説明

静電集塵器

本発明は、第1電極(1)および第2電極(2)と、両電極(1、2)の間に電圧を加えるための電圧源(3)とを備え、かつ第1電極(1)がダスト捕捉装置として形成され、第2電極(2)が接地されている静電集塵器に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1電極および第2電極と、この第1電極と第2電極との間に電圧を加えるための電圧源とを備えた静電集塵器に関する。
【背景技術】
【0002】
このような静電集塵器は、米国特許公開公報2004/0163667号から公知である。この公知の集塵器は、床掃除機として形成され、格子状のマットを備え、両電極はこのマットの構成要素である。このマットは、例えばクリーニングクロスで被覆することができる。電圧源は、例えばハンドグリップ内に配置されている電池であって、この場合、出力電圧は高電圧に変換される。電極間の領域は荷電されており、この場合、吸収されるべきダストは、電極とは逆の極性を持つため引き寄せられる。そのほか、電圧源が電池の代わりに蓄電池を持つ場合に、集塵器のための充電ステーションが開示されている。そのほかこの公知の集塵器は、集塵器が動くと荷電を生じるよう、動き検出器を備え、動作停止後、自動的に除電することができる。
【0003】
この公知の集塵器は、両電極を格子状マット内に配置することから、電界で電束密度が最高となる箇所、誘電分極作用が最大となる箇所が、両電極間のスペースに限定されるという欠点がある。両電極がフラットに配置されているため、電極外部の粒子に対しては有効な力が生じない。まず電極間のスペースに到達した粒子が、その後十分に誘電分極化され、一方の電極に引き寄せられるようになる。
【0004】
このような電極構成と形状構造では、数ミリメートルまたは数センチメートル先のダスト粒子を、電気的な力によって引き寄せることができない。それどころか電極を織物で被覆すると、粒子が電極間で電界の力が最大の領域に到達する可能性が妨げられ、この公知機器の性能がさらに弱められることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許公開公報2004/0163667号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記の欠点を回避し、その場合、電極ジオメトリを非常に単純なものとしながらも、定められた通りに使用すれば、集塵器が良好な効率と使い勝手を持つようにすることである。そのほかこの集塵器は、単純かつ安価に製造できるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記の課題を、請求項1の特徴を持つ集塵器によって解決する。有利な発展形を従属請求項に記載した。
【0008】
上記の課題を解決するため1つの静電集塵器を意図し、この集塵器では、第1電極がダスト捕捉装置として形成され、第2電極は接地されているものとする。第2電極は、導電性の接地接点(例えば床掃除機の接地接点)を経由するか、あるいは使用者と導電性のハンドグリップ(例えばハンディダストクリーナのグリップ)とを経由して接地させることができる。この場合、本発明による集塵器は、その電極ジオメトリが単純なことから、全体として取り扱いが簡単で安価に製造できるという利点がある。対電極を接地させることによって、表面にあるダストとそのダストに向けられた電極間に最大電位差が得られる。したがってダストは、電束密度が最大である領域にあり、加えられる誘導分極と引力は最も強くなる。
【0009】
本発明による集塵器はこれにより、家事で日常的な諸表面からダストを乾式除去するのに特に適する。その効率は、ダストに向けられる電極の電界を最適化するのに適した電極材料と電極ジオメトリを選択することによって、向上させることができる。
【0010】
第2電極を、好ましくはハンドグリップとして形成する。ハンドグリップを電極と導電性結合して、使用者を経由して対電極を接地することにはさらに、使用条件にかかわらず使用者は地電位にあり、したがって周囲に接触しても静電放電を生じない(“電気的衝撃を生じない”)という利点がある。
【0011】
電圧源は、床掃除機という実施形態の場合、電極を保持するスペースに収納することができる。ハンディクリーナの場合は、ハンドグリップに配置できる。通常このハンドグリップは、電圧源を収容するに十分な大きさのスペースを囲むことになる。このような集塵器は取り扱いやすい。なぜならば、その重心が使用者の身体近辺にあり、例えば頭部が非常に重い床掃除機を使用するときのような、望ましくない梃子の作用が回避されるからである。また電圧源は、ハンドグリップに配置されることによって、外部からの影響に対して良好に保護される。このような集塵器は、信頼性と同時に耐久性も高い。
【0012】
電圧源は1つの出力電圧をもつ電池を含むが、この場合一般的には、再充電可能な蓄電池も電池と見なすことができる。前記出力電圧を高周波高電圧に変換するために分圧器およびブリッジ整流器を含むチャージ回路と備え、前記高周波高電圧は整流器によって静電高電圧に変換されてコンデンサに供給される。このコンデンサは、好ましくは小容量のものとし、特に好ましくは1nFとする。一般的にこのコンデンサは、容量が0.001〜100nF、好ましくは0.05〜10nFとすることができる。
【0013】
出力電圧は1〜10V、好ましくは1.5〜3V、静電高電圧は0.5〜10kVとすることができる。このような低い出力電圧は、実際にどこでも安価に入手できる市販の電池/蓄電池によって、容易に得ることができる。このことは、特に安価を旨とする家電分野では著しい利点となる。
【0014】
上記の静電高電圧は、段階的に、または無段階で調節することができる。吸収されるべきダストに電極がおよぼす吸引力は、電圧の高さに依存する。この場合電圧をどのくらい高くできるかは、空気の絶縁破壊強度のため限度がある。特に同一の集塵器を、さまざまに異なるダストの吸収に用いたい場合、または湿度の変化のような周囲条件が異なる場合にダストの吸収に用いたい場合、あるいはその両方の場合、高電圧を調節可能であることは利点であり、特に無段階で調節できれば有利である。
前述した構成による電圧源によって、この集塵器は、場所にかかわらず、自由にモバイル使用できる。
【0015】
この電圧源は荷電スイッチによってスイッチオンまたはスイッチオフできる。そのほかハンドグリップに、電極間の電圧を除電するための除電スイッチを設けることができる。取り扱いを簡単にするため、荷電スイッチと除電スイッチをまとめて、1つのコンビネーションスイッチにすることができる。
【0016】
電極は、一般に用いられる適切な材料、例えば金属またはポリマー材料から作ることができる。
ダストに向けられる第1電極は、少なくとも一部をダスタークロスでカバーされたものとすることができる。さらに好ましくは、第1電極がバッグ状のダスタークロスで包まれたものとする。この場合に利点となるのは、ダストの吸収が、電位差と、その結果としてのダストに対する電極の吸引力とによって、無接触で行えるだけではなく、ダスタークロスによるダストへの直接接触によっても行えることである。特に清掃されるべき表面に、ダストが固定されずに載っているだけでなく、固定付着している場合、この直接接触によって清掃能力が改善される。
【0017】
ダスタークロスは、少なくとも一部がマイクロファイバー製であるとき、特に良好な性能特性を示す。
【0018】
一般的に、吸収されるべきダストは、さまざまな方法で集塵器に吸収することができる。
電極を平滑で非伝導性の材料で被覆し、その結果として、ダストが静電荷によってこの材料に固定されるようにすることができる。ダストはこの場合、無接触で、清掃されるべき表面から、数センチメートル離れたこの機器によって引き寄せられる。この吸引は、静電誘導および/または誘導分極によって行われる。
本発明の関連で静電誘導とは、外部の電界による導体(例えば導電性ダスト粒子)中での電荷輸送をいう。
上記とは異なって、本発明の関連で誘導分極とは、外部の電界(ここでは電極)が作用することにより、非導電性材料(ここではダスト粒子)中で電荷移動を生じることをいう。これにより粒子中に一時的な双極子が生じ、電界内ではこの双極子に力が作用する。
【0019】
屋内ダストの大部分は導電性が悪い織物繊維からなっているので、ここでは主として誘導分極現象として取り扱わなければならない。この場合、静電誘導との境界は、湿度といった周囲条件の影響のために流動的である。
【0020】
しかし電極は、多かれ少なかれ構造化された非導電性の繊維、例えば不織布、織物、ニット、ファイバーで被覆されたものとすることができる。この場合、繊維はダストを、静電効果だけでなく、多孔質の表面構造によって機械的にも保持する。ダストはこの場合、清掃されるべき表面に繊維が直接接触することなく静電気の引力によって、あるいは、清掃されるべき表面に繊維が直接接触することによって、すなわち機械的な吸収として吸収される。静電効果はこの場合機械的効果によって補強されるが、このことは、特にすでに年月が経過して固定付着したダストの場合に利点となる。もう1つの実施形態では、電極を、平滑で非導電性のプラスチック材料、例えばプラスチックフィルムで被覆して、プラスチックフィルムにダスト粒子が析出されるものとすることができる。このようなフィルムによれば、その後のダスト除去は、単純な払い落としによって、または電極の除電後に単純にたたき落とすことによって、行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】集塵器の第1の実施形態の側面図である。
【図2】第1の実施形態の前面図である。
【図3】第1の実施形態のハンドグリップの内部を示す。
【図4】第2の実施形態である。図1〜3の第1の実施形態とは、コンビネーションスイッチを備える点で異なる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明による静電集塵器の2つの実施形態を、模式的な図1〜4によって、下記にさらに詳しく説明する。
【0023】
図1〜4は静電集塵器の2つの実施形態を示し、そのいずれもが、主としてハンドグリップ4と、そのハンドグリップ4に固定されているダスト捕捉装置とからなる。ダスト捕捉装置は第1電極1によって形成され、この電極は、ここに示す実施形態ではバッグ状のダスタークロス8に全体を包まれている。ダスタークロス8は、その全体または一部が、マイクロファイバーからできている。
【0024】
ハンドグリップ4は第2電極2によって形成され、この場合、ハンドグリップ4の内部に電圧源3が配置され、ハンドグリップ4に包まれて保護されている。電圧源3とは、本発明の場合、電池または再充電可能な蓄電池であって出力電圧を持つものと、出力電圧を高周波高電圧に変換するための分圧器およびブリッジ整流器とを含む回路とを含む。この場合、上記高周波高電圧は、整流器によって静電高電圧に変換されて、コンデンサに供給される。この実施形態で出力電圧は1.5V、静電高電圧は約5kVである。
【0025】
最適なダスト吸収を得ながら、使用者への不快な荷電を防止するために、ハンドグリップ4は電極2と導電性結合されている。ハンドグリップ4は接地されている。第2電極2は使用者によってアースに接続され、その結果、電位差が両電極1と2の間に生じ、ダストはこの静電集塵器によって第1電極1に引き寄せられる。
【0026】
ハンドグリップ4は、図1〜3においては、荷電スイッチ5と除電スイッチ6とを含み、そして図4においては、荷電スイッチ5と除電スイッチ6とをまとめたコンビネーションスイッチ7を含む。
【0027】
使用者がこの静電集塵器を操作するとき、電極1および2の間に静電電荷を生じるために、荷電スイッチ、またはコンビネーションスイッチ7(したがって荷電スイッチ5の機能を有する)を作動する。荷電スイッチ5またはコンビネーションスイッチ7が押されている間、電荷は維持される。
【0028】
清掃プロセスの後、ダストを載せた集塵器を、例えば何らかのクリーニングステーションに収納することができる。
【0029】
つづいて除電スイッチ6、またはコンビネーションスイッチ7(したがって除電スイッチ6)が作動される。スイッチを押す動作は、使用者が行うか、あるいは集塵器をクリーニングステーションに収納するとき自動的に行うことができる。これにより除電が行われ、ダストを第1電極1から問題なく払い落し、またはたたき落とすことができる。そうすると集塵器はふたたび動作準備状態となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1電極(1)および第2電極(2)と、前記第1電極(1)と前記第2電極(2)の間に電圧を加えるための電圧源(3)とを備える静電集塵器であって、
第1電極(1)がダスト捕捉装置として形成され、第2電極(2)が接地されていることを特徴とする静電集塵器。
【請求項2】
前記第2電極(2)がハンドグリップ(4)として形成されていることを特徴とする請求項1に記載の集塵器。
【請求項3】
前記電圧源(3)がハンドグリップ(4)中に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の集塵器。
【請求項4】
前記電圧源(3)が、1つの出力電圧を持つ電池と、前記出力電圧を高周波高電圧に変換するために分圧器およびブリッジ整流器を含むチャージ回路と備え、前記高周波高電圧は整流器によって静電高電圧に変換されてコンデンサに供給されることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の集塵器。
【請求項5】
前記コンデンサの容量が0.05〜10nFであることを特徴とする請求項4に記載の集塵器。
【請求項6】
前記容量が1nFであることを特徴とする請求項5に記載の集塵器。
【請求項7】
前記出力電圧が1.0V〜10V、前記静電高電圧が0.5〜10kVであることを特徴とする請求項4〜6のいずれか一項に記載の集塵器。
【請求項8】
前記出力電圧が1.5〜3Vであることを特徴とする請求項7に記載の集塵器。
【請求項9】
前記静電高電圧が段階的に、または無段階で調節可能であることを特徴とする請求項4から8のいずれか一項に記載の集塵器。
【請求項10】
前記電圧源(3)が荷電スイッチ(5)によってスイッチオン、またはスイッチオフ可能であることを特徴とする請求項1から9のいずれか一項に記載の集塵器。
【請求項11】
前記ハンドグリップ(4)が、第1電極(1)と第2電極(2)との間の電圧を除電するための除電スイッチ(6)を備えることを特徴とする請求項1から10のいずれか一項に記載の集塵器。
【請求項12】
前記荷電スイッチ(5)と除電スイッチ(6)とが統合されて1つのコンビネーションスイッチ(7)となっていることを特徴とする請求項10または11に記載の集塵器。
【請求項13】
前記第1電極(1)は少なくともその一部がダスタークロス(8)によってカバーされていることを特徴とする請求項1から12のいずれか一項に記載の集塵器。
【請求項14】
前記第1電極(1)がバッグ状のダスタークロス(8)によって包まれていることを特徴とする請求項1から13のいずれか一項に記載の集塵器。
【請求項15】
前記ダスタークロス(8)は少なくともその一部がマイクロファイバー製であることを特徴とする請求項13または14に記載の集塵器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2011−511685(P2011−511685A)
【公表日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−546219(P2010−546219)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際出願番号】PCT/EP2008/009569
【国際公開番号】WO2009/100744
【国際公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【出願人】(510057615)カール・フロイデンベルク・カー・ゲー (19)