説明

非侵襲性の人口呼吸のための装置

連続した吸気工程、即ちIPAPと、呼気工程、即ちEPAPとに応じた空気フローを発生させるためのBi-レベル形式、若しくはBiPAP形式のファン(2)を有している。この空気フローは、鼻マスク(4)に接続された可撓性のダクト(3)によって、患者(25)の気管中に送られる。ダクト(3)と鼻マスク(4)とに空気圧式に接続されており、IPAP工程の最初に吸気フローが患者(25)に到達する前に、吸気フローから所定量の空気をとるための可撓性の空気リザーバ(5)が与えられている。呼気工程中、空気フローの圧力が自動的に下がるので、患者によって出された空気は、鼻マスク(4)に形成された開口部を(14)を通って排出され、一方、可撓性の空気リザーバ(5)は少なくとも部分的に空になる。このようにして、空気交換が患者の最も末梢の気管で起こり、ガス交換量が増え、これと同時に処置時間が短くなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療分野、特に、非侵襲性の人口呼吸のための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
知られているように、肺並びに胸郭を有する呼吸器システムは、横隔膜と呼ばれる筋肉に位置されており、空気並びに酸素の吸引/呼出作用を調節するポンプのように働く。自然な呼吸においては、横隔膜が収縮すると、肺の中に真空が生じ、これによって空気が吸込まれる。しかし、胸郭若しくは肺の病変によってもたらされる呼吸不全の問題と、二酸化炭素が、生理学的な値を超えて動脈血中に増加することによって起こされる不十分な呼吸の問題とによって、呼吸器システムの正確な動作が影響されることがある。そして、不健康な個人の自然な呼吸を向上、若しくは回復させるためには、圧力で気管中に、次に特別な装置で患者の肺に空気を送ることからなる人口呼吸が行なわれなければならない。
【0003】
慢性の肺の病変(pulmonary pathologies)、若しくは急性の呼吸不全の患者を処置するために広く使用されている技術は、非侵襲性の人口呼吸(NIMV)である。このNIMVによって、呼吸筋に対してより簡単な作業が保証され、ガス交換が改善され、さらに、多くの場合において、非常に侵襲性があり、呼吸器システムへの外傷若しくは感染を引き起こし、そして病院でのみ行なわれ得るような気管内挿管法(intratracheal intubation)の必要性が回避される。
【0004】
非侵襲性の人口呼吸のための装置は、通常、所定の圧力で空気を生成するファンと、可撓性のチューブによってこのファンに接続されている鼻マスクとを有している。さらに、実時間で測定された圧力データを基礎に、空気を送るのを制御する空気圧式の器具が設けられている。この空気圧式の器具は、患者の呼吸に応答するか、予め設定された圧力プログラムで設定されている。
【0005】
正圧を有する非侵襲性の呼吸は、一方が、固定圧力(CPAP)で、他方が2つのレベルの圧力、即ちbi-レベル(BiPAP)の圧力である2つの方法を有している。特に、このBiPAPは、2つの異なるレベルの圧力によって特徴付けられており、予め設定された期間に相互に交換され、肺内圧力の変化に応じた受動の肺呼吸を可能にする呼吸の一種である。これと同時に、患者は、機械的なサポートなしに、呼吸サイクルの各工程において、自発的に呼吸することができる。より詳細には、呼吸のための装置は、吸気時に、ファンによって、吸気の正圧(IPAP)と、積極的だがIPAPよりも小さな呼気の正圧(EPAP)とを送る。言い換えると、患者が人口呼吸する間に、この装置は、肺呼吸に必要とされる呼吸動作を果たす。通常は、IPAPは非常に高いのに対して、EPAPは大気圧よりもほんのわずかに高い。
【0006】
しかし、存在している装置では、患者に供給される空気圧は、所定のプログラム、ファンの種類、並びに選択された制御部の種類に依存した予め設定された概要に従う。この概要は、個人の特別な必要性に必ずしも一致するわけではない。実際に、設定された限界値は、IPAP並びにEPAPであり、唯一の調節可能な値は、バルブによって、若しくはファンのパワーを選択的に制御することによって、2つの限界値間に供給される空気の圧力である。
【0007】
さらに、このような装置は、末梢気管への到達なしに、主気管のみでの呼吸並びに空気交換を保証しており、この事実は、末梢気管の萎縮を引き起こしかねない。また、このような欠点の結果、一時的な障害の後に、患者が自然な呼吸速度に至るまでには非常に長い時間を要する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、患者の最も末梢の気管への空気交換を果たす、非侵襲性の人工呼吸のための装置を提供することである。
【0009】
また、本発明の目的は、ガス交換量を増加させ、ファンの処理時間を短くするような、非侵襲性の人口呼吸のための装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
これら並びに他の目的は本発明に従った非侵襲性の人工呼吸のための装置によって果たされる。この装置は、各々が最大圧力の頂点を有する吸気工程、即ちIPAPと、各々が最小圧力で終わる呼気工程、即ちEPAPとが連続している、予め設定された圧力サイクルに応じた空気フローを発生させるための手段と、この空気フローを、患者の気管に送るための手段とを有している。この装置の主な特徴は、前記吸気工程の最初に、前記空気フローから予め設定された量の空気をとるための手段をさらに有しており、このとるための手段は、前記送るための手段と空気圧式に接続されていることである。
【0011】
特に、吸引フローから所定量の空気をとると、圧力が十分に下がり、患者の気管に渦が生成される。かくして、空気は、最も末梢の気管に到達されることができる。
【0012】
効果的には、前記空気をとるための手段は、EPAP工程と、これに続くIPAP工程との間に空気を充填し、かくして、前記フローから、前記予め設定された量の空気をとるのに適した少なくとも1つの空気リザーバを有している。
【0013】
特に、この空気リザーバは、IPAP工程で空気が充填され、EPAP工程で少なくとも部分的に空にされるのに適した可撓性の容器であることができる。
【0014】
一方、前記とるための手段は、前記送るための手段に形成された校正用の開口部を有することができる。この場合、この校正用の開口部は、自動的に動作されることができる。
【0015】
本発明の実施形態において、前記送るための手段は、ダクトと鼻マスクとを有しており、前記予め設定された量の空気をとるための手段は、装着によって、鼻マスク若しくはダクトに接続されている。
【0016】
本発明の更なる特徴並びに効果は、添付図面を参照して例示されるが、これに限定されない可能な実施形態の以下の説明でより明らかにされるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1には、本発明に従った非侵襲性の人工呼吸のための装置1の第1の実施形態が示されている。この装置は、連続した吸気工程、即ちIPAPと、呼気工程、即ちEPAPとが連続している、予め設定された圧力サイクルに応じた空気フローを発生させるためのファン2を有している。このファン2によって発生される空気フローは、患者25に着用された鼻マスク4に接続されている可撓性のチューブ3によって、患者25の気管(aerial ducts)中に送られる。本発明に従った非侵襲性の人工呼吸装置1の主な特徴は、ダクト3と鼻マスク4とに空気圧式に接続されるように配置されており、吸気フローが患者25の気管に達する前に、吸気フローから所定量の空気をとるための可撓性の空気リザーバ5も与えていることである。
【0018】
特に、IPAP工程の最初では、前記ファン2によって発生されたフローの所定量の空気は、前記リザーバ5、例えば可撓性の材料からなる「バルーン」へと入り、この結果、前記所定量の空気が、すでに吸気工程を開始した患者25に達することは防止される(図2A)。次に、呼気工程中に、Bi-レベル(Bi-level)のファンの圧力レベルが低いために、空気フローの圧力が自動的に下がったとき、患者から出される空気は、鼻マスク4に形成された開口部14を通って排出され、これと同時に、バルーン5は、少なくとも部分的に空になる(図2B)。実際に、IPAP工程での圧力がより高いと、この圧力がバルーンの重量自体を超えるので、バルーンは膨張する。代わりに、EPAP工程中、圧力がより低いので、バルーンの重量自体を超えるのは十分でなく、この結果、バルーンは部分的に空になる。
【0019】
図3Aには、空気リザーバ5が、図1のものとは異なる実施形態として示されている。この場合、前の場合のようにIPAP工程中に空気が充填され、EPAP工程中に空にされるのに適したサイズのアコーディオン形状のリザーバ51を有する装置が使用されている。明らかに、空気をとる工程は、また、他の所望な知られた方法で果たされることができる。BiPAPのファンの自動操作は影響を受けないことが重要な要件である。例えば、大気中の空気を送る校正弁55が使用されることができ、この校正弁の閉成/開成は、自動的に操作されることができる(図3B)。
【0020】
さらに異なる実施形態において、空気をとる空気圧システム56が設けられることができ、このシステムでは、とられる空気量は、IPAP工程の最初と同期して設定されることができる(図3C)。
【0021】
以上の4つの可能な例示的な実施形態は、図4の図式に図によって示されているように、同じ結果を有している。この図は、吸気工程、即ちIPAPが、呼気工程、即ちEPAPに変えられるサイクルの間に果たされる、時間(t)に対する圧力動向(P)を示している。特に、従来の装置では、IPAP工程の終圧P2は、これに続くEPAP工程(点線)の始動圧力P2と同じである。反対に、本発明に従った装置1は、IPAP工程の終圧P2と、これに続くEPAP工程の始動圧力P3との間に、わずかな減圧(depression)30をもたらす。圧力P2,P3の差によって起こされるわずかな減圧は、続くIPAPの空気フローを最も末梢の気管に到達させるような渦を、患者25の気管内に形成するのに十分である。このようにして、従来の装置で得られた効果に対して、より効果的で、ガス交換性を高め、さらに、処理時間をかなり短くすることができる非侵襲性の人工呼吸が得られる。
【0022】
さらに、通常のVMNIによって起こされる呼吸では、中央の肺尖セクション(medium-apex lungs section)での呼吸の低下が観察されたのに対して、この装置1は、肺呼吸におけるさらなる治療の効果を達成し、詳細には、より下方の、より末梢の肺のセクションの呼吸を改良することを可能にしている。
【0023】
特定の実施形態の以上の説明は、現在の知識を応用することによって、他の実施形態が、本発明から離れることなく、またさらに検討することなく、様々な応用例のために、このような実施形態を変更並びに/若しくは応用することができるように、概念上の観点に従って、本発明を非常に完全に明らかにしているだろう。従って、このような応用並びに変更が、特定の実施形態と同等に考えられなければならないことは理解される。この明細書に説明された別の機能を実現するための手段並びに材料は、この理由から、本発明の分野から逸脱することなく、別の性質を有することができる。この明細書で使用された用語若しくは術語が、説明を目的とするものであって、限定を意図するものではないことは理解される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に従った、患者に適用される非侵襲性の人工呼吸のための装置の斜視図を図式的に示している。
【図2A】IPAP工程中の、図1の人工呼吸装置の鼻マスクの詳細な斜視図を図式的に示している。
【図2B】EPAP工程中の、図1の人工呼吸装置の鼻マスクの詳細な斜視図を図式的に示している。
【図3A】図1に示されたものとは異なる実施形態に従った非侵襲性の人工呼吸装置のための空気をとる装置を図式的に示している。
【図3B】図1に示されたものとは異なる実施形態に従った非侵襲性の人工呼吸装置のための別の空気をとる装置を図式的に示している。
【図3C】図1に示されたものとは異なる実施形態に従った非侵襲性の人工呼吸装置のための別の空気をとる装置を図式的に示している。
【図4】従来技術の装置の動向と比較して、吸気工程、即ちIPAPと、これとは別の呼気工程、即ちEPAPとを有する圧力サイクル間の、図1の装置の時間に対する圧力動向を図式的に示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が最大圧力の頂点を有する吸気工程、即ちIPAPと、各々が最小圧力で終わる呼気工程、即ちEPAPとが連続している、予め設定された圧力サイクルに応じた空気フローを発生させるための手段と、
この空気フローを、患者の気管に送るための手段とを具備する、非侵襲性の人口呼吸のための装置において、
前記吸気工程の最初に、前記空気フローから予め設定された量の空気をとるための手段を有し、このとるための手段は、前記送るための手段と空気圧式に接続されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記とるための手段は、前記EPAP工程とこれに続くIPAP工程との間に、空気を充填し、かくして、前記空気フローから前記予め設定された量の空気をとるのに適した少なくとも1つの空気リザーバを有している請求項1の装置。
【請求項3】
前記リザーバは、前記IPAP工程中に空気が充填され、EPAP工程中に少なくとも部分的に空にされるのに適した可撓性の容器である請求項1又は2の装置。
【請求項4】
前記可撓性の容器は、バッグ、若しくはバルーンである請求項3の装置。
【請求項5】
前記可撓性の容器は、アコーディオン形状である請求項3の装置。
【請求項6】
前記空気をとるための手段は、とられる空気量を、前記IPAP工程の最初に同期させるように調節するのに適した、空気をとる空気圧システムを有している請求項1の装置。
【請求項7】
前記空気をとるための手段は、前記送るための手段に形成された校正用の開口部を有している請求項1の装置。
【請求項8】
前記校正用の開口部は、自動的に、開成/閉成される請求項7の装置。
【請求項9】
前記送るための手段は、ダクトと鼻マスクとを有しており、前記とるための手段は、装着によって、前記鼻マスク若しくは前記ダクトに動作的に接続されている請求項1の装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【公表番号】特表2007−500562(P2007−500562A)
【公表日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−529834(P2006−529834)
【出願日】平成16年5月14日(2004.5.14)
【国際出願番号】PCT/EP2004/005231
【国際公開番号】WO2004/101049
【国際公開日】平成16年11月25日(2004.11.25)
【出願人】(504364172)