説明

非コンジュゲートおよびコンジュゲート抗体、抗体の組合せおよび融合タンパク質を用いるB細胞悪性腫瘍および自己免疫疾患の免疫療法

【課題】哺乳類のB細胞関連疾患、T細胞関連疾患または自己免疫疾患を治療および診断するための方法を提供する。
【解決手段】非放射性標識抗体の前投与を行わず、薬学上許容されるビヒクルと少なくとも一種のコンジュゲート抗体もしくはそのフラグメント、またはコンジュゲート抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントとを含んでなる治療組成物であって、哺乳類に同時または逐次投与する。

【発明の詳細な説明】
【発明の分野】
【0001】
本発明は、B細胞関連悪性腫瘍、特に急速進行型非ホジキンリンパ腫を治療するための免疫療法的方法に関する。特に本発明は、哺乳類におけるB細胞関連疾患、T細胞関連疾患または自己免疫疾患を、非放射性標識抗体の前投与を行わずに、哺乳類に治療組成物を投与することにより治療および診断するための方法を対象とする。
【発明の背景】
【0002】
B細胞リンパ腫は、モノクローナル抗体(Mab)による治療の良好な標的となるとされている表面抗原を発現する。抗体は、単独で用いる場合でも、(裸の抗体)化学療法と併用する場合でも、毒素と、または放射免疫療法(RAIT)用の放射性核種と結合させることができる。放射性標識抗体は、線量分布を改善するために、非標識抗体の後(Kaminski, M. S. et al., J Clin. Oncol. 19: 3918-3928, 2001)またはともに(Press, O. W. et al, New Engl. J. Med. 329: 1219-24, 1993)投与される。ほとんどの研究者は、放射性標識マウス抗体を非標識抗体(マウスまたはキメラ)と併用する。その半減期がキメラ抗体よりも短いため、毒物学の観点から、マウス抗体を放射性標識する方が有利であると考えられている。半減期の長いMabは、血中および骨髄中の放射性免疫複合体の滞留時間が長くなり、従っておそらくより大きな毒性を誘導する。抗体はそれ自体で毒性を誘導することはほとんどないことから、マウスおよびキメラ非標識抗体は双方とも、主張されていることによると、身体の正常細胞および組織の抗原を飽和させることにより線量分布を改善するために用いられる(Kaminski, 米国特許第5,595,721号; Wiseman et al., Crit. Rev. Oncol. Hematol. 39: 181-194, 2001参照)。
【0003】
癌の標的放射線療法(放射免疫療法;RAIT)におけるモノクローナル抗体の使用は、非ホジキンリンパ腫(NHL)などの血液病で著しい臨床的効果をもたらしている。現在、循環放射性核種の全身毒性および放射線による腫瘍の増感を最小限にする努力において、新しい戦略が検討されている。前者はプレターゲッティングにより、また、後者は放射線増感薬との併用療法により行われている。Govindan, S. V et al., Current Trends, Pharmaceutical Science and Technology Today 3: 90-98, 2000参照。
【0004】
RAITの抗腫瘍活性は、主として、不均一線量付与による、連続し、かつ指数関数的に減衰する低線量比放射線を発する、抗体に結合させた放射性標識の結合型放射活性による。NHLに対するRAITの商業化に向け、4腫の放射性標識抗体製品が開発中である。これらには131I−トシツモマブ(ベキサール(商標))、90Y−イブリツモマブ・チウキセタン(ゼバリン(商標))、90Y−エプラツズマブ(hLL2)および131I−Lym−1が含まれる。これらの製品の詳細については、Goldenberg, D. M., Critical Reviews in Oncology/Hematology 39: 195-201,2001、およびGoldenberg, D. M., J. Nucl. Med. 43: 693-713, 2002参照。
【0005】
ベキサール(Corixa Corp., Seattle, WA)およびゼバリン(IDEC-Y2B8; IDEC Pharmaceuticals, San Diego, CA)は双方とも、正常および悪性Bリンパ球の表面で発現するCD20抗原に対するネズミモノクローナル抗体(Mab)である。ベキサールは非放射性ネズミ抗体が付加されたIgG2aネズミMabとして用いられ、一方、ゼバリンは標識されたネズミ抗体と、製品に付加された非放射性ヒト・マウスキメラリツキシマブ(リツキサン(商標),IDEC-Genentech)を含んでいる。両製品とも、腫瘍標的を向上させるために前療法として非放射性抗体の投与を設けるものであり、非標識ベキサール抗体450mgの1時間の点滴、およびゼバリンを伴うリツキシマブ450mgの4〜6時間の点滴を必要とする。両製品とも裸の抗体よりも高く、かつ、長い応答が示されているが、用量制限毒性、主として骨髄毒性も有する。ゼバリンは再発性低悪性度または悪性転換B細胞非ホジキンリンパ腫の処置に関して米国食品医薬品局(FDA)に認可されている。これらの放射性標識抗CD−20Mabには、良好な腫瘍局在を可能とするための非放射性抗体の投与が先行しなければならない。実際に、前投与が含まれる場合、111インジウム−ゼバリンの特異的局在数は、特定の腫瘍部位における腫瘍取り込みを78%から15%に低下させる(Wiseman et al.,同書)。
【0006】
エプラツズマブ(90Y−エプラツズマブ)は抗CD22抗原に対するヒト化IgG抗体である。抗原はまず、抗体結合時にインターナライズされる。裸の抗体は濾胞性ならびにびまん性大B細胞リンパ腫に効力を示すことが報告されている(Leonard,J. P. et al.)。エプラツズマブ(hLL2、抗CD22ヒト化モノクローナル抗体)は難治性/再発性びまん性大B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)に対して有効かつ耐容性に優れた療法である。Blood (Suppl) 96: 578a [abstr. 2482], 2000; Press, O. W. et al., Immunotherapy of Non-Hodgkin’s Lymphomas. Hematology (Am. Soc. Hematol. Educ. Program), p. 221-40, 2001。エプラツズマブはヒト抗ヒト抗体(HAHA)を生じさせないとされており、これにより反復投与に好適なものとなる。マウス親抗体mLL2は131Iで標識され、種々のサブタイプのB細胞リンパ腫で効力が示されている(Linden, O. et al. Clin. Cancer Res. 5: 3287s-3291s, 1999)。インターナリゼーション後、131I標識抗体は脱ハロゲン化され、細胞から放射性核種が放出される。イットリウムのような放射性金属はインターナリゼーションの際に細胞内に留まる(Sharkey, R. M., et al. Cancer Immunol. Immunother. 44: 179-88, 1997)。90Yの短い物理的半減期はエプラツズマブの長い半減期をある程度埋め合わせ、それらの組合せの合理性をもたらす。
【0007】
RAITは通常、1回の点滴として投与する。しかし、O’Donoghue, J. A., Dosimetric Principles of Targeted Radiotherapy, in Radioimmunotherapy of Cancer, A. R. Fritzberg (ed.), Marcel Dekker, Inc., p. 1-20, New York, Basel, 2000に概要が示されているように、線量分割は吸収量の不均一性の問題をよりよく扱えることから、線量分割アプローチは理論的利点がある。また、放射性標識抗体の多量単回投与を数回の少量投与に分割することにより治療効果が改善可能であることを支持する試験データもある(Schlom, J. et al. J. Natl. Cancer Inst. 82: 763-71, 1990)。マウス抗体を用い、二回ならびに多回点滴によるアプローチが臨床上探求されている(DeNardo, G. L., et al. Cancer Biother. Radiopharm. 13: 239-54, 1998 ; Vose, J. M., et al. J Clin. Oncol. 18: 1316-23, 2000)。
【0008】
CD22抗原の発現の腫瘍間変動が報告されている。5人の患者からの新鮮腫瘍サンプルでは、52〜89%のリンパ腫細胞が抗CD22MAb HD6の抗原を有することが判明している(Press, O. W. et al. Cancer Res. 49: 4906-12, 1989)。長距離β放射体を用いるRAITの、主張されている一つの利点は、それらが標的細胞の近傍の抗原陰性腫瘍細胞を死滅させることができることである。治療前に腫瘍細胞の抗原発現を評価することにより、抗CD22 90Y標識エプラツズマブを用いるRAITの状況下で、この主張の臨床的妥当性を検討することができよう。
【0009】
線量分割の理論的利点とそれを支持する公表試験データを確認するために研究を行った。この研究は放射性標識ヒト化抗体を用いて線量分割RAITの実現可能性を検討することを意図したものであった。線量測定のために、111Inで標識したヒト化CD22 Mabであるエプラツズマブを100mg前投与した後、90Y標識エプラツズマブを7.5mCi/mまでの線量で、1週間に1回、最長2〜3週間、分割投与したところ、耐容性に優れ、かつ、有効な放射免疫療法が得られた(Linden et al., Cancer Biother Radiopharm 2002; 17: 490 [abstract 47])。これらの臨床試験は、放射性免疫複合体の分割療法が実現可能であることを示唆するが、安全性と効力の点で単回高用量の放射性免疫複合体の投与との比較にはならなかった。111Inを伴う最初の「線量測定」用量は抗体100mgを含んでおり、連続注射の各々もまたこの裸の抗体の用量を含んでいたので、少なくとも300mgとなるエプラツズマブの用量が、CD20抗体に関する、挙げられている他の試験で示唆されたような前投与効果としても役立つかどうかも決定することができなかった。従って、これらの試験からは、このような放射免疫療法、特にCD22抗体を用いるものに前投与の必要があるかどうか説明することができなかった。
【0010】
本発明者らは今般、先行技術で実施されているように正常組織および脾臓の抗原部位を飽和させるために、他の公開研究およびKaminskiの米国特許第5,595,721号とは対照的に、本発明では前投与を用いないことを見出した。本明細書に開示される発明は、先行技術で実施されているような高用量抗体前投与の必要はないことを明らかに示す。
【発明の概要】
【0011】
よって、本発明の目的は、非放射性標識抗体、フラグメントまたは融合タンパク質の前投与を行わず、治療組成物を投与することにより哺乳類の疾病を治療するための方法を提供することである。
【0012】
また、本発明の目的は、投与が簡単かつ容易なだけでなく、それ自体、治療活性を保持し、かつ、高用量の裸の抗体が腫瘍に影響を及ぼすことなく同等の奏功率を有する上記方法を作出することである。
【0013】
本発明のさらなる目的は、緩徐進行型リンパ腫においてのみ効果が示されている先行技術が実証するものとは対照的に、急速進行型非ホジキンリンパ腫により有効な効果を示す方法を提供することである。
【0014】
これら、およびその他の目的は、本発明の一つの実施形態に従い、薬学上許容されるビヒクルと少なくとも一種のコンジュゲート抗体もしくはそのフラグメント、またはコンジュゲート抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントとを含んでなる治療組成物を哺乳類に同時または逐次投与することを含み、非放射性標識抗体、フラグメントまたは融合タンパク質の前投与が行われない、哺乳類の疾患を治療するための方法の提供によって達成される。腫瘍細胞が標的逸出しないようにするための維持療法としては、この非コンジュゲート抗体、フラグメントまたは融合タンパク質を、場合により、コンジュゲート抗体、フラグメントまたは融合タンパク質とともに加えてもよい。
【0015】
好ましい実施形態では、本発明は、B細胞関連悪性腫瘍などの疾病の処置法を対象とする。さらにまた、本発明は、自己免疫疾患ならびにT細胞関連悪性腫瘍の治療にも有用である。
【0016】
もう一つの好ましい実施形態では、本発明のコンジュゲートおよび非コンジュゲート抗体、フラグメント、および融合タンパク質は、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11c、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、D38、CD40、CD40L、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、Ia、HMI.24、HLA−DR、テネイシン、MUC1およびB細胞腫瘍関連抗原(血管内皮増殖因子(VEGF)および胎盤増殖因子(PlGF)などの血管内皮抗原を含む)からなる群から選択される抗原に向けることができる。これに関して、本発明のコンジュゲートおよび/または非コンジュゲート抗体、フラグメントまたは融合タンパク質は同じであっても異なっていてもよい。さらに、これらの抗体はヒト、ネズミ、キメラ、類人霊長類化またはヒト化抗体であってもよい。さらにまた、これらの抗体、フラグメントまたは融合タンパク質は完全IgG、F(ab’)、F(ab)、Fab’、Fab、scFvs、ダイアボディー(diabody)、トリアボディー(triabody)またはテトラボディー(tetrabody)からなる群から選択されてよく、少なくとも一腫の治療薬と結合させることができる。
【0017】
本発明のもう一つの態様によれば、上記のように、ヒトおよび家畜または伴侶動物などの哺乳類被験体が、薬物、毒素、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素化合物、光力学剤、および放射性核種からなる群から選択される一以上の治療薬と結合されている一以上の抗体で治療される方法が提供される。
【0018】
さらにもう一つの実施形態では、本発明の治療組成物は抗体または免疫調節剤を伴う抗体の前記組合せの融合タンパク質を含んでなる。これらの融合抗体は異なる抗原に対する抗体ならびに同じ抗原の異なるエピトープに対する抗体を含んでもよい。
【0019】
本発明は、コンジュゲートおよび非コンジュゲート抗体が1回当たり20〜600ミリグラムタンパク質、より好ましくは1回当たり20〜150ミリグラムタンパク質、最も好ましくは1回当たり20〜100ミリグラムタンパク質の好ましい用量で哺乳類に非経口投与される抗CD22モノクローナルである上記方法を意図する。さらに、哺乳類は抗CD22抗体を、好ましくは1回当たり20〜150ミリグラムタンパク質、より好ましくは1回当たり20〜100mgタンパク質の反復非経口投与として受容してよい。このような用量は、例えば、Juweid et al., Clin. Cancer Res. 5: 3292s-3303s, 1999がこれまでの実施しているように(111Inまたは他の診断用同位元素を結合させたCD22 Mab50mgの事前の投与が必要であった)、ターゲッティングの改善または線量測定のいずれかの目的で前投与する必要のない実際の治療用量として投与されることを認識することが重要である。これまでに事前投与なく、種々のタンパク質用量の抗体による治療用放射性免疫複合体の直接有効性を評価するような研究はなかった。
【0020】
もう一つの好ましい実施形態では、この哺乳類の疾病の治療方法は、薬学上許容されるビヒクルと、少なくとも一つの標的抗原および治療薬と結合する多重特異性多価抗体、フラグメントまたは融合タンパク質複合体を含んでなる治療組成物を哺乳類に投与することを含み、非放射性標識抗体の前投与を行わない。
【0021】
さらにもう一つの好ましい実施形態では、この哺乳類の疾病の治療方法は、
(a)少なくとも一つの標的抗原と結合する多重特異性多価抗体、フラグメントまたは融合タンパク質を含んでなる組成物を哺乳類に投与すること;
(b)場合により、その組成物に非局在抗体を循環から排除させるためのクリアリング剤;および
(c)該多重特異性多価抗体、フラグメントまたは融合タンパク質と結合する、薬学上有効な量の治療複合体を該哺乳類に投与すること
を含んでなり、非放射性標識抗体の前投与を行わない。
本発明の他の目的、特徴および利点は以下の詳細な説明および添付の特許請求の範囲から明らかになる。
【好ましい実施形態の詳細な説明】
【0022】
特に断りのない限り、単数としての用語への言及はその一以上を意味する。
【0023】
1.定義
以下の説明では多数の専門用語が使用されているが、以下、本発明の理解を容易にするために定義を示す。
【0024】
非ホジキンリンパ腫(NHL)とは、リンパ節、脾臓、他の臓器およびしばしば骨髄が関わるリンパ腫疾患の一群を意味する。少なくとも30の異なるNHLの種類が存在する。二つの一般型として濾胞性(低悪性度または緩徐進行型)と急速進行型びまん性大細胞(中悪性度または高悪性度)リンパ腫がある。
【0025】
本明細書において抗体とは、全長(すなわち、天然に存在するまたは通常の免疫グロブリン遺伝子フラグメント組換えプロセスにより形成される)免疫グロブリン分子(例えばIgG抗体)、または抗体フラグメントのような、免疫学的に有効な(すなわち、特異的に結合する)免疫グロブリン分子の部分を意味する。
【0026】
抗体フラグメントとは、F(ab')、F(ab)、Fab’、 Fab、Fv、scFvなどのような抗体の部分を意味する。構造に関係なく、抗体フラグメントは完全な抗体により認識される同じ抗原と結合する。例えば、抗CD22モノクローナル抗体フラグメントは、CD22のエピトープと結合する。「抗体フラグメント」とはまた、特定の抗原に結合して複合体を形成することにより抗体のようにふるまういずれの合成または遺伝子操作タンパク質も含む。例えば、抗体フラグメントとしては、重鎖および軽鎖の可変領域からなる「Fv」フラグメントのような可変領域からなる単離されたフラグメント、軽鎖および重鎖可変領域がペプチドリンカーにより接続されている組換え単鎖ポリペプチド分子(「scFvタンパク質」)、および超過変領域を模倣したアミノ酸残基からなる最小認識ユニットが挙げられる。
【0027】
裸のまたは非放射性抗体は一般に治療薬とコンジュゲートしていない(非コンジュゲート)完全な抗体である。これは抗体分子のFc部分が、細胞溶解を引き起こす作用をするようメカニズムを設定する補体結合およびADCC(抗体依存性細胞傷害)のようなエフェクター機能を提供するためである。しかし、治療機能のためにはこのFc部分は必要なく、アポトーシスなどの他のメカニズムによって役割を果たす可能性がある。裸の抗体として、また、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体の双方、ならびにヒト以外の霊長類化、キメラ、ヒト化またはヒト抗体のようなある種の組換え抗体を含む非放射性標識抗体である。
【0028】
キメラ抗体は、一つの種、好ましくは齧歯類の抗体由来の抗体の相補性決定領域(CDR)を含む可変ドメインを含み、この抗体分子の定常ドメインはヒト抗体の定常領域に由来する組換えタンパク質である。獣医学領域への適用のためには、このキメラ抗体の定常ドメインは、ネコまたはイヌのような他の種由来のものであってもよい。
【0029】
ヒト化抗体は、一つの種、例えば齧歯類抗体由来の抗体のCDRが齧歯類抗体の重鎖および軽鎖可変鎖からヒト重鎖および軽鎖可変ドメインに移された組換えタンパク質である。抗体分子の定常ドメインは、ヒト抗体の定常ドメインに由来する。
【0030】
ヒト抗体は、抗原刺激に応答して特定のヒト抗体を産生するために「操作された」トランスジェニックマウスから得られる抗体である。この技術では、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子座のエレメントが、内在性重鎖および軽鎖遺伝子座が標的破壊されている胚幹細胞株由来のマウス系統に導入される。このトランスジェニックマウスはヒト抗原に特異的なヒト抗体を合成することができ、このマウスをヒト抗体を分泌するハイブリドーマを作製するために使用することができる。トランスジェニックマウスからヒト抗体を得るための方法は、Green et al., Nature Genet. 7:13 (1994), Lonberg et al., Nature 368:856 (1994),およびTaylor et al., Int. Immun. 6:579(1994)に記載されている。完全ヒト抗体はまた、遺伝子または染色体トランスフェクション法ならびにファージディスプレイ技術により構築でき、これらは総て当技術分野で公知である。例えば、非免疫ドナー由来の免疫グロブリン可変ドメイン遺伝子レパートリーからのイン・ビトロにおけるヒト抗体およびそのフラグメントの産生に関しては、McCafferty et al., Nature 348:552-553(1990)を参照することができる。この技術では、抗体可変ドメイン遺伝子がフレーム内で糸状バクテリオファージの主要または微量コートタンパク質遺伝子へクローニングされ、機能的抗体フラグメントとしてファージ粒子表面上に提示される。この糸状粒子はファージゲノムの単鎖DNAコピーを含み、抗体の機能特性に基づいて選択すれば、それらの特性を示す抗体をコードする遺伝子が選択されることになる。このように、ファージはB細胞のいくつかの特性を模倣する。ファージディスプレイはさまざまな形式で行うことが可能であり、総説としては例えば、Johnson and Chiswell, Current Opinion in Structural Biology 3:5564-571 (1993)を参照することができる。
【0031】
ヒト抗体はまた、イン・ビトロで活性化されたB細胞により産生させることができる。引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする、米国特許第5,567,610号および同第5,229,275号を参照することができる。
【0032】
治療薬は、個別に、同時にまたは逐次に、抗体部分とともにまたは抗体部分(すなわち抗体、または抗体フラグメント、またはサブフラグメント)と結合させて投与される分子または原子であり、疾病の治療に有用である。治療薬の例としては、抗体、抗体フラグメント、薬物、毒素、ヌクレアーゼ、ホルモン、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素化合物、光力学剤または色素および放射性同位元素が挙げられる。
【0033】
免疫調節剤は、存在すれば、身体の免疫系を変更、抑制または刺激する、本発明で定義されたような治療薬である。通常、本発明で有用な免疫調節剤は免疫細胞の増殖を刺激するか、またはマクロファージ、B細胞、および/またはT細胞など、免疫応答カスケードにおいて活性化される。
【0034】
免疫複合体は抗体成分と治療薬または診断薬との複合体である。この診断薬は放射性または非放射性標識、造影剤(例えば、磁気共鳴イメージング、コンピューター断層撮影法または超音波診断法などに用いられる)を含んでもよく、この放射性核種はγ、β、α、オージェ電子、または陽電子放射性同位元素であり得る。
【0035】
発現ベクターは、宿主細胞中で発現される遺伝子を含んでなるDNA分子である。通常、遺伝子発現は構成または誘導プロモーター、組織特異的調節エレメントおよびエンハンサーをはじめとする、特定の調節エレメントの制御下に置かれる。このような遺伝子は調節エレメントに「作動可能なように連結されている」といわれる。
【0036】
組換え宿主は、クローニングベクターまたは発現ベクターのどちらかを含む任意の原核または真核細胞であってもよい。この語はまた、それらの原核または真核細胞、ならびに宿主細胞の染色体もしくはゲノム、または宿主細胞の細胞中にクローニングされた遺伝子を含むように遺伝子操作されたトランスジェニック動物も含む。好適な哺乳類宿主細胞としては、SP2/0細胞およびNS0細胞のような骨髄腫細胞、ならびにチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ハイブリドーマ細胞株および抗体発現に有用な他の哺乳類宿主細胞が挙げられる。また、mAbおよび他の融合タンパク質の発現に特に有用なものはWO 0063403 A2に開示されているヒト細胞株PER.C6であり、CHO、COS、 Vero、 HeLa、 BHKおよびSP2などの従来の哺乳類細胞株に比べて2〜200倍の組換えタンパク質を産生する。免疫系が改変された特別なトランスジェニック動物は完全なヒト抗体を作製するために特に有用である。
【0037】
本明細書において、抗体融合タンパク質とは、特異性が同じまたは異なる二以上の同じまたは異なる単鎖抗体または抗体フラグメントのセグメントが連結されている、組換えにより生産された抗原結合分子である。融合タンパク質の原子価は、この融合タンパク質が単一の抗原またはエピトープに対して結合アームまたは結合部位をいくつ有しているかを示し、すなわち、一価、二価、三価または多価などである。抗体融合タンパク質が多価であるということは、抗原に対する結合において複数の相互作用を利用でき、従って、その抗原に結合する結合力が高まることを意味する。特異性は、抗体融合タンパク質がいくつの抗原またはエピトープと結合できるかを示し、すなわち、一重特異性、二重特異性、三重特異性、多重特異性などである。これらの定義により、例えばIgGのような天然の抗体は、結合アームを二本持つために二価であるといえるが、この抗体は一つのエピトープにしか結合しないので一重特異性である。一重特異性、多価融合タンパク質の一つのエピトープに対して一を超える結合部位を有するが、一つのエピトープとしか結合せず、例えば、同じ抗原と反応性のある二つの結合部位を有するダイアボディーがある。この融合タンパク質は、単一の抗体成分、異なる抗体成分の多価もしくは多重特異性の組合せ、または同じ抗体成分の複数のコピーを含んでもよい。この融合タンパク質はさらに抗体または抗体フラグメントおよび治療薬を含んでもよい。このような融合タンパク質に好適な治療薬の例としては、免疫調節剤(「抗体-免疫調節剤融合タンパク質」)および毒素(「抗体-毒素融合タンパク質」)が挙げられる。好ましい一つの毒素としては、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)であり、好ましくは組換えRNアーゼである。
【0038】
多重特異性抗体は、同時に少なくとも二つの異なる構造の標的、例えば二つの異なる抗原、同じ抗原上の二つの異なるエピトープ、またはハプテンおよび/または抗原、もしくはエピトープ、に結合できる抗体である。一つの特異性は、B細胞、T細胞、骨髄性細胞、形質細胞または肥満細胞抗原もしくはエピトープに対するものであろう。もう一つの特異性は、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11c、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、D38、CD40、CD40L、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、Ia、HMI.24、HLA−DR、テネイシン、MUC1およびB細胞腫瘍関連抗原(VEGFおよびPlGFなどの血管内皮抗原を含む)など、同じ細胞種上の異なる抗原に対するものであり得る。多重特異性、多価抗体は一を超える結合部位を有する構築体であり、その結合部位は異なる特異性を有する。例えばダイアボディーでは、一つの結合部位は一つの抗原と反応し、もう一方は他の抗原と反応する。
【0039】
二重特異性抗体は、同時に二つの異なる構造の標的に結合できる抗体である。二重特異性抗体(bsAb)および二重特異性抗体フラグメント(bsFab)は、例えば、B細胞、T細胞、骨髄性細胞、形質細胞および肥満細胞抗原またはエピトープに特異的に結合する少なくとも一つのアーム、および治療薬または診断薬を担持するターゲッティング可能な複合体に特異的に結合する少なくとも一つの他のアームを有する。分子工学技術を用いて種々の二重特異性融合タンパク質を作製できる。一つの形態においては、二重特異性融合タンパク質は一価であり、例えば一つの抗原に対する一つの結合部位を有するscFvと第二の抗原に対する単一結合部位を有するFabフラグメントからなる。もう一つの形態においては、この二重特異性融合タンパク質は二価であり、例えば一つの抗原に対して一つの結合部位を有するIgGと第二の抗原に対して二つの結合部位を有する二つのscFvからなる。
【0040】
イヌ化またはネコ化抗体は、齧歯類(または他の種)のモノクローナル抗体の相補性決定領域が、齧歯類(または他の種)免疫グロブリンの重鎖および軽鎖可変領域から、それぞれイヌまたはネコの免疫グロブリン可変ドメイン中に移されている組換えタンパク質である。
【0041】
類人霊長類化抗体は、類人霊長類(例えばサル)のモノクローナル抗体の相補性決定領域が齧歯類(または他の種)免疫グロブリンの重鎖および軽鎖可変領域から、類人霊長類の免疫グロブリン可変ドメイン中に移されている組換えタンパク質である。
【0042】
家畜は、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ラマ、アルパカおよびブタのような大型動物、ならびに伴侶動物を含む。好ましい実施形態においては、家畜はウマである。
【0043】
伴侶動物は、ペットとして飼われる動物を含む。これらは主としてイヌおよびネコであるが、モルモット、ハムスター、ラットおよびフェレットのような小型齧歯類、またサルのような類人霊長類も含まれる。好ましい実施形態において、伴侶動物とはイヌまたはネコである。
【0044】
「クリアリング剤」とは、ターゲッティング部分の結合部位と結合する抗体を意味し、ここで、ターゲッティング部分は抗体、抗原結合抗体フラグメントまたは非抗体ターゲティング部分であり得る。より好ましい方法では、クリアリング剤は、米国出願出願番号08/486,166に記載のように、第一の工程で用いる複合体のモノクローナル抗体に対する抗イディオタイプのモノクローナル抗体である。もう一つの好ましい実施形態では、クリアリング剤は、クリアリング剤を肝臓中のアシアロ糖タンパク質受容体によって循環から急速に排除させるガラクトースなどの炭水化物の複数の残基で置き換えられる。
【0045】
2.キメラ、ヒト化およびヒト抗体をはじめとするモノクローナル抗体の作製
モノクローナル抗体(MAb)は特定の抗原に対する抗体の均質な集団であり、その抗体はただ一種の抗原結合部位を含んでなり、抗原決定基上のただ一つのエピトープに結合する。特定の抗原に対する齧歯類モノクローナル抗体は、当業者に公知の方法により得ることができる。例えば、Kohler and Milstein, Nature 256:495(1975)、およびColigan et al.(eds.), CURRENT PROTOCOLS IN IMMUNOLOGY, VOL. 1, pages 2.5.1-2.6.7(John Wiley & Sons 1991)[以下「Coligan」]を参照することができる。要するに、マウスに抗原を含む組成物を注射し、血清サンプルを採取して抗体産生を確認し、脾臓を摘出してBリンパ球を採取し、そのBリンパ球と骨髄腫細胞を融合させてハイブリドーマを作製し、そのハイブリドーマをクローニングし、抗原に対する抗体を産生する陽性クローンを選択し、抗原に対する抗体を産生するクローンを培養して、その抗体をハイブリドーマ培養物から単離することによりモノクローナル抗体を得ることができる。
【0046】
MAbは、ハイブリドーマ培養液から種々の十分確立された技術により単離、精製できる。このような単離技術としては、プロテインAセファロースを用いるアフィニティークロマトグラフィー、サイズ排除クロマトグラフィーおよびイオン交換クロマトグラフィーが挙げられる。例えば、Coligan at pages 2.7.1-2.7.12およびpages 2.9.1-2.9.3.を参照することができる。また、Baines et al.,"Purification of Immunogloburin G (IgG),"in METHODS IN MOLECULAR BIOLOGY, VOL. 10, pages 79-104(The Humana Press, Inc. 1992)も参照することができる。
【0047】
免疫原に対してまず抗体を惹起させた後、それらの抗体の配列を決定し、次いで組換え技術により作製することができる。マウス抗体および抗体フラグメントのヒト化およびキメラ化は当業者に周知である。例えば、ヒト化モノクローナル抗体は、マウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖可変鎖由来のマウス相補性決定領域をヒト可変ドメインに移し、次いでフレームワーク領域中のヒト残基をマウスの対応物で置換することにより作製する。ヒト化モノクローナル抗体由来の抗体成分を使用することによってマウス定常領域の免疫原性に伴う潜在的な問題が防げる。
【0048】
マウス免疫グロブリン可変ドメインのクローニングのための一般的な技術は、例えば、引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされる、Orlandi et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 86:3833 (1989)に記載されている。キメラ抗体構築のための技術は当業者に周知である。例えば、Leung et al., Hybridoma 13:469 (1994)は、LL2モノクローナル抗体、抗CD22抗体のVκおよびVドメインをコードするDNA配列をそれぞれのヒトκおよびIgG定常領域ドメインと組み合わせることでLL2キメラをいかに作製したかが記載されている。この公報はまた、LL2の軽鎖および重鎖可変領域のヌクレオチド配列、VおよびVをそれぞれ提供する。ヒト化MAbを産生する技術は、例えばJones et al., Nature 321:522 (1986), Riechmann et al., Nature 332:323 (1988), Verhoeyen et al., Science 239:1534 (1988), Carter et al., Proc. Natl Acad. Sci. USA 89:4285 (1992), Sandhu, Crit. Rev. Biotech. 12:437 (1992),およびSinger et al., J Immun. 150:2844 (1993)に記載されており、これらはそれぞれ引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。
【0049】
キメラ抗体は、齧歯類抗体のような一種の動物由来のCDRを含む可変ドメインを含む組換えタンパク質であり、抗体分子の残りの部分、すなわち定常ドメインはヒト抗体に由来する。従って、キメラモノクローナル抗体はまた、キメラmAbの可変ドメイン中のマウスFR配列を、一以上の異なるヒトFRと置換することによりヒト化することができる。具体的には、マウスCDRをマウス免疫グロブリンの重鎖および軽鎖可変鎖からヒト抗体の相当する可変ドメインに転移させる。マウスCDRをヒトFRに単に転移させるだけでは、しばしば抗体親和性の低下または損失さえ起こるために、マウス抗体の元の親和性を回復させるためにはさらなる修飾が必要となる。これは、そのエピトープに対して良好な結合親和性を有する抗体を得るために、FR領域の一以上のいくつかのヒト残基をマウスの相当部分と置換することにより行うことができる。例えば、Tempest et al., Biotechnology 9:266(1991)およびVerhoeyen et al., Science 239:1534 (1988)を参照することができる。さらに、ヒト化、キメラおよびヒトMAbの特定のエピトープに対する親和性は、CDRの突然変異誘発により高めることができ、その結果、より低用量の抗体が突然変異前の高用量の低親和性MAbと同等の有効性を示し得る。例えば、WO0029584A1を参照することができる。
【0050】
本発明の抗体を作製するもう一つの方法は、トランスジェニック家畜の乳汁中での産生によるものがある。例えば、Colman, A., Biochem. Soc. Symp., 63:141-147,1998; 米国特許第5,827,690号を参照することができる。なお、双方とも引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする。対をなす免疫グロブリン重鎖および軽鎖をコードするDNAセグメントをそれぞれ含む二つのDNA構築物体を作製する。このDNAセグメントを、哺乳類上皮細胞中で選択的に発現されるプロモーター配列を含む発現ベクターへクローニングする。例としては、限定されるものではないが、ウサギ、ウシおよびヒツジのカゼイン遺伝子、ウシα−ラクトグロブリン遺伝子、ヒツジβ−ラクトグロブリン遺伝子、およびマウスホエー酸タンパク質遺伝子由来のプロモーターが挙げられる。好ましくは、挿入されたフラグメントの3’側に哺乳類特異的遺伝子由来の同族ゲノム配列が隣接する。これによりポリアデニル化部位および転写安定化配列が提供される。この発現カセットを受精した哺乳類の卵子の前核に同時注入し、次いでレシピエント雌の子宮に着床させて妊娠させる。出産後、サザン分析により導入遺伝子の存在に関してその後代をスクリーニングする。抗体が存在するためには、重鎖および軽鎖双方の遺伝子が同時に同じ細胞で発現されなければならない。トランスジェニック雌動物から得た乳汁を当技術分野で公知の標準的な免疫学的方法により、該抗体または抗体フラグメントの存在と機能に関して分析する。この抗体は当技術分野で公知の標準的方法により、乳汁から精製することができる。
【0051】
ヒト化、キメラまたはヒト抗CD20抗体との併用療法のための、本発明の完全なヒト抗体、すなわちヒト抗CD20 MAb、または他のヒト抗体、例えば抗CD19、抗CD22、抗CD21もしくは抗CD23 MAbは、トランスジェニック非ヒト動物から得ることができる。例えば、双方とも引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされるMendez et al., Nature Genetics, 15: 146-156 (1997); 米国特許第5,633,425号を参照することができる。例えば、ヒト抗体はヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するトランスジェニックマウスから回収することができる。このマウス体液性免疫系は、内在する免疫グロブリン遺伝子を不活化し、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を導入することによりヒト化する。ヒト免疫グロブリン遺伝子座は極めて複雑で、多数の離散セグメントを含み、これらはヒトゲノムのほぼ0.2%を占める。トランスジェニックマウスが十分な抗体レパートリーを産生できることを保証するには、ヒト重鎖および軽鎖遺伝子座の大きな部分をマウスゲノムに導入しなければならない。これは、生殖系構造においてヒト重鎖または軽鎖免疫グロブリン遺伝子座のいずれかを含む酵母人工染色体(YAC)の形成に始まる段階的なプロセスで達成される。それぞれの挿入配列はほぼ1Mbのサイズなので、YAC構築体は免疫グロブリン遺伝子座の重複フラグメントの相同的組換えを必要とする。一つは重鎖遺伝子座、もう一つは軽鎖遺伝子座を含む二つのYACを、YAC含有酵母スフェロプラストとマウス胚幹細胞の融合を通じてマウスに個々に導入する。次いで、胚幹細胞クローンをマウス胚盤胞にマイクロインジェクションする。得られたキメラ雄動物を、生殖細胞系を通じてYACを伝達する能力に関してスクリーニングし、マウス抗体産生を欠損しているマウスと交配させる。一種はヒト重鎖遺伝子座を含み、もう一種はヒト軽鎖遺伝子座を含む二種のトランスジェニック系統を繁殖させ、免疫感作に応答してヒト抗体を産生する子孫を作出する。
【0052】
二重特異性mAbを産生するさらなる最新の方法は、付加的なシステイン残基を有し、よって一般的な免疫グロブリンアイソタイプよりも強く架橋結合している人工的組換えmAbを含む。例えば、FitzGerald et al., Protein Eng. 10(10):1221-1225, 1997を参照することができる。もう一つのアプローチは、二以上の異なる単鎖抗体または必要とされる二重特異性を有する抗体フラグメントセグメントを連結する組換え融合タンパク質を設計することである。例えば、Coloma et al., Nature Biotech. 15:159-163, 1997を参照することができる。分子工学技術を用いて様々な二重特異性融合タンパク質を作製できる。一つの形態においては、二重特異性融合タンパク質は一価であり、例えば一つの抗原に対する単一結合部位を有するscFvと、第二の抗原に対する単一結合部位を有するFabフラグメントからなる。もう一つの形態においては、二重特異性融合タンパク質は二価であり、例えば、一つの抗原に対する二つの結合部位を有するIgGと、第二の抗原に対する二つの結合部位を有する二つのscFvからなる。
【0053】
二以上の異なる単鎖抗体または抗体フラグメントを連結している二重特異性融合タンパク質も、同様の方法で作製する。種々の融合タンパク質を作製するためには組換え法を用いることができる。例えば、ヒト化モノクローナル抗CD20抗体由来のFabフラグメントおよびマウス抗diDTPA由来のscFvを含んでなる融合タンパク質を作製することができる。GGGSのような柔軟なリンカーは、scFvを抗CD20抗体の重鎖の定常領域に結合させる。あるいは、scFvを別のヒト化抗体の軽鎖の定常領域に結合させることができる。重鎖FdのscFvとのフレーム内結合のために必要な適当なリンカー配列は、PCR反応を介してVLおよびVKドメインに導入される。次に、scFvをコードするDNAフラグメントをCH1ドメインをコードするDNA配列を含む足場ベクターに連結する。これにより得られたscFv−CH1構築物を切り出して、抗CD20抗体のVH領域をコードするDNA配列を含むベクターに連結する。得られたベクターは、二重特異性融合タンパク質の発現のための哺乳類細胞のような適当な宿主細胞をトランスフェクトするために使用することができる。
【0054】
このような二価、二重特異性抗体の例は、米国特許出願2002年8月1日出願の60/399,707;2002年3月1日出願の60/360,229;2002年6月14日出願の60/388,314;および2002年4月5日出願の10/116に見出せる。なお、これらは総て、引用することにより本明細書の一部とされる。
【0055】
3.抗体フラグメントの製造
特定のエピトープを認識する抗体フラグメントは、公知の技術により作製し得る。抗体フラグメントは、F(ab')、Fab'、Fab、Fv、sFvなどの抗体の抗原結合部分である。他の抗体フラグメントとしては、限定されるものではないが、抗体分子のペプシン消化により作製できるF(ab)'フラグメント、およびF(ab)'フラグメントのジスルフィド結合を還元することにより作製できるFab'フラグメントが挙げられる。あるいは、所望の特異性を有するモノクローナルFab’フラグメントの迅速で容易な同定を可能にするには、Fab’発現ライブラリーを構築することができる(Huse et al., 1989, Science, 246:1274-1281)。本発明は抗体および抗体フラグメントを包含する。
【0056】
単鎖Fv分子(scFv)は、VLドメインおよびVHドメインを含んでなる。このVLおよびVHドメインは組み合わさって標的結合部位を形成している。これらの二つのドメインはペプチドリンカー(L)によりさらに共有結合されている。scFv分子は、VLドメインがscFv分子のN末端部である場合、VL−L−VH、またはVHドメインがscFv分子のN末端部である場合、VH−L−VLと表される。scFv分子の作製方法、および好適なペプチドリンカーの設計方法は、米国特許第4,704,692号、同第4,946,778号、R. Raag and M. Whitlow,"Single Chain Fvs."FASEB 9:73-80(1995)およびR. E. Bird and B. W. Walker,"Single Chain Antibody Variable Regions,"TIBTECH, 9:132-137(1991)に記載されている。これらの参照文献は引用することにより本明細書の一部とされる。
【0057】
抗体フラグメントは、全長抗体のタンパク質加水分解、またはフラグメントをコードするDNAの、大腸菌もしくは他の宿主中での発現により調製することができる。抗体フラグメントは、常法により全長抗体のペプシンまたはパパイン消化により得られる。例えば、抗体フラグメントは抗体をペプシンで酵素的に切断して、F(ab’)で示される5Sのフラグメントを得ることにより作製することができる。このフラグメントはチオール還元剤、および所望によりジスルフィド結合の切断により生じるスルフヒドリル基の遮断基を用いてさらに切断することができ、3.5S Fab’一価フラグメントが得られる。あるいは、パパインを用いる酵素的切断により二つの一価Fabフラグメントと一つのFcフラグメントが直接的に生じる。これらの方法は、例えば、Goldenbergの米国特許第4,036,945号および同第4,331,647号、ならびにそこに含まれる参照文献に記載されており、これらの特許は引用することによりその全開示内が本明細書の一部とされる。また、Nisonoff et al., Arch Biochem. Biophys. 89:230(1960); Porter, Biochem. J 73:119(1959)、Edelman et al., in METHODS IN ENZYMOLOGY volume 1, page 422(Academic Press 1967)、および Coligan at pages 2.8.1-2.8.10および2.10.-2.10.4.も参照することができる。
【0058】
抗体フラグメントのもう一つの形態は、単一の相補性決定領域(CDR)をコードするペプチドである。CDRは抗体の可変領域のセグメントであり、抗体が結合するエピトープに対し相補的な構造であり、残りの可変領域よりもさらに変化に富んでいる。従って、CDRはしばしば超過変領域と呼ばれる。可変領域は三つのCDRを含んでなる。CDRペプチドは、対象となる抗体のCDRをコードする遺伝子を構築することにより得られる。このような遺伝子は、例えば抗体産生細胞のRNAから可変領域を合成するためのポリメラーゼ連鎖反応を用いて調製される。例えば、Larrick et al., Methods:A Companion to Methods in Enzymology 2:106(1991); Courtenay-Luck,"Genetic Manipulation of Monoclonal Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION, Ritter et al.(eds.), pages 166-179 (Cambridge University Press 1995);およびWard et al.,"Genetic Manipulation and Expression of Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES:PRINCIPLES AND APPLICATIONS, Birch et al., (eds.), pages 137-185(Wiley-Liss, Inc. 1995)を参照することができる。
【0059】
重鎖を分離して一価の軽鎖−重鎖フラグメントを形成し、さらにフラグメントを切断するような抗体を切断する他の方法、または他の酵素学的、化学的または遺伝学的技術も、それらのフラグメントが無傷の抗体により認識される抗原に結合する限り用いてよい。
【0060】
4.多重特異性および多価抗体
本明細書に記載の併用療法に用いられる、同じ特異性を有する抗体も異なる特異性を有する抗体も多重特異性抗体(CD20エピトープまたは抗原に対する少なくとも一つの結合部位とCD20または他の抗原上の別のエピトープに対する少なくとも一つの結合部位を含む)および多価抗体(同じエピトープまたは抗原に対して複数の結合部位を含む)
として作製することができる。
【0061】
本発明は、標的細胞マーカーと特異的に結合する少なくとも一つの結合領域と、ターゲッティング可能な複合体と特異的に結合する少なくとも一つの他の結合領域を有する二重特異性抗体または抗体フラグメントを提供する。このターゲッティング可能な複合体は、この二重特異性抗体または抗体フラグメントの少なくとも一つの結合領域によって認識される少なくとも一つのエピトープを含んでなる、または担持する担体部分を含んでなる。
【0062】
上記のような二重特異性抗体および抗体フラグメントを生産するには、様々な組換え法を使用できる。
本発明では多価抗体も意図される。この多価標的結合タンパク質は、第一および第二のポリペプチドの結合により構築される。第一のポリペプチドは、好ましくは免疫グロブリン軽鎖可変領域ドメインである第一の免疫グロブリン様ドメインに共有結合された第一の単鎖Fv分子を含んでなる。第二のポリペプチドは、好ましくは免疫グロブリン重鎖可変領域ドメインである第二の免疫グロブリン様ドメインに共有結合された第二の単鎖Fv分子を含んでなる。第一および第二の単鎖Fv分子は各々、標的結合部位を形成し、第一および第二の免疫グロブリン様ドメインは結合して第三の標的結合部位を形成する。
【0063】
VL−L−VH立体配置を有する単鎖Fv分子(ただしLはリンカー)は、VH−L−VL立体配置を有する別の単鎖Fv分子と結合し、二価の二量体を形成し得る。この場合、第一のscFvのVLドメインおよび第二のscFv分子のVHドメインは結合して一つの標的結合部位を形成し、一方、第一のscFvのVHドメインおよび第二のscFvのVLドメインは結合して他の標的結合部位を形成する。
【0064】
本発明のもう一つの実施形態は、非共有結合して三つの結合部位を形成し、そのうちの二つが一つの標的に対して親和性を有し、第三の結合部位は作製可能で診断薬および/または治療薬のための担体に結合しているハプテンに親和性を有する、二つの異種ポリペプチド鎖を含んでなる二重特異性、三価ターゲッティングタンパク質である。好ましくは、この結合タンパク質は二つの同じ抗原結合部位と一つの異なる抗原結合部位を有する。この二重特異性、三価ターゲッティング剤は二つの異なるscFvを有し、第一のscFvは短いリンカーにより別の抗体のVドメインに連結された一つの抗体由来の二つのVドメインを含み、第二のscFvは短いリンカーにより他の抗体のVドメインに連結された第一の抗体由来の二つのVドメインを含む。VおよびVドメインから多価、多重特異的薬剤を生成するこれらの方法によれば、一つのV鎖と一つのV鎖の非共有結合により多価および多重特異的ないずれの薬物でも生成できるという方法で、宿主生物中でDNAプラスミドから合成された個々の鎖が完全なVドメイン(V鎖)または完全なVドメイン(V鎖)から構成されることになる。例えば、三価の三重特異性薬剤の形成では、V鎖は三つのVドメインのアミノ酸配列からなり、それぞれのドメインは特異性の異なる抗体に由来し、種々の長さのペプチドリンカーにより連結され、またV鎖は相補的Vドメインからなり、VH鎖に使用されたものと同様のペプチドリンカーにより連結されている。抗体のVHおよびVドメインは逆平行に結合しているため、本発明の好ましい方法では、V鎖のVドメインはV鎖のVドメインとは逆の順序で配置されている。
【0065】
5.ダイアボディー、トリアボディーおよびテトラボディー
本発明の抗体はまた、ダイアボディーとも呼ばれる、機能的二重特異性単鎖抗体(bscAb)の調製に使用でき、組換え法により哺乳類細胞において生産させることができる。例えば、引用することにより本明細書の一部とされる、Mack et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 92:7021-7025,1995を参照することができる。例えば、bscAbは組換え法によりグリシン−セリンリンカーを介して二つの単鎖Fvフラグメントを結合することで作製する。問題の二つの抗体のV軽鎖(V)およびV重鎖(V)ドメインは、標準的PCR法により単離される。次に、それぞれのハイブリドーマから得られたVおよびVのcDNAは二段階の融合PCRにおいて結合されて単鎖フラグメントを形成する。第一のPCR工程では(Gly−Serリンカーを導入し、第二の工程ではVおよびVアンプリコンを結合させる。次いでそれぞれの単鎖分子を細菌発現ベクターへクローニングする。増幅後に単鎖分子の一つを切り出して問題の第二の単鎖分子を含む他のベクターへサブクローニングする。得られたbscAbフラグメントを真核細胞発現ベクターへサブクローニングする。機能性タンパク質の発現は、そのベクターをチャイニーズハムスター卵巣細胞へトランスフェクトすることにより得られる。二重特異性融合タンパク質も同様の方法で調製される。二重特異性単鎖抗体および二重特異性融合タンパク質は本発明の範囲内に含まれる。
【0066】
例えば、ヒト化、キメラ、またはヒト抗CD22モノクローナル抗体を、抗原特異的ダイアボディー、トリアボディー、およびテトラボディーを作製するために使用することができる。この単一特異性ダイアボディー、トリアボディー、およびテトラボディーは選択的に標的抗原に結合し、分子上の結合部位数が増加すると標的細胞に対する親和性が高まり、所望の位置における滞留時間が長くなるのが観察される。ダイアボディーに関しては、5つのアミノ酸残基のリンカーによりヒト化CD22 MAbのVKポリペプチドに連結されたヒト化CD22 MAbのVポリペプチドを含んでなる二つの鎖が利用される。各々の鎖はヒト化CD22ダイアボディーの1/2を形成する。トリアボディーの場合、ヒト化CD22 MAbのVポリペプチドにリンカーは介さずに連結されたヒト化CD22 MAbのVポリペプチドを含んでなる三つの鎖が利用される。各々の鎖はhCD22トリアボディーの1/3を形成する。
【0067】
本明細書に記載の二重特異性ダイアボディーの好ましい使用は、その後の診断薬または治療薬の特異的送達のためにCD22陽性腫瘍をプレターゲッティングすることを目的とする。これらのダイアボディーは標的抗原に選択的に結合し、親和性を高め、所望の場所における滞留時間を延長する。さらに、抗原と結合していないダイアボディーは体内から迅速に排泄され、正常組織の曝露は最小限に抑えられる。診断薬および治療薬としては、同位元素、薬物、毒素、サイトカイン、ホルモン、増殖因子、複合体、放射性核種および金属が挙げられる。例えば、磁気共鳴イメージング(MRI)にはガドリニウム金属が用いられる。放射性核種の例としては、225Ac、18F、68Ga、67Ga、90Y、86Y、111In、131I、125I、123I、99mTc、94mTc、186Re、188Re、177Lu、62Cu、64Cu、67Cu、212Bi、213Bi、32P、11C、13N、15O、76Br、および211Atが挙げられる。診断薬および治療薬としては、特に60〜4,000keVのエネルギー範囲の他の放射性核種が利用できる。
【0068】
より最近では、二重特異性を有する四価直列ダイアボディー(tandabと呼ばれる)も報告されている(Cochlovius et al., Cancer Research (2000) 60:4336-4341)。この二重特異性tandabは同一の二つのポリペプチドの二量体であり、それぞれが二つの異なる抗体の四つの可変ドメインを含み(VH1、VL1、VH2、VL2)、これは自己会合に際してそれぞれの二つの異なる特異性のための二つの潜在的な結合部位の形成が容易となる方向に連結されている。
【0069】
6.結合多価および多x重特異性抗体
本発明のもう一つの実施形態は、コンジュゲート多価抗体である。第一または第二のポリペプチドのN末端またはC末端のいずれかに、さらなるアミノ酸残基を付加してもよい。このさらなるアミノ酸残基は、ペプチドタグ、シグナルペプチド、サイトカイン、酵素(例えば、プロドラッグ活性化酵素)、ホルモン、シュードモナス外毒素のようなペプチド毒素、ペプチド薬、細胞傷害性タンパク質または他の機能性タンパク質を含んでよい。本明細書において機能性タンパク質とは、生物学的機能を有するタンパク質である。
【0070】
ある一つの実施形態では、薬物、毒素、放射性化合物、酵素、ホルモン、細胞傷害性タンパク質、キレート剤、サイトカインおよび他の機能性薬剤を多価標的結合タンパク質に、好ましくはこの多価標的結合タンパク質のアミノ酸残基の側鎖、例えばアミン、カルボキシル、フェニル、チオールまたはヒドロキシル基に対する共有結合を介して、結合させてもよい。例えば、ジイソシアネート、ジイソチオシアネート、ビス(ヒドロキシスクシンイミド)エステル、カルボジイミド、マレイミド−ヒドロキシスクシンイミドエステル、グルタルアルデヒドなど、種々の慣用されるリンカーをこの目的のために用いてよい。多価タンパク質への薬剤の結合は、該タンパク質のその標的に対する結合特異性または親和性に有意な影響を及ぼさないことが好ましい。本明細書において機能性薬剤とは、生物学的機能を有する薬剤である。好ましい機能性薬剤は細胞傷害剤である。
【0071】
さらに他の実施形態では、二重特異性抗体に向けられた治療薬またはプロドラッグポリマーのイン・ビボ標的への送達は、放射性核種の二重特異性抗体送達と組み合わせることが可能なので、化学療法と放射免疫療法を組み合わせることができる。各々の治療法は標的化可能な複合体と結合させて同時に投与することができ、また、核種は第一の標的化可能な複合体の一部として投与し、薬物は後の工程で第二の標的化可能な複合体の一部として投与することができる。
【0072】
もう一つの実施例では、細胞傷害剤は高分子担体と結合させ、次いでその高分子担体を多価標的結合タンパク質に結合させればよい。この方法に関しては、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする、Ryser et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75:3867-3870 (1978)、米国特許第4,699,784号および同第4,046,722号を参照することができる。複合体化は多価結合タンパク質の結合特異性または親和性に有意な影響を及ぼさないことが好ましい。
【0073】
7.治療または診断のための類人霊長類化、ヒト化、キメラおよびヒト抗体の使用
本発明に従う類人霊長類化、ヒト化、キメラおよびヒトモノクローナル抗体、すなわち本明細書に記載の抗CD20 MAbおよびその他のMAbは治療法および診断法で用いるのに好適である。従って本発明は、本発明の類人霊長類化、ヒト化、キメラおよびヒト抗体の裸の抗体としての単独投与、または多様式療法として、治療薬とは結合させないが、投与計画に従った一時的投与を意図する。裸の抗CD20 MAbの効力は、一以上の他の裸の抗体、すなわちCD4、CD5、CD8、CD14、CD15、CD19、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、CD38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、B7、Ia、HM1.24、テネイシン、MUC1、またはHLA−DR等の特異抗原に対するMAb、ならびに一以上の抗CD20の免疫複合体を含む抗血管形成抗体(例えば、VEGFおよびPlGF抗体)を含む裸の抗体、あるいは薬物、毒素、免疫調節剤、ホルモン、治療用放射性核種などをはじめとする治療薬と結合され、同時または逐次または指示された投与計画に従って投与される薬物、毒素、免疫調節剤、ホルモン、治療用放射性核種などをはじめとする一以上の治療薬を含むこれら挙げられた抗原に対する抗体であって、MAbを含むものを補足することにより増強させることができる。好ましいB細胞抗原としては、ヒトCD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD46、CD52、CD74、CD80およびCD5抗原と同等なものが挙げられる。好ましいT細胞抗原としては、ヒトCD4、CD8およびCD25(IL−2受容体)抗原と同等なものが挙げられる。HLA−DR抗原と同等なものは、B細胞およびT細胞性疾患の双方の治療に使用できる。特に好ましいB細胞抗原はヒトCD19、CD22、CD21、CD23、CD74、CD80およびHLA−DR抗原と同等なものである。特に好ましいT細胞抗原は、ヒトCD4、CD8およびCD25抗原と同等なものである。CD46は癌細胞表面上の抗原であり、補体依存性溶解(CDC)を阻害する。
【0074】
さらに、本発明はB細胞リンパ腫および他の疾病または疾患の治療に用いられる免疫複合体の投与も意図する。本明細書に記載のように、免疫複合体は抗体成分および治療薬を担持するペプチドをはじめとする、治療薬を含んでなる分子である。免疫複合体は、抗体成分の免疫反応性を保持しており、すなわち抗体部分の複合体形成前と複合体形成後の同族抗原に対する結合能力はほぼ同等か、わずかに低下しているだけである。
【0075】
また、本発明は、骨髄性白血病の治療に用いられる免疫複合体の投与も意図し、ここではCD33、CD45、CD66および他の顆粒球結合抗原がターゲッティングされる。
多種多様な治療薬が、本発明の抗体と有利に結合できる。本明細書に列挙された治療薬は、上記のように裸の抗体とは別に投与しても有用である薬剤である。治療薬としては、例えば、ビンカアルカロイド、アントラサイクリン、エピトフィロトキシン、タキサン、抗代謝剤、アルキル化剤、抗生物質、Cox−2阻害剤、抗有糸分裂剤、抗血管形成剤およびアポトーシス剤、特にドキソルビシン、メトトレキサート、タキソール、CPT−11、カンプトテカン、およびこれらまたは他の種類の抗癌剤由来の他のものなどの化学療法薬が挙げられる。免疫複合体および抗体融合タンパク質の調製に有用な他の癌化学療法薬としては、ナイトロジェンマスタード、アルキルスルホネート、ニトロソウレア、トリアゼン、葉酸類似体、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、プラチナ錯体(オキサリプラチンを含む)、ホルモンなどが挙げられる。好適な化学療法薬はREMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES,19th Ed.(Mack Publishing Co., 1995)およびGOODMAN AND GILMAN'S THE PHARMACOLOGICAL BASIS OF THERAPEUTICS, 7th Ed. (MacMillan Publishing Co., 1985)、ならびにこれらの刊行物の改訂版に記載されている。実験薬のような他の好適な化学療法薬も、当業者に公知である。
【0076】
これに加えて、DTPA、DOTA、TETAまたはNOTAのようなキレート剤または好適なペプチドに、蛍光分子のような検出可能な標識または、重金属もしくは放射性核種のような細胞傷害性薬剤を結合させることができる。例えば、治療上有用な免疫複合体は、光活性薬または色素を抗体混成物に結合させることにより得られる。蛍光色素のような蛍光組成物、および他の色素原、または可視光線に感受性のあるポルフィリンのような色素は、好適な光線を病巣に当てることにより病巣の検出および治療に使用されてきた。治療においては、これは光照射、光療法または光線力学療法と呼ばれている(Jori et al. (eds.), PHOTODYNAMIC THERAPY OF TUMORS AND OTHER DISEASES(Libreria Progetto 1985); van den Bergh, Chem. Britain 22:430(1986))。さらに、光療法を行うためにはモノクローナル抗体は光活性化色素と結合されてきた。Mew et al., J.Immunol. 130:1473(1983);前掲, Cancer Res. 45:4380 (1985); Oseroff et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:8744 (1986);前掲, Photochem. Photobiol. 46:83 (1987); Hasan et al., Prog. Clin. Biol. Res. 288:471 (1989); Tatsuta et al., Lasers Surg. Med.9:422 (1989); Pelegrin et al., Cancer 67:2529(1991)。しかし、これらの初期の研究には、特に抗体フラグメントまたはサブフラグメントの使用を伴った内視鏡療法の適用は含まれていなかった。従って本発明は、光活性薬または色素を含んでなる免疫複合体の治療的使用を意図する。
【0077】
シュードモナス外毒素のような毒素は、本発明の抗CD20抗体の抗体融合タンパク質の治療薬部分と複合化し得るし、あるいは本発明の抗CD20抗体の抗体融合タンパク質の治療薬部分を形成することができる。このような複合体または他の融合タンパク質の調製に適切に使用される他の毒素としては、リシン、アブリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼ I、ブドウ球菌腸毒素−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素が挙げられる。例えば、Pastan et al., Cell 47:641(1986)、およびGoldenberg, CA-A Cancer Journal for Clinicians 44:43(1994)を参照することができる。本発明で用いるのに好適なさらなる毒素は当業者に公知であり、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする米国特許第6,077,499号に開示されている。
【0078】
サイトカインのような免疫調節剤は、また、抗体融合タンパク質の治療薬部分と結合され得るし、あるいは抗体融合タンパク質の治療薬部分を形成することができ、あるいは本発明のヒト化抗CD20抗体またはその他のリンパ腫抗体とともに投与してもよい。本発明に好適なサイトカインとしては、限定されるものではないが、後述のようにインターフェロンおよびインターロイキンが挙げられる。
【0079】
8.免疫複合体の作製
本発明のいずれの抗体または抗体融合タンパク質も、一種以上の治療薬と結合させることができる。一般に、一種の治療薬を各々抗体または抗体フラグメントに結合させるが、二種以上の治療薬を同じ抗体または抗体フラグメントに結合させることもできる。本発明の抗体融合タンパク質は二以上の抗体またはそのフラグメントを含んでなり、この融合タンパク質を含んでなる抗体各々が治療薬を含み得る。また、一以上の抗体融合タンパク質の抗体には、二種以上の治療薬を結合させることができる。さらに、この治療薬は同じである必要はなく、異なる治療薬であってもよい。例えば、同じ融合タンパク質に薬物と放射性同位元素を結合させることができる。特に、IgGは131Iで放射性標識し、薬物に結合させることができる。この131Iは、IgGのチロシンに組み込むことができ、薬物はIgGリジンのεアミノ酸に結合させることができる。治療薬は、還元SH基および炭化水素側鎖に結合させることもできる。
【0080】
本発明の二重特異性抗体はプレターゲッティング法において有用であり、二種の治療薬を被検体に送達する好ましい方法を提供する。米国出願番号09/382,186は、二重特異性抗体を用いるプレターゲッティング法を開示しており、そこでは二重特異性抗体を125Iで標識して被検体に送達し、次に99mTcで標識した二価のペプチドを送達する。送達の結果、125Iおよび99mTcに関して腫瘍/正常組織比は良好となることから、二つの診断用放射性同位元素の有用性が示されている。抗体および抗体融合タンパク質を標識するには公知の治療薬のいずれの組合せでも使用できる。mAb複合体の抗体成分の結合特異性、治療薬または診断薬の有効性および抗体のFc部分のエフェクター活性は、複合体の標準的な試験により判定することができる。
【0081】
治療薬は、ジスルフィド結合形成を介して還元された抗体成分のヒンジ領域に結合することができる。あるいは、このようなペプチドはN−スクシニル3−(2−ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)のようなヘテロ二官能性架橋剤を用いて抗体成分に結合することができる。Yu et al., Int. J. Cancer 56 : 244(1994)。このような結合に関する一般的な技術は当技術分野で周知である。例えば、Wong, CHEMISTRY OF PROTEIN CONJUGATION AND CROSS-LINKING (CRC Press, 1991); Upeslacis et al.,"Modification of Antibodies by Chemical Methods, "in MONOCLONAL ANTIBODIES: PRINCIPLES AND APPLICATIONS, Birch et al.(eds), pages 187-230(Wiley-Liss, Inc. 1995); Price, "Production and Characterization of Synthetic Peptide-Derived Antibodies, "in MONOCLONAL ANTIBODIES: PRODUCTION, ENGINEERING AND CLINICAL APPLICATION, Ritter et al.(eds.), pages 60-84(Cambridge University Press 1995)を参照することができる。あるいは、治療薬は抗体のFc領域の炭化水素部分を介して結合させることもできる。この炭化水素基は、チオール基に結合している同じペプチドの付加量を増大させるためにも使用できるし、あるいはこの炭化水素部分は異なるペプチドを結合するためにも使用できる。
【0082】
抗体の炭水化物部分を介して抗体成分にペプチドを結合させる方法は当業者に周知である。例えば、Shih et al., Int. J. Cancer 41: 832 (1988); Shih et al., Int. J. Cancer 46: 1101 (1990);およびShih et al., 米国特許第5,057,313号を参照することができる(なお、これらは総て、引用することによりその全開示内容を本明細書の一部とする)。一般的な方法としては、炭水化物部分が酸化された抗体成分を、少なくとも一つの遊離アミン基を有し、かつ、複数のペプチドが付加された担体ポリマーと反応させることを含む。この反応により最初のシッフ塩基(イミン)結合が生じ、これは第二級アミンへの還元により安定化され最終の複合体を形成し得る。
【0083】
免疫複合体の抗体成分として用いられる抗体が抗体フラグメントである場合にはFc領域は存在しない。しかし、炭化水素部分を全長抗体または抗体フラグメントの軽鎖可変領域へ導入することが可能である。例えば、Leung et al., J. Immunol. 154:5919 (1995); Hansen et al., 米国特許第5,443,953号(1995), Leung et al., 米国特許第6,254,868号を参照することができる(なお、これらは総て引用することにより本明細書の一部とする)。この操作された炭化水素部分は、治療薬または診断薬を結合させるために用いられる。
【0084】
9.医薬上許容されるビヒクル
被検体に送達される類人霊長類化、ヒト化、キメラまたはヒト放射性標識抗体は、mAb単独、免疫複合体、融合タンパク質から構成されるか、または一以上の薬学上好適なビヒクル、一以上の付加的成分またはこれらのある組合せを含み得る。
本発明の免疫複合体抗体は、薬学上有用な組成物を調製するための公知の方法に従って調剤され、この免疫複合体または裸の抗体は混合物中で薬学上好適なビヒクルと結合する。滅菌リン酸緩衝生理食塩水は薬学上好適なビヒクルの一例である。他の好適なビヒクルも当業者に周知である。例えば、Ansel et al., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS, 5th Edition (Lea & Febiger 1990)、およびGennaro(ed.), REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition (Mack Publishing Company 1990)およびそれらの改訂版を参照することができる。
【0085】
本発明の免疫複合体または裸の抗体は、例えばボーラス注射または点滴による静脈内投与などの非経口適用向けに調剤できる。注射製剤は、例えばアンプルのような単位投与形、または保存剤を加えた複数回投与用容器で提供することができる。この組成物は油性または水性ビヒクル中の懸濁液、溶液またはエマルジョンの形態をとってもよく、懸濁化剤、安定剤および/または分散剤のような処方剤を含むことができる。あるいは、その活性成分は使用前に例えば滅菌パイロジェンフリー水のような好適なビヒクルで構成するための粉末形態であってもよい。
【0086】
治療用複合体または裸の抗体の作用時間を制御するために、その他の製薬法を用いてもよい。徐放性製剤は、免疫複合体または裸の抗体と複合体形成するか、または免疫複合体または裸の抗体を吸着する、ポリマーの使用を通じて調製することができる。例えば、生体適合性ポリマーとしては、ポリ(エチレン−co−酢酸ビニル)マトリックスおよびステアリン酸二量体とセバシン酸の無水共重合体マトリックスが挙げられる。Sherwood et al., Bio/Technology 10:1446(1992)。このようなマトリックスからの免疫複合体または抗体の放出速度は、免疫複合体または抗体の分子量、マトリックス内の免疫複合体、抗体の量、および分散している粒子の大きさによって異なる。Saltzman et al., Biophys. J. 55:163(1989); Sherwood et al.,前掲。他の固形投与形は、Ansel et al., PHARMACEUTICAL DOSAGE FORMS AND DRUG DELIVERY SYSTEMS, 5th Edition(Lea & Febiger 1990)、およびGennaro(ed.), REMINGTON'S PHARMACEUTICAL SCIENCES, 18th Edition (Mack Publishing Company 1990)およびその改定版に記載されている。
【0087】
また、免疫複合体、抗体融合タンパク質または裸の抗体は哺乳類に皮下投与または他の非経口経路でも投与できる。さらに、投与は点滴でも単回または複数回のボーラス注射によってもよい。一般に、ヒトにおいては投与される免疫複合体、融合タンパク質または裸の抗体の用量は、患者の年齢、体重、身長、性別、全身の健康状態、および以前の病歴といった因子によって異なる。通常、単回の静脈点滴として約1mg/kg〜20mg/kgの範囲の用量の免疫複合体、抗体融合タンパク質または裸の抗体をレシピエントに与えるのが望ましいが、状況によってはより低い、またはより高い用量を投与してもよい。この用量は必要に応じで繰り返してもよく、例えば、1週間に1回の投与を4〜10週間、好ましくは1週間に1回の投与を8週間、そしてより好ましくは、1週間に1回の投与を4週間繰り返してもよい。また、1週間おきの投与を数ヶ月といったように低い頻度で投与してもよい。用量および日程を適宜調節して、種々の非経口経路により投与してよい。
【0088】
治療目的では、治療上有効な量の免疫複合体、融合タンパク質または裸の抗体を哺乳類に投与する。ヒト以外の動物被検体もまた意図されるが、本発明の好適な被検体は通常ヒトである。抗体製剤は、投与される量が生理学上有意であれば、「治療上有効量」で投与されると言われる。薬物は、その存在が受容哺乳類の生理機能に検出可能な変化をもたらす場合に、生理学上有意である。特に、本発明の抗体製剤は、その存在が抗腫瘍応答を誘起するか、または自己免疫疾患の徴候および症候を緩和する場合に、生理学上有意である。また、生理学上有意な効果は、受容哺乳類における体液性および/または細胞性免疫応答を誘起することであり得る。
【0089】
10.治療方法
本発明はB細胞関連悪性腫瘍、T細胞関連悪性腫瘍または他種のリンパ腫などの疾病の治療のための基本組成物としての本発明の抗体の使用を意図する。さらに、本発明はまた、自己免疫疾患の治療にも有用である。特に、本明細書に記載の組成物は、種々の自己免疫疾患、ならびに緩徐進行型B細胞リンパ腫、急速進行型B細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、およびワルデンストロームマクログロブリン血症、多発性骨髄腫の治療に特に有用である。また、T細胞白血病または菌状息肉腫などのT細胞疾患も治療できる。例えば、ヒト化抗CD22抗体成分および免疫複合体は緩徐進行型と急速進行型の双方の非ホジキンリンパ腫の治療に使用できる。自己免疫疾患は、急性特発性血小板減少性紫斑病、慢性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シドナム舞踏病、重症筋無力症、全身性紅斑性狼瘡、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、真性糖尿病、ヘノッホ−シェンライン紫斑病、溶連菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓性血管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、硬皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、乾癬、および繊維性肺胞炎からなる群から選択される。
【0090】
治療用組成物は少なくとも一種のヒト化、キメラまたはヒトモノクローナル抗体を単独で、あるいは他のヒト化、キメラ、もしくはヒト抗体などの他の抗体、または治療薬もしくは免疫調節剤と組み合わせて含む。特に完全なヒト抗体との併用療法も意図され、これは上記に示される方法によって行われる。
【0091】
また、同じもしくは異なるエピトープまたは抗原とコンジュゲート抗体を本発明の一以上の抗体と組み合わせてもよい。例えば、ヒト化、キメラまたはヒトコンジュゲート抗CD22抗体を他の類人霊長類化、ヒト化、キメラまたはヒトコンジュゲート抗CD22と組み合わせてよく、類人霊長類化、ヒト化、キメラまたはヒトコンジュゲート抗CD22抗体を抗CD22免疫複合体と組み合わせてもよい。あるいは、上記のような種々のリンパ腫結合抗体を用いてこのような種々の組合せを作ることもできる。また、類人霊長類化、ヒト化、キメラまたはヒトCD22抗体と、毒素もしくは免疫調節剤との融合タンパク質、または少なくとも二種の異なるB細胞抗体の融合タンパク質(例えばCD20とCD22mAb)を本発明で用いてもよい。上記ですでに挙げたようなB細胞もしくはその他のリンパ腫または自己免疫疾患に関連する少なくとも二つの異なる抗原をターゲッティングする多くの異なる抗体の組合せが、治療薬もしくは免疫調節剤と部分的に結合させて、または細胞傷害剤などの他の治療薬または放射線と単に組み合わせて構成することができる。
【0092】
本明細書において「免疫調節剤」としては、サイトカイン、幹細胞増殖因子、腫瘍壊死因子(TNF)などのリンホトキシン、ならびにインターロイキン(例えば、インターロイキン−1(IL−1)、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12およびIL−18)、コロニー刺激因子(例えば、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)および顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF))、インターフェロン(例えば、インターフェロン−α、−βおよび−γ)、「S1因子」と呼ばれる幹細胞増殖因子、エリスロポエチンおよびトロンボポエチンなどの造血因子が挙げられる。好適な免疫調節剤部分の例としては、IL−2、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、インターフェロン−γ、TNF−αなどが挙げられる。あるいは、被検体にコンジュゲート抗CD20抗体を投与してもよく、別にサイトカインを投与することもでき、これは裸のまたはコンジュゲート抗CD20抗体を投与する前、投与する際または投与した後に投与することができる。上記に述べたように、抗CD22抗体はまた、免疫調節剤と結合させてもよい。この免疫調節剤はまた、異なる抗原と結合する一以上の抗体またはサブフラグメントからなるハイブリッド抗体またはハイブリッド抗体フラグメントもしくはサブフラグメント(単鎖結合タンパク質、またはsFv)と結合させてもよい。
【0093】
本発明の多様式療法はさらに、融合タンパク質の形態で、または免疫複合体として、抗CD20、抗CD19、抗CD21、抗CD74、抗CD80、抗CD23、抗CD46またはHLA−DR(不変鎖を含む)抗体の投与を補った、コンジュゲート抗CD22抗体による免疫療法も含む。これらの抗体としては、これらの抗原決定基上の少なくとも一つのエピトープを認識するポリクローナル、モノクローナル、類人霊長類化、キメラ、ヒトまたはヒト化抗体が挙げられる。抗CD19および抗CD22抗体は当業者に公知である。例えば、引用することによりそれらの全開示内容を本明細書の一部とする、Ghetie et al., Cancer Res. 48:2610 (1988); Hekman et al., Cancer Immunol. Immunother. 32:364 (1991); Longo, Curr. Opin. Oncol. 8:353 (1996)、ならびに米国特許第5,798,554号および同第6,187,287号を参照することができる。
【0094】
多様式療法の別の形態では、被検体にコンジュゲート抗体および/または免疫複合体を、標準的な癌の化学療法と組み合わせて投与する。例えば、「CVB」(1.5g/mシクロホスファミド、200〜400mg/mエトポシド、および150〜200mg/mカルムスチン)は、非ホジキンリンパ腫の治療に用いられる投与計画である。Patti et al., Eur. J. Haematol. 51:18 (1993)。その他の好適な組み合わせ化学療法計画も当業者に周知である。例えば、Freedman et al., "Non-Hodgkin's Lymphomas," CANCER MEDICINE, VOLUME 2, 3rd Edition, Holland et al. (eds. ), pages 2028-2068 (Lea & Febiger 1993)を参照することができる。示したように、中悪性度非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療のための第一世代化学療法計画としては、C−MOPP(シクロホスファミド、ビンクリスチン、プロカルバジンおよびプレドニソン)およびCHOP(シクロホスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチンおよびプレドニソン)が挙げられる。有用な第二世代の化学療法計画としては、m−BACOD(メトトレキサート、ブレオマイシン、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、デキサメタゾンおよびロイコボリン)があり、好適な第三世代の計画としては、MACOP−B(メトトレキサート、ドキソルビシン、シクロホスファミド、ビンクリスチン、プレドニソン、ブレオマイシンおよびロイコボリン)がある。さらなる有用な薬物としては、フェニルブチレートおよびブロスタチン−1がある。好ましい多様式療法では、化学療法薬とサイトカインの双方を本発明の抗体、免疫複合体または融合タンパク質と同時に投与する。サイトカイン、化学療法薬および抗体または免疫複合体はいずれの順序で投与してもよく、一緒に投与してもよい。
【0095】
β粒子の放出により実質的に崩壊する治療薬として有用な放射性核種としては、限定されるものではないが、Ac−225、P−32、P−33、Sc−47、Fe−59、Cu−64、Cu−67、Se−75、As−77、Sr−89、Y−90、Mo−99、Rh−105、Pd−109、Ag−111、I−125、I−131、Pr−142、Pr−143、Pm−149、Sm−153、Tb−161、Ho−166、Er−169、Lu−177、Re−186、Re−188、Re−189、Ir−194、Au−198、Au−199、Pb−211、Pb−212、およびBi−213が挙げられる。有用なβ粒子放出核種の最大崩壊エネルギーは好ましくは20〜5,000keV、より好ましくは100〜4,000keV、最も好ましくは500〜2,500keVである。
【0096】
オージェ粒子の放出により実質的に崩壊する治療薬として有用な放射性核種としては、限定されるものではないが、Co−58、Ga−67、Br−80m、Tc−99m、Rh−103m、Pt−109、In−111、Sb−119、I−125、Ho−161、Os−189mおよびIr−192が挙げられる。これらの放射性核種の最大崩壊エネルギーは好ましくは1,000keV未満、より好ましくは100keV未満、最も好ましくは70keV未満である。
【0097】
α粒子の形成により実質的に崩壊する治療薬として有用な放射性核種としては、限定されるものではないが、Dy−152、At−211、Bi−212、Ra−223、Rn−219、Po−215、Bi−211、Ac−225、Fr−221、At−217、Bi−213およびFm−255が挙げられる。有用なα粒子放出放射性核種の崩壊エネルギーは好ましくは2,000〜9,000keV、より好ましくは3,000〜8,000keV、最も好ましくは4,000〜7,000keVである。
【0098】
中性子捕捉法に基づく療法に有用な放射性核種としては、限定されるものではないが、B−10、Gd−157およびU−235が挙げられる。
本発明の実施形態を、本発明の態様を詳しく示す実施例によりさらに説明する。これらの実施例は本発明の特定の構成要素を示すものであり、その範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0099】
抗体
エプラツズマブはヒト化LL2抗体であり、Immunomedics Inc., Morris Plains, NJが開発したものである。ヒト化のプロセスでは、ネズミIg配列の約95%がヒトIgG配列に置き換わる。エプラツズマブは、三番目のIgドメイン(Kehrl, J. H. B6 CD22 Workshop Panel Report, in Leukocyte Typing V. White Cell Differentiation Antigens., S. F. Schlossman (ed.), Oxford University Press, p. 523-5, 1995)に相当するCD22抗原のBエピトープ(Stein, R. et al., Cancer Immunol. Immunother. 37 (5): 293-8, 1993)にひと度結合するとインターナライズされる。イン・ビトロインターナリゼーションが5分後に見られ、5時間後に50%といった量の抗原の再発現が起こることが報告されている(Shih, L. B. et al.Int J Cancer 56(4):538-45, 1994)。
【0100】
ヒト化抗CD20抗体、hA20はImmunomedics, Inc., Morris Plains, NJが開発したものである。このMabはCD20と結合し、キメラ抗CD20 MAb、リツキシマブとは対照的に、キメラ型よりもネズミタンパク質が少ないCDRグラフトMAbである。このhA20 MAbはIgG1(κ)定常領域と、CD22ヒト化MAb、エプラツズマブと同じヒトVフレームワーク領域を有する。hA20のCDRグラフトVHおよびVk鎖の遺伝子を、DHFRに基づき増幅可能な発現系pdHL2プラスミドベクターに挿入し、Sp2/0ネズミ骨髄腫細胞系統にトランスフェクトしてhA20産生クローンを作製した。分子の同定を行ったところ、hA20は、VH領域のアミノ酸が一つ違うこと以外は、そのCDRがリツキシマブと同じであることが示された。しかし、ヒト構築物がより多く含まれているために、hA20のVHおよびVkフレームワーク領域には違いが存在する。このhA20抗体は種々のリンパ腫細胞とリツキシマブの結合に関して競合すると思われ、リツキシマブと同じ解離定数を有するばかりか、CD20を発現するヒトリンパ腫細胞系統に対してイン・ビボおよびイン・ビトロで同じ作用を有する。
【0101】
非ホジキンリンパ腫(NHL)の治療
66歳の男性、第IV病期びまん性大細胞NHL患者は2年前に3コースの化学療法を受けた後に再発していた。この患者は1週間あけて、7.5mCi/m90Yを含む90Y−DOTA−エプラツズマブ(Govinden,同書に従って標識)の二回注射量を施し、これは各回全用量30mgの抗体タンパク質を静脈点滴することで投与した。6週間後、患者の頸部リンパ節および巨脾腫に顕著な退縮があったことが明らかになり、この患者は症状改善を見せ、フルタイムの仕事に復帰した。この患者は完全緩解には至らなかったので、1週間おきに計4回の点滴で投与するエプラツズマブ(360mg/m)およびhA20(250mg/m)の組合せを含む継続治療を設定し、次に、組合せ抗体療法コースをその後12週間繰り返した。裸のCD22およびCD20抗体の組合せによる二回目の治療コースが完了してから3ヶ月後、放射線走査または骨髄生検によって患者に疾病の証拠はなかったことから、完全緩解であるとみなされた。次の評価時である3ヶ月後においても、患者はまだ疾病の完全緩解の状態にあった。
【0102】
T細胞白血病の治療
従来の化学療法に不応の、進行したT細胞白血病患者に、20mCi90Y−DOTAと結合させた50mg抗CD25ヒト化Mabの点滴を行った後、1週間後に200mg/m用量のCD25Mab(抗TACヒト化抗体)の点滴を行った。4週間後、この患者の血球計数および骨髄生検を行ったところ、疾病の部分緩解が示された。
【0103】
不応性慢性関節リウマチの治療
多くの関節、特に膝を侵す進行した重度の慢性関節リウマチを示し、その時点で化学療法に不応の患者を、線量10mCi/m90Yで標識したCD4およびCD20ヒト化Mab混合物、計50mgの一回点滴で治療した。2週間後、この患者に100mgCD4および250mgCD20抗体からなる裸のヒト化抗体を投与し、2週間後にこれをもう一度繰り返した。患者は4週間後、特に膝において関節炎の軽減を感じ、歩行が楽になり、階段を登ることさえもできるようになり、主治医が診たところ関節の炎症もほとんどなかった。3ヶ月後、この放射性標識抗体混合物の点滴一回、その後、裸のCD4およびCD20抗体の二回の点滴を含む治療コースを繰り返し、6週間後に患者を再評価した。医師は著しい改善を認め、患者は関節に最小の痛みしかなく、手足の動きが相当よくなったとうったえた。
【0104】
以上は特に好ましい実施形態を表すが、本発明はこれに限定されないことが分かるであろう。当業者ならば、開示されている実施形態に種々の変形を行うことができ、そのような変形も以下の実施形態により定義される本発明の範囲内であるものとされることが分かるであろう。
本明細書に引用されている刊行物ならびに特許出願および特許は総て、引用することによりその全開示内容が本明細書の一部とされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の疾病の治療に用いるための薬剤の製造における、薬学上許容されるビヒクルと少なくとも一種のコンジュゲート抗体もしくはそのフラグメント、またはコンジュゲート抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントとを含んでなる治療組成物の使用であって、非放射性標識抗体の前投与が行われず、該治療組成物が該哺乳類に同時または逐次投与される、使用。
【請求項2】
増殖腫瘍または自己免疫疾患細胞が標的逸出しないようにするための維持療法として、前記コンジュゲート抗体もしくはそのフラグメントまたは前記コンジュゲート抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントに加え、場合により、非コンジュゲート抗体もしくはフラグメントまたは非コンジュゲート抗体融合タンパク質もしくはそのフラグメントが加えられる、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
前記コンジュゲートおよび非コンジュゲート抗体、抗体融合タンパク質、またはそのフラグメントが、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11c、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、D38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、MUC1、テネイシン、Ia、HMI.24、HLA−DR、および腫瘍関連抗原からなる群から選択される抗原に向けられたものである、請求項1または2に記載の使用。
【請求項4】
前記腫瘍関連抗原が血管内皮抗原である、請求項3に記載の使用。
【請求項5】
前記哺乳類がヒトおよび家畜または伴侶動物からなる群から選択される、請求項3に記載の使用。
【請求項6】
前記コンジュゲートおよび非コンジュゲート抗体、抗体融合タンパク質、またはそのフラグメントが、ヒト、ネズミ、キメラ、霊長類化またはヒト化抗体である、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体、抗体融合タンパク質、またはそのフラグメントが、薬物、毒素、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素化合物、光活性剤、および放射性核種からなる群から選択される治療薬と結合されてなるものである、請求項3に記載の使用。
【請求項8】
薬学上許容されるビヒクルと少なくとも一種の抗体、抗体融合タンパク質またはそのフラグメントとを含んでなる治療組成物を、前記哺乳類に同時または逐次投与することをさらに含み、前記抗体、抗体融合タンパク質またはそのフラグメントが少なくとも一種の治療薬と結合されてなるものである、請求項3に記載の使用。
【請求項9】
増殖腫瘍または自己免疫疾患細胞が標的逸出しないようにするための維持療法として、前記コンジュゲート抗体、抗体融合タンパク質またはそのフラグメントに加え、場合により、非コンジュゲート抗体、抗体融合タンパク質またはそのフラグメントが加えられる、請求項8に記載の使用。
【請求項10】
前記コンジュゲートおよび非コンジュゲート抗体、抗体融合タンパク質、またはそのフラグメントが、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11c、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、D38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、MUC1、テネイシン、Ia、HMI.24、HLA−DR、および腫瘍関連抗原からなる群から選択される抗原に向けられたものである、請求項8または9に記載の使用。
【請求項11】
前記腫瘍関連抗原が血管内皮抗原である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記哺乳類がヒトおよび家畜または伴侶動物からなる群から選択される、請求項10に記載の使用。
【請求項13】
前記コンジュゲートおよび非コンジュゲート抗体、抗体融合タンパク質、またはそのフラグメントが、ヒト、ネズミ、キメラ、霊長類化またはヒト化抗体である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記抗体、抗体融合タンパク質、またはそのフラグメントが薬物、毒素、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素化合物、光活性剤、および放射性核種からなる群から選択される治療薬と結合されてなるものである、請求項10に記載の使用。
【請求項15】
薬学上許容されるビヒクルと、少なくとも二種の抗体またはそのフラグメントを含んでなる抗体融合タンパク質またはそのフラグメントとを含んでなる治療組成物を前記哺乳類に同時または逐次投与することをさらに含む、請求項1に記載の使用。
【請求項16】
増殖腫瘍またはその他の罹患細胞が標的逸出しないようにするための維持療法として、前記抗体融合タンパク質またはそのフラグメントに加え、場合により、非コンジュゲート抗体が加えられる、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
前記コンジュゲートおよび非コンジュゲート抗体が、CD3、CD4、CD5、CD8、CD11c、CD14、CD15、CD19、CD20、CD21、CD22、CD23、CD25、CD33、CD37、D38、CD40、CD40L、CD46、CD52、CD54、CD74、CD80、CD126、MUC1、テネイシン、Ia、HMI.24、HLA−DR、および腫瘍関連抗原からなる群から選択される抗原に向けられたものである、請求項15または16に記載の使用。
【請求項18】
前記腫瘍関連抗原が血管内皮抗原である、請求項17に記載の使用。
【請求項19】
前記哺乳類がヒトおよび家畜または伴侶動物からなる群から選択される、請求項17に記載の使用。
【請求項20】
前記コンジュゲートおよび非コンジュゲート抗体がヒト、ネズミ、キメラ、霊長類化またはヒト化抗体である、請求項17に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体が薬物、毒素、免疫調節剤、キレート剤、ホウ素化合物、光活性剤、および放射性核種からなる群から選択される治療薬と結合されてなるものである、請求項17に記載の使用。
【請求項22】
前記薬物が抗有糸分裂薬、アルキル化薬、代謝拮抗薬、抗脈管形成薬、アポトーシス薬、アルカロイド薬、および抗生物質、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される薬理特性を有する、請求項7に記載の使用。
【請求項23】
前記薬物がナイトロジェンマスタード、エチレンイミン誘導体、スルホン酸アルキル、ニトロソ尿素、トリアゼン、葉酸類似体、アントラサイクリン、タキサン、COX−2阻害剤、ピリミジン類似体、プリン類似体、抗生物質、酵素、エピポドフィロトキシン、プラチナ錯体、ビンカアルカロイド、置換尿素、メチルヒドラジン誘導体、副腎皮質抑制剤、アンタゴニスト、エンドスタチン、タキソール、カンプトテシン、ドキソルビシンおよびそれらの類似体、ならびにそれらの組合せからなる群から選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項24】
前記薬物がシクロホスファミド、エトポシド、ビンクリスチン、プロカルバジン、プレドニゾン、カルムスチン、ドキソルビシン、メトトレキサート、ブレオマイシン、デキサメタゾン、酪酸フェニル、ブリオスタチン−1、およびロイコボリンからなる群から選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項25】
前記毒素がリシン、アブリン、アルファトキシン、サポリン、リボヌクレアーゼ(RNアーゼ)、DNアーゼI、ブドウ球菌腸毒素−A、アメリカヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質、ゲロニン、ジフテリア毒、シュードモナス外毒素、およびシュードモナス内毒素からなる群から選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項26】
前記免疫調節剤がサイトカイン、幹細胞増殖因子、リンホトキシン、造血系増殖因子、コロニー刺激因子(CSF)、インターフェロン(IFN)、エリスロポエチン、トロンボポエチンおよびそれらの組合せからなる群から選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項27】
前記免疫調節剤が本質的にIL−1、IL−2、IL−3、IL−6、IL−10、IL−12、IL−18、G−CSF、GM−CSF、インターフェロン−γ、−α、−βまたは−γ、TNF−α、および「S1因子」からなる、請求項7に記載の使用。
【請求項28】
前記キレート剤がDTPA、DOTA、TETA、NOTAおよび検出可能な標識または細胞傷害性薬剤が結合可能な好適なペプチドからなる群から選択される、請求項7に記載の使用。
【請求項29】
前記検出可能な標識が蛍光分子であり、かつ、前記細胞傷害性薬剤が重金属または放射性核種である、請求項28に記載の使用。
【請求項30】
前記リンホトキシンが腫瘍壊死因子、造血系増殖因子、コロニー刺激因子、インターフェロン、幹細胞増殖因子からなる群から選択される、請求項26に記載の使用。
【請求項31】
前記光活性剤が色素原または色素である、請求項7に記載の使用。
【請求項32】
(A)前記放射性核種が実質的にβ粒子の放出により崩壊し、P−32、P−33、Sc−47、Fe−59、Cu−64、Cu−67、Se−75、As−77、Sr−89、Y−90、Mo−99、Rh−105、Pd−109、Ag−111、I−125、I−131、Pr−142、Pr−143、Pm−149、Sm−153、Tb−161、Ho−166、Er−169、Lu−177、Re−186、Re−188、Re−189、Ir−194、Au−198、Au−199、Pb−211、Pb−212、およびBi−213からなる群から選択されるか;
(B)前記放射性核種が実質的にオージェ粒子の放出により崩壊し、Co−58、Ga−67、Br−80m、Tc−99m、Rh−103m、Pt−109、In−111、Sb−119、I−125、Ho−161、Os−189mおよびIr−192からなる群から選択されるか;または
(C)前記放射性核種が実質的にα粒子の放出により崩壊し、Ac−225、Dy−152、At−211、Bi−212、Ra−223、Rn−219、Po−215、Bi−211、Ac−225、Fr−221、At−217、Bi−213およびFm−255からなる群から選択される、
請求項7に記載の使用。
【請求項33】
前記治療薬が光線力学療法および中性子捕捉法で用いられる、請求項7に記載の使用。
【請求項34】
前記光線力学療法が金属錯体を用い、かつ、前記金属錯体が亜鉛、アルミニウム、ガリウム、ルテチウムおよびパラジウムからなる群から選択される、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
前記中性子捕捉法がB−10、Gd−157およびU−235からなる群から選択される放射性核種を用いる、請求項33に記載の使用。
【請求項36】
前記疾病がB細胞関連疾患、T細胞関連疾患または自己免疫疾患である、請求項1に記載の使用。
【請求項37】
前記B細胞関連疾患が緩徐進行型B細胞リンパ腫、急速進行型B細胞リンパ腫、慢性リンパ性白血病、急性リンパ性白血病、ワルデンストロームマクログロブリン血症、または多発性骨髄腫である、請求項37に記載の使用。
【請求項38】
前記B細胞関連疾患がヒトまたは家畜疾患である、請求項37に記載の使用。
【請求項39】
前記B細胞リンパ腫が非ホジキンリンパ腫である、請求項37に記載の使用。
【請求項40】
前記T細胞関連疾患がヒトまた家畜T細胞白血病または菌状息肉腫である、請求項37に記載の使用。
【請求項41】
前記自己免疫疾患が急性特発性血小板減少性紫斑病、慢性特発性血小板減少性紫斑病、皮膚筋炎、シドナム舞踏病、重症筋無力症、全身性紅斑性狼瘡、ループス腎炎、リウマチ熱、多腺性症候群、水疱性類天疱瘡、真性糖尿病、ヘノッホ−シェンライン紫斑病、溶連菌感染後腎炎、結節性紅斑、高安動脈炎、アジソン病、慢性関節リウマチ、多発性硬化症、サルコイドーシス、潰瘍性大腸炎、多形性紅斑、IgA腎症、結節性多発性動脈炎、強直性脊椎炎、グッドパスチャー症候群、閉塞性血栓性血管炎、シェーグレン症候群、原発性胆汁性肝硬変、橋本甲状腺炎、甲状腺中毒症、硬皮症、慢性活動性肝炎、多発性筋炎/皮膚筋炎、多発性軟骨炎、尋常性天疱瘡、ウェゲナー肉芽腫、膜性腎症、筋萎縮性側索硬化症、脊髄ろう、巨細胞性動脈炎/多発性筋痛、悪性貧血、急速進行性糸球体腎炎、乾癬、および繊維性肺胞炎からなる群から選択される、請求項37に記載の使用。
【請求項42】
罹患組織上の標的抗原の比率が正常組織上の標的抗原の比率を、1.6:1の比率より超える、請求項1に記載の使用。
【請求項43】
罹患組織上の標的抗原の比率が正常組織上の標的抗原の比率を、5:1の比率より超える、請求項1に記載の使用。
【請求項44】
前記コンジュゲートおよび非コンジュゲート抗体、抗体融合タンパク質またはそのフラグメントが同じ、または異なる標的に向けられている、請求項1に記載の使用。
【請求項45】
前記コンジュゲートおよび非コンジュゲート抗体、抗体融合タンパク質、またはそのフラグメントが完全IgG、F(ab’)、F(ab)、Fab’、Fab、scFv、ダイアボディー、トリアボディーまたはテトラボディーからなる群から選択される、請求項1に記載の使用。
【請求項46】
前記コンジュゲートおよび非コンジュゲート抗体が抗CD22モノクローナル抗体である、請求項1に記載の使用。
【請求項47】
前記コンジュゲートおよび非コンジュゲート抗体がヒト化LL2モノクローナル抗体である、請求項1に記載の使用。
【請求項48】
前記ヒト化LL2抗体がイットリウム−90で放射性標識されている、請求項47に記載の使用。
【請求項49】
前記抗CD22モノクローナル抗体がヒト抗体である、請求項46に記載の使用。
【請求項50】
前記コンジュゲート抗体が1回当たり20〜600ミリグラムタンパク質の用量で非経口投与される、請求項44に記載の使用。
【請求項51】
前記コンジュゲート抗体が1回当たり20〜150ミリグラムタンパク質の用量で非経口投与される、請求項44に記載の使用。
【請求項52】
前記コンジュゲート抗体が1回当たり20〜100ミリグラムタンパク質の用量で非経口投与される、請求項44に記載の使用。
【請求項53】
前記哺乳類が前記抗CD22モノクローナル抗体を1回当たり20〜150ミリグラムタンパク質の反復非経口用量として受容する、請求項46に記載の使用。
【請求項54】
前記哺乳類が前記抗CD22モノクローナル抗体を1回当たり20〜100ミリグラムタンパク質の反復非経口用量として受容する、請求項46に記載の使用。
【請求項55】
哺乳類の疾病の治療に用いるための薬剤の製造における、薬学上許容されるビヒクルと、少なくとも一つの標的抗原および治療薬と結合する多重特異性多価抗体、フラグメントまたは融合タンパク質複合体を含んでなる治療組成物の使用であって、非放射性標識抗体の前投与が行われず、該治療組成物が該哺乳類に同時または逐次投与される、使用。
【請求項56】
哺乳類の疾病の治療に用いるための薬剤の製造における、
(A)少なくとも一つの標的抗原と結合する多重特異性多価抗体、フラグメントまたは融合タンパク質;
(B)場合により、その組成物に非局在抗体を循環から排除させるためのクリアリング剤;および
(C)該多重特異性多価抗体、フラグメントまたは融合タンパク質と結合する、薬学上有効な量の治療複合体
を含んでなる治療組成物の使用であって、非放射性標識抗体の前投与が行われず、該治療組成物が該哺乳類に同時または逐次投与される、使用。

【公開番号】特開2010−189413(P2010−189413A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−89699(P2010−89699)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【分割の表示】特願2004−563380(P2004−563380)の分割
【原出願日】平成15年12月31日(2003.12.31)
【出願人】(504149971)イミューノメディクス、インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】IMMUNOMEDICS, INC.
【Fターム(参考)】