その結果、静電誘導ノイズが抑制されている心電図波形を得ることができる。この効果は、電極カバー100使用時の心電図計測結果(四肢誘導波形)の例(図4(a))を、電極カバー100不使用時のもの(図4(b))と比較して見ると、明らかである。
【0041】
このように、本実施の形態によれば、生体電極150の電極部152Cから絶縁されて配置された導電膜104に、電極部152Cに近接する帯電体との静電誘導により電荷を帯電させる。そして、その帯電電荷を、導電膜104と被検者の体表面とを電気的に接続させる導電粘着ゲル108を介して被検者の体内に放電させる。この構成により、電極部152Cに接続するケーブル154がシールド付きでなくても、生体信号の静電誘導ノイズを、生体電極150側で抑制することができる。なお、ケーブル154がシールド付きの場合にも、本実施の形態の構成によりノイズ抑制効果を増大できることは、言うまでもない。
【0042】
また、本実施の形態によれば、生体電極150とは別ピースの電極カバー100に上記構成を適用し、電極カバー100を生体電極150に被せるだけで上記効果を実現している。よって、既存の如何なるタイプの生体電極においても静電誘導ノイズの抑制効果を容易に得ることができる。
【0043】
なお、電極カバー100を電極本体152に貼付可能な構成としても良い。図5は、電極カバー100の構成の変形例を示す図であり、(a)は上面図、(b)は底面図、(c)は(a)のV−V線矢視図であって、電極カバー100の積層構成を概略的に示す図である。なお、記述のものと同一の構成要素には同一の参照番号を付している。
【0044】
図5に示す電極カバー100では、発泡絶縁体106の底面部100A側中央部に、生体の体表面に粘着可能な粘着剤から成る粘着部110が設けられている。この構成により、電極カバー100の底面部100Aを電極本体152の上面部152Bに貼付することができるため、元々別体である電極カバー100と電極本体152とを容易に一体化させることができる。この場合、生体信号計測後、電極カバー100及び電極本体152を被検者から取り外す際に、電極カバー100を体表面から剥がすだけで電極本体152も同時に体表面から剥がすことが可能となる。
【0045】
なお、本実施の形態では、電極部152Cのサイズが電極本体152の面(つまり基材160のサイズ)に等しいため、電極カバー100は電極本体152全体を覆っている。しかしながら、電極部152Cが電極本体152の面の一部のみを占めている場合は、電極カバー100は、電極部152Cを覆い、かつ体表面に導通できる大きさであれば良い。
【0046】
(実施の形態2)
図6は、本発明の実施の形態2に係る生体電極の構成を示す図であり、(a)は上面図、(b)は底面図、(c)は(a)のVI−VI線断面図であって、生体電極の積層構成を概略的に示す図である。
【0047】
図6に示す生体電極200は、その底面部(装着面)200Aを被検者の体表面に装着させて使用するものである。すなわち、本実施の形態の生体電極200は、本発明の静電誘導ノイズ抑制装置を生体電極そのものに適用したものである。
【0048】
図6に示すように、生体電極200は、基材202、電極素子204、導電粘着ゲル206、208及び導電膜210を有する。
【0049】
基材202は、例えば不織布等のシート材であり、円形部分(例えば、径40mm)とつまみ部を成す延在部分とを有するよう形成されている。基材202の中央部には、底面部200A側から基材202を貫通して上面部200B側へ突出するように電極素子204が配置されている。
【0050】
電極素子204は、例えばカーボン含有樹脂をキノコ形状に成形してそのキノコ形の頭部に例えば銀/塩化銀の薄膜を貼付してなる部材である。このような部材の胴体部を基材202の中央部に底面部200A側から差し込んで上面部200B側に突出させることにより、電極素子204をホック式の電極素子とすることができる。
【0051】
導電粘着ゲル206は、基材202の底面部200A側に位置する電極素子204の頭部を覆うように円形状に配置されており、自己の粘着性により基材202及び電極素子204に付着している。基材202及び電極素子204に接着する面と反対の面は、自己の粘着性により体表面に付着可能である。電極素子204と導電粘着ゲル206との組合せは、生体電極200の電極部200Cを構成する。
【0052】
ここで、基材202の底面部200A側において電極部200Cが配置されていない部分(外周部)には、例えばアクリル系の非導電性粘着剤が塗布されており、この部分は、体表面に粘着可能な粘着面となっている。
【0053】
また、基材202の外周部には、例えば径4mmの穴部202aが形成されており、この穴部202aを覆うように導電膜210が配置されている。
【0054】
帯電部としての導電膜210は、基材202の上面部200B側に導電インキ印刷等の方法により形成された導電材から成る薄膜(例えば、厚さ10〜15μm)である。導電膜210は、電極素子204を中心に環状に配置されていると共に、電極部200Cから電気的に絶縁されるように電極素子204から離間して配置されている。導電膜210は、外部の帯電体(図示せず)が電極部200Cに近接したときにその帯電体との静電誘導により電荷を帯電する。
【0055】
なお、導電膜210と電極部200Cとを確実に絶縁するために、絶縁性のフィルム材で導電膜210を覆って、電極部200Cや、電極部200Cに接続するケーブル(図示せず)のコネクタに、導電膜210が接触しないようにすることが、好ましい。
【0056】
放電部としての導電粘着ゲル208は、基材202の外周部に形成された穴部202aに充填されており、自己の粘着性により導電膜210に付着している。導電膜210に接着する面と反対の面は、自己の粘着性により体表面に付着可能である。よって、導電粘着ゲル208は、導電膜210と体表面との双方への接触状態を保持可能であり、これにより導電膜210と体表面とを電気的に接続する接続部を形成し、この接続部を介して導電膜210の帯電電荷を体内に放電する。
【0057】
なお、穴部202aに導電粘着ゲル208を充填せずに、導電膜210の一部領域を穴部202aに挿通して体表面に直接接触させることで導電膜210と体表面とを電気的に接続するようにしても良い。この場合も、導電膜210と体表面とを電気的に接続させる接続部を、基材202の外周部に形成することができる。よって、導電膜210の帯電電荷を基材202外周部の接続部を介して体内に放電させることができる。
【0058】
上記構成の生体電極200を使用すると、外部の帯電体が電極部200Cに近接したときに、その帯電体と導電膜210との間に静電誘導を生じさせて導電膜210に電荷を帯電させることができる。そして、その帯電電荷を、導電膜210と体表面との接続部を介して被検者の体内に放電させることができる。
【0059】
したがって、本実施の形態によれば、電極部200Cに接続するケーブルのシールド有無にかかわらず、生体信号の静電誘導ノイズ抑制効果を、生体電極200単体で実現することができる。
【0060】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されるものではない。よって、上記実施の形態、特に生体電極の各部材の形状や材質、サイズなどは、種々変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0061】
100 電極カバー
100A、152A、200A 底面部
100B、152B、200B 上面部
102、160、202 基材
104、210 導電膜
106 発泡絶縁体
108、164、206、208 導電粘着ゲル
110 粘着部
150、200 生体電極
152 電極本体
152C、200C 電極部
154 ケーブル
154a カーボン糸
156 コネクタ
158 保護フィルム
162、204 電極素子
202a 穴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体信号内の静電誘導ノイズを抑制する静電誘導ノイズ抑制装置であって、
生体の体表面に装着される生体電極の電極部から絶縁されて配置され、前記電極部に近接する帯電体との静電誘導により電荷を帯電する帯電部と、
前記帯電部と前記体表面とを電気的に接続させる接続部を介して前記帯電部の帯電電荷を前記生体に放電させる放電部と、
を有する静電誘導ノイズ抑制装置。
【請求項2】
生体の体表面に装着される生体電極の電極部を被覆する被覆材と、
前記電極部から絶縁されて前記被覆材に設けられ、前記電極部に近接する帯電体との静電誘導により電荷を帯電する帯電部と、
前記帯電部と前記体表面とを電気的に接続させる接続部を介して前記帯電部の帯電電荷を前記生体に放電させる放電部と、
を有する生体電極用カバー。
【請求項3】
前記帯電部は、導電膜である、
請求項2に記載の生体電極用カバー。
【請求項4】
前記導電膜は、前記被覆材に導電インキ印刷を施すことにより形成される、
請求項3に記載の生体電極用カバー。
【請求項5】
前記放電部は、前記帯電部と前記体表面との双方に接触して前記接続部を形成する導電性ゲルである、
請求項2から4のいずれか1項に記載の生体電極用カバー。
【請求項6】
前記被覆材が前記電極部を被覆するときに前記帯電部と前記電極部との間に介在する絶縁体をさらに有する、
請求項2から5のいずれか1項に記載の生体電極用カバー。
【請求項7】
前記被覆材が前記電極部を被覆するときに前記絶縁体は前記放電部と前記電極部との間に介在する、
請求項6に記載の生体電極用カバー。
【請求項8】
前記被覆材を前記生体電極に付着させる粘着部をさらに有する、
請求項2から7のいずれか1項に記載の生体電極用カバー。
【請求項9】
生体の体表面に装着される生体電極であって、
中央部には、電極部が固定されており、外周部には、前記体表面に粘着可能な粘着面が形成されている、シート材と、
前記シート材において前記粘着面の反対面上に前記電極部から絶縁されて配置され、前記電極部に近接する帯電体との静電誘導により電荷を帯電する帯電部と、を有し、
前記シート材は、前記帯電部と前記体表面とを電気的に接続させる接続部を前記外周部に備えており、前記接続部を介して前記帯電部の帯電電荷を前記生体に放電させる、
生体電極。
【請求項10】
生体信号内の静電誘導ノイズを抑制する静電誘導ノイズ抑制方法であって、
生体の体表面に装着される生体電極の電極部に帯電体が近接するときに、前記電極部から絶縁されて配置された帯電部に電荷を帯電させるステップと、
前記帯電部と前記体表面とを電気的に接続させる接続部を介して前記帯電部の帯電電荷を前記生体に放電させるステップと、
を有する静電誘導ノイズ抑制方法。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2013−22150(P2013−22150A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158119(P2011−158119)
【出願日】平成23年7月19日(2011.7.19)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)